説明

消火栓装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、消火栓装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】トンネルあるいは建物等の壁面等には複数の消火栓装置が配設されている。この装置には主弁(消火栓弁)即ち、消火時放水のために開放される弁と、該主弁にホース等を介して接続され、かつ、消火地点まで移動可能なノズルとが備えられている。そして、該主弁を開くとノズルから放水が開始されるが、その放水される消火用液体の放水圧が高くなりすぎるとノズル操作者が振り回されて極めて危険な状態となる。
【0003】そこで、従来、放水圧を自動的に調整するため、主弁とノズルとの間に自動調圧弁を設けている。この自動調圧弁は、消火用液体の供給源と連通する弁室に摺動自在なステムを貫通して設け、該ステムに第1弁体と第2弁体とを設け、該ステムの両端側にそれぞれフラムを固定して受圧面積の異なる第1フラム室と第2フラム室を形成し、該両フラム室を消火用ノズルに連通せしめることにより、放水圧を調整している。(特開平2−95384号公報参照)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の自動調圧弁は消火用液体の供給圧の如何にかかわらずホース内圧や放水圧が一定となるので、消火ノズルの操作を安全に行うことができる。しかし、この自動調圧弁では主弁が開かれたまま消火ノズルの弁を閉じると、供給圧がそのままホースにかかるので大変危険な状態となる。そのため、ホース側に安全弁を設けないと使用できない。
【0005】又、消火後、ノズルへの給水を停止するには、わざわざ作業員が主弁の位置まで移動し、閉弁しなければならないので面倒である。更に、主弁を開かないとノズルからの放水ができないので、例えば、火災時にあわてている作業者は該主弁を開かないでホースを伸ばしノズルを消火位置まで運ぶことがあるが、このような場合には再び主弁の近傍まで戻って主弁を開かなければならず消火作業の開始がおくれてしまい初期消火は困難となる。
【0006】この発明は上記事情に鑑み、調圧弁の機能を兼備した主弁を提供することを目的とする。他の目的は放水中の消火用ノズルを閉じても危険がなく、かつ、自動調圧式主弁が閉弁するようにすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】第1発明は、放水圧を所定圧に調整する自動調圧式主弁を介して消火用液体の供給源と消火用ノズルとを接続し、前記消火用ノズルに開閉弁を設け、該ノズルの開閉弁の閉弁により前記自動調圧弁を閉弁せしめることを特徴とする消火栓装置であり、
【0008】また、第2発明は、消火用液体の供給源と連通する弁室に摺動自在なステムを貫通して設け、該ステムに閉弁時に前記弁室のシートに着座する弁体を設け、該ステムの少なくとも一端側にフラムを固定してフラム室を形成した自動調圧式主弁と、該自動調圧式主弁のフラム室に連通された消火用ノズルとを設け、前記消火用ノズルに開閉弁を設け、該ノズルの開閉弁の閉弁により前記自動調圧式主弁の弁体を着座せしめることを特徴とする消火栓装置、である。
【0009】
【作用】消火用液体の供給源から自動調圧弁に消火用液体が供給されると、フラム室の受圧力に応じてステムが摺動し、弁体の開度が調整される。そのため、二次側の給水圧は所定圧に調整される。又、放水中の消火用ノズルを閉弁すると、弁室の二次側が所定圧より高くなり、フラム室の圧力によってステムを摺動させ、弁体が同時に着座するので、自動調圧式主弁は閉弁する。
【0010】
【実施例】この発明の実施例を添付図面により説明するが、同一図面符号はその名称も機能も同一である。例えば、前傾式等の消火栓装置の筐体(図示せず)内に消火用液体の供給源1と連通する消防隊用給水栓3に自動調圧式主弁5を接続する。この自動調圧式主弁5は、ボデー6とボデー6の上部開口部を覆うボンネット8と該ボデー6の下部開口部を覆うスプリングケース9とから構成されている。
【0011】ボデー6内にはスプール10が設けられた弁室11が配設され、この弁室11の入口11aは流体入口14に接続され、又、弁室11の出口11bは第1フラム室12及び第2フラム室13を介して流体出口15に接続されている。スプール10の上端部及び下端部の内周面にはシート押さえ17を介してシート(弁座)16が設けられている。スプール10の中央には2つの弁体18a、18bを備えたステム19が貫通して設けられている。この弁体18a、18bは、同径に形成され、かつ、所定間隔離れて配設されており、同時にシート16に着座することができる。
【0012】ステム19の上端及び下端には、ボデー6の開口部を閉鎖する2次圧検出用のフラム20、21が設けられ、第1フラム室12及び第2フラム室13が形成されている。いずれのフラム20、21もステム19に螺着したフラム受22とフラム押さえ23により挟持されていて、第2フラム21の受圧面積は、第1フラム20のそれより大きく形成されている。
【0013】第1フラム室側のフラム受22をステム19に固定しているシャフト30は、ボンネット8に貫挿されており、その先端にはレバー32が設けられている。このレバー32はボンネット8に固定されているレバー取付台31に回動自在に設けられている。又、ボンネット8の上端には、シャフト30を介してステム19を固定するトリガー40が設けられている。
【0014】スプリングケース9には第2フラム室側のフラム受22を弁室11側、即ち、開弁側に押圧するスプリング42が設けられている。ステム19の下端にはマグネット台46が固定されており、このマグネット台46には、マグネット48が設けられている。このマグネット48は、ポンプを起動せしめる近接スイッチ47と所定間隔をおいて対向している。
【0015】流体出口15にはホース33を介して消火用ノズル35が接続されている。このノズル35は図6R>6、図7に示す様にプロテクタ206を有する外筒207と、流路208に設けたハンドル209付閉子(開閉弁)210及びニードル211とから構成されている。この開閉弁210は、ハンドル209を実線の位置にすると全開となり、209aの位置にすると半開し、209bの位置にすると全閉となる。前記ノズル35は、例えば、前傾扉2の裏面に形成されたノズルホルダ34に収納されている。
【0016】次に、この実施例の作動につき説明する。消火用液体の供給源1から自動調圧式主弁5の弁室11に消火用液体Aが供給されているが、ステム19がトリガー40によりロックされているので、第1弁体18aと第2弁体18bは着座し、閉弁状態となっている。そのため、フラム室12、13には消火用液体Aが供給されない。
【0017】閉弁状態のノズル35をホルダ34から外すと、ワイヤ50がA40方向に引かれ、トリガー40が図2の状態から図3の状態となる。そうすると、ステム19がスプリング42の付勢により軸方向に摺動して弁体18a、18bがシート(弁座)16から次第に離れて開弁する。この時、マグネット48も上方に次第に移動するので、近接スイッチ47がオフしてポンプ(図示しない)を起動し、給水を開始する。
【0018】そして、弁体18a、18bは図4の半開状態から図5の全開状態に変化するため、圧力水はフラム室12、13、ホース33を介して消火用ノズル35に到達するので、ハンドル209を回して閉子210を図6の状態から図7の状態にすると開弁し放水が開始される。この時ホース33内の給水圧が所定圧以上の状態になると、第1フラム室12より受圧面積の広い第2フラム室13が、圧力差により下方に移動し、弁体18a、18bをシート16に近接せしめ、図4に示す様に半開状態にする。そのため、弁室11からフラム室12、13に流出する消火用液体Aは調圧され、所定圧で液体出口15からホース33を介してノズル35に供給される。
【0019】又、逆に弁室11の2次側、即ち、フラム室12、13側の流体圧力が所定圧よりも小さくなると、受圧面積の異なる第1フラム室12と第2フラム室13とにおける圧力差が小さくなるとともに第2フラム室13はスプリング42により弁室11側に押し上げられているので、ステム19が上昇して弁体18a、18bがシート16から離れ、弁室11から流出する消火用液体Aは調圧され、所定圧で流体出口15からホース33、消火用ノズル35を介して放水される。
【0020】また、消火作業者が消火液の放出を停止したいときは、消火用ノズル35の開閉弁のハンドル209を操作して209bの操作位置にする。これによりフラム室12、13内の圧力は所定圧以上となり、その圧力差によりステム19は降下し弁体18a、18bはシート16に着座して自動調圧弁5は閉弁する。このとき、ホース33内等の二次側の圧力は所定圧より若干高い圧力となるが、それ以上の高圧とはならず、ホース33等に不必要な高い圧力が加わることが無い。
【0021】この状態で消火用ノズル35の開閉弁のハンドル209を開弁位置にすると、第1と第2のフラム室12、13内の給水圧は所定圧以下に低下するの、ステム19が上昇して弁体18a、18bはシート16から離れ、直ちに消火液の放出が再開される。
【0022】そして、消火作業が終了したら消火用ノズル35のハンドル209を閉弁位置にしてステム19を下降させ、弁体18a、18bをシート16に着座させて自動調圧式主弁5を閉弁するとともに、トリガー40をシャフト30に係止せしめてロックする。
【0023】この実施例における自動調圧式主弁では消火用ノズル35を消火位置に向けて該ノズルを開弁又は閉弁するだけで消火用液体Aがノズル35から確実に噴射あるいは停止するので操作上の面倒が無い。そのため、消火作業に不慣れなものでも確実に消火活動を行えるので、早期消火が可能となる。
【0024】なお、上記実施例では第1と第2のフラム20、21を設けて受圧面積の異なる2つのフラム室12、13を設けるようにしたが、フラム室や弁体を1つにしても良い。
【0025】この場合図1において、例えば、フラム19の上端側のフラム20を省略し、ステム19の上端側をボンネット8に水密に貫通させ、その上端にレバー32を接続してフラム室を第2フラム室13のみとする。
【0026】このように構成すると、第2フラム室13の圧力が所定圧以下になると、スプリング42の作用によりステム19が押し上げられて弁室11から流出する消火用液体Aは調圧され第2フラム室13の圧力が所定圧以上になるとステム19が押しげられて弁室11から流出する消火用液体Aは調圧される。
【0027】また、弁体18を1つにする場合は、例えば、第2弁体18bとこの第2弁体18bが着座する下方のシート16とを取り除き、ステム19を弁室11に水密に貫通させる。この場合、ステム19には、閉弁時に上記実施例とは異なり、第1弁体18aに作用する一次側の給水圧により上方へ働く力が作用するが、第2フラム室132の受圧面積を大きくするか、またはスプリング42の力を弱くする、あるいはスプリング42を省略する様にすれば良い。
【0028】
【発明の効果】この発明は以上のように構成したので、放水圧を所定圧に調整できると共に閉弁することも出来る。そのため、該主弁は、従来例の調圧弁の機能を兼備しているので、従来例と異なり調圧弁を省略した消火栓装置にすることが出来る。
【0029】消火用ノズルに開閉弁を設けたので、該弁を閉じてホース内に充水すると、自動的に自動調圧式主弁は閉弁する。そして、この状態においてノズルを消火位置まで移動し、開弁すると消火用液体が放水されるとともに、ホース内の圧力が下がって自動調圧式主弁が開弁する。このように、消火用ノズルの開閉により自動的に自動調圧弁が開閉するので、消火活動に不慣れな者でも確実に放水を行うことができるとともに消火用ノズルの開閉にて自動調圧式主弁を開閉できる消火栓装置とすることが出来る。
【0030】又、消火作業終了後は単に消火用ノズルを閉じると自動調圧式主弁が閉じるので、従来例のような主弁を必要とせず、又、その開閉操作も不要である。そのため、操作しやすい消火栓装置となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す縦断面がである。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図4のIII−III線断面図である。
【図4】図1の他の状態を示す縦断面図である。
【図5】図1の更に他の状態を示す縦断面図である。
【図6】消火用ノズルの実施例を示す一部縦断面図である。
【図7】図7の消火用ノズルの他の状態を示す一部縦断面図である。
【図8】消火栓装置の全体を示す概略図である。
【符号の説明】
1 消火用液体の供給源
5 自動調圧式主弁
11 弁室
12 第1フラム室
13 第2フラム室
18a 第1弁体
18b 第2弁体
19 ステム
20 第フラム
21 第2フラム
33 ホース
35 消火用ノズル
210 閉子

【特許請求の範囲】
【請求項1】放水圧を所定圧に調整する自動調圧式主弁を介して消火用液体の供給源と消火用ノズルとを接続し、前記消火用ノズルに開閉弁を設け、該ノズル開閉弁の閉弁により前記自動調圧式主弁を閉弁せしめることを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】消火用液体の供給源と連通する弁室に摺動自在なステムを貫通して設け、該ステムに閉弁時に前記弁室のシートに着座する弁体を設け、該ステムの少なくとも一端側にフラムを固定してフラム室を形成した自動調圧式主弁と、該自動調圧式主弁のフラム室に連通された消火用ノズルとを設け、前記消火用ノズルに開閉弁を設け、該ノズルの開閉弁の閉弁により前記自動調圧式主弁の弁体を着座せしめることを特徴とする消火栓装置。

【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【特許番号】特許第3081942号(P3081942)
【登録日】平成12年6月30日(2000.6.30)
【発行日】平成12年8月28日(2000.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−54036
【出願日】平成3年2月26日(1991.2.26)
【公開番号】特開平4−269977
【公開日】平成4年9月25日(1992.9.25)
【審査請求日】平成10年2月6日(1998.2.6)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【参考文献】
【文献】特開 平2−95384(JP,A)
【文献】特開 昭55−44408(JP,A)
【文献】実開 昭56−80162(JP,U)
【文献】実開 昭55−34892(JP,U)