消火作用を有する灰皿及び消火用ゲル
【課題】本発明では、消火能力が高く衛生面に優れる灰皿、そして清掃時の手間を省くことができる灰皿、さらには優れた消火作用、消臭作用を有する消火用ゲルを提供することを課題とする。
【解決手段】水より比重の小さい耐火性素材を接合した特定の網状容器を灰皿に取り付けること、特定の植物成分を含む消火用ゲル、または特定の粒度分布を有する吸水性樹脂や水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを消火用ゲルとして用いること、さらには上記網状容器に優れた消臭作用、消火作用を有する上記消火用ゲルを内在させることで機能性が高まることを見出した。
【解決手段】水より比重の小さい耐火性素材を接合した特定の網状容器を灰皿に取り付けること、特定の植物成分を含む消火用ゲル、または特定の粒度分布を有する吸水性樹脂や水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを消火用ゲルとして用いること、さらには上記網状容器に優れた消臭作用、消火作用を有する上記消火用ゲルを内在させることで機能性が高まることを見出した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火作用を有する網状容器を具備する灰皿、吸水性素材を具備する灰皿、及び灰皿用の消火材等として好適に用いられる消火用ゲルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の煙草の灰皿は、構造的に吸殻を一つの容器により受けているものが多く、駅やデパートの喫煙場所等に設置されているスタンド型灰皿では消火のために水が入れられているものがよく見られる。これらの灰皿では、吸殻の火が充分に消されていない場合、すでに消されている吸殻に火が燃え移り煙がモウモウと発生したりする。また、消火用の水によって吸殻の火が消えても灰皿を掃除する際、吸殻と水とを区別して捨てるための手間がかかり、吸殻に含まれるニコチンが水と混じって悪臭を発し衛生面でも問題があり、それらを解決するために種々の提案がなされている。
例えば、特開2001−352964号(特許文献1)では煙草の灰皿の掃除をする際に、灰皿の容器の中で混ざり合った吸殻と消火のために入れている水とを一度に簡単に区別して片付けることができる、ざるを取り付けた灰皿が提案されている。
また、特開平8−336379号(特許文献2)では粒状消臭剤と煙草の灰とが混ざり合っても、粒状消臭剤から煙草の灰を取り除くことの容易な濾過式灰皿が提案されている。
また、特開平6−74号(特許文献3)では多孔質の鉱物材料からなる顆粒状の母材に揮発性の消臭材料を担持させてなる灰皿の中敷材料が提案されている。
その他に、灰皿用の消火材として吸水性樹脂(別称:(高)吸水性ポリマー、水膨潤性ポリマー)に水を吸収させてなる含水ゲル(以下、ゲルと略す)を用いることが種々提案されている。
例えば、特開平10−192444号(特許文献4)では消火能力に優れると共に、該消火能力を長期間にわたって維持することができ、しかも使用後に簡単に廃棄することができる、吸水性樹脂、潮解性物質および水を含むことを特徴とする消火用ゲルが提案されている。
【0003】
また、特開2001−9058号(特許文献5)では水とグリコールと吸水性アクリル系重合体と多孔質無機物と重炭酸ソーダを混合して攪拌したことを特徴とするタバコ消火剤が提案されている。
また、実開平7−14898号(特許文献6)ではpF値3.5以下の力で水を保持しているゲルを灰皿内にいれることによりそのゲルと接触した煙草の火を消すことを特徴とするゲル入り灰皿が提案されている。
また、実開平2−39747号(特許文献7)では結晶性高吸水性樹脂に水性粉末香料と、消臭剤を混合し、使用時に混合した粉末の上から、水を適当量注水することにより、樹脂が膨張、結晶し、芳香と消臭が開始する、同時に水を含んだ樹脂であるため消火の働きを兼ねていることを特徴とする消臭芳香剤が提案されている。
また、特開平11−69966号(特許文献8)では内面の必要個所に適量の水を保持できるように吸水性樹脂層を設けてなる携帯用灰皿が提案されている。
また、特開平9−140826号(特許文献9)では逆相重合反応によって生成される2ミクロン未満の小さい粒径を有する水膨潤性ポリマーを含む、防火及び消火用水の水添加剤が提案されており、燃焼物の垂直及び水平の両方の面に良好に付着させるために、500〜50000mPa・sの粘度を有する高粘性流体の使用が提案されている。
【0004】
また、米国特許第5190110号(特許文献10)では燃焼物から水の流失を抑えるために、消火用水に水不溶性である20〜500ミクロンの粒径を有する吸着性架橋ポリマーを水混和性媒体に分散させ、生じたゲル溶液の粘度が100mPa・sを超えないように提案されている。
以上のように様々の提案がなされているが、灰皿における消火能力、消臭能力、及び清掃時の簡便性、及び灰皿用の消火材等に用いられる消火用ゲルについてはさらなる改善の余地があった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−352964号公報
【特許文献2】特開平8−336379号公報
【特許文献3】特開平6−74号公報
【特許文献4】特開平10−192444号公報
【特許文献5】特開2001−9058号公報
【特許文献6】実開平7−14898号公報
【特許文献7】実開平2−39747号公報
【特許文献8】特開平11−69966号公報
【特許文献9】特開平9−140826号公報
【特許文献10】米国特許第5190110号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の灰皿において消火のために水を入れているだけでは、灰皿を掃除する際、吸殻と水とを区別して捨てるための手間がかかり、吸殻に含まれるニコチンが水と混じって悪臭を発し衛生面でも問題がある。また水は蒸発するので定期的に注水する必要があり、消火用ゲルを用いる場合でも長期間にわたって消火能力を高く維持するためには、屋外や乾燥している環境下では特に定期的な注水作業が必要がある。
本発明では、清掃時の手間を省くことができる灰皿、そして消火のための水の注水作業を簡略化できる灰皿、そして消火能力が高く衛生面に優れる灰皿、さらには優れた消火作用、消臭作用を有する消火用ゲルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の網状容器を灰皿に取り付けること、特定の粒度分布を有する吸水性樹脂や水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを消火材として用いること、さらには網状容器に優れた消火作用を有する消火用ゲルを内在させることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の諸目的は、下記の(1)〜(21)により達成される。
(1):吸水性樹脂、植物成分および水を含むことを特徴とする消火用ゲル。
(2):さらに無機塩又は有機塩を含むことを特徴とする(1)に記載の消火用ゲル。
(3):前記吸水性樹脂及び植物成分が、粒子状であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の消火用ゲル。
(4):前記植物成分が、茶葉及び/又は茶葉抽出物であることを特徴とする(1)〜(3)の何れか一つに記載の消火用ゲル。
(5):好ましくは、前記茶葉が緑茶を原料とする茶葉を含んでなり、目開き150μmの金網を通過する該茶葉の微粒子の割合が10質量%以下であることを特徴とする(4)に記載の消火用ゲル。
(6):吸水前の前記吸水性樹脂中の粒子径150μm未満の微粒子の割合が20質量%以下であることを特徴とする(1)〜(5)の何れか一つに記載の消火用ゲル。
(7):吸水性樹脂、無機塩又は有機塩、および水を含む消火用ゲルであって、吸水前の該吸水性樹脂中の粒子径150μm未満の微粒子の割合が20質量%以下であることを特徴とする消火用ゲル。
(8):前記吸水性樹脂が、ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体であることを特徴とする(1)〜(7)の何れか一つに記載の消火用ゲル。
(9):好ましくは、前記吸水性樹脂が逆相懸濁重合で得られる球形粒子であることを特徴とする(1)〜(8)の何れか一つに記載の消火用ゲル。
(10):前記吸水性樹脂が、水面に浮いていることを特徴とする(1)〜(9)の何れか一つに記載の消火用ゲル。
(11):好ましくは、前記消火用ゲルが灰皿用の消火材として用いられることを特徴とする(1)〜(10)の何れか一つに記載の消火用ゲル。
(12):(1)〜(11)に記載の消火用ゲルを用いることを特徴とする消火方法。
(13):灰皿での煙草の消火に用いられることを特徴とする(12)に記載の消火方法。
(14):水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを用いることを特徴とする消火方法。
(15):水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを内在することを特徴とする灰皿。
(16):水を貯えた水槽(1)と、水より比重の小さい耐火性素材(2)と、吸殻を収容する網状容器(3)とを有し、該網状容器(3)は、該耐火性素材(2)と接合した状態で、該水槽(1)の水面に浮いていることを特徴とする灰皿。
(17):好ましくは、前記耐火性素材(2)は、前記網状容器(3)の上部に具備されて接合していることを特徴とする(16)に記載の灰皿。
(18):好ましくは、前記網状容器(3)に吸水性素材(4)が内在することを特徴とする(16)又は(17)に記載の灰皿。
(19):前記網状容器(3)に、(1)〜(11)に記載の消火用ゲルが内在することにより水面に浮いていることを特徴とする(16)〜(18)の何れか一つに記載の灰皿。
(20):好ましくは、前記網状容器(3)の材質がステンレス金網であることを特徴とする(16)〜(19)の何れか一つに記載の灰皿。
(21):好ましくは、前記灰皿がスタンド型灰皿であることを特徴とする(16)〜(20)の何れか一つに記載の灰皿。
【発明の効果】
【0008】
本発明の灰皿を使用すれば、一度たっぷり水を注水することにより水量に応じて水面に浮いている網状容器の高さが変動するだけで水とは絶えず接触しているので長期間にわたって消火能力を高く維持できる。また灰皿を掃除する際、網状容器を水槽から引き揚げるだけで吸殻と水との分離ができるので、わざわざ吸殻を手で区別して捨てるための手間が省ける。さらに本発明の消火用ゲルはゲル間の隙間水を確保しやすく、その隙間水により消火作用を向上させることができる。消火能力が高い本発明の消火用ゲルを本発明の灰皿の網状容器に内在しておけば、さらに機能性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について好適な図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の第一実施形態に係るスタンド型灰皿の斜視図である。外観は駅やデパートの喫煙場所等に設置されている一般的なスタンド型灰皿と同様である。
図2は図1の分解斜視図である。図2において、灰皿の本体は水を貯えた水槽(1)と、水より比重の小さい耐火性素材(2)と、吸殻を収容する網状容器(3)とを有している。本発明で水槽とは、水を貯えておくことができる容器を意味する。容器の材質は金属(ステンレス、アルミニウム)、ガラス、プラスチック等が挙げられるが、耐熱性があり、防錆加工を表面に施したものが好ましい。
上記耐火性素材(2)としては、水より比重が小さいものが好ましく、比重が0.02以上0.95g/cm3以下のものが好ましい。具体的には比重が0.5以上1.0g/cm3未満の軽石(天然軽石、セラミック軽石)、アルミホイルを表面に覆った発泡ポリエチレン、又は発泡ポリスチレン、又は蓋をしたペットボトル容器、又は魚釣り用具の浮き等が挙げられる。アルミニウム以外の金属耐熱材でコーティングする形態でも良い。火山噴出物である軽石は耐火性が良く、多孔質の不燃性鉱物材料である点、また芳香性のある植物精油を多く担持できる点で、また発泡ポリエチレンは加工性に優れる点で、各々好ましい。
ポリエチレンフォームは比重が0.025〜0.20g/cm3と非常に軽い材料である。一般的に低密度ポリエチレンに有機系発泡剤、架橋剤等を添加して、密閉された型内で発泡剤と架橋剤を熱分解させることにより製造される。
また、蓋をしたペットボトル容器は、比較的高荷重でも使用できる点、廃ペットボトル容器のリサイクルの一用途になる点で好ましい。
【0010】
これら水より比重の小さい耐火性素材を複数個、水面に浮かせて、その上に上記網状容器(3)を載せた時、その網状容器(3)の重量が、下方から受ける浮力以上にならなければ、上記網状容器(3)は水面に浮く状態を維持することができる。上記網状容器(3)の素材としては、ステンレス金網、銅金網等が挙げられる。網の孔径(目開き)としては、1.5cm以下が好ましく、400メッシュ〜3メッシュがより好ましく、400メッシュ〜16メッシュがさらに好ましく、200メッシュ〜20メッシュがさらに特に好ましく、100メッシュ〜60メッシュが最も好ましい。目開きが1.5cm(上限)より大きくなると、吸殻や煙草の灰が通過しやすくなり、吸殻と水との分離作業が不充分となる。目開きが400メッシュ(下限)より小さくなると、水の通液性が低下するので消火能力が低下する。なお、各金網のメッシュは、3メッシュ(約6.7mm)、16メッシュ(約1mm)、20メッシュ(約850μm)、60メッシュ(約250μm)、100メッシュ(約150μm)、200メッシュ(約75μm)、400メッシュ(約38μm)程度の目開きを有する。なお、上記のメッシュの絶対数値はJIS、Tylerを参考とする。
錆びやすい網状容器の場合は、表面を耐水性塗料でコーティングすると長期間、使用することができる。塗料でコーティングする場合は、比較的、目開きの大きい60〜100メッシュが好ましい。見開きが小さすぎると、塗料によって孔が閉塞する箇所が生じてしまう。
【0011】
従来のスタンド型灰皿での消火用の水は蒸発する度に、注水する必要があるが、本発明の灰皿では、一度たっぷり水を注水しておけば、水量に応じて水面に浮いている網状容器(3)の高さが変動するだけで水とは絶えず接触しているので長期間にわたって消火能力を高く維持できる。また、灰皿を掃除する際、網状容器を水槽から引き揚げるだけで水との分離ができるので、吸殻と水とを区別して捨てるための手間が省ける。
水量に応じて、網状容器の高さが変動する際、水平を保つための工夫としては、網状容器のフレーム部分の数箇所に穴を空けておき、その中に通した棒を灰皿本体に固定しておけば、棒の方向に沿って水平に動くこととなる。
図3は図2の灰皿本体の断面図である。
また、上記網状容器(3)と上記耐火性素材(2)との接合状態について図4〜図6に、その他の実施形態を示す。図4は網状容器の内側の底部に耐火性素材が接着した形態で浮いており、図5は網状容器が凹部を持つ形状であり、凹部が吸殻の収容空間となる。凹部の形状部分では、水を下からと横からの双方から取り込むことができる。図6は網状容器の凹部の外側の周りを耐火性素材で囲んで接合している形態である。図6で用いる耐火性素材は、加工性に優れる材質が好ましい。例えば、発泡ポリエチレン(アルミホイルで表面コート)が挙げられる。
図4〜図6の形態では図3と異なり、耐火性素材(2)は、網状容器(3)の上部に具備されて接合していることが特徴である。この形態では、網状容器に、外から荷重がかからなくても、接合している耐火性素材の重量分の荷重が網状容器にかかっていることにより、網状容器の底部は水で充分に浸されるので消火能力が高くなる。
具体的には、図8と図9の比較実験の様子で示す。図7は各吸殻受けを真上から見た図である。
図8は耐火性素材(2)が、ステンレス金網(9)の上部に接合している形態の吸殻受けを水槽に浮かべたときの側面図である。
アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける吸殻収容空間は水に充分浸っている。
図9は耐火性素材(2)が、ステンレス金網(9)の下部に接合している形態の吸殻受けを水槽に浮かべたときの側面図である。
吸殻を受けるステンレス金網の上部(吸殻収容空間)は、上から荷重をかけると水に浸ることができる。100メッシュの金網では、荷重をかけないと、上部は水で濡れない。
以上の比較実験から消火能力を高めるために耐火性素材(2)は、ステンレス金網(9)の上部に具備されて接合している方が水の確保の点で好ましい。また、ステンレス金網の目開きは大きいほど水に浸りやすくなるが、大きすぎると吸殻や灰が落ちてしまので好ましくない。
【0012】
図10は本発明の第二実施形態に係る灰皿本体の断面図である。図10では、図5の上記網状容器に、吸水性素材(4)を内在させることを特徴とする形態である。吸水性素材(4)として、具体的には吸水性樹脂、HIPEフォーム、ポリウレタンフォーム等のフォーム材料、ティッシュ、パルプ、スポンジの破砕物、茶葉等が挙げられる。吸水性素材が内在することによる効果としては、網状容器の底部外面に接する水を吸水性素材が吸水することにより、網状容器の底部内面に水を引き上げることが挙げられる。網状容器は水面に浮いているので、常に水と接触することが可能となり、内在する吸水性素材の含水率は低下することなく、高く維持できる。吸水性素材は火が消せるだけの保水力を呈する素材であれば良いが、保水力の大きい吸水性樹脂が好ましく、粒子状の吸水性樹脂は毛細管現象によりその効果が大きくなるので、特に好ましい。また、上記網状容器に吸水性樹脂を内在しておけば水中へのニコチン等の煙草成分の混入が抑制され水の濁りが低減される。これは、水より比重の小さい耐火性素材で保持されて水面に浮いている吸水性樹脂が介在することにより、煙草成分の水中への溶出が遅くなるからと考えられる。
特に水より比重の小さい耐火性素材で保持されて吸水性樹脂が水面に浮いている形態以外にも、吸水性樹脂単体で浮くことができるものを適用すれば、吸水性樹脂の使用量を低減できる可能性がある。
【0013】
その他の利点としては、前記水槽(1)中に、前記耐火性素材(2)の浮力で浮いている前記網状容器(3)に、火の点いた煙草を投入することにより消火し、その吸殻を捨てる際、吸水性樹脂が網状容器に内在すると、網状容器を引き揚げた時に網状容器中の吸水性樹脂が吸殻や灰の飛散を抑制して塊状のごみとして取り出せることが挙げられる。つまり、吸殻や灰を付着させて造粒物として簡単に廃棄できるのである、さらには、吸水性樹脂があると、回収したごみ袋からの水漏れの可能性も低くなる。
本願発明者は、上記で吸水性樹脂の効果を説明したように、灰皿について鋭意検討した結果、灰皿用の消火材等に好適に用いられる特定の消火用ゲルについて、消火作用に優れ、さらには消臭作用を有することを見出した。以下にその詳細について説明する。
本発明の消火用ゲルを得るための吸水性樹脂としては、親水性単量体を重合して得られる水膨潤性架橋重合体、水溶性エチレン性不飽和単量体を架橋重合した吸水性樹脂等が例示できる。その構造、組成としては特に限定されないが具体的には部分中和架橋ポリアクリル酸重合体(米国特許第4625001号、同第4654039号、同第5250640号、同第5275773号等)、架橋され部分的に中和された澱粉ーアクリル酸グラフトポリマー(米国特許第4076663号)、イソブチレンーマレイン酸共重合体(米国特許第4389513号)、酢酸ビニルーアクリル酸共重合体のケン化物(米国特許第4124748号)、アクリルアミドや(共)重合体の加水分解物(米国特許第3959569号)、アクリロニトリル重合体の加水分解物(米国特許第3935099号)、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルピロリドン架橋重合体、スルホン酸基含有架橋重合体、Nービニルアミド系架橋重合体、(メタ)アクリル酸エステル系架橋重合体、澱粉ーアクリル酸架橋グラフト重合体、ビニルアルコール架橋重合体、ポリアルキレングリコール架橋重合体、澱粉ーアクリロニトリル架橋共重合体等が挙げられる。
中でも、一般的に衛材分野で使用される吸水能力に優れるアクリル酸またはその塩を主成分とするポリアクリル酸(塩)系架橋重合体が好ましい。ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体を得るための重合性単量体がアクリル酸および又はその塩である場合、その構成単位としてはアクリル酸0〜50モル%およびアクリル酸塩100〜50モル%(但し、両者の合計量は、全構成単位に対して70〜100モル%とする)の範囲にあるものが好ましく、アクリル酸10〜40モル%およびアクリル酸塩90〜60モル%の範囲内にあるものがより好ましい。なお、この酸および塩との比(塩/(酸+塩))を中和率と呼ぶ。塩としてはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などを例示する事ができる。塩を形成するためには単量体の状態でアクリル酸を中和しても良く、アクリル酸およびアクリル酸塩を混合しても良く、また、重合性単量体の重合途中または重合後に重合体として中和しても良く、それらを併用しても良い。
【0014】
本発明の吸水性樹脂の中でも好ましく用いられるポリアクリル酸(塩)系架橋重合体としては、主成分としてアクリル酸および/またはその塩に併用して、必要により他の単量体を共重合させたものであってもよい。他の単量体の具体例としては、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸などのアニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジンなどのノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびそれらの四級塩などのカチオン性不飽和単量体などを挙げることができる。
また、N−n−プロピルアクリルアミド,N−n−プロピルメタクリルアミド,N−イソプロピルアクリルアミド,N−エチルアクリルアミド、などのN‐アルキル(メタ)アクリルアミド誘導体、N,N−ジエチルアクリルアミドなどのN,N‐ジアルキル(メタ)アクリルアミド誘導体、アクリロイルピペリジン、アクリロイルピロリジンなどを主成分として用いると得られる架橋重合体が感温性を示し、一定温度以上では吸水倍率が低下するようになるので、水を吸水している膨潤ゲルが水を放出し、ゲル間の隙間水(吸水性樹脂の膨潤ゲル粒子間、粒子表面に存在している水)が生じるので、火のついた煙草と接した場合、消火用の水として役割を果たす可能性がある。
本発明の吸水性樹脂に架橋構造を導入する方法として、架橋剤を使用しない自己架橋型のものや、2個以上の重合性不飽和基或は2個以上の反応性基を有する内部架橋剤(架橋性単量体)を共重合または反応させるもの等を例示できる。
これらの内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルヘキサ(メタ)アクリレ−ト、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレートなどを挙げることが出来る。またこれらの内部架橋剤は2種以上使用してもよい。その使用量としては前記単量体成分に対して0.002〜2モル%、より好ましくは0.005〜2モル%、さらに好ましくは0.01〜2モル%である。内部架橋剤が0.002モル%未満では、得られる吸水性樹脂の水可溶性成分量の割合が多くなり、また吸水したゲルの強度が低下する。一方、内部架橋剤の量が2モル%を超えると架橋密度が高くなり過ぎて、得られる吸水性樹脂の吸収倍率が低下し、充分な水を確保することができなくなる。
【0015】
なお重合に際しては、澱粉・セルロ−ス、澱粉・セルロ−スの誘導体、ポリビニルアルコ−ル、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子や、次亜リン酸(塩)等の連鎖移動剤を添加してもよい。
本発明の吸水性樹脂を得る為に上記したアクリル酸またはその塩を主成分とする単量体を重合するに際しては、バルク重合や沈澱重合を行うことも可能であるが、性能面や重合の制御の容易さから、単量体を水溶液として、水溶液重合、逆相懸濁重合、逆相乳化重合を行うことが好ましい。かかる重合方法は、従来公知であって例えば、米国特許第4625001号、同4769427号、同4873299号などに記載されている。
【0016】
水溶液重合は、疎水性分散溶媒等モノマーの分散溶媒を用いずに重合性単量体の水溶液を直接重合する方法であり、連続ベルト重合、連続またはバッチニーダー重合等で製造できる。逆相懸濁重合または逆相乳化重合は重合性単量体の水溶液を疎水性有機溶媒に懸濁あるいは乳化させる、モノマーを分散させる重合方法である。モノマーを分散させる界面活性剤ないし分散剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を例示できる。
具体的に、用いられるアニオン性界面活性剤としては、混合脂肪酸ナトリウム石鹸、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩等がある。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等がある。
カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤としてはアルキルアミン類やアルキルベタイン等がある。
また、その他分散剤としてエチルセルロースやエチルヒドロキシエチルセルロース等がある。
【0017】
これら界面活性剤や分散剤使用量は重合の種類によって適宜選択することができる。一般には重合性単量体と架橋性単量体からなる単量体成分全体の質量100質量部に対し、0.1〜30質量部であることが好ましく、1〜30質量部であることがより好ましく、さらに好ましくは3〜5質量部である。また、これらの分散剤ないし界面活性剤の使用量について後述する有機溶媒に対して0.001〜10質量%、好ましくは0.001〜1質量%である。
逆相懸濁重合ないし逆相乳化重合の際に使用する有機溶媒としては、基本的に重合に不活性であればいかなるものも使用できる。その一例を挙げれば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環状炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。この内、工業的入手の安定性、品質等から見てn−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサンが好ましい溶媒として挙げることができる。これら疎水性溶媒の使用量は重合性単量体含有水溶液1質量部に対して、0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは0.6〜5質量部である。
逆相乳化重合に使用する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン等を挙げることができ、中でもエタノール、イソプロパノールが好ましい。
上記で説明した水溶液重合、逆相懸濁重合または逆相乳化重合の重合を行うにあたり、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル等の油溶性アゾ化合物、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性ラジカル重合開始剤、ベンゾインエーテル類、アシルホスフィンオキシド類及びアシルホスホナート類等の光開裂してラジカルを生ずる化合物、及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン類等の水素引き抜きや電子移動によってラジカルを生成する化合物等の光重合開始剤、紫外線や電子線などの活性エネルギー線等を用いることができる。また、上記過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩および他の過酸化物などの酸化性ラジカル重合開始剤を用いる場合、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤を併用してレドックス重合としても良い。重合方法に応じて、最適な重合開始剤を選択すればよいが、これらの重合開始剤の使用量は単量体中に通常、重合性単量体と内部架橋剤(架橋性単量体)の合計に対して0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜0.5モル%である。これらの重合開始剤の使用量が0.001モル%未満の場合には、未反応の単量体が多くなり、従って、得られる吸水性樹脂中の残存単量体量が増加するので好ましくない。一方、重合開始剤の使用量が2モル%を超える場合には、重合の制御が困難となり、得られる吸水性樹脂の水可溶性成分量が増加することがあるので好ましくない。
重合開始時の温度は、使用する重合開始剤の種類にもよるが、15〜130℃の範囲が好ましく、20〜120℃の範囲がより好ましい。重合開始時の温度あるいは反応中の重合温度が上記の範囲から外れると、得られる吸水性樹脂の残存単量体量が増加したり、過度の自己架橋反応が進行して吸水性樹脂の吸水倍率が低下する等の不都合を招来する場合がある。また、反応時間および重合圧力は特に限定されるものではなく、単量体や重合開始剤の種類、反応温度等に応じて適宜設定すれば良い。
重合後に得られる含水ゲル状重合体はその後、必要によりミートチョッパー等で粉砕し、通常さらに乾燥させる必要がある。
【0018】
水溶液重合の場合では、重合反応中あるいは重合反応終了後に得られる含水ゲル状重合体は、所定の方法によって約0.1mm〜約50mm、さらには0.2〜10mm、より好ましくは0.5〜5mm程度の破片に破断し、乾燥すると本発明に好適な吸水性樹脂とすることができる。乾燥温度は、特に限定されるものではないが、例えば、100〜250℃の範囲内、より好ましくは120〜200℃の範囲内とすればよい。また、乾燥時間は適宜決定され、特に限定されるものではないが、10秒〜5時間程度、さらには1分〜2時間程度が好適である。
逆相懸濁重合または逆相乳化重合の場合では、重合反応中あるいは重合反応終了後に得られる含水ゲル状重合体は、例えば炭化水素等の有機溶媒中に分散した状態で共沸脱水して固形分量を60質量%以上、好ましくは70質量%以上とした後に、デカンテーションあるいは蒸発により有機溶媒と分離し、必要に応じてさらに乾燥することができる。
また、乾燥方法としては、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸による脱水、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等、種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。
上記の重合により得られた吸水性樹脂の形状は一般に不定形破砕状、球状、繊維状、棒状、略球状、偏平状等である。
【0019】
本発明の吸水性樹脂はその表面近傍を表面架橋剤でさらに架橋処理を行っても良い。表面架橋処理に用いることの出来る表面架橋剤としては例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物や、それらの無機塩ないし有機塩(例えば、アジチニウム塩等);2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物;2−オキサゾリドン等のオキサゾリドン化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、オキセタン化合物、環状尿素化合物、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物、および、その多価アミン付加物(例えばハーキュレス製カイメン;登録商標);γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γーアミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤;亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物又は塩化物等の多価金属化合物等が挙げられる。
これらの表面架橋剤は単独で使用してもよく、また、2種類以上併用しても良い。なお、吸水性樹脂に対する表面架橋剤の使用量は、吸水性樹脂の固形分100質量部に対して0.001〜10質量部の範囲内、より好ましくは0.01〜5質量部の範囲内とすればよい。
上記架橋剤の上記範囲内の使用量で吸水性樹脂の表面を架橋することで、得られる吸水性樹脂の表面の架橋密度を吸水性樹脂内部よりも高くすることができ、加圧下での吸収特性に優れる吸水性樹脂を得ることができる。また、吸水性樹脂の初期吸液速度(吸液開始直後の吸液速度)がより一層速くなる。また水との混合時に吸水性樹脂同士がママコとなって凝集するのを低減できる。
上記架橋剤の使用量が0.001質量部未満であれば、得られる吸水性樹脂の表面の架橋密度を吸水性樹脂内部よりも高めることができず、加圧下での吸収特性の改良効果が充分に得られない場合がある。一方、上記架橋剤の使用量が10質量部を超えると、添加した架橋剤が効率よく使用されずに不経済であり、また、上記架橋剤が過剰量となるため吸水性樹脂の表面の架橋密度を適正に制御することが困難となるために、無加圧下での吸収量が大きく低下するおそれがあるので好ましくない。
本発明の表面架橋剤と吸水性樹脂との混合の際には水を用いてもよい。水の使用量も一般に、吸水性樹脂の固形分100質量部に対して、0.5を越え、10質量部以下が好ましく、1質量部〜5質量部の範囲内がより好ましい。
【0020】
また、表面架橋剤やその水溶液を混合する際には親水性有機溶媒や、第三物質を用いてもよい。親水性有機溶媒を用いる場合には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、メトキシ(ポリ)エチレングリコール等のエーテル類;ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類等が挙げられる。親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂の種類や粒径、含水率等にもよるが、吸水性樹脂の固形分100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、0.1〜10質量部の範囲内がより好ましい。また、第三物質として欧州特許第0668080号公報に示された無機酸、有機酸、ポリアミノ酸等を存在させてもよい。
本発明の吸水性樹脂と表面架橋剤とを混合する混合方法は特に限定されないが、たとえば吸水性樹脂を親水性有機溶剤に浸漬し、必要に応じて水および/または親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を混合する方法、吸水性樹脂に直接、水および/または親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を噴霧若しくは滴下して混合する方法等が例示できる。
【0021】
吸水性樹脂と表面架橋剤とを混合した後、通常加熱処理を行い、架橋反応を遂行させる。上記加熱処理温度は、用いる表面架橋剤にもよるが、40℃以上250℃以下が好ましい。処理温度が 40℃未満の場合には、吸水特性が十分に改善されない場合がある。処理温度が 250℃を越える場合には、吸水性樹脂の劣化を引き起こし、性能が低下する場合がある。加熱処理時間は1分−2時間程度、好ましくは5分−1時間程度である。
また、吸水性樹脂の表面にN‐アルキル(メタ)アクリルアミド誘導体やアクリロイルピペリジン、アクリロイルピロリジンの重合体などの感温性ポリマーをコーティングしておくと、温度によって吸水倍率の変化する吸水性樹脂を得る事ができるので、温度を変えることによって、水の吸収・放出現象が生じることにより消火能力が変化するポリマーとなる。
本発明において必要に応じてSiO2などの不溶性無機粒子や親水性溶媒、好ましくは水を添加混合して造粒しても良い。
この際、使用される水の量は、使用する吸水性樹脂の含水率にもよるが、通常、吸水性樹脂の固形分100質量部に対し、0.5〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部の範囲である。また、本発明において、水以外に親水性有機溶媒を用いてもよい。吸水性樹脂の固形分100質量部に対し、0〜10質量部、好ましくは0〜5質量部、より好ましくは0〜3質量部の範囲である。親水性溶媒の添加に際しての温度は混合性から好ましくは0〜80℃、さらには40〜70℃の範囲である。また、親水性溶媒を吸水性樹脂に噴霧あるいは滴下する方法が好ましく、噴霧する方法がより好ましい。噴霧される液滴の大きさは、平均径が1〜300μmが好ましく、1〜200μmがより好ましい。
次に本発明の消火用ゲル(消火用含水ゲル)について説明する。
本発明の消火用ゲルは上記の方法により得られた吸水性樹脂の水膨潤ゲルを好ましくは30体積%以上、より好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは70体積%以上含み、実質粒子状のものである。上限値としては95体積%以下が好ましく、より好ましくは90体積%以下である。また、ゲル分散液の形態であることが好ましい。吸水性樹脂の水膨潤ゲルについて吸水量は、吸水性樹脂固形分重量に対して、4倍以上、好ましくは14倍以上、さらに好ましくは50倍以上である。
通常、水膨潤ゲルを放置すると乾いていくが、本発明では水膨潤ゲルに、茶葉及び/又は茶葉抽出物等の植物成分、無機塩や有機塩を添加することにより、吸水した水が徐々にゲル表面から放出されることを利用し、消火に有効なゲル間の隙間水(吸水性樹脂の膨潤ゲル粒子間、粒子表面に存在している水)を生じさせるものである。すなわち、水を吸収した水膨潤ゲルに上記添加剤を添加すると、抽出成分濃度や塩濃度が向上するので、特にポリアクリル酸(塩)系架橋重合体では吸収倍率が下がるので、水膨潤ゲルから水が放出されるのである。吸水性樹脂の膨潤ゲル粒子間、粒子表面に存在している水が多いほど消火能力が高いものとなる。
また、本発明の消火用ゲルは、消火能力が高いとともに、香料や茶葉等の植物成分を含むことにより、消臭能力も高い。好ましい使用方法としては、本発明の灰皿のように下方より水が常に供給される状態で使用されると機能性がさらに向上する。
【0022】
本発明で見出した消火用ゲルの特徴は、1)吸水性樹脂、植物成分および水を含むこと、2)吸水性樹脂、植物成分、水、さらに無機塩又は有機塩を含むことである。
上記水槽(1)中の消火用ゲルに無機塩が添加された具体例について図11と図12の比較実験の様子で示す。
図11は図8の吸殻収容空間に、粒子状の吸水性樹脂を内在させた時の様子である。吸水性樹脂としてポリアクリル酸部分中和物架橋体を上記水槽(1)中に内在させると、例えば、紙オムツで使われるポリアクリル酸(Na塩)架橋重合体では自重の100倍〜500倍という多量の水を吸水することができるので、吸水性樹脂が水を多量に吸水して膨潤し吸殻受けから外へあふれ出そうになる。膨潤ゲルは大気に直接、接するため時間の経過に伴ってゲル中の水が徐々に蒸発して乾燥してしまう。特にゲル表面は乾燥しやすいので消火能力が低下しやすい。
一方、図12は図11の状態に塩化ナトリウムを水槽に添加した時の様子である。無機塩である塩化ナトリウムが添加されるので、塩濃度が高くなり吸水性樹脂の吸水倍率が低下するので、膨潤ゲルの吸水量が低下することとなる。一般的に、吸水性樹脂は、水中に塩類が含まれていると、その影響によって吸水倍率が低下する。これは、吸水性樹脂の高分子鎖の広がりが水中の塩類の存在によって抑制されるためである。その結果、膨潤ゲルは収縮し、吸殻受けからあふれ出ることなく、ゲル分散液となり、ゲル間の隙間水を充分確保できる。
通常、吸水性樹脂が使われる様々な用途では、吸水倍率が高いことが望まれるが、本発明では消火することを目的とするので、ゲル間の隙間水を充分確保するために吸水倍率を、ある程度低く調整することが必要である。そのための手法として、具体的に無機塩の添加を上記で説明したが、有機塩や植物成分からの抽出成分でも同様の効果を得ることができる。
【0023】
添加剤としては、例えば、無機塩の金属ハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、金属(亜)硝酸塩、その他、無機塩以外にも金属水酸化物、有機塩が挙げられる。これら添加剤は単独で用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
金属ハロゲン化物としては、例えば、カルシウムやマグネシウム、リチウム、亜鉛、アルミニウム、カリウム、スズ等のハロゲン化物、即ち、これら金属の塩化物、臭化物、およびヨウ化物が挙げられる。塩化ナトリウムは海水を利用することができて安価である。潮解性物質の塩化カルシウム、塩化マグネシウムは吸水性樹脂に添加されるとゲル表面の水の蒸発が抑制されて保水力が向上する効果も発現される。尚、潮解とは固体が空気中の水分を吸収して、次第に溶解していく現象をいう。
潮解性物質は、水溶性であり、かつ、同一温度において、空気中の水蒸気圧よりも、その飽和水溶液の水蒸気圧の方が小さい。従って、潮解性物質は、水の蒸発を抑制する能力、即ち保水力に優れている。消火用ゲルに潮解性物質が含まれると、保水力が向上し、消火用ゲル中の水が時間の経過に伴って蒸発することが低減される。即ち、時間の経過に伴って消火用ゲルが徐々に乾燥する度合いが低くなり、それゆえ、消火用ゲルの消火能力を長期間にわたって維持することができる。
金属ハロゲン化物は、無水物であってもよく、また水和物となっていてもよい。また、1価の金属塩(塩化ナトリウム、塩化カリウム等)に比べて、2価の金属塩(塩化カルシウム、塩化マグネシウム等)は、吸水性樹脂の内・外部で高分子の鎖間の結合を誘導し、吸水性樹脂自体の吸水能力を低下させるので、吸水性樹脂の廃棄時に外部溶液のイオン濃度が再び低くなってもさらに大きく膨潤して廃棄物がかさばる可能性が低い。
硫酸塩としては、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等が挙げられる。
金属(亜)硝酸塩としては、具体的には、例えば、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カルシウム等が挙げられる。
【0024】
水槽中(分散液中)の無機塩又は有機塩の濃度としては0.1〜20質量%の範囲(無機又は有機化合物質量の水に対する質量割合)で無機塩又は有機塩を添加すれば良く、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%がさらに好ましく、0.3〜0.7質量%が特に好ましい。
吸水性樹脂の吸水倍率を低下させるためのその他の添加剤として具体的に説明する。
金属水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
有機塩としては、特開平11―315147号公報でイオン封鎖剤として用いられる以下の化合物の塩が挙げられる。
(1)アミノカルボン酸及びその塩、(2)ポリカルボン酸及びその誘導体、(3)(ポリ)リン酸及びその誘導体、(4)N−アシル化グルタミン酸及びN−アシル化アスパラギン酸及びそれらの塩、(5)βージケトン誘導体、(6)トロポロン誘導体、(7)有機リン酸化合物。
(1)アミノカルボン酸及びその塩としてはジヒドロキシエチルグリシン、イミノジ酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、シクロヘキサンー1,2−ジアミンテトラ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、エチレングリコールジエチルエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、N−アルキルーN−カルボキシメチルアスパラギン酸、N−アルケニルーN'−カルボキシメチルアスパラギン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩もしくはアミン塩が挙げられる。中でもカルボキシル基を3個以上有するアミノカルボン酸及びその塩がイオン封鎖能の点で好ましい。
(2)ポリカルボン酸及びその誘導体としては、コハク酸、ポリアクリル酸、クエン酸モノアルキルアミド、クエン酸モノアルケニルアミド、マロン酸モノアルキルアミド、マロン酸モノアルケニルアミド、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩もしくはアミン塩が挙げられる。
(3)(ポリ)リン酸及びその誘導体としては、ヘキサメタリン酸、メタリン酸、トリポリリン酸、リン酸アルキルエステル、リン酸アルケニルエステル及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩もしくはアミン塩が挙げられる。
(4)N−アシル化グルタミン酸及びN−アシル化アスパラギン酸及びそれらの塩としては、例えば(株)味の素より市販されているアミソフトHS−11やGS−11等が挙げられる。
(5)βージケトン誘導体としては、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等が挙げられる。
(6)トロポロン誘導体としてはトロポロン、βーツヤプリシン、yーツヤプリシン等が挙げられる。
(7)有機リン酸化合物としてはエチリデンホスホン酸;1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸;アミノトリメチレンホスホン酸;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等を挙げることができるが、特に好ましいものは1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)である。塩として好ましいものは、Na塩、K塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩を挙げることができる。これらの化合物は、金属封鎖剤の一種として知られているものである。
これらイオン封鎖剤の中でも好ましくはカルボキシル基を3個以上有するアミノカルボン酸及びその塩であり、中でもジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、シクロヘキサンー1,2−ジアミノテトラ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸及びその塩が、ゲルの劣化を抑制できる点で最も好ましい。
本発明において上記イオン封鎖剤の使用量は、吸水性樹脂の固形分100重量部に対して好ましくは0.0001〜50質量部、さらに好ましくは0.0002〜10質量部の範囲である。
【0025】
また、有機酸の多価金属塩も挙げられる。好ましくは炭素数が分子内に7個以上の有機酸多価金属塩で、脂肪酸、石油酸、高分子酸等のアルカリ金属塩以外の金属塩からなるものである。
上記の有機酸多価金属塩を構成する有機酸としては、カプロン酸、オクチル酸、オクチン酸、デカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の長鎖または分枝の脂肪酸、安息香酸、ミリスチシン酸、ナフテン酸、ナフトエ酸、ナフトキシ酢酸等の石油酸、ポリ(メタ)アクリル酸やポリスルホン酸等の高分子酸が例示できるが、分子内にカルボキシル基を有する有機酸であることが好ましく、より好ましくはカプロン酸、オクチル酸、オクチン酸、デカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、牛脂肪酸やヒマシ硬化脂肪酸等の脂肪酸である。さらに好ましくは分子内に不飽和結合を有しない脂肪酸で、例えばカプロン酸、オクチル酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸である。最も好ましくは、炭素数が分子内に12個以上の分子内に不飽和結合を有しない長鎖脂肪酸で例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸である。これら炭素数が大きいものを吸水性樹脂粒子に添加した場合、表面が撥水処理されることとなり、吸水性樹脂粒子を水中に投入した場合、浮遊する現象が見られる。
上記の有機酸多価金属塩を構成する金属塩はアルカリ土類金属塩や遷移金属塩等のアルカリ金属塩以外の金属塩であれば特に限定するものではないが、その入手の容易さからバリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が好ましい。また有機酸多価金属塩を構成する上記有機酸と上記金属塩との組み合わせについては、特に限定されるわけではなく、またそれらを単独および/または二種以上を併用しても良い。
有機酸多価金属塩の添加量は、吸水性樹脂固形分100質量部に対して、0を超えて30質量部未満の範囲が好ましく、より好ましくは0.001質量部〜10質量部である。
次に、防炎(加工)剤として用いられる有機リン化合物、含ハロゲン有機リン化合物、無機リン酸化合物、その他、重炭酸アンモニウム等の無機化合物が挙げられる。有害性、試薬入手容易性の点を考慮すると、無機塩のリン酸第2アンモニウム又はリン酸第1アンモニウムは、その水溶液は現に山火事に使用されており、また化学肥料としても使用されている物質であるので、実用性がある。なお、防炎加工とは火災予防の一つの手段として、炎を近づけてもすぐには燃え上がらず、炎を遠ざけるとすぐに消えるような性質を持たせる加工のことである。これらの添加剤は、塩濃度の調整と火災予防の点でも好ましい。
【0026】
次に植物成分について説明する。好ましくは、WO03/104349号、特開2002−285021号に記載の植物粉末が挙げられる。
本発明において用いることのできる植物粉末とは、維管束植物(種子植物、シダ植物)、コケ植物、藻類の粉末(粒子状)であり、好ましくは維管束植物の粉末である。また、植物加工業や食物加工業における製造工程で副生する植物滓を粉砕することにより得られたものであってもよい。さらに、香辛料であることも好ましい形態である。また、茶葉及び/または茶葉抽出物であることも好ましい形態である。
本発明においては、植物粉末として用いる植物の使用する部分については、本発明の性能を満たすもの(抽出成分により吸水性樹脂の吸水倍率を低下できるもの、消臭効果のあるもの)であれば特に限定されない。例えば、葉、枝、幹、茎、根、実、花、種子、樹皮などから選ばれる少なくとも1部分である。
本発明において用いることのできる植物粉末が維管束植物の粉末である場合には、その維管束植物としては、好ましくは、イネ科、カエデ科、カキノキ科、カバノキ科、キク科、シソ科、スギ科、セリ科、バラ科、ブドウ科、ヒノキ科、マツ科、ブナ科、アブラナ科、マメ科、ミカン科、ウリ科、ナス科、コショウ科、ショウガ科、クスノキ科、アオイ科、ツバキ科から選ばれる少なくとも1種の維管束植物である。イネ科の維管束植物としては、例えば、イネ、ササ、竹、トウモロコシ、麦などが挙げられる。カエデ科の維管束植物としては、例えば、カエデが挙げられる。カキノキ科の維管束植物としては、例えば、カキノキが挙げられる。カバノキ科の維管束植物としては、例えば、クマシデ、ハシバミ、シラカンバ、ハンノキなどが挙げられる。キク科の維管束植物としては、例えば、キク、ゴボウ、タンポポ、ヨモギなどが挙げられる。シソ科の維管束植物としては、例えば、ウツボグサ、エゴマ、オドリコソウ、シソ、ハッカなどが挙げられる。スギ科の維管束植物としては、例えば、スギ、コウヨウザン、タイワンスギが挙げられる。セリ科の維管束植物としては、例えば、ミツバ、ニンジン、パセリ、セロリなどが挙げられる。バラ科の維管束植物としては、例えば、ウメ、サクラ、シモツケ、バラ、アンズ、ナシ、モモ、リンゴ、イチゴ、スモモ、サンザシ、ビワ、シャリンバイ、ボケ、カマツカ、ナナカマド、ヤマブキなどが挙げられる。ブドウ科の維管束植物としては、例えば、ブドウ、ツタ、ノブドウが挙げられる。ヒノキ科の維管束植物としては、例えば、ヒノキ、ネズコ、アスナロ、ビャクシン、サワラなどが挙げられる。マツ科の維管束植物としては、例えば、カラマツ、ツガ、トウヒ、マツ、モミ、ヒマラヤスギなどが挙げられる。ブナ科の維管束植物としては、例えば、ブナ、クリ、シイノキ、ミラカシ、アラカシ、ウラジロガシなどが挙げられる。アブラナ科の維管束植物としては、例えば、ダイコン、アブラナなどが挙げられる。マメ科の維管束植物としては、例えば、アズキ、カンゾウ、ソラマメ、ダイズなどが挙げられる。ミカン科の維管束植物としては、例えば、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、ザボン、サンショウ、ユズ、レモン、ライムなどが挙げられる。ウリ科の維管束植物としては、例えば、カボチャ、キュウリ、スイカ、ヘチマ、ユウガオなどが挙げられる。ナス科の維管束植物としては、例えば、ナス、トウガラシ、ピーマン、トマトなどが挙げられる。コショウ科の維管束植物としては、例えば、コショウが挙げられる。ショウガ科の維管束植物としては、例えば、ショウガが挙げられる。クスノキ科の維管束植物としては、例えば、クスノキ、ショウノウ、クロモジ、シロモジ、ゲッケイジュ、シロダモ、ハマビワなどが挙げられる。アオイ科の維管束植物としては、例えば、タチアオイ、ゼニアオイ、フヨウ、ハイビスカス、カンアオイ、ケナフなどが挙げられる。ツバキ科の維管束植物としては、例えば、ツバキ、ヒサカキ、サカキ、モッコクなどが挙げられる。
本発明に用いることのできる香辛料とは、香辛料植物の種子、果実、花蕾、葉、樹皮、根茎を乾燥してそのまま用いたり、粉末にして用いたりし、食品の調味、薬味の役割を果たさせる物である。
本発明で特に好ましくは、茶葉やコーヒー豆、及び/又はこれらの抽出物が挙げられる。これらは破砕された粒子状や粉体であるものが好ましい。抽出物とは、抽出されたもの(抽出成分)を示す。これら植物成分から水中への抽出物(溶出物)の成分濃度が高くなると吸水性樹脂の吸水倍率は低下していく。例えば、茶葉の抽出成分ではアミノ酸類[グルタミン酸(Na)、テアニン、アスパラギン酸、アルギニン]、カテキン類[エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキン]、有機酸類[シュウ酸(Na)、クエン酸(Na)、コハク酸(Na)]、カフェイン、ショ糖、核酸[グアニル酸(Na),アデニル酸(Na)]、無機イオン[カリウム、マンガン、リン酸(Na)]といった成分がある。なお、抽出は水溶媒系、有機溶媒系、または水溶媒と有機溶媒の混合溶媒系からなる抽出剤が用いられる。抽出剤は、抽出物には含まれないものとする。
茶葉としては、例えば、アガリスク茶、アシタバ茶、アマチャズル茶、アロエ茶、いちょう葉茶、ウコギ茶、ウコン茶、ウラジロガシ茶、烏龍茶、オオバコ茶、柿の葉茶、カンゾウ茶、キク茶、ギムネマ茶、クコ茶、クマザサ茶、ゲンノショウコ茶、紅茶、サンザジ茶、シソ茶、ジャスミン茶、スギナ茶、センナ茶、桑の葉茶、そば茶、タヒボ茶、タンポポ茶、中国茶、鉄観音茶、甜茶、杜仲茶、ドクダミ茶、ナズナ茶、ナンテン茶、バセラ茶、バナバ茶、ハトムギ茶、ビワ茶、プアール茶、松の葉茶、ムギ茶、ヨモギ茶、緑茶、ほうじ茶、リンドウ茶、ルイボス茶等が挙げられ、好ましくはツバキ科の常緑低木及びその葉より飲用に適するように加工したもので、例えば緑茶、ジャスミン茶、紅茶、烏龍茶等が挙げられる。これらの茶葉は、含まれる香気成分により、煙草の臭いの消臭性、芳香性の点でも好ましい。
なお、緑茶にはカテキン類、カフェイン、ビタミン類(ビタミンC、β―カロチン、ビタミンE),γ―アミノ酪酸、フラボノイド、多糖類、フッ素、アミノ酸類(テアニン)、ミネラル類(リン、カリウム、亜鉛、マンガン、セレン)といった成分が含まれる。
同じ緑茶を原料としていても製法や粒度により成分が異なってくる。例えば、ほうじ茶では高温で焙じることにより、カフェインが少ないものとなる。そして、茶葉が超微粉末であると成分が効率良く抽出される。
また、上記の茶葉について、ツバキ科の葉、好ましくは緑茶由来の茶葉(緑茶を原料とする茶葉)を含んでなり、消火用ゲルからの水の放出速度を制御するために、茶葉の粒子径を調整することが好ましい。例えば、微粒子が少ないものを使用すると水の放出速度が遅くなる点で好ましい。微粒子が多いと、水に添加した場合、早くに茶葉成分が溶出するので、茶葉成分の影響で、吸水倍率の低下が起こり、消火用ゲルからの水の放出がすぐに生じる。茶葉成分の溶出速度は、茶葉の種類や茶葉の粒子径によって変わるので、水の放出速度を大きくする場合は、茶葉の微粒子の割合を多くすることが好ましい。さらには茶葉の抽出液を乾燥させた粉末を添加することが好ましい。また、高温の水では茶葉の成分の溶出が早くなるので、溶出速度を遅くする場合は、常温(20±5℃)の水を使用することが好ましい。なお、茶葉の溶出速度は抽出(使用)回数が多くなるに従い低下するので、使用済みの茶葉を用いて溶出速度を制御することもできる。
【0027】
茶葉の粒度分布(乾燥状態:含水率5±2%)において、水の放出速度を遅くする場合は、微粒子の割合が少ないことが好ましく、例えば、100メッシュ(目開き150μm)金網を通過する微粒子の量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。また、吸水性樹脂の平均粒子径に対して、茶葉の平均粒子径が大きい方が、時間をかけて消火用ゲルからの水の放出を行える点で好ましい。
一方、消火用ゲルを早く収縮させるために、水の放出速度を早くする場合は、微粒子の割合が多いことが好ましく、例えば、100メッシュ(目開き150μm)金網を通過する微粒子の割合が20質量%以上、好ましくは40質量%以上である。なお、上限値は100質量%以下、好ましくは90質量%以下である。
茶葉の使用量は、使用する茶葉の種類によっても異なるがその添加量は吸水性樹脂固形分 100質量部に対して、1〜10000質量部の範囲が好ましく、1000〜9000質量部の範囲がより好ましい。10000質量部を超えると茶葉の抽出物の成分濃度が高くなり、吸水性樹脂の吸収倍率が著しく低下する、また添加量にみあった消臭効果が得られなくなる。また消火用ゲル分散液全量に対する濃度としては、消火用ゲル分散液100質量部に対して、茶葉の添加量は0.1〜10質量部の範囲が好ましく、0.5〜4質量部の範囲がより好ましい。
ゲルを用いず、植物成分のみの形態でも良い。例えば、茶葉のみの消火材の場合では、消火材中(茶葉分散液中)の茶葉の濃度としては0.1〜10質量%の範囲(茶葉質量の水に対する質量割合)で茶葉を添加すれば消臭の点で良く、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%が特に好ましい。
茶葉等の植物成分と吸水性樹脂(ゲル)の混合物を得る方法としては、植物成分を吸水性樹脂に直接混合させる方法、植物成分を吸水性樹脂に直接混合したものに、水を噴霧若しくは滴下混合させる方法、植物成分を水や各種無機塩の溶液等に分散させたものを、吸水性樹脂に直接混合させる方法、吸水性樹脂に所望の水を添加したゲルに植物成分を直接混合させる方法等を例示できる。なお吸水性樹脂の重合時に植物成分を添加する方法や重合後の解砕ゲルに植物成分を直接混合させる方法も可能であるが植物成分からの抽出成分をゆっくりと抽出させる点では、吸水性樹脂に所望の水を添加したゲルに植物成分を直接混合させる方法が好ましい。特に消火用ゲルとしての使用時に植物成分を直接混合させる方法が好ましい。
【0028】
上記の吸水性樹脂の吸水倍率を低下できる添加剤以外にも、本発明で重要な芳香性を付与できる添加剤について説明する。この添加剤は、水槽中への添加、軽石等の不燃材料や吸水性樹脂等の吸水性素材に担持することで効果を発現できる。具体的には香料、芳香剤、脱臭剤、消臭剤が挙げられるが、水溶性であることが好ましい。本発明では消火を第一目的とするため、燃焼しにくいものが好ましい。
例えば、無機塩の炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウムは弱アルカリ性であるため、煙草の臭い成分である酸性粒子を選択的に吸着して脱臭することができる。
香料としては、天然香料、合成香料いずれでもよい。天然香料では、柑橘精油としてレモン油、オレンジ油、ライム油など、ハーブ精油としてラベンダー油、ローズマリー油、ペパーミント油など、花精油としてローズ油、ネロリ油など、その他パイン油、サンダルウッド油などが挙げられる。合成香料は、アルコール系、エステル系、アルデヒド系、ケトン系、フェノール系、フェノール・エーテル系、ラクトン系、テルペン系などが挙げられる。
消火用ゲルに芳香性を付与する場合は、水溶性の香料、芳香剤を含む水溶液を吸水性樹脂に吸収させて膨潤したゲルやゲル分散液を消火材として用いれば良い。また、単に水を吸収したゲルに、後から、芳香剤や消臭性のある植物成分を添加してもよい。
上記の消火用ゲルを得るための吸水性樹脂としては、公知の各種吸水性樹脂を採用することができ、特に限定されるものではないが、塩濃度に応じて吸水倍率が大きく変動し、水を放出しやすいという観点(たくさん吸水したゲルから水を放出させて消火作用を高める)では、ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体が好ましく、塩濃度が高くても吸水量を維持するという観点(塩濃度による吸水倍率の変動が小さい)では、耐塩性に優れる架橋重合体が好ましい。いずれにおいても粒子状であることが好ましい。好ましくは球形である、粒子形状が球形であるとゲル分散液の流動性が高まり取り扱い性が良く、また、火のついた煙草を投入したときに、ゲル層の下の方へ沈みやすく、消火性能が高まる。
ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体は水の吸収能力が非常に高く、ゲル間の隙間水を充分確保できないことが生じやすいので、特に上記で説明した無機塩や有機塩の添加や下記で説明する粒子径分布の制御が必要となる。
さらに、本発明で見出した消火用ゲルの別の特徴は、3)吸水性樹脂、無機塩又は有機塩、および水を含む消火用ゲルであって、吸水前の該吸水性樹脂中の粒子径150μm未満の微粒子の割合が20質量%以下であることを特徴とするものであり、吸水前(水と混合する前で、固形分95±3%)の吸水性樹脂の粒子径分布については、微粒子が少ないことが好ましい。例えば、吸水前の吸水性樹脂の重量平均粒子径が好ましくは120μm以上、5mm以下、より好ましくは150μm以上、3mm以下、特に好ましくは150μm以上、850μm以下、最も好ましくは150μm以上、250μm以下である。また、粒子径150μm未満の微粒子の割合が30質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、さらに特に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。また、粒子径75μm未満の微粒子の割合が20質量%以下、好ましくは15質量%以下、特に好ましくは3質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。また、粒子径45μm未満の微粒子の割合が5質量%以下、好ましくは3質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
なお、本発明でいう「150μm以上の粒子」とは後述する篩分級方法で分級された後に、測定される150μmの目開きを有する標準篩(JISないし相当品としてASTM、Tyler)の上に残った粒子を指す。また、「150μm未満の粒子」とは同様に後述する分級方法で分級された後に、測定される150μmの目開きを有するメッシュを通過した粒子を指す。他の目開きの大きさについても同様である。また、150μmの目開きを有するメッシュで粒子の50重量%が分級される場合、その重量平均粒子径(D50)は150μmである。
微粒子が多いと水を吸収した時のゲル間の隙間水(吸水性樹脂の膨潤ゲル粒子間、粒子表面に存在している水)が減少するため消火の効率が低下する。また、ゲル分散液の流動性が低下するため、ゲル分散液をポンプで送る場合では装置への付着等で閉塞が生じるなど、使用が困難となる可能性がある。
【0029】
上記の1)吸水性樹脂、植物成分および水を含むこと、2)吸水性樹脂、植物成分、水、さらに無機塩又は有機塩を含むこと、を特徴とする消火用ゲルにおいては、吸水前の吸水性樹脂の微粒子を少なくすることで、さらに消火性能が向上することとなるので上記のように粒子径分布を調整することが好ましい。
本発明の消火用ゲル中の各成分の好適な割合は以下の数値範囲が挙げられる。
まず、吸水性樹脂と植物成分と水とを必須成分として含むときの質量割合は例えば、
吸水性樹脂(0.05〜20質量%)、植物成分<好ましくは茶葉及び/又は茶葉抽出物>(0.3〜20質量%)、水(60〜99.5質量%)の数値範囲が挙げられる。
吸水性樹脂と植物成分と水と、無機塩又は有機塩を必須成分として含むときの質量割合は例えば、吸水性樹脂(0.05〜20質量%)、植物成分<好ましくは茶葉及び/又は茶葉抽出物>(0.3〜10質量%)、水(50〜99.5質量%)、無機塩又は有機塩(0.05〜30質量%)の数値範囲が挙げられる。
吸水性樹脂と無機塩又は有機塩と水とを必須成分として含むときの質量割合は例えば、吸水性樹脂(0.05〜20質量%)、無機塩又は有機塩(0.05〜30質量%)、水(55〜99.5質量%)の数値範囲が挙げられる。
なお、上記の各成分の合計量は、各消火用ゲル全量に対して、好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含まれることが好ましい。
また、消火用ゲルの消火性能、消臭性能を損なわない範囲で、上記成分に加えて、水不溶性無機微粒子、水溶性高分子、界面活性剤等の他の成分を混合することも可能である。他の成分の割合は、消火用ゲル(組成物)全量に対して、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
特に水溶性高分子としては、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、タンパク質分解物等が挙げられ、消火材の機能性(水の摩擦係数低下、増粘性、泡の安定化)を高める効果がある。
粒度調整は逆相縣濁重合のように粒子状で分散重合させる際に調整してもよいが、通常、水溶液重合の場合では、乾燥後に粉砕および分級して、特定粒度に調整される。
なお、本発明で得られた吸水性樹脂は無加圧下吸収倍率(0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下で30分の吸収倍率)が10g/g以上、より好ましくは20g/g以上、さらに好ましくは30g/g以上、特に好ましくは40g/g以上とされる。吸収倍率の制御は内部架橋剤など、前述の重合条件や乾燥条件を制御して行えばよく、上限値は60g/gまで高めることができる。
また、水や水溶液への可溶性成分である可溶分(水可溶分ともいう)が吸水性樹脂中に30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。可溶分の下限値は製法によって、1質量%まで低減できる。
【0030】
次に、消火用ゲルの製造方法、つまり、吸水性樹脂、植物成分<好ましくは茶葉及び/又は茶葉抽出物>、水、及び無機塩又は有機塩の混合方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を採用することができる。具体的には、例えば、吸水性樹脂に水を吸収させたゲルに植物成分、無機塩又は有機塩を添加する方法;吸水性樹脂、植物成分、水、および無機塩又は有機塩を一度に全て混合する方法;吸水性樹脂と無機塩又は有機塩、と水とを混合した後、植物成分を混合する方法;吸水性樹脂と植物成分と、無機塩又は有機塩とを混合した後、水を混合する方法;吸水性樹脂と植物成分とを混合した後、無機塩又は有機塩の水溶液を混合する方法;吸水性樹脂に、予め調製した植物成分と無機塩又は有機塩と水との混合物を混合する方法;水に、予め調製した吸水性樹脂と植物成分と無機塩又は有機塩との混合物を混合する方法;無機塩又は有機塩の水溶液に、吸水性樹脂と植物成分とを投入する方法;等が挙げられる。消火用ゲルは、吸水性樹脂、植物成分、水、無機塩又は有機塩を含んでなり、該吸水性樹脂がゲル状又はゲル分散液となっていればよいが、灰皿用の消火用ゲルとしては、最初に多量の水を吸収したゲルに、植物成分や無機塩又は有機塩を添加して徐々に後から、水の放出や消臭性が発揮されることが好ましい。
吸水性樹脂に対する水の使用量、つまり、消火用ゲルが含有すべき含水量(水分量)は、吸水性樹脂の組成、無機塩又は有機塩の種類、並びにこれらの組み合わせ;或いは消火用ゲルの用途等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、多ければ多い程、消火能力に優れる。例えば、無機塩又は有機塩を含まない純水を30倍以上、好ましくは50倍以上、さらに好ましくは60倍以上、特に好ましくは80倍以上吸収して、放出するための水を充分蓄えている消火用ゲルが好ましい。上限値は300倍あれば充分である。
特に耐塩性の吸水性樹脂((メタ)アクリル酸エステル系架橋重合体、ポリアルキレングリコール架橋重合体等)と潮解性物質の組み合わせでは、消火用ゲルは、製造時に、吸水性樹脂が潮解性物質および水を含むことにより膨潤、ゲル化して、該潮解性物質および水を保持する。潮解性物質は空気中の水蒸気を吸水し、吸水性樹脂は水を保持する。従って、ゲル化した吸水性樹脂は、空気中の水蒸気圧と、吸水性樹脂中の水によって生じる水蒸気圧とが、或る一定のバランスを維持するように、空気中の水蒸気を吸水するか、若しくは、吸水性樹脂中の水を蒸発させる。つまり、消火用ゲルは、温度(気温)や相対湿度の変化によって、その含水量に若干の変動が生じるものの、安定した含水状態を長期間維持することができる。
例えば、耐塩性の吸水性樹脂は、特開平10−192444号公報で開示されている(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含む単量体成分を重合させてなる架橋重合体であることが好ましく、塩化カルシウム飽和水溶液に対する吸液倍率が、5g/g以上であることがより好ましい。潮解性物質は、塩化カルシウムであることがより好ましい。
本発明の消火用ゲル(分散液)を用いる消火方法としては、消火用ゲル(分散液)と燃焼物や着火物とを接触させればよく、接触時間を長くすること、また充分な量の消火用ゲル(分散液)を使って燃焼物を覆うことにより空気と遮断することで消火の効率を高めることができる。具体的には、燃焼物や着火物に向かって消火用ゲル(分散液)を放出する方法や消火用ゲル(分散液)に着火物を投入する方法が挙げられる。例えば、着火物としては火の点いた煙草が挙げられるので、灰皿用の消火材等として好適に用いられる。特に本発明の特定の灰皿に内在することが好ましい。その他、花火の火消しバケツ等での消火用ゲル(水との分離の点で好ましくは水より比重の小さい耐火性素材を接合した特定の網状容器に内在させる)の適用も考えられる。また、例えば、ビル火災や森林火災等の一般火災の消火材としても好適に用いられる。消火活動で水を使用する場合、水の流失により消火に要する時間が長くなったり、使用水量が多くなるという問題があるが、吸水性樹脂を消化液に添加することにより改善できる可能性がある。これまで様々な報告がなされているが、本発明の機構を利用すると例えば、以下の消火方法が考えられる。
吸水性樹脂と無機塩を含む消火液をホースで火災現場に散水後、水のみの消火液を散水すると、塩濃度が低い水が後から吸水性樹脂にかかることにより、吸水性樹脂はさらに吸水して膨潤度合いが大きくなるので、水の流失を抑制できる可能性がある。水のみを散水するホースを併用するなど、塩濃度の変化により、吸水性樹脂の膨潤度合いを調整することができる。また、消火活動の終了後、火災現場に散在する消火用の膨潤ゲルを回収するのは大変なので、2価の金属塩(塩化カルシウム、塩化マグネシウム等)を含む高濃度の消火液を最後に、散水すると、吸水性樹脂の内・外部で高分子の鎖間の結合を誘導し、吸水性樹脂自体の吸水能力を低下させるので、膨潤ゲルを収縮させることができる。1価の金属塩に比べて、無機塩の濃度が再び低くなってもさらに大きく膨潤しにくい点で好ましい。
以上、無機塩の濃度調整による消火用ゲルの使用方法について説明したが、植物成分<好ましくは茶葉及び/又は茶葉抽出物>の添加による抽出成分によって、膨潤ゲルの膨潤度合いの調整やゲル同士の粘着性低減も可能である。例えば、消火活動の終了後に、茶葉や茶葉抽出物の粉末を散布すると消火に用いた膨潤ゲルの収縮が可能となる。ただし、無機塩の方が少量添加で効果があるので好ましい。
なお、本発明のように吸水性樹脂を微粒子の割合が少ない特定の粒度分布に調整すること、及び植物成分、無機塩又は有機塩の添加をすることで、ゲル粒子の凝集による消火ポンプやホース又はノズル等の装置の閉塞を抑制できることも考えられる。
【0031】
本願発明者は、さらに本発明を別の観点から検討したところ、吸水性樹脂が水中に浮遊ないし水面に浮いていることによる特徴やその効果を見出すことができた。特徴を挙げると、上記で述べた吸水性樹脂が水面に浮いていることを特徴とする消火用ゲル、水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを用いることを特徴とする消火方法、水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを内在することを特徴とする灰皿である。
本発明では、吸水性樹脂は水より比重の小さい物体で保持されることにより水面に浮いていることを説明したが、吸水性樹脂のみで水中に浮遊ないし水面に浮くものがある。
例えば、特表平9−507085号に記載の多孔構造を有する膨潤状態で1.0g/cm3未満の密度を有する水膨潤性の架橋粒状ポリマー、特願2004−032489号に記載の表面が撥水処理された吸水性樹脂が挙げられる。好ましくは上記の多孔構造を有する比重の小さいポリマーであり、火災の消火の際に、該ポリマーと水のスラリーは良好に散布ないしポンプで圧送でき、効率的な消火を行える可能性がある。
【0032】
本発明では、水より比重が小さい物体に保持されることで吸水性樹脂を水面に浮かべている。例えば、軽石(天然軽石、セラミック軽石)、アルミホイルを表面に覆った発泡ポリエチレン(ポリエチレンフォーム)等を例示した。水面に浮かべる方法としては、単に水より比重が小さい物体上に載せる方法以外にも、水より比重が小さい物体(例えば破砕物)と吸水性樹脂とを複合させる方法がある。例えば、吸水性樹脂の重合時の重合容器中に、水より比重が小さい物体を分散させる方法、その他、重合後に造粒物とする方法が挙げられる。つまり吸水性樹脂に水より比重が小さい物体を含有させる形態である。これまで、気泡を含有させる方法、コルク粉を含有させる方法等が知られているが、本発明では別の方法で吸水性樹脂を水面に浮かべること、さらには水面に浮かんでいる吸水性樹脂を消火材に適用すること、その消化材を用いた消火方法を見出すことができた。
水より比重が小さい物体としては、特願2003−144421号に記載のポリウレタンフォーム、セルローススポンジ、メラミンフォーム、HIPEフォーム等のフォーム材料が挙げられる。特にHIPEフォームでは、平均直径が0.5〜100μmと孔径が小さく、乾燥密度は0.1g/cm3以下で、9cm3/g以上の細孔容積の連続細孔からなっている。軟質ポリウレタンフォームでは平均直径が100〜1000μm、乾燥密度が0.01〜0.03g/cm3、メラミンフォームでは平均直径が800μm以下、乾燥密度が0.01g/cm3程度のものが適用できる。
吸水性の高いフォーム材料を水に浮かべるとフォーム材料の上部表面に水が浸透し充分濡れた状態となる。天然軽石を浮かべて、その上部にこれらフォーム材料を載せる形態においても、フォーム材料が吸水して上部表面は水で濡れる状態となる。この上部表面に吸水性樹脂を載せると含水ゲルは充分水を保有するので消火能力が高くなる。
具体的には、吸水性樹脂が天然軽石の上に保持されて水槽に浮かんでいる図13、吸水性樹脂がHIPEフォームの上に保持されて水槽に浮かんでいる図14の状態で水面に浮かんでいる形態がある。これらの形態では、水が充分にある状態で浮かべることが必要である。特に、フォーム材料では保水量が少なくなると表面が乾燥しやすいので消火能力が著しく低下する。
【0033】
本発明でHIPEフォームとは、油中水滴型高分散相エマルションを重合した連続気泡を有する多孔質重合体を意味する。詳しく述べると、油中水滴型高分散相エマルションは英語でWater in Oil type High Internal Phase Emulsion(HIPE)と表され、このエマルションを重合して表面も内部も連通孔の形成されている連続気泡(open cell;オープンセルとも略す)を有する多孔質重合体(HIPEフォーム)を得ることができる。 HIPEフォームには、圧縮して乾燥すると圧縮体を保つものと、圧縮が解放されて膨張体に戻るものがある。これは、孔径、W/O比、ポリマーの弾性によって決まる。
HIPEは、分散相(内相)である水相と外相である油相の比率(W/O比)が約3/1以上のエマルションであり、このHIPEを重合させて、多孔質重合体を製造することは公知である(特開昭57−198713号公報、特開2002−20408号公報など)。そして、HIPE化することなく発泡剤を用いて製造される多孔質重合体(フォーム)は、比較的大孔径の独立気泡のフォームが得られやすいのに比べ、HIPEから多孔質重合体を製造する方法(HIPE法)は、孔径の微細な連続気泡の低密度のフォームの製法として優れている。本発明で用いるHIPEフォームは公知のものの中でも吸水倍率が25(g/g)以上、好ましくは35(g/g)以上、さらに好ましくは50(g/g)以上であり、縦方向へ圧縮したものが好ましい。(製造時に圧縮した方向へきわめて吸収・膨張性能が高いものである。)またHIPEフォームの原料である重合性単量体、架橋性単量体、界面活性剤、重合開始剤は特開2002−20408号に例示されているものを使用できる。
本発明における好適なHIPEフォームの製造例(特開2002−20408号の実施例1,2)を以下に示す。
(製造例1)
2−エチルヘキシルアクリレート5.1質量部(以下、単に「部」と称する)、42%ジビニルベンゼン(他成分はp−エチル−ビニルベンゼン)3.1部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート1.1部からなる単量体成分、界面活性剤としてのグリセリンモノオレエート0.6部、ジタロウジメチルアンモニウムメチルサルフェート0.1質量部を加え、均一に溶解して、油相混合物溶液(以下、「油相」と称する)を調製した。一方、塩化カルシウム18部をイオン交換水425部に溶解して、水相水溶液(以下、「水相」と称する)を調製し、85℃に加温した。油相と水相を上記比で連続的に攪拌混合機内に供給し連続的に油中水滴型高分散エマルション(HIPE)を形成させた。水相と油相の比は44.3/1であり、HIPEの形成温度Toは85℃であった。
【0034】
得られたHIPEを連続的に攪拌混合機より抜き出し、あらかじめ85℃に加熱し、周囲に加熱、保温部材を具備したスタティックミキサーに供給した。スタティックミキサーの入り口より別途水溶性重合開始剤としての過硫酸ナトリウム0.5部を6部のイオン交換水に溶解した液を送り、HIPEと重合開始剤を連続的に混合した。これにより最終的に水相と油相の比は45/1になった。
【0035】
このHIPEを、保温、加熱したフレキシブルチューブを通して搬送し、長さ1100mm、巾100mm、厚さ5mmのあらかじめ85℃に保温したステンレス製角型重合容器に流し込み成形した。HIPEの成形温度T1は81℃であった。上ブタをし、HIPEの重合温度T2が85℃の水浴に浸した。加熱開始から15分後に容器を引き上げ、硬化した含水多孔質重合体を得た。なお重合時間15分間に分解し終わる重合開始剤量は0.314モル%と求められた。この多孔質重合体を脱水、圧縮することにより多孔質重合体(HIPEフォーム)を得た。
(製造例2)
製造例1において得られたのと同様の、重合開始剤を含有したHIPE(形成温度To=85℃)を、保温、加熱したフレキシブルチューブを通して搬送し、85℃に加熱されかつ水平に設置された一定速度で走行するベルト上に、幅約50cm、厚み約5mmのシート状に連続的に成形した。HIPEの成形温度T1は82℃であった。このHIPEを重合温度T2が85℃に制御された重合ゾーンを約15分で通過させて連続的に重合し、硬化した含水多孔質重合体を得た。なお重合時間15分間に分解し終わる重合開始剤量は0.314モル%と求められた。この多孔質重合体を脱水、圧縮することにより多孔質重合体(HIPEフォーム)を得た。
【0036】
以上のように、種々の材料に保持させることにより吸水性樹脂を水面に浮かべることができる。浮かんでいる状態では常に水と接しているので、充分な保水量を維持できる。
吸水性樹脂を水中に浮遊ないし水面に浮かせることにより、少量の吸水性樹脂で効率的に消火できること、水面に浮いている状態(ゲルの量)により水の蒸発速度を制御できること、灰皿では煙草成分の溶出速度を小さくでき悪臭や水の汚れを低減できること、ゲルや吸殻の回収が容易になること、表面に存在することで消臭作用が大きくなること、着色剤をゲルに含有させると外観もきれいになること等の効果がある。特に芳香成分の含まれる水に浮かんでいる場合、ゲル単体や水より比重の小さい物体に保持されたゲルが、表面に存在することで空気中への除放性が出てくることで効果が長く持続する。
消火方法については、先に述べたように水中に浮遊ないし水面に浮くことができる消火用ゲルと燃焼物または着火物とを接触させればよいが、吸水性樹脂の含水ゲルが水中に浮遊ないし水面に浮いていることで、灰皿での煙草の消火では、使用される吸水性樹脂の量を少なくできたり、消臭作用が大きくなることで実用性が高まる可能性がある。
【実施例】
【0037】
以下、実験例(実施例および比較例)により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、特に断りの無い限り、実施例および比較例に記載の「部」は、「質量部」を示し、「%」は、「質量%」を示す。なお、質量ないし質量%と、重量ないし重量%とは同義語として扱う。
本発明で吸水性樹脂の物性を測定する場合、吸水または吸湿している場合は、適宜、減圧乾燥(例、60〜80℃で16時間程度)して吸水性樹脂の含水率を平衡(5±3質量%)にまで乾燥したのちに測定する。
下記に使用した吸水性樹脂、茶葉の成分等について記す。
(I)芳香ゲル1(成分;水、香料、吸水性樹脂、両性イオン交換体を含む)
(II)芳香ゲル2(成分;香料、吸水性樹脂、バイオ消臭抗菌剤を含む)
(III)吸水性樹脂3(表面架橋処理品)
(IV)吸水性樹脂4(表面架橋処理品)
(V)吸水性樹脂5(表面架橋未処理品が主成分)
(VI)ジャスミン茶の茶葉
(VII)ほうじ茶の茶葉
(VIII)緑茶の粉末(茶葉の抽出液の乾燥品)
芳香ゲル1、芳香ゲル2の粒子径について以下に示す。
吸水前の粒子径:100メッシュ(目開き150μm)−ONが99質量%以上含まれる。すなわち、100メッシュ(目開き150μm)の金網を通過する微粒子の割合が1質量%以下である。いずれも微粒子が非常に少ない球状粒子である。
吸水性樹脂3〜5の製法について以下に示す。
【0038】
(製造例3)吸水性樹脂3の製造方法
アクリル酸21.6部及びアクリル酸ナトリウムの37質量%水溶液228.6部、N,N´−メチレンビスアクリルアミド0.0056部(対モノマー0.003モル%)、ヒドロキシエチルセルロース0.106部、イオン交換水53部を用いてモノマー濃度35%、中和率75%の単量体水溶液を得、この単量体水溶液に過硫酸カリウム0.09部を溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および滴下ロートを付した四つ口セパラブルフラスコ中にシクロヘキサン800部を取り、分散剤としてショ糖脂肪酸エステル(HLB=6)4部を加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。次いで、単量体水溶液を上記セパラブルフラスコに攪拌下に加えて分散させた。その後、浴温を65℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完結させた。重合終了後、共沸脱水により大部分の水分を取り除いた後、濾過し更に100℃で恒量まで減圧乾燥することにより含水率8%の球形状である吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂100部にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.1部、水3部、イソプロパノール1部を混合し、得られた混合物を120℃、30分間加熱処理を行ったのち粒子をメタノールで処理することで吸水性樹脂3を得た。
(製造例4)吸水性樹脂4の製造方法
アクリル酸21.6部及びアクリル酸ナトリウムの37質量%水溶液228.6部、N,N´−メチレンビスアクリルアミド0.0148部(対モノマー0.008モル%)、ヒドロキシエチルセルロース0.106部、イオン交換水53部を用いてモノマー濃度35%、中和率75%の単量体水溶液を得、この単量体水溶液に過硫酸カリウム0.09部を溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および滴下ロートを付した四つ口セパラブルフラスコ中にシクロヘキサン800部を取り、分散剤としてショ糖脂肪酸エステル(HLB=6)4部を加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。次いで、単量体水溶液を上記セパラブルフラスコに攪拌下に加えて分散させた。その後、浴温を65℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完結させた。重合終了後、共沸脱水により大部分の水分を取り除いた後、濾過し更に100℃で減圧乾燥することにより含水率8%の球形状である吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂100部にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.1部、水3部、イソプロパノール1部を混合し、得られた混合物を120℃、30分間加熱処理を行ったのち粒子をメタノールで処理することで吸水性樹脂4を得た。
(製造例5)吸水性樹脂5(下記の表面架橋未処理品を主成分として含む)の製造方法
アクリル酸ナトリウム(中和率71モル%)の38質量%水溶液(部分中和アクリル酸(Na塩)水溶液)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=8)を溶解させて反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で脱気した。次いで、開閉可能な蓋付きのシグマ型羽根を2本有するジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに、上記反応液を供給し、反応液を攪拌しながら、過硫酸アンモニウム、L−アスコルビン酸を開始剤として添加し重合を開始させた、得られる含水ゲル状重合体を取り出した。
得られた含水ゲル状重合体を熱風乾燥した。次いで乾燥物を、粉砕機を用いて粉砕し、さらに目開き850μmの篩を通過して不定形破砕状の吸水性樹脂(表面架橋未処理品)を得る。
吸水性樹脂5は上記の吸水性樹脂(表面架橋未処理品)を主成分(約70質量%含む)とする吸水性樹脂である。
【0039】
以下に茶葉について示す。
ジャスミン茶の茶葉について
販売者:株式会社 伊藤園(所在地:東京都渋谷区本町3−47−10)
名称:ジャスミン茶
原材料名:緑茶、花(ジャスミン)
原産国名:中華人民共和国(福建省)
特徴:釜炒り緑茶に天然のジャスミンの花の香りを付けてつくりあげた中国福建省産のジャスミン茶で、2本のローラーの回転を利用して茶葉を押しつぶし、引きさき、丸めて粒状にする製法で作られる。葉の成分が水に溶け出しやすい。
粒子径:100メッシュ(目開き150μm)−ONが90質量%以上含まれる。すなわち、100メッシュ(目開き150μm)の金網を通過する微粒子の割合が10質量%以下である。
ほうじ茶の茶葉について
製造者:株式会社 芳香園
名称:特上 ほうじ茶
原材料名:緑茶
緑茶の粉末について
販売者:株式会社 伊藤園(所在地:東京都渋谷区本町3−47−10)
名称:緑茶
原材料名:緑茶、デキストリン、サイクロデキストリン、ビタミンC
原産国名:中華人民共和国、日本
特徴:1杯分(100cc)0.8g当たり、茶ポリフェノール(カテキン類を含有)60mg
【0040】
吸水性樹脂の物性は、以下の方法で測定する。
(a)無加圧下吸収倍率(0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下で30分の吸収倍率)
室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、吸水性樹脂0.20gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れてシールした後、室温で
0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H−122)を用いて250cm/sec2(250G)で3分間水切りを行った後、袋の質量W1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いずに行い、その時の質量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から、次式に従って無加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
無加圧下吸収倍率(g/g)=(W1(g)−W0(g))/吸水性樹脂の質量(g)
(b)重量平均粒子径
吸水性樹脂粉末を目開き850μm、500μm、300μm、150μm、75μm、45μmのJIS標準ふるいで篩い分けし、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、重量平均粒子径(D50)を読み取った。
なお、吸水性樹脂粉末の粒度に合わせて、適宜、JIS標準ふるいを追加して正確に測定することが必要である。
篩い分けの際の分級方法は、吸水性樹脂粉末10.0gを、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、上記の目開きのJIS標準ふるい(THE IIDA TESTING SIEVE:径8cm)に仕込み、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES―65型、SER.No.0501)により、10分間、分級を行った。なお、重量平均粒子径(D50)とは、米国特許第5051259号などにあるように、一定目開きの標準篩で粒子全体の50重量%に対応する標準篩(目開き)の粒子径のことであり、例えば、目開き300μm標準篩で粒子全体の50重量%が分級される場合、重量平均粒子径(D50)は300μmである。
(c)可溶分量
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の184.3gを測り取り、その水溶液中に吸水性樹脂1.0gを加え16時間攪拌することにより樹脂中の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを測り取り測定溶液とした。はじめに0.9質量%塩化ナトリウム水溶液だけを、まず、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。例えば既知量のアクリル酸とそのナトリウム塩からなる吸水性樹脂の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂中の可溶分量を下式により算出することができる。未知量の場合は滴定により求めた中和率を用いてモノマーの平均分子量を算出する。
可溶分(質量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0
中和率(mol%)=(1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl]))×100
(d)固形分
吸水性樹脂1.000gをアルミカップに入れ、180℃の無風オーブンで3時間加熱し、その乾燥減量により算出した。測定は日本国特開2000−121291号公報、13頁
【0041】
記載の方法に従って行う。
表1に、吸水性樹脂3〜5の物性を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
次に本発明の灰皿、消火用ゲルを用いた煙草の消火実験を示す。
[実施例1]:灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けを、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分は水に充分浸っていた。
(観察結果:火の点いた煙草(2本)を置いただけで瞬時に火が消えた、消火能力は高い。消火後の煙草臭は残る。)
[比較例1]:灰皿
水150gが入っている水槽に、火の点いた煙草を投入する。
(観察結果:瞬時に火が消えた、消火能力は高い。消火後の煙草臭は残る。1週間放置後も煙草臭は消えない、水は褐色に濁る。水と煙草の分離に手間がかかる。)
[実施例2]:灰皿
実施例1の吸殻を受ける部分に、市販されている使用済みのコーヒー豆3gを入れておいて、火の点いた煙草を投入する。
(観察結果:瞬時に火が消えた、消火能力は高い。コーヒー臭で、ある程度マスキングされるが消火後の煙草臭は残る。1週間放置後の水の褐色の度合いは大きい。)
[実施例3] :灰皿
実施例1の吸殻を受ける部分に、使用済みのジャスミン茶の茶葉(3g)を入れておいて、火の点いた煙草を投入する。(以後、ジャスミン茶の茶葉をジャスミン茶葉と略す。)
(観察結果:瞬時に火が消えた、消火能力は高い。ある程度マスキングされるが消火後の煙草臭は残る。使用済みジャスミン茶葉では消臭効果が小さい。1週間放置後は、煙草臭は消えず、水の色は褐色となる。)
[実施例4]:灰皿
実施例1で用いた目開き100メッシュ金網の代わりに、目開き400メッシュ金網に変更し、吸殻を受ける部分にジャスミン茶葉(未使用3g)を入れて実施例1同様に、火の点いた煙草を投入する。
(観察結果:瞬時に火が消えた、消火能力は高い。マスキング効果が高く、消火後の煙草臭は消える。未使用ジャスミン茶葉では消臭効果が大きい。1週間放置後は、煙草臭は消えたままでジャスミンの香りが漂う、水の色は褐色となる。)
[実施例5]:灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の下部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けを、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図9参照)、吸殻を受ける金網の部分は、上から荷重をかけると水に浸ることができた。
(観察結果:火の点いた煙草を、金網部分に手で軽く押すと瞬時に火が消える、消火能力はある。消火後の煙草臭は残る。)
[実施例6]::消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの中に平均粒子径が約5mmの芳香ゲル1(3g)を入れて、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分に内在する芳香ゲル1は吸水して膨潤し、吸殻受け部分から、あふれそうになった(図11のモデル図参照)。
(観察結果:ゲルの粒度が大きいので、ゲル粒子間に水が充分存在し消火能力はある。廃煙草はゲル粒子間に隙間水があるので、ゲル粒子間中に沈みやすく、ゲルは芳香性があるので、消臭能力は高い。)
[実施例7]::消火用ゲルを内在した灰皿
実施例6の状態から続けて、水槽に塩化ナトリウム1gを添加したところ、
ゲルの吸水量は低下し、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分のゲルの占める割合が減り、含水割合が増えた(図12のモデル図参照)。ゲル粒子は、水中に分散した状態となる(ゲル分散液中の塩化ナトリウム濃度は水に対して0.7質量%)。
(観察結果:火の点いた煙草を置いただけで瞬時に火が消えた、消火能力は高い。消火後の煙草臭は消える、廃煙草はゲル粒子間に隙間水が充分あるので、ゲル層中に沈みやすく芳香性が高い。1週間放置後、煙草臭は消えたままで芳香性は持続していたが、水の色は褐色となる。)
【0044】
[実施例8] :消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの中に、吸水性樹脂5に水を50倍吸水させたゲル(3g)を内在させ、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分に内在する吸水性樹脂5はさらに吸水して膨潤し吸殻受け部分から、あふれそうになった(図11参照)。
(観察結果:ゲルの粒度が小さいので、ゲル粒子間の隙間水が少ないが消火能力はある。ゲル同士が付着して造粒物となってしまい、廃煙草はゲル粒子間中に沈みにくい。)
[実施例9]:消火用ゲルを内在した灰皿
実施例8の状態から続けて、水槽に塩化ナトリウム1gを添加したところ、
ゲルの吸水量は低下し、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分のゲルの占める割合が減り、含水割合が増えた(図12参照)。ゲル粒子は、水中に分散した状態となる(ゲル分散液中の塩化ナトリウム濃度は水に対して0.7質量%)。
(観察結果:塩化ナトリウム添加後は、ゲル粒子間に隙間水が生じて、消火能力は添加前より高くなった。廃煙草はゲル粒子間に隙間水があるのでゲル層中に沈みやすい。)
[実施例10]:消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の下部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの金網上に吸水性樹脂5に水を50倍吸水させたゲル(3g)を置き、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図9参照)、ゲルが置かれた吸殻を受ける金網の部分は、一旦上から荷重をかけるとゲルは吸水し(14gに増加)充分に濡れる。
(観察結果:火の点いた煙草を手で軽く押すと瞬時に火が消える、消火能力はある。ゲル同士が付着して造粒物となってしまい、廃煙草はゲル粒子間中に沈みにくい。)
[実施例11]:消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの中に吸水性樹脂3に水を50倍吸水させたゲル(3g)を内在させ、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分に内在する吸水性樹脂3はさらに吸水して膨潤し吸殻受け部分から、あふれそうになった(図11参照)。
(観察結果:ゲル粒子間の隙間水が少ないが消火能力はある。ゲル同士が付着しやすく、廃煙草はゲル粒子間中に沈みにくい。)
[実施例12]:消火用ゲルを内在した灰皿
実施例11の状態から続けて、水槽に塩化ナトリウム1gを添加したところ、
ゲルの吸水量はとても低下し、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分は水に充分浸るようになり、ゲルは底に分散していて、消火能力は塩化ナトリウム添加前より大きく向上した(図12参照)。吸水量の低下は他の吸水性樹脂に比べて顕著に見られた。廃煙草はゲル粒子間中に水が充分あるので、ゲル粒子間中に沈みやすい。(ゲル分散液中の塩化ナトリウム濃度は水に対して0.7質量%)。
(観察結果:塩化ナトリウム添加後は、ゲル粒子間に隙間水が生じて、消火能力は添加前より大きく向上した。廃煙草はゲル粒子間に隙間水が充分あるのでゲル粒子間中に沈みやすい。)
[実施例13]:消火用ゲルを内在した灰皿
実施例12の状態から続けて、水を150g追加して塩濃度を下げてみると、ゲルの吸水量は若干向上するが、まだ不充分で水に充分浸る状態である。
塩濃度の変化により、吸水性樹脂の膨潤度合いを調整することができる。
(ゲル分散液中の塩化ナトリウム濃度は水に対して0.3質量%)
[実施例14]:消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの中に吸水性樹脂4に水を50倍吸水させたゲル(3g)を内在させ、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分に内在する吸水性樹脂4はさらに吸水して膨潤し吸殻受け部分から、あふれそうになった(図11参照)。
(観察結果:消火能力はあった。ゲル粒子間の隙間水が少ないので、廃煙草はゲル層中に沈みにくい。)
[実施例15]:消火用ゲルを内在した灰皿
実施例14の状態から続けて、水槽に塩化ナトリウム1gを添加したところ、
ゲルの吸水量はとても低下し、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分は水に充分浸るようになり、ゲルは底に分散していて、消火能力は塩化ナトリウム添加前より大きく向上した(図12参照)。
(観察結果:火の点いた煙草を置いただけで瞬時に火が消えた。消火後の煙草の臭いは残る、廃煙草はゲル粒子間に隙間水が充分あるので、ゲル粒子間中に沈みやすい。(ゲル分散液中の塩化ナトリウム濃度は水に対して0.7質量%)
吸水性樹脂の吸水ゲルがあると水の濁りが低減される、1週間放置後の水の濁りの度合いは小さい。煙草成分の水中への溶出速度が遅くなるためと考えられる。)
【0045】
[実施例16]:消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き60メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの中に吸水性樹脂4に水を50倍吸水させたゲル(3g)を内在させ、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分に内在する吸水性樹脂4はさらに吸水して膨潤し吸殻受け部分から、あふれそうになった(図11参照)。
(観察結果:消火能力はあった。ゲル粒子間の隙間水が少ないので、廃煙草はゲル粒子間中に沈みにくい。)
[実施例17]:消火用ゲルを内在した灰皿
実施例16の状態から続けて、水槽に塩化ナトリウム1gを添加したところ、
ゲルの吸水量はとても低下し、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分は水に充分浸るようになり、ゲルは底に分散していて、消火能力は塩化ナトリウム添加前より大きく向上した(図12参照)。さらに、ジャスミン茶葉(未使用1g)をゲルの上に投入した(ゲル分散液中の茶葉は水に対して0.7質量%)。
(観察結果:火の点いた煙草を置いただけで瞬時に火が消えた。消火後の煙草の臭いは比較的少ない、廃煙草は水が充分あるので、ゲル層中に沈みやすい。ゲル分散液中の塩化ナトリウム濃度は水に対して0.7質量%。1週間放置後の水は、ジャスミン茶葉の成分が溶出して濁る、煙草臭いは少ないまま保持されている。ジャスミン茶葉が芳香成分となる。吸水ゲルはさらに縮んでいる。)
[実施例18]:消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの中に、ジャスミン茶葉(未使用1g)と吸水性樹脂3に水を50倍吸水させたゲル(3g)を内在させ(ゲル分散液中の茶葉は水に対して0.7質量%)、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分に内在する吸水性樹脂3は初めはさらに吸水して膨潤し吸殻受け部分から、あふれそうになった(図11参照)。しかし、ジャスミン茶葉の成分が溶出するにつれて吸水量は低下し、6時間後では、適度にゲル間に隙間水がありゲル表面は充分濡れていた。
(観察結果:消火能力はある。ゲル粒子間に隙間水があり、廃煙草はゲル粒子間中に沈む。煙草の消火実験の1週間後、水は褐色に濁るが、煙草臭は少ない。)
[実施例19]:消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの中に、ジャスミン茶葉(未使用5g)と吸水性樹脂3に水を50倍吸水させたゲル(3g)を内在させ(ゲル分散液中の茶葉は水に対して3.3質量%)、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分に内在する吸水性樹脂3は初めはさらに吸水して膨潤し吸殻受け部分から、あふれそうになった(図11参照)。しかし、お茶の成分が溶出するにつれて吸水量は低下し、6時間後では、適度にゲル間に隙間水がありゲル表面は充分濡れていた。
(観察結果:消火能力はある。ゲル粒子間に隙間水があり、廃煙草はゲル粒子間中に沈む。煙草の消火実験の1週間後、水は褐色に濁るが、煙草臭は少ない。茶葉の成分が水中へ溶出するにつれて、吸水ゲルの吸水倍率が下がり、適度にゲル粒子間に隙間水を保有する状態になる。ジャスミン茶葉5g入れた方が、ジャスミン茶葉1gの場合より、吸水性樹脂の吸水量の低下の度合いは大きい。茶葉の添加量や時間の経過により、吸水性樹脂の膨潤度合いを調整することができる。
[比較例2]:消火用ゲル(分散液)
実施例8〜10で使用した吸水性樹脂5は、表1に示す粒子径分布を有しており、粒子径150μm未満の微粒子の割合が約60質量%と高いものである。
また、重量平均粒子径が100μmと小さい。微粒子の割合が高いと、無機塩(0.7質量%)を添加しても吸水時のゲル粒子間の隙間水の確保が不充分となり、ゲル分散液の流動性が低くなる。そのため、ゲル同士が付着して造粒しやすく、廃煙草はゲル粒子間中に沈みにくい。水を吸水しているので消火能力はある。
[実施例20]:消火用ゲル(分散液)
実施例11〜13で使用した吸水性樹脂3は、表1に示す粒子径分布を有しており、粒子径150μm未満の微粒子の割合が約11質量%と低いものである。また、重量平均粒子径が201μmと大きい。無機塩を添加(0.7質量%、0.3質量%)すると、微粒子の割合が低くて重量平均粒子径が大きく、また球形粒子であるため、吸水時のゲル粒子間の隙間水が充分確保できて消火能力は高い。ゲル分散液の流動性が高いので、廃煙草はゲル粒子間中に沈みやすい。
[実施例21]:消火用ゲル(分散液)
実施例14〜16で使用した吸水性樹脂4は、表1に示す粒子径分布を有しており、粒子径150μm未満の微粒子の割合が約16質量%と低いものである。また、重量平均粒子径が185μmと大きい。無機塩を添加(0.7質量%すると、微粒子の割合が低くて重量平均粒子径が大きく、また球形粒子であるため、吸水時のゲル粒子間の隙間水が充分確保できて消火能力は高い。ゲル分散液の流動性が高いので、廃煙草はゲル粒子間中に沈みやすい。
[実施例22]:消火用ゲル(分散液)
実施例17で使用した吸水性樹脂4、ジャスミン茶葉、無機塩と水を含む消火用ゲルは、実施例21の消火用ゲルにさらに、ジャスミン茶葉を水に対して0.7質量%添加したもので、消火能力に加えて、煙草の消臭能力も備わった消火用ゲルとなる。ジャスミン茶葉は未使用の緑茶を含んでなり、100メッシュ金網を通過する微粒子の割合が10質量%以下と低いので、徐々に茶葉抽出成分が水中に溶出するので、それに伴い消火用ゲルの吸水倍率は低下していくので隙間水が増えて、さらに流動性が高いゲル分散液となる。
[実施例23]:消火用ゲル(分散液)
実施例18で使用した吸水性樹脂3、ジャスミン茶葉と水を含む消火用ゲルは、未使用のジャスミン茶葉を水に対して0.7質量%添加したもので、消火能力に加えて、煙草の消臭能力も備わった消火用ゲルとなる。
ジャスミン茶葉の成分が水中に溶出することにより、吸水性樹脂の吸水倍率は低下するので、ゲル粒子間に隙間水が生じて流動性がある。
[実施例24]:消火用ゲル(分散液)
実施例19で使用した吸水性樹脂3、ジャスミン茶葉と水を含む消火用ゲルは、未使用のジャスミン茶葉を水に対して3.3質量%添加したもので、消火能力に加えて、煙草の消臭能力も備わった消火用ゲルとなる。
ジャスミン茶葉の成分が水中に溶出することにより、吸水性樹脂の吸水倍率は低下するので、ゲル粒子間に隙間水が生じて流動性がある。
【0046】
次に、種々の材を用いた煙草の消火後の消臭結果を示す。
アルミカップ内に以下の材を添加した。
[実施例25]:消火用ゲル(分散液)
芳香ゲル2(約0.6g)+水でトータル(20g)
火の点いた煙草1本の消火後の臭い;煙草臭は消える。
1週間放置後の臭い;煙草臭は消えたままである。
[比較例3]:水のみ(20g)
火の点いた煙草1本の消火後の臭い;煙草臭は残る。
1週間放置後の臭い;煙草臭は残ったままである。水の色も汚い。灰が底にたくさん沈む。
[実施例26]:ジャスミン茶葉(未使用1g)+水でトータル(15g)
火の点いた煙草1本の消火後の臭い;煙草臭は消える。
1週間放置後の臭い;煙草臭は消えたままである。
[実施例27]:ほうじ茶の茶葉(芳香園;未使用1g)+水でトータル(15g)
火の点いた煙草1本の消火後の臭い;煙草臭は残る。
1週間後の臭い;煙草臭は残るが、ある程度、消臭されていた。
次に茶葉の抽出成分で吸水性樹脂の吸水倍率が下がることの比較実験(実施例28、29)を示す。
[実施例28]:吸水性樹脂4に水を50倍吸水させたゲル(3g)+ジャスミン茶葉(1g)+水27g…1週間放置後において芳香性あり、隙間水を保有し流動性高い。
上記の配合は、吸水性樹脂0.2質量%、茶葉3.2質量%、水96.6質量%とした消火用ゲルである。
[実施例29]:吸水性樹脂4に水を50倍吸水させたゲル(3g)+水27g…隙間水は実施例28より少なく流動性低い。
上記の配合は、おおよそ、吸水性樹脂0.2質量%、水99.8質量%とした消火用ゲルである。
以上の実験より以下のことが観察された。
香料や茶葉が含まれる消火材は煙草臭を低減することができる。
茶葉抽出物の成分で吸水性樹脂の吸水倍率は経時的に下がる。無機塩や有機塩添加の代替ともなる。
【0047】
[実施例30]:吸水性樹脂4(5g)と緑茶の粉末(1g)を乾式混合した。その混合物1g分を水槽に投入し、水を40g添加した。緑茶は粉末状なので早く溶けた。
(吸水性樹脂2.0質量%、緑茶粉末0.4質量%、水97.6質量%)
ゲル間の隙間水は少なかったのでさらに、61gの緑茶(緑茶の粉末1g+水60g)を添加した。(吸水性樹脂0.8質量%、緑茶粉末1.2質量%、水98.0質量%)
ゲル間の隙間水をさらに多くするために、緑茶の粉末3gを添加した。
(吸水性樹脂0.8質量%、緑茶粉末4.0質量%、水95.2質量%)
この添加後、スプーンで攪拌するとゲルからの水の放出が顕著に観察された(消火能力が高い)。次にゲルを収縮するために塩化ナトリウム2gを添加した
(吸水性樹脂0.8質量%、緑茶粉末3.9質量%、水93.4質量%、塩化ナトリウム1.9質量%)。この添加によりゲルから水の放出は非常に多くなり、ゲルは水をほとんど吸収せず液状となった(消火後の膨潤したゲルの回収の手間が減る)。
[実施例31]:水200gと塩化ナトリウム2gを添加した水槽の中に、2cm角(厚さ1cm)程度の天然軽石3g(発売元;キクロン株式会社)を浮かべた、その天然軽石の上に目開き400メッシュ金網を挟んで、微量の吸水性樹脂4を載せた(図13参照)。吸水性樹脂は水を吸水しておりゲル間の隙間水があり充分濡れていたので、消火能力が高い状態であった。天然軽石のみを浮かべると、その上部表面は水で濡れることが観察された。その上部表面の水を吸水性樹脂は吸水するので、この天然軽石の中央付近にキリで上方向から穴を空けるとさらに天然軽石の上部表面の濡れの状態が良くなり吸水性樹脂の含水ゲル間の隙間水が多くなる。(天然軽石に穴を空けた方が、穴部分から直接水が浸透して含水ゲルの消火能力が高くなる。)
[実施例32]:水200gと塩化ナトリウム2gを添加した水槽の中に、2×5cm角程度のHIPEフォーム(イオン交換水の吸水倍率;37g/g)を浮かべる、そのHIPEフォームの上に、微量の吸水性樹脂4を載せた(図14参照)。吸水性樹脂は水を吸水しておりゲル間の隙間水があり充分濡れていたので、消火能力は高い状態であった。HIPEフォームのみを浮かべると、その上部表面は水で濡れることが観察された。その上部表面の水を吸水性樹脂は吸水することで含水ゲルの消火能力が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第一実施形態に係るスタンド型灰皿の斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るスタンド型灰皿の分解斜視図である。
【図3】図2の灰皿本体の断面図である。
【図4】灰皿本体の他の実施形態の断面図である。
【図5】灰皿本体の他の実施形態の断面図である。
【図6】灰皿本体の他の実施形態の断面図である。
【図7】吸殻受けの真上から見た図である。
【図8】吸殻受けを水槽に浮かべたときの側面図である。
【図9】吸殻受けを水槽に浮かべたときの側面図である。
【図10】本発明の第二実施形態に係る灰皿本体の断面図である。
【図11】図8の吸殻収容空間に、粒子状の吸水性樹脂を内在させた時の様子である。
【図12】図11の状態に塩化ナトリウムを水槽に添加した時の様子である。
【図13】吸水性樹脂が天然軽石の上に保持されて水槽に浮かんでいる側面図である。
【図14】吸水性樹脂がHIPEフォームの上に保持されて水槽に浮かんでいる側面図である。
【符号の説明】
【0049】
(1)…水槽
(2)…水より比重の小さい耐火性素材
(3)…吸殻を収容する網状容器
(4)…吸水性素材(吸水性樹脂)
(5)…水
(6)…上蓋
(7)…吸殻の投入口
(8)…受け台
(9)…ステンレス金網
(10)…吸殻収容空間
(11)…吸水性樹脂
(12)…天然軽石
(13)…HIPEフォーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火作用を有する網状容器を具備する灰皿、吸水性素材を具備する灰皿、及び灰皿用の消火材等として好適に用いられる消火用ゲルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の煙草の灰皿は、構造的に吸殻を一つの容器により受けているものが多く、駅やデパートの喫煙場所等に設置されているスタンド型灰皿では消火のために水が入れられているものがよく見られる。これらの灰皿では、吸殻の火が充分に消されていない場合、すでに消されている吸殻に火が燃え移り煙がモウモウと発生したりする。また、消火用の水によって吸殻の火が消えても灰皿を掃除する際、吸殻と水とを区別して捨てるための手間がかかり、吸殻に含まれるニコチンが水と混じって悪臭を発し衛生面でも問題があり、それらを解決するために種々の提案がなされている。
例えば、特開2001−352964号(特許文献1)では煙草の灰皿の掃除をする際に、灰皿の容器の中で混ざり合った吸殻と消火のために入れている水とを一度に簡単に区別して片付けることができる、ざるを取り付けた灰皿が提案されている。
また、特開平8−336379号(特許文献2)では粒状消臭剤と煙草の灰とが混ざり合っても、粒状消臭剤から煙草の灰を取り除くことの容易な濾過式灰皿が提案されている。
また、特開平6−74号(特許文献3)では多孔質の鉱物材料からなる顆粒状の母材に揮発性の消臭材料を担持させてなる灰皿の中敷材料が提案されている。
その他に、灰皿用の消火材として吸水性樹脂(別称:(高)吸水性ポリマー、水膨潤性ポリマー)に水を吸収させてなる含水ゲル(以下、ゲルと略す)を用いることが種々提案されている。
例えば、特開平10−192444号(特許文献4)では消火能力に優れると共に、該消火能力を長期間にわたって維持することができ、しかも使用後に簡単に廃棄することができる、吸水性樹脂、潮解性物質および水を含むことを特徴とする消火用ゲルが提案されている。
【0003】
また、特開2001−9058号(特許文献5)では水とグリコールと吸水性アクリル系重合体と多孔質無機物と重炭酸ソーダを混合して攪拌したことを特徴とするタバコ消火剤が提案されている。
また、実開平7−14898号(特許文献6)ではpF値3.5以下の力で水を保持しているゲルを灰皿内にいれることによりそのゲルと接触した煙草の火を消すことを特徴とするゲル入り灰皿が提案されている。
また、実開平2−39747号(特許文献7)では結晶性高吸水性樹脂に水性粉末香料と、消臭剤を混合し、使用時に混合した粉末の上から、水を適当量注水することにより、樹脂が膨張、結晶し、芳香と消臭が開始する、同時に水を含んだ樹脂であるため消火の働きを兼ねていることを特徴とする消臭芳香剤が提案されている。
また、特開平11−69966号(特許文献8)では内面の必要個所に適量の水を保持できるように吸水性樹脂層を設けてなる携帯用灰皿が提案されている。
また、特開平9−140826号(特許文献9)では逆相重合反応によって生成される2ミクロン未満の小さい粒径を有する水膨潤性ポリマーを含む、防火及び消火用水の水添加剤が提案されており、燃焼物の垂直及び水平の両方の面に良好に付着させるために、500〜50000mPa・sの粘度を有する高粘性流体の使用が提案されている。
【0004】
また、米国特許第5190110号(特許文献10)では燃焼物から水の流失を抑えるために、消火用水に水不溶性である20〜500ミクロンの粒径を有する吸着性架橋ポリマーを水混和性媒体に分散させ、生じたゲル溶液の粘度が100mPa・sを超えないように提案されている。
以上のように様々の提案がなされているが、灰皿における消火能力、消臭能力、及び清掃時の簡便性、及び灰皿用の消火材等に用いられる消火用ゲルについてはさらなる改善の余地があった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−352964号公報
【特許文献2】特開平8−336379号公報
【特許文献3】特開平6−74号公報
【特許文献4】特開平10−192444号公報
【特許文献5】特開2001−9058号公報
【特許文献6】実開平7−14898号公報
【特許文献7】実開平2−39747号公報
【特許文献8】特開平11−69966号公報
【特許文献9】特開平9−140826号公報
【特許文献10】米国特許第5190110号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の灰皿において消火のために水を入れているだけでは、灰皿を掃除する際、吸殻と水とを区別して捨てるための手間がかかり、吸殻に含まれるニコチンが水と混じって悪臭を発し衛生面でも問題がある。また水は蒸発するので定期的に注水する必要があり、消火用ゲルを用いる場合でも長期間にわたって消火能力を高く維持するためには、屋外や乾燥している環境下では特に定期的な注水作業が必要がある。
本発明では、清掃時の手間を省くことができる灰皿、そして消火のための水の注水作業を簡略化できる灰皿、そして消火能力が高く衛生面に優れる灰皿、さらには優れた消火作用、消臭作用を有する消火用ゲルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の網状容器を灰皿に取り付けること、特定の粒度分布を有する吸水性樹脂や水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを消火材として用いること、さらには網状容器に優れた消火作用を有する消火用ゲルを内在させることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の諸目的は、下記の(1)〜(21)により達成される。
(1):吸水性樹脂、植物成分および水を含むことを特徴とする消火用ゲル。
(2):さらに無機塩又は有機塩を含むことを特徴とする(1)に記載の消火用ゲル。
(3):前記吸水性樹脂及び植物成分が、粒子状であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の消火用ゲル。
(4):前記植物成分が、茶葉及び/又は茶葉抽出物であることを特徴とする(1)〜(3)の何れか一つに記載の消火用ゲル。
(5):好ましくは、前記茶葉が緑茶を原料とする茶葉を含んでなり、目開き150μmの金網を通過する該茶葉の微粒子の割合が10質量%以下であることを特徴とする(4)に記載の消火用ゲル。
(6):吸水前の前記吸水性樹脂中の粒子径150μm未満の微粒子の割合が20質量%以下であることを特徴とする(1)〜(5)の何れか一つに記載の消火用ゲル。
(7):吸水性樹脂、無機塩又は有機塩、および水を含む消火用ゲルであって、吸水前の該吸水性樹脂中の粒子径150μm未満の微粒子の割合が20質量%以下であることを特徴とする消火用ゲル。
(8):前記吸水性樹脂が、ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体であることを特徴とする(1)〜(7)の何れか一つに記載の消火用ゲル。
(9):好ましくは、前記吸水性樹脂が逆相懸濁重合で得られる球形粒子であることを特徴とする(1)〜(8)の何れか一つに記載の消火用ゲル。
(10):前記吸水性樹脂が、水面に浮いていることを特徴とする(1)〜(9)の何れか一つに記載の消火用ゲル。
(11):好ましくは、前記消火用ゲルが灰皿用の消火材として用いられることを特徴とする(1)〜(10)の何れか一つに記載の消火用ゲル。
(12):(1)〜(11)に記載の消火用ゲルを用いることを特徴とする消火方法。
(13):灰皿での煙草の消火に用いられることを特徴とする(12)に記載の消火方法。
(14):水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを用いることを特徴とする消火方法。
(15):水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを内在することを特徴とする灰皿。
(16):水を貯えた水槽(1)と、水より比重の小さい耐火性素材(2)と、吸殻を収容する網状容器(3)とを有し、該網状容器(3)は、該耐火性素材(2)と接合した状態で、該水槽(1)の水面に浮いていることを特徴とする灰皿。
(17):好ましくは、前記耐火性素材(2)は、前記網状容器(3)の上部に具備されて接合していることを特徴とする(16)に記載の灰皿。
(18):好ましくは、前記網状容器(3)に吸水性素材(4)が内在することを特徴とする(16)又は(17)に記載の灰皿。
(19):前記網状容器(3)に、(1)〜(11)に記載の消火用ゲルが内在することにより水面に浮いていることを特徴とする(16)〜(18)の何れか一つに記載の灰皿。
(20):好ましくは、前記網状容器(3)の材質がステンレス金網であることを特徴とする(16)〜(19)の何れか一つに記載の灰皿。
(21):好ましくは、前記灰皿がスタンド型灰皿であることを特徴とする(16)〜(20)の何れか一つに記載の灰皿。
【発明の効果】
【0008】
本発明の灰皿を使用すれば、一度たっぷり水を注水することにより水量に応じて水面に浮いている網状容器の高さが変動するだけで水とは絶えず接触しているので長期間にわたって消火能力を高く維持できる。また灰皿を掃除する際、網状容器を水槽から引き揚げるだけで吸殻と水との分離ができるので、わざわざ吸殻を手で区別して捨てるための手間が省ける。さらに本発明の消火用ゲルはゲル間の隙間水を確保しやすく、その隙間水により消火作用を向上させることができる。消火能力が高い本発明の消火用ゲルを本発明の灰皿の網状容器に内在しておけば、さらに機能性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について好適な図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の第一実施形態に係るスタンド型灰皿の斜視図である。外観は駅やデパートの喫煙場所等に設置されている一般的なスタンド型灰皿と同様である。
図2は図1の分解斜視図である。図2において、灰皿の本体は水を貯えた水槽(1)と、水より比重の小さい耐火性素材(2)と、吸殻を収容する網状容器(3)とを有している。本発明で水槽とは、水を貯えておくことができる容器を意味する。容器の材質は金属(ステンレス、アルミニウム)、ガラス、プラスチック等が挙げられるが、耐熱性があり、防錆加工を表面に施したものが好ましい。
上記耐火性素材(2)としては、水より比重が小さいものが好ましく、比重が0.02以上0.95g/cm3以下のものが好ましい。具体的には比重が0.5以上1.0g/cm3未満の軽石(天然軽石、セラミック軽石)、アルミホイルを表面に覆った発泡ポリエチレン、又は発泡ポリスチレン、又は蓋をしたペットボトル容器、又は魚釣り用具の浮き等が挙げられる。アルミニウム以外の金属耐熱材でコーティングする形態でも良い。火山噴出物である軽石は耐火性が良く、多孔質の不燃性鉱物材料である点、また芳香性のある植物精油を多く担持できる点で、また発泡ポリエチレンは加工性に優れる点で、各々好ましい。
ポリエチレンフォームは比重が0.025〜0.20g/cm3と非常に軽い材料である。一般的に低密度ポリエチレンに有機系発泡剤、架橋剤等を添加して、密閉された型内で発泡剤と架橋剤を熱分解させることにより製造される。
また、蓋をしたペットボトル容器は、比較的高荷重でも使用できる点、廃ペットボトル容器のリサイクルの一用途になる点で好ましい。
【0010】
これら水より比重の小さい耐火性素材を複数個、水面に浮かせて、その上に上記網状容器(3)を載せた時、その網状容器(3)の重量が、下方から受ける浮力以上にならなければ、上記網状容器(3)は水面に浮く状態を維持することができる。上記網状容器(3)の素材としては、ステンレス金網、銅金網等が挙げられる。網の孔径(目開き)としては、1.5cm以下が好ましく、400メッシュ〜3メッシュがより好ましく、400メッシュ〜16メッシュがさらに好ましく、200メッシュ〜20メッシュがさらに特に好ましく、100メッシュ〜60メッシュが最も好ましい。目開きが1.5cm(上限)より大きくなると、吸殻や煙草の灰が通過しやすくなり、吸殻と水との分離作業が不充分となる。目開きが400メッシュ(下限)より小さくなると、水の通液性が低下するので消火能力が低下する。なお、各金網のメッシュは、3メッシュ(約6.7mm)、16メッシュ(約1mm)、20メッシュ(約850μm)、60メッシュ(約250μm)、100メッシュ(約150μm)、200メッシュ(約75μm)、400メッシュ(約38μm)程度の目開きを有する。なお、上記のメッシュの絶対数値はJIS、Tylerを参考とする。
錆びやすい網状容器の場合は、表面を耐水性塗料でコーティングすると長期間、使用することができる。塗料でコーティングする場合は、比較的、目開きの大きい60〜100メッシュが好ましい。見開きが小さすぎると、塗料によって孔が閉塞する箇所が生じてしまう。
【0011】
従来のスタンド型灰皿での消火用の水は蒸発する度に、注水する必要があるが、本発明の灰皿では、一度たっぷり水を注水しておけば、水量に応じて水面に浮いている網状容器(3)の高さが変動するだけで水とは絶えず接触しているので長期間にわたって消火能力を高く維持できる。また、灰皿を掃除する際、網状容器を水槽から引き揚げるだけで水との分離ができるので、吸殻と水とを区別して捨てるための手間が省ける。
水量に応じて、網状容器の高さが変動する際、水平を保つための工夫としては、網状容器のフレーム部分の数箇所に穴を空けておき、その中に通した棒を灰皿本体に固定しておけば、棒の方向に沿って水平に動くこととなる。
図3は図2の灰皿本体の断面図である。
また、上記網状容器(3)と上記耐火性素材(2)との接合状態について図4〜図6に、その他の実施形態を示す。図4は網状容器の内側の底部に耐火性素材が接着した形態で浮いており、図5は網状容器が凹部を持つ形状であり、凹部が吸殻の収容空間となる。凹部の形状部分では、水を下からと横からの双方から取り込むことができる。図6は網状容器の凹部の外側の周りを耐火性素材で囲んで接合している形態である。図6で用いる耐火性素材は、加工性に優れる材質が好ましい。例えば、発泡ポリエチレン(アルミホイルで表面コート)が挙げられる。
図4〜図6の形態では図3と異なり、耐火性素材(2)は、網状容器(3)の上部に具備されて接合していることが特徴である。この形態では、網状容器に、外から荷重がかからなくても、接合している耐火性素材の重量分の荷重が網状容器にかかっていることにより、網状容器の底部は水で充分に浸されるので消火能力が高くなる。
具体的には、図8と図9の比較実験の様子で示す。図7は各吸殻受けを真上から見た図である。
図8は耐火性素材(2)が、ステンレス金網(9)の上部に接合している形態の吸殻受けを水槽に浮かべたときの側面図である。
アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける吸殻収容空間は水に充分浸っている。
図9は耐火性素材(2)が、ステンレス金網(9)の下部に接合している形態の吸殻受けを水槽に浮かべたときの側面図である。
吸殻を受けるステンレス金網の上部(吸殻収容空間)は、上から荷重をかけると水に浸ることができる。100メッシュの金網では、荷重をかけないと、上部は水で濡れない。
以上の比較実験から消火能力を高めるために耐火性素材(2)は、ステンレス金網(9)の上部に具備されて接合している方が水の確保の点で好ましい。また、ステンレス金網の目開きは大きいほど水に浸りやすくなるが、大きすぎると吸殻や灰が落ちてしまので好ましくない。
【0012】
図10は本発明の第二実施形態に係る灰皿本体の断面図である。図10では、図5の上記網状容器に、吸水性素材(4)を内在させることを特徴とする形態である。吸水性素材(4)として、具体的には吸水性樹脂、HIPEフォーム、ポリウレタンフォーム等のフォーム材料、ティッシュ、パルプ、スポンジの破砕物、茶葉等が挙げられる。吸水性素材が内在することによる効果としては、網状容器の底部外面に接する水を吸水性素材が吸水することにより、網状容器の底部内面に水を引き上げることが挙げられる。網状容器は水面に浮いているので、常に水と接触することが可能となり、内在する吸水性素材の含水率は低下することなく、高く維持できる。吸水性素材は火が消せるだけの保水力を呈する素材であれば良いが、保水力の大きい吸水性樹脂が好ましく、粒子状の吸水性樹脂は毛細管現象によりその効果が大きくなるので、特に好ましい。また、上記網状容器に吸水性樹脂を内在しておけば水中へのニコチン等の煙草成分の混入が抑制され水の濁りが低減される。これは、水より比重の小さい耐火性素材で保持されて水面に浮いている吸水性樹脂が介在することにより、煙草成分の水中への溶出が遅くなるからと考えられる。
特に水より比重の小さい耐火性素材で保持されて吸水性樹脂が水面に浮いている形態以外にも、吸水性樹脂単体で浮くことができるものを適用すれば、吸水性樹脂の使用量を低減できる可能性がある。
【0013】
その他の利点としては、前記水槽(1)中に、前記耐火性素材(2)の浮力で浮いている前記網状容器(3)に、火の点いた煙草を投入することにより消火し、その吸殻を捨てる際、吸水性樹脂が網状容器に内在すると、網状容器を引き揚げた時に網状容器中の吸水性樹脂が吸殻や灰の飛散を抑制して塊状のごみとして取り出せることが挙げられる。つまり、吸殻や灰を付着させて造粒物として簡単に廃棄できるのである、さらには、吸水性樹脂があると、回収したごみ袋からの水漏れの可能性も低くなる。
本願発明者は、上記で吸水性樹脂の効果を説明したように、灰皿について鋭意検討した結果、灰皿用の消火材等に好適に用いられる特定の消火用ゲルについて、消火作用に優れ、さらには消臭作用を有することを見出した。以下にその詳細について説明する。
本発明の消火用ゲルを得るための吸水性樹脂としては、親水性単量体を重合して得られる水膨潤性架橋重合体、水溶性エチレン性不飽和単量体を架橋重合した吸水性樹脂等が例示できる。その構造、組成としては特に限定されないが具体的には部分中和架橋ポリアクリル酸重合体(米国特許第4625001号、同第4654039号、同第5250640号、同第5275773号等)、架橋され部分的に中和された澱粉ーアクリル酸グラフトポリマー(米国特許第4076663号)、イソブチレンーマレイン酸共重合体(米国特許第4389513号)、酢酸ビニルーアクリル酸共重合体のケン化物(米国特許第4124748号)、アクリルアミドや(共)重合体の加水分解物(米国特許第3959569号)、アクリロニトリル重合体の加水分解物(米国特許第3935099号)、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルピロリドン架橋重合体、スルホン酸基含有架橋重合体、Nービニルアミド系架橋重合体、(メタ)アクリル酸エステル系架橋重合体、澱粉ーアクリル酸架橋グラフト重合体、ビニルアルコール架橋重合体、ポリアルキレングリコール架橋重合体、澱粉ーアクリロニトリル架橋共重合体等が挙げられる。
中でも、一般的に衛材分野で使用される吸水能力に優れるアクリル酸またはその塩を主成分とするポリアクリル酸(塩)系架橋重合体が好ましい。ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体を得るための重合性単量体がアクリル酸および又はその塩である場合、その構成単位としてはアクリル酸0〜50モル%およびアクリル酸塩100〜50モル%(但し、両者の合計量は、全構成単位に対して70〜100モル%とする)の範囲にあるものが好ましく、アクリル酸10〜40モル%およびアクリル酸塩90〜60モル%の範囲内にあるものがより好ましい。なお、この酸および塩との比(塩/(酸+塩))を中和率と呼ぶ。塩としてはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などを例示する事ができる。塩を形成するためには単量体の状態でアクリル酸を中和しても良く、アクリル酸およびアクリル酸塩を混合しても良く、また、重合性単量体の重合途中または重合後に重合体として中和しても良く、それらを併用しても良い。
【0014】
本発明の吸水性樹脂の中でも好ましく用いられるポリアクリル酸(塩)系架橋重合体としては、主成分としてアクリル酸および/またはその塩に併用して、必要により他の単量体を共重合させたものであってもよい。他の単量体の具体例としては、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸などのアニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジンなどのノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびそれらの四級塩などのカチオン性不飽和単量体などを挙げることができる。
また、N−n−プロピルアクリルアミド,N−n−プロピルメタクリルアミド,N−イソプロピルアクリルアミド,N−エチルアクリルアミド、などのN‐アルキル(メタ)アクリルアミド誘導体、N,N−ジエチルアクリルアミドなどのN,N‐ジアルキル(メタ)アクリルアミド誘導体、アクリロイルピペリジン、アクリロイルピロリジンなどを主成分として用いると得られる架橋重合体が感温性を示し、一定温度以上では吸水倍率が低下するようになるので、水を吸水している膨潤ゲルが水を放出し、ゲル間の隙間水(吸水性樹脂の膨潤ゲル粒子間、粒子表面に存在している水)が生じるので、火のついた煙草と接した場合、消火用の水として役割を果たす可能性がある。
本発明の吸水性樹脂に架橋構造を導入する方法として、架橋剤を使用しない自己架橋型のものや、2個以上の重合性不飽和基或は2個以上の反応性基を有する内部架橋剤(架橋性単量体)を共重合または反応させるもの等を例示できる。
これらの内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルヘキサ(メタ)アクリレ−ト、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレートなどを挙げることが出来る。またこれらの内部架橋剤は2種以上使用してもよい。その使用量としては前記単量体成分に対して0.002〜2モル%、より好ましくは0.005〜2モル%、さらに好ましくは0.01〜2モル%である。内部架橋剤が0.002モル%未満では、得られる吸水性樹脂の水可溶性成分量の割合が多くなり、また吸水したゲルの強度が低下する。一方、内部架橋剤の量が2モル%を超えると架橋密度が高くなり過ぎて、得られる吸水性樹脂の吸収倍率が低下し、充分な水を確保することができなくなる。
【0015】
なお重合に際しては、澱粉・セルロ−ス、澱粉・セルロ−スの誘導体、ポリビニルアルコ−ル、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子や、次亜リン酸(塩)等の連鎖移動剤を添加してもよい。
本発明の吸水性樹脂を得る為に上記したアクリル酸またはその塩を主成分とする単量体を重合するに際しては、バルク重合や沈澱重合を行うことも可能であるが、性能面や重合の制御の容易さから、単量体を水溶液として、水溶液重合、逆相懸濁重合、逆相乳化重合を行うことが好ましい。かかる重合方法は、従来公知であって例えば、米国特許第4625001号、同4769427号、同4873299号などに記載されている。
【0016】
水溶液重合は、疎水性分散溶媒等モノマーの分散溶媒を用いずに重合性単量体の水溶液を直接重合する方法であり、連続ベルト重合、連続またはバッチニーダー重合等で製造できる。逆相懸濁重合または逆相乳化重合は重合性単量体の水溶液を疎水性有機溶媒に懸濁あるいは乳化させる、モノマーを分散させる重合方法である。モノマーを分散させる界面活性剤ないし分散剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を例示できる。
具体的に、用いられるアニオン性界面活性剤としては、混合脂肪酸ナトリウム石鹸、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩等がある。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等がある。
カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤としてはアルキルアミン類やアルキルベタイン等がある。
また、その他分散剤としてエチルセルロースやエチルヒドロキシエチルセルロース等がある。
【0017】
これら界面活性剤や分散剤使用量は重合の種類によって適宜選択することができる。一般には重合性単量体と架橋性単量体からなる単量体成分全体の質量100質量部に対し、0.1〜30質量部であることが好ましく、1〜30質量部であることがより好ましく、さらに好ましくは3〜5質量部である。また、これらの分散剤ないし界面活性剤の使用量について後述する有機溶媒に対して0.001〜10質量%、好ましくは0.001〜1質量%である。
逆相懸濁重合ないし逆相乳化重合の際に使用する有機溶媒としては、基本的に重合に不活性であればいかなるものも使用できる。その一例を挙げれば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環状炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。この内、工業的入手の安定性、品質等から見てn−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサンが好ましい溶媒として挙げることができる。これら疎水性溶媒の使用量は重合性単量体含有水溶液1質量部に対して、0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは0.6〜5質量部である。
逆相乳化重合に使用する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン等を挙げることができ、中でもエタノール、イソプロパノールが好ましい。
上記で説明した水溶液重合、逆相懸濁重合または逆相乳化重合の重合を行うにあたり、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル等の油溶性アゾ化合物、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性ラジカル重合開始剤、ベンゾインエーテル類、アシルホスフィンオキシド類及びアシルホスホナート類等の光開裂してラジカルを生ずる化合物、及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン類等の水素引き抜きや電子移動によってラジカルを生成する化合物等の光重合開始剤、紫外線や電子線などの活性エネルギー線等を用いることができる。また、上記過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩および他の過酸化物などの酸化性ラジカル重合開始剤を用いる場合、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤を併用してレドックス重合としても良い。重合方法に応じて、最適な重合開始剤を選択すればよいが、これらの重合開始剤の使用量は単量体中に通常、重合性単量体と内部架橋剤(架橋性単量体)の合計に対して0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜0.5モル%である。これらの重合開始剤の使用量が0.001モル%未満の場合には、未反応の単量体が多くなり、従って、得られる吸水性樹脂中の残存単量体量が増加するので好ましくない。一方、重合開始剤の使用量が2モル%を超える場合には、重合の制御が困難となり、得られる吸水性樹脂の水可溶性成分量が増加することがあるので好ましくない。
重合開始時の温度は、使用する重合開始剤の種類にもよるが、15〜130℃の範囲が好ましく、20〜120℃の範囲がより好ましい。重合開始時の温度あるいは反応中の重合温度が上記の範囲から外れると、得られる吸水性樹脂の残存単量体量が増加したり、過度の自己架橋反応が進行して吸水性樹脂の吸水倍率が低下する等の不都合を招来する場合がある。また、反応時間および重合圧力は特に限定されるものではなく、単量体や重合開始剤の種類、反応温度等に応じて適宜設定すれば良い。
重合後に得られる含水ゲル状重合体はその後、必要によりミートチョッパー等で粉砕し、通常さらに乾燥させる必要がある。
【0018】
水溶液重合の場合では、重合反応中あるいは重合反応終了後に得られる含水ゲル状重合体は、所定の方法によって約0.1mm〜約50mm、さらには0.2〜10mm、より好ましくは0.5〜5mm程度の破片に破断し、乾燥すると本発明に好適な吸水性樹脂とすることができる。乾燥温度は、特に限定されるものではないが、例えば、100〜250℃の範囲内、より好ましくは120〜200℃の範囲内とすればよい。また、乾燥時間は適宜決定され、特に限定されるものではないが、10秒〜5時間程度、さらには1分〜2時間程度が好適である。
逆相懸濁重合または逆相乳化重合の場合では、重合反応中あるいは重合反応終了後に得られる含水ゲル状重合体は、例えば炭化水素等の有機溶媒中に分散した状態で共沸脱水して固形分量を60質量%以上、好ましくは70質量%以上とした後に、デカンテーションあるいは蒸発により有機溶媒と分離し、必要に応じてさらに乾燥することができる。
また、乾燥方法としては、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸による脱水、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等、種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。
上記の重合により得られた吸水性樹脂の形状は一般に不定形破砕状、球状、繊維状、棒状、略球状、偏平状等である。
【0019】
本発明の吸水性樹脂はその表面近傍を表面架橋剤でさらに架橋処理を行っても良い。表面架橋処理に用いることの出来る表面架橋剤としては例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物や、それらの無機塩ないし有機塩(例えば、アジチニウム塩等);2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物;2−オキサゾリドン等のオキサゾリドン化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、オキセタン化合物、環状尿素化合物、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物、および、その多価アミン付加物(例えばハーキュレス製カイメン;登録商標);γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γーアミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤;亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物又は塩化物等の多価金属化合物等が挙げられる。
これらの表面架橋剤は単独で使用してもよく、また、2種類以上併用しても良い。なお、吸水性樹脂に対する表面架橋剤の使用量は、吸水性樹脂の固形分100質量部に対して0.001〜10質量部の範囲内、より好ましくは0.01〜5質量部の範囲内とすればよい。
上記架橋剤の上記範囲内の使用量で吸水性樹脂の表面を架橋することで、得られる吸水性樹脂の表面の架橋密度を吸水性樹脂内部よりも高くすることができ、加圧下での吸収特性に優れる吸水性樹脂を得ることができる。また、吸水性樹脂の初期吸液速度(吸液開始直後の吸液速度)がより一層速くなる。また水との混合時に吸水性樹脂同士がママコとなって凝集するのを低減できる。
上記架橋剤の使用量が0.001質量部未満であれば、得られる吸水性樹脂の表面の架橋密度を吸水性樹脂内部よりも高めることができず、加圧下での吸収特性の改良効果が充分に得られない場合がある。一方、上記架橋剤の使用量が10質量部を超えると、添加した架橋剤が効率よく使用されずに不経済であり、また、上記架橋剤が過剰量となるため吸水性樹脂の表面の架橋密度を適正に制御することが困難となるために、無加圧下での吸収量が大きく低下するおそれがあるので好ましくない。
本発明の表面架橋剤と吸水性樹脂との混合の際には水を用いてもよい。水の使用量も一般に、吸水性樹脂の固形分100質量部に対して、0.5を越え、10質量部以下が好ましく、1質量部〜5質量部の範囲内がより好ましい。
【0020】
また、表面架橋剤やその水溶液を混合する際には親水性有機溶媒や、第三物質を用いてもよい。親水性有機溶媒を用いる場合には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、メトキシ(ポリ)エチレングリコール等のエーテル類;ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類等が挙げられる。親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂の種類や粒径、含水率等にもよるが、吸水性樹脂の固形分100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、0.1〜10質量部の範囲内がより好ましい。また、第三物質として欧州特許第0668080号公報に示された無機酸、有機酸、ポリアミノ酸等を存在させてもよい。
本発明の吸水性樹脂と表面架橋剤とを混合する混合方法は特に限定されないが、たとえば吸水性樹脂を親水性有機溶剤に浸漬し、必要に応じて水および/または親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を混合する方法、吸水性樹脂に直接、水および/または親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を噴霧若しくは滴下して混合する方法等が例示できる。
【0021】
吸水性樹脂と表面架橋剤とを混合した後、通常加熱処理を行い、架橋反応を遂行させる。上記加熱処理温度は、用いる表面架橋剤にもよるが、40℃以上250℃以下が好ましい。処理温度が 40℃未満の場合には、吸水特性が十分に改善されない場合がある。処理温度が 250℃を越える場合には、吸水性樹脂の劣化を引き起こし、性能が低下する場合がある。加熱処理時間は1分−2時間程度、好ましくは5分−1時間程度である。
また、吸水性樹脂の表面にN‐アルキル(メタ)アクリルアミド誘導体やアクリロイルピペリジン、アクリロイルピロリジンの重合体などの感温性ポリマーをコーティングしておくと、温度によって吸水倍率の変化する吸水性樹脂を得る事ができるので、温度を変えることによって、水の吸収・放出現象が生じることにより消火能力が変化するポリマーとなる。
本発明において必要に応じてSiO2などの不溶性無機粒子や親水性溶媒、好ましくは水を添加混合して造粒しても良い。
この際、使用される水の量は、使用する吸水性樹脂の含水率にもよるが、通常、吸水性樹脂の固形分100質量部に対し、0.5〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部の範囲である。また、本発明において、水以外に親水性有機溶媒を用いてもよい。吸水性樹脂の固形分100質量部に対し、0〜10質量部、好ましくは0〜5質量部、より好ましくは0〜3質量部の範囲である。親水性溶媒の添加に際しての温度は混合性から好ましくは0〜80℃、さらには40〜70℃の範囲である。また、親水性溶媒を吸水性樹脂に噴霧あるいは滴下する方法が好ましく、噴霧する方法がより好ましい。噴霧される液滴の大きさは、平均径が1〜300μmが好ましく、1〜200μmがより好ましい。
次に本発明の消火用ゲル(消火用含水ゲル)について説明する。
本発明の消火用ゲルは上記の方法により得られた吸水性樹脂の水膨潤ゲルを好ましくは30体積%以上、より好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは70体積%以上含み、実質粒子状のものである。上限値としては95体積%以下が好ましく、より好ましくは90体積%以下である。また、ゲル分散液の形態であることが好ましい。吸水性樹脂の水膨潤ゲルについて吸水量は、吸水性樹脂固形分重量に対して、4倍以上、好ましくは14倍以上、さらに好ましくは50倍以上である。
通常、水膨潤ゲルを放置すると乾いていくが、本発明では水膨潤ゲルに、茶葉及び/又は茶葉抽出物等の植物成分、無機塩や有機塩を添加することにより、吸水した水が徐々にゲル表面から放出されることを利用し、消火に有効なゲル間の隙間水(吸水性樹脂の膨潤ゲル粒子間、粒子表面に存在している水)を生じさせるものである。すなわち、水を吸収した水膨潤ゲルに上記添加剤を添加すると、抽出成分濃度や塩濃度が向上するので、特にポリアクリル酸(塩)系架橋重合体では吸収倍率が下がるので、水膨潤ゲルから水が放出されるのである。吸水性樹脂の膨潤ゲル粒子間、粒子表面に存在している水が多いほど消火能力が高いものとなる。
また、本発明の消火用ゲルは、消火能力が高いとともに、香料や茶葉等の植物成分を含むことにより、消臭能力も高い。好ましい使用方法としては、本発明の灰皿のように下方より水が常に供給される状態で使用されると機能性がさらに向上する。
【0022】
本発明で見出した消火用ゲルの特徴は、1)吸水性樹脂、植物成分および水を含むこと、2)吸水性樹脂、植物成分、水、さらに無機塩又は有機塩を含むことである。
上記水槽(1)中の消火用ゲルに無機塩が添加された具体例について図11と図12の比較実験の様子で示す。
図11は図8の吸殻収容空間に、粒子状の吸水性樹脂を内在させた時の様子である。吸水性樹脂としてポリアクリル酸部分中和物架橋体を上記水槽(1)中に内在させると、例えば、紙オムツで使われるポリアクリル酸(Na塩)架橋重合体では自重の100倍〜500倍という多量の水を吸水することができるので、吸水性樹脂が水を多量に吸水して膨潤し吸殻受けから外へあふれ出そうになる。膨潤ゲルは大気に直接、接するため時間の経過に伴ってゲル中の水が徐々に蒸発して乾燥してしまう。特にゲル表面は乾燥しやすいので消火能力が低下しやすい。
一方、図12は図11の状態に塩化ナトリウムを水槽に添加した時の様子である。無機塩である塩化ナトリウムが添加されるので、塩濃度が高くなり吸水性樹脂の吸水倍率が低下するので、膨潤ゲルの吸水量が低下することとなる。一般的に、吸水性樹脂は、水中に塩類が含まれていると、その影響によって吸水倍率が低下する。これは、吸水性樹脂の高分子鎖の広がりが水中の塩類の存在によって抑制されるためである。その結果、膨潤ゲルは収縮し、吸殻受けからあふれ出ることなく、ゲル分散液となり、ゲル間の隙間水を充分確保できる。
通常、吸水性樹脂が使われる様々な用途では、吸水倍率が高いことが望まれるが、本発明では消火することを目的とするので、ゲル間の隙間水を充分確保するために吸水倍率を、ある程度低く調整することが必要である。そのための手法として、具体的に無機塩の添加を上記で説明したが、有機塩や植物成分からの抽出成分でも同様の効果を得ることができる。
【0023】
添加剤としては、例えば、無機塩の金属ハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、金属(亜)硝酸塩、その他、無機塩以外にも金属水酸化物、有機塩が挙げられる。これら添加剤は単独で用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
金属ハロゲン化物としては、例えば、カルシウムやマグネシウム、リチウム、亜鉛、アルミニウム、カリウム、スズ等のハロゲン化物、即ち、これら金属の塩化物、臭化物、およびヨウ化物が挙げられる。塩化ナトリウムは海水を利用することができて安価である。潮解性物質の塩化カルシウム、塩化マグネシウムは吸水性樹脂に添加されるとゲル表面の水の蒸発が抑制されて保水力が向上する効果も発現される。尚、潮解とは固体が空気中の水分を吸収して、次第に溶解していく現象をいう。
潮解性物質は、水溶性であり、かつ、同一温度において、空気中の水蒸気圧よりも、その飽和水溶液の水蒸気圧の方が小さい。従って、潮解性物質は、水の蒸発を抑制する能力、即ち保水力に優れている。消火用ゲルに潮解性物質が含まれると、保水力が向上し、消火用ゲル中の水が時間の経過に伴って蒸発することが低減される。即ち、時間の経過に伴って消火用ゲルが徐々に乾燥する度合いが低くなり、それゆえ、消火用ゲルの消火能力を長期間にわたって維持することができる。
金属ハロゲン化物は、無水物であってもよく、また水和物となっていてもよい。また、1価の金属塩(塩化ナトリウム、塩化カリウム等)に比べて、2価の金属塩(塩化カルシウム、塩化マグネシウム等)は、吸水性樹脂の内・外部で高分子の鎖間の結合を誘導し、吸水性樹脂自体の吸水能力を低下させるので、吸水性樹脂の廃棄時に外部溶液のイオン濃度が再び低くなってもさらに大きく膨潤して廃棄物がかさばる可能性が低い。
硫酸塩としては、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等が挙げられる。
金属(亜)硝酸塩としては、具体的には、例えば、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カルシウム等が挙げられる。
【0024】
水槽中(分散液中)の無機塩又は有機塩の濃度としては0.1〜20質量%の範囲(無機又は有機化合物質量の水に対する質量割合)で無機塩又は有機塩を添加すれば良く、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%がさらに好ましく、0.3〜0.7質量%が特に好ましい。
吸水性樹脂の吸水倍率を低下させるためのその他の添加剤として具体的に説明する。
金属水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
有機塩としては、特開平11―315147号公報でイオン封鎖剤として用いられる以下の化合物の塩が挙げられる。
(1)アミノカルボン酸及びその塩、(2)ポリカルボン酸及びその誘導体、(3)(ポリ)リン酸及びその誘導体、(4)N−アシル化グルタミン酸及びN−アシル化アスパラギン酸及びそれらの塩、(5)βージケトン誘導体、(6)トロポロン誘導体、(7)有機リン酸化合物。
(1)アミノカルボン酸及びその塩としてはジヒドロキシエチルグリシン、イミノジ酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、シクロヘキサンー1,2−ジアミンテトラ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、エチレングリコールジエチルエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、N−アルキルーN−カルボキシメチルアスパラギン酸、N−アルケニルーN'−カルボキシメチルアスパラギン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩もしくはアミン塩が挙げられる。中でもカルボキシル基を3個以上有するアミノカルボン酸及びその塩がイオン封鎖能の点で好ましい。
(2)ポリカルボン酸及びその誘導体としては、コハク酸、ポリアクリル酸、クエン酸モノアルキルアミド、クエン酸モノアルケニルアミド、マロン酸モノアルキルアミド、マロン酸モノアルケニルアミド、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩もしくはアミン塩が挙げられる。
(3)(ポリ)リン酸及びその誘導体としては、ヘキサメタリン酸、メタリン酸、トリポリリン酸、リン酸アルキルエステル、リン酸アルケニルエステル及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩もしくはアミン塩が挙げられる。
(4)N−アシル化グルタミン酸及びN−アシル化アスパラギン酸及びそれらの塩としては、例えば(株)味の素より市販されているアミソフトHS−11やGS−11等が挙げられる。
(5)βージケトン誘導体としては、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等が挙げられる。
(6)トロポロン誘導体としてはトロポロン、βーツヤプリシン、yーツヤプリシン等が挙げられる。
(7)有機リン酸化合物としてはエチリデンホスホン酸;1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸;アミノトリメチレンホスホン酸;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等を挙げることができるが、特に好ましいものは1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)である。塩として好ましいものは、Na塩、K塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩を挙げることができる。これらの化合物は、金属封鎖剤の一種として知られているものである。
これらイオン封鎖剤の中でも好ましくはカルボキシル基を3個以上有するアミノカルボン酸及びその塩であり、中でもジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、シクロヘキサンー1,2−ジアミノテトラ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸及びその塩が、ゲルの劣化を抑制できる点で最も好ましい。
本発明において上記イオン封鎖剤の使用量は、吸水性樹脂の固形分100重量部に対して好ましくは0.0001〜50質量部、さらに好ましくは0.0002〜10質量部の範囲である。
【0025】
また、有機酸の多価金属塩も挙げられる。好ましくは炭素数が分子内に7個以上の有機酸多価金属塩で、脂肪酸、石油酸、高分子酸等のアルカリ金属塩以外の金属塩からなるものである。
上記の有機酸多価金属塩を構成する有機酸としては、カプロン酸、オクチル酸、オクチン酸、デカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の長鎖または分枝の脂肪酸、安息香酸、ミリスチシン酸、ナフテン酸、ナフトエ酸、ナフトキシ酢酸等の石油酸、ポリ(メタ)アクリル酸やポリスルホン酸等の高分子酸が例示できるが、分子内にカルボキシル基を有する有機酸であることが好ましく、より好ましくはカプロン酸、オクチル酸、オクチン酸、デカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、牛脂肪酸やヒマシ硬化脂肪酸等の脂肪酸である。さらに好ましくは分子内に不飽和結合を有しない脂肪酸で、例えばカプロン酸、オクチル酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸である。最も好ましくは、炭素数が分子内に12個以上の分子内に不飽和結合を有しない長鎖脂肪酸で例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸である。これら炭素数が大きいものを吸水性樹脂粒子に添加した場合、表面が撥水処理されることとなり、吸水性樹脂粒子を水中に投入した場合、浮遊する現象が見られる。
上記の有機酸多価金属塩を構成する金属塩はアルカリ土類金属塩や遷移金属塩等のアルカリ金属塩以外の金属塩であれば特に限定するものではないが、その入手の容易さからバリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が好ましい。また有機酸多価金属塩を構成する上記有機酸と上記金属塩との組み合わせについては、特に限定されるわけではなく、またそれらを単独および/または二種以上を併用しても良い。
有機酸多価金属塩の添加量は、吸水性樹脂固形分100質量部に対して、0を超えて30質量部未満の範囲が好ましく、より好ましくは0.001質量部〜10質量部である。
次に、防炎(加工)剤として用いられる有機リン化合物、含ハロゲン有機リン化合物、無機リン酸化合物、その他、重炭酸アンモニウム等の無機化合物が挙げられる。有害性、試薬入手容易性の点を考慮すると、無機塩のリン酸第2アンモニウム又はリン酸第1アンモニウムは、その水溶液は現に山火事に使用されており、また化学肥料としても使用されている物質であるので、実用性がある。なお、防炎加工とは火災予防の一つの手段として、炎を近づけてもすぐには燃え上がらず、炎を遠ざけるとすぐに消えるような性質を持たせる加工のことである。これらの添加剤は、塩濃度の調整と火災予防の点でも好ましい。
【0026】
次に植物成分について説明する。好ましくは、WO03/104349号、特開2002−285021号に記載の植物粉末が挙げられる。
本発明において用いることのできる植物粉末とは、維管束植物(種子植物、シダ植物)、コケ植物、藻類の粉末(粒子状)であり、好ましくは維管束植物の粉末である。また、植物加工業や食物加工業における製造工程で副生する植物滓を粉砕することにより得られたものであってもよい。さらに、香辛料であることも好ましい形態である。また、茶葉及び/または茶葉抽出物であることも好ましい形態である。
本発明においては、植物粉末として用いる植物の使用する部分については、本発明の性能を満たすもの(抽出成分により吸水性樹脂の吸水倍率を低下できるもの、消臭効果のあるもの)であれば特に限定されない。例えば、葉、枝、幹、茎、根、実、花、種子、樹皮などから選ばれる少なくとも1部分である。
本発明において用いることのできる植物粉末が維管束植物の粉末である場合には、その維管束植物としては、好ましくは、イネ科、カエデ科、カキノキ科、カバノキ科、キク科、シソ科、スギ科、セリ科、バラ科、ブドウ科、ヒノキ科、マツ科、ブナ科、アブラナ科、マメ科、ミカン科、ウリ科、ナス科、コショウ科、ショウガ科、クスノキ科、アオイ科、ツバキ科から選ばれる少なくとも1種の維管束植物である。イネ科の維管束植物としては、例えば、イネ、ササ、竹、トウモロコシ、麦などが挙げられる。カエデ科の維管束植物としては、例えば、カエデが挙げられる。カキノキ科の維管束植物としては、例えば、カキノキが挙げられる。カバノキ科の維管束植物としては、例えば、クマシデ、ハシバミ、シラカンバ、ハンノキなどが挙げられる。キク科の維管束植物としては、例えば、キク、ゴボウ、タンポポ、ヨモギなどが挙げられる。シソ科の維管束植物としては、例えば、ウツボグサ、エゴマ、オドリコソウ、シソ、ハッカなどが挙げられる。スギ科の維管束植物としては、例えば、スギ、コウヨウザン、タイワンスギが挙げられる。セリ科の維管束植物としては、例えば、ミツバ、ニンジン、パセリ、セロリなどが挙げられる。バラ科の維管束植物としては、例えば、ウメ、サクラ、シモツケ、バラ、アンズ、ナシ、モモ、リンゴ、イチゴ、スモモ、サンザシ、ビワ、シャリンバイ、ボケ、カマツカ、ナナカマド、ヤマブキなどが挙げられる。ブドウ科の維管束植物としては、例えば、ブドウ、ツタ、ノブドウが挙げられる。ヒノキ科の維管束植物としては、例えば、ヒノキ、ネズコ、アスナロ、ビャクシン、サワラなどが挙げられる。マツ科の維管束植物としては、例えば、カラマツ、ツガ、トウヒ、マツ、モミ、ヒマラヤスギなどが挙げられる。ブナ科の維管束植物としては、例えば、ブナ、クリ、シイノキ、ミラカシ、アラカシ、ウラジロガシなどが挙げられる。アブラナ科の維管束植物としては、例えば、ダイコン、アブラナなどが挙げられる。マメ科の維管束植物としては、例えば、アズキ、カンゾウ、ソラマメ、ダイズなどが挙げられる。ミカン科の維管束植物としては、例えば、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、ザボン、サンショウ、ユズ、レモン、ライムなどが挙げられる。ウリ科の維管束植物としては、例えば、カボチャ、キュウリ、スイカ、ヘチマ、ユウガオなどが挙げられる。ナス科の維管束植物としては、例えば、ナス、トウガラシ、ピーマン、トマトなどが挙げられる。コショウ科の維管束植物としては、例えば、コショウが挙げられる。ショウガ科の維管束植物としては、例えば、ショウガが挙げられる。クスノキ科の維管束植物としては、例えば、クスノキ、ショウノウ、クロモジ、シロモジ、ゲッケイジュ、シロダモ、ハマビワなどが挙げられる。アオイ科の維管束植物としては、例えば、タチアオイ、ゼニアオイ、フヨウ、ハイビスカス、カンアオイ、ケナフなどが挙げられる。ツバキ科の維管束植物としては、例えば、ツバキ、ヒサカキ、サカキ、モッコクなどが挙げられる。
本発明に用いることのできる香辛料とは、香辛料植物の種子、果実、花蕾、葉、樹皮、根茎を乾燥してそのまま用いたり、粉末にして用いたりし、食品の調味、薬味の役割を果たさせる物である。
本発明で特に好ましくは、茶葉やコーヒー豆、及び/又はこれらの抽出物が挙げられる。これらは破砕された粒子状や粉体であるものが好ましい。抽出物とは、抽出されたもの(抽出成分)を示す。これら植物成分から水中への抽出物(溶出物)の成分濃度が高くなると吸水性樹脂の吸水倍率は低下していく。例えば、茶葉の抽出成分ではアミノ酸類[グルタミン酸(Na)、テアニン、アスパラギン酸、アルギニン]、カテキン類[エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキン]、有機酸類[シュウ酸(Na)、クエン酸(Na)、コハク酸(Na)]、カフェイン、ショ糖、核酸[グアニル酸(Na),アデニル酸(Na)]、無機イオン[カリウム、マンガン、リン酸(Na)]といった成分がある。なお、抽出は水溶媒系、有機溶媒系、または水溶媒と有機溶媒の混合溶媒系からなる抽出剤が用いられる。抽出剤は、抽出物には含まれないものとする。
茶葉としては、例えば、アガリスク茶、アシタバ茶、アマチャズル茶、アロエ茶、いちょう葉茶、ウコギ茶、ウコン茶、ウラジロガシ茶、烏龍茶、オオバコ茶、柿の葉茶、カンゾウ茶、キク茶、ギムネマ茶、クコ茶、クマザサ茶、ゲンノショウコ茶、紅茶、サンザジ茶、シソ茶、ジャスミン茶、スギナ茶、センナ茶、桑の葉茶、そば茶、タヒボ茶、タンポポ茶、中国茶、鉄観音茶、甜茶、杜仲茶、ドクダミ茶、ナズナ茶、ナンテン茶、バセラ茶、バナバ茶、ハトムギ茶、ビワ茶、プアール茶、松の葉茶、ムギ茶、ヨモギ茶、緑茶、ほうじ茶、リンドウ茶、ルイボス茶等が挙げられ、好ましくはツバキ科の常緑低木及びその葉より飲用に適するように加工したもので、例えば緑茶、ジャスミン茶、紅茶、烏龍茶等が挙げられる。これらの茶葉は、含まれる香気成分により、煙草の臭いの消臭性、芳香性の点でも好ましい。
なお、緑茶にはカテキン類、カフェイン、ビタミン類(ビタミンC、β―カロチン、ビタミンE),γ―アミノ酪酸、フラボノイド、多糖類、フッ素、アミノ酸類(テアニン)、ミネラル類(リン、カリウム、亜鉛、マンガン、セレン)といった成分が含まれる。
同じ緑茶を原料としていても製法や粒度により成分が異なってくる。例えば、ほうじ茶では高温で焙じることにより、カフェインが少ないものとなる。そして、茶葉が超微粉末であると成分が効率良く抽出される。
また、上記の茶葉について、ツバキ科の葉、好ましくは緑茶由来の茶葉(緑茶を原料とする茶葉)を含んでなり、消火用ゲルからの水の放出速度を制御するために、茶葉の粒子径を調整することが好ましい。例えば、微粒子が少ないものを使用すると水の放出速度が遅くなる点で好ましい。微粒子が多いと、水に添加した場合、早くに茶葉成分が溶出するので、茶葉成分の影響で、吸水倍率の低下が起こり、消火用ゲルからの水の放出がすぐに生じる。茶葉成分の溶出速度は、茶葉の種類や茶葉の粒子径によって変わるので、水の放出速度を大きくする場合は、茶葉の微粒子の割合を多くすることが好ましい。さらには茶葉の抽出液を乾燥させた粉末を添加することが好ましい。また、高温の水では茶葉の成分の溶出が早くなるので、溶出速度を遅くする場合は、常温(20±5℃)の水を使用することが好ましい。なお、茶葉の溶出速度は抽出(使用)回数が多くなるに従い低下するので、使用済みの茶葉を用いて溶出速度を制御することもできる。
【0027】
茶葉の粒度分布(乾燥状態:含水率5±2%)において、水の放出速度を遅くする場合は、微粒子の割合が少ないことが好ましく、例えば、100メッシュ(目開き150μm)金網を通過する微粒子の量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。また、吸水性樹脂の平均粒子径に対して、茶葉の平均粒子径が大きい方が、時間をかけて消火用ゲルからの水の放出を行える点で好ましい。
一方、消火用ゲルを早く収縮させるために、水の放出速度を早くする場合は、微粒子の割合が多いことが好ましく、例えば、100メッシュ(目開き150μm)金網を通過する微粒子の割合が20質量%以上、好ましくは40質量%以上である。なお、上限値は100質量%以下、好ましくは90質量%以下である。
茶葉の使用量は、使用する茶葉の種類によっても異なるがその添加量は吸水性樹脂固形分 100質量部に対して、1〜10000質量部の範囲が好ましく、1000〜9000質量部の範囲がより好ましい。10000質量部を超えると茶葉の抽出物の成分濃度が高くなり、吸水性樹脂の吸収倍率が著しく低下する、また添加量にみあった消臭効果が得られなくなる。また消火用ゲル分散液全量に対する濃度としては、消火用ゲル分散液100質量部に対して、茶葉の添加量は0.1〜10質量部の範囲が好ましく、0.5〜4質量部の範囲がより好ましい。
ゲルを用いず、植物成分のみの形態でも良い。例えば、茶葉のみの消火材の場合では、消火材中(茶葉分散液中)の茶葉の濃度としては0.1〜10質量%の範囲(茶葉質量の水に対する質量割合)で茶葉を添加すれば消臭の点で良く、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%が特に好ましい。
茶葉等の植物成分と吸水性樹脂(ゲル)の混合物を得る方法としては、植物成分を吸水性樹脂に直接混合させる方法、植物成分を吸水性樹脂に直接混合したものに、水を噴霧若しくは滴下混合させる方法、植物成分を水や各種無機塩の溶液等に分散させたものを、吸水性樹脂に直接混合させる方法、吸水性樹脂に所望の水を添加したゲルに植物成分を直接混合させる方法等を例示できる。なお吸水性樹脂の重合時に植物成分を添加する方法や重合後の解砕ゲルに植物成分を直接混合させる方法も可能であるが植物成分からの抽出成分をゆっくりと抽出させる点では、吸水性樹脂に所望の水を添加したゲルに植物成分を直接混合させる方法が好ましい。特に消火用ゲルとしての使用時に植物成分を直接混合させる方法が好ましい。
【0028】
上記の吸水性樹脂の吸水倍率を低下できる添加剤以外にも、本発明で重要な芳香性を付与できる添加剤について説明する。この添加剤は、水槽中への添加、軽石等の不燃材料や吸水性樹脂等の吸水性素材に担持することで効果を発現できる。具体的には香料、芳香剤、脱臭剤、消臭剤が挙げられるが、水溶性であることが好ましい。本発明では消火を第一目的とするため、燃焼しにくいものが好ましい。
例えば、無機塩の炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウムは弱アルカリ性であるため、煙草の臭い成分である酸性粒子を選択的に吸着して脱臭することができる。
香料としては、天然香料、合成香料いずれでもよい。天然香料では、柑橘精油としてレモン油、オレンジ油、ライム油など、ハーブ精油としてラベンダー油、ローズマリー油、ペパーミント油など、花精油としてローズ油、ネロリ油など、その他パイン油、サンダルウッド油などが挙げられる。合成香料は、アルコール系、エステル系、アルデヒド系、ケトン系、フェノール系、フェノール・エーテル系、ラクトン系、テルペン系などが挙げられる。
消火用ゲルに芳香性を付与する場合は、水溶性の香料、芳香剤を含む水溶液を吸水性樹脂に吸収させて膨潤したゲルやゲル分散液を消火材として用いれば良い。また、単に水を吸収したゲルに、後から、芳香剤や消臭性のある植物成分を添加してもよい。
上記の消火用ゲルを得るための吸水性樹脂としては、公知の各種吸水性樹脂を採用することができ、特に限定されるものではないが、塩濃度に応じて吸水倍率が大きく変動し、水を放出しやすいという観点(たくさん吸水したゲルから水を放出させて消火作用を高める)では、ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体が好ましく、塩濃度が高くても吸水量を維持するという観点(塩濃度による吸水倍率の変動が小さい)では、耐塩性に優れる架橋重合体が好ましい。いずれにおいても粒子状であることが好ましい。好ましくは球形である、粒子形状が球形であるとゲル分散液の流動性が高まり取り扱い性が良く、また、火のついた煙草を投入したときに、ゲル層の下の方へ沈みやすく、消火性能が高まる。
ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体は水の吸収能力が非常に高く、ゲル間の隙間水を充分確保できないことが生じやすいので、特に上記で説明した無機塩や有機塩の添加や下記で説明する粒子径分布の制御が必要となる。
さらに、本発明で見出した消火用ゲルの別の特徴は、3)吸水性樹脂、無機塩又は有機塩、および水を含む消火用ゲルであって、吸水前の該吸水性樹脂中の粒子径150μm未満の微粒子の割合が20質量%以下であることを特徴とするものであり、吸水前(水と混合する前で、固形分95±3%)の吸水性樹脂の粒子径分布については、微粒子が少ないことが好ましい。例えば、吸水前の吸水性樹脂の重量平均粒子径が好ましくは120μm以上、5mm以下、より好ましくは150μm以上、3mm以下、特に好ましくは150μm以上、850μm以下、最も好ましくは150μm以上、250μm以下である。また、粒子径150μm未満の微粒子の割合が30質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、さらに特に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。また、粒子径75μm未満の微粒子の割合が20質量%以下、好ましくは15質量%以下、特に好ましくは3質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。また、粒子径45μm未満の微粒子の割合が5質量%以下、好ましくは3質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
なお、本発明でいう「150μm以上の粒子」とは後述する篩分級方法で分級された後に、測定される150μmの目開きを有する標準篩(JISないし相当品としてASTM、Tyler)の上に残った粒子を指す。また、「150μm未満の粒子」とは同様に後述する分級方法で分級された後に、測定される150μmの目開きを有するメッシュを通過した粒子を指す。他の目開きの大きさについても同様である。また、150μmの目開きを有するメッシュで粒子の50重量%が分級される場合、その重量平均粒子径(D50)は150μmである。
微粒子が多いと水を吸収した時のゲル間の隙間水(吸水性樹脂の膨潤ゲル粒子間、粒子表面に存在している水)が減少するため消火の効率が低下する。また、ゲル分散液の流動性が低下するため、ゲル分散液をポンプで送る場合では装置への付着等で閉塞が生じるなど、使用が困難となる可能性がある。
【0029】
上記の1)吸水性樹脂、植物成分および水を含むこと、2)吸水性樹脂、植物成分、水、さらに無機塩又は有機塩を含むこと、を特徴とする消火用ゲルにおいては、吸水前の吸水性樹脂の微粒子を少なくすることで、さらに消火性能が向上することとなるので上記のように粒子径分布を調整することが好ましい。
本発明の消火用ゲル中の各成分の好適な割合は以下の数値範囲が挙げられる。
まず、吸水性樹脂と植物成分と水とを必須成分として含むときの質量割合は例えば、
吸水性樹脂(0.05〜20質量%)、植物成分<好ましくは茶葉及び/又は茶葉抽出物>(0.3〜20質量%)、水(60〜99.5質量%)の数値範囲が挙げられる。
吸水性樹脂と植物成分と水と、無機塩又は有機塩を必須成分として含むときの質量割合は例えば、吸水性樹脂(0.05〜20質量%)、植物成分<好ましくは茶葉及び/又は茶葉抽出物>(0.3〜10質量%)、水(50〜99.5質量%)、無機塩又は有機塩(0.05〜30質量%)の数値範囲が挙げられる。
吸水性樹脂と無機塩又は有機塩と水とを必須成分として含むときの質量割合は例えば、吸水性樹脂(0.05〜20質量%)、無機塩又は有機塩(0.05〜30質量%)、水(55〜99.5質量%)の数値範囲が挙げられる。
なお、上記の各成分の合計量は、各消火用ゲル全量に対して、好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含まれることが好ましい。
また、消火用ゲルの消火性能、消臭性能を損なわない範囲で、上記成分に加えて、水不溶性無機微粒子、水溶性高分子、界面活性剤等の他の成分を混合することも可能である。他の成分の割合は、消火用ゲル(組成物)全量に対して、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
特に水溶性高分子としては、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、タンパク質分解物等が挙げられ、消火材の機能性(水の摩擦係数低下、増粘性、泡の安定化)を高める効果がある。
粒度調整は逆相縣濁重合のように粒子状で分散重合させる際に調整してもよいが、通常、水溶液重合の場合では、乾燥後に粉砕および分級して、特定粒度に調整される。
なお、本発明で得られた吸水性樹脂は無加圧下吸収倍率(0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下で30分の吸収倍率)が10g/g以上、より好ましくは20g/g以上、さらに好ましくは30g/g以上、特に好ましくは40g/g以上とされる。吸収倍率の制御は内部架橋剤など、前述の重合条件や乾燥条件を制御して行えばよく、上限値は60g/gまで高めることができる。
また、水や水溶液への可溶性成分である可溶分(水可溶分ともいう)が吸水性樹脂中に30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。可溶分の下限値は製法によって、1質量%まで低減できる。
【0030】
次に、消火用ゲルの製造方法、つまり、吸水性樹脂、植物成分<好ましくは茶葉及び/又は茶葉抽出物>、水、及び無機塩又は有機塩の混合方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を採用することができる。具体的には、例えば、吸水性樹脂に水を吸収させたゲルに植物成分、無機塩又は有機塩を添加する方法;吸水性樹脂、植物成分、水、および無機塩又は有機塩を一度に全て混合する方法;吸水性樹脂と無機塩又は有機塩、と水とを混合した後、植物成分を混合する方法;吸水性樹脂と植物成分と、無機塩又は有機塩とを混合した後、水を混合する方法;吸水性樹脂と植物成分とを混合した後、無機塩又は有機塩の水溶液を混合する方法;吸水性樹脂に、予め調製した植物成分と無機塩又は有機塩と水との混合物を混合する方法;水に、予め調製した吸水性樹脂と植物成分と無機塩又は有機塩との混合物を混合する方法;無機塩又は有機塩の水溶液に、吸水性樹脂と植物成分とを投入する方法;等が挙げられる。消火用ゲルは、吸水性樹脂、植物成分、水、無機塩又は有機塩を含んでなり、該吸水性樹脂がゲル状又はゲル分散液となっていればよいが、灰皿用の消火用ゲルとしては、最初に多量の水を吸収したゲルに、植物成分や無機塩又は有機塩を添加して徐々に後から、水の放出や消臭性が発揮されることが好ましい。
吸水性樹脂に対する水の使用量、つまり、消火用ゲルが含有すべき含水量(水分量)は、吸水性樹脂の組成、無機塩又は有機塩の種類、並びにこれらの組み合わせ;或いは消火用ゲルの用途等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、多ければ多い程、消火能力に優れる。例えば、無機塩又は有機塩を含まない純水を30倍以上、好ましくは50倍以上、さらに好ましくは60倍以上、特に好ましくは80倍以上吸収して、放出するための水を充分蓄えている消火用ゲルが好ましい。上限値は300倍あれば充分である。
特に耐塩性の吸水性樹脂((メタ)アクリル酸エステル系架橋重合体、ポリアルキレングリコール架橋重合体等)と潮解性物質の組み合わせでは、消火用ゲルは、製造時に、吸水性樹脂が潮解性物質および水を含むことにより膨潤、ゲル化して、該潮解性物質および水を保持する。潮解性物質は空気中の水蒸気を吸水し、吸水性樹脂は水を保持する。従って、ゲル化した吸水性樹脂は、空気中の水蒸気圧と、吸水性樹脂中の水によって生じる水蒸気圧とが、或る一定のバランスを維持するように、空気中の水蒸気を吸水するか、若しくは、吸水性樹脂中の水を蒸発させる。つまり、消火用ゲルは、温度(気温)や相対湿度の変化によって、その含水量に若干の変動が生じるものの、安定した含水状態を長期間維持することができる。
例えば、耐塩性の吸水性樹脂は、特開平10−192444号公報で開示されている(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含む単量体成分を重合させてなる架橋重合体であることが好ましく、塩化カルシウム飽和水溶液に対する吸液倍率が、5g/g以上であることがより好ましい。潮解性物質は、塩化カルシウムであることがより好ましい。
本発明の消火用ゲル(分散液)を用いる消火方法としては、消火用ゲル(分散液)と燃焼物や着火物とを接触させればよく、接触時間を長くすること、また充分な量の消火用ゲル(分散液)を使って燃焼物を覆うことにより空気と遮断することで消火の効率を高めることができる。具体的には、燃焼物や着火物に向かって消火用ゲル(分散液)を放出する方法や消火用ゲル(分散液)に着火物を投入する方法が挙げられる。例えば、着火物としては火の点いた煙草が挙げられるので、灰皿用の消火材等として好適に用いられる。特に本発明の特定の灰皿に内在することが好ましい。その他、花火の火消しバケツ等での消火用ゲル(水との分離の点で好ましくは水より比重の小さい耐火性素材を接合した特定の網状容器に内在させる)の適用も考えられる。また、例えば、ビル火災や森林火災等の一般火災の消火材としても好適に用いられる。消火活動で水を使用する場合、水の流失により消火に要する時間が長くなったり、使用水量が多くなるという問題があるが、吸水性樹脂を消化液に添加することにより改善できる可能性がある。これまで様々な報告がなされているが、本発明の機構を利用すると例えば、以下の消火方法が考えられる。
吸水性樹脂と無機塩を含む消火液をホースで火災現場に散水後、水のみの消火液を散水すると、塩濃度が低い水が後から吸水性樹脂にかかることにより、吸水性樹脂はさらに吸水して膨潤度合いが大きくなるので、水の流失を抑制できる可能性がある。水のみを散水するホースを併用するなど、塩濃度の変化により、吸水性樹脂の膨潤度合いを調整することができる。また、消火活動の終了後、火災現場に散在する消火用の膨潤ゲルを回収するのは大変なので、2価の金属塩(塩化カルシウム、塩化マグネシウム等)を含む高濃度の消火液を最後に、散水すると、吸水性樹脂の内・外部で高分子の鎖間の結合を誘導し、吸水性樹脂自体の吸水能力を低下させるので、膨潤ゲルを収縮させることができる。1価の金属塩に比べて、無機塩の濃度が再び低くなってもさらに大きく膨潤しにくい点で好ましい。
以上、無機塩の濃度調整による消火用ゲルの使用方法について説明したが、植物成分<好ましくは茶葉及び/又は茶葉抽出物>の添加による抽出成分によって、膨潤ゲルの膨潤度合いの調整やゲル同士の粘着性低減も可能である。例えば、消火活動の終了後に、茶葉や茶葉抽出物の粉末を散布すると消火に用いた膨潤ゲルの収縮が可能となる。ただし、無機塩の方が少量添加で効果があるので好ましい。
なお、本発明のように吸水性樹脂を微粒子の割合が少ない特定の粒度分布に調整すること、及び植物成分、無機塩又は有機塩の添加をすることで、ゲル粒子の凝集による消火ポンプやホース又はノズル等の装置の閉塞を抑制できることも考えられる。
【0031】
本願発明者は、さらに本発明を別の観点から検討したところ、吸水性樹脂が水中に浮遊ないし水面に浮いていることによる特徴やその効果を見出すことができた。特徴を挙げると、上記で述べた吸水性樹脂が水面に浮いていることを特徴とする消火用ゲル、水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを用いることを特徴とする消火方法、水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを内在することを特徴とする灰皿である。
本発明では、吸水性樹脂は水より比重の小さい物体で保持されることにより水面に浮いていることを説明したが、吸水性樹脂のみで水中に浮遊ないし水面に浮くものがある。
例えば、特表平9−507085号に記載の多孔構造を有する膨潤状態で1.0g/cm3未満の密度を有する水膨潤性の架橋粒状ポリマー、特願2004−032489号に記載の表面が撥水処理された吸水性樹脂が挙げられる。好ましくは上記の多孔構造を有する比重の小さいポリマーであり、火災の消火の際に、該ポリマーと水のスラリーは良好に散布ないしポンプで圧送でき、効率的な消火を行える可能性がある。
【0032】
本発明では、水より比重が小さい物体に保持されることで吸水性樹脂を水面に浮かべている。例えば、軽石(天然軽石、セラミック軽石)、アルミホイルを表面に覆った発泡ポリエチレン(ポリエチレンフォーム)等を例示した。水面に浮かべる方法としては、単に水より比重が小さい物体上に載せる方法以外にも、水より比重が小さい物体(例えば破砕物)と吸水性樹脂とを複合させる方法がある。例えば、吸水性樹脂の重合時の重合容器中に、水より比重が小さい物体を分散させる方法、その他、重合後に造粒物とする方法が挙げられる。つまり吸水性樹脂に水より比重が小さい物体を含有させる形態である。これまで、気泡を含有させる方法、コルク粉を含有させる方法等が知られているが、本発明では別の方法で吸水性樹脂を水面に浮かべること、さらには水面に浮かんでいる吸水性樹脂を消火材に適用すること、その消化材を用いた消火方法を見出すことができた。
水より比重が小さい物体としては、特願2003−144421号に記載のポリウレタンフォーム、セルローススポンジ、メラミンフォーム、HIPEフォーム等のフォーム材料が挙げられる。特にHIPEフォームでは、平均直径が0.5〜100μmと孔径が小さく、乾燥密度は0.1g/cm3以下で、9cm3/g以上の細孔容積の連続細孔からなっている。軟質ポリウレタンフォームでは平均直径が100〜1000μm、乾燥密度が0.01〜0.03g/cm3、メラミンフォームでは平均直径が800μm以下、乾燥密度が0.01g/cm3程度のものが適用できる。
吸水性の高いフォーム材料を水に浮かべるとフォーム材料の上部表面に水が浸透し充分濡れた状態となる。天然軽石を浮かべて、その上部にこれらフォーム材料を載せる形態においても、フォーム材料が吸水して上部表面は水で濡れる状態となる。この上部表面に吸水性樹脂を載せると含水ゲルは充分水を保有するので消火能力が高くなる。
具体的には、吸水性樹脂が天然軽石の上に保持されて水槽に浮かんでいる図13、吸水性樹脂がHIPEフォームの上に保持されて水槽に浮かんでいる図14の状態で水面に浮かんでいる形態がある。これらの形態では、水が充分にある状態で浮かべることが必要である。特に、フォーム材料では保水量が少なくなると表面が乾燥しやすいので消火能力が著しく低下する。
【0033】
本発明でHIPEフォームとは、油中水滴型高分散相エマルションを重合した連続気泡を有する多孔質重合体を意味する。詳しく述べると、油中水滴型高分散相エマルションは英語でWater in Oil type High Internal Phase Emulsion(HIPE)と表され、このエマルションを重合して表面も内部も連通孔の形成されている連続気泡(open cell;オープンセルとも略す)を有する多孔質重合体(HIPEフォーム)を得ることができる。 HIPEフォームには、圧縮して乾燥すると圧縮体を保つものと、圧縮が解放されて膨張体に戻るものがある。これは、孔径、W/O比、ポリマーの弾性によって決まる。
HIPEは、分散相(内相)である水相と外相である油相の比率(W/O比)が約3/1以上のエマルションであり、このHIPEを重合させて、多孔質重合体を製造することは公知である(特開昭57−198713号公報、特開2002−20408号公報など)。そして、HIPE化することなく発泡剤を用いて製造される多孔質重合体(フォーム)は、比較的大孔径の独立気泡のフォームが得られやすいのに比べ、HIPEから多孔質重合体を製造する方法(HIPE法)は、孔径の微細な連続気泡の低密度のフォームの製法として優れている。本発明で用いるHIPEフォームは公知のものの中でも吸水倍率が25(g/g)以上、好ましくは35(g/g)以上、さらに好ましくは50(g/g)以上であり、縦方向へ圧縮したものが好ましい。(製造時に圧縮した方向へきわめて吸収・膨張性能が高いものである。)またHIPEフォームの原料である重合性単量体、架橋性単量体、界面活性剤、重合開始剤は特開2002−20408号に例示されているものを使用できる。
本発明における好適なHIPEフォームの製造例(特開2002−20408号の実施例1,2)を以下に示す。
(製造例1)
2−エチルヘキシルアクリレート5.1質量部(以下、単に「部」と称する)、42%ジビニルベンゼン(他成分はp−エチル−ビニルベンゼン)3.1部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート1.1部からなる単量体成分、界面活性剤としてのグリセリンモノオレエート0.6部、ジタロウジメチルアンモニウムメチルサルフェート0.1質量部を加え、均一に溶解して、油相混合物溶液(以下、「油相」と称する)を調製した。一方、塩化カルシウム18部をイオン交換水425部に溶解して、水相水溶液(以下、「水相」と称する)を調製し、85℃に加温した。油相と水相を上記比で連続的に攪拌混合機内に供給し連続的に油中水滴型高分散エマルション(HIPE)を形成させた。水相と油相の比は44.3/1であり、HIPEの形成温度Toは85℃であった。
【0034】
得られたHIPEを連続的に攪拌混合機より抜き出し、あらかじめ85℃に加熱し、周囲に加熱、保温部材を具備したスタティックミキサーに供給した。スタティックミキサーの入り口より別途水溶性重合開始剤としての過硫酸ナトリウム0.5部を6部のイオン交換水に溶解した液を送り、HIPEと重合開始剤を連続的に混合した。これにより最終的に水相と油相の比は45/1になった。
【0035】
このHIPEを、保温、加熱したフレキシブルチューブを通して搬送し、長さ1100mm、巾100mm、厚さ5mmのあらかじめ85℃に保温したステンレス製角型重合容器に流し込み成形した。HIPEの成形温度T1は81℃であった。上ブタをし、HIPEの重合温度T2が85℃の水浴に浸した。加熱開始から15分後に容器を引き上げ、硬化した含水多孔質重合体を得た。なお重合時間15分間に分解し終わる重合開始剤量は0.314モル%と求められた。この多孔質重合体を脱水、圧縮することにより多孔質重合体(HIPEフォーム)を得た。
(製造例2)
製造例1において得られたのと同様の、重合開始剤を含有したHIPE(形成温度To=85℃)を、保温、加熱したフレキシブルチューブを通して搬送し、85℃に加熱されかつ水平に設置された一定速度で走行するベルト上に、幅約50cm、厚み約5mmのシート状に連続的に成形した。HIPEの成形温度T1は82℃であった。このHIPEを重合温度T2が85℃に制御された重合ゾーンを約15分で通過させて連続的に重合し、硬化した含水多孔質重合体を得た。なお重合時間15分間に分解し終わる重合開始剤量は0.314モル%と求められた。この多孔質重合体を脱水、圧縮することにより多孔質重合体(HIPEフォーム)を得た。
【0036】
以上のように、種々の材料に保持させることにより吸水性樹脂を水面に浮かべることができる。浮かんでいる状態では常に水と接しているので、充分な保水量を維持できる。
吸水性樹脂を水中に浮遊ないし水面に浮かせることにより、少量の吸水性樹脂で効率的に消火できること、水面に浮いている状態(ゲルの量)により水の蒸発速度を制御できること、灰皿では煙草成分の溶出速度を小さくでき悪臭や水の汚れを低減できること、ゲルや吸殻の回収が容易になること、表面に存在することで消臭作用が大きくなること、着色剤をゲルに含有させると外観もきれいになること等の効果がある。特に芳香成分の含まれる水に浮かんでいる場合、ゲル単体や水より比重の小さい物体に保持されたゲルが、表面に存在することで空気中への除放性が出てくることで効果が長く持続する。
消火方法については、先に述べたように水中に浮遊ないし水面に浮くことができる消火用ゲルと燃焼物または着火物とを接触させればよいが、吸水性樹脂の含水ゲルが水中に浮遊ないし水面に浮いていることで、灰皿での煙草の消火では、使用される吸水性樹脂の量を少なくできたり、消臭作用が大きくなることで実用性が高まる可能性がある。
【実施例】
【0037】
以下、実験例(実施例および比較例)により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、特に断りの無い限り、実施例および比較例に記載の「部」は、「質量部」を示し、「%」は、「質量%」を示す。なお、質量ないし質量%と、重量ないし重量%とは同義語として扱う。
本発明で吸水性樹脂の物性を測定する場合、吸水または吸湿している場合は、適宜、減圧乾燥(例、60〜80℃で16時間程度)して吸水性樹脂の含水率を平衡(5±3質量%)にまで乾燥したのちに測定する。
下記に使用した吸水性樹脂、茶葉の成分等について記す。
(I)芳香ゲル1(成分;水、香料、吸水性樹脂、両性イオン交換体を含む)
(II)芳香ゲル2(成分;香料、吸水性樹脂、バイオ消臭抗菌剤を含む)
(III)吸水性樹脂3(表面架橋処理品)
(IV)吸水性樹脂4(表面架橋処理品)
(V)吸水性樹脂5(表面架橋未処理品が主成分)
(VI)ジャスミン茶の茶葉
(VII)ほうじ茶の茶葉
(VIII)緑茶の粉末(茶葉の抽出液の乾燥品)
芳香ゲル1、芳香ゲル2の粒子径について以下に示す。
吸水前の粒子径:100メッシュ(目開き150μm)−ONが99質量%以上含まれる。すなわち、100メッシュ(目開き150μm)の金網を通過する微粒子の割合が1質量%以下である。いずれも微粒子が非常に少ない球状粒子である。
吸水性樹脂3〜5の製法について以下に示す。
【0038】
(製造例3)吸水性樹脂3の製造方法
アクリル酸21.6部及びアクリル酸ナトリウムの37質量%水溶液228.6部、N,N´−メチレンビスアクリルアミド0.0056部(対モノマー0.003モル%)、ヒドロキシエチルセルロース0.106部、イオン交換水53部を用いてモノマー濃度35%、中和率75%の単量体水溶液を得、この単量体水溶液に過硫酸カリウム0.09部を溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および滴下ロートを付した四つ口セパラブルフラスコ中にシクロヘキサン800部を取り、分散剤としてショ糖脂肪酸エステル(HLB=6)4部を加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。次いで、単量体水溶液を上記セパラブルフラスコに攪拌下に加えて分散させた。その後、浴温を65℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完結させた。重合終了後、共沸脱水により大部分の水分を取り除いた後、濾過し更に100℃で恒量まで減圧乾燥することにより含水率8%の球形状である吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂100部にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.1部、水3部、イソプロパノール1部を混合し、得られた混合物を120℃、30分間加熱処理を行ったのち粒子をメタノールで処理することで吸水性樹脂3を得た。
(製造例4)吸水性樹脂4の製造方法
アクリル酸21.6部及びアクリル酸ナトリウムの37質量%水溶液228.6部、N,N´−メチレンビスアクリルアミド0.0148部(対モノマー0.008モル%)、ヒドロキシエチルセルロース0.106部、イオン交換水53部を用いてモノマー濃度35%、中和率75%の単量体水溶液を得、この単量体水溶液に過硫酸カリウム0.09部を溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および滴下ロートを付した四つ口セパラブルフラスコ中にシクロヘキサン800部を取り、分散剤としてショ糖脂肪酸エステル(HLB=6)4部を加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。次いで、単量体水溶液を上記セパラブルフラスコに攪拌下に加えて分散させた。その後、浴温を65℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完結させた。重合終了後、共沸脱水により大部分の水分を取り除いた後、濾過し更に100℃で減圧乾燥することにより含水率8%の球形状である吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂100部にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.1部、水3部、イソプロパノール1部を混合し、得られた混合物を120℃、30分間加熱処理を行ったのち粒子をメタノールで処理することで吸水性樹脂4を得た。
(製造例5)吸水性樹脂5(下記の表面架橋未処理品を主成分として含む)の製造方法
アクリル酸ナトリウム(中和率71モル%)の38質量%水溶液(部分中和アクリル酸(Na塩)水溶液)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=8)を溶解させて反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で脱気した。次いで、開閉可能な蓋付きのシグマ型羽根を2本有するジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに、上記反応液を供給し、反応液を攪拌しながら、過硫酸アンモニウム、L−アスコルビン酸を開始剤として添加し重合を開始させた、得られる含水ゲル状重合体を取り出した。
得られた含水ゲル状重合体を熱風乾燥した。次いで乾燥物を、粉砕機を用いて粉砕し、さらに目開き850μmの篩を通過して不定形破砕状の吸水性樹脂(表面架橋未処理品)を得る。
吸水性樹脂5は上記の吸水性樹脂(表面架橋未処理品)を主成分(約70質量%含む)とする吸水性樹脂である。
【0039】
以下に茶葉について示す。
ジャスミン茶の茶葉について
販売者:株式会社 伊藤園(所在地:東京都渋谷区本町3−47−10)
名称:ジャスミン茶
原材料名:緑茶、花(ジャスミン)
原産国名:中華人民共和国(福建省)
特徴:釜炒り緑茶に天然のジャスミンの花の香りを付けてつくりあげた中国福建省産のジャスミン茶で、2本のローラーの回転を利用して茶葉を押しつぶし、引きさき、丸めて粒状にする製法で作られる。葉の成分が水に溶け出しやすい。
粒子径:100メッシュ(目開き150μm)−ONが90質量%以上含まれる。すなわち、100メッシュ(目開き150μm)の金網を通過する微粒子の割合が10質量%以下である。
ほうじ茶の茶葉について
製造者:株式会社 芳香園
名称:特上 ほうじ茶
原材料名:緑茶
緑茶の粉末について
販売者:株式会社 伊藤園(所在地:東京都渋谷区本町3−47−10)
名称:緑茶
原材料名:緑茶、デキストリン、サイクロデキストリン、ビタミンC
原産国名:中華人民共和国、日本
特徴:1杯分(100cc)0.8g当たり、茶ポリフェノール(カテキン類を含有)60mg
【0040】
吸水性樹脂の物性は、以下の方法で測定する。
(a)無加圧下吸収倍率(0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下で30分の吸収倍率)
室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、吸水性樹脂0.20gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れてシールした後、室温で
0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H−122)を用いて250cm/sec2(250G)で3分間水切りを行った後、袋の質量W1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いずに行い、その時の質量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から、次式に従って無加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
無加圧下吸収倍率(g/g)=(W1(g)−W0(g))/吸水性樹脂の質量(g)
(b)重量平均粒子径
吸水性樹脂粉末を目開き850μm、500μm、300μm、150μm、75μm、45μmのJIS標準ふるいで篩い分けし、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、重量平均粒子径(D50)を読み取った。
なお、吸水性樹脂粉末の粒度に合わせて、適宜、JIS標準ふるいを追加して正確に測定することが必要である。
篩い分けの際の分級方法は、吸水性樹脂粉末10.0gを、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、上記の目開きのJIS標準ふるい(THE IIDA TESTING SIEVE:径8cm)に仕込み、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES―65型、SER.No.0501)により、10分間、分級を行った。なお、重量平均粒子径(D50)とは、米国特許第5051259号などにあるように、一定目開きの標準篩で粒子全体の50重量%に対応する標準篩(目開き)の粒子径のことであり、例えば、目開き300μm標準篩で粒子全体の50重量%が分級される場合、重量平均粒子径(D50)は300μmである。
(c)可溶分量
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の184.3gを測り取り、その水溶液中に吸水性樹脂1.0gを加え16時間攪拌することにより樹脂中の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを測り取り測定溶液とした。はじめに0.9質量%塩化ナトリウム水溶液だけを、まず、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。例えば既知量のアクリル酸とそのナトリウム塩からなる吸水性樹脂の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂中の可溶分量を下式により算出することができる。未知量の場合は滴定により求めた中和率を用いてモノマーの平均分子量を算出する。
可溶分(質量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0
中和率(mol%)=(1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl]))×100
(d)固形分
吸水性樹脂1.000gをアルミカップに入れ、180℃の無風オーブンで3時間加熱し、その乾燥減量により算出した。測定は日本国特開2000−121291号公報、13頁
【0041】
記載の方法に従って行う。
表1に、吸水性樹脂3〜5の物性を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
次に本発明の灰皿、消火用ゲルを用いた煙草の消火実験を示す。
[実施例1]:灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けを、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分は水に充分浸っていた。
(観察結果:火の点いた煙草(2本)を置いただけで瞬時に火が消えた、消火能力は高い。消火後の煙草臭は残る。)
[比較例1]:灰皿
水150gが入っている水槽に、火の点いた煙草を投入する。
(観察結果:瞬時に火が消えた、消火能力は高い。消火後の煙草臭は残る。1週間放置後も煙草臭は消えない、水は褐色に濁る。水と煙草の分離に手間がかかる。)
[実施例2]:灰皿
実施例1の吸殻を受ける部分に、市販されている使用済みのコーヒー豆3gを入れておいて、火の点いた煙草を投入する。
(観察結果:瞬時に火が消えた、消火能力は高い。コーヒー臭で、ある程度マスキングされるが消火後の煙草臭は残る。1週間放置後の水の褐色の度合いは大きい。)
[実施例3] :灰皿
実施例1の吸殻を受ける部分に、使用済みのジャスミン茶の茶葉(3g)を入れておいて、火の点いた煙草を投入する。(以後、ジャスミン茶の茶葉をジャスミン茶葉と略す。)
(観察結果:瞬時に火が消えた、消火能力は高い。ある程度マスキングされるが消火後の煙草臭は残る。使用済みジャスミン茶葉では消臭効果が小さい。1週間放置後は、煙草臭は消えず、水の色は褐色となる。)
[実施例4]:灰皿
実施例1で用いた目開き100メッシュ金網の代わりに、目開き400メッシュ金網に変更し、吸殻を受ける部分にジャスミン茶葉(未使用3g)を入れて実施例1同様に、火の点いた煙草を投入する。
(観察結果:瞬時に火が消えた、消火能力は高い。マスキング効果が高く、消火後の煙草臭は消える。未使用ジャスミン茶葉では消臭効果が大きい。1週間放置後は、煙草臭は消えたままでジャスミンの香りが漂う、水の色は褐色となる。)
[実施例5]:灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の下部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けを、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図9参照)、吸殻を受ける金網の部分は、上から荷重をかけると水に浸ることができた。
(観察結果:火の点いた煙草を、金網部分に手で軽く押すと瞬時に火が消える、消火能力はある。消火後の煙草臭は残る。)
[実施例6]::消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの中に平均粒子径が約5mmの芳香ゲル1(3g)を入れて、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分に内在する芳香ゲル1は吸水して膨潤し、吸殻受け部分から、あふれそうになった(図11のモデル図参照)。
(観察結果:ゲルの粒度が大きいので、ゲル粒子間に水が充分存在し消火能力はある。廃煙草はゲル粒子間に隙間水があるので、ゲル粒子間中に沈みやすく、ゲルは芳香性があるので、消臭能力は高い。)
[実施例7]::消火用ゲルを内在した灰皿
実施例6の状態から続けて、水槽に塩化ナトリウム1gを添加したところ、
ゲルの吸水量は低下し、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分のゲルの占める割合が減り、含水割合が増えた(図12のモデル図参照)。ゲル粒子は、水中に分散した状態となる(ゲル分散液中の塩化ナトリウム濃度は水に対して0.7質量%)。
(観察結果:火の点いた煙草を置いただけで瞬時に火が消えた、消火能力は高い。消火後の煙草臭は消える、廃煙草はゲル粒子間に隙間水が充分あるので、ゲル層中に沈みやすく芳香性が高い。1週間放置後、煙草臭は消えたままで芳香性は持続していたが、水の色は褐色となる。)
【0044】
[実施例8] :消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの中に、吸水性樹脂5に水を50倍吸水させたゲル(3g)を内在させ、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分に内在する吸水性樹脂5はさらに吸水して膨潤し吸殻受け部分から、あふれそうになった(図11参照)。
(観察結果:ゲルの粒度が小さいので、ゲル粒子間の隙間水が少ないが消火能力はある。ゲル同士が付着して造粒物となってしまい、廃煙草はゲル粒子間中に沈みにくい。)
[実施例9]:消火用ゲルを内在した灰皿
実施例8の状態から続けて、水槽に塩化ナトリウム1gを添加したところ、
ゲルの吸水量は低下し、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分のゲルの占める割合が減り、含水割合が増えた(図12参照)。ゲル粒子は、水中に分散した状態となる(ゲル分散液中の塩化ナトリウム濃度は水に対して0.7質量%)。
(観察結果:塩化ナトリウム添加後は、ゲル粒子間に隙間水が生じて、消火能力は添加前より高くなった。廃煙草はゲル粒子間に隙間水があるのでゲル層中に沈みやすい。)
[実施例10]:消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の下部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの金網上に吸水性樹脂5に水を50倍吸水させたゲル(3g)を置き、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図9参照)、ゲルが置かれた吸殻を受ける金網の部分は、一旦上から荷重をかけるとゲルは吸水し(14gに増加)充分に濡れる。
(観察結果:火の点いた煙草を手で軽く押すと瞬時に火が消える、消火能力はある。ゲル同士が付着して造粒物となってしまい、廃煙草はゲル粒子間中に沈みにくい。)
[実施例11]:消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの中に吸水性樹脂3に水を50倍吸水させたゲル(3g)を内在させ、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分に内在する吸水性樹脂3はさらに吸水して膨潤し吸殻受け部分から、あふれそうになった(図11参照)。
(観察結果:ゲル粒子間の隙間水が少ないが消火能力はある。ゲル同士が付着しやすく、廃煙草はゲル粒子間中に沈みにくい。)
[実施例12]:消火用ゲルを内在した灰皿
実施例11の状態から続けて、水槽に塩化ナトリウム1gを添加したところ、
ゲルの吸水量はとても低下し、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分は水に充分浸るようになり、ゲルは底に分散していて、消火能力は塩化ナトリウム添加前より大きく向上した(図12参照)。吸水量の低下は他の吸水性樹脂に比べて顕著に見られた。廃煙草はゲル粒子間中に水が充分あるので、ゲル粒子間中に沈みやすい。(ゲル分散液中の塩化ナトリウム濃度は水に対して0.7質量%)。
(観察結果:塩化ナトリウム添加後は、ゲル粒子間に隙間水が生じて、消火能力は添加前より大きく向上した。廃煙草はゲル粒子間に隙間水が充分あるのでゲル粒子間中に沈みやすい。)
[実施例13]:消火用ゲルを内在した灰皿
実施例12の状態から続けて、水を150g追加して塩濃度を下げてみると、ゲルの吸水量は若干向上するが、まだ不充分で水に充分浸る状態である。
塩濃度の変化により、吸水性樹脂の膨潤度合いを調整することができる。
(ゲル分散液中の塩化ナトリウム濃度は水に対して0.3質量%)
[実施例14]:消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの中に吸水性樹脂4に水を50倍吸水させたゲル(3g)を内在させ、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分に内在する吸水性樹脂4はさらに吸水して膨潤し吸殻受け部分から、あふれそうになった(図11参照)。
(観察結果:消火能力はあった。ゲル粒子間の隙間水が少ないので、廃煙草はゲル層中に沈みにくい。)
[実施例15]:消火用ゲルを内在した灰皿
実施例14の状態から続けて、水槽に塩化ナトリウム1gを添加したところ、
ゲルの吸水量はとても低下し、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分は水に充分浸るようになり、ゲルは底に分散していて、消火能力は塩化ナトリウム添加前より大きく向上した(図12参照)。
(観察結果:火の点いた煙草を置いただけで瞬時に火が消えた。消火後の煙草の臭いは残る、廃煙草はゲル粒子間に隙間水が充分あるので、ゲル粒子間中に沈みやすい。(ゲル分散液中の塩化ナトリウム濃度は水に対して0.7質量%)
吸水性樹脂の吸水ゲルがあると水の濁りが低減される、1週間放置後の水の濁りの度合いは小さい。煙草成分の水中への溶出速度が遅くなるためと考えられる。)
【0045】
[実施例16]:消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き60メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの中に吸水性樹脂4に水を50倍吸水させたゲル(3g)を内在させ、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分に内在する吸水性樹脂4はさらに吸水して膨潤し吸殻受け部分から、あふれそうになった(図11参照)。
(観察結果:消火能力はあった。ゲル粒子間の隙間水が少ないので、廃煙草はゲル粒子間中に沈みにくい。)
[実施例17]:消火用ゲルを内在した灰皿
実施例16の状態から続けて、水槽に塩化ナトリウム1gを添加したところ、
ゲルの吸水量はとても低下し、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分は水に充分浸るようになり、ゲルは底に分散していて、消火能力は塩化ナトリウム添加前より大きく向上した(図12参照)。さらに、ジャスミン茶葉(未使用1g)をゲルの上に投入した(ゲル分散液中の茶葉は水に対して0.7質量%)。
(観察結果:火の点いた煙草を置いただけで瞬時に火が消えた。消火後の煙草の臭いは比較的少ない、廃煙草は水が充分あるので、ゲル層中に沈みやすい。ゲル分散液中の塩化ナトリウム濃度は水に対して0.7質量%。1週間放置後の水は、ジャスミン茶葉の成分が溶出して濁る、煙草臭いは少ないまま保持されている。ジャスミン茶葉が芳香成分となる。吸水ゲルはさらに縮んでいる。)
[実施例18]:消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの中に、ジャスミン茶葉(未使用1g)と吸水性樹脂3に水を50倍吸水させたゲル(3g)を内在させ(ゲル分散液中の茶葉は水に対して0.7質量%)、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分に内在する吸水性樹脂3は初めはさらに吸水して膨潤し吸殻受け部分から、あふれそうになった(図11参照)。しかし、ジャスミン茶葉の成分が溶出するにつれて吸水量は低下し、6時間後では、適度にゲル間に隙間水がありゲル表面は充分濡れていた。
(観察結果:消火能力はある。ゲル粒子間に隙間水があり、廃煙草はゲル粒子間中に沈む。煙草の消火実験の1週間後、水は褐色に濁るが、煙草臭は少ない。)
[実施例19]:消火用ゲルを内在した灰皿
円形状の目開き100メッシュ金網の上部に、アルミホイルで覆った直径12mmの長細い円柱状の発泡ポリエチレン(タハラ化成工業有限会社製、発泡ポリエチレン製カラーチューブ)で四方を囲むように取り付けた図7のような吸殻受けの中に、ジャスミン茶葉(未使用5g)と吸水性樹脂3に水を50倍吸水させたゲル(3g)を内在させ(ゲル分散液中の茶葉は水に対して3.3質量%)、150gの水が入っている水槽に浮かべたところ(図8参照)、アルミホイルコート発泡ポリエチレンで囲まれた吸殻を受ける部分に内在する吸水性樹脂3は初めはさらに吸水して膨潤し吸殻受け部分から、あふれそうになった(図11参照)。しかし、お茶の成分が溶出するにつれて吸水量は低下し、6時間後では、適度にゲル間に隙間水がありゲル表面は充分濡れていた。
(観察結果:消火能力はある。ゲル粒子間に隙間水があり、廃煙草はゲル粒子間中に沈む。煙草の消火実験の1週間後、水は褐色に濁るが、煙草臭は少ない。茶葉の成分が水中へ溶出するにつれて、吸水ゲルの吸水倍率が下がり、適度にゲル粒子間に隙間水を保有する状態になる。ジャスミン茶葉5g入れた方が、ジャスミン茶葉1gの場合より、吸水性樹脂の吸水量の低下の度合いは大きい。茶葉の添加量や時間の経過により、吸水性樹脂の膨潤度合いを調整することができる。
[比較例2]:消火用ゲル(分散液)
実施例8〜10で使用した吸水性樹脂5は、表1に示す粒子径分布を有しており、粒子径150μm未満の微粒子の割合が約60質量%と高いものである。
また、重量平均粒子径が100μmと小さい。微粒子の割合が高いと、無機塩(0.7質量%)を添加しても吸水時のゲル粒子間の隙間水の確保が不充分となり、ゲル分散液の流動性が低くなる。そのため、ゲル同士が付着して造粒しやすく、廃煙草はゲル粒子間中に沈みにくい。水を吸水しているので消火能力はある。
[実施例20]:消火用ゲル(分散液)
実施例11〜13で使用した吸水性樹脂3は、表1に示す粒子径分布を有しており、粒子径150μm未満の微粒子の割合が約11質量%と低いものである。また、重量平均粒子径が201μmと大きい。無機塩を添加(0.7質量%、0.3質量%)すると、微粒子の割合が低くて重量平均粒子径が大きく、また球形粒子であるため、吸水時のゲル粒子間の隙間水が充分確保できて消火能力は高い。ゲル分散液の流動性が高いので、廃煙草はゲル粒子間中に沈みやすい。
[実施例21]:消火用ゲル(分散液)
実施例14〜16で使用した吸水性樹脂4は、表1に示す粒子径分布を有しており、粒子径150μm未満の微粒子の割合が約16質量%と低いものである。また、重量平均粒子径が185μmと大きい。無機塩を添加(0.7質量%すると、微粒子の割合が低くて重量平均粒子径が大きく、また球形粒子であるため、吸水時のゲル粒子間の隙間水が充分確保できて消火能力は高い。ゲル分散液の流動性が高いので、廃煙草はゲル粒子間中に沈みやすい。
[実施例22]:消火用ゲル(分散液)
実施例17で使用した吸水性樹脂4、ジャスミン茶葉、無機塩と水を含む消火用ゲルは、実施例21の消火用ゲルにさらに、ジャスミン茶葉を水に対して0.7質量%添加したもので、消火能力に加えて、煙草の消臭能力も備わった消火用ゲルとなる。ジャスミン茶葉は未使用の緑茶を含んでなり、100メッシュ金網を通過する微粒子の割合が10質量%以下と低いので、徐々に茶葉抽出成分が水中に溶出するので、それに伴い消火用ゲルの吸水倍率は低下していくので隙間水が増えて、さらに流動性が高いゲル分散液となる。
[実施例23]:消火用ゲル(分散液)
実施例18で使用した吸水性樹脂3、ジャスミン茶葉と水を含む消火用ゲルは、未使用のジャスミン茶葉を水に対して0.7質量%添加したもので、消火能力に加えて、煙草の消臭能力も備わった消火用ゲルとなる。
ジャスミン茶葉の成分が水中に溶出することにより、吸水性樹脂の吸水倍率は低下するので、ゲル粒子間に隙間水が生じて流動性がある。
[実施例24]:消火用ゲル(分散液)
実施例19で使用した吸水性樹脂3、ジャスミン茶葉と水を含む消火用ゲルは、未使用のジャスミン茶葉を水に対して3.3質量%添加したもので、消火能力に加えて、煙草の消臭能力も備わった消火用ゲルとなる。
ジャスミン茶葉の成分が水中に溶出することにより、吸水性樹脂の吸水倍率は低下するので、ゲル粒子間に隙間水が生じて流動性がある。
【0046】
次に、種々の材を用いた煙草の消火後の消臭結果を示す。
アルミカップ内に以下の材を添加した。
[実施例25]:消火用ゲル(分散液)
芳香ゲル2(約0.6g)+水でトータル(20g)
火の点いた煙草1本の消火後の臭い;煙草臭は消える。
1週間放置後の臭い;煙草臭は消えたままである。
[比較例3]:水のみ(20g)
火の点いた煙草1本の消火後の臭い;煙草臭は残る。
1週間放置後の臭い;煙草臭は残ったままである。水の色も汚い。灰が底にたくさん沈む。
[実施例26]:ジャスミン茶葉(未使用1g)+水でトータル(15g)
火の点いた煙草1本の消火後の臭い;煙草臭は消える。
1週間放置後の臭い;煙草臭は消えたままである。
[実施例27]:ほうじ茶の茶葉(芳香園;未使用1g)+水でトータル(15g)
火の点いた煙草1本の消火後の臭い;煙草臭は残る。
1週間後の臭い;煙草臭は残るが、ある程度、消臭されていた。
次に茶葉の抽出成分で吸水性樹脂の吸水倍率が下がることの比較実験(実施例28、29)を示す。
[実施例28]:吸水性樹脂4に水を50倍吸水させたゲル(3g)+ジャスミン茶葉(1g)+水27g…1週間放置後において芳香性あり、隙間水を保有し流動性高い。
上記の配合は、吸水性樹脂0.2質量%、茶葉3.2質量%、水96.6質量%とした消火用ゲルである。
[実施例29]:吸水性樹脂4に水を50倍吸水させたゲル(3g)+水27g…隙間水は実施例28より少なく流動性低い。
上記の配合は、おおよそ、吸水性樹脂0.2質量%、水99.8質量%とした消火用ゲルである。
以上の実験より以下のことが観察された。
香料や茶葉が含まれる消火材は煙草臭を低減することができる。
茶葉抽出物の成分で吸水性樹脂の吸水倍率は経時的に下がる。無機塩や有機塩添加の代替ともなる。
【0047】
[実施例30]:吸水性樹脂4(5g)と緑茶の粉末(1g)を乾式混合した。その混合物1g分を水槽に投入し、水を40g添加した。緑茶は粉末状なので早く溶けた。
(吸水性樹脂2.0質量%、緑茶粉末0.4質量%、水97.6質量%)
ゲル間の隙間水は少なかったのでさらに、61gの緑茶(緑茶の粉末1g+水60g)を添加した。(吸水性樹脂0.8質量%、緑茶粉末1.2質量%、水98.0質量%)
ゲル間の隙間水をさらに多くするために、緑茶の粉末3gを添加した。
(吸水性樹脂0.8質量%、緑茶粉末4.0質量%、水95.2質量%)
この添加後、スプーンで攪拌するとゲルからの水の放出が顕著に観察された(消火能力が高い)。次にゲルを収縮するために塩化ナトリウム2gを添加した
(吸水性樹脂0.8質量%、緑茶粉末3.9質量%、水93.4質量%、塩化ナトリウム1.9質量%)。この添加によりゲルから水の放出は非常に多くなり、ゲルは水をほとんど吸収せず液状となった(消火後の膨潤したゲルの回収の手間が減る)。
[実施例31]:水200gと塩化ナトリウム2gを添加した水槽の中に、2cm角(厚さ1cm)程度の天然軽石3g(発売元;キクロン株式会社)を浮かべた、その天然軽石の上に目開き400メッシュ金網を挟んで、微量の吸水性樹脂4を載せた(図13参照)。吸水性樹脂は水を吸水しておりゲル間の隙間水があり充分濡れていたので、消火能力が高い状態であった。天然軽石のみを浮かべると、その上部表面は水で濡れることが観察された。その上部表面の水を吸水性樹脂は吸水するので、この天然軽石の中央付近にキリで上方向から穴を空けるとさらに天然軽石の上部表面の濡れの状態が良くなり吸水性樹脂の含水ゲル間の隙間水が多くなる。(天然軽石に穴を空けた方が、穴部分から直接水が浸透して含水ゲルの消火能力が高くなる。)
[実施例32]:水200gと塩化ナトリウム2gを添加した水槽の中に、2×5cm角程度のHIPEフォーム(イオン交換水の吸水倍率;37g/g)を浮かべる、そのHIPEフォームの上に、微量の吸水性樹脂4を載せた(図14参照)。吸水性樹脂は水を吸水しておりゲル間の隙間水があり充分濡れていたので、消火能力は高い状態であった。HIPEフォームのみを浮かべると、その上部表面は水で濡れることが観察された。その上部表面の水を吸水性樹脂は吸水することで含水ゲルの消火能力が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第一実施形態に係るスタンド型灰皿の斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るスタンド型灰皿の分解斜視図である。
【図3】図2の灰皿本体の断面図である。
【図4】灰皿本体の他の実施形態の断面図である。
【図5】灰皿本体の他の実施形態の断面図である。
【図6】灰皿本体の他の実施形態の断面図である。
【図7】吸殻受けの真上から見た図である。
【図8】吸殻受けを水槽に浮かべたときの側面図である。
【図9】吸殻受けを水槽に浮かべたときの側面図である。
【図10】本発明の第二実施形態に係る灰皿本体の断面図である。
【図11】図8の吸殻収容空間に、粒子状の吸水性樹脂を内在させた時の様子である。
【図12】図11の状態に塩化ナトリウムを水槽に添加した時の様子である。
【図13】吸水性樹脂が天然軽石の上に保持されて水槽に浮かんでいる側面図である。
【図14】吸水性樹脂がHIPEフォームの上に保持されて水槽に浮かんでいる側面図である。
【符号の説明】
【0049】
(1)…水槽
(2)…水より比重の小さい耐火性素材
(3)…吸殻を収容する網状容器
(4)…吸水性素材(吸水性樹脂)
(5)…水
(6)…上蓋
(7)…吸殻の投入口
(8)…受け台
(9)…ステンレス金網
(10)…吸殻収容空間
(11)…吸水性樹脂
(12)…天然軽石
(13)…HIPEフォーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂、植物成分および水を含むことを特徴とする消火用ゲル。
【請求項2】
さらに無機塩又は有機塩を含むことを特徴とする請求項1に記載の消火用ゲル。
【請求項3】
前記吸水性樹脂及び植物成分が、粒子状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の消火用ゲル。
【請求項4】
前記植物成分が、茶葉及び/又は茶葉抽出物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の消火用ゲル。
【請求項5】
吸水前の前記吸水性樹脂中の粒子径150μm未満の微粒子の割合が20質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の消火用ゲル。
【請求項6】
吸水性樹脂、無機塩又は有機塩、および水を含む消火用ゲルであって、吸水前の該吸水性樹脂中の粒子径150μm未満の微粒子の割合が20質量%以下であることを特徴とする消火用ゲル。
【請求項7】
前記吸水性樹脂が、ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の消火用ゲル。
【請求項8】
前記吸水性樹脂が、水面に浮いていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の消火用ゲル。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の消火用ゲルを用いることを特徴とする消火方法。
【請求項10】
灰皿での煙草の消火に用いられることを特徴とする請求項9に記載の消火方法。
【請求項11】
水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを用いることを特徴とする消火方法。
【請求項12】
水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを内在することを特徴とする灰皿。
【請求項13】
水を貯えた水槽(1)と、水より比重の小さい耐火性素材(2)と、吸殻を収容する網状容器(3)とを有し、
該網状容器(3)は、該耐火性素材(2)と接合した状態で、該水槽(1)の水面に浮いていることを特徴とする灰皿。
【請求項14】
前記網状容器(3)に、請求項1〜8に記載の消火用ゲルが内在することにより水面に浮いていることを特徴とする請求項13に記載の灰皿。
【請求項1】
吸水性樹脂、植物成分および水を含むことを特徴とする消火用ゲル。
【請求項2】
さらに無機塩又は有機塩を含むことを特徴とする請求項1に記載の消火用ゲル。
【請求項3】
前記吸水性樹脂及び植物成分が、粒子状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の消火用ゲル。
【請求項4】
前記植物成分が、茶葉及び/又は茶葉抽出物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の消火用ゲル。
【請求項5】
吸水前の前記吸水性樹脂中の粒子径150μm未満の微粒子の割合が20質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の消火用ゲル。
【請求項6】
吸水性樹脂、無機塩又は有機塩、および水を含む消火用ゲルであって、吸水前の該吸水性樹脂中の粒子径150μm未満の微粒子の割合が20質量%以下であることを特徴とする消火用ゲル。
【請求項7】
前記吸水性樹脂が、ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の消火用ゲル。
【請求項8】
前記吸水性樹脂が、水面に浮いていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の消火用ゲル。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の消火用ゲルを用いることを特徴とする消火方法。
【請求項10】
灰皿での煙草の消火に用いられることを特徴とする請求項9に記載の消火方法。
【請求項11】
水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを用いることを特徴とする消火方法。
【請求項12】
水面に浮いている吸水性樹脂の含水ゲルを内在することを特徴とする灰皿。
【請求項13】
水を貯えた水槽(1)と、水より比重の小さい耐火性素材(2)と、吸殻を収容する網状容器(3)とを有し、
該網状容器(3)は、該耐火性素材(2)と接合した状態で、該水槽(1)の水面に浮いていることを特徴とする灰皿。
【請求項14】
前記網状容器(3)に、請求項1〜8に記載の消火用ゲルが内在することにより水面に浮いていることを特徴とする請求項13に記載の灰皿。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−61249(P2006−61249A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244801(P2004−244801)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
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