説明

消煙装置

【課題】有機廃棄物の燃焼処理装置や磁粉体製造装置などから発生する排気ガス中の煙を効率良く除去することができる消煙装置を提供する。
【解決手段】消煙装置10は、水Wが収容された気密性を有する直方体形状の煙回収槽11と、煙回収槽11内の水面Wsより高い位置に開設された吸気経路12及び排気経路13と、煙回収槽11内の水面Ws上の空間14において吸気経路12から排気経路13に至る領域を横切る状態で煙回収槽11内の天井部15から水面Wsより高い位置まで垂下状に設けられた複数の隔壁16,17と、排気経路13に接続されたブロワー18と、を備えている。隔壁16,17の下縁には、それぞれ水面Wsと対向する平面部16a,17aが設けられている。排気経路13とブロワー18との間には流量調節バルブ25が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃棄物の燃焼処理装置や磁粉体製造装置などから発生する排気ガス中の煙を除去するための消煙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生ごみや産業廃棄物などの有機廃棄物の燃焼処理装置から発生する排気ガス中の煙を除去する技術については、従来、様々な提案が行われているが、本発明に関連するものとして、燃焼処理装置から発生する排気ガスを水中に通すことによって排気ガス中の煙を除去する技術がある(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−142649号公報
【特許文献2】特開2008−232607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載されている消煙技術は煙含有量が比較的少ない排気ガスに対する消煙手段としては有効であるが、大量の煙を含有する排気ガスに対する消煙効果は不十分である。特に、有機廃棄物の処理手段の一つとして使用される磁粉体製造装置(磁石による磁気を帯びた空気と有機廃棄物とを反応させて磁粉体を生成する装置)から発生する排気ガスは大量の煙を含有しているので、特許文献1,2記載の消煙技術では対処することができない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、有機廃棄物の燃焼処理装置や磁粉体製造装置などから発生する排気ガス中の煙を効率良く除去することができる消煙装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の消煙装置は、吸煙性若しくは溶煙性を有する液体が収容された気密性の煙回収槽と、前記煙回収槽内の液体面より高い位置に開設された吸気経路及び排気経路と、前記煙回収槽内の液体面上の空間において前記吸気経路から前記排気経路に至る領域を横切る状態で前記煙回収槽内の天井面から前記液体面より高い位置まで垂下状に設けられた隔壁と、前記排気経路に接続された気体吸引手段と、を備えたことを特徴とする。前記吸煙性とは煙を吸着する性質をいい、前記溶煙性とは煙を溶かし込む性質をいう。吸煙性若しくは溶煙性を有する液体としては水が好適であるが、これに限定しないので、吸煙性や溶煙性を有するものであれば、例えば、石炭や石油などを原料とする液体、化学合成された液体、動物や植物などの生物由来の液体などを使用することもできる。
【0007】
このような構成において、排気経路に接続された気体吸引手段を稼働させると、煙回収槽内の液体面上の空間に負圧が生じ、液体面が盛り上がるように膨らんで液体面の一部と隔壁の下縁部との空隙に液体膜が形成される。この状態で、吸気経路を経由して煙回収槽内の空間へ排気ガスを流入させれば、前記液体膜を通過することによって排気ガス中の煙が前記液体膜に吸着除去された後、排気経路から排出される。従って、有機廃棄物の燃焼処理装置や磁粉体製造装置などの排煙経路に吸気経路を連結した状態で気体吸引手段を稼働させれば、これらの排気ガス発生源から発生する排気ガス中の煙を効率良く除去することができる。
【0008】
ここで、前記隔壁を、前記吸気経路から前記排気経路に至る方向に向かって互いに距離を隔てて複数配置することが望ましい。このような構成とすれば、複数の隔壁の下縁と液体面との間にそれぞれ液体膜が形成され、排気ガスは複数の液体膜を通過することとなるので、煙除去機能が向上する。
【0009】
また、前記隔壁の下縁に前記液体面と対向する平面部若しくは曲面部を設けることが望ましい。このような構成とすれば、液体膜の上縁部分が、平面部や曲面部に沿って広がった状態となるため、安定した液体膜が形成され、煙除去機能の安定化に有効である。
【0010】
さらに、前記煙回収槽内の液体面の位置を前記煙回収槽の外部から確認するための液面検知手段を設けることが望ましい。このような構成とすれば、煙回収槽内の液体面の位置を液面検知手段で確認することにより、前記液体面を適切な位置に保ちながら、当該消煙装置を稼働させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、有機廃棄物の燃焼処理装置や磁粉体製造装置などから発生する排気ガス中の煙を効率良く除去することができる消煙装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態である消煙装置を示す正面図である。
【図2】図1に示す消煙装置の水平断面図である。
【図3】図1に示す消煙装置の垂直断面図である。
【図4】図1に示す消煙装置の内部構造を示す一部切欠斜視図である。
【図5】図2に示す消煙装置の消煙作用を示す部分断面図である。
【図6】図1に示す消煙装置の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜図4に示すように、本実施形態の消煙装置10は、吸煙性・溶煙性を有する液体である水Wが収容された気密性の煙回収槽11と、煙回収槽11内の水面Wsより高い位置に開設された吸気経路12及び排気経路13と、煙回収槽11内の水面Ws上の空間14において吸気経路12から排気経路13に至る領域を横切る状態で煙回収槽11内の天井部15から水面Wsより高い位置まで垂下状に設けられた複数の隔壁16,17と、排気経路13に接続された気体吸引手段であるブロワー18と、を備えている。排気経路13とブロワー18との間には流量調節バルブ25が設けられている。煙回収槽11は直方体形状をなし、正面部11aに監視窓21が設けられ、片方の側面部11bに吸気経路12が設けられ、他方の側面部11cに排気経路13が設けられている。
【0014】
煙回収槽11内の複数の隔壁16,17は、吸気口12から排気口13に至る方向に向かって互いに距離を隔てて配置されている。隔壁16,17は断面L字状の平板材で形成され、隔壁16,17の下縁にはそれぞれ水面Wsと対向する平面部16a,17aが設けられている。隔壁16,17は水面Wsと垂直をなすとともに、側面部11b,11cと平行をなすように配置されている。隔壁16,17の上縁部16t,17tはそれぞれ天井部15に固着されている。
【0015】
図2に示すように、回収槽11内において、隔壁17の前縁部17f、後縁部17rは回収槽11内の正面部11a、背面部11dにそれぞれ固着され、隔壁16の前縁部16fは内壁板20に固着され、後縁部16rは背面部11dに固着されている。図2,図4に示すように、内壁板20は断面L字状の平板材で形成され、一方の端縁部20sが正面部11aに固着され、他方の端縁部20tが側面部11bに固着され、下縁部20bは底面部11eから距離を隔てた位置にある。図示していないが、内壁板20の上縁部20aは天井部15に密着している。また、図3に示すように、煙回収槽11の底面部11eには開閉バルブ24a付きの排液経路24が複数設けられている。
【0016】
図4に示すように、煙回収槽11内において正面部11a、側面部11b及び内壁板20で囲まれた領域内に、煙回収槽11内の水面Wsの高さを確認するための液面検知手段19が配置され、煙回収槽11内と連通するドレインバルブ22が側面部11bに設けられている。液面検知手段19は、水面Wsに浮くフロート19aと、フロート19を昇降可能に保持する支柱19bと、フロート19aの高さ位置を表示する目盛り19cと、を備えている。図1に示すように、煙回収槽11の正面部11aに設けられた監視窓21を通し、水面Wsの昇降に伴って昇降するフロート19aの位置を視認することにより、煙回収槽11内の水面Wsの高さ位置を確認することができる。
【0017】
ここで、図3,図5に基づいて消煙装置10における消煙機構について説明する。図3に示すように、ブロワー18が停止しているときの消煙装置10においては、煙回収槽11内の水面Wsは水平状態にあり、隔壁16,17の平面部16a,17aと水面Wsとの間にはそれぞれ空隙V1,V2が存在している。
【0018】
排気ガスの発生源である、有機廃棄物の燃焼処理装置や磁粉体製造装置などの排煙経路23に消煙装置10の吸気経路12を接続した状態でブロワー18を稼働させると、煙回収槽11内の空間14が負圧となり、図5に示すように、水面Wsが盛り上がるように膨らみ、水面Wsの一部と隔壁16,17の平面部16a,17aとの空隙V1,V2に水膜16Wm,17Wmが形成されるとともに、吸気経路12を経由して排気ガスEGが煙回収槽11内の空間14へ流入する。
【0019】
空間14に流入した排気ガスEGは、ブロワー18の吸引作用により、空隙V1,V2を通過して排気経路13に向かって移動するが、その移動過程において空隙V1,V2に形成されている水膜16Wm,17Wmを突き破るようにして通過する。このとき、排気ガスEG中の煙が水膜16Wm,17Wmと接触し、水膜16Wm,17Wmに取り込まれる結果、排気ガスEG中の煙が除去される。また、空間14に流入した排気ガスEGが、空間14内に生じる負圧によって波立っている水面Wsと接触する際にも煙が水W内へ取り込まれる。
【0020】
このように、空間14に流入した排気ガスEGが、空隙V1,V2に形成されている水膜16Wm,17Wmを突き破るようにして通過することにより、排気ガスEG中の煙が効率的に除去されるため、排気経路13を経由してブロワー18の排気管18aから排出される処理ガスCGは煙を含まないクリーンな状態となる。
【0021】
消煙装置10においては、煙回収槽11内において、吸気経路12から排気経路13に至る方向に向かって互いに距離を隔てて複数の隔壁16,17を配置しているため、空間14に流入した排気ガスEGは、それぞれの隔壁16,17と水面Wsとの間に形成される複数の水膜16Wm,17Wmを通過する。従って、排気ガスEG中の煙を効率良く且つ確実に除去することができる。
【0022】
また、隔壁16,17の下縁にそれぞれ水面Wsと対向する平面部16a,17aを設けたことにより、図5に示すように、水膜16Wm,17Wmの上縁部が平面部16a,17aの下面に沿って広がって密着した状態となり、水膜16Wm,17Wmが途切れ難くなるため、安定した煙除去作用が得られる。なお、平面部16a,17aに限定するものではないので、隔壁16,17の下縁に断面J字状の曲面部を設けたり、隔壁16,17全体を傾斜させて配置したりすることもできる。また、隔壁の枚数も限定しないので、1枚若しくは3枚以上の隔壁を設けることもできる。
【0023】
さらに、図1,図4に示すように、煙回収槽11の正面部11aに設けられた監視窓21を通して液面検知手段19のフロート19aの位置を見ることにより、11煙回収槽の外部から煙回収槽11内の水面Wsの位置を確認することができる。従って、監視窓21から見た水面Wsの位置に応じて、給水部26から煙回収槽11内に給水したり、ドレインバルブ22を開いて煙回収槽11内の水Wを排出したりすることにより、水面Wsの位置を適切に保つことができる。
【0024】
次に、図6に基づいて、消煙装置10の使用例について説明する。図6に示す使用例においては、消煙装置10の吸気経路12に磁粉体製造装置50の排煙管51が接続されている。磁粉体製造装置50は、処理対象である有機廃棄物を収容する処理槽52と、有機廃棄物を処理槽52内に投入するための開閉扉56付きの投入口と、処理槽52内に空気を導入するため処理槽52の周壁下部に設けられた複数の空気導入管53と、導入管53を通して導入される空気を磁化させるため空気導入管53に連結された磁石収容部54と、空気導入量を調整するため空気導入管53に設けられたバルブ55と、処理槽52内で生成した磁粉体を排出するための開閉扉57付きの排出口と、を備えている。
【0025】
磁石収容部54には、空気導入管53と連通する空気流路54aと、空気流路54aを挟んで対向配置された磁石(図示せず)などが設けられている。空気導入管53を経由して処理槽52内に導入される空気は磁石収容部54の空気流路54aを通過することによって磁気を帯びた状態で処理槽52内へ流入するので、処理槽52内に収容された有機廃棄物が前記空気と反応して磁粉体が生成される。磁気を帯びた空気と有機廃棄物とが反応する過程中に処理槽52内で発生する煙混じりの排気ガスEGは、消煙装置10のブロワー18の吸引作用により、排煙管51から吸気経路12を経由して煙回収槽11内へ吸い込まれる。
【0026】
煙回収槽11内へ流入した磁粉体製造装置50の排気ガスEG中の煙は、前述した煙除去機構(図5参照)によって除去されるため、排気経路13を経由してブロワー18の排気管18aから排出される処理ガスCGは煙を含まないクリーンな状態となる。
【0027】
磁粉体製造装置50の処理槽52から排出される排気ガスEGは比較的大量の煙を含んでいるが、消煙装置10を用いて処理することにより、排気ガスEG中の煙を効率良く、かつ確実に除去することができる。なお、本発明の消煙装置を用いて消煙処理することができる排気ガスは、磁粉体製造装置52から発生する排気ガスCGに限定するものではないので、その他の磁粉体製造装置あるいは燃焼処理装置から発生する排気ガス中の煙も本発明の消煙装置によって効率良く除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の消煙装置は、有機廃棄物の燃焼処理装置や磁粉体製造装置などから発生する排気ガス中の煙除去手段として、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 消煙装置
11 煙回収槽
11a 正面部
11b,11c 側面部
11d 背面部
11e 底面部
12 吸気経路
13 排気経路
14 空間
15 天井部
16,17 隔壁
16a,17a 平面部
16f,17f 前縁部
16r,17r 後縁部
16t,17t 上縁部
16Wm,17Wm 水膜
18 ブロワー
18a 排気管
19 液面検知手段
19a フロート
19b 支柱
19c 目盛り
20 壁板
20s,20t 端縁部
21 監視窓
22 ドレインバルブ
23 排煙経路
24 排液経路
24a 開閉バルブ
25 流量調節バルブ
26 給水部
50 磁粉体製造装置
51 排煙管
52 処理槽
53 空気導入管
54 磁石収容部
54a 空気流路
55 バルブ
56,57 開閉扉
W 水
Ws 水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸煙性若しくは溶煙性を有する液体が収容された気密性の煙回収槽と、前記煙回収槽内の液体面より高い位置に開設された吸気経路及び排気経路と、前記煙回収槽内の液体面上の空間において前記吸気経路から前記排気経路に至る領域を横切る状態で前記煙回収槽内の天井部から前記液体面より高い位置まで垂下状に設けられた隔壁と、前記排気経路に接続された気体吸引手段と、を備えたことを特徴とする消煙装置。
【請求項2】
前記隔壁を、前記吸気経路から前記排気経路に至る方向に向かって互いに距離を隔てて複数配置した請求項1記載の消煙装置。
【請求項3】
前記隔壁の下縁に前記液体面と対向する平面部若しくは曲面部を設けた請求項1または2記載の消煙装置。
【請求項4】
前記煙回収槽内の液体面の位置を前記煙回収槽の外部から確認可能な液面検知手段を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の消煙装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−45458(P2012−45458A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188066(P2010−188066)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(509234755)株式会社フォーライフ (2)
【Fターム(参考)】