説明

消火ガス噴射器および地震警報器並びに災害警報システム

【課題】装填した小形ガスボンベを破封し、火元に向かって消火ガスを確実かつ的確に噴射し、確実な初期消火を実現するとともに、火災または所定震度の地震発生時に消火器の所在を告知し、消火器の速やかな使用と被災者の速やかな避難を促し、初期消火の実効と被災者の安全を確保し得る災害警報システムを提供すること。
【解決手段】内部に消火ガスを充填し、かつその開口部に封板33を付設したガスボンベ32を有し、封板を破封可能な破封部材44を設け、ガスボンベ32を着脱可能に取付け、内部に破封部材を移動可能に収容するガス溜37を形成したボンベホルダ35を有し、ガス溜37と外部に開口したノズル孔42とを有し、連通路を断続可能な制御弁43を有し、屋内に設置した火災警報器の警報信号を介して、音または光による告知信号を出力可能な告知器16を備えた消火ガス噴射器9である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば住宅若しくは事務所、ホテル等に設置する消火器と地震警報器並びにそれらによる災害警報システムに好適で、装填した小形ガスボンベを簡便に破封し、噴出した消火ガスの流出を一旦阻止し、消火時に火元に向かって消火ガスを確実かつ的確に噴射し、消火ガスの空費を防止して効果的かつ確実な初期消火を実現するとともに、火災または所定震度の地震発生時に消火器の所在を告知し、消火器の速やかな使用と被災者の速やかな避難を促し、初期消火の実効と被災者の安全を確保し得るようにした、消火ガス噴射器および地震警報器並びに災害警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、住宅または事務所に設置されている一般的な消火器は、大形かつ大重量で消火操作に腕力を要し、概して使用し辛いという問題があった。
このため、従来においても前記問題を解決するものとして、小形かつ軽量の簡易消火器が種々提案されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【0003】
しかし、前記消火器は噴口を火元に向けて破封する操作を要するところ、火災現場では気が動転し手元の操作に正確性を欠いて、噴口を火元に正確に向けることが難しく、その結果、破封後の噴出ガスが空費され、または火元に効果的に噴射されず、初期消火の実効を上げられない、という問題があった。
【0004】
このような問題を解決するため、出願人は、破封部材を装着した破封ホルダと、破封部材を移動可能に収容する通孔を備えたボンベホルダとを上下に離間して配置し、破封時に前記ボンベホルダを押し上げ、破封部材をガスボンベの封板に突き刺して破封可能に設ける一方、破封ホルダに前記通孔に連通する連通路と外部に開口した導孔とを形成し、前記連通路に弁棒と内弁とを備えた制御弁を取付け、該制御弁を常時は閉弁し、破封によりガスボンベから噴出した消火ガスを連通路に貯留し、消火ガスの空費を防止するとともに、消火時は操作レバ−を介して弁棒を押し下げ、内弁を作動させて制御弁を開弁し、前記貯留ガスを含む消火ガスを火元へ向けて確実に噴出し、初期消火の実効を図れる消火ガス噴射器を開発し、これを既に提案している(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
しかし、前記消火ガス噴射器は、破封ホルダやアウタ−ハウジング、プッシュロッド、ピン等を要して部品点数が多く、また構造が複雑で低廉化と小形軽量化を図り難い上に、組み付けに手間が掛かり、しかも制御弁は構造が複雑かつ高価で、消火ガス噴射器が高価になる等の問題があった。
【0006】
また、前記先行技術には、前記消火ガス噴射器の周面に告知器を取付け、屋内に設置した災害警報機の警報信号を受信し、かつ音または光の告知信号を出力可能にするとともに、前記災害警報機に、屋内に設置した火災検出センサ、または地震を検出可能な振動センサの検出信号を入力可能に設け、火災若しくは地震発生時に災害警報機の警報信号を告知器へ出力し、該告知器のスピ−カまたは警報ランプを作動させて消火ガス噴射器の所在を告知し、その速やかな使用を促して、前記事態下で発生した火災の初期消火を図るようにした災害警報システムが提案されている。
しかし、前記災害警報システムは、火災検出センサや振動センサと災害警報機との配線を要するとともに、その断線時には検出信号を入力し得ない、という問題があった。
【0007】
ところで、火災発生時に消火ガス噴射器の所在を告知する災害警報システムとして、火災発生や地震を感知可能な災害感知手段と、レ−ザを照射可能なレ−ザポインタと音声発生装置とを備えた報知手段とを有する災害警報装置を設け、該災害警報装置を天井や消火器に取付け、そのレ−ザポインタを予め消火器や非常口表示板に向けて配置し、火災や地震発生時にそれらを感知し、各レ−ザポインタから消火器や非常口表示板にレ−ザを照射し、消火器や非常口の所在を明示し、その速やかな使用と避難を図るようにしたものがある(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
しかし、前記災害警報システムは、災害警報装置が電源を内蔵し、その配線を省略できる一方、残存電源の確認とその補給を要するとともに、高価な振動センサと報知手段とを要し、その大形重量化を助長して比較的大きな設置スペ−スを要するとともに、レ−ザポインタを消火器や非常口表示板に向けて配置する作業を要して、その設置作業が面倒で手間が掛かり、災害警報装置や消火器の設置箇所が制約され、設置後の変更や移動が事実上困難または大掛かりになり、しかも災害警報装置からの警報は特定の消火器や非常口表示板に限られるため、警報の伝達範囲や告知範囲が狭く、その利用範囲が限られて、大形の建物や多数の部屋を有するホテル等での設置は保安上、難しいという問題があった。
【0009】
このような問題を解決するものとして、各部屋に設置した複数の火災警報器を有線または無線で接続し、各火災警報器を連動可能に構成するとともに、各火災警報器に、出火元を識別表示する発光表示部とブザ−等の音響警報器とを設け、何れかの火災警報器が火災を感知した際、音響警報と同時に発光表示部を作動し、床面を照射するとともに、出火元を識別表示するようにした住宅用火災警報システムが提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【0010】
しかし、前記火災警報システムは、地震の警報システムや初期消火に対応することができず、出火元や避難経路を知得後の有効な対応措置を採れない上に、その避難は足元が不十分で不安を余儀無くされる等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
特許文献1:特開平9−103512号公報
特許文献2:特開2000−189534号公報
特許文献3:特許第2890097号公報
特許文献4:特開2007−330775号公報
特許文献5:特開2003−308585号公報
特許文献6:特許第3864966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような問題を解決し、例えば住宅若しくは事務所、ホテル等に設置する消火器と地震警報器並びにそれらによる災害警報システムに好適で、装填した小形ガスボンベを簡便に破封し、噴出した消火ガスの流出を一旦阻止し、消火時に火元に向かって消火ガスを確実かつ的確に噴射し、消火ガスの空費を防止して効果的かつ確実な初期消火を実現するとともに、火災または所定震度の地震発生時に消火器の所在を告知し、消火器の速やかな使用と被災者の速やかな避難を促し、初期消火の実効と被災者の安全を確保し得るようにした、消火ガス噴射器および地震警報器並びに災害警報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、内部に消火ガスを充填し、かつその開口部に封板を付設したガスボンベと、前記封板を破封可能な尖端部を有する破封部材と、前記ガスボンベの口元部を着脱可能に取付け、その内部に前記破封部材を移動可能に収容するガス溜を形成したボンベホルダと、前記破封部材を下部に配置し、かつ前記ガス溜と外部に開口したノズル孔との連通路を断続可能な制御弁と、を備え、破封後の消火ガスを前記ガス溜に貯留可能に設ける一方、屋内に設置した火災警報器の警報信号を介して、音または光による告知信号を出力可能な告知器を備えた消火ガス噴射器において、前記連通路に制御弁を移動可能に設け、該制御弁の摺動面にノズル孔をシ−ル可能なOリングを設け、前記制御弁の移動を介して前記連通路を断続可能にするとともに、前記火災警報器から警報電波を出力可能に設け、該警報電波を前記告知器で受信し、かつ音または光による告知信号を出力可能な送受信器を備え、構造が簡単で安価に製作できる制御弁を得られるとともに、火災警報器からの警報電波を告知器で受信して告知信号を出力させ、消火ガス噴射器ないし消火器の所在を告知し、消火器の速やかな使用と被災者の速やかな避難を促し、有線式の受信に比べ消火ガス噴射器ないし消火器を住宅の多様な場所へ設置でき、かつその自由な移動を図れて設置場所の制約を解消し得るようにしている。
【0014】
請求項2の発明は、前記制御弁の上端部に操作レバ−または操作板を配置し、該操作レバ−または操作板を常時は作動不能にロックし、該ロックを解除後、前記操作レバ−または操作板を押圧作動可能に設け、前記制御弁を押し下げ可能にし、誤って制御弁を下動し破封する事態を未然に防止し得るようにしている。
請求項3の発明は、前記連通路の近接位置にノズル孔に連通する噴出誘導孔を設け、該噴出誘導孔に頸部を有する噴出弁を下方へ移動可能に付勢し、前記頸部をノズル孔と外部に連通可能に設け、前記噴出弁の下端部にピッキング片の一端部を係合可能に設けるとともに、ボンベホルダの外側に噴射ガイドを形成した外筒を配置し、該外筒に噴射レバ−の上部を上下に回動可能に連結し、該噴射レバ−の上部に前記ピッキング片の他端部を同動可能に連結し、破封後にガス溜に貯留した消火ガスの圧力に抗して行う大きな操作力を不要にし、噴射レバ−によるてこの操作によって、ガス溜に貯留した消火ガスを容易に噴出可能にしている。
【0015】
請求項4の発明は、地震の振動を検出し、地震警報を出力可能に設けるとともに、屋内に設置した消火ガス噴射器に告知器を設け、該告知器に前記地震警報を入力し、該告知器から音または光による告知信号を出力可能にした地震警報器において、筐体内部に、下端部を固定し上端部を前後左右に揺動可能に振動部材を立設し、該振動部材の上端部に磁石を備えた振り子を設置し、該振り子の近接位置に前記磁石の磁界を検出可能な近接スイッチを設け、該スイッチに警報電波を出力可能な送受信器を接続し、振り子の所定の振幅時に前記告知器へ警報電波を出力可能にし、消火ガス噴射器ないし消火器の所在を告知し、消火器の速やかな使用と被災者の速やかな避難を促すとともに、簡単な構成で所定の振動を感知し、かつ所定の震度を容易に設定可能にして、地震警報を出力可能な地震警報器を安価に得られるようにしている。
【0016】
請求項5の発明は、前記筐体内部に振動部材に沿ってアジャスティングホルダを移動可能に設け、該アジャスティングホルダの内側に振動部材を保持可能な係合溝を設け、アジャスティングホルダより上方の振動部材の実質的な長さと振動を制御して、振り子の振幅を調整するようにしている。
請求項6の発明は、前記アジャスティングホルダの移動域に臨む筐体表面に震度目盛を設け、地震警報器の検出震度を容易に設定可能にしている。
請求項7の発明は、前記アジャスティングホルダを所定の震度目盛位置に調整し、前記振り子の振幅を加減調整可能にし、地震警報器の検出震度を合理的に調整可能にしている
請求項8の発明は、前記振り子の近接スイッチ側を除く振動方向の筐体内面に、磁石に吸着可能な複数の吸着板を設け、前記振り子の一定の振幅形成時に振り子を吸着板に吸着し、振幅形成の検出の安定化と地震警報の信頼性を確保するようにしている。
【0017】
請求項9の発明は、前記振動部材は、柔軟な弾性を備えた円筒コイルバネ、板バネ、鋼線の何れかであり、振動部材を容易かつ安価に製作し得るようにしている。
請求項10の発明は、前記コイルバの中間部に粗巻きの姿勢調整部を設け、コイルバネの捩れによる倒れを防止し、振り子ないし磁石の吸着面を近接スイッチに正対させ、近接スイッチの作動の信頼性と安定性を確保するようにしている。
請求項11の発明は、前記地震警報器の相交差する外面を、部屋の天井側または床面側の相交差する壁面に密接して配置し、相交差する壁面の振動を介し地震警報器の振動検出の正確性と信頼性を得られるようにしている。
【0018】
請求項12の発明は、内部に消火ガスを充填し、かつその開口部に封板を付設したガスボンベと、前記封板を破封可能な尖端部を有する破封部材と、前記ガスボンベの口元部を着脱可能に取付け、その内部に前記破封部材を移動可能に収容するガス溜を形成したボンベホルダと、前記ガス溜と外部に開口したノズル孔との連通路を断続可能な制御弁と、を備え、破封後の消火ガスを前記ガス溜に貯留可能に設ける一方、屋内に設置した火災警報器の警報信号を介して、音または光による告知信号を出力可能な告知器を備えた消火ガス噴射器と、地震の振動を検出し、地震警報を前記告知器に出力可能な地震警報器と、を備えた災害警報システムにおいて、前記連通路に制御弁を移動可能に設け、該制御弁の摺動面にノズル孔をシ−ル可能なOリングを設け、前記制御弁の移動を介して前記連通路を断続可能にするとともに、前記火災警報器から警報電波を出力可能に設け、該警報電波を前記告知器で受信し、かつ音または光による告知信号を出力可能な送受信器を備えた消火ガス噴射器と、筐体内部に、下端部を固定し上端部を前後左右に揺動可能に振動部材を立設し、前記振動部材の上端部に磁石を備えた振り子を設置し、該振り子の近接位置に前記磁石の磁界を検出可能な近接スイッチを設け、該スイッチに警報電波を出力可能な送受信器を接続した地震警報器と、を備え、構造が簡単で安価に製作できる制御弁を得られるとともに、火災警報器からの警報電波を告知器で受信して告知信号を出力させ、消火ガス噴射器ないし消火器の所在を告知し、消火器の速やかな使用と被災者の速やかな避難を促し、有線式の受信に比べ消火ガス噴射器ないし消火器を住宅の多様な場所へ設置でき、かつその自由な移動を図れて設置場所の制約を解消し得るとともに、簡単な構成で所定の振動を感知し、かつ所定の震度を容易に設定可能にして、地震警報を出力可能な地震警報器を安価に得られるようにしている。
【0019】
請求項13の発明は、住宅の各部屋に前記火災警報器を設置するとともに、住宅の所望の部屋に前記地震警報器と消火ガス噴射器を設置し、前記火災警報または地震警報の電波を前記告知器に出力可能にし、火災発生時または地震発生時に告知器を作動して消火器の所在を告知し、消火器の速やかな使用と被災者の速やかな避難を促し、初期消火の実効と被災者の安全を確保し得るようにしている。
請求項14の発明は、前記地震警報器に検出震度を設定し、該設定震度検出時に地震警報電波を出力可能にし、被災者の速やかな避難を促し、初期消火の実効と被災者の安全を確保するようにしている。
請求項15の発明は、前記火災警報器と地震警報器から互いに周波数の異なる警報電波を前記告知器へ出力し、該告知器から互いに異なる音または光の告知信号を出力可能にし、火災発生と地震発生を識別できる警報を出力し、告知の実効を図るようにしている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明は、前記連通路に制御弁を移動可能に設け、該制御弁の摺動面にノズル孔をシ−ル可能なOリングを設け、前記制御弁の移動を介して前記連通路を断続可能にするとともに、前記火災警報器から警報電波を出力可能に設け、該警報電波を前記告知器で受信し、かつ音または光による告知信号を出力可能な送受信器を備えたから、構造が簡単で安価に製作できる制御弁を得られるとともに、火災警報器からの警報電波を告知器で受信して告知信号を出力させ、消火ガス噴射機ないし消火器の所在を告知し、消火器の速やかな使用と被災者の速やかな避難を促し、有線式の受信に比べ消火ガス噴射器を住宅の多様な場所へ設置でき、かつその自由な移動を図れて設置場所の制約を解消することができる。
【0021】
請求項2の発明は、前記制御弁の上端部に操作レバ−または操作板を配置し、該操作レバ−または操作板を常時は作動不能にロックし、該ロックを解除後、前記操作レバ−または操作板を押圧作動可能に設け、前記制御弁を押し下げ可能にしたから、誤って制御弁を下動し破封する事態を未然に防止することができる。
請求項3の発明は、前記連通路の近接位置にノズル孔に連通する噴出誘導孔を設け、該噴出誘導孔に頸部を有する噴出弁を下方へ移動可能に付勢し、前記頸部をノズル孔と外部に連通可能に設け、前記噴出弁の下端部にピッキング片の一端部を係合可能に設けるとともに、ボンベホルダの外側に噴射ガイドを形成した外筒を配置し、該外筒に噴射レバ−の上部を上下に回動可能に連結し、該噴射レバ−の上部に前記ピッキング片の他端部を同動可能に連結したから、破封後にガス溜に貯留した消火ガスの圧力に抗して行う大きな操作力を不要にし、噴射レバ−によるてこの操作によって、ガス溜に貯留した消火ガスを容易に噴出することができる。
【0022】
請求項4の発明は、筐体内部に、下端部を固定し上端部を前後左右に揺動可能に振動部材を立設し、該振動部材の上端部に磁石を備えた振り子を設置し、該振り子の近接位置に前記磁石の磁界を検出可能な近接スイッチを設け、該スイッチに警報電波を出力可能な送受信器を接続し、振り子の所定の振幅時に前記告知器へ警報電波を出力可能にしたから、消火ガス噴射器ないし消火器の所在を告知し、消火器の速やかな使用と被災者の速やかな避難を促すとともに、簡単な構成で所定の振動を感知し、かつ所定の震度を容易に設定可能にして、地震警報を出力可能な地震警報器を安価に得られる効果がある。
請求項5の発明は、前記筐体内部に振動部材に沿ってアジャスティングホルダを移動可能に設け、該アジャスティングホルダの内側に振動部材を保持可能な係合溝を設けたから、アジャスティングホルダより上方の振動部材の実質的な長さと振動を制御して、振り子の振幅を調整することができる。
【0023】
請求項6の発明は、前記アジャスティングホルダの移動域に臨む筐体表面に震度目盛を設けたから、地震警報器の検出震度を容易に設定することができる。
請求項7の発明は、前記アジャスティングホルダを所定の震度目盛位置に調整し、前記振り子の振幅を加減調整可能にしたから、地震警報器の検出震度を合理的に調整することができる。
請求項8の発明は、前記振り子の近接スイッチ側を除く振動方向の筐体内面に、磁石に吸着可能な複数の吸着板を設けたから、前記振り子の一定の振幅形成時に振り子を吸着板に吸着し、振幅形成の検出の安定化と地震警報の信頼性を確保することができる。
【0024】
請求項9の発明は、前記振動部材は、柔軟な弾性を備えた円筒コイルバネ、板バネ、鋼線の何れかであるから、振動部材を容易かつ安価に製作することができる。
請求項10の発明は、前記コイルバの中間部に粗巻きの姿勢調整部を設け、コイルバネの捩れによる倒れを防止し、振り子ないし磁石の端面を近接スイッチに正対させ、近接スイッチの作動の信頼性と安定性を確保することができる。
請求項11の発明は、前記地震警報器の相交差する外面を、部屋の天井側または床面側の相交差する壁面に密接して配置し、相交差する壁面の振動を介して地震警報器の振動検出の正確性と信頼性を得られる効果がある。
【0025】
請求項12の発明は、連通路に制御弁を移動可能に設け、該制御弁の摺動面にノズル孔をシ−ル可能なOリングを設け、前記制御弁の移動を介して前記連通路を断続可能にするとともに、前記火災警報器から警報電波を出力可能に設け、該警報電波を前記告知器で受信し、かつ音または光による告知信号を出力可能な送受信器を備えた消火ガス噴射器と、筐体内部に、下端部を固定し上端部を前後左右に揺動可能に振動部材を立設し、前記振動部材の上端部に磁石を備えた振り子を設置し、該振り子の近接位置に前記磁石の磁界を検出可能な近接スイッチを設け、該スイッチに警報電波を出力可能な送受信器を接続した地震警報器と、を備えたから、構造が簡単で安価に製作できる制御弁を得られるとともに、火災警報器からの警報電波を告知器で受信して告知信号を出力させ、消火ガス噴射器ないし消火器の所在を告知し、消火器の速やかな使用と被災者の速やかな避難を促し、有線式の受信に比べ消火ガス噴射器ないし消火器を住宅の多様な場所へ設置でき、かつその自由な移動を図れて設置場所の制約を解消し得るとともに、簡単な構成で所定の振動を感知し、かつ所定の震度を容易に設定可能にして、地震警報を出力可能な地震警報器を安価に得られる効果がある。
【0026】
請求項13の発明は、住宅の各部屋に前記火災警報器を設置するとともに、住宅の所望の部屋に前記地震警報器と消火ガス噴射器を設置し、前記火災警報または地震警報の電波を前記告知器に出力可能にしたから、火災発生時または地震発生時に告知器を作動して消火器の所在を告知し、消火器の速やかな使用と被災者の速やかな避難を促し、初期消火の実効と被災者の安全を確保することができる。
請求項14の発明は、前記地震警報器に検出震度を設定し、該設定震度検出時に地震警報電波を出力可能にし、被災者の速やかな避難を促し、初期消火の実効と被災者の安全を確保することができる。
請求項15の発明は、前記火災警報器と地震警報器から互いに周波数の異なる警報電波を前記告知器へ出力し、該告知器から互いに異なる音または光の告知信号を出力可能にしたから、火災発生と地震発生を識別できる警報を出力し、告知の実効を図ることができる
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を適用した住宅の災害警報システムにおける火災発生時の通報状況を示す説明図である。
【図2】本発明を適用した住宅の災害警報システムにおける地震発生時の通報状況を示す説明図である。
【図3】前記災害警報システムに適用した消火ガス噴射器の破封前の状況を示す正面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図5】前記消火ガス噴射器から告知器を取外して示す斜視図である。
【0028】
【図6】本発明を適用した消火ガス噴射器の破封時の状況を示す断面図である。
【図7】本発明を適用した消火ガス噴射器の破封後の消火ガス噴出状況を示す断面図である。
【図8】本発明を適用した地震警報器の設置状況を示す正面図である。
【図9】図8の右側面図である。
【図10】本発明を適用した地震警報器の内部構造を示す正面図である。
【0029】
【図11】図10のB−B線に沿う拡大断面図である。
【図12】本発明を適用した地震警報器の設置状況を示す斜視図で、(a)は部屋の天井側壁面における設置状況を示し、(b)は部屋の床面側における設置状況を示し、(c)は部屋の中高側壁面における設置状況を示している。
【図13】前記災害警報システムに適用した消火ガス噴射器の他の設置状況を示し、これに手動充電機能を備えた避難用電灯を並置した状況を示す正面図である。
【図14】図13のC−C線に沿う断面図である。
【図15】本発明の災害警報システムに適用した他の消火ガス噴射器の破封前の状況を示す拡大断面図である。
【0030】
【図16】前記他の消火ガス噴射器の破封時の状況を示す拡大断面図である。
【図17】前記他の消火ガス噴射器の破封後の消火ガス噴射状況を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を小形の消火ガスボンベを使用した住宅若しくは事務所、ホテル等に設置した、小形軽量の消火ガス噴射器に適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図11において1は二階建ての住宅で、各階に複数の部屋2〜7が設けられ、その各部屋2〜7にドア8が内外に開閉可能に設けられ、各部屋2〜7と外側の廊下若しくは通路(図示略)とが連通している。
【0032】
前記各部屋2〜7に、消火ガス噴射器9,10または汎用の消火器11と、地震警報器12とが適所に設置され、このうち消火ガス噴射器9,10と消火器11とは移動可能に設置され、地震警報器12はドア8付近の床面または壁面に固定して設置されている。
【0033】
このうち、前記消火ガス噴射器9は後述する構造に構成され、また消火ガス噴射器10は長短二つの筒体を連結して棒状に構成され、これを壁面に着脱可能に取付けていて、消火時にこれを取り外し、短小の筒体を回動して軸方向へ移動し、長尺の筒体に収容した一または複数の小形の消火ガスボンベを破封して、先端の噴口から消火ガスを噴出可能にしている。前記消火ガス噴射器10の詳細は、特開2007−159792号公報に開示されている。
【0034】
また、前記各部屋2〜7の天井に、熱センサおよび/または煙センサ(図示略)を内蔵した火災警報器13が設置され、その内側または外側に送受信器14が設けられ、この実施形態では火災警報器13に送受信器14を外付けして取付けている。
前記火災警報器13は、前記センサによる火災感知時、内蔵した送受信制御部(図示略)から検出信号をブザ−(図示略)へ出力し、該ブザ−を鳴動するとともに、送受信制御部から前記検出信号を送受信器14へ出力し、該送受信器14から警報信号、この場合は警報電波を出力可能にしている。
【0035】
前記警報電波は、各部屋2〜7の火災警報器13の送受信器14と、監理室である部屋2に設置した送受信制御部を有する中央制御装置15と、消火ガス噴射器9,10と消火器11に取付けた後述する告知器16〜18とに、入力可能にされている。
前記中央制御装置15は、火元の部屋の送受信器14から検出信号を入力されて火元の部屋を認識し、所轄の消防署へ出火情報を自動的に通報可能にしている。
【0036】
図中、19は中央制御装置15のモニタ、20は出火元である電気若しくはガススト−ブ、21〜23は告知器16〜18の周面に装着した取付バンドで、柔軟かつ適宜な弾性を備え、前記消火ガス噴射器9,10、消火器11の周面に簡便に着脱可能にされている
【0037】
前記告知器16〜18は、地震警報器12と火災警報器13からの警報信号を識別して受信可能な受信器(図示略)を内蔵し、受信後、ブザ−52等の警報器または後述する音声ガイドと、告知ランプ53を介して、火災発生および/または地震発生を告知するとともに、前記音または光を介して消火ガス噴射器9の所在を告知し、その迅速な使用を促すようにしている。
この場合、ブザ−52と告知ランプ53、音声ガイドは、火災発生と地震発生とで音色、告知情報または照射光色を相違させ、火災発生と地震発生とを峻別して認識可能にしている。
【0038】
前記告知器16〜18は録音機(図示略)を内蔵し、地震警報器12または火災警報器13からの警報電波を受信した際、録音機(図示略)を始動して対応する音声ガイドを実行可能にしている。
すなわち、前記音声ガイドは火災発生時と地震発生時の二種類設けられ、地震発生の際は、例えば「地震が発生しました。安全な場所に避難して下さい。」を2〜3回作動可能に設定され、火災発生の際は、例えば「火災が発生しました。安全な場所に避難して下さい。」を2〜3回作動可能に設定され、これらを地震警報器12または火災警報器13からの信号入力によって始動可能にされている。
【0039】
前記告知器16〜18は、避難または消火時に、消火ガス噴射器9,10、消火器11から取り外して避難者の腕等に取付け、避難者の迅速かつ簡単な救援を可能にしている。
その際、告知器16〜18または取付バンド21〜23、更にはケ−ス24の一部または全面に蛍光塗料を塗布し、若しくは蛍光部材を付設すれば、夜間における消火ガス噴射器9や告知器16〜18の発見が容易になる。
【0040】
前記消火ガス噴射器9は、略中空筒状の合成樹脂製のケース24で表面を被覆され、これは後述する噴射ガイドの中心部を縦方向に二つ割り成形した一対のカットケース24aを接合して構成され、その下端部周面にネジ部25が形成され、該ネジ部25に有底のキャップ26が取付けられている。
【0041】
前記ケース24の上端部に開口部27が形成され、該開口部27に操作レバー28が上下に回動可能に取付けられている。前記操作レバー28は開口部27と略等幅の合成樹脂板で構成され、その一端に突設したピン29を、ケース24に形成した縦長の長孔30に摺動可能に挿入し、この他端部をケ−ス24の外側後方に突出している。
【0042】
図中、28aは操作レバ−28の下面中央部に突設した係合凸部で、後述する制御弁の上端部と係合可能に配置され、該係合凸部28aに安全ピン31が差し込まれている。
28bは操作レバ−28の他端部に形成した凹状の手掛け部で、ケ−ス24の後方に突出している。
【0043】
前記安全ピン31はケ−ス24と操作レバ−28の中央部を貫通して差し込まれ、その一端の把持部(図示略)をケ−ス24の外側に突出して配置され、常時は操作レバ−28の押圧操作を不能にし、誤った破封を阻止可能にする一方、前記把持部(図示略)を介し安全ピン31を引き抜いた際、操作レバ−28の押圧操作を可能にしている。
【0044】
前記ケース24の内部に鋼板製の小形のガスボンベ32が収容され、その底部をキャップ26内に収容していて、該ガスボンベ32は消火ガスとして、内部に約4MPaの二酸化炭素が充填され、その上端の開口部に封板33を気密にシールしている。
前記ガスボンベ32の口元部周面にネジ部34が形成され、該ネジ部34をボンベホルダ35のネジ孔36にねじ込んで取付けている。
【0045】
前記ボンベホルダ35はアルミニウムダイカストによって円筒状に形成され、その下端部に前記ネジ孔36が開口されている。前記ネジ孔36の上方に、ガス溜37とバルブ孔38、および通孔39とが互いに連通して形成され、それらは内径を順次縮径して形成されている。
【0046】
前記ボンベホルダ35の中高部周面に、ケ−ス24に設けた噴射ガイド40に連通する噴口41が形成され、該噴口41の底部にノズル孔42が形成され、該ノズル孔42が前記ガス溜37に連通している。
【0047】
前記バルブ孔38に制御弁43が摺動可能に挿入され、その上端部をボンベホルダ35の上面に出没可能に配置し、その突出時に前記係合凸部28aと係合可能にされている。
前記制御弁43の下端部に破封部材である針管44が突設され、その尖端部44aを封板33の直上に配置している。この場合、針管44は必ずしも管状に構成する必要はない
【0048】
前記制御弁43は略段付きの棒状に形成され、その大径部の周面の上下位置に少なくとも二つのOリング45,46を装着し、該Oリング45,46を介してバルブ孔38とノズル孔40との気密を保持可能にしている。
【0049】
前記制御弁43の下端部と封板33との間に、バルブスプリング47が介挿され、該スプリング47の弾性を介して制御弁43を上方に付勢し、該制御弁43の中間部に形成した段部43aを通孔39の下側開口縁に係合可能にしている。
【0050】
前記制御弁43は常時は、下側に配置したOリング46をノズル孔42の内側口縁部に位置付け、該ノズル孔42を閉塞可能にしており、操作レバ−28の押圧操作による封板33の破封時は、前記長孔30によって操作レバ−28ないし制御弁43の下動変位を規制し、上側に配置したOリング45をノズル孔42の内側口縁部に位置付け、該ノズル孔42を閉塞可能にしている。
【0051】
そして、破封後の操作レバ−5の押圧操作による消火ガスの噴出時、Oリング45,46をノズル孔42の内側口縁部の上下に位置付け、かつ下側のOリング46をガス溜37側に位置付けて、該ガス溜37をノズル孔42に連通させ、ノズル孔42から消火ガスを火元へ噴出可能にしている。
図中、47はボンベホルダ35の上面に形成した凹部で、該凹部47と操作レバ−28との間にレバ−スプリング48が介挿され、該スプリング48の弾性を介して操作レバ−28を上方へ付勢している。
【0052】
49はケ−ス24の上部に設けLED等の灯具で、常時はOFFされ、操作レバ−28の押圧操作による破封時に、端子(図示略)を接触させてONされ、破封後、前記端子の接触状態を保持して、前記ON状態を維持可能にされている。
図中、50はガス溜37の下端部と封板33との間に配置したOリング、51は破封された封板33の封孔である。この他、図中、54は操作レバ−28を操作する手指、55はノズル孔42から外部へ噴出した消火ガスである。
【0053】
前記地震警報器12は小形の箱形に形成され、これは矩形の本体56とカバ−57の端縁を接合して組み付けられ、本体56の上側にLEDの警報ランプ58が設けられ、下側にブザ−等の警報器59とそれらの電源60が配置され、該電源60のスイッチ61が基板62上に取付けられ、その操作部が地震警報器12の下部側方に突出している。
この場合、電源60に住宅内の商用電源を用いれば、地震警報器12への内蔵を省略し得る。
【0054】
前記地震警報器12の筐体内のスイッチ61と他側端部の基板62上に、位置ないし振動検出センサである磁気形近接スイッチのリ−ドスイッチ63が配置され、該スイッチ63の側方に縦長の凹孔64,65が形成されている。図中、63aはリ−ド端子で、電源60に接続されている。
【0055】
前記凹孔64,65は、本体56とカバ−57の接合部に対向して形成され、該凹孔64,65の内面のリードスイッチ63側を除く三方に、吸着板66〜68が取付けられ、該吸着板66〜68の内側に被検体である振り子69が前後左右に揺動自在に設けられている。
【0056】
前記振り子69は、所定の重量を有する真鍮等の非磁性材で形成され、該振り子69に磁石70が取付けられ、該磁石70の磁界を検出することによって、振り子69の位置を検出し、リ−ドスイッチ63をON・OFF可能にしている。
【0057】
前記振り子69は、頸部(図示略)をバネ71の上端部に嵌合して取付けられ、該バネ71の下端部は凹孔64,65の底部に台座を介して設置され、地震の振動を前記バネ71に伝播させて前後左右へ揺動自在に設けられている。
実施形態では前記バネ71をコイルバネで構成しているが、柔軟な弾性を有するピアノ線や板バネで構成することも可能である。
【0058】
図中、71aはバネ71の中間部に設けた姿勢調整部で、コイルピッチを租巻きに形成してバネ71の捩れ方向への倒れを防止し、その直立姿勢を促して、磁石70の端面をリ−ドスイッチ63と平行に対向配置し、リ−ドスイッチ63による磁界の検出を正確に行なうとともに、前記姿勢調整部71aによって、バネ71の剛性ないし腰を強化し、コイルの軸方向と直交方向への振動を抑制可能にしている。
【0059】
前記振り子69は、リ−ドスイッチ63の軸方向と直交方向に近接離反動可能に設けられ、常時は振り子69の一端面がリ−ドスイッチ63に近接して配置され、リ−ドスイッチ63をOFF可能にしている。
そして、地震感知時にバネ71の振動に連動して振り子69が前後左右へ揺動し、リ−ドスイッチ63から一定距離離間して吸着板66〜68に吸着され、当該離間位置を保持され、かつ当該位置の磁石70の磁界を検出されて、リ−ドスイッチ63のONを維持可能にしている。
【0060】
前記リ−ドスイッチ63のONに伴い、ブザ−59を鳴動させ、警報ランプ58を点灯若しくは点滅し、同時に送受信器72を作動して、該送受信器72から警報信号である警報電波を発信可能にしている。
【0061】
前記警報電波は、火災警報器13に設置した送受信器14から発信する警報電波と周波数を異に設定され、該警報電波を消火ガス噴射器9,10と消火器11の各告知器16〜18と、中央制御装置15の送受信制御部へ入力可能にしている。
【0062】
前記地震警報器12の側端部の切欠溝12aに、震度設定摘み73が上下に移動可能に設けられ、その設定位置を保持可能にされていて、該設定摘み73の外側にガイド溝74,74が設けられ、該ガイド溝74,74が本体56とカバ−57の各端部に摺動可能に嵌合している。
【0063】
前記地震警報器12の筐体内に、震度設定摘み73と一体のアジャスティングホルダ75が突設され、該アジャスティングホルダ75に形成した凹溝76内にバネ71が係合可能に収容され、バネ71の中間部を支持するとともに、アジャスティングホルダ75より上方のバネ71を片持ち的に支持し、振り子69の揺動を抑制可能にしている。
【0064】
図中、77は震度設定摘み73の外面に設けた指示目盛、78は本体56の外面に設けた震度目盛で、該震度目盛78に対応して振り子69の揺動を調整可能にしている。
前記地震警報器12は、その設置前に感知震度を設定され、この設定は震度設定摘み73を上方へ移動し、その指示目盛77を所望の震度目盛78に合致して行なわれる。
このようにすると、振り子69を支持するバネ71の中間部がアジャスティングホルダ75によって支持され、振り子69の実質的な振動長さが短縮されて、振り子69の振幅が抑制される。
【0065】
この場合、振り子69から吸着板66〜68までの距離は一定であり、振り子69の実質的な振動長さが短縮されるほど、振り子69の振幅は幾何学的に小さくなる。
したがって、アジャスティングホルダ75より上方のバネ71が振動し、振り子69が吸着板66〜68に吸着されるためには、それだけ上方のバネ71が大きく振動する必要がある。
それゆえ、振り子69が吸着板66〜68に吸着されるためには、バネ71に大きな振動を要することになり、震度目盛78は上方位置ほど高震度に設定されている。
【0066】
一方、感知震度の設定には合理的な基準を要し、その設定基準として、例えば火災発生の蓋然性、建物の破壊の蓋然性、避難の安全限界、気象庁による地震情報等を、消防および災害予防の見地から総合的に考慮して、感知震度を合理的に設定している。
【0067】
この他、79は壁面に取付けた略コ字形のホルダ金具で、屈曲弾性を介して地震警報器12を保持可能にしている。
なお、この実施形態では火災警報器13と消火ガス噴射器9,10、消火器11、地震警報機12を室内に設置しているが、室内の他に廊下や通路に設置してもよく、そのようにすることで火災検出や地震感知、および消火と避難の実効を図れる。
【0068】
このように構成した本発明の消火ガス噴射器は、制御弁43に直接、針管44を取付けて破封ホルダを省略し、従来のガス噴射器のようなアウタ−ハウジングやピン、プッシュロッド、ケ−ス24の内部上方にボンベホルダ35のみを配置しているから、部品点数が低減し構成が簡潔になって、それらの組み付けが容易になり、その小形軽量化と低廉化を図れる。
【0069】
前記消火ガス噴射器9は、ケ−ス24内のボンベホルダ35にガスボンベ32をねじ込み、ケ−ス24の下部にキャップ26をねじ込んでガスボンベ32を装填後、ケ−ス24の周面に取付バンド21を介して告知器16を取付ける。そして、この消火ガス噴射器9を住宅1の所望の部屋3,6に立設して設置し、その告知器16を部屋3,6の内側に向けて置く。
この場合、火災警報器13の送受信器14からは警報電波が出力されるから、該電波を受信する告知器16ないし消火ガス噴射器9の設置位置を制約されることはない。
【0070】
同様に、他の消火ガス噴射器10も筒内に所定の消火ガスボンベ(図示略)を装填し、その周面に取付バンド22を介して告知器17を取付け、この消火ガス噴射器10を住宅1の所望の部屋2,7の壁面に立位状態で設置し、その告知器17を部屋2,7の内側に向けて置く。
更に、汎用の消火器11も筒内に所定の消火ガスボンベ(図示略)を装填し、その周面に取付バンド23を介して告知器18を取付け、この消火器11を住宅1の所望の部屋4,5に立設して設置し、その告知器18を部屋4,5の内側に向けて置く。この状況は図1のようである。
【0071】
こうして設置した消火ガス噴射器9,10および消火器11のうち、消火ガス噴射器9は、消火操作前はノズル孔42の内側口縁部にOリング42が位置して前記口縁部を閉塞し、ガス溜37ないしバルブ孔38とノズル孔42とが遮断されている。
また、バルブ孔38に挿入した制御弁43が、バルブスプリング47によって上方へ付勢され、その上端部がボンベホルダ35の上面から突出して、操作レバ−28の係合凸部28aに係合している。
【0072】
更に、前記操作レバー28中央部に安全ピン31が差し込まれ、ピン29が長孔30の上端に係合して作動を阻止され、また針管44が封板33の上方に位置して、その破封操作を待機している。この状況は図4のようである。
【0073】
一方、地震警報器12は、警報ランプ58、ブザ−59、電源60、リ−ドスイッチ63、振り子69、送受信器72を備え、これらをコンパクトに組み付け、小形軽量に構成している。
しかも、地震の感知部を安価なリ−ドスイッチ63と、磁石70を備えた振り子69を用いて構成しているから、高価で精密な機器を用いて構成する従来のものに比べて、構成が簡単で、これを容易かつ安価に製作できる。
【0074】
前記地震の感知部は、リ−ドスイッチ63と磁石70を備えた振り子69とを近接して配置し、該振り子69を凹孔64,65内で前後左右に揺動自在に支持し、その三方の等距離位置に吸着板66〜68を配置して、振り子69の揺動変位を確実に検出し、検出後は振り子69を吸着板66〜68に吸着させて、当該変位を保持し安定した検出と警報の信頼性を得られるようにしている。
【0075】
前記地震警報器12は、その設置前に感知震度を設定して置く必要があり、その場合は震度設定摘み73を上方へ移動し、その指示目盛77を所望の震度目盛78に合致して行なう。
このようにすると、振り子69を支持するバネ71の中間部がアジャスティングホルダ75によって支持され、振り子69の実質的な振動長さが短縮されて、振り子69の振幅が抑制される。
【0076】
この場合、振り子69から吸着板66〜68までの距離は一定であり、振り子69の実質的な振動長さが短縮されるほど、振り子69の振幅は幾何学的に小さくなるから、振り子69が振動して吸着板66〜68に吸着されるためには、それだけ上方のバネ71が大きく振動する必要がある。
それゆえ、振り子69が吸着板66〜68に吸着されるためには、バネ71に大きな振動を要することになり、震度目盛78は上方位置ほど高震度に設定されている。
【0077】
一方、感知震度の設定には合理的な基準を要し、その設定基準として、例えば火災発生の蓋然性、建物の破壊の蓋然性、避難の安全限界、気象庁による地震情報等を、消防および災害予防の見地から総合的に考慮して、感知震度を合理的に設定している。
実施形態では感知震度を震度「5」に設定しており、その設定に際しては、指示目盛77を震度目盛78の「5」に移動し、その設定位置を適宜手段で保持する。
【0078】
こうして感知震度を設定した地震警報器12を、各部屋2〜7のドア8付近の壁面にホルダ金具79を介して固定し、かつこれを床面に設置する。この状況は図1および図9のようである。
【0079】
前記地震警報器12は、上端部に警報ランプ58が突出し、部屋の内側に警報器59を向けて設置され、この内部の中間位置にアジャスティングホルダ75が震度5の位置で固定され、バネ71と振り子69を保持している。
前記振り子69はリ−ドスイッチ63に近接して配置され、常時は磁石70の磁力をリ−ドスイッチ63に作用して、該スイッチ63をOFFしている。したがって、常時は警報器59と警報ランプ58と送受信器72は作動しない。
【0080】
また、各部屋2〜7の天井に火災警報器13が取付けられ、これらは互いにワイヤレス接続され、配線の面倒を解消している。前記火災警報器13は公知のものが使用され、その外側に送受信器14を外付けし、既設および新設の火災警報器13に設置可能にしている。
【0081】
このような状況の下で住宅1の何れかの部屋、実施形態では部屋6で火災が発生すると、火災の熱または煙を火災警報器13に内蔵した温度センサまたは煙センサが検出し、その検出信号を火災警報器13に内蔵したブザ−(図示略)と送受信制御部へ出力する。
このため、部屋6に設置した火災警報器13のブザ−(図示略)が鳴動し、火災発生を告知するとともに、送受信制御部から送受信器14へ信号を出力し、該送受信器14から各部屋2〜7へ警報電波信号が発信される。
【0082】
前記警報電波信号は、各部屋2〜5,7の火災警報器13に内蔵した送受信制御部へ入力され、該制御部からブザ−(図示略)へ入力されて、各ブザ−(図示略)を鳴動するとともに、各部屋2〜5,6に設置した消火ガス噴射器9,10、および消火器11の各告知器16〜18へ入力され、各告知器16〜18の警報ランプ53を点滅するとともに、警報器52を鳴動させ、また録音機(図示略)を始動させて音声ガイドを実行させる。
【0083】
前記音声ガイドは、「火災が発生しました。安全な場所に避難して下さい。」を2〜3回繰り返し、各部屋2〜7の住人に音および光を介して火災の発生を告知し、避難を促すとともに、各部屋2〜5,6に設置した消火ガス噴射器9,10、消火器11の所在を前述のように光または音で告知し、それらの速やかな使用と初期消火を促す。
また、前記警報電波信号は部屋2に設置した中央制御装置15へ入力され、該制御装置15から所轄の消防署へ火災発生を通報し、消火体制を整える。
【0084】
こうして各部屋2〜7の住人は、各部屋に設置した火災警報器13と、消火ガス噴射器9,10、消火器11の各告知器16〜18の警報によって、火災の発生を確実かつ速やかに知り得るから、速やかな避難と、消火ガス噴射器9,10および消火器11による速やかな初期消火体制を形成でき、住人の安全と初期消火を速やかに図れる。
【0085】
このような状況の下で、消火ガス噴射器9を用いて消火する際は、把持部(図示略)を介して安全ピン31を引き抜き、操作レバ−28のロックを解除して、該操作レバ−28の上部中央をレバ−スプリング48の弾性に抗して押し下げる。
【0086】
このようにすると、操作レバ−28がピン29を介し長孔30に沿って略水平に下動し、制御弁43の上端部を係合凸部28aで押圧して、制御弁43をバルブスプリング47の弾性に抗して押し下げる。
このため、針管44が制御弁43に同動し、その尖端部44aが封板33に突き刺さって破封する。この状況は図6のようである。
【0087】
前記破封時には、Oリング45がノズル孔42の内側口縁部に移動して閉塞し、ノズル孔42とガス溜37とを遮断する。
したがって、前記破封によってガスボンベ32から消火ガスが噴出しても、該消火ガスがノズル孔42から流出することはない。
また、前記操作レバー28の押圧変位によって、接触端子(図示略)が接触して灯具48が点灯し、点灯後は前記接触状態が維持され、灯具48の点灯状態が維持される。
【0088】
破封後、操作レバ−28から手を離すと、制御弁43がバルブスプリング48によって押し上げられ、Oリング46が図4の原位置へ移動してノズル孔42をシールし、また操作レバ−28が制御弁43に係合して押し上げられ、ピン29が長孔30の上端部に係合して図4の原位置へ移動する。
したがって、破封後、封板33の破封口51から消火ガスがガス溜37へ噴出するが、該消火ガスは前記Oリング46によって、ノズル孔42から外部への流出を阻止され、またOリング45によってバルブ孔38からの漏出も阻止され、ガス溜37に貯留される。
【0089】
このような状況の下で手掛け部28bに手指54を掛け、レバ−スプリング48に抗して操作レバー28を押し下げると、操作レバ−28がピン29を支点に下向きに回動し、制御弁43が係合凸部28aに押圧されて、バルブスプリング47の弾性に抗して押し下げられる。
このため、Oリング45,46が下方へ移動し、Oリング46がノズル孔42の閉塞を解除して、ノズル孔42とガス溜37が連通し、Oリング45がノズル孔42の内側口縁部直上へ移動して、バルブ孔38をシ−ルする。
【0090】
この場合、前記制御弁43の下動変位は図6および図7のように、破封時における下動変位よりも小さいから、Oリング45がノズル孔42を閉塞したり、針管44が破封口51に挿入されて閉塞することがなく、ノズル孔42の開口状態が維持され、また破封口51からの消火ガスの噴出が維持される。
この結果、ノズル孔42から消火ガスが噴口41へ噴出し、噴射ガイド40から外部へ噴出して火元へ噴射される。この状況は図7のようである。
【0091】
このように本発明は、破封後の噴出した消火ガスをガス溜37に一旦貯留し、噴射ガイド40を火元へ正確に向けてから消火ガスを噴射できるから、消火ガスを無駄無く正確かつ効率良く火元へ噴出でき、合理的かつ速やかに消火できる。
【0092】
また、他の消火ガス噴射器10によって消火する場合は、該ガス噴射器10を壁面から取り外し、長尺の筒体の先端を火元へ向けて保持するとともに、短小の筒体を回動して軸方向へ移動し、長尺の筒体に収容した一または複数の消火ガスボンベを破封して、先端の噴口から消火ガスを火元へ向けて噴出し消火する。これらの消火ガス噴射器9,10は小形軽量であるから、労力の負担がなく消火作業を容易に行なえる。
更に、汎用の消火器11によって消火する場合は、公知の方法で消火ガスを火元へ向けて噴出し消火する。
【0093】
消火後、取付バンド21〜23をケ−ス24または消火器11の周面から取り外し、これを避難者の腕等に取付ければ、告知器16〜18の告知ランプ53と警報器52によって、避難者の発見と安否の確認を容易に行なえる。
【0094】
一方、地震発生時には地震警報器12が機能する。
地震警報器12は、常時は電源60のスイッチ61が投入され、内部のアジャスティングホルダ75が震度5の位置で固定され、バネ71の中間部と振り子69を保持している
前記振り子69はリ−ドスイッチ63に近接して配置され、常時は磁石70の磁界がリ−ドスイッチ63のリ−ドに作用して、リ−ドスイッチ63をOFFにしている。
したがって、常時は警報器59と警報ランプ58と送受信器72は作動しない。
【0095】
このような状況の下で地震が発生すると、地震警報器12が住宅1と一緒に振動し、バネ71の上部がアジャスティングホルダ75を支点に振動し、これに振り子69が同動する。
前記振り子69は前後左右に振動し、その振幅が振り子69から吸着板66〜68までの距離以下のときは、磁石70による磁界が所定変化せず、したがって震度5未満の地震として設定震度を検出しない。このため、リ−ドスイッチ63はOFF状態を維持している。
【0096】
一方、振り子69の振幅が、振り子69から吸着板66〜68までの距離を越えるときは、磁石70による磁界が減衰変化し、したがって震度5以上の地震として設定震度を検出し、リ−ドスイッチ63がONする。
このため、前記振り子69に同動する磁石70が、振動方向の吸着板66〜68に吸着され、前記振幅ないしリ−ドスイッチ63のON状態を保持する。
【0097】
この結果、警報ランプ58とブザ−59と送受信器72が通電され、これらが作動して、警報ランプ58が点滅若しくは点灯し、ブザ−59が鳴動し、送受信器72から警報信号である警報電波が発信される。
前記警報電波は、火災警報器13の送受信器14からの警報電波の周波数と相違し、これが各部屋2〜7に設置した消火ガス噴射器9,10、および消火器11の各告知器16〜18へ入力され、各告知器16〜18の警報ランプ53を点滅するとともに、警報器52を鳴動させ、または録音機(図示略)を始動して音声ガイドを実行させる。
【0098】
前記音声ガイドは、「地震が発生しました。安全な場所に避難して下さい。」を2〜3回繰り返し、各部屋2〜7の住人に音および光を介して地震の発生を告知し、避難を促すとともに、各部屋2〜5,6に設置した消火ガス噴射器9,10、消火器11の所在を告知し、火災発生に備え、それらの速やかな使用と初期消火を促す。
【0099】
前記避難時、取付バンド21〜23をケ−ス24または胴体から取り外し、これを避難者の腕等に取付ければ、告知器16〜18の告知ランプ53と警報器52によって、避難者の発見と安否の確認が容易になる。
【0100】
このように各部屋2〜7の住人は、地震警報器12の警報ランプ58の点滅やブザ−59の鳴動、各部屋2〜7に設置した消火ガス噴射器9,10、消火器11の告知器16〜18からの警報によって、地震の発生を確実かつ速やかに知り得るから、速やかな避難を図れるとともに、火災発生に備え消火ガス噴射器9,10および消火器11による速やかな初期消火を図れ、住人の安全と初期消火を図れる。
【0101】
図12乃至図19は本発明の他の実施形態を示し、前述した実施形態の構成と対応する部分に同一の符号を用いている。
このうち、図12は本発明の第2の実施形態を示し、この実施形態は地震警報器12の本体56とカバ−57の相直交する二面を平坦に形成し、これらの表面を、例えば部屋3の隅角部の相直交する壁面W,Wに密着配置可能にして、各壁面W,Wにおける振動を精密に検出可能にしている。
【0102】
このうち、同図(a)は地震警報器12を部屋3の天井80側の隅角部の各壁面W,Wに密着配置し、部屋の中で最も大きな揺れを観測し得る箇所で振動をいち早く検出し、地震警報をいち早く発信させて、住人の速やかな避難を促すようにしている。
同図(b)は地震警報器12を、部屋3の床面81側の隅角部の各壁面W,Wに密着配置し、壁面W,Wと床面とに密着させて、それらの複合的な揺れを検出することで、壁面W,Wのみの振動に偏向した地震感知を抑制し、実際の建物の揺れに近い振動を感知し得るようにしている。
同図(c)は地震警報器12を部屋3の隅角部の何れかの壁面WまたはWの中高位置に密着配置し、天井80側または床面81側に偏らない、安定した振動を感知し得るようにしている。
【0103】
ただ、これらの設置箇所の何れかを合理的に選択することは難しく、実際上は建物の構造や施工状態、強度、築年数、地質等を考慮し、実験を繰り返して最適設置箇所を選択することになる。現状では同図(a)の設置箇所が防災上から妥当に思われる。
【0104】
図13および図14は本発明の第3の実施形態を示し、この実施形態は壁面Wに合成樹脂または木製の噴射器ホルダ82を、例えば両面接着テ−プ(図示略)を介して取付け、該ホルダ82の弾性を備えた一対のホルダ−ア−ム82a,82aに、消火ガス噴射器9の下部周面を着脱可能に取付けている。
そして、前記噴射器ホルダ82の内面に臨ませてリ−ドスイッチ63を配置し、該スイッチ63にブザ−59と電源60(共に図示略)を接続し、これらを噴射器ホルダ82に内蔵し、または壁面Wに配置している。
【0105】
前記リ−ドスイッチ63は、噴射器ホルダ82に消火ガス噴射器9を装着時は、鋼板製のガスボンベ32がリ−ドスイッチ63に近接してOFF状態に置かれ、消火ガス噴射器9を取り外し時は、ガスボンベ32による磁界の変化を検出してONし、ブザ−59を鳴動させる。したがって、外出時に電源60を投入して置けば、賊の侵入による消火ガス噴射器9の盗難を防止し得る。
この場合、消火ガス噴射器10および消火器11についても同様な機能を持たせることが望ましい。
【0106】
図中、84は噴射器ホルダ82に近接して壁面Wに取付けた略U字形状のホルダ金具で、弾性を有する一対のアーム85a,85aに避難用の懐中電灯85を着脱可能に取付けている。
実施形態の懐中電灯85は、非常用手動発電式のものが使用され、内部に圧電セラミックス板86を有し、その先端に錘86aを備え、一端のグリップ85aを保持し、該グリップ85aを支点に振り動かし、内部の圧電セラミックス板86に歪を発生して起電力を起し、この起電力によって先端のLED(L)を点灯させるようにしている。
この他、非常用手動発電式として、発電モ−タを手回しハンドルを操作して発電し、その起電力によって灯具を点灯させるようにしても良い。
【0107】
図15乃至図17は本発明の第4の実施形態を示し、この実施形態は前記消火ガス噴射器9のケ−ス24を省略し、ガスボンベ32の下半部を表出させ、その中間部を前記噴射器ホルダ82(図示略)で保持して壁面Wに立位状態で設置している。
前記ガスボンベ32の上端部を保持するボンベホルダ35の外側に、略筒状の合成樹脂製の外筒87を配置し、その下部に略逆漏斗状の凹孔87aを形成し、該凹孔87aにガスボンベ32の上部を係合可能に収容している。
【0108】
前記外筒87の上側周面に取付バンド21を介して告知器16を取付け、下側周面に凹曲面状の握持部88を形成し、中間部に噴射ガイド40を形成している。
前記外筒87の前部下側にスリット89を形成し、該スリット89に噴射レバ−90の上端部をピン91を介して回動可能に連結し、該ピン91にピッキング片92の基端部を同動可能に連結している。
【0109】
一方、前記制御弁43に単一のOリング45を装着し、該制御弁43の上部を外筒87の上端面に突出し、その上端に略円板状の操作板93をビス止めしている。
前記外筒87の上端面と操作板93との間に、係合溝(図示略)を有する安全板94を引き抜き可能に装着し、安全板94の引き抜き後、操作板93の押圧操作を介して制御弁43を下動し、針管44による破封を可能にしている。
【0110】
前記外筒87の内部に、バルブ孔38と隣接して有底の噴出誘導孔95を設け、該誘導孔95の上部に止ネジ96をねじ込んで閉塞し、止ネジ96の下方に噴射弁97を摺動可能に挿入し、該噴射弁97と止ネジ96との間にバネ98を介挿し、該バネ98の弾性を介して噴射弁97を下方へ移動可能に付勢し、かつ前記噴射レバー90の下部を外側へ回動可能に付勢している。
【0111】
前記噴射弁97は中間部に頸部97aを形成し、該頸部97aより上側の噴射弁97の上部に筒状のシ−ルゴム99を圧入し、その内側の端面をノズル孔42の口縁部に圧接してシ−ル可能にしている。
前記頸部97aより下側の噴射弁97の下端部にスリット100を形成し、該スリット100に前記ピッキング片92を係合している。
【0112】
このように構成した前記実施形態の消火ガス噴射器9は、消火操作前は安全板94が外筒87の上端部に装着され、制御弁43が上方へ押し上げられている。
したがって、針管44の尖端部44aが封板33の上方に位置し、前記噴射弁97がバネ98の弾性によって、噴出誘導孔95の最下位置に押し下げられ、シ−ルゴム99がノズル孔42の口縁部に位置して、該ノズル孔42をシ−ルし、ノズル孔42と頸部97aとの導通を遮断している。
また、前記ピッキング片92が噴出誘導孔95の底部に押し付けられ、噴射レバ−90の下部がバネ98の弾性に付勢されて外筒87の外側に突出している。この状況は図15のようである。
【0113】
このような状況から消火時には安全板94を引き抜き、操作板93をバルブスプリング47の弾性に抗して押し下げ、針管44の尖端部44aを封板33に突き刺して破封する
前記破封によって、Oリング45がノズル孔42の直上に移動し、バルブ孔38をシ−ルするとともに、シ−ルゴム99とノズル孔42とのシ−ル状態を維持し、ノズル孔42と頸部97aとの導通を遮断する。
したがって、前記破封によってガスボンベ32から消火ガスが噴出しても、該消火ガスが外部へ流出することはない。また、前記ピッキング片92の位置は破封前と同様で、噴射レバ−90の下部が外筒87の外側に突出している。この状況は図16のようである。
【0114】
破封後、操作板93から手を離すと、制御弁43がバルブスプリング48によって押し上げられ、Oリング45が図15の原位置へ移動してバルブ孔38をシ−ルする。
また、シ−ルゴム99がノズル孔42の口縁部に位置し、該ノズル孔42をシ−ルして、ノズル孔42と頸部97aとの導通を遮断する。
【0115】
したがって、破封後、封板33の破封口51から消火ガスがガス溜37へ噴出し、そのガス圧を制御弁43の下端部に作用し、該制御弁43を押し上げるが、該消火ガスは前記シ−ルゴム99によって、ノズル孔42からの流出を阻止され、またOリング45によってバルブ孔38からの漏出も阻止され、ガス溜37に貯留される。
【0116】
このような状況の下で、外筒87の下部を握持し、噴射レバ−90の下部をスリット89内に押し込み、噴射レバー90をピン91を中心に図16上反時計方向へ回動させる。
このようにすると、ピッキング片92がピン91と同動し、その先端部がバネ98の弾性に抗して噴射弁97を押し上げ、シ−ルゴム99がノズル孔42の口縁部から移動して該口縁部のシ−ルを解除する。そして、頸部75aがノズル孔42の口縁部へ移動し、ガス溜37に連通するノズル孔42が、頸部75aと噴射ガイド40に連通する。
【0117】
この結果、前記貯留した消火ガス55がガス溜37からノズル孔42へ移動し、頸部75aを経て噴射ガイド40から外部へ噴出し、火元へ噴射される。この状況は図17のようである。
消火ガスを噴出後、噴射レバー90から手を離すと、バネ98の弾性によって噴射レバー90がピン91を中心に図17上時計方向へ回動し、その下部が外筒87の外側に突出し、原位置に復帰する。
【0118】
このように前記実施形態は、てこの原理を利用した噴射レバ−90の操作によって、ガス溜37に貯留した消火ガス55を外部へ噴出させるから、図6のように貯留ガスの圧力に抗して、操作レバ−28を押し下げる場合に比べて、腕力を要することなく簡便に貯留した消火ガス55を噴出し得る。
【産業上の利用可能性】
【0119】
このように本発明の消火ガス噴射器および地震警報器並びに災害警報システムは、装填した小形ガスボンベを簡便に破封し、噴出した消火ガスの流出を一旦阻止し、消火時に火元に向かって消火ガスを確実かつ的確に噴射し、消火ガスの空費を防止して効果的かつ確実な初期消火を実現するとともに、火災およびまたは所定震度の地震発生時に消火器の所在を告知し、消火器の速やかな使用と被災者の速やかな避難を促し、初期消火の実効と被災者の安全を確保し得るから、例えば住宅若しくは事務所、ホテル等に設置する消火器と地震警報器並びにその災害警報システムに好適である。
【符号の説明】
【0120】
2〜7 部屋
9〜11 消火ガス噴射器
12 地震警報器
13 火災警報器
14 送受信器
16〜18 告知器
28 操作レバー
32 ガスボンベ
33 封板
35 ボンベホルダ
37 ガス溜
【0121】
40 噴射ガイド
42 ノズル孔
43 制御弁
44 破封部材(針管)
44a 尖端部
45 Oリング
63 近接スイッチ
66〜68 吸着板
69 振り子
70 磁石
【0122】
71 振動部材(バネ)
71a 姿勢調整部
72 送受信器
75 アジャスティングホルダ
76 係合溝
78 震度目盛
80 天井
81 床面
88 外筒
【0123】
90 噴射レバ−
92 ピッキング片
93 操作板
95 噴出誘導孔
97 噴出弁
97a 頸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に消火ガスを充填し、かつその開口部に封板を付設したガスボンベと、前記封板を破封可能な尖端部を有する破封部材と、前記ガスボンベの口元部を着脱可能に取付け、その内部に前記破封部材を移動可能に収容するガス溜を形成したボンベホルダと、前記破封部材を下部に配置し、かつ前記ガス溜と外部に開口したノズル孔との連通路を断続可能な制御弁と、を備え、破封後の消火ガスを前記ガス溜に貯留可能に設ける一方、屋内に設置した火災警報器の警報信号を介して、音または光による告知信号を出力可能な告知器を備えた消火ガス噴射器において、前記連通路に制御弁を移動可能に設け、該制御弁の摺動面にノズル孔をシ−ル可能なOリングを設け、前記制御弁の移動を介して前記連通路を断続可能にするとともに、前記火災警報器から警報電波を出力可能に設け、該警報電波を前記告知器で受信し、かつ音または光による告知信号を出力可能な送受信器を備えたことを特徴とする消火ガス噴射器。
【請求項2】
前記制御弁の上端部に操作レバ−または操作板を配置し、該操作レバ−または操作板を常時は作動不能にロックし、該ロックを解除後、前記操作レバ−または操作板を押圧作動可能に設け、前記制御弁を押し下げ可能にした請求項1記載の消火ガス噴射器。
【請求項3】
前記連通路の近接位置にノズル孔に連通する噴出誘導孔を設け、該噴出誘導孔に頸部を有する噴出弁を下方へ移動可能に付勢し、前記頸部をノズル孔と外部に連通可能に設け、前記噴出弁の下端部にピッキング片の一端部を係合可能に設けるとともに、ボンベホルダの外側に噴射ガイドを形成した外筒を配置し、該外筒に噴射レバ−の上部を上下に回動可能に連結し、該噴射レバ−の上部に前記ピッキング片の他端部を同動可能に連結した請求項1記載の消火ガス噴射器。
【請求項4】
地震の振動を検出し、地震警報を出力可能に設けるとともに、屋内に設置した消火ガス噴射器に告知器を設け、該告知器に前記地震警報を入力し、該告知器から音または光による告知信号を出力可能にした地震警報器において、筐体内部に、下端部を固定し上端部を前後左右に揺動可能に振動部材を立設し、該振動部材の上端部に磁石を備えた振り子を設置し、該振り子の近接位置に前記磁石の磁界を検出可能な近接スイッチを設け、該スイッチに警報電波を出力可能な送受信器を接続し、前記振り子の所定の振幅時に前記告知器へ警報電波を出力可能にしたことを特徴とする地震警報器。
【請求項5】
前記筐体内部に振動部材に沿ってアジャスティングホルダを移動可能に設け、該アジャスティングホルダの内側に振動部材を保持可能な係合溝を設けた請求項4記載の地震警報器。
【請求項6】
前記アジャスティングホルダの移動域に臨む筐体表面に震度目盛を設けた請求項5記載の地震警報器。
【請求項7】
前記アジャスティングホルダを所定の震度目盛位置に調整し、前記振り子の振幅を加減調整可能にした請求項6記載の地震警報器。
【請求項8】
前記振り子の近接スイッチ側を除く振動方向の筐体内面に、磁石に吸着可能な複数の吸着板を設けた請求項4記載の地震警報器。
【請求項9】
前記振動部材は、柔軟な弾性を備えた円筒コイルバネ、板バネ、鋼線の何れかである請求項4記載の地震警報器。
【請求項10】
前記コイルバの中間部に粗巻きの姿勢調整部を設けた請求項9記載の地震警報器。
【請求項11】
前記地震警報器の相交差する外面を、部屋の天井側または床面側の相交差する壁面に密接して配置した請求項4記載の地震警報器。
【請求項12】
内部に消火ガスを充填し、かつその開口部に封板を付設したガスボンベと、前記封板を破封可能な尖端部を有する破封部材と、前記ガスボンベの口元部を着脱可能に取付け、その内部に前記破封部材を移動可能に収容するガス溜を形成したボンベホルダと、前記ガス溜と外部に開口したノズル孔との連通路を断続可能な制御弁と、を備え、破封後の消火ガスを前記ガス溜に貯留可能に設ける一方、屋内に設置した火災警報器の警報信号を介して、音または光による告知信号を出力可能な告知器を備えた消火ガス噴射器と、地震の振動を検出し、地震警報を前記告知器に出力可能な地震警報器と、を備えた災害警報システムにおいて、前記連通路に制御弁を移動可能に設け、該制御弁の摺動面にノズル孔をシ−ル可能なOリングを設け、前記制御弁の移動を介して前記連通路を断続可能にするとともに、前記火災警報器から警報電波を出力可能に設け、該警報電波を前記告知器で受信し、かつ音または光による告知信号を出力可能な送受信器を備えた消火ガス噴射器と、筐体内部に、下端部を固定し上端部を前後左右に揺動可能に振動部材を立設し、前記振動部材の上端部に磁石を備えた振り子を設置し、該振り子の近接位置に前記磁石の磁界を検出可能な近接スイッチを設け、該スイッチに警報電波を出力可能な送受信器を接続した地震警報器と、を備えたことを特徴とする災害警報システム。
【請求項13】
住宅の各部屋に前記火災警報器を設置するとともに、住宅の所望の部屋に前記地震警報器と消火ガス噴射器を設置し、前記火災警報または地震警報の電波を前記告知器に出力可能にした請求項12記載の災害警報システム。
【請求項14】
前記地震警報器に検出震度を設定し、該設定震度検出時に地震警報電波を出力可能にした請求項12記載の災害警報システム。
【請求項15】
前記火災警報器と地震警報器から互いに周波数の異なる警報電波を前記告知器へ出力し、該告知器から互いに異なる音または光の告知信号を出力可能にした請求項12記載の災害警報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−233849(P2010−233849A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85690(P2009−85690)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(500398289)
【Fターム(参考)】