説明

消臭剤、消臭スプレー剤、消臭性物品、消臭キットおよび消臭剤の製造方法

【課題】酸化チタンおよび銀の使用量が僅かであっても消臭効果を発揮することができる消臭剤およびその関連技術を提供する。
【解決手段】酸化チタンおよび銀クロロ錯体を含んでいる組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭剤に関するものであり、特に、金属化合物を用いた消臭剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不快なにおいに対処するための技術として、芳香剤、消臭剤、脱臭剤、および防臭剤がある(非特許文献1参照)。芳香剤は、空間に芳香を付与するものであり、芳香によって悪臭をマスキングする。消臭剤は、においを分解等の化学的作用によって除去または緩和するものである。脱臭剤は、においを物理的作用等で除去または緩和するものであり、例えば、活性炭、ゼオライト等が用いられている。防臭剤は、においの素に他の物質を添加してにおいの発生や発散を防ぐものであり、例えば、抗菌剤等が用いられている。
【0003】
ただし、芳香剤は不快なにおいを除去するものではない。また、脱臭剤はにおいの再放出が起こる可能性がある。防臭剤は外部から流入するにおいに対処することができない。そのため、目的によっては消臭剤が特に好ましく用いられる。
【0004】
これまで、有機酸、ポリフェノール等を用いた消臭剤が知られている。また、近年、その残効性の高さから、金属化合物を用いた消臭剤が注目されている。例えば、特許文献1には、酸化チタン微粒子および銀塩を含み消臭機能を有する建材用塗料が開示されている。酸化チタンは光触媒能を有し、ヒドロキシラジカルおよび一重項酸素という活性酸素を生成する。これらの活性酸素は強力な酸化剤として働いてにおい成分を分解する。銀もまた、スーパーオキシドアニオンラジカルという活性酸素を生成することが知られており、従来から抗菌剤として利用されている。
【特許文献1】特開平11−315223号公報(平成11年11月16日公開)
【非特許文献1】芳香消臭脱臭剤協議会「一般消費者用 芳香・消臭・脱臭剤の自主基準(平成16年改訂版)」(平成16年11月11日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の消臭剤では、消臭効果を発揮するためにある程度以上の酸化チタンおよび銀を使用する必要がある。酸化チタンおよび銀はともに高価であるため、酸化チタンおよび銀の使用量が僅かであっても、十分な消臭効果を発揮することができる消臭剤が強く求められている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、酸化チタンおよび銀の使用量が僅かであっても十分な消臭効果を発揮することができる消臭剤およびその関連技術を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、驚くべきことに、酸化チタンと銀クロロ錯体との混合物は、酸化チタンおよび銀の使用量が僅かであっても十分な消臭効果を発揮することを見出し、発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明に係る消臭剤は、酸化チタンおよび銀クロロ錯体を含んでいることを特徴としている。
【0009】
上記消臭剤では、上記酸化チタンが酸化チタン微粒子であることが好ましい。上記酸化チタン微粒子の平均粒径は1nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0010】
上記消臭剤ではまた、上記酸化チタンの含有量に対する銀の含有量の質量比が0.05倍以上0.75倍以下であることが好ましい。
【0011】
上記消臭剤は、塩化物をさらに含んでいることが好ましい。上記塩化物は、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、脂肪族4級アンモニウム塩、1級アミン塩酸塩、3級アミン塩酸塩、芳香族アミン塩酸塩、芳香族4級アンモニウム塩からなる群より選ばれる1つ以上の塩化物であることが好ましい。また、上記塩化物の含有量は0.1モル/l以上1モル/l以下であることが好ましい。さらに、上記消臭剤は、上記塩化物が溶解する溶媒をさらに含んでいてもよい。
【0012】
上記消臭剤はまた、エタノールをさらに含んでいることが好ましい。
【0013】
本発明に係る消臭スプレー剤は、上記消臭剤からなることを特徴としている。
【0014】
本発明に係る消臭性物品は、上記消臭剤が塗布されていることを特徴としている。
【0015】
本発明に係る消臭キットは、酸化チタンおよび銀クロロ錯体を備えていることを特徴としている。
【0016】
本発明に係る消臭剤の製造方法は、酸化チタンおよび銀クロロ錯体を混合する工程を包含することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る消臭剤、消臭性物品、および消臭キットは、含有する酸化チタンおよび銀の量が僅かであっても十分な消臭効果を発揮する。
【0018】
また、本発明に係る消臭剤の製造方法によれば、含有する酸化チタンおよび銀の量が僅かであっても十分な消臭効果を発揮することができる消臭剤を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(消臭剤)
本発明は、消臭剤を提供する。本明細書において、用語「消臭剤」は、化学的作用によってにおいを除去または緩和する組成物を指す。用語「組成物」は、各種成分が一物質中に含有されている形態であることを指す。
【0020】
本発明に係る消臭剤は液体または固体であってもよく、種々の形態および用途で用いることができる。すなわち、本発明に係る消臭剤は、例えば、液状、ゲル状、顆粒状または固形の置き型または吊り下げ型消臭剤、スプレー剤として用いることができるほか、消臭性を有するコーティング剤、添加剤、樹脂フィルム、樹脂成型品、繊維等としても用いることができる。
【0021】
本発明に係る消臭剤が除去または緩和するにおいは特に限定されず、例えば、糞尿臭、タバコ臭、溶剤臭、体臭、汗臭、足臭、加齢臭、ペット臭、腐敗臭、調理臭等の悪臭であってもよく、香水、お香等からの芳香であってもよい。本発明に係る消臭剤の消臭対象は特に限定されず、例えば、自動車用、冷蔵庫用、室内用、トイレ用、台所用、ゴミ箱用、玄関用、下駄箱用、タバコ臭用、ペット臭用等の消臭剤として用いることができる。
【0022】
本発明に係る消臭剤は、酸化チタンおよび銀クロロ錯体を含んでいる。本発明者らの独自の知見によれば、酸化チタンおよび銀クロロ錯体を組み合わせて用いることにより、酸化チタンおよび銀を単に混合したものよりもはるかに強力な消臭効果を得ることができる。それゆえ、本発明に係る消臭剤は、酸化チタンおよび銀の含有量が僅かな量であったとしても、十分な消臭効果を奏する。
【0023】
酸化チタンとしては、例えば、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型、または非晶質のものを用いることができるが、特に、光触媒活性の高さからアナターゼ型、ルチル型、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。
【0024】
また、酸化チタンとしては、酸化チタン微粒子を用いることが好ましい。上記酸化チタン微粒子の平均粒径は、特に限定されないが、1nm以上100nm以下であることが好ましく、3nm以上50nm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは5nm以上20nm以下の範囲である。このような酸化チタン微粒子は、分散媒中において容易にコロイドを形成する。
【0025】
また、上記酸化チタン微粒子の形状は、特に限定されず、球状、繊維状、板状、多面体状等、様々な形状のものを用いることができる。
【0026】
さらに、上記酸化チタンは、例えば、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化銀、酸化亜鉛等の無機酸化物を付着させたものであってもよい。特に、酸化ジルコニウムを付着させたものは、酸化ジルコニウムに活性酸素を生成する働きがあるため、上記消臭剤の消臭効果を向上させることができる。
【0027】
このような酸化チタン微粒子の製造方法は特に限定されず、例えば、酸化チタンの加水分解等の周知慣用の方法を用いてもよく、市販されている酸化チタン微粒子を購入してもよい。なお、酸化チタン微粒子を製造する場合には、限外ろ過膜等を用いることにより、平均粒径を目的の値に調整することができる。
【0028】
上記消臭剤中における酸化チタンの含有量は、特に限定されないが、0.001質量%以上0.2質量%以下であることが好ましく、0.002質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましく、最も好ましくは0.004質量%以上0.01質量%以下の範囲である。酸化チタンの含有量が0.001質量%以上0.2質量%以下であれば、コストを抑えつつも大きな消臭効果を得ることができる。
【0029】
本明細書において、「銀クロロ錯体」とは、銀クロロ錯イオンである[AgCl、[AgCl2−、[AgCl3−、またはこれらの塩を指す。
【0030】
銀クロロ錯イオンとともに銀クロロ錯塩を形成する陽イオンは特に限られず、本発明に係る消臭剤の用途、製造方法等に応じて適宜選択することができる。
【0031】
本発明に係る消臭剤における酸化チタンの含有量に対する銀の含有量の質量比は0.05倍以上0.75倍以下の範囲であることが好ましい。酸化チタンの含有量に対する銀の含有量の質量比が上記範囲内であれば、コストを抑えつつも大きな消臭効果を得ることができる。
【0032】
また、例えば特開平10−182326号公報(平成10年7月7日公開、以下「特許文献2」という)には、塩化物の存在下において銀クロロ錯体はより安定化することが記載されている。したがって、本発明に係る消臭剤は、塩化物をさらに含んでいることが好ましい。
【0033】
上記塩化物としては、特に限定するものではないが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオンを対イオンとして含む塩化物(アルカリ金属の塩化物);マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオンを対イオンとして含む塩化物;炭素数12〜18の長鎖アルキル基を1つまたは2つ有する脂肪族4級アンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド等の脂肪族4級アンモニウム塩類;エチレンジアミン塩酸塩、ヘキサメチレンジアミン塩酸塩、ヘキサメチレントリアミン塩酸塩等のポリアミン塩酸塩類;メチルアミン塩酸塩、エチルアミン塩酸塩等の1級アミン塩酸塩類;ジメチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩等の2級アミン塩酸塩類;トリメチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン塩酸塩等の3級アミン塩酸塩類;ピリジン塩酸塩、アニリン塩酸塩等の芳香族アミン塩酸塩類;トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ピリジニウム、塩化イミダゾリニウム等の芳香族4級アンモニウム塩類等を好適に用いることができる。
【0034】
上記塩化物は、溶液中に溶解した状態であっても、結晶等の固体の状態であってもよい。上記塩化物は、いずれの状態であっても、銀クロロ錯体に対して塩化物イオンを供給して、該銀クロロ錯体を安定化する。なお、上記塩化物を溶解するための溶媒としては、水や、水と同様の挙動を示すプロトン性溶媒のほか、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒;炭酸プロピレン;ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0035】
上記消臭剤中における上記塩化物の含有量は、特に限定されないが、0.1モル/l以上1モル/l以下であることが好ましく、0.2モル/l以上0.5モル/l以下であることがより好ましい。塩化物は、銀クロロ錯体を安定化するという働きを有する一方、金属、石膏等を腐食する働きも有する。そのため、塩化物の含有量が多いと、例えば、消臭スプレー剤、金属のコーティング剤、石膏ボードへの添加剤等として用いた場合に好ましくない結果をもたらす。また、消臭スプレー剤に塩化物が含まれている場合、噴霧対象の表面に該塩化物の析出が起こる点も好ましくない。上記塩化物の含有量が0.2モル/l以上0.5モル/l以下であれば、上記消臭剤中の銀クロロ錯体を安定化しつつも、上述したような該塩化物に起因する悪影響を抑制することができる。
【0036】
銀クロロ錯体は、例えば、特許文献2に記載のように、銀または銀化合物を塩化物水溶液に溶解させることによって製造することができる。銀クロロ錯体の製造のために用いる銀化合物は、銀の供給源となる物質であれば特に限定されないが、塩化銀、硝酸銀、硫酸銀、特に塩化銀を好ましく用いることができる。また、上記塩化物水溶液としては、例えば、上述したような塩化物を、上述の溶媒に溶解させたものを用いることができる。
【0037】
なお、特許文献2に記載のように、銀クロロ錯体は、塩化物を含んだ形態で製造される場合が多い。そのため、上述したような塩化物に起因する悪影響に鑑みて、銀クロロ錯体を消臭剤、特に消臭スプレー剤に用いるのは困難であると考えられている。本発明は、あえて、そのような銀クロロ錯体を用いることにより、従来は得られなかった消臭効果を得るものである。
【0038】
本発明に係る消臭剤はまた、使用の態様に応じて、上記組成の他、溶媒、消臭補助剤、防腐剤、界面活性剤、吸水性高分子、変色防止剤、沈殿防止剤、酸化防止剤、着色料、香料、樹脂、可塑剤、凝固剤等をさらに含んでいてもよい。
【0039】
上記消臭補助剤としては、アルコール類、特にエタノールが好ましく、本発明に係る消臭剤の消臭効果を高めることができる。エタノールを加える場合、エタノールの含有量は特に限定されないが、例えば、10%以上59%以下の範囲とすることができる。
【0040】
(製造方法)
本発明に係る消臭剤の製造方法は、酸化チタンおよび銀クロロ錯体を混合する工程を包含している。これにより、酸化チタンおよび銀クロロ錯体を含む消臭剤を製造することができる。上記酸化チタンおよび銀クロロ錯体等の混合には、一般的な方法を用いればよい。例えば、湿式法を用いる場合、酸化チタンを精製水、エタノール水溶液等に分散させた分散液および銀クロロ錯体溶液をプロペラ攪拌装置、ボールミル等を用いて混合すればよい。なお、酸化チタンとしては、酸化チタン微粒子を用いることが好ましい。酸化チタン微粒子を用いることにより、上記分散液中に酸化チタンを均一分散させることができる。また、乾式法を用いる場合、酸化チタンおよび銀クロロ錯体を乳鉢、ボールミル等で混合すればよい。
【0041】
なお、上述したように、銀クロロ錯体は、銀または銀化合物を塩化物水溶液と混合することによって調製される。そのため、上記酸化チタンおよび銀クロロ錯体の混合は、酸化チタン、塩化物および銀または銀化合物を混合することによって行ってもよい。この場合であっても、塩化物および銀または銀化合物が混合されることによって銀クロロ錯体が生じるため、酸化チタンおよび銀クロロ錯体の混合が行われる。
【0042】
本発明に係る消臭剤に含まれるその他の組成についても、同様に適宜混合することにより、本発明に係る消臭剤を製造することができる。
【0043】
(消臭スプレー剤)
本発明に係る消臭剤は、一実施形態において、消臭スプレー剤として用いることができる。本明細書において「消臭スプレー剤」とは、スプレーによって噴霧するための消臭剤を指す。なお、「スプレー」とは、液体を霧または泡の状態で噴霧する装置を指す。
【0044】
本実施形態に係る消臭剤は液状であり、消臭スプレー剤として好適に用いることができる。上記消臭スプレー剤が使用されるスプレーは特に限定されず、缶スプレー、電動スプレー、エアスプレー等において使用することができる。
【0045】
(消臭性物品)
さらに、本発明に係る消臭剤は、一実施形態において、種々の加工方法によって基材を加工して消臭性物品を製造することができる。なお、消臭性物品とは消臭性を有する物品を指す。例えば、繊維製品において、本発明に係る消臭剤を浸漬加工、パッディング加工、塗付加工、スクリーン加工等により繊維表面に塗布することができる。また、金属、ガラス、タイル、合成樹脂、石膏ボード、コンクリート等に対しても本発明に係る消臭剤を塗布することができる。このように、本発明に係る消臭剤を塗布することによって消臭性が付与された消臭性物品もまた、本発明の範囲内である。
【0046】
(消臭キット)
本発明はまた、消臭キットを提供する。用語「キット」は、各種成分の少なくとも1つが別物質(例えば、容器)中に含有されている状態であることが意図される。本明細書中において、「消臭キット」とは、化学的作用によってにおいを除去または緩和するためのキットを指す。
【0047】
本発明に係る消臭キットは、酸化チタンおよび銀クロロ錯体を備えている。上述したように、酸化チタンおよび銀クロロ錯体を混合することによって本発明に係る消臭剤を製造することができる。そのため、本発明に係る消臭キットを用いれば、容易に本発明に係る消臭剤を製造することができる。本発明に係る消臭キットとしては、例えば、酸化チタンコロイド溶液容器および銀クロロ錯体溶液容器を備え、噴霧時に該酸化チタンコロイド溶液および該銀クロロ錯体溶液を混合する機構を備えた消臭スプレー等が挙げられる。
【0048】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0049】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0050】
〔製造例〕
67.8%エタノール水溶液500mlに、精製水400ml、塩化ナトリウム水溶液18ml、銀クロロ錯体溶液6ml、酸化チタン微粒子(コロイド)液2mlおよび精製水48mlをこの順番に混合して、消臭剤Aを調製した。
【0051】
なお、上記塩化ナトリウム水溶液の濃度は311g/lである。また、上記銀クロロ錯体溶液は、最終的な銀濃度が500mg/lとなるように、塩化銀を濃度310g/lの塩化ナトリウム水溶液に溶解させて調製したものである。また、上記酸化チタン微粒子液は、平均粒径10nmの酸化チタン微粒子を精製水中に分散させたものである。上記酸化チタン微粒子液中の酸化チタンの含有量は2質量%である。
【0052】
上記消臭剤A中に含まれる各組成の最終的な含有量は、塩化ナトリウムが約0.74質量%、酸化チタン微粒子が約0.004質量%、そして銀が約0.0003質量%である。
【0053】
また、67.8%エタノール水溶液500mlに、精製水346ml、塩化ナトリウム水溶液18ml、銀クロロ錯体溶液60ml、酸化チタン微粒子(コロイド)液2mlおよび精製水48mlをこの順番に混合して、消臭剤Bを調製した。
【0054】
上記消臭剤B中に含まれる各組成の最終的な含有量は、塩化ナトリウムが約2.43質量%、酸化チタン微粒子が約0.004質量%、そして銀が約0.003質量%である。
【0055】
〔試験例1:アンモニア〕
製造例において調製した本発明に係る消臭剤としての消臭剤Aおよび消臭剤B、比較例としての市販品2種(市販品LおよびK)、銀クロロ錯体溶液ならびに酸化チタン微粒子および塩化銀の混合液について、以下のように、アンモニアに対する消臭効果を試験した。
【0056】
なお、上記銀クロロ錯体溶液は、銀濃度が約0.0003質量%となるように調製したものである。また、上記酸化チタン微粒子および塩化銀の混合液は、平均粒径10nmの酸化チタン微粒子の水分散液および塩化銀のチオ硫酸ナトリウム溶液の混合液であり、酸化チタンの含有量および銀の含有量が上記消臭剤Aとほぼ同量であるように調製したものである。すなわち、上記混合液中の酸化チタンの含有量は約0.004質量%であり、銀の含有量は約0.0003質量%である。
【0057】
まず、本発明に係る消臭剤および比較例の各サンプル10mlを、ステンレストレー上に四つ折にして置いたペーパータオル(22cm×21cm、1.0g)上に滴下した。このとき、上記ペーパータオル全体にそれぞれのサンプルが染み込み、かつ、該ペーパータオルの周囲に該サンプルがはみ出ないように滴下した。また、ブランクとして、サンプルを滴下しないペーパータオルを用意した。
【0058】
各サンプルを滴下したそれぞれのペーパータオルを、1時間静置して自然乾燥させた後、ホットプレート上で約20分間乾燥させて、重量を約1.0gとした。そして、乾燥させた各ペーパータオルおよびブランクのペーパータオルを、それぞれ異なる5lのテドラーバッグに入れて密封した。
【0059】
上記テドラーバッグ中に、無臭空気により予め濃度を調整したアンモニアを注入して、室温(20±3℃)にて静置した。湿度は30±5%とした。所定の時間が経過した時点で検知管を用いて濃度を測定した。各経過時間における残存率は、下記式(1)に従って算定した。
【0060】
残存率(%) = 各経過時間後におけるアンモニア濃度(ppm)
/ 初期アンモニア濃度(ppm) × 100・・・(1)
経過時間0、10、30、60、および120分後におけるアンモニア濃度の残存率を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示すように、消臭剤Aは、酸化チタンおよび銀の含有量が僅かな量(酸化チタン微粒子:約0.004質量%、塩化銀:約0.0003質量%)であっても、アンモニアを完全に除去することができた。消臭剤Bもまた、アンモニアを完全に除去することができた。
【0063】
一方、市販品、消臭剤Aと同量の酸化チタン微粒子および塩化銀を単に混合した混合液、および銀クロロ錯体溶液単体では、アンモニアの除去率は低かった。
【0064】
(試験例2:メチルメルカプタン)
消臭剤A、および比較例としての銀クロロ錯体溶液、および酸化チタン微粒子および塩化銀の混合液について、メチルメルカプタンに対する消臭効果を試験した。アンモニアの代わりにメチルメルカプタンを用いた他は試験例1と同様に試験を行った。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
表2に示すように、消臭剤Aは、酸化チタンおよび銀の含有量が僅かな量(酸化チタン微粒子:約0.004質量%、塩化銀:約0.0003質量%)であっても、メチルメルカプタンを完全に除去することができた。
【0067】
一方、消臭剤Aと同量の酸化チタン微粒子および塩化銀を単に混合した混合液、および銀クロロ錯体溶液単体では、メチルメルカプタンの除去率は低かった。
【0068】
(試験例3:トリメチルアミン)
消臭剤A、および比較例としての銀クロロ錯体溶液、および酸化チタン微粒子および塩化銀の混合液について、トリメチルアミンに対する消臭効果を試験した。アンモニアの代わりにトリメチルアミンを用いた他は試験例1と同様に試験を行った。結果を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
表3に示すように、消臭剤Aは、酸化チタンおよび銀の含有量が僅かな量(酸化チタン微粒子:約0.004質量%、塩化銀:約0.0003質量%)であっても、トリメチルアミンを完全に除去することができた。
【0071】
一方、消臭剤Aと同量の酸化チタン微粒子および塩化銀を単に混合した混合液、および銀クロロ錯体溶液単体では、トリメチルアミンの除去率は低かった。
【0072】
(試験例4:酢酸)
消臭剤A、および比較例としての銀クロロ錯体溶液、および酸化チタン微粒子および塩化銀の混合液について、酢酸に対する消臭効果を試験した。アンモニアの代わりに酢酸ガスを用いた他は試験例1と同様に試験を行った。結果を表4に示す。
【0073】
【表4】

【0074】
表4に示すように、消臭剤Aは、酸化チタンおよび銀の含有量が僅かな量(酸化チタン微粒子:約0.004質量%、塩化銀:約0.0003質量%)であっても、酢酸ガスを完全に除去することができた。
【0075】
一方、消臭剤Aと同量の酸化チタン微粒子および塩化銀を単に混合した混合液、および銀クロロ錯体溶液単体では、酢酸ガスの除去率は低かった。
【0076】
(試験例5:n−吉草酸)
消臭剤A、および比較例としての銀クロロ錯体溶液、および酸化チタン微粒子および塩化銀の混合液について、n−吉草酸に対する消臭効果を試験した。アンモニアの代わりにn−吉草酸を用いた他は試験例1と同様に試験を行った。結果を表5に示す。
【0077】
【表5】

【0078】
表5に示すように、消臭剤Aは、酸化チタンおよび銀の含有量が僅かな量(酸化チタン微粒子:約0.004質量%、塩化銀:約0.0003質量%)であっても、n−吉草酸を完全に除去することができた。
【0079】
一方、消臭剤Aと同量の酸化チタン微粒子および塩化銀を単に混合した混合液、および銀クロロ錯体溶液単体では、n−吉草酸の除去率は低かった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、種々のにおいを無臭化するための消臭剤として用いることができるほか、消臭性を付与した種々の物品、例えば、衣料、建材、日用品等の製造に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンおよび銀クロロ錯体を含んでいることを特徴とする消臭剤。
【請求項2】
上記酸化チタンが酸化チタン微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の消臭剤。
【請求項3】
上記酸化チタン微粒子の平均粒径が1nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の消臭剤。
【請求項4】
上記酸化チタンの含有量に対する銀の含有量の質量比が0.05倍以上0.75倍以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の消臭剤。
【請求項5】
塩化物をさらに含んでいることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の消臭剤。
【請求項6】
上記塩化物が、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、脂肪族4級アンモニウム塩、1級アミン塩酸塩、3級アミン塩酸塩、芳香族アミン塩酸塩、芳香族4級アンモニウム塩からなる群より選ばれる1つ以上の塩化物であることを特徴とする請求項5に記載の消臭剤。
【請求項7】
上記塩化物の含有量が0.1モル/l以上1モル/l以下であることを特徴とする請求項5または6に記載の消臭剤。
【請求項8】
上記塩化物が溶解する溶媒をさらに含んでいることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の消臭剤。
【請求項9】
エタノールをさらに含んでいることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の消臭剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の消臭剤からなることを特徴とする消臭スプレー剤。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の消臭剤が塗布されていることを特徴とする消臭性物品。
【請求項12】
酸化チタンおよび銀クロロ錯体を備えていることを特徴とする消臭キット。
【請求項13】
酸化チタンおよび銀クロロ錯体を混合する工程を包含することを特徴とする消臭剤の製造方法。

【公開番号】特開2009−297202(P2009−297202A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154049(P2008−154049)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(505135966)有限会社日本スターチ総研 (4)
【Fターム(参考)】