説明

消火器用ガスボンベのリサイクル方法

【課題】 少なくとも一度ガス加圧式消火器に内蔵された消火器用ガスボンベを再使用する際の安全性を向上させる。
【解決手段】 消火器用ガスボンベのリサイクル方法は、少なくとも一度ガス加圧式消火器に内蔵された消火器用ガスボンベのリサイクルに用いられる。このリサイクル方法は、損傷検出ステップS100と、再形成ステップS102とを備える。損傷検出ステップS100は、消火器用ガスボンベの表層における損傷の有無を検出する。再形成ステップS102は、損傷検出ステップS100で損傷が検出されなかったとき、消火器用ガスボンベの表層をいったん除去し、かつ、再形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火器用ガスボンベのリサイクル方法に関し、特に、少なくとも一度ガス加圧式消火器に内蔵された消火器用ガスボンベを再使用する際の安全性を向上させることができる消火器用ガスボンベのリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消火器用ガスボンベとは、ガス加圧式消火器に内蔵されるボンベのことである。ガス加圧式消火器は、消火器用ガスボンベに加え、レバーとレバーの操作に連動するカッターと消火薬剤とを備える。ユーザがレバーを操作すると、カッターが消火器用ガスボンベの一部を破る。消火器用ガスボンベの一部が破られると、消火器用ガスボンベに充填されていたガスが噴出する。そのガスが、消火薬剤を攪拌し、放射する。ところで、消火器用ガスボンベには高圧のガスが充填されている。そのため、消火器用ガスボンベが破裂した場合には、大きな損害が生じることがある。
【0003】
一方、特許文献1は、リサイクル処理支援方法を開示する。このリサイクル処理支援方法は、次に述べる2つのステップを備える。第1のステップは、リサイクル費用の低さに基づいて部品へ優先順位を付すステップである。第2のステップは、製品のリサイクル率が目標値に達するまで、部品を分解対象に追加するステップである。
【0004】
特許文献1に開示されたリサイクル処理支援方法によると、リサイクル率の目標値を確保しながら製品の処理費用を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−202418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されたリサイクル処理支援方法では、少なくとも一度ガス加圧式消火器に内蔵された消火器用ガスボンベの再使用について何ら考慮されていないという問題点がある。
【0007】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、少なくとも一度ガス加圧式消火器に内蔵された消火器用ガスボンベを再使用する際の安全性を向上させる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
図面を参照して本発明に係る消火器用ガスボンベのリサイクル方法を説明する。なお、この欄で図中の符号を使用したのは、発明の内容の理解を助けるためであって、内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、消火器用ガスボンベのリサイクル方法は、少なくとも一度ガス加圧式消火器1に内蔵された消火器用ガスボンベ30に適用される。このリサイクル方法は、損傷検出ステップS100と、再形成ステップS102とを備える。損傷検出ステップS100は、消火器用ガスボンベ30の表層における損傷の有無を検出する。再形成ステップS102は、損傷検出ステップS100で損傷が検出されなかったとき、消火器用ガスボンベ30の表層をいったん除去し、かつ、再形成する。
【0010】
損傷検出ステップS100において、消火器用ガスボンベ30の表層における損傷の有無が検査される。さらに、損傷検出ステップS100で損傷が検出されなかったとき、消火器用ガスボンベ30の表層をいったん除去する。損傷が検出されなかったとき表層が除去されることは、損傷が検出されなかった消火器用ガスボンベ30が再使用の対象となることを示す。また、消火器用ガスボンベ30の表層が除去されることで、その表層にある、損傷検出ステップS100で検出できなかった損傷が除去される。その後、表層が再形成される。これにより、その後の再使用において事故が生じる可能性は軽減される。その結果、少なくとも一度ガス加圧式消火器1に内蔵された消火器用ガスボンベ30を再使用する際の安全性を向上できる。
【0011】
また、上述の消火器用ガスボンベ30はメッキ層42を有していることが望ましい。この場合、再形成ステップS102が、除去ステップS118と、メッキステップS120とを有することが望ましい。除去ステップS118は、メッキ層42を除去するステップである。メッキステップS120は、メッキ層42が除去された消火器用ガスボンベ30の表面を再度メッキするステップである。
【0012】
もしくは、上述の損傷検出ステップS100が、外観検査ステップS110と、第1の重量判断ステップS112と有することが望ましい。外観検査ステップS110は、消火器用ガスボンベ30の外観を検査するステップである。第1の重量判断ステップS112は、消火器用ガスボンベ30の重量を測定し、重量に関する要件を消火器用ガスボンベ30の重量が満たすか否かを判断するステップである。この場合、消火器用ガスボンベのリサイクル方法が、第2の重量判断ステップS124をさらに有することが望ましい。第2の重量判断ステップS124は、再形成ステップS102で消火器用ガスボンベ30の表層を再形成した後に消火器用ガスボンベ30の重量を測定し、消火器用ガスボンベ30の表層を再形成した後に測定された重量が重量に関する要件を満たすか否かを判断するステップである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る消火器用ガスボンベのリサイクル方法は、少なくとも一度ガス加圧式消火器に内蔵された消火器用ガスボンベを再使用する際の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ガス加圧式消火器の一例を示す断面図である。
【図2】消火器用ガスボンベの一例における一部破断図である。
【図3】本発明の実施形態に係る消火器用ガスボンベのリサイクル方法の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0016】
図1はガス加圧式消火器1の一例を示す断面図である。図2は消火器用ガスボンベの一例における一部破断図である。図3は本実施形態に係る消火器用ガスボンベ30のリサイクル方法の手順を示す図である。
【0017】
図1を参照しつつ、公知のガス加圧式消火器1について説明する。図1に示すガス加圧式消火器1は、本体容器10と、バルブ20と、消火器用ガスボンベ30とを備える。本体容器10には図示しない消火薬剤が充填される。バルブ20は、本体容器10に取り付けられる。消火器用ガスボンベ30は、本体容器10に収容され、かつ、バルブ20の下に固定される。消火器用ガスボンベ30は、消火薬剤の放射の圧力源である。
【0018】
バルブ20は、破壊用針棒50と起動レバー80とを有している。破壊用針棒50の下端52は尖っている。下端52が尖っているのは、消火器用ガスボンベ30の封板36を突き破るためである。ユーザが起動レバー80を操作すると、その操作に伴い破壊用針棒50の下端52は封板36を突き破る。
【0019】
図2を参照しつつ、消火器用ガスボンベ30について説明する。消火器用ガスボンベ30は、胴体32と、ネジ部34と、封板36とを有する。胴体32は、高圧の二酸化炭素を蓄える部分である。胴体32の表面には、消火器用ガスボンベ30が製造された時点におけるその重量などが刻印されている。ネジ部34は、上述したバルブ20のメネジにねじ込まれる部分である。これにより、消火器用ガスボンベ30全体がバルブ20の下に固定される。封板36は、上述したように、ユーザーが起動レバー80を操作すると、その操作に伴い突き破られる。
【0020】
胴体32は、耐圧層40と、メッキ層42とを有する。耐圧層40は、胴体32を構成する部分である。メッキ層42は、消火器用ガスボンベ30の外部から耐圧層40が侵されることを防ぐ。メッキ層42は、消火器用ガスボンベ30の表層を形成している。
【0021】
図3を参照しつつ、本実施形態にかかるリサイクル方法の手順を説明する。本実施形態に係るリサイクル方法は、損傷検出工程S100と、再形成工程S102と、品質検査工程S104とを備える。損傷検出工程S100は、消火器用ガスボンベ30の表層における損傷の有無を検出する工程である。再形成工程S102は、消火器用ガスボンベ30の表層をいったん除去し、かつ、再形成する工程である。品質検査工程S104は、表層が再形成された消火器用ガスボンベ30の品質を検査する工程である。
【0022】
損傷検出工程S100は、外観検査S110と、第1次重量判断工程S112と、ネジ検査S114と、X線検査S116とを有する。外観検査S110は、消火器用ガスボンベ30の外観を検査する。この検査により、消火器用ガスボンベ30の表面の、サビや、傷や、汚れや、品質が保証されることを示すマーク(品質保証マーク)などの有無が検査される。本実施形態の場合、サビや傷や汚れがあった消火器用ガスボンベ30と品質保証マークがなかった消火器用ガスボンベ30とは廃棄される。第1次重量判断工程S112は、消火器用ガスボンベ30の重量を測定し、その重量が要件を満たすか否かを判断する工程である。本実施形態の場合、この工程における要件は、胴体32の表面に刻印された重量±3グラムの範囲内に、測定された重量が入っているかか否かという要件である。本実施形態の場合、重量がこの要件を満たさなかった消火器用ガスボンベ30は廃棄される。この検査が実施されることで、外観でからは見出しにくい損傷(例えば錆)が検出される可能性が高くなる。ネジ検査S114は、消火器用ガスボンベ30のネジ部34を、図示しないメネジにねじ込むという検査である。本実施形態の場合、ネジ部34がスムーズにねじ込まれなかった消火器用ガスボンベ30は廃棄される。ネジ部34がスムーズにねじ込まれないことが、バルブ20から消火器用ガスボンベ30を取り外す際、ネジ部34に損傷が生じたことを意味すると考えられるためである。
【0023】
再形成工程S102は、酸洗S118と、ドブ漬けメッキ工程S120と、クロメート処理工程S122とを有する。酸洗S118は、消火器用ガスボンベ30の表面を脱脂し、酸洗する工程である。これにより、上述したメッキ層42と耐圧層40のごく一部とが除去される。ドブ漬けメッキ工程S120は、酸洗S118にてメッキ層42などが除去された消火器用ガスボンベ30を、溶融した亜鉛の中に漬ける工程である。これにより、胴体32にメッキ層42が再度形成される。クロメート処理工程S122は、クロム溶液(本実施形態の場合、3価クロムが含まれる水溶液)に消火器用ガスボンベ30を浸ける工程である。これにより、メッキ層42の表面が不動態化する。
【0024】
品質検査工程S104は、第2次重量判断工程S124と、印字工程S126と、気密検査S128とを有する。第2次重量判断工程S124は、クロメート処理が施された消火器用ガスボンベ30の重量を測定し、その重量が要件を満たすか否かを判断する工程である。本実施形態の場合、この工程における要件は、胴体32の表面に刻印された重量±3グラムの範囲内に、測定された重量が入っているかか否かという要件である。すなわち、本実施形態の場合、第1次重量判断工程S112にて消火器用ガスボンベ30の重量が満たさなくてはならない要件と、第2次重量判断工程S124にて消火器用ガスボンベ30の重量が満たさなくてはならない要件とが同一である。重量がこの要件を満たさなかった消火器用ガスボンベ30は廃棄される。この検査が実施されることで、再形成されたメッキ層42が再使用に耐えないものであることを検出できる可能性が高くなる。印字工程S126は、消火器用ガスボンベ30の表面に、レーザにて、重量その他の情報を印字する工程である。なお、本実施形態において、酸洗S118の前に胴体32に刻印されていた文字の上に、二重線が印される。気密検査S128は、消火器用ガスボンベ30を水の中に漬ける工程である。本実施形態の場合、水の中に漬けられてから1時間が経過するまでに消火器用ガスボンベ30から泡が発生した場合、その消火器用ガスボンベ30は廃棄される。
【0025】
以上のようにして、本実施形態に係るリサイクル方法は、消火器用ガスボンベ30の表層における損傷の有無を検出し、損傷がなかった消火器用ガスボンベ30の表層を再形成する。これにより、表層の外観に現れた損傷がある消火器用ガスボンベ30はリサイクルの対象から外されるうえ、消火器用ガスボンベ30の表層の外観に現れない損傷は除去される。消火器用ガスボンベ30の安全性に影響がある損傷はほとんどの場合まず表層に発生するので、表層に損傷がない消火器用ガスボンベ30の安全性は一度使用されたものであっても新品とほぼ同様である。その結果、少なくとも一度ガス加圧式消火器1に内蔵された消火器用ガスボンベ30を再使用する際の安全性を向上させることができる。
【0026】
なお、本実施形態にかかるリサイクル方法によれば、印字工程S126にてレーザで文字が記入されるため、次に述べる効果が得られる。第1の効果は、刻印を打つ場合に比べ、消火器用ガスボンベ30が破裂する危険性を低下させることができるという効果である。第2の効果は、作業性がよいという効果である。さらに、本実施形態にかかるリサイクル方法によれば、酸洗S118の前に胴体32に刻印されていた文字の上に二重線が印される。これにより、消火器用ガスボンベ30の製造時における情報の手がかりを残すことができる。
【0027】
さらに、本実施形態にかかるリサイクル方法によれば、再使用される消火器用ガスボンベ30の安全性を簡単な方法で大きく向上させることができる。これは、第1次重量判断工程S112と第2次重量判断工程S124とにおいて同一の要件が判断基準となっているためである。そのようになっているため、表層に表われず、かつ、再形成工程S102を経ても残留する損傷(たとえば、耐圧層40の内部に形成された錆)が存在する消火器用ガスボンベ30は、かなり高い確率で気密試験S128まで進めなくなる。そのような損傷が存在する消火器用ガスボンベ30の重量が、第1次重量判断工程S112と第2次重量判断工程S124とのうち一方において、かなり高い確率で要件を満たさなくなるためである。
【0028】
今回開示された実施形態はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施形態に基づいて制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更をしてもよいのはもちろんである。
【0029】
たとえば、損傷検出工程S100を構成する各工程と、再形成工程S102を構成する各工程と、品質検査工程S104を構成する各工程とは、上述したものに限定されない。それらは、上述した工程とは異なる工程を有するよう構成されていてもよいし、上述した工程のいずれかが含まれていなくてもよい。ただし、少なくとも損傷検出工程S100では、消火器用ガスボンベ30の表層における損傷の有無が検出されなくてはならない。この工程における損傷の検出精度は特に限定されない。また、少なくとも再形成工程S102では、消火器用ガスボンベ30の表層がいったん除去され、かつ、再形成されなくてはならない。
【0030】
また、品質検査工程S104は、必ずしも必要ではない。
【0031】
また、第1次重量判断工程S112にて消火器用ガスボンベ30の重量が満たさなくてはならない要件と、第2次重量判断工程S124にて消火器用ガスボンベ30の重量が満たさなくてはならない要件とは、異なっていてもよい。また、それらの要件は、上述したものに限定されない。たとえば、それらの要件のうち少なくとも一方は、胴体32の表面に刻印された重量±5グラムの範囲内に測定された重量が入っているかか否かという要件であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 ガス加圧式消火器
10 本体容器
20 バルブ
30 消火器用ガスボンベ
32 胴体
34 ネジ部
36 封板
40 耐圧層
42 メッキ層
50 破壊用針棒
80 起動レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一度ガス加圧式消火器に内蔵された消火器用ガスボンベのリサイクル方法であって、
前記消火器用ガスボンベの表層における損傷の有無を検出する損傷検出ステップと、
前記損傷検出ステップで前記損傷が検出されなかったとき、前記消火器用ガスボンベの表層をいったん除去し、かつ、再形成する再形成ステップとを備えることを特徴とする、消火器用ガスボンベのリサイクル方法。
【請求項2】
前記消火器用ガスボンベの表層がメッキ層を有しており、
前記再形成ステップが、
前記メッキ層を除去する除去ステップと、
前記メッキ層が除去された前記消火器用ガスボンベ表面を再度メッキするメッキステップとを有することを特徴とする、請求項1に記載の消火器用ガスボンベのリサイクル方法。
【請求項3】
前記損傷検出ステップが、
前記消火器用ガスボンベの外観を検査する外観検査ステップと、
前記消火器用ガスボンベの重量を測定し、重量に関する要件を前記消火器用ガスボンベの重量が満たすか否かを判断する第1の重量判断ステップとを有し、
前記消火器用ガスボンベのリサイクル方法が、前記再形成ステップで前記消火器用ガスボンベの表層を再形成した後に前記消火器用ガスボンベの重量を測定し、前記消火器用ガスボンベの表層を再形成した後に測定された前記重量が前記重量に関する要件を満たすか否かを判断する第2の重量判断ステップをさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の消火器用ガスボンベのリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−184167(P2010−184167A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28143(P2009−28143)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000114905)ヤマトプロテック株式会社 (46)
【Fターム(参考)】