説明

消臭剤

【課題】臭気成分の種類の選択性が少なく、即時効果と効果の持続性を有する消臭剤を提供することにある。
【解決手段】一般式(1)で示される構成単位を必須構成単位とする両性高分子(A)を含有してなる消臭剤である。
【化6】


式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3及びR5は炭素数1〜6のアルキル基、R4は炭素数1〜3のアルキレン基、Qは酸素原子又は−NH−、Z-は−COO-又は−SO3-である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消臭剤に関する。詳しくは両性高分子を含有する消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境の変化に伴い、生活環境下で発生する臭気を迅速にしかも持続的に消臭することが望まれている。消臭方法は、物理的消臭、化学的消臭、感覚的消臭(マスキング)等に大別される。物理的消臭に使用される消臭剤としては活性炭が優れているが、微粒化することが困難であったり、繊維に固定して使用する場合には、繊維の色を悪くする等の問題や、強固な固定が難しく、洗濯などの作業により性能が著しく低下するといった持続性能がないという問題があった。また、感覚的消臭方法における香料などによる消臭では、人の嗜好性によってそのもの自体が悪臭になることや、嗅覚疲労を起こすことからその用途は限られたものになるという問題点があった。化学的消臭には、種々の方法が提案され、中でも化学中和反応を利用した方法が多く提案されている。使用される化合物のうち高分子化合物としてはアニオン性ポリマー(特許文献1)などが提案されているが、アンモニアなどのカチオン性悪臭物質の消臭には効果があるが、酸性悪臭物質には効果がなかった。これに対応してアニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーの併用が提案されている(特許文献2)が、アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーはコンプレックスを形成しやすいために消臭に寄与する官能基が低減し、消臭効果が低かった。さらに、悪臭物質を光分解するための触媒としての酸化チタンを、1分子中にアニオン性基とカチオン性基を有し、特定の光線透過率を有する両性ポリマーで被覆することが提案されており(特許文献3)、両性ポリマー自体にも消臭効果があると記載されているが、酸化チタン触媒による消臭作用は即時効果が少なく、またカルボキシル基含有単量体とアミノ基含有単量体からなるこれらの両性ポリマー自体の消臭効果も大きくはなく、かつ消臭効果の持続性も少なかった。さらには、ゴムの臭気成分の消臭に、ベタイン化合物と、カルボキシル基含有単量体とアミノ基含有単量体からなる両性ポリマーを使用することが提案されている(特許文献4)が、これらはゴムの臭気成分には一定の効果があるものの、その他の臭気成分、例えば、愛玩動物、トイレ、台所、タバコ、オムツ及び生ゴミなどの多様な臭気成分の消臭には効果が無かった。
【0003】
【特許文献−1】特開平11−047247
【特許文献−2】特開2000−080569
【特許文献−3】特開2003−213564
【特許文献−4】特開2005−144272
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、臭気成分の種類の選択性が少なく、即時効果と効果の持続性を有する消臭剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、アクリロイル基のα位にヒドロキシアルキル基を有する両性単位を有する両性高分子を使用することによって初めて、臭気成分の種類の選択性が少なく、即時効果と効果の持続性を有する消臭剤を見い出し本発明に到達した。すなわち本発明は、一般式(1)で示される構成単位を必須構成単位とする両性高分子(A)を含有してなる消臭剤である。
【0006】
【化2】

【0007】
式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3及びR5は炭素数1〜6のアルキル基、R4は炭素数1〜3のアルキレン基、Qは酸素原子又は−NH−、Z-は−COO-又は−SO3-である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の消臭剤は、臭いの種類の選択性が少なく、効果の持続性を有し、かつ、即時効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における両性高分子(A)の必須構成単位を示す一般式(1)について説明する。
【0010】
一般式(1)において、R1は水素原子、メチル基又はエチル基であり、好ましいのは水素原子である。またR2としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基及びヘキシレン基などが挙げられるが、好ましいのはエチレン基である。R3及びR5としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n−プロピル基及びイソプロピル基)、ブチル基(n−ブチル基、イソブチル基及びsec−ブチル基など)、n−ヘキシル基などが挙げられ、好ましいのはメチル基及びエチル基である。R4としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基が挙げられ、好ましいのはメチレン基である。Qのうち好ましいのは酸素原子であり、Z-のうち好ましいのは−COO-である。上記の好ましい範囲であると原料が特に入手し易く、また収率も向上しやすい。
【0011】
本発明の両性高分子(A)は、両性単量体を重合する方法又は高分子反応による方法によって製造できる。
【0012】
両性単量体を重合する方法における両性単量体としては一般式(2)で示される両性単量体(a)が挙げられる。
【0013】
【化3】

【0014】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、Q及びZは一般式(1)における基と同様である。
【0015】
一般式(2)で示される両性単量体(a)の具体例としては、ジメチルアミノエチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレートのカルボキシベタイン化物、及びジエチルアミノエチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレートのカルボキシベタイン化物などが挙げられる。
【0016】
前記両性単量体(a)のうち、一般式(2)におけるQが酸素原子である単量体の製造方法としては、以下のように、α−ヒドロキシアルキル化に引き続いてベタイン化する方法が挙げられる。
【0017】
(1)ジアルキルアミノアルキルアクリレートのα−ヒドロキシアルキル化反応;
α−ヒドロキシメチルアクリレート化合物の製造方法に関しては、その収率の向上や精製方法も含めて多くの特許文献に提案されている(例えば、特開昭61−134353号公報、特開平05−17375号公報、特開平07−285906号公報、特開平08−301817号公報及び特開平08−183758号公報など)。これらのうち特にジアルキルアミノアルキルアクリレートのα−ヒドロキシアルキル化反応に関しては、例えば、特開昭61−134353号公報に記載されている。具体的には、ジアルキルアミノアルキルアクリレートとアルデヒドを三級アミンの存在下に反応させてジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートを製造する。ジアルキルアミノアルキルアクリレートとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート及びジエチルアミノエチルアクリレートなどが挙げられる。アルデヒドとしてホルムアルデヒドを使用した場合はα−(ヒドロキシメチル)基、即ち前記一般式(2)におけるR1が水素原子のものが生成し、アルデヒドとしてアセトアルデヒドを使用した場合はα−(1−ヒドロキシエチル)基、即ちR1がメチル基のものが生成する。三級アミンとしては、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]−オクタン(以下において、DABCOと略記することがある)及びトリエチルアミンなどが挙げられる。ジアルキルアミノアルキルアクリレート/アルデヒドの仕込みモル比は、好ましくは1/0.9〜1/1.2、さらに好ましくは1/0.95〜1/1.05である。反応温度は、好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは20〜40℃であり、反応時間は通常10〜100時間、好ましくは20〜80時間である。得られた組成生物を中和・溶剤抽出などを行って精製し目的物を得ることができる。
【0018】
(2)両性化反応(ベタイン化反応);
ジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートと一般式(3)で示される化合物(B)とを反応させて両性化する。
X−R5−Z-+ (3)
式中、R5及びZは一般式(1)におけると同様であり、好ましいものも同様である。
Xはハロゲン原子、Mはカチオンである。Xで示されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。Mで示されるカチオンとしては、アルカリ金属原子(ナトリウム、カリウム及びリチウムなど)カチオン、アルカリ土類金属原子(カルシウム及びマグネシウムなど)カチオン、アンモニウムカチオン、有機アミン(モノメチルアミン、モノエチルアミン及びモノブチルアミンなどのモノアルキルアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジブチルアミンなどのジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン及びトリブチルアミンなどのトリアルキルアミン;シクロヘキシルアミンなどの環状アミン;並びに、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンなどのアルカノールアミン)カチオン、及び第4級アンモニウムカチオン(テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン及びトリメチルベンジルアンモニウムカチオンなど)などが挙げられる。一般式(4)で示される化合物(B)の具体例としては、モノクロル酢酸ナトリウム、モノクロル酢酸カリウム、モノクロル酢酸モノエタノールアミン塩などが挙げられる。両性化反応における仕込みモル比、温度、時間及び精製方法などは、通常の方法でよく、例えば、ジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートと一般式(4)で示される化合物との仕込みモル比(アクリレート/化合物)は、通常0.8/1〜1/1.3、好ましくは1/1〜1/1.2である。なお、反応中の重合を防止するために重合禁止剤(例えば、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン及びフェノチアジンなど)を、アクリレートの重量に対して0.1〜3重量%添加することが好ましい。 溶剤としては、水、親水性有機溶剤(メタノール、エタノール及びイソプロパノールなどのアルコール類、アセトン及びメチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類)、又は水と親水性有機溶剤との混合溶剤が使用できる。溶剤として水の使用割合が多いほど両性化反応が進行しやすい。一方、水の使用量が少なく親水性有機溶剤の使用割合が多い(例えば90%以上)ほど副生する塩が析出し易く、副生塩の除去がし易いという利点がある。従って、工程上のコスト、及び得られる両性化物の使用目的を考慮して、溶剤の使用量や割合は適宜選択できる。反応温度は、通常は50〜100℃、好ましくは60〜90℃であり、反応時間は通常4〜30時間、好ましくは5〜20時間である。精製方法としては、副生塩が析出している場合は濾過、副生塩が溶解している場合は透析やイオン交換などが挙げられる。なお、反応条件、特に反応系の水分の量やpHによっては、副生物としてジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートのヒドロキシル基が化合物(B)と反応してできるカルボキシアルキルエーテル化物(例えば、ジアルキルアミノアルキルα−(カルボキシメチルオキシメチル)アクリレート及びα−(カルボキシメチルオキシメチル)アクリロイルオキシエチルジメチルベタインなど)が生成することもあるが、これらの副生物は一般式(2)で示される単量体の重量に対して20重量%未満であれば、本願発明の効果に大きな影響を与えることがない。
【0019】
両性単量体(a)のうち、一般式(2)におけるQが−NH−である単量体の製造方法としては、原料としての前記ジアルキルアミノアルキルアクリレートをジアルキルアミノアルキルアクリルアミドに変更することのみで製造する方法が挙げられる。
【0020】
両性単量体(a)のうち、一般式(2)におけるR4がエチレン基でZ-がCOO-である単量体の製造は、ジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートとβ−プロピオラクトンとの反応により製造でき、R4がプロピレン基でZ-がSO3-である単量体の製造は、ジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートと1,3−プロパンサルトンとの反応で製造できる(類似の反応が特公昭55−11128号公報に記載されている)。
【0021】
本発明における両性高分子(A)は、前記の両性単量体(a)のみを重合した単独重合体であってもよいが、その他の単量体との共重合体であってもよい。その他の単量体としては、例えば、下記の(b1)親水性ノニオン性ビニル単量体、(b2)疎水性ノニオン性ビニル単量体、(b3)アニオン性ビニル単量体、(b4)カチオン性ビニル単量体、及び(b5)前記の両性単量体以外の両性単量体が挙げられる。
【0022】
(b1)親水性ノニオン性ビニル単量体
(b11)アミド基含有ビニル単量体
非置換又はモノアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド及びN−エチル(メタ)アクリルアミドなど]、ジアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなど]、及びヒドロキシアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドなど]が挙げられる。
(b12)ヒドロキシル基含有ビニル系単量体
ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど]及び炭素数3〜12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール及びイソクロチルアルコールなど]が挙げられる。
【0023】
(b13)ポリアルキレングリコール鎖含有ビニル系単量体
ポリアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜50)又はそのアルキル(炭素数1〜6)エーテルの(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(分子量100〜300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量130〜500)モノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(分子量110〜310)(メタ)アクリレート及びラウリルアルコールEO付加物(2〜30モル)(メタ)アクリレート等]が挙げられる。
【0024】
(b2)疎水性ノニオン性ビニル単量体
炭素数2〜12の飽和脂肪酸のビニルエステル[酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニルなど]、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルケトン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートなど]、マレイン酸ジアルキルエステル[ジメチルマレエート及びジエチルマレエートなど]、グルシジル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、アルケン[エチレン、プロピレン、イソブチレン、ジイソブチレン及びドデセンなど]、アルカジエン[ブタジエン及びイソプレンなど]、脂環基含有ビニル単量体[シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン及びビニルシクロヘキセンなど]、スチレン及び(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0025】
(b3)アニオン性単量体;
(メタ)アクリル酸、α−メチル(メタ)アクリル酸、クロトン酸及び桂皮酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸などの不飽和ジカルボン酸;マレイン酸モノアルキルエステルなどの不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル;ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びアルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸エステルなどのスルホン酸基含有モノマー;(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートの硫酸化物などの硫酸エステル基含有ビニルモノマー;並びに、これらの塩[アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)塩、アンモニウム塩、アミン(アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルアミン等)塩、第4級アンモニウム塩等]が挙げられる。
【0026】
(b4)カチオン性単量体;
アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、及びこれらのモノアルキル(炭素数1〜6)置換体並びにモノ(メタ)アリルアミンなどの1級もしくは2級アミノ基含有モノマー;ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなど]、並びにモルホリノエチル(メタ)アクリレートなどの3級アミノ基含有モノマー;塩化トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及び塩化ジメチルジアリルなどの3級アミノ基含有モノマーの第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0027】
(b5)(a)以外の両性単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのカルボキシベタイン化物、及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのカルボキシベタイン化物などが挙げられる。
【0028】
他のビニル単量体(b)のうち、好ましいのは、得られる両性高分子の水溶性の観点から、(b1)、(b3)及び(b5)、特に(b1)である。
【0029】
両性単量体(a)を重合して得られる両性高分子における両性単量体(a)のモル%は、全単量体のうちの10〜100モル%、好ましくは10〜95モル%である。10モル%未満では、得られる両性高分子は水に難溶となることがあり、また、消臭効果が弱い。
【0030】
両性単量体(a)を必須構成単量体として重合する方法としては、通常のラジカル重合が挙げられる。例えば前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下にラジカル重合する方法が挙げられる。
【0031】
溶剤としては、例えば、水、親水性有機溶媒(エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール及び2−ブタノールなどのアルコール系溶剤、並びにメチルエチルケトンなどのケトン系溶剤など)が使用できる。好ましいのは水と親水性有機溶媒の混合溶媒である。
【0032】
重合触媒としては;アゾ系触媒[例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビスイソブチレートなど];過酸化物系触媒[例えば、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエートなど];及び過硫酸塩系触媒[例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウムなど];が挙げられる。連鎖移動剤としてはアルキルメルカプタンなどを使用することもできる。重合温度としては、50〜120℃、好ましくは60〜110℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合または懸濁重合により得ることもできる。さらに、共重合体の重合様式としては、ランダム付加重合または交互共重合のいずれでもよく、また、グラフト共重合またはブロック共重合のいずれでもよい。
【0033】
両性重合体(A)の製造方法のうちの高分子反応による方法は、一般式(4)で示される構成単位を有するカチオン性重合体(A0)と、前記化合物(B)、β−プロピオラクトン又は1,3−プロパンサルトンとを反応させる方法である。
【0034】
【化4】

【0035】
式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3及びR5は炭素数1〜6のアルキル基、Qは酸素原子又は−NH−である。
【0036】
カチオン性重合体(A0)は、前述のカチオン性単量体であるジアルキルアミノアルキルアクリレートのα−ヒドロキシアルキル化物(a0)を必須構成単量体として重合することにより得られる。α−ヒドロキシアルキル化物(a0)の具体例としては、ジメチルアミノエチル(α−ヒドロキシアルキル)アクリレート、ジエチルアミノエチル(α−ヒドロキシアルキル)アクリレート、及びジメチルアミノエチル(α−ヒドロキシアルキル)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0037】
カチオン性重合体(A0)は、(a0)のみの単独重合体であってもよいが、前記他の単量体(b)との共重合体であってもよい。
【0038】
カチオン性高分子(A0)におけるカチオン性単量体(a0)のモル%は、全単量体のうちの10〜100モル%、好ましくは10〜95モル%である。10モル%未満では、両性化して得られる両性高分子が水に難溶となることがあり、また、消臭効果が弱い。
【0039】
カチオン性単量体(a0)を必須構成単量体として重合する方法としては、前述と同様の通常のラジカル重合が挙げられる。
【0040】
得られたカチオン性重合体(A0)を、さらに前記一般式(3)で表される化合物(B)と反応させる反応条件は、前述の両性化反応の反応条件と同様である。
【0041】
両性高分子(A)の数平均分子量(以下、Mnと略記する)は好ましくは3,000〜10,000,000である。(A)は高分子であることによって、アニオン性基とカチオン性基による臭気成分の単なる中和作用のみでなく、相乗効果を発揮し、消臭剤としての即時効果と効果の持続性、さらには選択性の少なさを有するものと推定される。(A)のMnが3,000未満では、相乗効果が発揮しにくく、10,000,000を越えると、(A)の凝集性が強くなって、(A)中のアニオン性基とカチオン性基が相互作用し易くなるので、消臭に寄与する基が少なくなり、消臭効果が低減する。上記の観点から特に好ましいMnは、4,000〜5,000,000である。本発明におけるMn32,000〜1,000,000の場合はゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で、Mnが1,000,000〜5,000,000の場合は固有粘度により測定されたものである。また、両性高分子(A)は、非架橋型高分子であることが好ましい。両性高分子(A)を構成する単量体に3官能以上の単量体を使用すると、水に不溶性のゲル状架橋型高分子が得られるが、この場合は、消臭成分と接触できる樹脂の表面積が少なくなるので、消臭効果が低減する。
【0042】
本発明の消臭剤は、上記の(A)以外に、必要によりその他の成分(C)を含有してもよい。その他の成分のうち、さらに消臭効果を相乗的に増強できる成分として、両性界面活性剤(C1)及びカチオン性界面活性剤(C2)からなる群から選ばれる1種以上の添加剤が挙げられる。また、粉末化剤、固形化剤、消泡剤、キレート化剤,PH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、漂白剤、香料および色素からなる群から選ばれる1種以上(C3)を含有してもよい。
【0043】
両性界面活性剤(C1)としては、アミノ酸型両性界面活性剤[高級アルキルジアミノエチルグリシン、高級アルキルアミン(炭素数12〜18)のプロピオン酸(塩)など]、ベタイン型両性界面活性剤[アルキル(炭素数12〜18)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数12〜18)ジヒドロキシエチルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインなど]、硫酸エステル塩型両性界面活性剤[高級アルキル(炭素数8〜18)アミンの硫酸エステル(塩)、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステル(塩)など]、スルホン酸塩型両性界面活性剤[ペンタデシルスルフォタウリン、イミダゾリンスルホン酸(塩)など]、リン酸エステル塩型両性界面活性剤[グリセリン高級脂肪酸(炭素数8〜22)エステル化物のリン酸エステルアミン塩]などが挙げられる。
【0044】
カチオン性界面活性剤(C2)としては、一般式(5)で示されるカチオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0045】
【化5】

【0046】
式中、R6、R7及びR8はそれぞれ同一もしくは異なる炭素数1〜24、好ましくは炭素
数1〜18のアルキル基又は炭素数2〜24、好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基である。R9は炭素数6〜24、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基もしくはアル
ケニル基、又は炭素数7〜24のアリールアルキル基もしくはアリールアルケニル基である。fは1〜10、好ましくは1〜3の整数、Xf-はf価の対イオンである。一般式(5)で示されるカチオン性界面活性剤の具体例としては、特開2002−054072号公報に記載の第4級アンモニウム塩型界面活性剤などが挙げられる。
【0047】
粉末化剤としては、可溶化デンプン、シクロデキストリン、カルボキシメチルセルロース(数平均分子量(以下Mnと略記)5,000〜100,000)など;固形化剤としては、ポリエチレングリコール(Mn1,000〜50,000)、ロウ類(カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリンなど)、炭素数15以上の炭化水素(パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックスなど)、炭素数12〜22の高級脂肪酸(ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸など)、炭素数12〜22の高級アルコール(セチルアルコール、ステアリルアルコールなど)など;消泡剤としては、シリコーン系(ジメチルポリシロキサンなど)、鉱物油(スピンドル油、ケロシンなど)、炭素数12〜22の金属石鹸(ステアリン酸カルシウムなど)など;キレート化剤としては、炭素数6〜12のアミノカルボン酸(たとえば、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸など)、多価カルボン酸〔マレイン酸、ポリアクリル酸(Mn1,000〜10,000)、イソアミレン−マレイン酸共重合体(Mn1,000〜10,000)など〕、炭素数3〜10のヒドロキシカルボン酸(クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸など)、縮合リン酸(トリポリリン酸、トリメタリン酸など)およびこれらのアルカリ金属、アンモニウム塩など;PH調整剤としては苛性アルカリ(苛性ソーダなど)アミン(モノ、ジおよびトリエタノールアミンなど)、有機酸(クエン酸など)、無機酸(リン酸など)など;酸化防止剤としては、フェノール系[2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)など];硫黄系[ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート(DLTDP)、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート(DSTDP)など];リン系[トリフェニルホスファイト(TPP)、トリイソデシルホスファイト(TDP)など];アミン系[オクチル化ジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノール、N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミンなど]など;紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系(2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなど)、サリチレート系(フェニルサリチレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなど)、ベンゾトリアゾール系[(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなど]、アクリル系[エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル−2−カルボメトキシ−3−(パラメトキシベンジル)アクリレートなど]など;防腐剤としては安息香酸、パラオキシ安息香酸エステル、ソルビン酸など;漂白剤としては次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素水、過炭酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウムなど;香料としては天然香料(バラ油、ジャスミン油、ラベンダー油、レモン油、ムスク油など)、合成香料(リモネン、ファルネソール、シトラール、ローズオキサイドなど)など;および色素としては青色1号、黄色4号、赤色2号などが挙げられる。
【0048】
その他の成分(C)のうちの(C1)〜(C3)の含有量は、(A)の重量100重量部に対して、好ましくはそれぞれ30重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下である。その他の成分(C)のうちの粉末化剤、固形化剤、消泡剤、キレート化剤,PH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、漂白剤、香料および色素の含有量は、(A)の重量100重量部に対して、好ましくはそれぞれ10重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下である。
【0049】
本発明の消臭剤における両性高分子(A)、その他の成分(C)のそれぞれの含有量は、消臭の即時効果、消臭効果の持続性及び臭気の種類の選択性の観点から、(A)が好ましくは12〜100重量%、さらに好ましくは30〜90重量%であり、(C)が好ましくは0〜88重量%、さらに好ましくは10〜70重量%である。
【0050】
本発明の消臭剤は、(A)、必要により(C)を、単に混合することに得られるが、いずれかの成分が固状である場合には、必要により30〜60℃に加熱して混合してもよく、必要によりさらに水を加えて溶解しやすくしてもよい。水を加える場合は、消臭剤の用途にも依るが、消臭剤中の固形分(本発明において、「固形分」とは水以外の成分のことをいう)の濃度が少なくとも0.5重量%になるような水の量にすることが好ましい。
【0051】
本発明の消臭剤は、愛玩動物の消臭;トイレ、流し、浴室などの消臭;人体および手指の消臭;木材の消臭;繊維(衣類等)の消臭;リビングルーム、寝室、台所、玄関、サニタリー用品、タバコ、オムツ、生ゴミ、冷蔵庫、靴、下駄箱、ゴミ箱の消臭など;空調システムの排気ダクトなど;あらゆる多種な悪臭ガスを同時に除去し、かつ迅速に、長期的に効果を発揮する。
【0052】
本発明の消臭剤の使用方法は、消臭剤水溶液又は分散液自体を消臭剤として使用する方法、消臭剤水溶液又は分散液を基材に塗布又は含浸させて消臭剤を担持した成型体として使用する方法、及び本発明の消臭剤自体を溶融して型枠で成型した成型体として使用する方法などが挙げられる。
【0053】
消臭剤水溶液又は分散液自体を消臭剤として使用する場合は、例えば、消臭剤水溶液を、掌、タオル又はブラシなどにとり、動物や人体などを洗浄した後、水で洗い流すことにより、消臭と洗浄が同時にできる。なお、動物の消臭に使用する場合はカチオン性界面活性剤(C2)が動物の毛に吸着するため、消臭性が持続すると同時に、毛に柔軟性と帯電防止性も付与することができる。また、木材の消臭用としては消臭剤水溶液を木材に噴霧し、含浸させて処理する。繊維(衣類等)の消臭用としては、消臭剤水溶液を洗濯機などの洗浄機で通常の洗剤と同様に用いて、洗浄と濯ぎをすることにより、消臭と洗浄が同時にできるという効果を奏する。さらに、カチオン性界面活性剤(C2)が繊維(製品)に吸着するため、消臭性が持続し、悪臭発生を防ぐことができ、繊維(製品)に柔軟性と帯電防止性も付与することができる。また、上記の用途以外にも、さらにリビングルーム、寝室、台所、玄関、サニタリー用品、タバコ、オムツ、生ゴミ、冷蔵庫、靴、下駄箱、ゴミ箱などに対して消臭剤水溶液をスプレーすることにより消臭することができる。
【0054】
消臭剤水溶液又は分散液を基材に塗布又は含浸させて消臭剤を担持した成型体として使用する場合は、例えば、以下のように使用される。
【0055】
基材としては、不織布などが挙げられる。不織布としては、羊毛、絹糸、リネンおよび綿糸のような天然繊維、レイヨンアセテートのような再生繊維およびポリエステル、ポリアミド、ビニロン、ポリアクリロニトリルポリエチレン、ポリプロピレン、スパンデックスなどの合成繊維が挙げられる。消臭剤を担持した成型体としては、例えば、不織布の表面に消臭剤水溶液をスプレー散布又は不織布に消臭剤水溶液を含浸させて必要により乾燥したシート状の形態のもの、及び得られた処理済み不織布の片面又は両面に不織布をさらに積層したシート状のものなどが挙げられる。また、基材として樹脂フィルムなどのフィルムを使用した場合は、フィルム状となる。これらのシート状又はフィルム状の消臭成型体は、特に愛玩動物の消臭用として利用しやすい。例えば、犬、猫、うさぎ、小鳥、ハムスターなどの小動物の飼育用のペットシートとして使用することにより、糞や尿の悪臭物質の消臭に効果がある。
【0056】
本発明の消臭剤自体を溶融して型枠で成型した成型体として使用する場合は、本発明の消臭剤(少量の水、例えば20重量%以下の水を含有していてもよい)を融点以上の温度で加熱して型枠に流し込み、冷却してブロック状などの形状に成型し、必要により樹脂製などの容器または不織布などの袋に入れて、トイレ、流し又は浴室などの排水口内もしくは排水口上部に置いておくことにより、消臭剤が流水によって徐々に溶解し、配管の消臭ができる。
【0057】
[実施例]
以下、実施例及び製造例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
<両性単量体(a−1)の製造例>
[ジメチルアミノエチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレートのカルボキシベタイン化物の製造];
加熱撹拌装置および冷却器を備えたガラス製反応容器に、ジメチルアミノエチルアクリレート(以下、「DMAEA」と略記)143部(1.0モル部;興人株式会社製)、37%ホルムアルデヒド水溶液(メタノール含有量7%)78.4部(1.0モル部)及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(以下、DABCOと略記)7部(63ミリモル部;サンアプロ株式会社製)を仕込み、均一混合した後、28℃で48時間激しく攪拌して反応させた。この反応液に1N塩酸を加えてpHを5.8に調整した後、ジクロルメタン100mLで3回抽出し、有機相を飽和食塩水100mLで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、揮発成分を減圧で除去した。132部のジメチルアミノエチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレート(以下、「OH−DMAEA」と略記)(純度98%、収率78%)が得られた。その後、加熱撹拌装置及び環流冷却器を備えたガラス製反応容器に、溶媒としてのイソプロピルアルコール300部、上記のOH−DMAEA132部(0.76モル部)、モノクロル酢酸カリウム126部(0.84モル部)及びメトキシハイドロキノン0.5部を仕込み、空気吹き込み下に80℃で5時間環流加熱して両性化反応を行った。反応終了後、反応系を室温まで冷却し、副生する塩化カリウムを直径8.5cmの5Cの濾紙を用いて加圧濾過器で1kg/cm2の圧力で濾過を行ない、イソプロピルアルコールで濃度を50%に調整し、OH−DMAEAのベタイン化物からなる両性単量体(a−1)の50%イソプロピルアルコール溶液を得た(収率95%、両性化率96%、塩素含量0.2%)。
【0059】
製造例1
加熱冷却装置、攪拌機、温度計、2つの滴下ロートを装着した反応フラスコに、水76部及びイソプロピルアルコール180部を仕込み、一つの滴下ロートに両性単量体(a−1)の50%イソプロピルアルコール溶液157部(0.34モル部)、アクリルアミド(以下、AAmと略記)28.4部(0.4モル部)、ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと略記)13.0部(0.10モル部)を仕込んで均一に攪拌し単量体溶液を調製した。また他の滴下ロートに開始剤溶液として5%過硫酸ナトリウム水溶液72部を仕込んだ。系内を窒素気流下に80℃に加熱し、単量体溶液及び開始剤溶液を4時間かけて等速度で滴下した。更に窒素気流下2時間同温度に保持して重合反応を行なった。
80℃以下で減圧下にイソプロピルアルコールと水の混合物を、系内のイソプロピルアルコールが無くなるまで留去し、全量が800部になるように水を加えて有効成分濃度を15重量%に調整し、(a−1)/AAm/HEMA=40/48/12モル%からなる両性高分子(A1)の有効成分15重量%水溶液を得た。Mnは9,000であった。
【0060】
製造例2及び3
単量体として表1に記載の単量体を表1の量を仕込んだこと以外は製造例1と同様にして、両性高分子(A2)〜(A3)を製造した。
【0061】
製造例4
加熱冷却装置、攪拌機、温度計、2つの滴下ロートを装着した反応フラスコに、水76部及びイソプロピルアルコール180部を仕込み、一つの滴下ロートに製造例1の中間生成物であるOH−DMAEA90部(0.45モル部)、AAm28.4部(0.4モル部)、HEMA13.0部(0.10モル部)を仕込んで均一に攪拌し単量体溶液を調製した。また他の滴下ロートに開始剤溶液として5%過硫酸ナトリウム水溶液72部を仕込んだ。系内を窒素気流下に80℃に加熱し、単量体溶液及び開始剤溶液を4時間かけて等速度で滴下した。更に窒素気流下2時間同温度に保持して重合反応を行ない、カチオン性重合体(A0−1)を得た。
【0062】
次に、(A0−1)で使用したOH−DMAEAと等モルのモノクロロ酢酸カリウム40%イソプロピルアルコール懸濁液を滴下ロートから反応フラスコ内に0.5時間で滴下し、更に窒素気流下80℃で還流加熱して12時間両性化反応を行なった。その後、80℃以下で減圧下にイソプロピルアルコールと水の混合物を、系内のイソプロピルアルコールが無くなるまで留去し、全量が1,047部になるように水を加えて有効成分濃度を15重量%に調整し、OH−DMAEAのベタイン化物/AAm/HEMA=47/42/11モル%からなるカチオン性高分子の両性化物(A4)の有効成分15重量%水溶液を得た。Mnは8,000であった。
【0063】
製造例5及び6
単量体として表1に記載の単量体を表1の量を仕込んだこと以外は製造例4と同様にして、両性高分子(A5)〜(A6)を製造した。
【0064】
比較製造例1
単量体として表1に記載の単量体を表1の量を仕込んだこと以外は製造例1と同様にして、高分子(X1)を製造した。
比較製造例2
単量体として表1に記載の単量体を表1の量を仕込んだこと以外は製造例4と同様にして、高分子(X2)を製造した。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例1〜15、比較例1〜6
(A1)〜(A6)、(X1)〜(X2)及び下記の(X3)をそれぞれ有効成分濃度が1重量%になるようにイオン交換水で希釈又は溶解し1重量%水溶液を調製した。表2に示す部数の上記1重量%水溶液、並びに表2に示す部数の下記の(B1)又は(B2)の1重量%水溶液を常温で混合し、実施例1〜15及び比較例1〜6の消臭剤を作製した。なお、(X3)、(B1)及び(B2)は下記のものの略号である。
【0067】
(X3):アニオン性重合体(「キャリボンL−400」ポリアクリル酸ナトリウムの有効成分43重量%水溶液:三洋化成工業株式会社製)
(B1):両性界面活性剤「レボンLD−36」(ラウリルメチルアミノ酢酸ベタインの有効成分36重量%水溶液:三洋化成工業株式会社製)
(B2):カチオン性界面活性剤「オスモリンDA−50」[ビス(ジデシルジメチルアンモニウム)アジピン酸塩の有効成分50重量%水溶液:三洋化成工業株式会社製]
【0068】
【表2】

【0069】
これらの消臭剤について以下の試験方法により性能評価を行った。結果を表3に示す。
【0070】
<消臭性試験−1(即時消臭効果)>
各消臭剤の1gを1Lのガラス瓶中に入れ、さらに濃度1.4%のアンモニア水を50μl及び濃度1.4%の酪酸水溶液50μlを入れ、密閉してから室温で30〜40秒間激しく振った。5分間静置した後、アンモニア濃度は検知管で、酪酸は官能評価にて消臭性を評価した。アンモニア濃度については、アンモニア検知管(GASTEC No.3MあるいはNo.3L:ガステック(株)製)を取り付けたガス採取器(GASTEC)でガラス瓶の空間部を100ml吸引し、30秒間保持した。その後、検知管の数字(ppm)を読みとった。酪酸については、瓶中に残存する酪酸臭を官能評価を行い、以下のような基準で5段階評価した。なお、ブランクとして、消臭剤を添加しない場合のアンモニア濃度と酪酸臭気を測定した。
0点: 無臭
1点: ほぼ無臭
2 点:かすかに酪酸臭気あり
3 点:かなりの酪酸臭気あり
4 点:不快になるほどの酪酸臭気あり
5 点:強い酪酸臭気あり
【0071】
<消臭性試験−2(消臭効果の持続性)>
上記の消臭性試験−1の試験後のガラス瓶を密閉し、1日静置した後、再度30〜40秒間激しく振ってから5分間静置し、上記と同様の操作で評価した。1週間後も同様にして評価した。これらの消臭結果を表3にまとめて示す。
【0072】
【表3】

【0073】
表3の結果から、本発明の消臭剤は、臭いの選択性が少なく、いずれの種類の臭いに対しても消臭効果が大きいことがわかる。また、長時間の放置後でも消臭効果が低下せず、消臭効果の持続性が良好である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の消臭剤は、愛玩動物の消臭用;トイレ、流しおよび浴室などの抗菌消臭用;動物、人体および手指の消臭用;木材の消臭用;繊維(衣類等)の消臭用;化粧品の消臭用;さらにリビングルーム、寝室、台所、玄関、サニタリー用品、、タバコ、オムツ、生ゴミ、冷蔵庫、靴、下駄箱、ゴミ箱、空調システムの排気ダクトなどの消臭用として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される構成単位を必須構成単位とする両性高分子(A)を含有してなる消臭剤。
【化1】

(式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3及びR5は炭素数1〜6のアルキル基、R4は炭素数1〜3のアルキレン基、Qは酸素原子又は−NH−、Z-は−COO-又は−SO3-である。)
【請求項2】
前記両性高分子が、全構成単位のモル数に基づいて、一般式(1)で示される構成単位を10〜95モル%及び親水性ノニオン性ビニル単量体から構成される単位を5〜90モル%含む両性高分子である請求項1記載の消臭剤。
【請求項3】
前記両性高分子(A)が3,000〜10,000,000の数平均分子量を有する請求項1又は2記載の消臭剤。
【請求項4】
さらに、両性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上を含有してなる請求項1〜3のいずれか記載の消臭剤。

【公開番号】特開2009−219827(P2009−219827A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70720(P2008−70720)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】