消泡方法及び消泡装置
【課題】 微細気泡を供給しながら地盤を掘削する工法において生じる排泥土、又は気泡混合軽量土工法で生じる残土に含まれる微細気泡を簡易な装置で短時間に消泡する消泡方法及び消泡装置を提供する。
【解決手段】 霧化した消泡剤を含む空気を、泥土11中に吹き出す。泥土11は傾斜を有する排泥溝25を上流から下流に向かってゆっくり流下させ、排泥溝の上流部における底面付近に消泡剤を含む空気を吹き出す。泥土中に吹き出された上記空気は、泥土の中で次から次へと吹き出し空気泡14となり、徐々に上昇しながら下流に移動する。この移動過程で空気泡に封入されている消泡剤の微小液滴が微細気泡と接触し、多くの微細気泡を破壊する。なお、泥土の粘性又は比重の大小により、空気圧又はノズル9aの径の大きさを調整して、吹き出し空気泡の容積を変更する。これにより、吹き出し空気泡の上昇速度を調整することができる。
【解決手段】 霧化した消泡剤を含む空気を、泥土11中に吹き出す。泥土11は傾斜を有する排泥溝25を上流から下流に向かってゆっくり流下させ、排泥溝の上流部における底面付近に消泡剤を含む空気を吹き出す。泥土中に吹き出された上記空気は、泥土の中で次から次へと吹き出し空気泡14となり、徐々に上昇しながら下流に移動する。この移動過程で空気泡に封入されている消泡剤の微小液滴が微細気泡と接触し、多くの微細気泡を破壊する。なお、泥土の粘性又は比重の大小により、空気圧又はノズル9aの径の大きさを調整して、吹き出し空気泡の容積を変更する。これにより、吹き出し空気泡の上昇速度を調整することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、特殊起泡剤によって形成された微細気泡を使用して地盤を掘削したときの排泥土、又は土と固化剤と気泡とが混合された材料を用いる気泡混合軽量土工法の残土について、残留する微細気泡を破泡させる消泡方法及び消泡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルの掘削又はソイルセメントからなる地中連続壁の構築のように地盤の掘削作業を含む工事において、掘削土の粘性を下げ掘削を容易にするために掘削面に大量の水が注入される。近年は、この水の替わりに又は水とともに、起泡剤を用いて形成された多量の微細な気泡を掘削面に供給する工法が普及している。微細気泡を供給することによって掘削土の流動性を向上させるものである。
このような気泡を用いた掘削工法では、掘削に使用する水を少量に抑えることができるが、気泡を含むことによって排出土の量が増加してしまう。これにより、産業廃棄物として処理するために貯留及び輸送すべき排出土の量が増大することとなる。
【0003】
このような排出土を産業廃棄物として処理する前に気泡を消去し、排出土の量を低減する方法が、例えば特許文献1及び特許文献2に提案されている。
特許文献1には、シールドトンネルの掘削において、切羽またはチャンバ内に気泡を注入することにより、掘削土の流動性と止水性を向上させるとともに、チャンバ内での掘削土の付着を防止する方法が開示されている。この気泡シールド工法では、気泡を含んだ排出土に消泡剤を添加し、気泡を消滅させて排出土の量を低減している。
特許文献2には、掘削用安定液と気泡を注入しながら掘削機によって地盤を下方に掘削し、掘削終了後に造成用安定液を注入してソイルセメント壁を地中に構築する方法が記載されている。造成用安定液は例えば水とセメントとの混合物であるセメントミルクが用いられ、この造成用安定液に消泡剤が配合される。そして、掘削機を上下に繰り返し移動させながら掘削孔から引き揚げて造成安定液中の消泡剤を気泡と混合する。これにより、消泡作用を促進させ、排出土の量を低減している。
【0004】
一方、軟弱地盤上の盛土や斜面上の盛土を軽量とするために、土とセメント等の固化剤と水と気泡とを混合した軽量土を用いる気泡混合軽量土工法が知られている。気泡混合軽量土は、この他、ボックスカルバートや地下鉄等の地中構造物の周辺埋め戻し土として、又は擁壁や橋台の背面埋め戻し土として用いられる。これにより、構造物に作用する土圧を軽減することができる。このような気泡混合軽量土工法において、施工現場で生じた残土は産業廃棄物として搬出及び処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−348727号公報
【特許文献2】特開2009−221764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような微細気泡を用いた掘削工法では、排出した泥土の処理について次のような解決が望まれる課題がある。
特許文献1に記載のように気泡を含む排出土に消泡剤を添加する方法では、効率よく消泡するために、消泡剤の添加後十分に撹拌して、できるだけ多くの微細気泡と消泡剤とを接触させることが必要である。しかし、現場で発生する排出土は大量であるうえに粘性が高いことが多く、大規模の撹拌機と動力が必要となり消泡の費用が多大となる。
また、特許文献2に記載のソイルセメント壁の構築方法においては、掘削終了後に供給される造成用安定液に消泡剤が配合されており、掘削機の引き揚げ時に消泡が行われる。しかし、掘削用安定液及び微細気泡を注入しながら掘削を行う時の排出土中には多くの微細気泡が混入しており、掘削時の排出土は掘削孔から排出された後に消泡処理する必要がある。
その他、気泡軽量混合土工法における残土等についても、残土等が発生した現場で簡易に消泡し、体積を低減する方法が求められている。
【0007】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、泥土中に含まれる微細気泡を簡易な装置で消泡して、排出土の量を低減することを可能とする消泡方法及び消泡装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、 少なくとも水と、土と、起泡剤の使用により形成された微細気泡と、が混合された泥土中に加圧空気を吹き出す吹き出し口を設け、 該吹き出し口から消泡剤を含む微小液滴が浮遊する空気を吹き出し、 前記泥土中に次々に形成される吹き出し空気泡を浮力によって上昇させることを特徴とする消泡方法を提供する。
【0009】
この消泡方法では、消泡剤を含む微小液滴が浮遊している空気を微細気泡が混合された泥土中に吹き出し、泥土中に次から次に吹き出し空気泡として供給することができる。そして、吹き出し空気泡は浮力により泥土中をゆっくり上昇し、上昇する過程で泥土中の微細気泡に消泡剤を含む微小液滴が次々と接触し破泡する。つまり、消泡剤を含んだ吹き出し空気泡が泥土中に吹き出された位置から上面まで移動することにより、効率よく消泡剤と微細気泡とを接触させて消泡することが可能となる。したがって、簡易な装置で短時間に消泡して泥土量を低減することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の消泡方法において、 前記泥土は、勾配を有する溝内を流下させ、前記吹き出し口は、前記泥土が流下する溝内の底部付近に設けるものとする。
【0011】
この消泡方法では、消泡剤の微小液滴を含んだ空気泡が底部で泥土中に吹き出され、この泥土が溝の下流に向かって移動する。したがって、次々に上流側から流下してくる泥土中に空気泡が吹き出される。そして、溝の底部から吹き出された空気泡が泥土中を徐々に上昇する。したがって、溝を流下する泥土に対して、消泡剤を含む吹き出し空気泡が広い範囲で接触し、効率的に消泡することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の消泡方法において、 前記泥土の粘性が大きいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が大きくなるように、前記泥土の粘性が小さいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が小さくなるように、前記吹き出し口の大きさ又は吹き出し圧力を調整して、前記吹き出し空気泡の上昇速度を調整するものとする。
【0013】
泥土の粘性が大きい場合は泥土中における吹き出し空気泡の上昇が妨げられることがある。逆に、粘性が小さい場合は、吹き出し空気泡は急速に泥土中を上昇し、微細気泡に接触する機会が少なくなる。本発明の消泡方法では、上記のように泥土の粘性に応じて吹き出し空気泡の容積を変更するように吹き出し口の大きさ又は吹き出し圧力が調整される。したがって、吹き出し空気泡に作用する浮力が調整され、吹き出し空気泡が泥土中で上昇する速度が調整される。これにより、吹き出し空気泡内に浮遊している消泡剤を含む微小液滴と微細気泡とを効率よく接触させることが可能となる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の消泡方法において、 前記泥土の比重が大きいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が小さくなるように、前記泥土の比重が小さいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が大きくなるように、前記吹き出し口の大きさ又は吹き出し圧力を調整して、前記吹き出し空気泡の上昇速度を調整するものとする。
【0015】
一般に、泥土の比重が大きい場合、泥土中の吹き出し空気泡に作用する浮力は大きくなり、吹き出し空気泡は急速に上昇しようとする。また、泥土の比重が小さい場合は、吹き出し空気泡に作用する浮力が小さく、吹き出し空気泡の上昇速度は小さくなる。本発明の消泡方法では、泥土の比重に応じて吹き出し空気泡の容積が調整され、空気泡の泥土中の上昇速度が調整される。つまり、泥土の比重が大きい場合は吹き出し空気泡の容積を小さくすることにより浮力を小さくし、上昇速度を遅くして多くの微細気泡と接触するようにする。一方、泥土の比重が小さい場合は、吹き出し空気泡に浮力は作用し難くなるが、吹き出し空気泡の容積を大きくして上昇する速度を大きくする。このように泥土の比重に応じて空気泡の吹き出し口の大きさ又は吹き出し圧力を調整することにより、吹き出し空気泡を適切な速度で上昇させ多くの微細気泡と接触させることが可能となる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の消泡方法において、起泡剤によって形成された微細気泡と水又は前記微細気泡とセメントミルクを供給しながら土と攪拌混合して地表面から下方へたて穴を掘削し、 前記溝は、前記たて穴と連続するように地表面近くに掘削し、前記たて穴の掘削によって発生する泥土を該たて穴から流入させるものとする。
【0017】
この消泡方法では、掘削されるたて穴と連続した溝が地表面に掘削されるので、掘削時にたて穴からあふれ出す微細気泡と水又は微細気泡とセメントミルクが混在した掘削土を溝に流入させることができる。したがって、たて穴の掘削時に溝内を重力によって流下する排泥土中に消泡剤の微小液滴が浮遊する空気泡を吹き出し、排泥土中に混在する微細気泡を溝内で速やかに消泡することができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、 少なくとも水と土と微細気泡とが混合された泥土中に、吹き出し口から空気を吹き出す空気吹き出し手段と、 起泡剤を使用して形成された微細気泡を破壊して消泡する消泡剤を含んだ液体を霧状の微小液滴とし、前記吹き出し口から吹き出される前の空気中に前記微小液滴を浮遊させる消泡剤霧化手段と、を有することを特徴とする消泡装置を提供する。
【0019】
この消泡装置では、霧化した消泡剤を含む空気を空気吹き出し手段により泥土中に吹き出すので、泥土中に消泡剤を封入した状態の吹き出し空気泡が次から次へと生じる。この吹き出し空気泡は浮力により泥土中を徐々に上昇し、この上昇過程で泥土中の多くの微細気泡に接触し破壊する。したがって、大型の撹拌機等を用いて撹拌を行わなくても、効率的に消泡することができ、泥土の処理に費やされるコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
上記のように、本願発明に係る消泡方法及び消泡装置では、泥土中に混入している微細気泡を簡易な装置で短時間に消泡することができ、大規模な撹拌機等を使用することなく効率の良い消泡が可能となる。これにより、産業廃棄物となる泥土量の低減及び消泡に費やすコストの低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本願に係る発明の一実施形態である消泡装置及び消泡方法が用いられる気泡シールド工法を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す消泡装置が設置された状態を示す概略図である。
【図3】図2に示す消泡装置の一部を示す拡大断面図である。
【図4】図2及び図3に示す消泡装置により微細気泡が破壊される状態を示す概略図である。
【図5】本願に係る発明の第2の実施形態である消泡方法であって、ソイルセメント壁構築工法で生じる排泥土の消泡方法を示す概略図である。
【図6】図5に示す消泡方法で用いられる消泡装置が配置された状態を示す概略図である。
【図7】本願に係る発明の消泡装置及び消泡方法を気泡混合軽量土工法の残土処理に適用した例を示す概略断面図及び概略平面図である。
【図8】本願に係る発明の消泡装置の他の例を示す概略構成図である。
【図9】本願に係る発明の消泡装置の他の例を示す概略構成図である。
【図10】図9に示す消泡装置の要部を示す拡大断面図である。
【図11】本願に係る発明の消泡装置の他の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願に係る発明の一実施形態である消泡装置及び消泡方法が適用される気泡シールド工法を示す概略構成図、図2はこの消泡装置が設置された状態を示す概略図、図3はこの消泡装置の一部を示す拡大断面図である。
この消泡装置1は、気泡シールド工法によるシールドトンネルの掘削にともなって排出される泥土中の微細気泡を消滅させ、泥土の量を低減するものである。
【0023】
気泡シールド工法は、図1に示すように、シールド機21の前面に備えられたカッターヘッド21aを回転させながら切羽27の掘削を行うものであり、切羽27またはチャンバ内に特殊気泡剤でつくられた多数の微細気泡を注入する。これにより、掘削土の流動性と止水性を向上させるとともに切羽の安定を保持しながら掘進するものである。
掘削に使用された上記微細気泡は掘削土とともにベルトコンベア又はパイプ22により立坑23を経て地表面上に排出され、第1受け槽24に投入される。この第1受け槽24に投入された泥土11は、底面が傾斜するように設けられた排泥溝25を経て第2受け槽26に流し込まれる。そして、上記消泡装置1は、図2に示すように、上記排泥溝25の底部付近で泥土11中に消泡剤を含む空気を吹き込み、流下する泥土11に混在している微細気泡を破壊するものである。排泥溝25から第2受け槽26に流し込まれた泥土11は、その後最終的に処分される。
【0024】
上記消泡装置1は、消泡剤を含む微小液滴が浮遊する空気、つまり霧化された消泡剤を含んだ空気を吹き出し口から吹き出す空気吹き出し手段と、起泡剤で形成された微細気泡を消泡する消泡剤又は希釈された消泡剤を霧状の微小液滴として空気中に浮遊させる消泡剤霧化手段と、で主要部が構成されている。
【0025】
上記空気吹き出し手段は、空気を加圧し、所定圧力の圧縮空気として供給するコンプレッサ5と、このコンプレッサ5から供給される圧縮空気を泥土中に導くための圧縮空気用パイプ6と、コンプレッサ5から供給された圧縮空気に霧化した消泡剤が供給される函体8と、上記函体8に複数が設けられ、霧化した消泡剤を含んだ空気を排泥土中に吹き出す吹き出し口9と、で主要部が構成されている。
上記コンプレッサ5は、空気を圧縮するとともに圧縮空気を所定の圧力に調整する機能を備えており、圧力が調整された圧縮空気を上記圧縮空気用パイプ6から上記函体8に送り込むようになっている。
【0026】
上記函体8は、図3に示すように、内部に圧縮空気が送り込まれる箱状となっており、上記排泥溝25の上流部における底部に固定される。そして、この函体8には上記圧縮空気用パイプ6から圧力が調整された圧縮空気が送り込まれるとともに、消泡剤霧化手段によって霧化された消泡剤を含む微小液滴が吹き込まれる。したがって、圧縮空気と霧化した消泡剤とがこの函体8内で混ざり合うようになっている。
【0027】
上記吹き出し口9は、上記函体8の上面に、排泥溝25の流れ方向及び幅方向(流れ方向とほぼ直角方向)に一定の間隔をあけて分布するように複数が設けられている。そして、霧化された消泡剤を含む圧縮空気を泥土中に吹き出すものとなっている。
各吹き出し口9は、函体8に設けられた開口にノズル9aが着脱可能に装着されたものである。したがって、このノズル9aを交換することによって、ノズルの径の大きさを変更することが可能となっている。このようにノズル9aの径を変更するとともに吹き出す空気の圧力を調整することにより、排泥土の粘性や比重の大小に応じて、ノズル9aから吹き出される空気泡14の容積を変更することができるようになっている。
【0028】
上記消泡剤霧化手段は、液状の消泡剤を収容する消泡剤収容槽2と、この消泡剤収容槽2に連結され消泡剤を送り出す消泡剤パイプ3と、圧縮空気を吹き出して消泡剤を霧化する霧化パイプ4と、で主要部が構成されている。また、霧化パイプ4への圧縮空気の供給は、空気吹き出し手段の圧縮空気用パイプ6に圧縮空気を供給するコンプレッサ5を共用することができる。
上記消泡剤は、液状のもの又はこれを希釈したものを用いることができる。また、溶剤に溶融して液体としたものであっても良い。これらの消泡剤は、泥土11中に混在する微細気泡を破泡して消去するものであり、発泡させた起泡剤の種類に応じて消泡に最適な材料が選択される。
本実施の形態では、タンパク系や界面活性剤を起泡剤として微細気泡を発生させ、消泡剤としては、高級脂肪酸エステル、鉱物油、高級アルコール等を用いている。
起泡剤としては、本実施の形態で使用したもののほかに、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、カルボキシセルロース等を使用することができ、消泡剤としてはエチルアルコール等を使用することも可能である。
【0029】
上記消泡剤収容槽2は上記消泡剤を貯留し、上記消泡剤パイプ3を経て上記函体8内に消泡剤を供給するものとなっている。一方、上記霧化パイプ4は、高圧空気を先端4aから吹き出すものであり、上記消泡剤パイプ3と並列して配置されている。そして、函体8内で霧化パイプの先端4aから吹き出す高圧空気と接触する位置に消泡パイプの開口3aが設けられている。
霧化パイプ4に高圧空気が供給され高圧空気が吹き出されると消泡パイプ3の開口付近に負圧が生じ、この負圧により消泡剤パイプ3内の消泡剤が霧化パイプ4から吹き出す空気中に供給される。そして、高速で移動する空気と接触した消泡剤が吹き飛ばされ、霧状となる。消泡剤パイプ3には、消泡剤収容槽2内から負圧によって消泡剤が供給され、函体8内で連続して霧状化するものとなっている。
なお、霧化パイプ4に供給される空気の圧力は、函体8内に高速で吹き出して消泡剤を霧状とすることができる圧力であり、圧縮空気用パイプ6から供給される空気の圧力より高く設定する必要がある。また、消泡剤は消泡剤収容槽2で加圧して供給しても良い。
【0030】
次に、このような構成を有する消泡装置により泥土中に混在する微細気泡を消泡する方法について説明する。
消泡装置1の函体8は排泥溝25の底板に固定しておき、この排泥溝25に第1受け槽24から第2受け槽26に向けて泥土を流下させる。そして、泥土中に設けられた函体8からノズル9aを経て消泡剤を含む吹き出し空気泡14を吹き出す。函体8から吹き出す空気は、消泡剤霧化手段により生成された消泡剤を含む微小液滴と函体8内で混合されており、吹き出し空気泡14は消泡剤の微小液滴が浮遊した状態でノズル9aから泥土中に吹き出される。
【0031】
このようにして排泥溝25を流れる泥土中に吹き出された空気は、浮力によって泥土中を上昇し、泥土中の多数の微細気泡と接触してこれらの微細気泡を消滅させる。これらの吹き出し空気泡14を吹き出すノズル9aは、排泥溝25の幅方向に複数が配列されており、幅方向のほぼ全域で吹き出し空気泡14が泥土と接触する。また、吹き出し空気泡14は排泥溝25を流下する泥土中に次から次へと吹き出され、流下する泥土は次々に消泡剤を含む吹き出し空気泡14と接触することになる。
【0032】
図4は、消泡剤を封入した吹き出し空気泡14の上昇にともなって微細気泡12が消泡される状態を示す図である。
吹き出し空気泡14は、排泥溝25内で土粒子15、水、微細気泡12を含む泥土中を上昇し、この移動の過程で、図4(a)に示すように吹き出し空気泡14は微細気泡と接触する。そして、図4(b)示すように吹き出し空気泡14内で霧状となっている消泡剤を含む微小液滴13が次々と微細気泡12に接触する。消泡剤を含む微小液滴13が微細気泡12と接触すると微細気泡12は破壊されて吹き出し空気泡14に取り込まれる。このように次から次に接触する微細気泡12を破壊しながら吹き出し空気泡14が泥土11の上面まで上昇すると、吹き出し空気泡14は破壊されて消滅し、吹き出し空気泡中の気体は大気中に放出される。しかし、消泡剤は排泥溝25の中に残存しており、排泥溝25の中を流下して移動している泥土11とさらに接触し、微細気泡12の破壊を継続する。
【0033】
泥土中を上昇する吹き出し空気泡14は、多くの微細気泡12と接触して効率よく消泡するように、吹き出し空気泡16の上昇速度を適切に調整することができる。つまり、吹き出し空気泡14は、一つ一つの容積が空気圧又はノズル9aの開口径によって大きさを調整することができ、吹き出し空気泡14の一つ一つの容積が大きくなると作用する浮力が増大して泥土中を上昇する速度が大きくなる。
【0034】
例えば、シールドトンネルの掘削現場では、掘削にともなって排出される排泥土の粘性または比重を予め測定しておき、測定された粘性又は比重により圧縮空気用パイプ6から吹き出される空気の圧力をコンプレッサ5において調整する。また、これら粘性又は比重に応じて適切な開口径を有するノズル9aを選択し、函体8の各吹き出し口9に装着する。
泥土11の粘性が大きい場合、泥土中に形成される吹き出し空気泡14の容積が小さいと泥土中を浮上することができず停滞してしまう。一方、粘性が小さい場合は、吹き出し空気泡14の容積が大きいと上昇速度が速くなり、消泡剤を十分に微細気泡に接触させることができない。したがって、泥土の粘性の大小に応じて、圧縮空気用パイプ6に供給される空気圧又はノズル9aの大きさを適宜調整して、吹き出し空気泡14が浮力により徐々に上昇するように調整する。
【0035】
一方、泥土の比重が大きい場合は、吹き出し空気泡14へ作用する浮力が大きくなり吹き出し空気泡14が急速に上昇するので、急速な上昇を抑制するために吹き出し空気泡14の容積を小さくする。つまり、圧縮空気パイプ6に供給する圧力を小さく、又はノズル9aの大きさを小さくする。また、泥土の比重が小さい場合は、吹き出し空気泡14が泥土中で停滞するのを防止するために、圧縮空気用パイプ6に供給する圧力を大きくし、又はノズル9aを径が大きいものに交換して一つ一つの吹き出し空気泡14の容積を大きくする。
【0036】
なお、本実施の形態では、函体8内に吹き込まれる空気圧をコンプレッサ5において調整し、函体8内で空気圧は調整していないが、函体8に圧力調整弁を設ける等の手段によって圧力を調整し、適切な圧力として霧化された消泡剤を含む空気を吹き出すようにしてもよい。
また、本実施の形態では、1台のコンプレッサ5で霧化パイプ4と圧縮空気用パイプ6の双方に空気を供給したが、2台のコンプレッサにより霧化パイプ4及び圧縮空気用パイプ6に圧縮空気を供給してもよい。
【0037】
次に、図5に基づいて本願発明の第2の実施の形態を説明する。
図5は、本願発明の第2の実施形態である消泡方法であって、ソイルセメント柱列壁の構築によって生じる泥土の消泡方法を示す概略図である。
このソイルセメント柱列壁の構築工法では、混錬オーガ31の先端からセメントミルクと特殊起泡剤により発泡させた微細気泡とを吐出させながら下方にたて穴33を掘削する。供給された微細気泡のいわゆるベアリング効果により混錬オーガ31の回転抵抗を低減して効率よくたて穴33の掘削を行うものである。
掘削後は、たて穴33に硬化材であるセメントミルクと消泡剤を注入し、掘削土、セメントミルク及び消泡剤とを混合撹拌しながら混錬オーガ31をたて穴33から引き揚げる。その後、セメントミルクと掘削土が混合されたソイルセメントを養生して、ソイルセメント杭を構築する。このソイルセメント杭を柱列状に形成しソイルセメント柱壁壁とするものである。
【0038】
この工法では、図5に示すように、たて穴33の上部と連通した排泥溝32が地表面から掘削され、この排泥溝32の下流には排泥溝32よりも深い排泥土受け槽35が設けられている。そして、たて穴33の掘削時には、掘削土、セメントミルク及び微細気泡を混合した泥土34がたて穴33の上部から溢れ出し、排泥溝32に流入するようになっている。なお、この排泥溝32の底面はたて穴33に近接した位置から排泥土受け槽35に向かって徐々に深くなるように傾斜して掘削されており、排泥溝32に流れ込んだ泥土34はゆっくりと流下して排泥土受け槽35に受け入れられる。
なお、排泥溝32に流入する泥土34の量は、セメントミルクのみを注入しながら掘削する場合と比較すると、微細気泡の占める体積が大きいため増加している。
【0039】
上記消泡装置1は、泥土34が流入する上記排泥溝32の上流部における底面付近で空気泡を吹き出すように設置する。そして、泥土34中に混在している微細気泡を破壊して消泡し、産業廃棄物となる排泥土の量を低減するものである。
なお、この実施の形態で用いられる消泡装置1の構成は第1の実施形態で説明した消泡装置と同様であるので説明を省略するとともに同じ符号を付す。
【0040】
この消泡方法においても、図6に示すように排泥溝32の底面付近に設置された函体8から消泡剤を封入した圧縮空気が排泥溝32の広い範囲に吹き出され、泥土中に次から次へ吹き出し空気泡36が形成される。吹き出し空気泡36は排泥溝32の底部から吹き出され、上昇しながら下流に向かって移動するので、この移動の間で吹き出し空気泡36に封入されている消泡剤が微細気泡と接触し消泡する。
微細気泡が消泡された泥土は排泥土受け槽35に流入し、バックホウ37等で取り出して最終処分場に搬送され、処分される。
本実施の形態においても、排泥溝32の中で微細気泡を破壊して消泡してしまうので、産業廃棄物となる泥土の量を低減することが可能となる。
【0041】
この他、本発明の消泡装置及び消泡方法は、気泡混合軽量土工法の残土処理に適用することもできる。
気泡混合軽量土工法は、土とセメントと水と気泡とを混合したものを、盛土、地下構造物の周辺埋め戻し土、擁壁又は橋台の背面埋め戻し土等として用い、重量の低減及び土圧の低減等を図る工法である。上記微細気泡を含む混合土はプラントで混練され、施工現場へ搬入されるが、埋め戻し土等として使用した後の残土は産業廃棄物として処理しなければならない。この処理を行うためには体積を減量して搬出するのが望ましく、混在している気泡を消滅させ、硬化した後に搬出する。この気泡の消滅処理に本発明の消泡装置及び消泡方法を用いることができる。
【0042】
微細気泡が混在している混合土の処理は、図7(b)に平面図を示すように、処理槽41及びこれに連続する溝42を掘削し、消泡装置43は、図7(a)に示すように上記溝42内の底部から消泡剤を含む気泡を吹き出すことができるように設置する。そして、溝42の先端に残土である混合土44を投下して溝42内を処理槽41まで流下させる。消泡装置43は溝内を流下する混合土内に消泡剤を含む空気を吹き出し、次々に吹き出し空気泡45を形成して混合土内を浮力で上昇させる。これにより混合土中の気泡が破壊され、混合土の体積が減少される。
この方法でも使用する消泡装置43としては、図1から図6までに示す実施の形態と同じものを用いることができる。
【0043】
一方、消泡装置は以上に説明したものに限定されるものではなく、上記気泡シールド工法、ソイルセメント柱列壁の構築工法及び気泡混合軽量土工法のいずれについても他の形態の装置を用いることができ、例えば次に説明するような装置を用いることができる。
図8(a)に示す消泡装置51の構成は、函体58に装着された吹き出し口59の位置を除いて第1の実施の形態である消泡装置1の構成と同じであり、霧化された消泡剤を含んだ空気を吹き出し口から吹き出す空気吹き出し手段と、消泡剤を霧状の微小液滴として空気中に浮遊させるための消泡剤霧化手段と、で主要部が構成されている。
第1の実施の形態と同様にこの消泡装置1の函体58は排泥溝53の底面付近に配置されている。そして、吹き出し口59は、泥土の流下方向における函体58の上流側の鉛直面に、排泥溝53の幅方向に所定の間隔で複数が設けられている。
したがって、霧化された消泡剤を含む空気は、排泥溝53の上流に向かって泥土54中に吹き出され、排泥溝53の底面近くから下流に向けて徐々に上昇する吹き出し空気泡52となる。
【0044】
また、図8(b)に示すように、函体68を排泥溝63の上方に設置し、吹き出し管69を函体68から排泥溝63内の泥土64中に突き入れるように設けて、この吹き出し管69を介して底面近くから圧縮空気を吹き出すようにしてもよい。
このように構成することにより、函体68を排泥溝63の中に設置する必要がなく、吹き出し管69を取り外して先端部に設けたノズル69aを容易に交換することができる。
【0045】
図9に示す消泡装置71は、函体を設けずに圧縮空気用パイプ73を複数に分岐し、それぞれの分岐管73cに吹き出し口73aを有する吹き出し管73bが接続されている。複数の吹き出し管73bは、排泥溝76内の泥土77が流れる方向に軸線を有するように支持され、排泥溝76の幅方向及び上下方向に複数本が間隔をおいて配置されている。コンプレッサ79から供給された圧縮空気は上記圧縮空気用パイプ73から分岐管73c、吹き出し管73bを経て吹き出し口73aから泥土中に吹き出される。
また、分岐管73cのそれぞれの内部には、図10に示すように消泡剤パイプ75と霧化パイプ74とが二重管となって引き込まれており、内管である消泡剤パイプ75から供給される消泡剤を含む液体が外管である霧化パイプ74で供給される圧縮空気によって吹き飛ばされ、それぞれの分岐管73c又は吹き出し管73b内に消泡剤を含む微小液滴を浮遊させるものとなっている。そして、圧縮空気用パイプ73で供給された空気とともに吹き出し管73bに設けられた吹き出し口73aから泥土77中に吹き出され、泥土中を吹き出し空気泡72となって上昇する。
なお、この消泡装置71では、吹き出し管73bを分岐管73cとの接合部78で切り離し、交換することによって吹き出し口73aの径を変更することができるものとなっている。
【0046】
図11に示す消泡装置81は、図9に示す消泡装置71と同様に圧縮空気用パイプ83を複数に分岐し、それぞれの分岐管83cに吹き出し口83aを有する吹き出し管83bが接続されている。そして、それぞれの吹き出し管83b又は分岐管83cの内側に消泡剤霧化手段を構成する消泡剤パイプ85が引き込まれ、吹き出し管83b又は分岐管83c中を移動する空気に消泡剤の微小液滴を供給するものなっている。
消泡剤霧化手段は、消泡剤を含む液体を加圧して吐出するポンプを備えた消泡剤収容槽84と、消泡剤収容槽84から送り出された消泡剤を上記吹き出し管83b又は分岐管83cの内側に導く消泡剤パイプ85と、この消泡剤パイプ85の先端に設けられた噴霧部86とを備えている。噴霧部86は、図11(b)に示すように先端が閉じた消泡剤パイプ85の先端部における周面に複数の小孔85aを設け、この小孔85aを設けた部分を覆うようにゴムチューブ87を被覆したものとなっている。
【0047】
このような消泡装置81では、消泡剤収容槽84から消泡剤パイプ85を経て消泡剤を含む液体が加圧された状態で噴霧部86に供給される。噴霧部86では消泡剤を含む液体がその圧力で消泡剤パイプの小孔85aからゴムチューブ87と消泡剤パイプ85との間に滲み出し、ゴムチューブ87の先端又は後端から噴出する。消泡剤は霧状又は薄膜状となって噴出し、コンプレッサ88から供給された圧縮空気によって吹き飛ばされ、霧状の微小液滴となって圧縮空気中に浮遊する。そして、吹き出し管83bに設けられた吹き出し口83aから泥土89中に吹き出し空気泡82として吹き出される。
【符号の説明】
【0048】
1:消泡装置、 2:消泡剤収容槽、 3:消泡剤パイプ、 4:霧化パイプ、 5:コンプレッサ、 6:圧縮空気用パイプ、 8:函体、 9:吹き出し口、 9a:ノズル、
11:泥土、 12:微細気泡、 13:消泡剤を含む微小液滴、 14:吹き出し空気泡、 15:土粒子、
21:シールド機、 21a:カッターヘッド、 22:パイプ、 23:立坑、 24:第1受け槽、 25:排泥溝、 26:第2受け槽、 27:切羽、
31:混錬オーガ、 32:排泥溝、 33:たて穴、 34:泥土、 35:排泥土受け槽、 36:吹き出し空気泡、 37:バックホウ、
41:処理槽、 42:溝、 43:消泡装置、 44:混合土、 45:吹き出し空気泡、
51:消泡装置、 52:吹き出し空気泡、 53:排泥溝、 54:泥土、 58:函体、 59:吹き出し口、
61:消泡装置、 62:吹き出し空気泡、 63:排泥溝、 64:泥土、 68:函体、 69:吹き出し管、 69a:ノズル、
71:消泡装置、 72:吹き出し空気泡、 73:圧縮空気用パイプ、 73a:吹き出し口、 73b:吹き出し管、 73c:分岐管、 74:霧化パイプ、 75:消泡剤パイプ、 76:排泥溝、 77:泥土、 78:接合部、 79:コンプレッサ、
81:消泡装置、 82:吹き出し空気泡、 83:圧縮空気用パイプ、 83a:吹き出し口、 83b:吹き出し管、 83c:分岐管、 84:消泡剤収容槽、 85:消泡剤パイプ、 85a:小孔、 86:噴霧部、 87:ゴムチューブ、 88:コンプレッサ、 89:泥土
【技術分野】
【0001】
本願発明は、特殊起泡剤によって形成された微細気泡を使用して地盤を掘削したときの排泥土、又は土と固化剤と気泡とが混合された材料を用いる気泡混合軽量土工法の残土について、残留する微細気泡を破泡させる消泡方法及び消泡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルの掘削又はソイルセメントからなる地中連続壁の構築のように地盤の掘削作業を含む工事において、掘削土の粘性を下げ掘削を容易にするために掘削面に大量の水が注入される。近年は、この水の替わりに又は水とともに、起泡剤を用いて形成された多量の微細な気泡を掘削面に供給する工法が普及している。微細気泡を供給することによって掘削土の流動性を向上させるものである。
このような気泡を用いた掘削工法では、掘削に使用する水を少量に抑えることができるが、気泡を含むことによって排出土の量が増加してしまう。これにより、産業廃棄物として処理するために貯留及び輸送すべき排出土の量が増大することとなる。
【0003】
このような排出土を産業廃棄物として処理する前に気泡を消去し、排出土の量を低減する方法が、例えば特許文献1及び特許文献2に提案されている。
特許文献1には、シールドトンネルの掘削において、切羽またはチャンバ内に気泡を注入することにより、掘削土の流動性と止水性を向上させるとともに、チャンバ内での掘削土の付着を防止する方法が開示されている。この気泡シールド工法では、気泡を含んだ排出土に消泡剤を添加し、気泡を消滅させて排出土の量を低減している。
特許文献2には、掘削用安定液と気泡を注入しながら掘削機によって地盤を下方に掘削し、掘削終了後に造成用安定液を注入してソイルセメント壁を地中に構築する方法が記載されている。造成用安定液は例えば水とセメントとの混合物であるセメントミルクが用いられ、この造成用安定液に消泡剤が配合される。そして、掘削機を上下に繰り返し移動させながら掘削孔から引き揚げて造成安定液中の消泡剤を気泡と混合する。これにより、消泡作用を促進させ、排出土の量を低減している。
【0004】
一方、軟弱地盤上の盛土や斜面上の盛土を軽量とするために、土とセメント等の固化剤と水と気泡とを混合した軽量土を用いる気泡混合軽量土工法が知られている。気泡混合軽量土は、この他、ボックスカルバートや地下鉄等の地中構造物の周辺埋め戻し土として、又は擁壁や橋台の背面埋め戻し土として用いられる。これにより、構造物に作用する土圧を軽減することができる。このような気泡混合軽量土工法において、施工現場で生じた残土は産業廃棄物として搬出及び処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−348727号公報
【特許文献2】特開2009−221764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような微細気泡を用いた掘削工法では、排出した泥土の処理について次のような解決が望まれる課題がある。
特許文献1に記載のように気泡を含む排出土に消泡剤を添加する方法では、効率よく消泡するために、消泡剤の添加後十分に撹拌して、できるだけ多くの微細気泡と消泡剤とを接触させることが必要である。しかし、現場で発生する排出土は大量であるうえに粘性が高いことが多く、大規模の撹拌機と動力が必要となり消泡の費用が多大となる。
また、特許文献2に記載のソイルセメント壁の構築方法においては、掘削終了後に供給される造成用安定液に消泡剤が配合されており、掘削機の引き揚げ時に消泡が行われる。しかし、掘削用安定液及び微細気泡を注入しながら掘削を行う時の排出土中には多くの微細気泡が混入しており、掘削時の排出土は掘削孔から排出された後に消泡処理する必要がある。
その他、気泡軽量混合土工法における残土等についても、残土等が発生した現場で簡易に消泡し、体積を低減する方法が求められている。
【0007】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、泥土中に含まれる微細気泡を簡易な装置で消泡して、排出土の量を低減することを可能とする消泡方法及び消泡装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、 少なくとも水と、土と、起泡剤の使用により形成された微細気泡と、が混合された泥土中に加圧空気を吹き出す吹き出し口を設け、 該吹き出し口から消泡剤を含む微小液滴が浮遊する空気を吹き出し、 前記泥土中に次々に形成される吹き出し空気泡を浮力によって上昇させることを特徴とする消泡方法を提供する。
【0009】
この消泡方法では、消泡剤を含む微小液滴が浮遊している空気を微細気泡が混合された泥土中に吹き出し、泥土中に次から次に吹き出し空気泡として供給することができる。そして、吹き出し空気泡は浮力により泥土中をゆっくり上昇し、上昇する過程で泥土中の微細気泡に消泡剤を含む微小液滴が次々と接触し破泡する。つまり、消泡剤を含んだ吹き出し空気泡が泥土中に吹き出された位置から上面まで移動することにより、効率よく消泡剤と微細気泡とを接触させて消泡することが可能となる。したがって、簡易な装置で短時間に消泡して泥土量を低減することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の消泡方法において、 前記泥土は、勾配を有する溝内を流下させ、前記吹き出し口は、前記泥土が流下する溝内の底部付近に設けるものとする。
【0011】
この消泡方法では、消泡剤の微小液滴を含んだ空気泡が底部で泥土中に吹き出され、この泥土が溝の下流に向かって移動する。したがって、次々に上流側から流下してくる泥土中に空気泡が吹き出される。そして、溝の底部から吹き出された空気泡が泥土中を徐々に上昇する。したがって、溝を流下する泥土に対して、消泡剤を含む吹き出し空気泡が広い範囲で接触し、効率的に消泡することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の消泡方法において、 前記泥土の粘性が大きいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が大きくなるように、前記泥土の粘性が小さいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が小さくなるように、前記吹き出し口の大きさ又は吹き出し圧力を調整して、前記吹き出し空気泡の上昇速度を調整するものとする。
【0013】
泥土の粘性が大きい場合は泥土中における吹き出し空気泡の上昇が妨げられることがある。逆に、粘性が小さい場合は、吹き出し空気泡は急速に泥土中を上昇し、微細気泡に接触する機会が少なくなる。本発明の消泡方法では、上記のように泥土の粘性に応じて吹き出し空気泡の容積を変更するように吹き出し口の大きさ又は吹き出し圧力が調整される。したがって、吹き出し空気泡に作用する浮力が調整され、吹き出し空気泡が泥土中で上昇する速度が調整される。これにより、吹き出し空気泡内に浮遊している消泡剤を含む微小液滴と微細気泡とを効率よく接触させることが可能となる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の消泡方法において、 前記泥土の比重が大きいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が小さくなるように、前記泥土の比重が小さいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が大きくなるように、前記吹き出し口の大きさ又は吹き出し圧力を調整して、前記吹き出し空気泡の上昇速度を調整するものとする。
【0015】
一般に、泥土の比重が大きい場合、泥土中の吹き出し空気泡に作用する浮力は大きくなり、吹き出し空気泡は急速に上昇しようとする。また、泥土の比重が小さい場合は、吹き出し空気泡に作用する浮力が小さく、吹き出し空気泡の上昇速度は小さくなる。本発明の消泡方法では、泥土の比重に応じて吹き出し空気泡の容積が調整され、空気泡の泥土中の上昇速度が調整される。つまり、泥土の比重が大きい場合は吹き出し空気泡の容積を小さくすることにより浮力を小さくし、上昇速度を遅くして多くの微細気泡と接触するようにする。一方、泥土の比重が小さい場合は、吹き出し空気泡に浮力は作用し難くなるが、吹き出し空気泡の容積を大きくして上昇する速度を大きくする。このように泥土の比重に応じて空気泡の吹き出し口の大きさ又は吹き出し圧力を調整することにより、吹き出し空気泡を適切な速度で上昇させ多くの微細気泡と接触させることが可能となる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の消泡方法において、起泡剤によって形成された微細気泡と水又は前記微細気泡とセメントミルクを供給しながら土と攪拌混合して地表面から下方へたて穴を掘削し、 前記溝は、前記たて穴と連続するように地表面近くに掘削し、前記たて穴の掘削によって発生する泥土を該たて穴から流入させるものとする。
【0017】
この消泡方法では、掘削されるたて穴と連続した溝が地表面に掘削されるので、掘削時にたて穴からあふれ出す微細気泡と水又は微細気泡とセメントミルクが混在した掘削土を溝に流入させることができる。したがって、たて穴の掘削時に溝内を重力によって流下する排泥土中に消泡剤の微小液滴が浮遊する空気泡を吹き出し、排泥土中に混在する微細気泡を溝内で速やかに消泡することができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、 少なくとも水と土と微細気泡とが混合された泥土中に、吹き出し口から空気を吹き出す空気吹き出し手段と、 起泡剤を使用して形成された微細気泡を破壊して消泡する消泡剤を含んだ液体を霧状の微小液滴とし、前記吹き出し口から吹き出される前の空気中に前記微小液滴を浮遊させる消泡剤霧化手段と、を有することを特徴とする消泡装置を提供する。
【0019】
この消泡装置では、霧化した消泡剤を含む空気を空気吹き出し手段により泥土中に吹き出すので、泥土中に消泡剤を封入した状態の吹き出し空気泡が次から次へと生じる。この吹き出し空気泡は浮力により泥土中を徐々に上昇し、この上昇過程で泥土中の多くの微細気泡に接触し破壊する。したがって、大型の撹拌機等を用いて撹拌を行わなくても、効率的に消泡することができ、泥土の処理に費やされるコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
上記のように、本願発明に係る消泡方法及び消泡装置では、泥土中に混入している微細気泡を簡易な装置で短時間に消泡することができ、大規模な撹拌機等を使用することなく効率の良い消泡が可能となる。これにより、産業廃棄物となる泥土量の低減及び消泡に費やすコストの低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本願に係る発明の一実施形態である消泡装置及び消泡方法が用いられる気泡シールド工法を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す消泡装置が設置された状態を示す概略図である。
【図3】図2に示す消泡装置の一部を示す拡大断面図である。
【図4】図2及び図3に示す消泡装置により微細気泡が破壊される状態を示す概略図である。
【図5】本願に係る発明の第2の実施形態である消泡方法であって、ソイルセメント壁構築工法で生じる排泥土の消泡方法を示す概略図である。
【図6】図5に示す消泡方法で用いられる消泡装置が配置された状態を示す概略図である。
【図7】本願に係る発明の消泡装置及び消泡方法を気泡混合軽量土工法の残土処理に適用した例を示す概略断面図及び概略平面図である。
【図8】本願に係る発明の消泡装置の他の例を示す概略構成図である。
【図9】本願に係る発明の消泡装置の他の例を示す概略構成図である。
【図10】図9に示す消泡装置の要部を示す拡大断面図である。
【図11】本願に係る発明の消泡装置の他の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願に係る発明の一実施形態である消泡装置及び消泡方法が適用される気泡シールド工法を示す概略構成図、図2はこの消泡装置が設置された状態を示す概略図、図3はこの消泡装置の一部を示す拡大断面図である。
この消泡装置1は、気泡シールド工法によるシールドトンネルの掘削にともなって排出される泥土中の微細気泡を消滅させ、泥土の量を低減するものである。
【0023】
気泡シールド工法は、図1に示すように、シールド機21の前面に備えられたカッターヘッド21aを回転させながら切羽27の掘削を行うものであり、切羽27またはチャンバ内に特殊気泡剤でつくられた多数の微細気泡を注入する。これにより、掘削土の流動性と止水性を向上させるとともに切羽の安定を保持しながら掘進するものである。
掘削に使用された上記微細気泡は掘削土とともにベルトコンベア又はパイプ22により立坑23を経て地表面上に排出され、第1受け槽24に投入される。この第1受け槽24に投入された泥土11は、底面が傾斜するように設けられた排泥溝25を経て第2受け槽26に流し込まれる。そして、上記消泡装置1は、図2に示すように、上記排泥溝25の底部付近で泥土11中に消泡剤を含む空気を吹き込み、流下する泥土11に混在している微細気泡を破壊するものである。排泥溝25から第2受け槽26に流し込まれた泥土11は、その後最終的に処分される。
【0024】
上記消泡装置1は、消泡剤を含む微小液滴が浮遊する空気、つまり霧化された消泡剤を含んだ空気を吹き出し口から吹き出す空気吹き出し手段と、起泡剤で形成された微細気泡を消泡する消泡剤又は希釈された消泡剤を霧状の微小液滴として空気中に浮遊させる消泡剤霧化手段と、で主要部が構成されている。
【0025】
上記空気吹き出し手段は、空気を加圧し、所定圧力の圧縮空気として供給するコンプレッサ5と、このコンプレッサ5から供給される圧縮空気を泥土中に導くための圧縮空気用パイプ6と、コンプレッサ5から供給された圧縮空気に霧化した消泡剤が供給される函体8と、上記函体8に複数が設けられ、霧化した消泡剤を含んだ空気を排泥土中に吹き出す吹き出し口9と、で主要部が構成されている。
上記コンプレッサ5は、空気を圧縮するとともに圧縮空気を所定の圧力に調整する機能を備えており、圧力が調整された圧縮空気を上記圧縮空気用パイプ6から上記函体8に送り込むようになっている。
【0026】
上記函体8は、図3に示すように、内部に圧縮空気が送り込まれる箱状となっており、上記排泥溝25の上流部における底部に固定される。そして、この函体8には上記圧縮空気用パイプ6から圧力が調整された圧縮空気が送り込まれるとともに、消泡剤霧化手段によって霧化された消泡剤を含む微小液滴が吹き込まれる。したがって、圧縮空気と霧化した消泡剤とがこの函体8内で混ざり合うようになっている。
【0027】
上記吹き出し口9は、上記函体8の上面に、排泥溝25の流れ方向及び幅方向(流れ方向とほぼ直角方向)に一定の間隔をあけて分布するように複数が設けられている。そして、霧化された消泡剤を含む圧縮空気を泥土中に吹き出すものとなっている。
各吹き出し口9は、函体8に設けられた開口にノズル9aが着脱可能に装着されたものである。したがって、このノズル9aを交換することによって、ノズルの径の大きさを変更することが可能となっている。このようにノズル9aの径を変更するとともに吹き出す空気の圧力を調整することにより、排泥土の粘性や比重の大小に応じて、ノズル9aから吹き出される空気泡14の容積を変更することができるようになっている。
【0028】
上記消泡剤霧化手段は、液状の消泡剤を収容する消泡剤収容槽2と、この消泡剤収容槽2に連結され消泡剤を送り出す消泡剤パイプ3と、圧縮空気を吹き出して消泡剤を霧化する霧化パイプ4と、で主要部が構成されている。また、霧化パイプ4への圧縮空気の供給は、空気吹き出し手段の圧縮空気用パイプ6に圧縮空気を供給するコンプレッサ5を共用することができる。
上記消泡剤は、液状のもの又はこれを希釈したものを用いることができる。また、溶剤に溶融して液体としたものであっても良い。これらの消泡剤は、泥土11中に混在する微細気泡を破泡して消去するものであり、発泡させた起泡剤の種類に応じて消泡に最適な材料が選択される。
本実施の形態では、タンパク系や界面活性剤を起泡剤として微細気泡を発生させ、消泡剤としては、高級脂肪酸エステル、鉱物油、高級アルコール等を用いている。
起泡剤としては、本実施の形態で使用したもののほかに、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、カルボキシセルロース等を使用することができ、消泡剤としてはエチルアルコール等を使用することも可能である。
【0029】
上記消泡剤収容槽2は上記消泡剤を貯留し、上記消泡剤パイプ3を経て上記函体8内に消泡剤を供給するものとなっている。一方、上記霧化パイプ4は、高圧空気を先端4aから吹き出すものであり、上記消泡剤パイプ3と並列して配置されている。そして、函体8内で霧化パイプの先端4aから吹き出す高圧空気と接触する位置に消泡パイプの開口3aが設けられている。
霧化パイプ4に高圧空気が供給され高圧空気が吹き出されると消泡パイプ3の開口付近に負圧が生じ、この負圧により消泡剤パイプ3内の消泡剤が霧化パイプ4から吹き出す空気中に供給される。そして、高速で移動する空気と接触した消泡剤が吹き飛ばされ、霧状となる。消泡剤パイプ3には、消泡剤収容槽2内から負圧によって消泡剤が供給され、函体8内で連続して霧状化するものとなっている。
なお、霧化パイプ4に供給される空気の圧力は、函体8内に高速で吹き出して消泡剤を霧状とすることができる圧力であり、圧縮空気用パイプ6から供給される空気の圧力より高く設定する必要がある。また、消泡剤は消泡剤収容槽2で加圧して供給しても良い。
【0030】
次に、このような構成を有する消泡装置により泥土中に混在する微細気泡を消泡する方法について説明する。
消泡装置1の函体8は排泥溝25の底板に固定しておき、この排泥溝25に第1受け槽24から第2受け槽26に向けて泥土を流下させる。そして、泥土中に設けられた函体8からノズル9aを経て消泡剤を含む吹き出し空気泡14を吹き出す。函体8から吹き出す空気は、消泡剤霧化手段により生成された消泡剤を含む微小液滴と函体8内で混合されており、吹き出し空気泡14は消泡剤の微小液滴が浮遊した状態でノズル9aから泥土中に吹き出される。
【0031】
このようにして排泥溝25を流れる泥土中に吹き出された空気は、浮力によって泥土中を上昇し、泥土中の多数の微細気泡と接触してこれらの微細気泡を消滅させる。これらの吹き出し空気泡14を吹き出すノズル9aは、排泥溝25の幅方向に複数が配列されており、幅方向のほぼ全域で吹き出し空気泡14が泥土と接触する。また、吹き出し空気泡14は排泥溝25を流下する泥土中に次から次へと吹き出され、流下する泥土は次々に消泡剤を含む吹き出し空気泡14と接触することになる。
【0032】
図4は、消泡剤を封入した吹き出し空気泡14の上昇にともなって微細気泡12が消泡される状態を示す図である。
吹き出し空気泡14は、排泥溝25内で土粒子15、水、微細気泡12を含む泥土中を上昇し、この移動の過程で、図4(a)に示すように吹き出し空気泡14は微細気泡と接触する。そして、図4(b)示すように吹き出し空気泡14内で霧状となっている消泡剤を含む微小液滴13が次々と微細気泡12に接触する。消泡剤を含む微小液滴13が微細気泡12と接触すると微細気泡12は破壊されて吹き出し空気泡14に取り込まれる。このように次から次に接触する微細気泡12を破壊しながら吹き出し空気泡14が泥土11の上面まで上昇すると、吹き出し空気泡14は破壊されて消滅し、吹き出し空気泡中の気体は大気中に放出される。しかし、消泡剤は排泥溝25の中に残存しており、排泥溝25の中を流下して移動している泥土11とさらに接触し、微細気泡12の破壊を継続する。
【0033】
泥土中を上昇する吹き出し空気泡14は、多くの微細気泡12と接触して効率よく消泡するように、吹き出し空気泡16の上昇速度を適切に調整することができる。つまり、吹き出し空気泡14は、一つ一つの容積が空気圧又はノズル9aの開口径によって大きさを調整することができ、吹き出し空気泡14の一つ一つの容積が大きくなると作用する浮力が増大して泥土中を上昇する速度が大きくなる。
【0034】
例えば、シールドトンネルの掘削現場では、掘削にともなって排出される排泥土の粘性または比重を予め測定しておき、測定された粘性又は比重により圧縮空気用パイプ6から吹き出される空気の圧力をコンプレッサ5において調整する。また、これら粘性又は比重に応じて適切な開口径を有するノズル9aを選択し、函体8の各吹き出し口9に装着する。
泥土11の粘性が大きい場合、泥土中に形成される吹き出し空気泡14の容積が小さいと泥土中を浮上することができず停滞してしまう。一方、粘性が小さい場合は、吹き出し空気泡14の容積が大きいと上昇速度が速くなり、消泡剤を十分に微細気泡に接触させることができない。したがって、泥土の粘性の大小に応じて、圧縮空気用パイプ6に供給される空気圧又はノズル9aの大きさを適宜調整して、吹き出し空気泡14が浮力により徐々に上昇するように調整する。
【0035】
一方、泥土の比重が大きい場合は、吹き出し空気泡14へ作用する浮力が大きくなり吹き出し空気泡14が急速に上昇するので、急速な上昇を抑制するために吹き出し空気泡14の容積を小さくする。つまり、圧縮空気パイプ6に供給する圧力を小さく、又はノズル9aの大きさを小さくする。また、泥土の比重が小さい場合は、吹き出し空気泡14が泥土中で停滞するのを防止するために、圧縮空気用パイプ6に供給する圧力を大きくし、又はノズル9aを径が大きいものに交換して一つ一つの吹き出し空気泡14の容積を大きくする。
【0036】
なお、本実施の形態では、函体8内に吹き込まれる空気圧をコンプレッサ5において調整し、函体8内で空気圧は調整していないが、函体8に圧力調整弁を設ける等の手段によって圧力を調整し、適切な圧力として霧化された消泡剤を含む空気を吹き出すようにしてもよい。
また、本実施の形態では、1台のコンプレッサ5で霧化パイプ4と圧縮空気用パイプ6の双方に空気を供給したが、2台のコンプレッサにより霧化パイプ4及び圧縮空気用パイプ6に圧縮空気を供給してもよい。
【0037】
次に、図5に基づいて本願発明の第2の実施の形態を説明する。
図5は、本願発明の第2の実施形態である消泡方法であって、ソイルセメント柱列壁の構築によって生じる泥土の消泡方法を示す概略図である。
このソイルセメント柱列壁の構築工法では、混錬オーガ31の先端からセメントミルクと特殊起泡剤により発泡させた微細気泡とを吐出させながら下方にたて穴33を掘削する。供給された微細気泡のいわゆるベアリング効果により混錬オーガ31の回転抵抗を低減して効率よくたて穴33の掘削を行うものである。
掘削後は、たて穴33に硬化材であるセメントミルクと消泡剤を注入し、掘削土、セメントミルク及び消泡剤とを混合撹拌しながら混錬オーガ31をたて穴33から引き揚げる。その後、セメントミルクと掘削土が混合されたソイルセメントを養生して、ソイルセメント杭を構築する。このソイルセメント杭を柱列状に形成しソイルセメント柱壁壁とするものである。
【0038】
この工法では、図5に示すように、たて穴33の上部と連通した排泥溝32が地表面から掘削され、この排泥溝32の下流には排泥溝32よりも深い排泥土受け槽35が設けられている。そして、たて穴33の掘削時には、掘削土、セメントミルク及び微細気泡を混合した泥土34がたて穴33の上部から溢れ出し、排泥溝32に流入するようになっている。なお、この排泥溝32の底面はたて穴33に近接した位置から排泥土受け槽35に向かって徐々に深くなるように傾斜して掘削されており、排泥溝32に流れ込んだ泥土34はゆっくりと流下して排泥土受け槽35に受け入れられる。
なお、排泥溝32に流入する泥土34の量は、セメントミルクのみを注入しながら掘削する場合と比較すると、微細気泡の占める体積が大きいため増加している。
【0039】
上記消泡装置1は、泥土34が流入する上記排泥溝32の上流部における底面付近で空気泡を吹き出すように設置する。そして、泥土34中に混在している微細気泡を破壊して消泡し、産業廃棄物となる排泥土の量を低減するものである。
なお、この実施の形態で用いられる消泡装置1の構成は第1の実施形態で説明した消泡装置と同様であるので説明を省略するとともに同じ符号を付す。
【0040】
この消泡方法においても、図6に示すように排泥溝32の底面付近に設置された函体8から消泡剤を封入した圧縮空気が排泥溝32の広い範囲に吹き出され、泥土中に次から次へ吹き出し空気泡36が形成される。吹き出し空気泡36は排泥溝32の底部から吹き出され、上昇しながら下流に向かって移動するので、この移動の間で吹き出し空気泡36に封入されている消泡剤が微細気泡と接触し消泡する。
微細気泡が消泡された泥土は排泥土受け槽35に流入し、バックホウ37等で取り出して最終処分場に搬送され、処分される。
本実施の形態においても、排泥溝32の中で微細気泡を破壊して消泡してしまうので、産業廃棄物となる泥土の量を低減することが可能となる。
【0041】
この他、本発明の消泡装置及び消泡方法は、気泡混合軽量土工法の残土処理に適用することもできる。
気泡混合軽量土工法は、土とセメントと水と気泡とを混合したものを、盛土、地下構造物の周辺埋め戻し土、擁壁又は橋台の背面埋め戻し土等として用い、重量の低減及び土圧の低減等を図る工法である。上記微細気泡を含む混合土はプラントで混練され、施工現場へ搬入されるが、埋め戻し土等として使用した後の残土は産業廃棄物として処理しなければならない。この処理を行うためには体積を減量して搬出するのが望ましく、混在している気泡を消滅させ、硬化した後に搬出する。この気泡の消滅処理に本発明の消泡装置及び消泡方法を用いることができる。
【0042】
微細気泡が混在している混合土の処理は、図7(b)に平面図を示すように、処理槽41及びこれに連続する溝42を掘削し、消泡装置43は、図7(a)に示すように上記溝42内の底部から消泡剤を含む気泡を吹き出すことができるように設置する。そして、溝42の先端に残土である混合土44を投下して溝42内を処理槽41まで流下させる。消泡装置43は溝内を流下する混合土内に消泡剤を含む空気を吹き出し、次々に吹き出し空気泡45を形成して混合土内を浮力で上昇させる。これにより混合土中の気泡が破壊され、混合土の体積が減少される。
この方法でも使用する消泡装置43としては、図1から図6までに示す実施の形態と同じものを用いることができる。
【0043】
一方、消泡装置は以上に説明したものに限定されるものではなく、上記気泡シールド工法、ソイルセメント柱列壁の構築工法及び気泡混合軽量土工法のいずれについても他の形態の装置を用いることができ、例えば次に説明するような装置を用いることができる。
図8(a)に示す消泡装置51の構成は、函体58に装着された吹き出し口59の位置を除いて第1の実施の形態である消泡装置1の構成と同じであり、霧化された消泡剤を含んだ空気を吹き出し口から吹き出す空気吹き出し手段と、消泡剤を霧状の微小液滴として空気中に浮遊させるための消泡剤霧化手段と、で主要部が構成されている。
第1の実施の形態と同様にこの消泡装置1の函体58は排泥溝53の底面付近に配置されている。そして、吹き出し口59は、泥土の流下方向における函体58の上流側の鉛直面に、排泥溝53の幅方向に所定の間隔で複数が設けられている。
したがって、霧化された消泡剤を含む空気は、排泥溝53の上流に向かって泥土54中に吹き出され、排泥溝53の底面近くから下流に向けて徐々に上昇する吹き出し空気泡52となる。
【0044】
また、図8(b)に示すように、函体68を排泥溝63の上方に設置し、吹き出し管69を函体68から排泥溝63内の泥土64中に突き入れるように設けて、この吹き出し管69を介して底面近くから圧縮空気を吹き出すようにしてもよい。
このように構成することにより、函体68を排泥溝63の中に設置する必要がなく、吹き出し管69を取り外して先端部に設けたノズル69aを容易に交換することができる。
【0045】
図9に示す消泡装置71は、函体を設けずに圧縮空気用パイプ73を複数に分岐し、それぞれの分岐管73cに吹き出し口73aを有する吹き出し管73bが接続されている。複数の吹き出し管73bは、排泥溝76内の泥土77が流れる方向に軸線を有するように支持され、排泥溝76の幅方向及び上下方向に複数本が間隔をおいて配置されている。コンプレッサ79から供給された圧縮空気は上記圧縮空気用パイプ73から分岐管73c、吹き出し管73bを経て吹き出し口73aから泥土中に吹き出される。
また、分岐管73cのそれぞれの内部には、図10に示すように消泡剤パイプ75と霧化パイプ74とが二重管となって引き込まれており、内管である消泡剤パイプ75から供給される消泡剤を含む液体が外管である霧化パイプ74で供給される圧縮空気によって吹き飛ばされ、それぞれの分岐管73c又は吹き出し管73b内に消泡剤を含む微小液滴を浮遊させるものとなっている。そして、圧縮空気用パイプ73で供給された空気とともに吹き出し管73bに設けられた吹き出し口73aから泥土77中に吹き出され、泥土中を吹き出し空気泡72となって上昇する。
なお、この消泡装置71では、吹き出し管73bを分岐管73cとの接合部78で切り離し、交換することによって吹き出し口73aの径を変更することができるものとなっている。
【0046】
図11に示す消泡装置81は、図9に示す消泡装置71と同様に圧縮空気用パイプ83を複数に分岐し、それぞれの分岐管83cに吹き出し口83aを有する吹き出し管83bが接続されている。そして、それぞれの吹き出し管83b又は分岐管83cの内側に消泡剤霧化手段を構成する消泡剤パイプ85が引き込まれ、吹き出し管83b又は分岐管83c中を移動する空気に消泡剤の微小液滴を供給するものなっている。
消泡剤霧化手段は、消泡剤を含む液体を加圧して吐出するポンプを備えた消泡剤収容槽84と、消泡剤収容槽84から送り出された消泡剤を上記吹き出し管83b又は分岐管83cの内側に導く消泡剤パイプ85と、この消泡剤パイプ85の先端に設けられた噴霧部86とを備えている。噴霧部86は、図11(b)に示すように先端が閉じた消泡剤パイプ85の先端部における周面に複数の小孔85aを設け、この小孔85aを設けた部分を覆うようにゴムチューブ87を被覆したものとなっている。
【0047】
このような消泡装置81では、消泡剤収容槽84から消泡剤パイプ85を経て消泡剤を含む液体が加圧された状態で噴霧部86に供給される。噴霧部86では消泡剤を含む液体がその圧力で消泡剤パイプの小孔85aからゴムチューブ87と消泡剤パイプ85との間に滲み出し、ゴムチューブ87の先端又は後端から噴出する。消泡剤は霧状又は薄膜状となって噴出し、コンプレッサ88から供給された圧縮空気によって吹き飛ばされ、霧状の微小液滴となって圧縮空気中に浮遊する。そして、吹き出し管83bに設けられた吹き出し口83aから泥土89中に吹き出し空気泡82として吹き出される。
【符号の説明】
【0048】
1:消泡装置、 2:消泡剤収容槽、 3:消泡剤パイプ、 4:霧化パイプ、 5:コンプレッサ、 6:圧縮空気用パイプ、 8:函体、 9:吹き出し口、 9a:ノズル、
11:泥土、 12:微細気泡、 13:消泡剤を含む微小液滴、 14:吹き出し空気泡、 15:土粒子、
21:シールド機、 21a:カッターヘッド、 22:パイプ、 23:立坑、 24:第1受け槽、 25:排泥溝、 26:第2受け槽、 27:切羽、
31:混錬オーガ、 32:排泥溝、 33:たて穴、 34:泥土、 35:排泥土受け槽、 36:吹き出し空気泡、 37:バックホウ、
41:処理槽、 42:溝、 43:消泡装置、 44:混合土、 45:吹き出し空気泡、
51:消泡装置、 52:吹き出し空気泡、 53:排泥溝、 54:泥土、 58:函体、 59:吹き出し口、
61:消泡装置、 62:吹き出し空気泡、 63:排泥溝、 64:泥土、 68:函体、 69:吹き出し管、 69a:ノズル、
71:消泡装置、 72:吹き出し空気泡、 73:圧縮空気用パイプ、 73a:吹き出し口、 73b:吹き出し管、 73c:分岐管、 74:霧化パイプ、 75:消泡剤パイプ、 76:排泥溝、 77:泥土、 78:接合部、 79:コンプレッサ、
81:消泡装置、 82:吹き出し空気泡、 83:圧縮空気用パイプ、 83a:吹き出し口、 83b:吹き出し管、 83c:分岐管、 84:消泡剤収容槽、 85:消泡剤パイプ、 85a:小孔、 86:噴霧部、 87:ゴムチューブ、 88:コンプレッサ、 89:泥土
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水と、土と、起泡剤の使用により形成された微細気泡と、が混合された泥土中に加圧空気を吹き出す吹き出し口を設け、
該吹き出し口から消泡剤を含む微小液滴が浮遊する空気を吹き出し、
前記泥土中に次々に形成される吹き出し空気泡を浮力によって上昇させることを特徴とする消泡方法。
【請求項2】
前記泥土は、勾配を有する溝内を流下させ、前記吹き出し口は、前記泥土が流下する溝内の底部付近に設けることを特徴とする請求項1に記載の消泡方法。
【請求項3】
前記泥土の粘性が大きいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が大きくなるように、前記泥土の粘性が小さいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が小さくなるように、前記吹き出し口の大きさ又は吹き出し圧力を調整して、前記吹き出し空気泡の上昇速度を調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の消泡方法。
【請求項4】
前記泥土の比重が大きいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が小さくなるように、前記泥土の比重が小さいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が大きくなるように、前記吹き出し口の大きさ又は吹き出し圧力を調整して、前記吹き出し空気泡の上昇速度を調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の消泡方法。
【請求項5】
起泡剤によって形成された微細気泡と水又は前記微細気泡とセメントミルクを供給しながら土と攪拌混合して地表面から下方へたて穴を掘削し、
前記溝は、前記たて穴と連続するように地表面近くに掘削し、前記たて穴の掘削によって発生する泥土を該たて穴から流入させることを特徴とする請求項2、請求項3又は請求項4に記載の消泡方法
【請求項6】
少なくとも水と土と微細気泡とが混合された泥土中に、吹き出し口から空気を吹き出す空気吹き出し手段と、
起泡剤を使用して形成された微細気泡を破壊して消泡する消泡剤を含んだ液体を霧状の微小液滴とし、前記吹き出し口から吹き出される前の空気中に前記微小液滴を浮遊させる消泡剤霧化手段と、を有することを特徴とする消泡装置。
【請求項1】
少なくとも水と、土と、起泡剤の使用により形成された微細気泡と、が混合された泥土中に加圧空気を吹き出す吹き出し口を設け、
該吹き出し口から消泡剤を含む微小液滴が浮遊する空気を吹き出し、
前記泥土中に次々に形成される吹き出し空気泡を浮力によって上昇させることを特徴とする消泡方法。
【請求項2】
前記泥土は、勾配を有する溝内を流下させ、前記吹き出し口は、前記泥土が流下する溝内の底部付近に設けることを特徴とする請求項1に記載の消泡方法。
【請求項3】
前記泥土の粘性が大きいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が大きくなるように、前記泥土の粘性が小さいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が小さくなるように、前記吹き出し口の大きさ又は吹き出し圧力を調整して、前記吹き出し空気泡の上昇速度を調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の消泡方法。
【請求項4】
前記泥土の比重が大きいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が小さくなるように、前記泥土の比重が小さいときには、形成される吹き出し空気泡のそれぞれの容積が大きくなるように、前記吹き出し口の大きさ又は吹き出し圧力を調整して、前記吹き出し空気泡の上昇速度を調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の消泡方法。
【請求項5】
起泡剤によって形成された微細気泡と水又は前記微細気泡とセメントミルクを供給しながら土と攪拌混合して地表面から下方へたて穴を掘削し、
前記溝は、前記たて穴と連続するように地表面近くに掘削し、前記たて穴の掘削によって発生する泥土を該たて穴から流入させることを特徴とする請求項2、請求項3又は請求項4に記載の消泡方法
【請求項6】
少なくとも水と土と微細気泡とが混合された泥土中に、吹き出し口から空気を吹き出す空気吹き出し手段と、
起泡剤を使用して形成された微細気泡を破壊して消泡する消泡剤を含んだ液体を霧状の微小液滴とし、前記吹き出し口から吹き出される前の空気中に前記微小液滴を浮遊させる消泡剤霧化手段と、を有することを特徴とする消泡装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−36658(P2012−36658A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178588(P2010−178588)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
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