説明

消臭フィルター

【課題】種々の臭気成分、特にアルデヒド系ガスや低級脂肪酸等に対して効果的に安定した消臭性能を発揮する消臭フィルタを提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物が担持された固体より構成される消臭フィルター。


(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭フィルターに関し、詳しくは室内その他の空間において発生するタバコ臭等の生活臭に含まれる悪臭を消臭する機能を持つ消臭フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の生活環境の質の高度化に伴い、住環境についてもより質の高い快適さが求められている。この結果、最近の気密性の高い家屋では快適さを向上させている反面、臭いがこもりやすく、タバコ臭、体臭、ペット臭、トイレ臭、高齢者介護に伴う匂い、乳児の匂いを取り除きたいという要望が強まってきている。そのため、室温を調整するために加熱・冷却した空気を循環させる機能を持つエアコンや空気清浄機を中心に、運転時に循環する空気に対し消臭機能を付与したものが多くなっている。これらの多くは活性炭吸着による活性炭フィルターにより働くものである。
【0003】
しかしながら、活性炭のみのフィルターは、臭気分子を吸着することによって脱臭するが、吸着量に限界があるため、吸着量が飽和すると活性炭に吸着した臭気分子は平衡によって脱離して再放出されるという問題が生じる。また、タバコの臭気には、アンモニア、アセトアルデヒド、低級脂肪酸、硫化水素等が含まれており、これらの臭気分子の中でも、特に多く含まれるアセトアルデヒド等のアルデヒド系のガスに対しては、活性炭フイルターでは脱臭性能が低いという問題点があった。
【0004】
アルデヒド系のガスに対する消臭剤としては、ジエタノールアミン等のエタノールアミンを用いる技術がある(例えば特許文献1)。しかし、アミン類は一般に特有の臭を有し、空気清浄機用のフィルターとしての使用には適さない。
【0005】
【特許文献1】特開2001−97838公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、種々の臭気成分、特にアルデヒド系ガスや低級脂肪酸等に対して効果的に安定した消臭性能を発揮する消臭フィルターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のヒドロキシアミン化合物を担持させた固体より構成される消臭フィルターが、上記課題を解決する上で極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物を担持させた固体より構成される消臭フィルターを提供することにより上記課題を解決したものである。
【0009】
【化1】

(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、種々の臭気成分、特にアルデヒド系ガスや低級脂肪酸等に対して効果的に安定した消臭性能を発揮する消臭フィルターを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の消臭フィルターは、上記一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物が担持された固体より構成される。
上記一般式(1)において、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示す。
上記炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられる。
また、上記炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
1は、消臭性能及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。
【0012】
2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示す。
上記炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
上記炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、上記R1の説明で例示したものが挙げられる。
2は、消臭性能及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい。炭素数1〜5のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等が挙げられ、特にメチレン基が好ましい。
【0013】
本発明に係る上記一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物の具体例としては、例えば、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、4−アミノ−4−ヒドロキシプロピル−1,7−ヘプタンジオール、2−(N−エチル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−エチル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
これらの中では、消臭性能等の観点から、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオールから選ばれる1種以上が特に好ましい。
上記のヒドロキシアミン化合物は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
本発明の消臭フィルターを構成する固体には、さらに界面活性剤を含む消臭液を担持させることが好ましい。
上記消臭液は、本発明に係るヒドロキシアミン化合物を固体に担持させる前に、該ヒドロキシアミン化合物を均一に分散させるために調製される。
具体的には、水、溶剤、界面活性剤、多価アルコール類、pH調整剤等を溶解した消臭液が挙げられる。
界面活性剤や多価アルコール類は、水分保持効果が高く、本発明に係るヒドロキシアミン化合物の消臭効果を持続的に発現させることができる。
【0015】
上記界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン界面活性剤が挙げられる。
具体的には、非イオン界面活性剤としては、アルキルグリコシド、エチレン又はプロピレンオキサイド付加のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレングリセリド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
これらの中では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやアルキルアルカノールアミドが好ましい。
【0016】
陽イオン界面活性剤としては、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの中では、第4級アンモニウム塩が好ましい。
【0017】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキサイド等(アルキルアミド型を含む)のアミンオキサイド型、ラウリルアミノ脂肪酸ベタインなどのアルキルベタイン型、アルキルジメチルアミノ脂肪酸ベタイン型、ラウロイルアミドプロピルベタインなどのアミドベタイン型、2−アルキル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン型、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−ラウリン酸アミドエチル−β−アラニン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−ヤシ油脂肪酸アミドエチル−β−アラニンなどのアミドアミン型、アルキルジエチレントリアミノ酢酸塩型等が挙げられる。
これらの中では、アルキルジメチルアミンオキシドが好ましく、例えばラウリルアミドプロピルアミン−N,N−ジメチル−N−オキサイド、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0018】
陰イオン界面活性剤としては、エチレン又はプロピレンオキサイド付加のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸カリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム石鹸、脂肪酸カリウム石鹸等が挙げられる。
上記界面活性剤の中では、前記の非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤が特に好ましい。
用いられる界面活性剤の量の比率は、ヒドロキシアミン1gに対して、好ましくは0.05〜2g、更に好ましくは0.1〜1gである。
【0019】
上記多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらの中では、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。
用いられる多価アルコール類の量の比率は、ポリヒドロキシアミン1gに対して、好ましくは0.1〜2gである。
【0020】
上記pH調整剤としては、酸又は塩基を添加することにより調整することができる。
酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
消臭液を調製する上で、好ましくはpH6.0〜12である。 pH6以上で脂肪酸類、アルデヒドに対する消臭効果が高くなる。pH10以上にするとさらに硫化水素に対する消臭効果が高くなる。pH9.5以下でアミンに対する消臭効果が高まる。
種々の生活臭の全てに対する効果、及び皮膚刺激低減の観点から、より好ましくはpH7.0〜10である。
【0021】
<ヒドロキシアミン化合物を担持させる固体>
本発明に係るヒドロキシアミン化合物を担持させる固体の材質は、有機物、無機物のいずれであっても良い。
有機物の具体例として、木炭、竹炭、わら炭、活性炭、デキストリン、セルロース、発泡セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ゲル、カラギーナンゲル、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン樹脂などがあり、
無機物の具体例として、シリカ、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、ハイシリカゼオライト(疎水性ゼオライト)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化銅、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、セピオライト、水和酸化ジルコニウム、雲母等がある。
【0022】
さらに本発明に係るヒドロキシアミン化合物を担持する固体は比表面積の大きいものが好ましい。
上記固体の好ましい比表面積は、窒素吸着量から算出するBET法による値として、1〜2000m2/g、特に10〜2000m2/g、さらに50〜2000m2/gである。
好ましい担持する固体名及び比表面積(かっこ内、m2/g)は、無機物では、シリカ(50〜400)、シリカゲル(500〜700)、ケイ酸カルシウム(100〜150)、ゼオライト(400〜700)、ハイシリカゼオライト(300〜750)、酸化アルミニム(100〜300)、セピオライト(200〜400)、酸化亜鉛(1〜30)、酸化チタン(1〜30)である。
有機物では活性炭(700〜2000)、発泡セルロース(1〜40)である。
これらの中で特に好ましいのは、シリカ、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、酸化アルミニウム、セピオライト、活性炭、発泡セルロースである。
【0023】
本発明に係るヒドロキシアミン化合物を担持させる固体の形状は、粉体、顆粒状、破砕粒状、繊維状、シート状、網目状又はダンボール構造が挙げられる。
【0024】
担持する固体が粉体、顆粒状、破砕粒状であった場合の大きさは1μ〜30mm、好ましくは10μ〜10mm、さらに好ましくは30μ〜5mmである。
【0025】
担持する固体が繊維状であった場合、活性炭繊維や、活性炭繊維よりなるシートが好ましい。
【0026】
本発明に係るヒドロキシアミン化合物を担持する固体の含水率は、好ましくは0.1〜40重量%であり、より好ましくは8〜15重量%である。粉体の含水率は、JIS K7120〜7122に準じて容易に測定できる。
【0027】
ヒドロキシアミン化合物の固体に対する担持量は、固体1g当たり、ヒドロキシアミン化合物を、好ましくは0.01〜3gであり、より好ましくは0.1〜2gである。担持量が少な過ぎると、アルデヒドガスなどの悪臭の吸収能が低く、担持量が多過ぎると、アルデヒドガスへの効果のみが高くなり、他の悪臭への効果が相対的に低下する。
【0028】
<ヒドロキシアミン化合物を固体に担持させる方法>
ヒドロキシアミン化合物を担持させる方法は、特に限定されないが、ヒドロキシアミン化合物を、水やエタノールに溶解や分散させて、担持させる固体と液状で混合し、加熱乾燥すれば容易に均一に担持できる。加熱温度は、例えば50℃〜120℃で乾燥すれば、短時間で乾燥を終えることができる。
【0029】
本発明に係るヒドロキシアミン化合物は、アルデヒドや低級脂肪酸、硫化水素等のガスに対して有効であり、特にアルデヒド系ガスに対して有効である。すなわち、アセトアルデヒドを含むタバコ臭、ノネナール、ノナナールを含む体臭や加齢臭、デカジエナールなどを含む加熱調理油のニオイなどに有効である。対象とするガスによって、その他の消臭剤と併用することも可能である
【0030】
その他の消臭剤の例としては、
酸化鉄、硫酸鉄、塩化鉄、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酸化銀、酸化銅等の金属化合物、
乳酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、エチレンジアミンポリ酢酸、アルカン・アルケン−1,2−ジカルボン酸、シクロアルカン・アルケン−1,2−ジカルボン酸、ナフタレンスルホン酸等のカルボン酸類
ウンデシレン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール亜鉛などの脂肪酸金属類、カテキン、ポリフェノール、緑茶抽出物、マッシュルームエキス、木酢液、竹酢液等の植物抽出物系の消臭剤、
鉄、銅などの金属クロロフィリンナトリウム、鉄、銅、コバルトなどの金属フタロシアニン、鉄、銅、コバルト等のテトラスルホン酸フタロシアニン等、二酸化チタン、可視光応答型ニ酸化チタン(窒素ドープ型など)の触媒型消臭剤、
α、β、γ―シクロデキストリン、そのメチル誘導体、ヒドロキシプロピル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体等のシクロデキストリン類、
ミリスチン酸エステル類、パルミチン酸エステル類、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、セバシン酸エステル類、クエン酸エステル類等の悪臭の保留効果があるとされるエステル油剤、
アクリル酸ポリマー、マレイン酸ポリマー、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、芳香族スルフォン酸ホルマリン縮合物等のポリマー、
多孔メタクリル酸ポリマー、多孔アクリル酸ポリマー等のアクリル酸系ポリマー、多孔ジビニルベンゼンポリマー、多孔スチレン−ジビニルベンゼンービニルピリジンポリマー、多孔ジビニルベンゼンービニルピリジンポリマー等の芳香族系ポリマー、それらの共重合体等の合成の多孔質ポリマー、
キチン、キトサン等の天然の多孔質ポリマー、
シリカ、二酸化ケイ素(シリカゲル)、ケイ酸カルシウム、ハイシリカゼオライト(疎水性ゼオライト)、セピオライト、カンクリナイト、ゼオライト、水和酸化ジルコニウム等の無機多孔質物質、
銀担持ゼオライト、銀担持カンクリナイト、銀担持多孔スチレン−ジビニルベンゼンービニルピリジンポリマー等金属担持多孔質、
これらその他の消臭剤は、単独で用いても良く、さらに組み合わせて使うこともできる。
【0031】
他の機能性の剤、例えば抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤、昆虫忌避剤、香料等も各種用途に応じて組み合わせて使うことができる。
【0032】
本発明の消臭フィルターの代表的な構成としては、本発明に係るヒドロキシアミン化合物をフィルターである繊維に直接担持したもの、及び本発明に係るヒドロキシアミン化合物を担持した固体をフィルターである繊維に固定化したもの等が挙げられる。
【0033】
消臭フィルターに使用される繊維の材質は、合成樹脂繊維、無機繊維、不織布、天然パルプ、紙、和紙等、あるいはこれらの複合物が挙げられる。
【0034】
合成樹脂繊維としては具体的には、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリスチレン繊維等が挙げられる。
無機繊維としては具体的には、アルミナ繊維、活性炭繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ジルコニア繊維、アルミナ・シリカ繊維等が挙げられる。
不織布としては具体的には、スパンボンド法、メルトブロー法、遠心力法、フラッシュ紡糸法、高電圧乾式紡糸法、フィルム法等の直接製布法、エアレイ法、カード法、ガーネット機(反毛機)法等の乾式法、抄紙と同様の湿式法により製造される不織布が挙げられ、繊維間の結合方法としては接着剤法、熱融着法、超音波接着法、ニードルパンチ法、スパンレース法、ステッチボンド法等が挙げられる。
天然パルプとしては具体的には、木材パルプ、靭皮繊維、葦パルプ、バガスパルプ、ワラパルプ、竹パルプ等が挙げられる。
紙としては具体的には、複雑紙、薄葉紙(例えば、ティシュペーパー、トイレットペーパー、ナプキン、タオル紙及び生理紙)、包装紙、塗工紙(例えば、アート紙、コート)、非塗工紙、印刷紙、図面紙、ラミネート紙等があり、板紙としては、ダンボール構造紙、ハニカム構造紙、白板紙、黄板紙、チップボール紙、コルゲート紙、紙幣原紙及び台紙等が挙げられる。
繊維以外にも、樹脂、金属、活性炭等のフィルム、シート等の成形品を使用することも可能である。
【0035】
本発明のヒドロキシアミン化合物を担持した固体より構成される消臭フィルターを作成する方法は、1.ヒドロキシアミン化合物をフィルターの繊維等に直接担持する方法、2.フィルターに担持用の固体を固定化した後に、ヒドロキシアミン化合物を固体に担持する方法、3.ヒドロキシアミン化合物を担持用の固体に担持した後に、固体をフィルターに固定化する方法が挙げられる。これらの方法について以下に具体的に説明する。
【0036】
<1.ヒドロキシアミン化合物をフィルターの繊維等に直接担持する方法>
ヒドロキシアミン化合物をフィルターに直接担持する方法として、例えば、後加工で担持させる場合には、ヒドロキシアミン化合物を含有した消臭液を、塗布、吹き付け、含浸等の方法でフィルターを構成する活性炭繊維などの多孔質繊維表面に付着させ、水や溶媒を除去することによりフィルター表面に担持することができる。
【0037】
<2.フィルターに担持用の固体を固定化した後に、ヒドロキシアミン化合物を固体に担持する方法>
抄紙法などにおいて予めヒドロキシアミン化合物を担持可能な固体を固定化した後に、最終乾燥工程の直前に、ヒドロキシアミン化合物を含んだ消臭液を、塗布、吹き付け、含浸して乾燥させる。
【0038】
抄紙工程自体は公知の方法に従って行えばよく、例えば、所定の割合で担持用の固体、パルプ及びバインダーを含むスラリーに、カチオン性及びアニオン性の凝集剤をそれぞれ全スラリー重量の5重量%以下添加して凝集体を生成する。次いで、この凝集体を公知の方法によって抄紙を行うと共に、これを温度100〜190℃で乾燥させることにより、担持用の固体が固定化された紙を得ることができる。
【0039】
好ましいカチオン性の無機凝集剤として、硫酸アルミニウム、水酸化亜鉛等があり、好ましいカチオン性有機凝集剤として、カチオン性デンプン、ポリアクリルアミド−カチオン性モノマー共重合体、ポリビニルベンジルトリメチル、アンモニウムクロライド、ポリビニルピリジン塩、縮合型高分子凝集剤としての陽性ポリアミド、水溶性尿素樹脂、ポリチオ尿素塩、陽性ポリ尿素、ポリアミノトリアゾール、アミン−エピクロルヒドリン重縮合物塩、アンモニアエピクロルヒドリン重縮合部塩等があり、好ましいアニオン性有機凝集剤として、重合型高分子のカルボキシル−メチル−スターチ(CMS)、カルボキシル−メチル−セルロース(CMC)、ポリアクリルアミド−カチオン性モノマー共重合体、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、マレイン酸共重合体等がある。尚、上記以外の凝集剤としてポリアクリルアミド系等のノニオン系或いは両性凝集剤も使用することができる。
【0040】
上記バインダーとしては以下のものがある。すなわち、天然樹脂、天然樹脂誘導体、フェノール樹脂、キシレン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ケトン樹脂、クマロン・インデン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル共重合樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、塩素化ポリプロピレン、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン及びセルロース誘導体等である。尚、アルミナ繊維等の無機繊維を用いる場合、紙100重量部あたり5重量部以内のNBRラテックスあるいはSBRラテックス等の結合剤を併用することが好ましい。
次に、この紙をヒドロキシアミン化合物を溶解した水溶液に所定時間浸漬させたり、該水溶液を紙にスプレーして含浸させる等の方法で固体に担持させ、次いで乾燥させることで本発明のフィルターが得られる。担持させるヒドロキシアミン化合物の量は、水溶液の濃度、浸漬時間、スプレー量等で調整可能である。
【0041】
<3.ヒドロキシアミン化合物を担持用の固体に担持した後に、フィルターに固定化する方法>
前記<ヒドロキシアミン化合物を担持させる固体>及び前記<ヒドロキシアミン化合物を固体に担持させる方法>にて記載したヒドロキシアミン化合物が担持された固体を、フィルターを構成する不織布などの表面に、散布、充填した後、不織布などでサンドイッチ状に挟み込んで固定化する。また、その際に、固定化を確実にするためにバインダー溶液を散布することができる。多くの層で積層することによってフィルター中のヒドロキシアミン化合物の増やすことができる。
【0042】
本発明の消臭フィルター中におけるヒドロキシアミン化合物の担持量は、好ましくは1g〜2000g/m2、更に好ましくは、10〜1000g/m2である。
【0043】
本発明の消臭フィルターの形態は、パイプ、ハニカム、箱、巻き物、袋および折り紙で作られる各種形態等がある。
【0044】
本発明の消臭フィルターは、空気清浄機やエアコンに搭載する際には、粒子除去を目的とするHEPAフィルターのなどのフィルターや、抗菌、抗ウィルスを目的とカテキンフィルターなどのフィルターと一体化することもできる。
【0045】
本発明の消臭剤の用途として、タバコ臭、体臭、調理油臭、排泄物臭などの生活悪臭の消臭効果が望まれる分野で利用可能であり、
電力を使うものとして家庭用、施設用、自動車用の空気清浄機、エアコンディショナー、電池式の据え置き消臭剤、コンセントイン方式の消臭機など、
電力を使わないものとして家庭用、施設用の換気口取り付けタイプの消臭フィルター、据え置き型の消臭剤などに有用である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等により制限されるものではない。
【0047】
<抄紙タイプフィルター>
(実施例1)
<原料組成物配合>
ガラス繊維 6.0g
微粉活性炭(粒径45μm、比表面積:1000m2/g) 4.8g
ポリビニアルコール(PVA)繊維 1.2g
上記配合の原料組成物を1リットルの水に分散し、原料組成物100重量部に対し、凝集剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム2.0重量部、及びポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂0.8重量部を添加し、原料スラリーを得た。
そして、JIS P8209に準じてシートマシン及び80mesh抄紙ネットを用いて抄紙を行い、回転型乾燥機を用いて、含水率が1質量%以下となるように乾燥を行った。得られたシートの坪量はおおよそ170g/m2前後であった。その後、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン3.5%溶液(pH10.5)を含浸させ、回転型乾燥機を用いて乾燥を行い、抄紙タイプの消臭フィルターを試作した。この際の、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン添着量は添着前フィルターの20%であった。尚、作成した抄紙タイプの消臭フィルタの概略構成を図1に示す。
【0048】
(比較例1)
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン溶液を含浸させないこと以外は、実施例1と同様の方法にてガラス繊維、微粉活性炭(45μm)、PVA繊維を用いて抄紙タイプの消臭フィルターを作成した。
【0049】
<消臭試験方法>
2つのプラスティック製50mL注射筒(長さ11cm×3cm、開口部の直径3cm)を用いて実施例1、比較例1の消臭フィルタ(6×4cm)を挟み込み固定した。注射筒の先端をシリコンチューブを介してパーミエーター(悪臭ガス発生装置;ガステック製)に接続し、悪臭ガスを0.2L/分の速度で流入後、ガスの入り口濃度とフィルター通過後の濃度を経時的に測定した。ガス濃度は、ガス検知管(ガステック製)を用いて測定し、入り口濃度との差分より消臭率(%)を求めた。ガスの入り口濃度はそれぞれアセトアルデヒド30ppm、酢酸40ppmであった。試験結果を下記表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
<不織布タイプフィルター>
(実施例2)
<消臭液A配合>
2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス) 15質量%
30%ラウリルアミドプロピルアミン−N,N−ジメチル−N−オキサイド 15質量%
pH調整剤(塩酸) 適量
イオン交換水 バランス
合計 100質量%
微粉活性炭(粒径45μm、比表面積:1000m2/g):消臭液A=1:6の割合で、消臭液A(pH9.5に調整)を微粉活性炭に含浸させ、120℃で2時間乾燥させることでトリス含有の消臭粉体を作成した。
上記トリス含有の消臭粉体をニードルパンチ不織布(PET繊維、PP/PE繊維混綿、65g/m2)上に280g/m2相当積層し、一枚の消臭粉体を保持したシートを得る。このシートを6枚積層した後、メルトブローン不織布(PP樹脂製、10g/m2)にて包み込み、更にニードルパンチ不織布(PET繊維、PP/PE繊維混綿、65g/m2)にて包み込んだ後、積層した消臭粉体の外周部をヒートシールすることで一体化した不織布タイプの消臭フィルターを作成した。尚、作成した不織布タイプの消臭フィルターの概略構成を図2に示す。
【0052】
(比較例2)
実施例2の消臭粉体を全て等量の微粉活性炭(45μm)で置き換えた他は、同様の方法にて不織布タイプの消臭フィルターを作成した。
【0053】
<消臭試験方法>
抄紙タイプフィルターの消臭試験方法と同様の方法で、さらに硫化水素(入り口濃度20ppm)に対する効果も加えて、実施例2、比較例2の消臭フィルターについて試験を行なった。試験結果を下記表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
<ダンボール構造タイプフィルター>
(実施例3〜5、比較例3及び4)
<実施例及び比較例で使用する粉体もしくは顆粒状の固体>
実施例3の粉体:2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール15%水溶液:ケイ酸カルシウム(サイズ:1mm、比表面積:130m2/g)=2:1の割合で、該水溶液をケイ酸カルシウムに含浸させ、120℃で2時間乾燥させた粉体。
実施例4の粉体:2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール15%水溶液:ケイ酸カルシウム(サイズ:1mm、比表面積:130m2/g)=2:1の割合で、該水溶液をケイ酸カルシウムに含浸させ、120℃で2時間乾燥させた粉体。
実施例5の粉体:2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール15%水溶液:ケイ酸カルシウム(サイズ:1mm、比表面積:130m2/g)=2:1の割合で、該水溶液をケイ酸カルシウムに含浸させ、120℃で2時間乾燥させた粉体。
比較例3の粉体:ジエタノールアミン15%水溶液:ケイ酸カルシウム(サイズ1mm:比表面積130m2/g)=2:1の割合で、該水溶液をケイ酸カルシウムに含浸させ、120℃で2時間乾燥させた粉体。
比較例4の固体:顆粒活性炭(3×5mm:比表面積1300m2/g)のみを120℃で2時間乾燥させたもの。
上記方法により作成した粉体もしくは顆粒状の固体を、1cmにスライスしたダンボール加工紙の中に充填した(各0.8g)。脱落防止のためポリオレフィン製の不織布をスライス面に接着させ、ダンボール構造タイプのフィルターを作成した。尚、作成したダンボール構造タイプの消臭フィルターの模式図を図3に示す。
【0056】
<消臭試験方法>
ポリエステル製の3Lニオイ袋の中に、実施例3〜5、比較例3及び4で作成した消臭フィルター0.8g分とアセトアルデヒドガスを注入し(袋内で50ppmになる)、60分放置する。ガス濃度をアセトアルデヒド用検知管にて測定し、ブランクとの差分から消臭率を求める。試験結果を下記表3に示す。
【0057】
【表3】

【0058】
本発明の消臭フィルターは、表1〜3の結果から明らかなように、比較品であるトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンが担持されていない消臭フィルターに比べて、抄紙タイプ、不織布タイプ及びダンボール構造タイプの何れの形状においても、アセトアルデヒドの消臭性能に優れ、また経時的にも安定的な消臭性能を発揮することが確認された。
【0059】
(実施例6)
微粉シリカ(粒径100μm、比表面積200m2/g):実施例2の消臭液A=1:6の割合で、該水溶液を微粉シリカに含浸させ、120℃で2時間乾燥させた粉体を、1cmにスライスしたダンボール加工紙の中に充填した(各0.2g)。脱落防止のためポリオレフィン製の不織布をスライス面に接着させ、ダンボール構造タイプのフィルターを作成した。
【0060】
<他のアルデヒド系悪臭に対する消臭試験>
他のアルデヒド系悪臭成分として、ノナナール(体臭)、ノネナール(加齢臭)、2,4−デカジエナール(加熱油臭)2μLをヘッドスペースガスクロマトグラフ(HS-GC)用20mLバイアル瓶に入れる。さらに、本発明の消臭フィルターを0.2gを添加し密栓した後、HS-GCを行った。なお、消臭剤なしで悪臭のみのサンプルをブランクとした。
試験結果を下記表4に示す。
【0061】
<HS-GC分析条件>
HS-オートサンプラー;PERKIN ELMER製 HS40XL
バイアル保温時間;35℃30分保温後、加圧2分、注入0.3分
GC;HEWLETT PACKARD5890
カラム液相;(5%フェニル)メチルポリシロキサン 無極性
カラム長さ;30m、内径;0.32mm、膜厚;0.25μm
昇温条件;40℃(8℃/分)-60℃(4℃/分)-200℃
消臭率(%)は下記〔数1〕により求めた。
【0062】
【数1】

【0063】
【表4】

【0064】
本発明の消臭フィルターは、表4の結果から明らかなように、他のアセトアルデヒド系ガスにおいても優れた消臭性能を発揮することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例で作成した抄紙タイプの消臭フィルターの概略構成を示す図である。
【図2】別の実施例で作成した不織布タイプの消臭フィルターの概略構成を示す図である。
【図3】別の実施例で作成したダンボール構造タイプの消臭フィルターの模式図である。
【符号の説明】
【0066】
1 ガラス繊維
2 ヒドロキシアミン化合物が担持された活性炭
3 Needle Punch製法による不織布(ポリオレフィン系+PET繊維)
4 Melt Blown製法による不織布(ポリオレフィン系繊維)
5 ヒドロキシアミン化合物が担持された活性炭
6 ヒドロキシアミン化合物が担持されたケイ酸カルシウム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物が担持された固体より構成される消臭フィルター。
【化1】

(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。)
【請求項2】
上記固体にさらに界面活性剤が担持された請求項1記載の消臭フィルター。
【請求項3】
上記固体のBET法による比表面積が1〜2000m2/gである請求項1又は2記載の消臭フィルター。
【請求項4】
上記一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物が2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)である請求項1〜3の何れかに記載の消臭フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−86436(P2008−86436A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268681(P2006−268681)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】