説明

消臭剤

【課題】本発明の目的は、体臭(とりわけ加齢臭)の原因物質を分解することにより優れた消臭作用を発揮できる消臭剤を提供することである。
【解決手段】酵母及びピュロバクルム属古細菌に由来するアルコールデヒドロゲナーゼには、加齢臭の原因物質であるノネナールを分解して消臭する作用があり、体臭を除去する消臭剤として有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭剤に関し、特に体臭の除去に好適に使用される消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビジネスマンや中高年の人にエチケット意識が浸透し、体臭予防に多くの関心がよせられている。とりわけ、加齢臭は、いつまでもさわやかで若々しくありたいと願う中高年の人にとって深刻な悩みの種になっている。
【0003】
加齢臭は、皮脂中に増加する低級脂肪酸が酸化されることにより生成したノネナール等が主な原因成分であることが知られており、加齢とともに増加し、特に40歳以降の中高年に生じやすい体臭である。
【0004】
加齢臭の除去には、(i)原因物質を香料によりマスキングする、(ii)皮脂中の低級脂肪酸の酸化を抗酸化剤により防止し、原因物質の生成を抑制する、(iii)抗菌剤により皮膚常在菌の増殖を抑制する、(iv)原因物質の臭気を捕獲して消失させる、(v)原因物質を分解させる、のいずれか機序の利用が不可欠と考えられている。これまでに加齢臭を除去し得る消臭成分として、例えば、エタノールアミン(特許文献1)、コメ発酵液を含む酒粕エキス(特許文献2)、褐藻エキス(特許文献2)等が報告されている。
【0005】
しかしながら、従来報告されている消臭成分では、有効性、安全性及び使用性といった面で十分満足できないという問題点がある。特に、従来報告されている消臭成分の大部分は、上記(i)〜(iv)の機序を利用したものであり、加齢臭の原因物質を分解することにより加齢臭を効果的に除去できるものについては、殆ど報告されていないのが現状である。
【0006】
このような従来技術の現状と、近年のエチケット意識の高まりから、従来にない新たな消臭剤、特に加齢臭の原因物質を分解することにより消臭できる消臭剤の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−97838号公報
【特許文献2】特開2008−184395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、体臭(とりわけ加齢臭)の原因物質を分解することにより優れた消臭作用を発揮できる消臭剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、酵母及びピュロバクルム属古細菌に由来するアルコールデヒドロゲナーゼには、加齢臭の原因物質であるノネナールを分解して消臭する作用があり、体臭を除去する消臭剤として有効であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる消臭剤及び化粧料を提供する。
項1. 酵母又はピュロバクルム属古細菌に由来するアルコールデヒドロゲナーゼを含有することを特徴とする、消臭剤。
項2. 更に、NADH及びNADPHよりなる群から選択される少なくとも1種の還元型補酵素を含有する、項1に記載の消臭剤。
項3. アルコールデヒドロゲナーゼが、サッカロマイセス・セレビシエ由来である、項1又は2に記載の消臭剤。
項4. アルコールデヒドロゲナーゼとして酵母抽出物を含む、項1〜3のいずれかに記載の消臭剤。
項5. 体臭防止用である、項1〜4のいずれかに記載の消臭剤。
項6. 体臭が加齢臭である、項5に記載の消臭剤。
項7. 項1〜6のいずれかに記載の消臭剤を含む、化粧料。
項8. 体臭防止用化粧料である、項7に記載の化粧料。
項9. 体臭が加齢臭である、項8に記載の化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の消臭剤は、加齢臭等の体臭の原因物質を分解でき、優れた体臭防止効果を奏し、体臭に悩む人に福音をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】試験例1において、ノネナールを分解できる酵素を探索した結果を示す。なお、図1における縦軸の単位(unit/mg)は、酵素1mg当たりのノネナール分解活性(U)を示す。
【図2】試験例2において、酵母抽出物によるノネナール分解性を評価した結果を示す。なお、図2における縦軸の単位(unit/ml)は、各反応溶液1ml当たりのノネナール分解活性(U)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.消臭剤
本発明の消臭剤は、酵母又はピュロバクルム属古細菌に由来するアルコールデヒドロゲナーゼを含有することを特徴とする。以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明に使用されるアルコールデヒドロゲナーゼは、酵母又はピュロバクルム属古細菌に由来するものが使用される。このように特定のアルコールデヒドロゲナーゼを選択して使用することによって、体臭の消臭、とりわけ加齢臭の消臭が可能になる。本発明の消臭剤の消臭メカニズムについて、限定的な解釈を望むものではないが、酵母又はピュロバクルム属古細菌に由来するアルコールデヒドロゲナーゼが、体臭の原因物質である2−ノネナールを、無臭物質である2−ノネン−1−オールに還元分解することによって、消臭作用を発揮していると考えられる。
【0015】
本発明において、アルコールデヒドロゲナーゼの由来微生物である酵母の属種については、特に制限されず、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)等が挙げられ、より具体的には、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロマイセス・ポンべ (Schizosaccharomyces pombe)等が挙げられる。これらの中でも、サッカロマイセス属の酵母、とりわけサッカロマイセス・セレビシエは、体臭除去能が格別優れたアルコールデヒドロゲナーゼを保有しており、本発明で使用されるアルコールデヒドロゲナーゼの由来酵母として好適である。
【0016】
また、本発明において、アルコールデヒドロゲナーゼの由来微生物であるピュロバクルム属(Pyrobaculum)古細菌の種については、特に制限されず、例えば、ピュロバクルム・アエロフィラム(Pyrobaculum aerophilum)、ピュロバクルム・イスランディカム(Pyrobaculum islandicum)、ピュロバクルム・カリディホンティス(Pyrobaculum calidifontis)、ピュロバクルム・アルセナティカム(Pyrobaculum arsenaticum)等が挙げられる。これらの中でも、ピュロバクルム・アエロフィラムは、体臭除去能が格別優れたアルコールデヒドロゲナーゼを保有しており、本発明で使用されるアルコールデヒドロゲナーゼの由来古細菌として好適である。
【0017】
本発明で使用されるアルコールデヒドロゲナーゼの好適な例として、酵素番号がEC.1.1.1.1又はEC.1.1.1.2に該当するアルコールデヒドロゲナーゼが例示される。
【0018】
本発明に使用されるアルコールデヒドロゲナーゼとして、より一層優れた体臭防止効果を奏させるという観点から、好ましくは酵母由来、更に好ましくはサッカロマイセス・セレビシエ由来のものが挙げられる。
【0019】
なお、本発明において、上記アルコールデヒドロゲナーゼは、精製されたものでなくてもよい。具体的には、上記アルコールデヒドロゲナーゼとして、上記アルコールデヒドロゲナーゼの粗精製物を使用してもよく、また、上記アルコールデヒドロゲナーゼが活性を保持している状態で含まれることを限度として酵母又はピュロバクルム属古細菌の抽出物であってもよい。
【0020】
また、本発明に使用されるアルコールデヒドロゲナーゼは、酵母又はピュロバクルム属古細菌から単離したもの、その変異体、遺伝子組換技術により製造したもの等であってもよい。
【0021】
本発明において、アルコールデヒドロゲナーゼは、酵母由来及びピュロバクルム属古細菌由来の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明の消臭剤は、上記アルコールデヒドロゲナーゼと共に、NADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)及びNADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)よりなる群から選択される少なくとも1種の還元型補酵素を含有することが望ましい。これらの還元型補酵素を使用することにより、効果的な体臭(特に加齢臭)の消臭が可能になる。特に、酵母由来のアルコールデヒドロゲナーゼを使用する場合には還元型補酵素としてNADHを使用することが望ましく、ピュロバクルム属古細菌由来のアルコールデヒドロゲナーゼを使用する場合には還元型補酵素としてNADPHを使用することが望ましい。
【0023】
上記アルコールデヒドロゲナーゼと上記還元型補酵素の比率としては、特に制限されないが、例えば、上記アルコールデヒドロゲナーゼ1Uに対して、上記還元型補酵素が、通常0.1nmol〜10μmol、好ましくは0.5nmol〜1μmol、更に好ましくは1nmol〜100nmolとなる比率が挙げられる。なお、本明細書において、アルコールデヒドロゲナーゼ活性(以下、ノネナール分解活性と表記することもある)単位は、50mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)において1mMのトランス−2−ノネナールと0.3mMのNADH又はNADPHと20重量%のDMSO(ジメチルスルホキシド)とを共存させた状態で、37℃で1分間に1μmolのNADH又はNADPHを酸化させるのに要する酵素量を1Uとする。
【0024】
なお、上記アルコールデヒドロゲナーゼとして、酵母又はピュロバクルム属古細菌の抽出物を使用する場合、これらの抽出物中に上記還元型補酵素が含まれているので、上記還元型補酵素を別途添加してなくてもよく、或いは上記還元型補酵素を適量補充するだけでもよい。
【0025】
本発明の消臭剤は、体臭防止用、特に加齢臭防止用の用途に好適であり、体臭を発している皮膚部位に経皮適用して使用される。即ち、本発明の消臭剤は、好適には、皮膚や頭皮に適用される化粧料に配合される添加剤として使用される。以下に、本発明の消臭剤が配合された化粧料について説明する。
【0026】
2.化粧料
本発明の化粧料は、上記消臭剤を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明の化粧料において、上記消臭剤の含有割合については、その製剤形態等に応じて適宜設定されるが、例えば、化粧料の総量に対して、上記アルコールデヒドロゲナーゼが0.01〜100U/ml、好ましくは0.05〜50U/ml、更に好ましくは0.1〜10U/mlを充足するように設定すればよい。
【0028】
本発明の化粧料は、上記消臭剤の他に、薬学的又は香粧的に許容される基剤や担体を組み合わせて各種の形態に調製される。薬学的又は香粧的に許容される基剤や担体については、化粧料に使用されている公知のものを用いることができる。
【0029】
また、本発明の化粧料には、必要に応じて化粧料に配合される各種の添加剤を配合することができる。このような添加剤として、例えば、保湿剤、美白剤、抗炎症剤、清涼化剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類、植物エキス、皮膚収斂剤、細胞賦活剤、血管拡張剤、血行促進剤、皮膚機能亢進剤、殺菌剤(抗菌剤)、pH調整剤、増粘剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、界面活性剤、乳化剤、色素(染料、顔料)、香料、防腐剤等が挙げられる。
【0030】
本発明の化粧料は、皮膚や頭皮に適用された際に上記アルコールデヒドロゲナーゼの活性を有効に発揮させるために、水が含まれていることが望ましい。本発明の化粧料に含まれる水の含有割合については、特に制限されないが、例えば、化粧料の総量に対して、通常1〜99重量%、好ましくは5〜95重量%、更に好ましくは10〜90重量%が挙げられる。
【0031】
本発明の化粧料の製剤形態については、経皮適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、ペースト状、ムース状、ジェル状、液状、乳液状、懸濁液状、クリーム状、軟膏状、エアゾール状、スプレー状、リニメント剤状等が例示される。また、本発明の化粧料の製剤形態が、液状、乳液状、又は懸濁液状である場合には、不織布等のシート基材に含浸させた状態であってもよい。
【0032】
本発明の化粧料は、体臭防止用、特に加齢臭防止用として好適であり、体臭が気になる皮膚部位或いは頭皮に適用して使用される。
【0033】
本発明の化粧料を皮膚に適用する量及び回数については、上記アルコールデヒドロゲナーゼの含有割合、体臭の強さ等に応じて適宜設定されるが、例えば、1日に1回若しくは2〜5回の頻度で、皮膚1cm2当たり、上記アルコールデヒドロゲナーゼの量に換算して0.001〜0.1U、好ましくは0.01〜0.05U程度となる量を皮膚に適用すればよい。
【実施例】
【0034】
以下、試験例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
試験例1:ノネナール分解酵素の探索
1)方法
1mMのトランス−2−ノネナール、50μg/mlのアルコールデヒドロゲナーゼ、0.3mM NADH又はNADPH、及び20重量%のDMSO(ジメチルスルホキシド)を含む50mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)1mlを調製し、37℃で3分間インキュベートしながら340nmの吸光度を測定した。1分間当たりの吸光度の減少速度からノネナール分解活性を算出した。NADH又はNADPHのミリモル分子吸光係数は6.22mM−1cm−1とした。
なお、本試験では、アルコールデヒドロゲナーゼとして、表1に示す8種の微生物由来のものを使用した。
【0036】
【表1】

【0037】
2)結果
トランス−2−ノネナールは、加齢臭の原因物質であり、これがアルコールデヒドロゲナーゼによって還元分解されると、無臭物質であるトランス−2−ノネン−1−オールが生成する。この還元分解の際に、NADH又はNADPHはNAD又はNADPに変換される。本試験では、NADH又はNADPHの減少を測定することにより、トランス−2−ノネナールの分解の程度を評価した。
【0038】
得られた結果を図1に示す。図1の(A)には還元型補酵素としてNADHを使用した結果、図1の(B)には還元型補酵素としてNADPHを使用した結果を示す。
【0039】
図1から明らかなように、アルコールデヒドロゲナーゼの中でも、サッカロマイセス・セレビシエ及びピュロバクルム・アエロフィラム由来のものを使用した場合に、ノネナールが分解されるのが確認され、他の微生物由来のアルコールデヒドロゲナーゼを使用した場合には、ノネナールが分解されなかった。即ち、アルコールデヒドロゲナーゼの中でも、サッカロマイセス・セレビシエ及びピュロバクルム・アエロフィラム由来のものを選択して使用することによって、初めて加齢臭の原因物質を分解して消臭できることが明らかになった。
【0040】
また、本結果から、サッカロマイセス・セレビシエ由来のアルコールデヒドロゲナーゼを使用する場合には還元型補酵素としてNADHを使用することが望ましく、ピュロバクルム・アエロフィラム由来のアルコールデヒドロゲナーゼを使用する場合には還元型補酵素としてNADPHを使用することが望ましいことも確認された。
【0041】
試験例2:酵母抽出物によるノネナール分解性の評価
1)方法
酵母抽出物の調製
ビール酵母(Saccharomyces cerevisiae)NBRC2018を、0.2重量%のグルコース、0.5重量%のペプトン(日本製薬)、0.2重量%の乾燥酵母エキス(ナカライテスク)を含む液体培地(pH7.0)10mlにて30℃で2日間静置培養した。培養後、6000rpm、4℃で10分間遠心分離し、酵母を沈降させた。上清を捨て、沈殿に100mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)1ml加え懸濁し、再度、6000rpm、4℃で10分間遠心分離し、酵母を沈降させた。沈殿に、100mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)0.9ml加え懸濁し、0.5mg/mlのLyticaseを0.1ml加えた。この溶液を30℃で1時間インキュベートし、酵母の細胞壁を溶解した。続いて、超音波破砕により細胞を破壊し、得られた破砕液を12,000rpm、4℃、10分間の条件で遠心分離し、上清を回収した。この破砕液上清を酵母抽出物として以降の操作に用いた。
【0042】
得られた酵母抽出物のアルコールデヒドロゲナーゼ活性(ノネナール分解活性)について測定したところ、0.1U/mlであった。なお、アルコールデヒドロゲナーゼ活性(ノネナール分解活性)は、1mMのトランス−2−ノネナール、10重量%の酵母抽出物、0.3mM NADH、及び20重量%のDMSO(ジメチルスルホキシド)を含む50mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)1mlを調製し、37℃で3分間インキュベートしながら340nmの吸光度を測定し、1分間に1μmolのNADHを酸化させるのに要する酵素量を1Uとして算出した。NADHのミリモル分子吸光係数は6.22mM−1cm−1とした。
【0043】
ノネナールの分解反応
1mMのトランス−2−ノネナール、0.3mM NADH、及び20重量%のDMSO(ジメチルスルホキシド)を含む50mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)0.9mlを調製し、これを反応溶液とした。反応溶液の調製後、37℃で1分間プレインキュベートした。次いで、酵母抽出物0.1mlを加えて、37℃で3分間インキュベートしながら、340nmの吸光度を測定した(サンプル9)。1分間当たりの吸光度の減少速度からノネナール分解活性を算出した。NADH又はNADPHのミリモル分子吸光係数は6.22mM−1cm−1とした。また、ブランクとして、トランス−2−ノネナールの代わりに超純水を用いた場合(ブランク1)、及び酵母抽出物の代わりに100mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を用いた場合(ブランク2)についても、同様に測定した。
【0044】
2)結果
得られた結果を図2に示す。この結果から、トランス−2−ノネナール又は酵母抽出物を添加しなかった場合(ブランク1及び2)では、NADHの減少(340nmの吸光度の減少)は認められなかったが、酵母抽出物とトランス−2−ノネナールを添加したサンプルでは、NADHが顕著に減少しており、トランス−2−ノネナールが分解されていた。
【0045】
以上の結果から、酵母抽出物を使用しても、ノネナールを分解できることが示された。本試験で使用した酵母抽出物には、アルコールデヒドロゲナーゼが活性を保持した状態で含まれているため、ノネナールを消臭できたと考えられる。
【0046】
試験例3:消臭効果の確認試験
1)方法
表2に示す4種の臭気サンプル1mlをチューブに入れて、蓋をして密閉した。この状態で、37℃で5分間インキュベートした。その後、蓋を空けて、臭気サンプルの臭気を評価した。臭気の評価は、6名のパネラーにより下記の判定基準に従って評点化することにより行った。
【0047】
【表2】

【0048】
<臭気の判定基準>
評点
0 : 加齢臭(トランス−2−ノネナールの臭い)を全く感じない。
1 : 加齢臭(トランス−2−ノネナールの臭い)を殆ど感じない。
2 : 加齢臭(トランス−2−ノネナールの臭い)をやや感じる。
3 : 加齢臭(トランス−2−ノネナールの臭い)を感じる。
4 : 加齢臭(トランス−2−ノネナールの臭い)を強く感じる。
【0049】
2)結果
得られた結果を表3に示す。この結果から、サッカロマイセス・セレビシエ及びピュロバクルム・アエロフィラム由来のアルコールデヒドロゲナーゼを含む臭気サンプル(臭気サンプル2及び4)では、明らかにトランス−2−ノネナールに起因する加齢臭が抑制されていた。この結果からも、サッカロマイセス・セレビシエ及びピュロバクルム・アエロフィラム由来のアルコールデヒドロゲナーゼを使用することにより、加齢臭を消臭できることが確認された。
【0050】
【表3】

【0051】
製造例
以下に、本発明の消臭剤を使用した各種化粧料の製剤処方例を示す。
製造例1:消臭用皮膚清浄剤
酵母由来アルコールデヒドロゲナーゼ 5U/ml
NADH 250nmol/ml
塩化ベンザルコニウム 0.05重量%
L−メントール 0.01重量%
ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル 1重量%
pH調整剤 適量
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残部
合計 100重量%
【0052】
製造例2:消臭用化粧水
酵母由来アルコールデヒドロゲナーゼ 3U/ml
NADH 150nmol/ml
グリセリン 3重量%
エタノール 1.5重量%
ソルビン酸カリウム 0.2重量%
精製水 残部
合計 100重量%
【0053】
製造例3:消臭用シート
下記組成の液剤を、セルロース/レーヨン混紡不織布に含浸させて、ウェットティッシュタイプの消臭シートが得られる。
液剤の組成
酵母由来アルコールデヒドロゲナーゼ 6U/ml
NADH 300nmol/ml
塩化ベンザルコニウム 0.05重量%
モノラウリン酸ポリグリセリル 0.4重量%
エタノール 1重量%
プロピレングリコール 0.5重量%
L−メントール 0.01重量%
pH調整剤 適量
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残部
合計 100重量%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母又はピュロバクルム属古細菌に由来するアルコールデヒドロゲナーゼを含有することを特徴とする、消臭剤。
【請求項2】
更に、NADH及びNADPHよりなる群から選択される少なくとも1種の還元型補酵素を含有する、請求項1に記載の消臭剤。
【請求項3】
アルコールデヒドロゲナーゼが、サッカロマイセス・セレビシエ由来である、請求項1又は2に記載の消臭剤。
【請求項4】
アルコールデヒドロゲナーゼとして酵母抽出物を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の消臭剤。
【請求項5】
体臭防止用である、請求項1〜4のいずれかに記載の消臭剤。
【請求項6】
体臭が加齢臭である、請求項5に記載の消臭剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の消臭剤を含む、化粧料。
【請求項8】
体臭防止用化粧料である、請求項7に記載の化粧料。
【請求項9】
体臭が加齢臭である、請求項8に記載の化粧料。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−240960(P2012−240960A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112339(P2011−112339)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(505057738)株式会社耐熱性酵素研究所 (10)
【Fターム(参考)】