説明

消火ポンプシステム

【課題】送水管への負荷の増大、不要な放出水量の増加、及びエネルギーの浪費などの問題を生じない消火ポンプシステムを提供する。
【解決手段】消火ポンプシステムの制御装置4は、建物の各階または各階層群に対応する複数の目標圧力を記憶した記憶手段4aを有しており、制御装置4は、消火ポンプ1の吐出側の圧力が、放水信号によって特定される階またはその階が属する階層群に対応する目標圧力に維持されるようにインバータ3を制御し、制御装置4は、複数の階または複数の階層群での放水装置7,20から放水されていることを示す複数の放水信号を受信したときは、消火ポンプ1の吐出側の圧力が、記憶手段4aに記憶されている最高階または最高階層群に対応する最高目標圧力に維持されるようにインバータ3を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ駆動される消火ポンプを備えた消火ポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物に設置される消火ポンプシステムは、建築物に火災が発生した際に、初期消火を行う消火設備である。この消火ポンプシステムは、火災の発生を感知すると、建築物に設置されているスプリンクラーから散水して消火を行う。例えば、特許文献1には、インバータ駆動の消火ポンプシステムが開示されている。このシステムは、建物の各階に設けられたスプリンクラーに送水管を介して送水する消火ポンプと、この消火ポンプを駆動するモータと、このモータを制御するインバータと、送水管の圧力低下を検知して動作信号を発信する圧力検出手段と、放水しているスプリンクラーを特定する放出信号を発信する放出信号発信手段群と、この放出信号に基づいてインバータを制御する制御装置とを備える。
【0003】
インバータは記憶手段を有しており、この記憶手段には、放出信号によって特定される各スプリンクラーに必要な給水量と給水圧力が得られる運転周波数が、各スプリンクラーに対応させて複数記憶されている。運転周波数は、圧力検出手段または放出信号発信手段群からの信号に基づいて選択される。圧力検出手段から動作信号が発信され、かつ放出信号発信手段群から放出信号が複数発信された場合には、インバータのl00%の運転周波数が選択される。圧力検出手段から動作信号が発信され、かつ放出信号発信手段群から放出信号が複数発信されたということは、建物内の火災が広がっている可能性を示している。したがって、このような場合には、消火用に十分な給水量と給水圧力を得るために、インバータはl00%の運転周波数でモータおよび消火ポンプを駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−189700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、100%の運転周波数で消火ポンプが運転されると、本来必要でない圧力を発生させてしまい、その結果、送水管への負荷の増大、不要な放出水量の増加、及びエネルギーの浪費などの問題が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上述した従来の問題に鑑みてなされたもので、複数の階に設置された放水装置(スプリンクラーや消火栓など)から放水されている場合でも、送水管への負荷の増大、不要な放出水量の増加、及びエネルギーの浪費などの問題を生じない消火ポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、建物の各階に設置されている放水装置に送水管を介して送水する消火ポンプと、前記消火ポンプを駆動するモータと、前記モータの回転速度を変化させるインバータと、前記インバータを制御する制御装置と、いずれかの階の放水装置から放水されたときに、その階またはその階が属する階層群を示す放水階情報を含む放水信号を前記制御装置に発信する放水信号発信手段とを備え、前記制御装置は、各階または各階層群に対応する複数の目標圧力を記憶した記憶手段を有しており、前記制御装置は、前記消火ポンプの吐出側の圧力が、前記放水信号によって特定される階またはその階が属する階層群に対応する目標圧力に維持されるように前記インバータを制御し、前記制御装置は、複数の階または複数の階層群での放水装置から放水されていることを示す複数の放水信号を受信したときは、前記消火ポンプの吐出側の圧力が、前記記憶手段に記憶されている最高階または最高階層群に対応する最高目標圧力に維持されるように前記インバータを制御することを特徴とする消火ポンプシステムである。
本発明の好ましい態様は、前記制御装置は、前記インバータに異常があった場合には、該インバータを介さずに前記モータを駆動することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の別の一態様は、 ポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記モータの回転速度を変化させるインバータと、前記インバータを制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、各階または各階層群に対応する複数の目標圧力を記憶した記憶手段を有しており、前記制御装置は、いずれかの階の放水装置から放水されたときに、その階またはその階が属する階層群を示す放水階情報を含む放水信号を受信し、前記ポンプの吐出側の圧力が、前記放水信号によって特定される階またはその階が属する階層群に対応する目標圧力に維持されるように前記インバータを制御し、前記制御装置は、複数の階または複数の階層群での放水装置から放水されていることを示す複数の放水信号を受信したときは、前記消火ポンプの吐出側の圧力が、前記記憶手段に記憶されている最高階または最高階層群に対応する最高目標圧力に維持されるように前記インバータを制御することを特徴とする消火ポンプユニットである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の階または複数の階層群で放水が行われている場合には、最高階層または最高階層群に対応する最高目標圧力で消火ポンプが運転される。このような圧力制御運転を行うことにより、送水管への負荷の増大、不要な放出水量の増加、及びエネルギーの浪費などの問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る消火ポンプシステムを示す模式図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る消火ポンプシステムを示す模式図である。
【図3】図1および図2に示す実施形態に係る消火ポンプシステムの運転制御フローを示す図である。
【図4】圧力一定制御運転におけるポンプ運転性能曲線の一例を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る消火ポンプシステムを示す模式図である。なお、図1は、建物の地下4階から4階までの部分のみを示している。図1に示すように、この消火ポンプシステムは、建物の各階に設置されている放水装置としてのスプリンクラー7(スプリンクラーヘッドともいう)に送水管5を介して送水する消火ポンプ1と、この消火ポンプ1を駆動するモータ2と、このモータ2の回転速度(周波数)を変化させるインバータ3と、このインバータ3を制御する制御装置4とを備えている。インバータ3は制御装置4内に設置されている。
【0012】
消火ポンプ1の吸込口は、建物の地下に設置された水槽13に吸込管15を介して連通している。消火ポンプ1は、水源である水槽13内の水を汲み上げ、送水管5を通じてスプリンクラー7に送水するようになっている。消火ポンプ1、モータ2、およびインバータ3を含んだ制御装置4は、建物の最下階(図1の例では、地下4階)に設置されている。消火ポンプ1は、送水管5を介してスプリンクラー7に接続されている。この送水管5は、建物の高さ方向に沿って延びる主管5aと、各階に設置された分岐管5bとを有している。消火ポンプ1の吐出口は主管5aに連結され、スプリンクラー7は各階の分岐管5bに接続されている。
【0013】
消火ポンプ1の吐出口に近接した位置には、送水管5内の水圧を測定する圧力センサー9が配置されている。この圧力センサー9は、消火ポンプ1の圧力制御運転を行うために必要な圧力検出手段である。すなわち、消火ポンプ1は、圧力センサー9によって測定される圧力が所定の目標圧力に維持されるように制御される。圧力センサー9の下流側には、逆止弁16及び仕切り弁17が設けられており、圧力センサー9は、逆止弁16と消火ポンプ1との間に配置されている。消火ポンプ1、モータ2、インバータ3を含んだ制御装置4や圧力センサー9等の図1に示す破線で囲われた機器類は消火ポンプユニット21を構成し、図示はしないが、共通のベース上に設置されているのが望ましい。なお、圧力センサー9は逆止弁16や仕切り弁17の下流側に配置してもよい。
【0014】
主管5aには圧力タンク10が接続されている。圧力タンク10は、逆止弁16及び仕切り弁17の下流側に配置されている。この圧力タンク10の内部にはダイヤフラムで仕切られた気体室が形成されており、この気体室には圧縮ガスが封入されている。圧力タンク10内に送られた水は、ダイヤフラムを介して圧縮ガス圧によって加圧されるようになっている。したがって、消火ポンプ1が運転されていないときでも、送水管5内の水圧は圧力タンク10によって保持される。圧力タンク10には、送水管5内の圧力低下を検知してポンプ起動信号を発信するポンプ起動信号発信手段11が設置されている。このポンプ起動信号発信手段11は、送水管5内の圧力が所定の値にまで低下したときにポンプ起動信号を発信する。ポンプ起動信号は、制御装置4に送られ、制御装置4はポンプ起動信号を受けて消火ポンプ1を起動させる。
【0015】
本実施形態におけるスプリンクラー7は、いわゆる閉鎖型スプリンクラー7である。スプリンクラー7は、建物の各階の天井に設置される。各スプリンクラー7の先端開口部は、ヒューズメタルなどの感熱体(熱で容易に溶ける易融性物質からなる)で塞がれており、火災が発生して感熱体が溶けると、スプリンクラー7の先端開口部が開かれ、これにより送水管5内の水がスプリンクラー7から放出される。
【0016】
消火ポンプ1は、運転中、その吐出側の圧力が所定の目標圧力に維持されるように制御装置4によって制御される。目標圧力は、建物の階または階層群に従って予め決定されており、階または階層群に対応する複数の目標圧力が制御装置4の記憶手段4aに記憶されている。階層群は複数の階層から構成された階層区画であり、例えば、3つの階が1つの階層群として定義される。各階の分岐管5bには、スプリンクラー7から水が放出されていることを示す放水信号を発信する放水信号発信手段8が接続されている。放水信号発信手段8は、分岐管5b内の水の流れまたは圧力の変化を検出して放水信号を発信する。この放水信号には、放水しているスプリンクラー7の階またはその階が属する階層群を示す放水階情報が含まれている。
【0017】
放水信号発信手段8は自動火災報知設備等の受信機19を介して制御装置4に接続されている。スプリンクラー7から放水があったときは、そのスプリンクラー7が配置されている階の放水信号発信手段8から放水信号が受信機19を介して制御装置4に送信されるようになっている。自動火災報知設備等の受信機19は、放水信号発信手段8から放水信号を受信すると、火災の発生を知らせる警報信号を発するようになっている。放水信号は、さらに受信機19から制御装置4に送られる。制御装置4は、受信した放水信号から、放水が行われている階またはその階が属する階層群を特定することができる。そして、制御装置4は、特定された階または階層群に基づいて、消火ポンプ1の運転制御のための目標圧力を決定する。
【0018】
消火ポンプ1は、圧力一定制御に従って次のように運転される。火災が発生すると、スプリンクラー7から水が放出され、送水管5内の圧力が低下する。送水管5内の圧力が所定の値にまで低下すると、ポンプ起動信号発信手段11からポンプ起動信号が制御装置4に発信される。制御装置4は、このポンプ起動信号を受信して、消火ポンプ1を起動させる。
【0019】
スプリンクラー7から放水されると、そのスプリンクラー7と同じ階に配置されている放水信号発信手段8から放水信号が制御装置4に送られる。制御装置4は、受信した放水信号から、火災が発生している階または階層群を特定する。制御装置4の記憶手段4aには、上述したように、各階または各階層群に対応した複数の目標圧力が記憶されている。これらの目標圧力は、各階または各階層群に揚水するために必要な圧力である。制御装置4は、スプリンクラー7から水が放出されている階または階層群を特定し、その特定された階または階層群に対応する目標圧力を決定する。
【0020】
さらに、送水管5の主管5a内の圧力、すなわち消火ポンプ1の吐出側の圧力を圧力センサー9で測定する。なお、圧力センサー9をポンプ起動信号発信手段11の代わりにポンプ起動信号を発生させるために用いてもよく、例えば、圧力センサー9が所定圧力未満を所定時間継続して検出すると消火ポンプ1を起動させる(但し、この場合は、圧力センサー9は逆止弁16の下流側に設置されている必要がある)。制御装置4の情報処理部4bは、圧力センサー9によって測定される圧力が、上記決定された目標圧力に維持されるように運転周波数指令値を算出する。インバータ3は、算出された運転周波数指令値に従ってモータ2を駆動し、これにより、消火ポンプ1は与えられた運転周波数(回転速度)で運転される。
【0021】
同じ階または同じ階層群に配置されている複数のスプリンクラー7が放水している場合は、放出される水の流量が増加し、圧力センサー9によって測定される消火ポンプ1の吐出側圧力が低下する。制御装置4は、圧力センサー9によって測定される圧力が上記目標圧力に維持されるようにインバータ3を介して消火ポンプ1の運転周波数を変化させる。
【0022】
建物内で火災が広がると、複数階または複数の階層群でスプリンクラー7が作動して放水を行うことがある。このような場合には、複数階に設置された放水信号発信手段8から複数の放水信号が制御装置4に送信される。このように複数階または複数の階層群に配置されている複数のスプリンクラー7が放水した場合は、火災の広がりを阻止するために、最高階または最高階層群に対応する最高目標圧力が圧力一定制御に使用される。すなわち、複数階または複数の階層群で放水が行われていることを示す複数の放水信号を受信したときは、制御装置4は、スプリンクラー7の放水が行なわれている階層に関係なく、消火ポンプ1の吐出側圧力が最高目標圧力に維持されるように消火ポンプ1の運転周波数を変化させる。
【0023】
図2は、本発明の他の実施形態に係る消火ポンプシステムを示す模式図である。図1に示す実施形態と図2に示す実施形態は共通する基本構成を有しているが、図2に示す実施形態では、放水装置としてスプリンクラー7に代えて消火栓20が使用されている。また、この実施形態では、圧力タンク10およびポンプ起動信号発信手段11は設けられていなく、防災センター等からの遠隔起動信号入力により消火ポンプ1を起動し、その後、自動火災報知設備等の受信機19を介して送られる放水信号を使用して制御を行う。なお、圧力センサー9を逆止弁16の下流に設置して、圧力一定制御のための圧力センサー9をポンプ起動信号発信手段として使用することもできる。本実施形態においても、図2に示す破線で囲われた機器類は消火ポンプユニット21を構成し、図示はしないが、共通のベース上に設置されているのが望ましい。
【0024】
消火栓20は、建物の各階に設置された、いわゆる屋内消火栓である。各消火栓20は、先端にノズルが取り付けられたホース、このホースに水を送り込むための開閉弁などを備えている。これらホースや開閉弁などは、キャビネット内に収容されている。図1の実施形態と同様に、消火栓20から水が放出されていることを示す放水信号を発信する放水信号発信手段8が各階の分岐管5bに設置されている。放水信号発信手段8からの放水信号は、自動火災報知設備等の受信機19を介して制御装置4に送られるようになっている。
【0025】
火災の発生時は、火災や他の要因(地震等)により電気系統が被害を受け、停電する場合がある。このような事態に備えて、図1および図2に示す消火ポンプシステムは、主電源以外に非常電源を有するバックアップシステムを有している。停電が起こると、電力の供給は主電源から非常電源に切り換えられ、消火ポンプシステムは非常電源からの電力の供給を受けて動作する。
【0026】
図3は、図1および図2に示す実施形態に係る消火ポンプシステムの運転制御フローを示す図である。主電源からの電力供給、または、停電から復帰して非常電源からの電力供給が開始されると(ステップ1)、運転保持リレー(図示せず)がONまたはOFFであるかが確認される(ステップ2)。この運転保持リレーは、機械的な保持機構を持ったリレーであり、停電前の消火ポンプ1の運転状態を保持することができるように構成されている。この運転保持リレーがONであれば、停電前の運転状態が継続される(ステップ3)。一方、運転保持リレーがOFFであれば、ポンプ始動条件が確認される(ステップ4)。
【0027】
ステップ4のポンプ始動条件は、次の3つであり、これら3つの条件のうちいずれか1つが満たされたときに、消火ポンプ1が始動される。
(1)防災センター等からの遠隔信号入力。
(2)操作パネルの始動スイッチON。
(3)ポンプ起動信号発信手段11からのポンプ起動信号入力(圧力センサー9をポンプ起動信号発信手段として機能させる場合は、圧力センサー9からのポンプ起動信号入力)。
【0028】
上記ポンプ始動条件のいずれもが成立しない場合には、ステップ4のポンプ始動条件の確認が繰り返される。一方、上記ポンプ始動条件のいずれか1つが成立すると、運転条件が成立したか否か、すなわち放水信号が受信されているか否かが確認される(ステップ5)。放水信号が受信されているときは、複数階または複数階層群から複数の放水信号が発信されているか否かが確認される(ステップ6)。一方、ステップ5にて放水信号が受信されていないときは、最高階または最高階層群に対応した最高目標圧力にて消火ポンプ1が運転される(ステップ7)。すなわち、消火ポンプ1の吐出側圧力が最高目標圧力に維持されるように圧力一定制御運転が行われる。また、複数階または複数階層群から複数の放水信号が発信されている場合にも、上述したように、同様に最高階または最高階層群に対応した最高目標圧力で消火ポンプ1が運転される。
【0029】
複数階または複数階層群から放水信号が発信されていない場合は、受信した放水信号によって特定される階または階層群に対応する目標圧力で消火ポンプ1が運転される(ステップ8)。次に、インバータ3に異常がないか、または自家発電装置や蓄電池設備などの非常電源からの電力供給であるかが調べられる(ステップ9)。インバータ3に異常があるか、または非常電源から電力が供給されている場合は、バックアップ運転モードに従って消火ポンプ1が運転される(ステップ10)。このバックアップ運転モードでは、モータ2は、インバータ3を介すことなく主電源または非常電源により直接運転される(このときの運転周波数は、インバータ3の100%周波数に相当する)。なお、ステップ9およびステップ10の処理は、ステップ4とステップ5との間で処理されるように構成されていても良い。
【0030】
インバータ3が正常に動作しており、かつ非常電源からの電力供給でない場合は、消火ポンプ1の停止条件が満たされているか否かが制御装置4によって調べられる。消火ポンプ1の停止条件とは、次の4つの条件であり、これら4つの条件のうちいずれか1つが満たされたときに、消火ポンプ1の運転が停止される。
(i)防災センター等からの遠隔信号の入力が停止し、かつ操作パネルの停止スイッチがON。
(ii)操作パネルの始動スイッチがONのときに、操作パネルの停止スイッチがON。
(iii)主電源が遮断
(iv)図1に示した消火ポンプシステムの場合、ポンプ起動発信手段11の起動信号が停止し、操作パネルの停止スイッチがON。
【0031】
上記4つの停止条件のうちいずれか1つが成立したときに、消火ポンプ1の運転が停止される(ステップ12)。一方、上記4つの条件のいずれも成立しない場合には、処理ステップはステップ4に戻り、消火ポンプ1の始動条件が満たされているか否かが再度確認される。消火ポンプ1が停止されると、処理ステップはステップ2に戻り、運転保持リレーがONかOFFかが確認される。
【0032】
図4は、圧力一定制御運転におけるポンプ運転性能曲線の一例を表すグラフである。図4に示すように、建物の階ごとまたは階層群ごとの放水信号(1CH〜9CHで示される)に対応する目標圧力F1〜F9が予め設定されている。これら目標圧力F1〜F9は、それぞれ放水信号1CH〜9CHに関連付けられて制御装置4の記憶手段4aに記憶されている。放水信号1CHは建物の1階または第1階層群(最下位の階層群)に対応し、放水信号9CHは建物の9階または第9階層群に対応する。なお、この例では、建物の1階から9階までの各階または第1から第9までの各階層群に対応する目標圧力F1〜F9が設けられている。
【0033】
送水管5の主管5aに設置された圧力センサー9によって測定された実際の圧力が上記目標圧力に維持されるように、消火ポンプ1の運転周波数(すなわち回転速度)が制御装置4によって制御される。具体的には、同じ階または同じ階層群で複数の放水装置(スプリンクラー7または消火栓20)から放水されている場合には、圧力センサー9から得られる圧力測定値が、放水が行われている階または階層群に対応する目標圧力に維持されるように、消火ポンプ1の運転が制御される。
【0034】
一方、複数の階または複数の階層群から複数の放水信号が発信されている場合には、最高階または最高階層群に対応する最高目標圧力(図4の例では、放出信号9CHに対応する目標圧力F9)に上記圧力測定値が維持されるように消火ポンプ1が制御される。図4から分かるように、最高階または最高階層群に対応する目標圧力F9は、点線で示すインバータ3の最高周波数(100%周波数)よりも低い。したがって、インバータ3の100%周波数で運転する場合に比べて、送水管5に過大な圧力がかかることがなく、不要な放水を避けることができ、さらには省エネルギー効果も実現される。
【0035】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0036】
1 消火ポンプ
2 モータ
3 インバータ
4 制御装置
5 送水管
7 スプリンクラー(放水装置)
8 放水信号発信手段
9 圧力センサー(圧力検出手段)
10 圧力タンク
11 ポンプ起動信号発信手段
13 水槽(水源)
20 消火栓(放水装置)
21 消火ポンプユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の各階に設置されている放水装置に送水管を介して送水する消火ポンプと、
前記消火ポンプを駆動するモータと、
前記モータの回転速度を変化させるインバータと、
前記インバータを制御する制御装置と、
いずれかの階の放水装置から放水されたときに、その階またはその階が属する階層群を示す放水階情報を含む放水信号を前記制御装置に発信する放水信号発信手段とを備え、
前記制御装置は、各階または各階層群に対応する複数の目標圧力を記憶した記憶手段を有しており、
前記制御装置は、前記消火ポンプの吐出側の圧力が、前記放水信号によって特定される階またはその階が属する階層群に対応する目標圧力に維持されるように前記インバータを制御し、
前記制御装置は、複数の階または複数の階層群での放水装置から放水されていることを示す複数の放水信号を受信したときは、前記消火ポンプの吐出側の圧力が、前記記憶手段に記憶されている最高階または最高階層群に対応する最高目標圧力に維持されるように前記インバータを制御することを特徴とする消火ポンプシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記インバータに異常があった場合には、該インバータを介さずに前記モータを駆動することを特徴とする請求項1に記載の消火ポンプシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−161502(P2012−161502A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24627(P2011−24627)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(301042686)株式会社三菱地所設計 (24)
【出願人】(591200656)斎久工業株式会社 (5)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】