説明

消火用ノズル

【課題】消火液が粘性を有するものであっても、消火液の放射距離を容易に延ばすようにすることができる消火用ノズルを提供する。
【解決手段】消火用ノズル1であって、先端に放射口2aを有する筒状のノズル本体2と、前記ノズル本体2の外側に設けられ、軸長方向に移動する外筒3と、前記外筒3の先端部に設けられ、中央に開口部4aを有するデフレクタ4とを備えたことを特徴とし、又、デフレクタ4の開口部4aは、ノズル本体2の放射口2aよりも大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、消火液の放射距離や放射パターン(放射角等)を変化させることのできる消火用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種消火設備において、消火液の放射距離や放射パターンを変化させることのできる消火用ノズルが用いられている。
【0003】
この種の消火用ノズルは、一般に、ノズル本体の開口部中央に位置して設けられたデフレクタと、ノズル本体の外側に軸長方向前後に移動可能に装着された外筒とを備えており、その外筒を前後に移動させることにより消火液の放射距離や放射パターンを変化させることができるようになっている(例えば、特許文献1の図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−118216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のような従来の消火用ノズルの場合、デフレクタがノズル本体の開口部中央に位置しているので、そのデフレクタへの衝突による圧力損失が消火液には生じるものとなっている。又、消火液はノズルの内壁とノズル中央のデフレクタに沿って放出されるため、圧力損失が大きくなっている。
【0006】
消火用ノズルから放射する消火液としては、各種のものがあるが、ゲル状の消火液のように高い粘度の粘性を有しているものがある。
【0007】
従来の消火用ノズルは、前記のように、ノズル本体の開口部中央に位置するデフレクタに衝突することによる圧力損失が生じるものとなっており、粘性を有する消火液を放射する場合、その粘性によりデフレクタに衝突することによる圧力損失が大きくなってしまい、特に消火液がゲル状のもののように粘度が高いものであると、圧力損失が大き過ぎて、放射距離を延ばすことが困難となってしまうことがある。
【0008】
この発明は、前記の事情に鑑み、消火液が粘性を有するものであっても、消火液の放射距離を容易に延ばすようにすることができる消火用ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、先端に放射口を有する筒状のノズル本体と、前記ノズル本体の外側に設けられ、軸長方向に移動する外筒と、前記外筒の先端部に設けられ、中央に開口部を有するデフレクタとを備えたことを特徴とする消火用ノズルである。
【0010】
又、この発明は、前記デフレクタの開口部は、前記ノズル本体の放射口よりも大きいことを特徴とする消火用ノズルである。
【0011】
又、この発明は、前記外筒が軸長方向後方に移動して縮長状態にあるときに、消火液は長い放射距離で放射され、前記外筒が軸長方向前方に移動して伸長状態にあるときに、消火液は短い放射距離で放射されることを特徴とする消火用ノズルである。
【0012】
又、この発明は、前記ノズル本体の基端部に設けられ、複数の流体を混合する混合器を更に備えたことを特徴とする消火用ノズルである。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、デフレクタが中央に開口部を有するものとなっており、消火液がデフレクタに衝突することによる圧力損失を小さくすることができるものとなっている。
【0014】
従って、この発明によれば、消火液が粘性を有するものであっても、消火液の放射距離を容易に延ばすようにすることができる消火用ノズルを提供することができる。
【0015】
又、この発明においては、デフレクタが中央に開口部を有し、その開口部がノズル本体の放射口よりも大きいものとなっていることで、外筒が伸長状態にあるときに、消火液を外筒の内側壁に衝突させるようにすると共に、デフレクタにも衝突させるようにすることができつつも、外筒が縮長状態にあるときに、消火液を外筒の内側壁に衝突させないようにすると共に、デフレクタにも衝突させないようにすることができる。
【0016】
従って、この発明においては、外筒を伸長状態にすることで、消火液を外筒の内側壁とデフレクタに衝突させて、短い放射距離で放射させるようにすることができつつも、外筒を縮長状態にすることで、消火液を外筒の内側壁にもデフレクタにも衝突させずに、長い放射距離で放射させるようにすること、即ち、外筒やデフレクタのない消火用ノズルと同程度の長い放射距離で放射させるようにすることができる。
【0017】
又、この発明においては、ノズル本体の基端部に混合器を備えていることで、混合器による混合後の消火液を直ちに消火用ノズルから放射させるようにすることができる。
【0018】
従って、この発明においては、ゲル状の消火液のような高い粘度を有する消火液を放射させる場合でも、消火液が途中で詰まるようなことなしに消火用ノズルから放射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の消火用ノズルを示し、(a)は外筒が伸長状態にあるときの断面図で、(b)は外筒が縮長状態にあるときの断面図で、(c)外筒先端のデフレクタ部分の正面図である。
【図2】同上を示し、(a)及び(b)何れも、他の例における外筒の先端のデフレクタ部分の正面図である。
【図3】同上を示し、(a)及び(b)何れも、ノズル本体基端部に混合器を備えた例における(a)は外筒が伸長状態にあるときの断面図で、(b)は外筒が縮長状態にあるときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施形態を図1乃至3に基づいて説明する。
【0021】
図1(a)乃至(c)は、この発明の消火用ノズルの実施形態の一例を示したものであるが、同図に示したように、消火用ノズル1は、先端に放射口2aを有する筒状のノズル本体2と、ノズル本体2が挿入され、ノズル本体2の外側にその外周面上を軸長方向前後に摺動可能に装着された外筒3と、外筒3の先端部に、ノズル本体2の放射口2aの前方に位置するように設けられ、中央に開口部4aを有するデフレクタ4とを備えている。尚、外筒3の内径に対し、デフレクタ4の開口部4aの内径は60%程度にするのが適当である。
【0022】
ここで、本実施形態において、ノズル本体2の放射口2aは、ノズル本体2の先端には内側壁を小径化した絞り部2bの中央に設けられたものとなっている。ノズル本体2の内径に対し、放射口2aの内径は70%程度にするのが適当である。そして、デフレクタ4は、円板状をなすものとなっているが、所望の放射パターンに応じて、他の形状のものとしてもよい。又、このデフレクタ4において、開口部4aはデフレクタ4がデフレクタ(散水板)として実質的に機能する際には消火液の放射口になるものであるが、その形状は図1に示した例では円形のものとなっている。この開口部4aの形状も、所望の放射パターンに応じて変更してもよいことは勿論であり、例えば、図2(a)及び(b)に示したような形状等種々の形状のものに変更してもよい。更に、このデフレクタ4は、外筒3の先端に着脱自在に設けられたものとなっており、具体的には、デフレクタ4は、外筒3の先端外側に螺着されて装着される筒状の装着部4bの先端に一体に設けられたものとなっている。これにより、デフレクタ4は、所望の放射パターンに応じ、容易に交換可能なものとなっている。尚、勿論、デフレクタ4は、外筒3に着脱自在にしなくてもよく、例えば、外筒3と一体に設けられるものとしてもよい。
【0023】
図1(a)は、外筒3が軸長方向前方に移動し、伸長状態にあるときを示したものである。ここで、伸長状態とは、放射口2aとデフレクタ4とが離れている状態をいう。この状態で消火用ノズル1から消火液を放射させる場合、ノズル本体2の基端側から供給される消火液は、絞り部2bで流水断面積が絞られて、先端の放射口2aから放射されると、矢印A1で示したように、外筒3の内側壁3aに衝突して流れが乱された上で、デフレクタ4の内壁に衝突して流れが乱されて、矢印A2で示したように、デフレクタ4の開口部4aから広角に短い放射距離で放射されることとなる。
【0024】
そして、図1(b)は、外筒3が軸長方向後方に移動し、縮長状態にあるときを示したものである。ここで、縮長状態とは、放射口2aとデフレクタ4とが接している状態をいう。デフレクタ4の開口部4aは、ノズル本体2の放射口2aよりも大きなものとなっているため、外筒3が縮長状態にあるときに、消火液がデフレクタ4に衝突しないようになっている。即ち、デフレクタ4がデフレクタとして実質的には機能しないようになっている。尚、デフレクタ4の開口部4aの径に対し、放射口2aの内径は80〜90%程度にするのが適当である。これにより、この状態で消火用ノズル1から消火液を放射させる場合、ノズル本体2の基端側から供給される消火液は、先端の放射口2aから放射されると、矢印A3で示したように、放射口2aから棒状に長い放射距離で放射されることとなる。
【0025】
尚、本実施の形態においては、外筒3をノズル本体2の外周面上を摺動可能なものとしたが、外筒3は軸長方向前後に移動することができるものであればよく、例えば、外筒3をノズル本体2の外側に螺着して設け、外筒3を回動させることによって軸長方向前後に移動可能なものとしてもよい。又、外筒3を最大まで伸長させたときにロックできる機構を設けてもよい。
【0026】
消火用ノズル1は、前記のように、デフレクタ4が中央に開口部4aを有するものとなっており、消火液がデフレクタ4に衝突することによる圧力損失を小さくすることのできるものとなっている。又、消火液は消火用ノズル1の内壁に沿って放出されるので、デフレクタ4が中央にあり、消火ノズル1の内壁とデフレクタ4に沿って消火液が放出される場合と比べて圧力損失が小さくなる。
【0027】
従って、消火用ノズル1は、消火液が粘性を有するものであったとしても、例えば、その消火液が粘度の高いゲル状のものであったとしても、消火液の放射距離を容易に延ばすようにすることができる。
【0028】
更に、消火用ノズル1は、前記のように、デフレクタ4が中央に開口部4aを有し、その開口部4aがノズル本体2先端の放射口2aよりも大きいものとなっているため、外筒3が伸長状態にあるときに、消火液を外筒3の内側壁3aに衝突させるようにすると共に、デフレクタ4にも衝突させるようにすることができる。一方、外筒3が縮長状態にあるときに、消火液を外筒3の内側壁3aに衝突させないようにすると共に、デフレクタ4にも衝突させないようにすることができるものとなっている。
【0029】
従って、消火用ノズル1は、外筒3を伸長状態にすることで、消火液を外筒3の内側壁3aとデフレクタ4に衝突させて、短い放射距離で放射させるようにすることができる。即ち、外筒3を伸長させることで、放射口2aからデフレクタ4の間の外筒3内に乱流室が形成され、短い放射距離で放射させることができる。一方、外筒3を縮長状態にすることで、消火液を外筒3の内側壁3aにもデフレクタ4にも衝突させずに、長い放射距離で放射させるようにすることができる。即ち、外筒3やデフレクタ4のない放射距離や放射パターンが一定の消火用ノズルと同程度の長い放射距離で放射させるようにすることができる。
【0030】
最後に、図3は、消火用ノズル1が混合器6を備えた例を示したものであり、ノズル本体2の基端部に螺着により直結された混合器6を備えたものとなっている。
【0031】
混合器6は、複数の流体、具体的には、消火薬剤原液と消火水とを混合し、その混合したものを消火液としてノズル本体2に供給することができるようになっている。この混合器6は、具体的には、消火水の供給ラインが接続され、消火水が供給される第1ポート6aと、消火薬剤の供給ラインが接続され、消火薬剤が供給される第2ポート6bと、ノズル本体2の基端部2dが接続され、混合した消火液を排出してノズル本体2に供給する第3ポート6cを備えており、更に、一次側の第1ポート6a及び第2ポート6bと二次側の第3ポート6cとの流通の開閉を切り換え可能にする手段として、ボール弁6dを備えている。ボール弁6dはT字状に形成された貫通口を有し、回動可能に収納されている。ボール弁6dを所定位置に回動させると、混合器6の第1ポート6a及び第3ポート6cと第2ポート6bとがボール弁6dのT字状の貫通口を介して連通状態になる。尚、6eは第3ポート6cの途中に設けられ、第3ポート6cを通る消火薬剤原液及び消火水に旋回流を生じさせ、両者を混合して消火液とするためのスパイラル部6eである。又、6fは、回動操作することによって、ボール弁6dを回動させ、一次側の第1ポート6a及び第2ポート6bと二次側の第3ポート6cとの流通の開閉を切り換え操作するための操作レバーである。
【0032】
この例の消火用ノズル1は、前記のように、ノズル本体2の基端に複数の流体を混合する混合器6を備えている。即ち、混合器6の第3ポート6cにホースや配管を介することなく、直接ノズル本体2の基端部2dを接続するので、混合器6による混合後の消火液を直ちに放射させるようにすることができるものとなっている。
【0033】
従って、この例の消火用ノズル1は、ゲル状の消火液のような高い粘度を有する消火液を放射させる場合であっても、消火液が途中で詰まるようなことなしに消火用ノズル1から放射させることができる。
【符号の説明】
【0034】
1:消火用ノズル 2:ノズル本体 2a:放射口 2b:絞り部
3:外筒 3a:内側壁 4:デフレクタ 4a:開口部 4b:装着部
6:混合器 6a:第1ポート 6b:第2ポート 6c:第3ポート
6d:ボール弁 6e:スパイラル部 6f:操作レバー
A1〜A3:矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に放射口を有する筒状のノズル本体と、前記ノズル本体の外側に設けられ、軸長方向に移動する外筒と、前記外筒の先端部に設けられ、中央に開口部を有するデフレクタとを備えたことを特徴とする消火用ノズル。
【請求項2】
前記デフレクタの開口部は、前記ノズル本体の放射口よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の消火用ノズル。
【請求項3】
前記外筒が軸長方向後方に移動して縮長状態にあるときに、消火液は長い放射距離で放射され、前記外筒が軸長方向前方に移動して伸長状態にあるときに、消火液は短い放射距離で放射されることを特徴とする請求項1又は2記載の消火用ノズル。
【請求項4】
前記ノズル本体の基端部に設けられ、複数の流体を混合する混合器を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか記載の消火用ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−70960(P2013−70960A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214525(P2011−214525)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】