説明

消波ブロックの製造方法及び装置

【課題】大型の消波ブロックを比較的簡単に製造することができるようにする消波ブロックの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】建設用鉄筋を格子状に配設した型枠内に生コンクリートを流し込み、胴体部の上端部及び下端部それぞれに3本の脚部が突設された消波ブロックを製造する方法であって、胴体部用配筋部22と下端部用配筋部23と上端部用配筋部24を個々に用意すると共に、型枠31を組立可能に分割させて底板枠部32を含む複数個の型枠部33、34で用意し、底板枠部32上に下端部用配筋部23と胴体部用配筋部22と上端部用配筋部24を順に積み重ねて設置すると共に、該各配筋部22、23、24の積み重ねに合わせて各配筋部22、23、24の外周側面部分を分割された型枠部33、34で順に囲んで型枠31を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消波ブロックの製造方法及び装置に関するものであり、特に、大型の消波ブロックを比較的簡単に製造することができるようにした消波ブロックの製造方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、消波ブロックは、例えば港湾、海岸の防波堤や護岸の消波工及び突堤工、離岸工、根固工等において既設の支持用基礎ブロック上に多数積み重ねて設置される。従来の消波ブロックとしては、例えば断面角形の胴体部(本体中心部)の側面に棒状又はV字状等の脚部を複数の放射方向に突設したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般に、この種の消波ブロックは、胴体部の上端部に3本(又は2本)の脚部が放射方向に突設されていると共に、その胴体部2の下端部にも3本(又は2本)の脚部が放射方向に突設されている。
【0004】
この種の消波ブロックは、施工現場で型枠に生コンクリートを流し込んで成形し、出来上がった消波ブロックを既設の支持用基礎ブロック上に多数積み重ねて設置されることが多い(特許文献2参照)。
【0005】
この場合、大きい消波ブロックでは、高さが7メートル程ある。このような大型の消波ブロックでは、内部に建設用鉄筋が格子状に組まれ、その外側を例えば特許文献2で示すように型枠で囲み、その型枠内に生コンクリートを流し込んで鉄筋を埋め、コンクリートを固めることにより形成している。
【0006】
また、従来の成形手順では、建設用鉄筋は、型枠の底板枠上で胴体部と上下の配筋部を一体に組み立て、その後、配筋全体を外側から囲むようにして該底板枠上に残りの型枠部分を組み立て、その組み立てた型枠内に生コンクリートを流し込むようにして完成させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−34717号公報。
【特許文献2】特開2010−89472号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の消波ブロックを成形する方法のように、型枠の底板枠上で胴体部と上下の配筋部を一体に組み立て、その後、配筋全体を外側から囲むようにして該底板枠上に残りの型枠部分を組み立て、その組み立てた型枠内に生コンクリートを流し込む方法では、高さが7メートル程の大きな消波ブロックを形成するような場合、胴体部の上部や上端配筋部を格子状に形成する際、高い位置での作業となるので足場を必要とし、且つ、危険を伴う等、作業性が悪いという問題点があった。
【0009】
そこで、大型の消波ブロックを比較的簡単に製造することができるようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、建設用鉄筋を格子状に配設した型枠内に生コンクリートを流し込み、胴体部の上端部及び下端部それぞれに該胴体部の軸方向視で互いに120度の角度をなす3本の脚部が突設された消波ブロックを製造する方法であって、前記胴体部用の配筋部と前記上端部用の配筋部と前記下端部用の配筋部を個々に用意すると共に、前記型枠を組立可能に分割させて底板枠部を含む複数個の型枠部で用意し、前記底板枠部上に、前記下端部用の配筋部と前記胴体部用の配筋部と前記上端部用の配筋部を順に積み重ねて設置すると共に、該各配筋部の積み重ねに合わせて各配筋部の外周側面部分を前記分割された型枠部で順に囲んで前記型枠を形成するようにした、消波ブロックの製造方法を提供する。
【0011】
この製造方法によれば、胴体部用の配筋部と上端部用の配筋部と下端部用の配筋部を個々に形成して用意し、底板枠部上に下端部用の配筋部と胴体部用の配筋部と上端部用の配筋部を順に積み重ね設置すると共に、該積み重ねられた各配筋部の外周側面部分を、分割された型枠部で順に囲んで一つの型枠を形成し、その型枠内に生コンクリートを流し込んで固めると、所定の消波ブロックを形成することができる。したがって、それぞれ建設用鉄筋を格子状に組み付けて各配筋部を製作する場合、各配筋部の高さが比較的低いので、足場等を使用しなくても作業をすることができる。また、比較的高さが大きくなりやすい胴体部用の配筋部も、横に寝かせて組み立てることができるので簡単に形成できる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の消波ブロックの製造方法を実施する消波ブロックの製造装置であって、上記型枠部は、上記底板枠部と、該底板枠部上に設置される下半分の下側型枠部と、該下側型枠部上に設置される上半分の上側型枠部とでなる消波ブロックの製造装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、底板枠部上に下端部用の配筋部、胴体部用の配筋部、上端部用の配筋部を順に積み重ねて行くのに応じて、上記底板枠部上に下半分の下側型枠部を設置し、その後、該下側型枠部上に上半分の上側型枠部を設置するようにして、配筋部の組み立て状況に応じて型枠を順に組み立てることができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の消波ブロックの製造装置において、上記下側型枠部と上記上側型枠部は、上下対称形である消波ブロックの製造装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、下型枠部と上型枠部は上下対称形であるので、同じ型枠部を2つ用意しておき、上下反転させて使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明は、それぞれ建設用鉄筋を格子状に組み付けて配筋体を形成する際、足場等を使用しなくても作業をすることができる。しかも、比較的高さが大きくなりやすい胴体部用の配筋部も横に寝かせて組み立て、その後、立てて組み付けることも可能である。したがって、製作が簡単で作業性の向上が期待できる。
【0017】
請求項2記載の発明は、配筋部の組み立て状況に応じて型枠を順に組み立て行くことができ、さらに製作作業が簡単になり作業性の向上が図れる。
【0018】
請求項3記載の発明は、下型枠部と上型枠部を別々に用意しなくても、同じ型枠部を2つ用意しておき、上下反転させて使用することができるので、型枠の制作費を半減させることができ、コストダウンが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る製造方法により作られた消波ブロックの平面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る製造方法により作られた消波ブロックの側面図。
【図3】同上消波ブロックの概略配筋構成を示す平面図。
【図4】同上消波ブロックの概略配筋構成を示す側面図。
【図5】同上消波ブロックにおける下端部用配筋部の側面図。
【図6】同上消波ブロックにおける胴体部用配筋部の側面図。
【図7】同上消波ブロックにおける上端部用配筋部の側面図。
【図8】同上消波ブロックの製造工程を工程(a)から工程(f)の順に説明する図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は大型の消波ブロックを比較的簡単に製造することができるようにするという目的を達成するために、建設用鉄筋を格子状に配設した型枠内に生コンクリートを流し込み、胴体部の上端部及び下端部それぞれに該胴体部の軸方向視で互いに120度の角度をなす3本の脚部が突設された消波ブロックを製造する方法であって、前記胴体部用の配筋部と前記上端部用の配筋部と前記下端部用の配筋部を個々に用意すると共に、前記型枠を組立可能に分割させて底板枠部を含む複数個の型枠部で用意し、前記底板枠部上に、前記下端部用の配筋部と前記胴体部用の配筋部と前記上端部用の配筋部を順に積み重ねて設置すると共に、該各配筋部の積み重ねに合わせて各配筋部の外周側面部分を前記分割された型枠部で順に囲んで前記型枠を形成するようにしたことにより実現した。
【0021】
以下、本発明の実施形態による消波ブロックの製造方法及び製造装置の好適な実施例を図1乃至図8を参照しながら詳細に説明する。
【実施例】
【0022】
図1及び図2は本発明に係る消波ブロックの製造方法及び製造装置で製造された消波ブロックを示すもので、図1はその消波ブロックの平面図、図2はその側面図である。
【0023】
図1及び図2において、消波ブロック11は、棒状の胴体部12と、該胴体部12の下端側に該胴体部12と一体に形成された下端部13と、該胴体部12の上端側に該胴体部12と一体に形成された上端部14を備えている。その胴体部12の横断面は略正六角形に形成されている。
【0024】
また、前記下端部13の外周側面には、3本の脚部15,15,15が放射方向に互いに平面視(胴体部12の上下方向)で互いに120度間隔で突設され、前記上端部14の外周側面には、3本の脚部16,16,16が放射方向に互いに平面視で互いに120度間隔で突設されている。さらに、上記3本の脚部15,15,15及び上記3本の脚部16,16,16は、それぞれ根元部分から先端部に向かって漸次縮径し、かつ、断面略六角形に形成されている。
【0025】
なお、本実施例での消波ブロック11は異位相タイプあり、前記下端部13側の脚部15,15,15は前記上端部13側の脚部16,16,16に対して60度の位相差を有しているが、本発明は異位相タイプに限定されるものではなく、同位相タイプの消波ブロックにも適用できるものである。
【0026】
図3及び図4は上記消波ブロック11の内部に配置された鉄筋の構成を概略的に示す図で、図3はその平面図、図4はその側面図である。同図において、前記消波ブロック11の鉄筋構体21は、建設用鉄筋を格子状に組み付けて所定の形状にした状態で前記胴体部12内に配設される胴体部用配筋部22と、同じく建設用鉄筋を格子状に組み付けて所定の形状にした状態で前記下端部13内に配置される下端部用配筋部23と、同じく建設用鉄筋を格子状に組み付けて所定の形状にした状態で前記上端部14内に配置される上端部用配筋部24を備えている。
【0027】
また、前記下端部用配筋部23には、格子状に組み付ける際、前記脚部15,15,15用の脚部用配筋部25,25,25が同じく格子状にして該下端部用配筋部23と一体に組み付けられ、前記上端部用配筋部24には、格子状に組み付ける際、前記脚部16,16,16用の脚部用配筋部26,26,26が同じく格子状にして該上端部用配筋部24と一体に組み付けられる。
【0028】
すなわち、これら前記胴体部用配筋部22と、前記脚部用配筋部25,25,25を一体に形成した前記下端部用配筋部23と、脚部用配筋部26,26,26を一体に形成した前記上端部用配筋部24は、それぞれ個々に独立して組み立てられ、その後から連結配置される。図5はその脚部用配筋部25,25,25を一体に組み立ててなる前記下端部用配筋部23の組み立て状態図、図6は前記胴体部用配筋部22の組み立て状態図、図7はその脚部用配筋部26,26,26を一体に組み立ててなる前記上端部用配筋部24の組み立て状態図を示す。なお、前記胴体部用配筋部22は、組み立ての際、横に寝かせた状態で組み立て、その後、縦に起こすようにすると組み立てが容易になる。
【0029】
図8は、上記消波ブロック11の製造工程を示す図であり、該消波ブロックは同図(a)から(f)の工程順で形成される。そこで、図8を用いて時用機消波ブロック11を製造する手順を次に説明する。
【0030】
なお、ここで使用する型枠31は、大きくは底板枠部32と、該底板枠部32上に組み付け配設される下側型枠部33と、該下側型枠部33上に組み付け配設される上側型枠部34とでなる。また、下側型枠部33と上側型枠部34は上下対称形である。したがって、同じ型枠部を互いに上下逆さまにし、かつ、必要により角度を水平方向に回転させて使用することができるようになっている。すなわち、異位相タイプの消波ブロック11を製造する場合は、前記上側型枠部34を前記下側型枠部33に対して60度回転させて該下側型枠部33上に該上側型枠部34を取り付け、同位相タイプの消波ブロックを製造する場合は各脚部用配筋部が対峙するようにして該下側型枠部33上に該上側型枠部34を取り付ける。
【0031】
それでは製造工程を順に説明すると、まず、施工現場または工場等において、それぞれ個々に独立して組み立てた、図5〜図7にそれぞれ示す胴体部用配筋部22と下端部用配筋部23と上端部用配筋部24を用意する。
【0032】
次いで、製造現場では、図8の工程(a)から工程(f)の順で作業を進行する。まず、工程(a)では、地面上に前記型枠31の前記底板枠部32を水平配置する。
【0033】
工程(b)では、前記下端部用配筋部23を、前記底板枠部32上の所定の位置に図示しないスペーサを介して配置する。
【0034】
工程(c)では、前記下端部用配筋部23の外周側面を囲むようにして前記底板枠部32上に前記下側型枠部33を配置し、かつ、該底板枠部32と該下側型枠部33の間を図示しないボルト・ナット等で結合する。
【0035】
工程(d)では、前記下側型枠部33の上部開口より前記胴体部用配筋部22を差し込み、かつ該胴体部用配筋部22の下部を該下端部用配筋部23内に差し込んだ状態にして、該胴体部用配筋部22を前記底板枠部32上の所定の位置に図示しないスペーサを介して配置する。また、必要に応じて該胴体部用配筋部22と下側型枠部33の間に図示しないスペーサを介装する。
【0036】
工程(e)では、前記上側型枠部34の下部開口より前記胴体部用配筋部22の上部を差し込むようにして、前記下側型枠部33の上部開口と該上側型枠部34の下部開口を合わせて該上側型枠部34を該下側型枠部33上の所定の位置に配置し、かつ、該下側型枠部33と該上側型枠部34の間を図示しないボルト・ナット等で結合する。また、必要に応じて該胴体部用配筋部22と上側型枠部34の間に図示しないスペーサを介装してガタツキを無くす。
【0037】
工程(f)では、前記上側型枠部34の上部開口より前記上端部用配筋部24を差し込み、前記胴体部用配筋部22の上部を該上端部用配筋部24内に差し込むようにして、該上端部用配筋部24を該胴体部用配筋部22上に載せる。また、必要に応じて該上端部用配筋部24と上側型枠部34の間に図示しないスペーサを介装してガタツキを無くす。
【0038】
工程(f)で前記鉄筋構体21と前記型枠31が組まれた後は、前記上側型枠部34の上部開口より生コンクリートを流し込み、該鉄筋構体21を生コンクリート内に埋め、その生コンクリートが固まるのを待つ。そして、生コンクリートが固まったら、型枠31を分解して取り出すと図1及び図2に示す前記消波ブロック11が完成する。
【0039】
したがって、本実施例の消波ブロックの製造方法では、前記胴体部用配筋部22と前記下端部用配筋部23と前記上端部用配筋部24を個々に形成して用意し、これを積み重ね合わせるとともに、各配筋部22,23,24の外周側面部分を分割された前記型枠部32,33,34で順に囲んで前記型枠31を形成し、その型枠31内に生コンクリートを流し込んで固めることにより、所定の消波ブロック11を形成することができるので、それぞれ建設用鉄筋を格子状に組み付けて各配筋部22,23,24を作る場合、各配筋部22,23,24の高さは低く、足場等を使用しなくても作業をすることができる。
【0040】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明は消波ブロックに限らず、大きな高さを有するコンクリートブロックの製造にも応用できる。
【符号の説明】
【0042】
11 消波ブロック
12 胴体部
13 下端部
14 上端部
15 脚部
16 脚部
21 鉄筋構体
22 胴体部用配筋部
23 下端部用配筋部
24 上端部用配筋部
25 脚部用配筋部
26 脚部用配筋部
31 型枠
32 底板枠部
33 下側型枠部
34 上側型枠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設用鉄筋を格子状に配設した型枠内に生コンクリートを流し込み、胴体部の上端部及び下端部それぞれに該胴体部の軸方向視で互いに120度の角度をなす3本の脚部が突設された消波ブロックを製造する方法であって、
前記胴体部用の配筋部と前記上端部用の配筋部と前記下端部用の配筋部を個々に用意すると共に、前記型枠を組立可能に分割させて底板枠部を含む複数個の型枠部で用意し、
前記底板枠部上に、前記下端部用の配筋部と前記胴体部用の配筋部と前記上端部用の配筋部を順に積み重ねて設置すると共に、該各配筋部の積み重ねに合わせて各配筋部の外周側面部分を前記分割された型枠部で順に囲んで前記型枠を形成するようにした、
ことを特徴とする消波ブロックの製造方法。
【請求項2】
上記請求項1に記載の消波ブロックの製造方法を実施する消波ブロックの製造装置であって、上記型枠部は、上記底板枠部と、該底板枠部上に設置される下半分の下側型枠部と、該下側型枠部上に設置される上半分の上側型枠部とでなることを特徴とする消波ブロックの製造装置。
【請求項3】
上記下側型枠部と上記上側型枠部は、上下対称形であることを特徴とする請求項2記載の消波ブロックの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−104213(P2013−104213A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248305(P2011−248305)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000226356)日建工学株式会社 (24)
【Fターム(参考)】