説明

消臭剤組成物および消臭方法

【課題】
寝具類などの繊維製品に適用することにより、不快臭の発生を効果的に抑制し得る消臭剤組成物を提供すること。
【解決手段】
次の成分(a)ないし(d);
(a)殺菌剤0.0001〜10質量%
(b)ポルフィン誘導体または金属ポルフィリン誘導体0.00001〜1質量%
(c)消臭剤0.01〜20質量%
(d)水
を含有することを特徴とする消臭剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布団、枕、シーツ等の寝具やソファ、絨毯、玄関マットなどの繊維製品の悪臭を効果的に除去できる消臭剤組成物及びその消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
布団や枕、シーツなどは、一日のうちで人の肌に触れている時間が長く、体臭(汗・皮脂臭)が蓄積し、不快感を生じさせる。しかし、このような寝具類は頻繁に家庭で洗濯することができないため、洗濯によって臭いを取り除くことが困難である。このため、天日干しにより悪臭を除去することも行われているが、十分に悪臭を除去できていないのが現状である。また、絨毯や玄関マット等も同様に洗濯することが難しく、部分的な汚れに由来する不快臭の問題がある。
【0003】
このような不快臭は、主として繊維製品に蓄積した汗・皮脂などが微生物によって分解されて発生すると考えられている。このため、消臭剤や抗菌剤を配合した消臭剤組成物を繊維製品に噴霧して、発生した不快臭を消臭したり、不快臭を発生させる微生物の増殖を抑制することによって、不快臭を抑制することが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、陽イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤とキレート剤を併用することにより,汗臭やタバコ臭を消臭する液体消臭剤が開示され、特許文献2には,香料等の消臭基剤と陽イオン界面活性剤と特定の溶剤を併用することにより,汗臭を消臭する液体消臭剤が開示されている。特許文献3には、植物からの抽出物を主成分とする消臭基材、香料、エタノール及び界面活性剤を併用することにより、腐敗臭を抑制する消臭剤組成物が開示され、特許文献4には、ベタイン型両性化合物、非イオン性界面活性剤、及び陰イオン界面活性剤からなる処理剤で処理することにより、アンモニア臭等を消臭しうる消臭性繊維が開示されている。特許文献5には、有機二塩基酸又はその塩により、酢酸、イソ吉草酸等の低級脂肪酸類やアンモニア、トリメチルアミン等のアミン類等を消臭できることが開示されている。
【0005】
しかしながら、このような消臭剤や抗菌剤を配合した消臭剤組成物は、消臭作用が弱かったり、持続性が低かったりして、十分な不快臭の抑制効果が得られない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−40581号公報
【特許文献2】特開2001−70423号公報
【特許文献3】特開2001−178806号公報
【特許文献4】特開2004−176225号公報
【特許文献5】特開2001−95907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本願発明は、寝具類などの繊維製品に噴霧することにより、不快臭の発生を効果的に抑制し得る消臭剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を行ったところ、ある種のポルフィリン化合物が繊維製品の不快臭の発生源である皮脂汚れを分解して不快臭の発生自体を抑制し、これを殺菌剤や消臭剤と組み合わせることにより繊維製品の不快臭を効率よく消臭し得ることを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(a)ないし(d);
(a)殺菌剤0.0001〜10質量%
(b)ポルフィリン誘導体または金属ポルフィリン誘導体0.00001〜1質量%
(c)消臭剤0.01〜20質量%
(d)水
を含有することを特徴とする消臭剤組成物である。
【0010】
また、本発明は、上記消臭剤組成物を繊維製品にスプレー噴霧することを特徴とする繊維製品の消臭方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の消臭剤組成物は、悪臭の発生源である皮脂汚れ自体を分解するものであるため、微生物が皮脂汚れを分解して増殖することを未然に防ぐことができる。さらに併用する殺菌剤や消臭剤によって、微生物の発生、増殖を直接防止するとともに、発生した不快臭を消臭するため、非常に優れた不快臭の抑制効果が得られるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の消臭剤組成物には、成分(a)殺菌剤を配合する。殺菌剤を配合することにより、皮脂汚れに付着した微生物を殺菌して増殖を防ぎ、より消臭効果を高めることができる。この殺菌剤としては、皮脂汚れに生じ、悪臭を発生する表皮ブドウ球菌等の皮膚常在菌に対して抗菌作用を有するものであれば、特に限定なく使用することができるが、例えば、ε‐ポリリジン、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンズイミダゾール、ポリヘキサメチレンビグアニド、ビス−(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、8−オキシキノリン、デヒドロ酢酸、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンなどのパラオキシ安息香酸エステル類;ソルビン酸カリウム、安息香酸エステル類、クロロクレゾール類、クロロチモール、クロロフェン、ジクロロフェン、ブロモクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等の四級アンモニウム塩;、塩酸クロル
ヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、グルクロン酸クロルヘキシジン、塩酸ポリヘキサメチレンビグアニド、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、トリクロロカルバニリド、エタノール、イソプロピルアルコール等を挙げることができ、これらを単独又は2種以上併用して配合することにより除菌効果を付与することができる。これらの中でもε‐ポリリジン、塩化ベンザルコニウムおよび塩酸ポリヘキサメチレンビグアニドが、安全性、水への溶解性、繊維製品への浸透度及び効果の観点で好適である。
【0013】
本発明の消臭剤組成物中の成分(a)の含有量は0.0001〜10質量%(以下、「%」で示す)であり、好ましくは0.05〜5%である。また、ε‐ポリリジンのようなカチオン性ポリマーなどを用いる場合は本発明の洗浄剤組成物中に0.005〜5%配合することが好ましく、更に好ましくは0.005〜0.5%である。
【0014】
本発明の消臭剤組成物は、成分(b)ポルフィリン誘導体または金属ポルフィリン誘導体を含有する。本発明に用いられるポルフィリン誘導体または金属ポルフィリン誘導体は、具体的には、下記式(1)示される化合物を挙げることができる。
【化1】


(式中、R〜R10は水素原子、有機基もしくは互いに隣接する基で閉環構造を形成する)
【0015】
上記式(1)において、有機基としては、アリール、アルキル、アルキルカルボキシ、アルキルヒドロキシ、サルフェート、ビニル等が挙げられ、更に、隣接する基、例えばR3とR4が形成する閉環構造としては、フェニル骨格等を形成する構造が挙げられる。
【0016】
また、金属ポルフィリン誘導体は、上記式(1)で表されるポルフィリン誘導体の、ピロール環上の窒素原子が金属と配位したものである。配位する金属としては、Zn、Al、Ca、Cd、Mg、Sc、Fe、Co、Mn等が挙げられる。
【0017】
上記成分(b)のうち、好ましいものとしては、前記式(1)において、R〜Rの隣接する基でフェニル骨格を形成し、ピロール環に金属が配位しない構造のテトラベンゾポルフィン(フタロシアニン)である。
【0018】
このポルフィリン誘導体および金属ポルフィリン誘導体の多くは、既に公知のものであり、例えば、上記テトラベンゾポルフィンは、Tinolux BBS(テトラベンゾテトラアザポルフィン:BASF社製)として市販されているので、これを利用することができる。
【0019】
上記成分(b)の配合量は、消臭剤組成物中0.00001〜1%の範囲であり、好ましくは0.0001〜0.01%である。成分(b)の配合量が0.00001%未満であると、悪臭源である皮脂に対する分解効果が不十分であり、1%を超えて添加してもその悪臭源分解効果は変わらず、不経済である。また、対象繊維への着色の問題が生じる場合もある。
【0020】
本発明の消臭剤組成物には、生じた悪臭を消臭する目的で、成分(c)消臭剤を配合する。本発明に用いられる消臭剤は、従来公知の消臭剤であれば特に限定なく使用することができるが、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アンモニウム、ミョウバン、硫酸銅、硫化亜鉛等の無機酸の金属塩や、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸アルミニウム等の有機酸の金属塩、酸化チタンや酸化亜鉛等の金属酸化物、フラボノイド化合物、カテキン、ポリフェノールまたはこれらの誘導体等またはこれらを含有する茶抽出物、柿抽出物、イチョウ葉抽出物等の植物抽出物系消臭剤、シクロデキストリンまたはその誘導体等を挙げることができる。植物抽出物系消臭剤として具体的には、植物抽出物消臭剤として市販されている、「ピュリエール」(松下電工化研(株))、「パンシル」(リリース科学工業(株))、「シライマツFS-500M」(シライマツ新薬(株))などが使用できる。
【0021】
上記成分(c)の配合量は、消臭剤組成物中0.01〜20%の範囲であり、好ましくは.0.1〜10%である。成分(c)の配合量が0.01%未満であると、消臭効果が不十分であり、また、20%を超えて添加してもその消臭効果は変わらず、不経済である。
【0022】
本発明の消臭剤組成物は、さらに成分(d)水を含有する。水の含有量は、消臭剤組成物中通常60〜99.9%、好ましくは90〜99%である。
【0023】
本発明の消臭剤組成物には、配合成分中の油性成分を水に可溶化させるため、また、繊維製品への成分(a)〜(c)の浸透性を高める目的で、界面活性剤を配合することができる。本発明に使用される界面活性剤としては、従来公知の、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤または両性界面活性剤の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、石けん(高級脂肪酸石けん)、石けん用素地、金属石けん、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、N−アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホ琥珀酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム(N−ココイル−N−メチルタウリンナトリウム)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルβ−アラニンナトリウム液、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
また、カチオン系界面活性剤としては、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル、脂肪酸アルカノールアミド、第3級アミンオキサイド等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
上記脂肪酸アルカノールアミドは、椰子油脂肪酸、ステアリン酸、ラウリン酸、のモノエタノールアミド、ジエタノールアミド等が挙げられ、第3級アミンオキサイドとしては、ラウリルジメチルアミンオキサイド、椰子油脂肪酸ジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0028】
また、上記両性界面活性剤としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
上記界面活性剤のうち、ノニオン系界面活性剤が好ましく、中でもポリオキシエチレンアルキルエーテルが好適である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルのポリオキシエチレン鎖は、通常3から18、好ましくは7から12であり、アルキル鎖は直鎖または分岐のどちらでも良く、アルキル鎖長は通常8〜22、好ましくは12〜20である。
【0030】
界面活性剤の配合量としては、本発明の消臭剤組成物中の油性成分を可溶化するのに十分な量であれば良く、具体的には、0.001〜10%、好ましくは、0.01〜1%程度である。
【0031】
さらに本発明の消臭剤組成物には、悪臭が生じた場合にマスキングし、また、寝具等に心地よい芳香を付与する目的で香料を配合することが好ましい。本発明に用いることができる香料は、特に限定されず用いることができるが、好ましくは香料化合物のうちlogPが1〜3の化合物である。logPが1〜3の化合物は、一般的には、揮発性が高く、繊維製品への吸着能も低いことから、残香が残らないため好ましい。logP値は、化合物の1−オクタノール/水の分配係数である。logPが1〜3の化合物としては、2,6−ジメチルヘプタノール、3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル、l−カルボン、l−メントン、N−メチルアントラニル酸メチル、o−メトキシシンナミックアルデヒド、α,α−ジメチルフェニルエチルアルコール、γ−ノナラクトン、δ−ノナラクトン、アセチルオイゲノール、アニスアルコール、アニスアルデヒド、アニス酸メチル、アリルアミルグリコレート、安息香酸メチル、イソメントン、インドール、エチルバニリン、バニリン、オイゲノール、桂皮酸メチル、ゲラニオール、酢酸スチラリル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸シンナミル、酢酸フェニルエチル、酢酸ベンジル、サフラナール、サリチル酸エチル、サリチル酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、テトラヒドロ−p−メチルキノリン、テルピネロール、ネロール、ヒドラトロトロピックアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、フェニルエチルアルコール、フェニルグリシド酸メチル、プロピオン酸トリシクロデセニル、プロピオン酸ベンジル、ヘリオトロピン、ヘリオナール、ペリラアルデヒド、ベンジルアルコール、ボルネオール、マロン酸ジエチル、メチルb−ナフチルケトン、メチルアトラレート、メチルイソオイゲノール、ラズベリーケトン、リナロール、リラール、ルボフィクス、ローズオキサイド、クマリン、エチルベンゾエートなどが挙げられる。
【0032】
そのほかに本発明の消臭剤組成物には、噴霧対象である繊維製品のシワ低減等の目的で、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル・ポリエーテル変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン等シリコーン化合物を配合することができる。
【0033】
本発明の消臭剤組成物には、さらに必要に応じて他の成分を配合することができる。このような他の成分としては、エデト酸(EDTA)またはその塩、ヒドロキシカルボン酸、多価カルボン酸、アミノカルボン酸等のキレート剤、アルコール、グリコール、グリコールエーテル等の多価アルコール、炭化水素系溶剤等の溶剤、酸化防止剤、防腐剤などを挙げることができる。
【0034】
本発明の消臭剤組成物の調製は、消臭剤組成物製造の一般的方法により行うことができる。この製造に当たって特別な加温や攪拌は必要なく、水をはった製造タンク内に各原料を投入し、攪拌するだけの簡便な方法で、短時間で製造することができる。
【0035】
以上のようにして調製される本発明の消臭剤組成物を繊維製品に適用することにより優れた消臭効果を得ることができる。本発明の消臭剤組成物の繊維製品への適用は、例えば、スプレー噴霧したり、消臭剤組成物を含浸させた布帛等で塗布すること等によって行うことができるが、スプレー噴霧が好適である。本発明の消臭剤組成物をスプレー容器に収納することによって、スプレー式消臭剤とすることができる。このスプレー式消臭剤を用いて、種々の繊維製品、例えば、枕、布団、シーツ等の寝具、カーテン、ソファ等に本発明の消臭剤組成物をスプレー噴霧することにより、悪臭の発生源である皮脂汚れを分解し、悪臭を元から断つことができる。本発明の消臭剤組成物の1回当たりの適用量は、繊維製品1mに対し1〜5g程度が好ましく、また水分がなくなると皮脂汚れ分解作用が低下する場合があるため、繊維製品が乾燥しないよう定期的に噴霧すると高い消臭効果が得られる。適用後は、太陽光、蛍光灯など通常の生活環境下での光により繊維製品の皮脂汚
れが分解され、さらに殺菌剤および消臭剤の作用によって、消臭効果が顕著に高められる。
【実施例】
【0036】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0037】
実 施 例 1: 皮脂汚れ分解試験
以下の処方で本発明の消臭剤組成物を作成した。
【表1】

【0038】
本発明品1〜3および比較品1〜2の消臭剤組成物を市販のトリガー式スプレー容器に収納し、以下のようにして除菌試験を行った。
皮脂汚れ用モデル汚染布(EMPA#116;コットン:血液・ミルク・墨汁)を5cm×5cmの正方形に切ったもの(処理前汚染布)に、各消臭剤組成物を2ストローク噴霧した後、その後フェードメーター(スガ試験機製 低温サイクルキセノンフェードメーター;条件60w/m2、槽内温度27℃、槽内湿度50%)で10分照射又は蛍光灯(TOSHIBA製 3波長形昼光色蛍光ランプ メロウZ)の光を60分照射した。これを1サイクルとして、10または30サイクル繰り返した。このように処理した汚染布(処理後汚染布)をコニカミノルタ製 色彩色差計CR-200により明度を測定し、下記の式で明度率を求めた。なお、処理前汚染布を、洗濯洗剤アタック(粉タイプ、花王株式会社製)を用いて洗濯機にて標準で1回洗濯したものを対照汚染布とした。
明度率(%)=(C−B/A−B)×100
A:対照汚染布の明度
B:処理前汚染布の明度
C:処理後汚染布の明度
【0039】
【表2】

【0040】
以上の結果より、本発明品は、悪臭発生の元となる皮脂汚れを分解していることがわかった。そのため、皮脂汚れ部分での菌の発生、増殖を抑制し、悪臭の発生を防止することが示された。
【0041】
実 施 例 2:除菌試験1
滅菌シャーレ(直径8.5cm)内に注入、固化させたポテトデキストロース寒天培地上に、黄色ブドウ球菌(NRBC12732)の生菌数が106〜107cfu/mlとなるように調整した菌液を塗布した。一方、3cm×3cmの滅菌済み綿布に、実施例1で調製した本発明品1および2を、トリガー式スプレー容器用いて2ストローク又は5ストローク噴霧し、上記菌液を塗布したシャーレの中央に置き、38℃で48時間培養したのち阻止円の幅を測定した。阻止円は、綿布の周囲にできた阻止円について以下の式により幅Wを計算した。なお、対照として、綿布に水をスプレーしたものを用いた。結果を表3に示す。
W=(T−D)/2
W:阻止円の幅(mm)
T:綿布の長さと阻止円の合計(mm)
D:綿布の長さ(mm)
【0042】
【表3】

【0043】
以上の結果より、本発明品1および2は、菌の発生、増殖を抑制することができるため、菌の発生、増殖による悪臭の発生を抑制できることが示された。
【0044】
実 施 例 3:除菌試験2
牛血清アルブミン30gをイオン交換水1Lに溶解したものをろ過滅菌した。これを、黄色ブドウ球菌(NRBC12732)の生菌数が106〜107cfu/mlとなるように調整した菌液と、1 : 1で混ぜ合わせ菌懸濁液とした。
本発明品9ml中に上記の菌懸濁液を1ml添加し、一定時間毎に菌数確認を行った。また、黄色ブドウ球菌から緑膿菌(NRBC3080)に代えて、同様の試験を実施した。なお、本発明品に代え精製水9ml中に菌懸濁液を添加したものを対照とした。結果を表4に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
以上の結果より、本発明品はすべて接触後3分以内には黄色ブドウ球菌、緑膿菌の双方の菌に対して優れた除菌効果を示した。特に本発明品3は接触後0.5分以内には黄色ブドウ球菌、緑膿菌の双方の菌に対して優れた除菌効果を示した。
【0047】
実 施 例 4:消臭試験1
10リットルのテドラーバッグ内に悪臭として脂肪酸の悪臭の代表である酢酸100mlを注入した。その後テドラーバック内に実施例1で調製した本発明品1ないし3を、市販のトリガー式スプレー容器を用いて1ストローク噴霧した。噴霧後初期の悪臭濃度を検知管で測定し、次に60分後の悪臭濃度を測定して下記式により消臭率を求めた。なお、本発明品を噴霧しないものを対照とした。結果を表5に示す。
消臭率(%)=(A−B)/A×100
A:初期の悪臭濃度(ppm)
B:60分後の悪臭濃度(ppm)
【0048】
【表5】

【0049】
本発明品は、いずれも脂肪酸系の悪臭に対して優れた消臭効果を持つことが示された。
【0050】
実 施 例 5:消臭試験2
ノネナール10mlをデシケーター内に揮散させたものを試験悪臭とし、10リットルのテドラーバッグ内にノネナール5mlが含まれるよう試験悪臭を注入した。その後テドラーバック内をファンで拡散しながら実施例1で作成した各本発明品を、市販のトリガー式スプレー容器を用いて1ストローク噴霧した。5分後の臭いについて、10名のパネラーが下記の基準により評価し、その平均値を求めた。結果を下記表6に示す。なお本発明品を噴霧しないものを対照とした。
【0051】
<評価基準>
0・・・・・・においを感じない
1・・・・・・やっと感知できる
2・・・・・・弱いにおい
3・・・・・・らくに感知できるにおい
4・・・・・・強いにおい
5・・・・・・強烈なにおい
【0052】
【表6】

【0053】
実 施 例 6:消臭試験3
擬似加齢臭としてノネナールを用い、ノネナール1に対して10倍量のエタノールで希釈したものを悪臭液とした。10cm×10cmにカットしたコットン布に、この悪臭液をスプレイヤーを用いて1回噴霧した後、実施例1で作成した本発明品1〜3をそれぞれ3ストローク噴霧した。このコットン布を4リットルのテドラーバッグ内に入れてファンで拡散しながら5分間放置した。
5分後の臭いについて、10名の専門パネラーが下記の基準により評価し、その平均値を求めた。結果を下記表7に示す。なお本発明品を噴霧しないものを対照とした。
【0054】
<評価基準>
0・・・・・・においを感じない
1・・・・・・やっと感知できる
2・・・・・・弱いにおい
3・・・・・・らくに感知できるにおい
4・・・・・・強いにおい
5・・・・・・強烈なにおい
【0055】
【表7】

【0056】
本発明品1、2および3は、擬似加齢臭であるノネナールを消臭していることが示された。
【0057】
実 施 例 7:消臭試験4
擬似汗臭としてイソ吉草酸を用いた。イソ吉草酸20μlをエタノール100mlで希釈したものを悪臭液とした以外は上記実施例6と同様にして消臭試験を実施した。結果を表8に示す。
【0058】
【表8】

【0059】
本発明品1、2および3は、擬似汗臭であるイソ吉草酸を消臭していることが示された。
【0060】
実 施 例 8:消臭試験5
無付香の洗濯洗剤を用いて洗濯した枕カバーを枕にかけモニターに5日間使用してもらった。使用に際しては、実施例1で調製した本発明品1を、市販のトリガー式スプレー容器を用いて1日1回10ストロークスプレーしものと、全くスプレーしなかったものの2種類を用意した。その後、それぞれの枕カバーを40リットルのテドラーバック内に入れ半日間放置した後、ヘッドスペースガスをTenax 吸着管を用いて吸引ポンプで3リットル吸引した。その後、Tenax 吸着管を加熱脱着法にて、GS/MSを用いて分析を行い、特徴的な臭気の一つであるオクテナールのピークの有無を確認した。本発明品1をスプレーしなかった枕カバーからはオクテナールのピークが確認できたが、本発明品1をスプレーしたものはオクテナールのピークを確認できなかった。つまり、本発明品1を寝具にスプレーすることにより、オクテナールを消臭していること示された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の消臭剤組成物は、寝具類などに噴霧することにより、不快臭の発生源である皮脂を分解し、不快臭の発生を効果的に抑制し得るものであるため、繊維製品の消臭剤として有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)ないし(d);
(a)殺菌剤0.0001〜10質量%
(b)ポルフィン誘導体または金属ポルフィリン誘導体0.00001〜1質量%
(c)消臭剤0.01〜20質量%
(d)水
を含有することを特徴とする消臭剤組成物。
【請求項2】
成分(a)殺菌剤が、ε‐ポリリジン、塩化ベンザルコニウムおよび塩酸ポリヘキサメチレンビグアニドよりなる群から選ばれる1種若しくは2種以上である請求項1記載の消臭剤組成物。
【請求項3】
成分(c)ポルフィリン誘導体または金属ポルフィリン誘導体が下記式(1)で表されるものである請求項1または2記載の消臭剤組成物。


(式中、R〜R10は水素原子、有機基もしくは互いに隣接する基で閉環構造を形成する)
【請求項4】
成分(c)消臭剤が、植物抽出物系消臭剤である請求項1ないし3のいずれかの項記載の消臭剤組成物。
【請求項5】
さらに界面活性剤を含有するものである請求項1ないし4のいずれかの項記載の消臭剤組成物。
【請求項6】
さらに香料を含有するものである請求項1ないし5のいずれかの項記載の消臭剤組成物。
【請求項7】
香料のLogPが1〜3である請求項6記載の消臭剤組成物。
【請求項8】
次の成分(a)ないし(d);
(a)殺菌剤0.0001〜10質量%
(b)ポルフィン誘導体または金属ポルフィリン誘導体0.00001〜1質量%
(c)消臭剤0.01〜20質量%
(d)水
を含有する消臭剤組成物をスプレー容器に収納してなるスプレー式消臭剤。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかの項に記載の消臭剤組成物を繊維製品にスプレー噴霧することを特徴とする繊維製品の消臭方法。

【公開番号】特開2012−143541(P2012−143541A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266682(P2011−266682)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】