説明

消臭効果付与コーティング剤

【課題】簡易な方法で、被着体に対して高い接着性を有し、簡易な方法にてコーティングが可能な、特に、酢酸、アンモニアの消臭に優れたコーティング剤を提供する。
【解決手段】少なくとも、「下記式で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド、又は、それらにキレート化剤が配位した構造を有する化合物」(A)と、溶剤(B)とを反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成を有する、被着体にコーティングして該被着体に消臭効果を与える消臭複合組成物を含有することを特徴とする消臭効果付与コーティング剤。


[式中、MはTi又はZrを示し、R〜R10は、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示し、nは0以上の整数を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭効果付与コーティング剤に関し、更に詳細には、特定のチタン化合物又はジルコニウム化合物と溶剤を反応及び/又は混合してなる化学構造と組成を有するものを含有する消臭効果付与コーティング剤に関するものであり、また、植物繊維、動物繊維、ポリエステル系合成繊維、ポリアミド系合成繊維、セルロース系半合成繊維、たんぱく質系半合成繊維、再生繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、及び、これら繊維からなる糸、布、紙、プラスチックフィルム、プラスチック成型体等に対してコーティングしてなる消臭体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消臭効果を付与するコーティング剤については、多孔質無機酸化物やアナターゼ型酸化チタンによる光触媒等が知られており、酢酸、アンモニア、アルデヒド、ノネナール、イソ吉草酸等の悪臭成分を消臭するものが知られている。
【0003】
多孔質無機酸化物については、ポリアミンを担持させた多孔質二酸化ケイ素、水和酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイト化合物又はハイドロタルサイト焼成物の少なくとも1種類を壁紙に含浸させた消臭製壁紙の技術が開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、かかる技術の場合、室内空気における臭気ガスの消臭性能に劣り、消臭性能の持続性が短く、満足のいくものではなかった。また、多孔質無機酸化物を使用した塗剤を使用した場合、被着体の質感を変化させてしまう問題や、無機粒子と、布、プラスチックフィルム、紙等との接着性を得ることが難しく、簡易な擦過によって、膜の脱落等が認められ、脱落によって消臭効果が損なわれるといった問題があった。
【0005】
一方、アナターゼ型酸化チタンによる光触媒による消臭においては、酸化チタンの固着剤にフッ素系樹脂やシリコーン系樹脂等の難分解性結着剤を用いる方法(特許文献2)や、酸化チタン微粒子を多孔質体に担持する方法(特許文献3)が採られている。
【0006】
しかしながら、光触媒性能を有するアナターゼ型酸化チタンを使用する場合、有機物に対する分解性が高いため、安価なアクリル樹脂やウレタン樹脂等をバインダーとして用いることができず、通常の顔料と同様な扱いをすることができなかった。また、光触媒性能を発現するためには紫外線が必須であり、有機物を分解するまでに時間がかかるため、雰囲気中のガスが長時間循環するような状態での使用には耐えるが、短時間で消臭効果を発現できないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−028689号公報
【特許文献2】特開平7−171408号公報
【特許文献3】特開平3−157125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、簡易な方法でその表面に付与しても、被着体である植物繊維、動物繊維、ポリエステル系合成繊維、ポリアミド系合成繊維、セルロース系半合成繊維、たんぱく質系半合成繊維、再生繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、及びこれら繊維からなる糸、布、紙、プラスチックフィルム、プラスチック成型体等に対して高い接着性を有し、簡易な方法にてコーティングが可能で、特に、酢酸やアンモニアの消臭に優れたコーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のチタン又はジルコニウム化合物と溶剤を混合又は反応した複合化合物を有する消臭複合組成物が、上記課題を解決することを見出して本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、本発明は、少なくとも、
(A)「下記式(1)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」、又は、
「下記式(1)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有する化合物」と、
(B)溶剤
とを、反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成を有する「被着体にコーティングして該被着体に消臭効果を与える消臭複合組成物」
を含有することを特徴とする消臭効果付与コーティング剤を提供するものである。
【化1】

[式(1)中、MはTi又はZrを示し、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示す。]
【0011】
また、本発明は、少なくとも、
(A)「下記式(2)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」、又は、
「下記式(2)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有する化合物」と、
溶剤(B)
とを、反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成を有する「被着体にコーティングして該被着体に消臭効果を与える消臭複合組成物」
を含有することを特徴とする消臭効果付与コーティング剤を提供するものである。
【化2】

[式(2)中、MはTi又はZrを示し、R〜R10は、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示す。]
【0012】
また、本発明は、上記の消臭効果付与コーティング剤を用いて製膜されてなることを特徴とする消臭膜を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、被着体の上に上記の消臭膜を有することを特徴とする消臭体を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、上記被着体が、植物繊維、動物繊維、ポリエステル系合成繊維、ポリアミド系合成繊維、セルロース系半合成繊維、たんぱく質系半合成繊維、再生繊維、ガラス繊維、炭素繊維及び金属繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種の繊維、これらの繊維を有する不織布、これらの繊維を紡糸してなる糸、これらの糸を織ってなる織布、これらの糸を編んでなる編布、紙、プラスチックフィルム又はプラスチック成型体である上記の消臭体を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、上記の消臭効果付与コーティング剤を被着体の上にコーティングする工程を有することを特徴とする消臭膜の製膜方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の消臭効果付与コーティング剤によれば、上記問題点や課題を解決し、消臭性能や消臭持続性が高く、短時間で消臭効果が発現し、被着体への接着性が優れた消臭効果付与コーティング剤を提供することができる。
【0017】
特に、被着体である植物繊維、動物繊維、ポリエステル系合成繊維、ポリアミド系合成繊維、セルロース系半合成繊維、たんぱく質系半合成繊維、再生繊維、ガラス繊維、炭素繊維及び金属繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種の繊維、これらの繊維を有する不織布、これらの繊維を紡糸してなる糸、これらの糸を織ってなる織布、これらの糸を編んでなる編布、紙、プラスチックフィルム又はプラスチック成型体等に対して高い接着性を有し、簡易な方法でコーティングが可能である。
【0018】
また、室内等の空気中における臭気ガスの消臭性能に優れ、該消臭性能の持続性が長く、被着体の質感を変化させてしまう程度が低く、繊維、糸、布、プラスチックフィルム、紙等との接着性が特に高い防臭膜を提供することができる。また、消臭有効成分が無機粒子ではないために分散工程が不要であり、触媒性能を発現するために紫外線が必須ではなく、短時間で消臭効果を発現できる。
【0019】
特に、200℃以下の低温で硬化処理をすることが可能であり、各種被着体に対して、消臭効果を有するチタン化合物又はジルコニウム化合物が、反応、ファンデルワールス力等によって強固に接着することができる。そして、特に、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等を有する被着体に対して高い接着効果を発現することができる。
【0020】
また、本発明の消臭効果付与コーティング剤を使用すれば、特に、酢酸とアンモニアに対する消臭能力が高く、短時間において、これら化合物を消臭することができる。また、高い接着性能により、洗濯や擦過等に対する耐性を発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0022】
本発明の消臭効果付与コーティング剤は、少なくとも、下記の成分(A)及び成分(B)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成を有する消臭複合組成物を含有する。
(A)「チタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」又は「チタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有する化合物」
(B)溶剤
【0023】
成分(A)における「チタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」は、下記式(1)又は下記式(2)で表されるものである。
【化3】

[式(1)中、MはTi又はZrを示し、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示す。]
【0024】
【化4】

[式(2)中、MはTi又はZrを示し、R〜R10は、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示す。]
【0025】
上記式(1)で表される「チタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」において、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示すが、好ましくは、それぞれ独立に炭素数1〜10個のアルキル基であり、特に好ましくは、それぞれ独立に炭素数1〜8個のアルキル基である。
【0026】
「上記式(1)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」としては、以下の具体例に限定はされないが、例えば、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラノルマルプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、ジイソプロピルジノルマルブチルチタネート、ジターシャリーブチルジイソプロピルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラステアリルチタネート等のチタンアルコキシド;
テトラメチルジルコネート、テトラエチルジルコネート、テトラノルマルプロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラノルマルブチルジルコネート、テトライソブチルジルコネート、ジイソプロピルジノルマルブチルジルコネート、ジターシャリーブチルジイソプロピルジルコネート、テトラターシャリーブチルジルコネート、テトライソオクチルジルコネート、テトラステアリルジルコネート等のジルコニウムアルコキシド;
が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0027】
「上記式(1)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」のほかに、「『上記式(1)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド』にキレート化剤が配位した構造を有する『チタンキレート化合物又はジルコニウムキレート化合物』」(A)も、溶剤(B)と反応及び/又は混合されて、本発明における消臭複合組成物を生成する。
【0028】
キレート化剤としては特に限定はないが、β−ジケトン、β−ケトエステル、多価アルコール、有機脂肪酸、オキシカルボン酸、リン酸エステル及びアルカノールアミンからなる群より選ばれた少なくとも1種であることが、チタンアルコキシド又はジルコニウムアルコキシドの加水分解等に対する安定性を向上させる点で好ましい。
【0029】
β−ジケトンとしては、具体的には、例えば、2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、ジベンゾイルメタン、テノイルトリフルオロアセトン、1,3−シクロヘキサンジオン、1−フェニル1,3−ブタンジオン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0030】
β−ケトエステルとしては、具体的には、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、メチルピバロイルアセテート、メチルイソブチロイルアセテート、カプロイル酢酸メチル、ラウロイル酢酸メチル等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0031】
多価アルコールとしては、具体的には、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン、ヘキシレングリコール等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0032】
有機脂肪酸としては、具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、吉草酸、オクチル酸、シュウ酸、アジピン酸、マレイン酸等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0033】
オキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸等が挙げられる。また、これらの酸の、アンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩等の塩も挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0034】
リン酸エステルとしては、具体的には、例えば、モノメチルフォスフェート、ジメチルフォスフェート、モノエチルフォスフェート、ジエチルフォスフェート、モノノルマルプロピルフォスフェート、ジノルマルプロピルフォスフェート、モノイソプロピルフォスフェート、ジイソプロピルフォスフェート、モノノルマルブチルフォスフェート、ジノルマルフォスフェート、モノターシャリーブチルフォスフェート、ジターシャリーブチルフォスフェート等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0035】
アルカノールアミンとしては、具体的には、例えば、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ノルマルブチルエタノールアミン、N−ノルマルブチルジエタノールアミン、N−ターシャリーブチルエタノールアミン、N−ターシャリーブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0036】
上記キレート化剤は、異なる種類のキレート化剤であっても、それらを2種類以上併用できる。
【0037】
「上記式(1)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有する化合物」の製造方法は、チタンアルコキシド又はジルコニウムアルコキシドとキレート化剤とを混合して反応させることによって得られることが好ましい。ここで、混合して反応させる方法は特に限定はないが、「上記式(1)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」に対して、上記キレート化剤を配合し、混合又は還流反応する方法が好ましい。溶媒を混合した後、使用した溶媒の沸点にて還流し、反応を進行させることも好ましい。なお、上記「チタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」、キレート化剤及び溶媒の配合の順序に規定はない。
【0038】
「上記式(1)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」に対して、上記キレート化剤を配合し反応する際の配合比は特に限定はないが、
[キレート化剤]
/[上記式(1)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド]
=0.05/1.0〜25/1.0(モル比)
であることが、化合物の加水分解を制御する点で好ましく、0.1/1.0〜20/1.0(モル比)であることがより好ましく、1.0/1.0〜10/1.0(モル比)であることが特に好ましい。
【0039】
「上記式(2)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」は、「上記式(1)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」を縮合することによって得られる。従って、式(2)のR〜R10の範囲、好ましい範囲、具体例等は、式(1)のR〜Rのそれらと同様である。ここで縮合させる方法としては特に限定はないが、「上記式(1)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」を、アルコール溶液中で水を反応させることにより行うことが好ましい。
【0040】
縮合してオリゴマー化するために用いる水の量については、「チタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド、又は、チタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有する化合物」(A)1モルに対し、すなわちチタン原子又はジルコニウム原子1モルに対して、水のモル数が0.5〜2モルであることが、製膜性の向上と加水分解を制御する点で好ましく、0.7〜1.7モルであることがより好ましく、1.0〜1.5モルであることが特に好ましい。
【0041】
加水分解による縮合時には、アルコール類等の溶媒を用い、場合により還流等の熱処理を経由し、チタン化合物オリゴマー又はジルコニウム化合物オリゴマーを得ることが好ましい。このとき用いられるアルコール類としては特に限定はないが、実際に用いられた上記式(1)中のアルキル基R〜Rと同じアルキル基に水酸基が結合したアルコール類が、チタン化合物オリゴマー又はジルコニウム化合物オリゴマーの反応性を変化させない点で好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0042】
かかるアルコール類の使用量は特に限定はないが、縮合してオリゴマー化するために用いる水の量を0.5〜20質量%の濃度になるように、かかるアルコール類を用いて希釈することが好ましく、より好ましくは0.7〜15質量%の濃度になるように希釈することであり、特に好ましくは1.0〜10質量%で希釈する。
【0043】
加水分解により縮合してオリゴマー化して得られた上記式(2)の化合物は、重量平均で、2〜20量体であることが、接着性が向上する点、加水分解性を制御する点等から好ましく、4〜15量体が特に好ましい。すなわち、上記式(2)において、n=1〜19が好ましく、3〜14が特に好ましい。
【0044】
また、上記式(2)で表される「チタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」において、R〜R10は、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示すが、好ましくは、それぞれ独立に炭素数1〜10個のアルキル基であり、特に好ましくは、それぞれ独立に炭素数1〜8個のアルキル基である。
【0045】
「式(2)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有する化合物」における、R〜R10、キレート化剤の種類、配合比、反応方法、製造方法等は、好ましい範囲も含めて、前記した「式(1)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有する化合物」における、R〜R、キレート化剤の種類、配合比、反応方法、製造方法等と同じである。
【0046】
「上記式(2)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」に対して、上記キレート化剤を配合し反応する際の配合比は特に限定はないが、
[キレート化剤]
/[上記式(2)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド]
=0.05/1.0〜25/1.0(モル比)
であることが、化合物の加水分解を制御する点で好ましく、0.1/1.0〜20/1.0(モル比)であることがより好ましく、1.0/1.0〜10/1.0(モル比)であることが特に好ましい。ただし、配合モル比は、式(2)中の「式(1)のような構造で表されるモノマー」を1単位としたときのモル比である。
【0047】
「式(1)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」にキレート化剤を配位させてからオリゴマー化しても、最初にオリゴマー化させて得られる「式(2)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド」に、キレート化剤を配位させても、何れでもよい。
【0048】
成分(A)の構造については、式(1)で表されるものであっても、式(2)で表されるものであっても、更にはキレート化剤が配位したものであっても、上記製造方法で得られる化学構造と組成を有するものであれば、特定の製造方法で製造されたものには限定されない。ただし、前記した製造法を使用して製造することが好ましい。
【0049】
成分(A)の構造としては、チタン原子又はジルコニウム原子に、酸素を介してTi−O−C結合又はZr−O−C結合を有するアルコキシド化合物、チタン原子又はジルコニウム原子に対して、カルボニル基、窒素等の原子が配位したキレート化合物、これら化合物の縮合物の構造が好ましい。また、成分(A)の構造としては、後述する実施例6のように、キレート化剤の有する酸基やアルカリ基が、アンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩等の塩の形になったものも挙げられる。
【0050】
成分(B)である溶剤は特に限定はないが、水、アルコール類、エステル類、ケトン類又は炭化水素類が好ましい。
【0051】
水、アルコール類、エステル類、ケトン類又は炭化水素類、としては、以下の具体例に限定はされないが、例えば、アルコール類としては、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール等;エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等;ケトン類としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等;炭化水素類としては、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルデカン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等;が挙げられる。これらは、単独で使用又は2種類以上併用できる。
【0052】
成分(A)と成分(B)の使用割合は特に限定はないが、成分Aと成分Bの質量比が、成分(A)/成分(B)=0.05/99.95〜99.95/0.05であることが好ましく、成分(A)/成分(B)=0.5/99.5〜99.5/0.5がより好ましく、成分(A)/成分(B)=1.0/99.0〜99.0/1.0が特に好ましい。成分(A)の比率が少なすぎると、消臭効果を低下させる場合があり、一方、成分(B)が少なすぎると、膜の接着性が低下し、加水分解性等が増大して安定性が不足する場合がある。
【0053】
「成分(A)と成分(B)の消臭複合組成物」には、少なくとも以下の4形態があり、それらの何れでもよい。
「成分(A)と成分(B)の反応により得られる化学構造と組成を有するもの」
「成分(A)と成分(B)の反応により得られる化学構造と組成を有するもの」及び成分(A)との混合物
「成分(A)と成分(B)の混合により得られる化学構造と組成を有するもの」
「成分(A)と成分(B)の混合により得られる化学構造と組成を有するもの」及び成分(A)との反応物
このうち、「(A)と(B)の混合により得られる化学構造と組成を有するもの」、「成分(A)と成分(B)の混合により得られる化学構造と組成を有するもの」及び成分(A)との反応物が好ましい。
【0054】
なお、上記形態は、本発明における消臭複合組成物の形態を示したものであり、上記消臭複合組成物の形態には、更に未反応物や副生成物等が混合されていてもよい。例えば、成分(B)は過剰に用いられることがあり、その場合は、上記全ての形態に、成分(B)が混合されたものが消臭効果付与コーティング剤に含有されることになる。また、キレート化剤、成分(A)等の未反応物が混合されていてもよく、従って、「『成分(A)と成分(B)の混合により得られる化学構造と組成を有するもの』及び成分(A)との混合物」が、本発明の消臭効果付与コーティング剤に含有されることもある。
【0055】
溶媒(B)は、同種又は異種のものを、2段に分けて配合することによって消臭複合組成物を得ることも可能である。例えば、縮合の際に用いた溶媒(B)をそのまま用いて消臭複合組成物を得ることも、その後、同種又は異種の溶媒(B)を再度加えて消臭複合組成物を得ることも可能である。また、例えば、キレート化剤を配位する際にキレート化剤の溶媒として用いた溶媒(B)をそのまま用いて消臭複合組成物を得ることも、その後、同種又は異種の溶媒(B)を再度加えて消臭複合組成物を得ることも可能である。
【0056】
本発明における消臭複合組成物は、上記製造方法で得られる化学構造と組成を有し、被着体にコーティングして該被着体に消臭効果を与えるものであれば、特定の製造方法で製造されたものには限定されない。ただし、本発明における消臭複合組成物は、上記した製造法を使用して製造されたものであることが好ましく、本発明における消臭複合組成物は、上記した製造法を使用して製造することが好ましい。
【0057】
本発明の消臭効果付与コーティング剤は、上記消臭複合組成物を含有することを特徴とする。上記した消臭複合組成物は、そのまま本発明の消臭効果付与コーティング剤となり得るが、上記した消臭複合組成物に、更に「他の配合物」を配合して消臭効果付与コーティング剤としてもよい。
【0058】
かかる「他の配合物」としては特に限定はないが、抗菌剤、消泡剤、レベリング剤、フィラー、帯電防止剤等が挙げられる。
【0059】
本発明の消臭効果付与コーティング剤は、抗菌性を付与する目的で、抗菌剤が含有されていることも好ましい。菌による発酵が悪臭の原因になることがあるので、抗菌剤との組み合わせにより相乗効果が得られる。抗菌剤については、特に限定はないが、銀、白金、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、モリブデン及びクロムからなる群より選択された少なくとも一種の金属元素を含む化合物が挙げられる。また、その他の抗菌剤としては、サイクロデキストリン、4級アンモニウム塩、カテキン等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上併用できる。
【0060】
本発明の消臭効果付与コーティング剤は、製膜されて消臭膜となる。本発明の消臭効果付与コーティング剤は塗布性能に優れ、簡易な方法でコーティングが可能であり、消臭有効成分が無機粒子ではないために製膜が容易であり、製膜されて得られた消臭膜は、そのままの状態で触媒性能を発現するために、紫外線照射等が必須ではなく、短時間で消臭効果を発現できる。
【0061】
また、被着体の表面に上記消臭膜を有する消臭体は、本発明における消臭膜は被着体に対して高い接着性を有しているため、消臭性能や消臭持続性が高く、短時間で消臭効果が発現するのみならず、洗濯や擦過等の物理的な力に対する耐性を有している。
【0062】
被着体に本発明の消臭効果付与コーティング剤を塗布して製膜する場合、必要に応じて水や有機溶剤を用いて希釈して塗布を行うことができる。希釈に使用する水や有機溶剤については特に限定はないが、各種被着体に対して濡れ性の高い溶剤が好ましい。好ましい溶剤としては、水、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤等が挙げられる。具体的には、アルコール類としては、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール等、エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等、ケトン類としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等、脂肪族炭化水素類としては、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルデカン、トルエン、キシレン等が挙げられる。溶剤は、被着体へのぬれ性、塗布液の安定性を考慮して、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0063】
上記被着体としては、特に限定はないが、植物繊維、動物繊維、ポリエステル系合成繊維、ポリアミド系合成繊維、セルロース系半合成繊維、たんぱく質系半合成繊維、再生繊維、ガラス繊維、炭素繊維及び金属繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種の繊維、これらの繊維を有する不織布、これらの繊維を紡糸してなる糸、これらの糸を織ってなる織布、これらの糸を編んでなる編布、紙、プラスチックフィルム又はプラスチック成型体が好ましい。該繊維としては、上記したものが、ビニル系繊維より、繊維の弾性や染色のし易さの点で好ましい。
【0064】
植物繊維としては、綿、麻等が挙げられ、動物繊維としては、絹、羊毛、カシミヤ等が挙げられ、ポリエステル系合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等の繊維が挙げられ、ポリアミド系合成繊維としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロンMXD66等の繊維が挙げられ、セルロース系半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート等の繊維が挙げられ、たんぱく質系半合成繊維としては、プロミックス等の繊維が挙げられ、再生繊維としては、レーヨン、キュプラ、テンセル等の繊維が挙げられ、ガラス繊維としては、短繊維であるガラスウールや長繊維であるガラスファイバー等の繊維が挙げられ、炭素繊維としては、アクリル繊維を使用し、合成されたPANやピッチを使用し、合成されたPITCH等の繊維が挙げられ、金属繊維としては、ステンレス、鉄、金、銀、アルミニウム等の金属からなる繊維が挙げられる。
【0065】
上記被着体としては、上記の繊維を有する不織布、これらの繊維を紡糸してなる糸、これらの糸を織ってなる織布、これらの糸を編んでなる編布も好ましい。「糸」とは、中が均一に詰まったものでも、上記繊維を引き揃えて撚りをかけた状態のものでもよい。紡績によって、原料の短繊維を撚り合わせ、長く引き伸ばして1本の紡績糸(スパンヤーン、ステープルヤーン)にしたものであっても、原料の長繊維を撚り合わせたり分離し難くしたりして製糸又は紡糸して1本の糸(フィラメントヤーン)にしたものであってもよい。
【0066】
また、紙としては、上質紙、再生紙、コート紙、アート紙等が挙げられ、プラスチックフィルム又はプラスチック成型体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド等からなるフィルム又はプラスチック成型体が挙げられる。
【0067】
本発明の消臭効果付与コーティング剤を被着体に処理する場合の塗布方法については、特に限定はないが、プラスチックフィルム又はプラスチック成型体の場合、グラビアコートに代表されるロールコート、スピンコート、ディップコート等が好ましく、糸、布、紙の場合は、本発明の消臭効果付与コーティング剤に浸漬した後、必要に応じてコーティング剤を絞る等して、塗布することが好ましい。
【0068】
本発明の消臭効果付与コーティング剤を被着体に処理する場合の塗布量については、特に限定はないが、乾燥後の塗布量として、0.01〜5g/mが好ましく、0.05〜3g/mがより好ましく、0.1〜2g/mが特に好ましい。塗布量が少なすぎる場合は、前記した消臭効果が得られない場合があり、塗布量が多すぎる場合は、硬化不良を生ずる場合がある。
【0069】
本発明の消臭効果付与コーティング剤を被着体に処理する場合の硬化条件については、特に限定はないが、硬化温度については、0〜200℃が好ましく、5〜170℃がより好ましく、10〜150℃が特に好ましい。硬化時間については、1秒〜30分が好ましく、5秒〜10分がより好ましく、10秒〜1分が特に好ましい。更には、200℃以下で30分以下にて硬化することが好ましく、170℃以下で10分以下にて硬化することがより好ましく、150℃以下で1分以下にて硬化することが特に好ましい。
【0070】
本発明の消臭効果付与コーティング剤は、被着体に消臭膜を形成して消臭体を得る目的で使用することができる。消臭体としては特に限定はないが、消臭効果を必要とする衣料、壁紙、消臭フィルム、消臭フィルター等が挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらに限定されるものではない。
【0072】
製造例1
[式(1)で表されるチタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有する化合物A1の合成]
90質量%の乳酸水溶液10g(乳酸として0.10モル)をエタノール50gに溶解した後、テトライソプロピルチタニウム28.4g(0.10モル)を滴下した。滴下終了後、1時間還流し、チタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有する化合物を得た。これを「化合物A1」とする。
【0073】
製造例2
[式(1)で表されるチタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有する化合物A2の合成]
クエン酸一水和物21g(0.10モル)をエタノール50gに溶解した後、テトライソプロピルチタニウム28.4g(0.10モル)を滴下した。滴下終了後、1時間還流し、チタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有する化合物を得た。これを「化合物A2」とする。
【0074】
製造例3
[式(2)で表されるチタンアルコキシドA3の合成]
テトラノルマルブトキシチタニウム34.0g(0.10モル)をノルマルブタノール12.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とノルマルブタノール24.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌した後、更に1時間還流し、式(2)で表される縮合されたチタンアルコキシドを得た。これを「化合物A3」とする。
【0075】
製造例4
[式(1)で表されるジルコニウムアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有する化合物A4の合成]
90質量%の乳酸水溶液31.4g(乳酸として0.31モル)をノルマルプロパノール180gに溶解した後、ノルマルプロピルジルコニウムを43.7g(0.10モル)とノルマルプロパノール100gの混合溶液を滴下した。滴下終了後、1時間還流した後、28質量%アンモニア水を18.8g(アンモニアとして0.31モル)、ジルコニウムアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有する化合物を得た。これを「化合物A4」とする。
【0076】
実施例1
製造例1で合成した化合物A1を水で10質量%溶液に希釈して消臭効果付与コーティング剤を得た。この消臭効果付与コーティング剤を塗布液として使用し、乾燥残分が0.5g/mになるように、10cm角の綿布、ナイロン布(「ナイロン」は登録商標)、ポリエステル布及び紙に、それぞれ浸漬塗布した。その後、120℃で30秒加熱硬化し、消臭膜及び消臭体である処理布を得た。また、この消臭効果付与コーティング剤を塗布液として使用し、PETフィルム上に約6g/mに塗布されるようにバーコーターにて塗布した。その後、120℃で30秒、加熱硬化し、消臭膜及び消臭体である処理フィルムを得た。
【0077】
実施例2〜9
実施例1において、「化合物A1」、「溶剤(B)であるエタノールと水」を、表1及び表2に記載の種類と量に代えた以外は、実施例1と同様にして、消臭膜及び消臭体である処理布及び処理フィルムを得た。
【0078】
【表1】

表1中、オルガチックスTC−310、オルガチックスTC−300、オルガチックスTC−400、オルガチックスTA−22、オルガチックスTA−10は、実施例で使用したものであり、何れもマツモトファインケミカル社製(何れも商品名)である。
【0079】
【表2】

【0080】
比較例1
粒径20nmのアナタース型酸化チタン(石原産業社製 商品名:ST−21)5gを水95gに分散した後、乾燥残分が0.5g/mになるように10cm角の綿布、ナイロン布、ポリエステル布及び紙に、それぞれ浸漬塗布した。その後、120℃で30秒硬化し、処理布を得た。また、塗布液をPETフィルム上に約6g/m塗布されるようにバーコーターにて塗布した。その後、120℃で30秒硬化し、処理フィルムを得た。
【0081】
比較例2
粒系を1μm以下に粉砕したゼオライト1gを90gの水に分散した後、乾燥残分が0.5g/mになるように10cm角の綿布、ナイロン布、ポリエステル布及び紙に、それぞれ浸漬塗布した。その後、120℃で30秒硬化し、処理布を作成した。また、塗布液をPETフィルム上に約6g/m塗布されるようにバーコーターにて塗布した。その後、120℃で30秒硬化し、処理フィルムを得た。
【0082】
評価例1
[酢酸又はアンモニアの消臭効果の確認]
実施例1〜9及び比較例1〜2で得た処理布及び処理フィルムを、5Lのテドラーバックに入れ、3Lの無臭空気を入れた。その後、10質量%の酢酸水溶液又は、3質量%のアンモニア水を10μLマイクロシリンジにて注入し、25℃、65%RH環境下にて静置した。注入直後及び30分後のテドラ−バッグ内の酢酸濃度または、アンモニア濃度について検知管(ガステック株式会社製、酢酸 No.81、アンモニア No.3LA)を用い測定し、以下の基準で判定を行った。結果を表3に示す。
【0083】
○・・・30分静置後に10ppm以下の濃度に減少
△・・・30分静置後に10ppm〜50ppmの範囲濃度に減少
×・・・30分静置後において初期濃度と変化なし。
【0084】
評価例2
[耐洗濯性評価]
実施例1〜9及び比較例1〜2で得た、綿布、ナイロン布及びポリエステル布を、洗剤(花王(株)社製 アタック)を用いて10回洗濯し乾燥した各処理布を、5Lのテドラーバックに入れ、3Lの無臭空気を入れた。その後、10質量%の酢酸水溶液又は、3質量%のアンモニア水を、10μLマイクロシリンジにて注入し、25℃、65%RH環境下にて静置した。注入直後及び30分後のテドラ−バッグ内の酢酸濃度及びアンモニア濃度について、上記の検知管を用い測定し、以下の基準で判定を行った。結果を表4に示す。
【0085】
○・・・30分静置後に10ppm以下の濃度に減少
△・・・30分静置後に10ppm〜50ppmの範囲濃度に減少
×・・・30分静置後において初期濃度と変化なし。
【0086】
評価例3
[密着性評価]
実施例1〜9及び比較例1〜2で得た処理フィルム上にセロハンテープを貼り付け引き剥がした際の膜の残存を以下の基準で判定を行った。結果を消臭効果と合わせて表5に示す。
【0087】
○・・・セロハンテープを貼り付けた全面積で膜が残存。
△・・・セロハンテープを貼り付けた全面積の50%以上100%未満の膜が残存
×・・・セロハンテープを貼り付けた全面積の30%以下の膜が残存又は膜の残存なし
【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
【表5】

【0091】
表3と表4から分かるように、実施例1〜9で得られた、本発明の消臭効果付与コーティング剤を用いた消臭体は、何れも酢酸とアンモニアに対する消臭効果が顕著に見られたが、同様の評価で、比較例1〜2では、酢酸とアンモニアに対する消臭効果が何れも見られなかった。
【0092】
また、表5から分かるように、実施例1〜9の本発明の消臭効果付与コーティング剤を用いて得られた消臭膜は、何れも被着体に対する密着性に優れていた。一方、比較例1〜2では、同様の評価で、何れも被着体に対する密着性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の消臭効果付与コーティング剤は、簡易な方法にて、消臭効果を布、紙、プラスチックフィルム等に付与することができ、特に酢酸とアンモニアの消臭能力が高く、短時間においてこれら化合物を消臭することができる。また、高い接着性能により、洗濯や擦過等に対する耐性を発現できることから、繊維処理分野や塗料分野等の産業分野に広く利用されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、「下記式(1)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド、又は、下記式(1)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有する化合物」(A)と、溶剤(B)とを反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成を有する、被着体にコーティングして該被着体に消臭効果を与える消臭複合組成物を含有することを特徴とする消臭効果付与コーティング剤。
【化1】

[式(1)中、MはTi又はZrを示し、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示す。]
【請求項2】
少なくとも、「下記式(2)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシド、又は、下記式(2)で表されるチタンアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有する化合物」(A)と、溶剤(B)とを反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成を有する、被着体にコーティングして該被着体に消臭効果を与える消臭複合組成物を含有することを特徴とする消臭効果付与コーティング剤。
【化2】

[式(2)中、MはTi又はZrを示し、R〜R10は、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示す。]
【請求項3】
上記キレート化剤が、β−ジケトン、β−ケトエステル、多価アルコール、有機脂肪酸、オキシカルボン酸、リン酸エステル及びアルカノールアミンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載の消臭効果付与コーティング剤。
【請求項4】
溶剤(B)が、水、アルコール類、エステル類、ケトン類及び炭化水素類からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の消臭効果付与コーティング剤。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の消臭効果付与コーティング剤を用いて製膜されてなることを特徴とする消臭膜。
【請求項6】
被着体の上に請求項5に記載の消臭膜を有することを特徴とする消臭体。
【請求項7】
上記被着体が、植物繊維、動物繊維、ポリエステル系合成繊維、ポリアミド系合成繊維、セルロース系半合成繊維、たんぱく質系半合成繊維、再生繊維、ガラス繊維、炭素繊維及び金属繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種の繊維、これらの繊維を有する不織布、これらの繊維を紡糸してなる糸、これらの糸を織ってなる織布、これらの糸を編んでなる編布、紙、プラスチックフィルム又はプラスチック成型体である請求項6記載の消臭体。
【請求項8】
請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の消臭効果付与コーティング剤を被着体の上にコーティングする工程を有することを特徴とする消臭膜の製膜方法。

【公開番号】特開2011−111482(P2011−111482A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267084(P2009−267084)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000188939)マツモトファインケミカル株式会社 (26)
【Fターム(参考)】