説明

消臭剤組成物

【課題】汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭を低減させることができ、人体に安全である消臭剤組成物、及び消臭方法を提供する。
【解決手段】(i)下記式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、及び非アルデヒド系香料成分(b)を含有し、質量比〔(a)/(b)〕が1/3以上である消臭剤組成物、(ii)前記(a)、(b)成分、及びアルデヒド系香料成分(c)を含有し、質量比〔(c)/(b)〕が1/4以下である消臭剤組成物、及び(iii)それらの消臭剤組成物を用いる消臭方法である。


(式中、R1は水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を表し、R2は水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を表し、R3及びR4はアルキレン基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消臭剤組成物に関し、詳しくは、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭を低減させることができ、かつ人体に安全な消臭剤組成物、及びそれを用いた消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消臭剤は、芳香剤と共に不快な匂いを和らげるものであり、快適な生活を送る上で重要な部分を担っている。消臭に関する近年のニーズは、強い芳香で悪臭をマスキングする芳香剤から、微香性又は無香性で臭い自体を消す消臭剤へと変化している。
また、肌に直接触れない衣類は着てもすぐに洗わないという洗濯習慣が増えているが、その一方で洗わない衣類の匂いを気にしている。生活環境における不快な臭いの殆どは複合臭であり、この複合臭に効果的な消臭剤が求められている。
【0003】
従来、特定の悪臭成分に対する消臭技術は知られているが、複合臭に対して効果的なものは少ない。
例えば、特許文献1には、陽イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤とキレート剤を併用することにより、汗臭やタバコ臭を消臭する液体消臭剤が開示され、特許文献2には,香料等の消臭基剤と陽イオン性界面活性剤と特定の溶剤を併用することにより,汗臭を消臭する液体消臭剤が開示されている。しかしながら、これらの液体消臭剤は、アルデヒド類等に対する消臭性能は充分ではない。
特許文献3には、植物からの抽出物を主成分とする消臭基材、香料、エタノール及び界面活性剤を併用することにより、腐敗臭を抑制する消臭剤組成物が開示され、特許文献4には、ベタイン型両性化合物、非イオン性界面活性剤、及び陰イオン性界面活性剤からなる処理剤で処理することにより、アンモニア臭等を消臭しうる消臭性繊維が開示されている。しかしながら、これらも汗臭やアルデヒド類に対する消臭性能は充分ではない。
【0004】
特許文献5には、トリエタノールアミンやトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等から選ばれる1種以上を塩として含む陰イオン界面活性剤により、低級脂肪酸、アミン類が共存する複合臭を抑制できることが開示されている。しかしながら、陰イオン界面活性剤のアミン塩はアルデヒド類に対する効果が充分でなく、水に対する溶解性が悪いものもあるため、消臭剤組成物を調製するには適さない。
特許文献6には、有機二塩基酸又はその塩により、酢酸、イソ吉草酸等の低級脂肪酸類やアンモニア、トリメチルアミン等のアミン類等を消臭できることが開示されているが、有機二塩基酸又はその塩は、アルデヒド類に対する消臭効果が充分でない。
特許文献7には、中高年以降に認められる加齢臭の原因物質の一つとされるノネナール等の不飽和アルデヒドの消臭について、エタノールアミンが効果的であることが開示されている。しかしながら、汗臭等に対する効果が不明であり、またエタノールアミンは刺激性があり、人体に触れる可能性のある形態での使用には適さない。
かかる状況から、特に汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭を低減させることができ、人体に安全である消臭剤組成物の開発が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開2001−40581号公報
【特許文献2】特開2001−70423号公報
【特許文献3】特開2001−178806号公報
【特許文献4】特開2004−176225号公報
【特許文献5】特開2004−49889号公報
【特許文献6】特開2001−95907号公報
【特許文献7】特開2001−97838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭を低減させることができ、水系消臭剤の調製も容易であり、かつ人体に触れても安全な消臭剤組成物、及び消臭方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のポリヒドロキシアミン類が汗臭やアルデヒド類等に由来する複合臭の消臭に有効であり、しかも人体に対する刺激が少なく、また、非アルデヒド系香料成分と併用することにより消臭性能を更に高め得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔3〕を提供する。
〔1〕 下記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、及び非アルデヒド系香料成分(b)を含有し、該(a)成分と該(b)成分の質量比〔(a)/(b)〕が1/3以上である消臭剤組成物。
【0008】
【化1】

(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基を表す。)
〔2〕前記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、非アルデヒド系香料成分(b)、及びアルデヒド系香料成分(c)を含有し、該(b)成分と該(c)成分の質量比〔(c)/(b)〕が1/4以下である消臭剤組成物。
〔3〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の消臭剤組成物を対象物に付着させ、対象物の臭いを低減させる消臭方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の消臭剤組成物は、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭を効果的に消臭でき、水系消臭剤の調製も容易であり、かつ人体に触れても安全である。また、空間や繊維製品等の固体表面に付着した複合臭について優れた消臭効果を発揮する。
また、本発明の消臭方法によれば、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭を簡便かつ効果的に消臭することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の消臭剤組成物は、下記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)(以下、単に「ポリヒドロキシアミン化合物類(a)」ということがある)を主成分として含有する。
【0011】
【化2】

【0012】
一般式(1)において、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。
炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられる。また、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよく、例えば、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
このR1は、消臭性能及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。
【0013】
2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。
炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、前記R1の説明で例示したものと同じものが挙げられる。
このR2は、消臭性能及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
3及びR4は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい。炭素数1〜5のアルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基が好ましく、特にメチレン基が好ましい。
【0014】
ポリヒドロキシアミン化合物類(a)の具体例としては、例えば、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、4−アミノ−4−ヒドロキシプロピル−1,7−ヘプタンジオール、2−(N−エチル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−エチル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等、及びそれらと塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸等との塩が挙げられる。
これらの中では、消臭性能等の観点から、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール及びそれらと塩酸等の酸との塩から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0015】
一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物を塩酸等の塩として用いる場合は、塩基を添加することによりpHを調整することができる。用いることができる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。これらの中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
前記のポリヒドロキシアミン化合物類(a)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、このポリヒドロキシアミン化合物類(a)は、常法により製造することができる。
ポリヒドロキシアミン化合物類(a)は、単独でも混合物でも、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭に対して消臭性能を発揮するが、以下に示す非アルデヒド系香料成分(b)と併用することにより、消臭性能を更に高めることができる。
【0016】
本発明において、非アルデヒド系香料成分(b)とは、アルデヒド化合物を含まない香料成分を意味する。非アルデヒド系香料成分(b)を用いる理由は、香料成分がアルデヒド化合物を含む場合は、ポリヒドロキシアミン化合物類(a)が該アルデヒド化合物と反応してしまい、消臭効果が低下するからである。
本発明で用いられる非アルデヒド系香料成分(b)は、以下に示す(b−1)香料成分と(b−2)香料成分を含む混合物である。
【0017】
(b−1)香料成分は、20℃における蒸気圧が5.33Pa以上で、炭素数が6〜12の炭化水素、アルコール、ケトン、エステル、及びエーテルから選ばれる1種以上の香料成分である。具体的には、次のような香料成分が好ましい。
炭素数が6〜12の炭化水素には、テルペン系炭化水素が含まれ、リモネン、α−テルピネン、γ−テルピネン、オシメン等が挙げられる。炭素数が6〜12のアルコールとは、テルペン系アルコール、脂肪族アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコールであり、リナロール、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロゲラニオール、cis−3−ヘキセノール、ネロール、ベンジルアルコール、テトラヒドロミルセノール、ネロリドール、2,6−ジメチルヘプタノール、ボルネオール、イソボルネオール、2−ヘプタノール等が挙げられる。炭素数が6〜12のケトンとは、炭素数が6〜12の脂肪族ケトン、テルペン系ケトン、環状ケトン、芳香族ケトンであり、l−カルボン、l−メントン、マルトール、アセトフェノン等が挙げられる。
【0018】
炭素数が6〜12のエステルとは、炭素数が6〜12の酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、吉草酸エステル、カプロン酸エステル、エナント酸エステル、カプリン酸エステル、オクチンカルボン酸エステル、2−ペンチロキシグリコール酸エステル、ケト酸エステル、安息香酸エステル、フェニル酢酸エステル、サリチル酸エステル等であり、具体的には、アセト酢酸エチルエチレングリコールケタール、アリルアミルグリコレート、安息香酸メチル、安息香酸エチル、イソ吉草酸エチル、イソ酪酸ベンジル、イソ酢酸アミル、オクタン酸エチル、オクチンカルボン酸メチル、酢酸cis−3−ヘキセニル、酢酸o−tert−ブチルシクロヘキシル、酢酸ボルニル、酢酸ラバンジュリル、酢酸スチラリル、酢酸フェニルエチル、酢酸ヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸リナリル、サリチル酸エチル、サリチル酸メチル、フェニル酢酸エチル、フェニル酢酸メチル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸ベンジル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、ヘプタン酸アリル、酪酸ブチル、酪酸ヘキシル等が挙げられる。炭素数が6〜12のエーテルとは、炭素数が6〜12のテルペン系エーテル、脂環式エーテル、芳香族エーテルであり、1,8−シネオール、p−クレジルメチルエーテル、エストラゴール、アニソール、アネトール等が挙げられる。
【0019】
この(b−1)香料成分は、拡散性が高く、フレッシュ感を付与するのに有用な素材であり、汗臭やアルデヒド化合物以外の悪臭に対しても、高い消臭効果を発揮することができる。特に、スプレー直後の消臭効果感が高い。特に好ましい香料成分は、リモネン、リナロール、安息香酸メチル、酢酸cis−3−ヘキセニル、酢酸ベンジル、酢酸リナリル、酢酸スチラリル、酢酸o−tert−ブチルシクロへキシル、酢酸フェニルエチル、フェニル酢酸エチル、フェニル酢酸メチル、プロピオン酸ベンジル、サリチル酸メチル、2,6−ジメチルヘプタノール、ネロール、1,8−シネオール、アセト酢酸エチルエチレングリコールケタール、メチルヘプテノンである。
【0020】
一方、(b−2)香料成分は、20℃における蒸気圧が5.33Pa未満で、炭素数が8〜18のアルコール、ケトン、エステル、エーテル、ラクトン、大環状ムスク、及び多環式ムスクから選ばれる1種以上の香料成分である。具体的には、次のような香料成分が好ましい。
炭素数が8〜18のアルコールとは、炭素数が8〜18のテルペン系アルコール、セスキテルペン系アルコール、脂肪族アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコールであり、具体的には、シトロネロール、シンナミックアルコール、アニスアルコール、オウランチオール、セドレノール、セドロール、デセノール、オイゲノール、ファルネソール、ゲラニオール、ヒドロキシシトロネロール、イソオイゲノール、イソプレゴール、l−メントール、メチルイソオイゲノール、フェニルエチルアルコール、3−メチル−1−フェニル−3−ペンタノール、ロジノール、イソカンフィルシクロヘキサノール、2,2,6−トリメチルシクロヘキシル−3−ヘキサノール、ベチベロール、チモール等が挙げられる。炭素数が8〜18のケトンとは、炭素数が8〜18の脂肪族ケトン、テルペン系ケトン、セスキテルペン系ケトン、環状ケトン、芳香族ケトンであり、具体的には、α−ダマスコン、β-ダマスコン、δ−ダマスコン、アセチルセドレン、アリルヨノン、カシュメラン、ダマセノン、ジヒドロジャスモン、ヘリオトロピルアセトン、α−ヨノン、β−ヨノン、イソ・イー・スーパー、メチル b−ナフチルケトン、α-メチルヨノン、β-メチルヨノン、メチルヨノン−G、ラズベリーケトン等が挙げられる。
【0021】
炭素数が8〜18のエステルとは、炭素数が8〜18の酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル、吉草酸エステル、安息香酸エステル、フェニル酢酸エステル、ケイ皮酸エステル、サリチル酸エステル、アニス酸エステル、ジヒドロジャスモン酸エステル、メチルフェニルグリシド酸エステル等であり、具体的には、3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル、アセチルイソオイゲノール、アセチルオイゲノール、安息香酸ベンジル、安息香酸イソアミル、安息香酸ゲラニル、安息香酸フェニルエチル、安息香酸リナリル、イソ吉草酸ゲラニル、イソ吉草酸シトロネリル、イソ吉草酸シンナミル、イソ酪酸ゲラニル、イソ酪酸シトロネリル、イソ酪酸フェニルエチル、イソ酪酸リナリル、ケイ皮酸フェニルエチル、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸シンナミル、ケイ皮酸ベンジル、ケイ皮酸メチル、酢酸p−tert−ブチルシクロへキシル、酢酸アニシル、酢酸ゲラニル、酢酸グアイル、酢酸シトロネリル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸シンナミル、酢酸テルピニル、酢酸ノピル、酢酸ベチベリル、サリチル酸イソブチル、サリチル酸cis−3−ヘキセニル、サリチル酸アミル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸シクロヘキシル、ジヒロドジャスモン酸メチル、ジャスモン酸メチル、フェニル酢酸p-クレジル、フェニル酢酸イソアミル、フェニル酢酸イソブチル、フェニル酢酸ゲラニル、フェニル酢酸ベンジル、フェニル酢酸フェニルエチル、プロピオン酸イソボルニル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸シトロネリル、プロピオン酸シンナミル、プロピオン酸テルピニル、プロピオン酸リナリル、プロピオン酸トリシクロデセニル、メチルアトラレート(ベラモス)、酪酸ゲラニル、酪酸シトロネリル、酪酸ベンジル、酪酸リナリル等が挙げられる。
【0022】
炭素数が8〜18のエーテルとは、セドロールメチルエーテル、メチルイソオイゲノール、ルボフィクス、リナロールオキサイド、アンブロキサン等が挙げられる。炭素数が8〜18のラクトンとは、δ−ノナラクトン、γ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、γ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、γ−ドデカラクトン等が挙げられる。炭素数が8〜18の大環状ムスクや多環式ムスクとは、シクロペンタデカノリド、ガラクソライド、セレストリド、6−アセチルヘキサテトラリン、エチレンブラシレート、エチレンドデカンジオエート等が挙げられる。
【0023】
この(b−2)香料成分は、残香性が高いため、消臭剤組成物をスプレーした後、しばらく経過しても消臭効果を維持するのに有用な素材である。特に好ましい香料成分は、3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル、安息香酸ベンジル、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、酢酸p−tert−ブチルシクロへキシル、酢酸アニシル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸シンナミル、酢酸テルピニル、酢酸ノピル、酢酸ベチベリル、サリチル酸アミル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸シクロヘキシル、サリチル酸cis−3−ヘキセニル、ジヒロドジャスモン酸メチル、ジャスモン酸メチル、フェニル酢酸ベンジル、フェニル酢酸フェニルエチル、メチルアトラレート(ベラモス)、シクロペンタデカリド、γ−ウンデカラクトン、シトロネロール、メチルイソオイゲノール、シンナミックアルコール、メチルヨノン−G、ラズベリーケトン、クマリン、セドロールメチルエーテル、アンブロキサンである。
【0024】
本発明における非アルデヒド系香料成分(b)において、〔(b−1)香料成分/(b−2)香料成分〕の質量比は、2/8〜8/2が好ましく、3/7〜7/3がより好ましく、3/7〜5/5がさらに好ましい。このような範囲内にあると、ポリヒドロキシアミン化合物類(a)の優れた消臭性能を維持しつつ、アルデヒド化合物を使わないことによる香り強度の低下や香調のバランスの欠損を補うことができ、また汗臭及びアルデヒド類以外の悪臭物質に対しても高い消臭効果を得ることができる。(b−1)香料成分は、拡散性の高い香料素材であるためスプレー直後の消臭効果を高めるのに有用であり、(b−2)香料成分は、残香性の高い香料素材であるため、消臭剤組成物が乾燥した後の消臭効果を高めるのに有用である。
【0025】
本発明で用いられるアルデヒド系香料成分(c)は特に制限がなく、炭素数6〜15の脂肪族アルデヒド、テルペン系アルデヒド、芳香族アルデヒド、環式脂肪族アルデヒド等が挙げられる。これらの中では、シトラール、シトロネラール、リラール、ヘキシルシンナムアルデヒド、リリアール、オクチルアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、マイラックアルデヒド、シンナムアルデヒド、トリプラール、ベンズアルデヒド、ヘリオナール、ヘリオトロピン、バニリン、α−アミルシンナムアルデヒド、α−ヘキシルシンナムアルデヒド、アニスアルデヒドから選ばれる1種以上が好ましい。
アルデヒド系香料成分(c)には、シトロネラールやリラール、ヘキシルシンナムアルデヒド、リリアールのように、3大フローラル(ローズ、ジャスミン、ミューゲ)系の調合香料を創作する際には欠かせない素材が存在することから、必要に応じて配合してもよいが、本願の(a)成分と反応する可能性もあり、配合量は(a)成分との比率に留意する必要がある。
【0026】
また、全香料成分中のアルコール化合物は20質量%以上、エステル化合物は30質量%以上の組成比にすることが好ましい。香料としてのアルコール化合物は、アルデヒド系香料成分(c)と類似香調の素材が存在するため、代替香料素材として有用である。例えば、リリアールやリラール、α−ヘキシルシンナムアルデヒド、α−アミルシンナムアルデヒド等のジャスミン、ミューゲ調の香料としては、類似香調であるリナロールが有用であり、シトロネラール代替香料素材としては、シトロネロールが有用である。しかし、一般的にアルコール化合物の香料素材は、アルデヒド系香料成分(c)よりも香りの強度が弱い。アルコール化合物の香料素材で補えきれない香りの強度は、エステル化合物を用いることで補うことができる。
【0027】
本発明の消臭剤組成物における、ポリヒドロキシアミン化合物類(a)、非アルデヒド系香料成分(b)、及びアルデヒド系香料成分(c)の含有量は、消臭する悪臭の濃度、使用形態によって適宜調整することができる。
(a)成分は、通常0.001質量%以上、好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.005〜5質量%、特に好ましくは0.01〜5質量%である。
(b)成分は、通常0.001質量%以上、好ましくは0.001〜1質量%、更に好ましくは0.001〜0.1質量%、特に好ましくは0.005〜0.01質量%である。
(a)成分と(b)成分の質量比〔(a)/(b)〕は、消臭性能の観点から、1/3以上、より好ましくは1/2以上、更に好ましくは1/1以上である。
(b)成分と(c)成分の質量比〔(c)/(b)〕は、香料の香調の変化を抑制する 観点から、1/4以下であり、より好ましくは1/5以下、更に好ましくは1/7以下であり、特に好ましくは1/10以下である。
(a)成分と(c)成分の質量比〔(c)/(a)〕は、(a)成分の消臭性能を維持する観点から、1/5以下、より好ましくは1/10以下、更に好ましくは1/20以下である。
本発明の消臭剤組成物において、前記の(a)、(b)、及び(c)成分以外の残部は水とすることができる。また必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、多価アルコール、界面活性剤、他の消臭剤、及び一般に添加される各種の溶剤、油剤、ゲル化剤、硫酸ナトリウムやN,N,N−トリメチルグリシン等の塩、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌・抗菌剤、香料、色素、紫外線吸収剤等の他の成分を添加することができる。
【0028】
多価アルコール類は、固体表面に付着した臭気成分の揮発を抑制し、消臭成分であるポリヒドロキシアミン化合物類(a)を安定に分散させ、臭気成分との接触を向上させて、消臭性能を更に高めることができる。
用いることができる多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらの中では、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。
用いられる多価アルコール類の含有量は、消臭する悪臭の濃度、使用形態によっても異なるが、通常0.001質量%以上、好ましくは0.001〜30質量%、更に好ましくは0.005〜10質量%である。
【0029】
界面活性剤としては特に制限はなく、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤の中から選ばれる1種種以上が挙げられる。これらの中では、非イオン性界面活性剤が好ましく、炭素数8〜18の第1級又は第2級アルコールにエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを平均6〜18モル付加したポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテルが特に好ましい。
溶剤としては、水、エタノール、イソプロパノール等の低級(炭素数3〜4)アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類(炭素数2〜12)、エチレングリコールやプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ジエチレングリコールやジプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノール性化合物のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0030】
本発明の消臭剤組成物のpHは6.0〜9.5に調整することが好ましい。pH6.0以上で汗臭やアルデヒド類に対する効果が優れ、またpH9.5以下でアミン類等に対する効果が優れる。
汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭の全てに対する効果、及び皮膚刺激低減の観点から、pHは6.5〜9.5が好ましく、6.8〜9.0が更に好ましい。
本発明の消臭剤組成物のpHは、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することにより調整することができる。
【0031】
本発明の消臭剤組成物の使用形態に特に制限はなく、例えば、液状、ゲル状、粉状、粒状等の固体状とすることができる。液状の場合には、特にスプレー、ローション等として、空間や、布地、衣類、カーペット等の繊維製品、人体、毛髪、ペット等に用いることができる。本発明の消臭剤組成物は、特に水系消臭剤組成物としてミストタイプのスプレー容器に充填し、一回の噴霧量を0.1〜1mlに調整したものが好ましい。使用するスプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧あるいは蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器等の公知のスプレー容器を用いることができる。
ゲル状、固体状の場合には、人体に部分的に使用するのに適している。また、例えば、紙や不織布等に浸漬、噴霧させて空気清浄器のフィルターとして用いる等、据え置き型として使用することもできる。
【実施例】
【0032】
実施例1〜4及び比較例1〜2
(1)消臭剤組成物の調製
表1に示す配合処方の消臭剤組成物を調製した。なお、非イオン性界面活性剤としては、炭素数12の直鎖第1級アルコールにエチレンオキシドを平均8モル付加させたものを使用し、抗菌剤としてはプロキセルBDN(アビシア株式会社製、10質量%水溶液)を使用し、消臭剤組成物は、1モル/Lの塩酸又は1/10モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH8.0に調整した。
【0033】
(2)消臭評価
実際に着用した衣類には、汗臭や皮脂が酸化して発生したアルデヒド臭の他に、皮脂臭又はその他の汚れのニオイが付着しており、複合臭である。そこで、次に示す消臭評価を行った。
<消臭対象物の調製>
30歳代の男性3人に、市販綿100%長ズボンを通勤時に着用(夏季、1日おきに5日間)してもらった後、回収した。太もも接触部位(前面)から、左3枚、右3枚ずつ切断(10cm×10cm)し、試験片とした。なお、同一披験者から得た試験片は、切断部位(左右、上下)による付着臭気や汚れの違いはないことを確認した。
<消臭方法>
上記方法にて得た試験片に、表1に示す配合処方の消臭剤組成物をスプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて6回スプレーした。
<消臭性能評価>
同一披験者から得た試験片計6枚を使用して実施例と比較例の評価を行った。また、披験者3名より試験片を作成したので、実施例、比較例につき、各3回の評価を行った。30歳代の男性5人及び女性5人の計10人のパネラーに、消臭剤組成物をスプレーした直後と、3時間後の試験片の臭いを嗅いでもらい、不快臭に対する臭気強度を下記の6段階で評価し、その平均値を求めた。
0:不快なニオイを全く感じない
1:不快なニオイをわずかに感じる強さ
2:不快なニオイを容易に感じる弱い臭い
3:不快なニオイを明らかに感じる臭い
4:強い臭い
5:耐えられないほど強い臭い
評価は平均値2未満が好ましい。平均値2以上では、消臭効果が不十分であり、製品としてふさわしくない。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1中の記号の(a)成分は下記のとおりであり、(b)成分は表2のとおりである。
(a)−1:2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール
(a)−2:2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール
(a)−3:2−アミノ−1,3−プロパンジオール
【0036】
【表2】

【0037】
<評価結果>
表1から、比較例1及び2の消臭剤組成物は、着用ズボンから得られた試験片のニオイ(実使用系複合臭気)に対しての消臭性能が不十分であった。これに対して、実施例1〜5の消臭剤組成物は、この実使用系複合臭気に対しても消臭性能が良好であった。これらのことから、ポリヒドロキシアミン化合物類(a)及びアルデヒド化合物を含まない非アルデヒド系香料成分(b)を配合することによって、複合臭気に対して高い消臭効果が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の消臭剤組成物は、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭を効果的に消臭でき、水系消臭剤の調製も容易であり、人体に触れても安全である。このため、空間や、布地、衣類、カーペット等の繊維製品等の表面に付着した複合臭の消臭剤組成物として、好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、及び非アルデヒド系香料成分(b)を含有し、該(a)成分と該(b)成分の質量比〔(a)/(b)〕が1/3以上である消臭剤組成物。
【化1】

(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、非アルデヒド系香料成分(b)、及びアルデヒド系香料成分(c)を含有し、該(b)成分と該(c)成分の質量比〔(c)/(b)〕が1/4以下である消臭剤組成物。
【請求項3】
(c)成分と(a)成分の質量比〔(c)/(a)〕が1/5以下である請求項2に記載の消臭剤組成物。
【請求項4】
一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物が、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、及び2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオールから選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の消臭剤組成物。
【請求項5】
非アルデヒド系香料成分(b)が、(b−1)20℃における蒸気圧が5.33Pa以上で、炭素数が6〜12の炭化水素、アルコール、ケトン、エステル、及びエーテルから選ばれる1種以上の香料成分、及び(b−2)20℃における蒸気圧が5.33Pa未満で、炭素数が8〜18のアルコール、ケトン、エステル、エーテル、ラクトン、大環状ムスク、及び多環式ムスクから選ばれる1種以上の香料成分を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の消臭剤組成物。
【請求項6】
(b−1)香料成分と(b−2)香料成分の質量比〔(b−1)香料成分/(b−2)香料成分〕が2/8〜8/2である請求項5に記載の消臭剤組成物。
【請求項7】
前記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)の含有量が0.001〜10質量%であり、非アルデヒド系香料成分(b)の含有量が0.001〜1質量%である、請求項1〜6のいずれかに記載の消臭剤組成物。
【請求項8】
消臭剤組成物が水系組成物である、請求項1〜7のいずれかに記載の消臭剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の消臭剤組成物を対象物に付着させ、対象物の臭いを低減させる消臭方法。

【公開番号】特開2007−300963(P2007−300963A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129389(P2006−129389)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】