説明

消臭性ルチル型酸化チタン微粒子および該微粒子を含む消臭性塗膜形成用塗布液、消臭性塗膜付基材

【課題】可視光照射下でVOC、アンモニア等の臭気成分を分解することのできる消臭性ルチル型酸化チタン微粒子を提供する。
【解決手段】平均粒子幅(W)が2〜50nmの範囲にあり、平均長さ(L)が2〜500nmの範囲にあり、アスペクト比(L)/(W)が1〜10の範囲にあり、消臭成分として鉄をFe23換算で0.01〜2重量%の範囲で含有する。さらに、銀、銅、亜鉛等の抗菌・消臭性金属成分を酸化物換算で0.1〜20重量%の範囲で含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可視光照射下で揮発性有機化合物(VOC)、アンモニア等の臭気成分を分解することのできる消臭性ルチル型酸化チタン微粒子、該微粒子を含む消臭性塗膜形成用塗布液および該塗布液を用いて形成された消臭性塗膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、清潔志向、衛生志向、安全志向、快適志向等、生活環境の向上が求められている。
従来、シリカゲル、複合酸化物、酸化チタン等の粉末、あるいはコロイド粒子に抗菌性を有する銀、銅、亜鉛等の金属成分を担持した抗菌性組成物が知られている。
【0003】
例えば、本願の出願人は無機酸化物コロイド粒子に抗菌性金属成分を付着せしめた抗菌剤(特許文献1:特開平6−80527号公報)あるいはメタ珪酸アルミン酸マグネシウムに抗菌性を有する金属イオンをイオン交換した抗菌剤(特許文献2:特開平3−275627号公報)を開示している。
抗菌効果の持続性および抗菌物質の安定性を改善する目的で、抗菌性の金属イオンをゼオライトあるいはアルミノ珪酸塩に担持した抗菌性組成物も知られている(特許文献3:特開平1−283204号公報)。
【0004】
また、本願の出願人は、金属成分と該金属成分以外の無機酸化物とから構成される無機酸化物微粒子であって、前記無機酸化物が酸化チタンとシリカおよび/またはジルコニアとを含んでなり、該酸化チタンが結晶性酸化チタンである抗菌性消臭剤を開示している(特許文献4:特開2005−318999号公報)。この抗菌性消臭剤は抗菌性能の他、揮発性有機化合物(VOC)の分解による消臭性能を有することを開示している。
【0005】
本願の出願人は、導電性、光触媒性能、可視光吸収能、耐薬品性等に優れたNドープ管状酸化チタン粒子、および、酸化チタン粒子の水分散液をアルカリ金属水酸化物の存在下で水熱処理した後、アンモニア、アミン等の存在下で還元処理するNドープ管状酸化チタン粒子の製造方法を開示している(特許文献5:特開2004−35362号公報)。
しかしながら、このNドープ管状酸化チタン粒子は必ずしも可視光吸収(遮蔽)性能が充分でなく、光触媒活性や耐久性等に問題があった。
【0006】
特許文献6(特開2001−205103号公報)には、酸化チタン結晶の格子間に窒素原子またはイオウ原子をドーピングしてなるチタン化合物であり、その表面に電荷分離物質が担持されている光触媒体が開示されている。
この光触媒体はスパッタリング法で製造することが例示されており、窒素ドーピングではTiO2ターゲットを真空チャンバー内にセットし、N2ガスおよびArガスを導入し、N2およびArプラズマ中でスパッタリングし、窒素雰囲気中で加熱処理(アニール)することによってNドープ酸化チタン膜を得ている。また、硫黄ドーピングではTi、TiO2あるいはTiS(硫化チタン)をターゲットとし、SO2+O2+Arガス中でスパッタリングし、加熱処理する方法が記載されている。しかしながらいずれの場合もドーピングと同時に酸素欠陥が多量に生成し、この欠陥が再結合中心となるためにドーピング濃度を上げると、触媒活性が大きく低下すると云う問題があった。
【0007】
また、光酸化触媒として有用な硫黄含有金属酸化物およびその製造方法も開示されている(特許文献7:特開2004−143032号公報)。しかしながら、この光酸化触媒も金属酸化物が無定型であり、必ずしも光触媒活性が充分とはいえなかった。
【0008】
さらに、本願の出願人は、特許文献8(特開平08−230950号公報)に、Nおよび/またはSをドープした管状酸化チタン粒子、特にNおよび/またはSをドープした管状酸化チタン粒子にさらに酸化鉄を担持したアナターゼ型管状酸化チタン粒子が可視光照射下で高い光酸化触媒活性を発現することを開示している。
しかしながら、Nおよび/またはSドープ管状酸化チタン粒子、酸化鉄を含むNおよび/またはSドープ管状酸化チタン粒子は、管状酸化チタン粒子の製造工程が長く経済性に劣り、加えて硫黄化合物、窒素化合物は臭気性が強く、安全性に注意が必要で、これらの処理設備を必用とし、経済性に問題があった。また、酸化チタンがアナターゼ型である場合は光触媒活性が高く用途によっては耐光性が問題となる場合があった。
【0009】
近年、居住空間、公共施設、医療施設、養護施設、自動車内装等において、建材等に含まれるホルムアルデヒド、煙草喫煙時に発生するアセトアルデヒド等の有害物質の除去、便所等で発生するアンモニア等に対する消臭性能の他、抗菌、防かび、防藻、坑ウイルス、抗アレルゲン、害虫忌避等の抗菌性能が求められており、しかも、可視光を含む自然光もしくは人工光源の照射下で高い消臭性能、抗菌性能が求まられている。
【0010】
本発明者等は鋭意検討した結果、平均粒子径が特定範囲にあり、少量の酸化鉄を担持したルチル型酸化チタン微粒子は消臭性能に優れ、しかも耐候性に優れることを見出して本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−80527号公報
【特許文献2】特開平3−275627号公報
【特許文献3】特開平1−283204号公報
【特許文献4】特開2005−318999号公報
【特許文献5】特開2004−35362号公報
【特許文献6】特開2001−205103号公報
【特許文献7】特開2004−143032号公報
【特許文献8】特開平08−230950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は可視光照射下で揮発性有機化合物(VOC)、アンモニア等の臭気成分を分解することのできる消臭性ルチル型酸化チタン微粒子、該微粒子を含む消臭性塗膜形成用塗布液および該塗布液を用いて形成された耐候性に優れる消臭性塗膜付基材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る消臭性ルチル型酸化チタン微粒子は、平均粒子幅(W)が2〜50nmの範囲にあり、平均長さ(L)が2〜500nmの範囲にあり、アスペクト比(L)/(W)が1〜10の範囲にあり、消臭成分として鉄をFe23換算で0.01〜2重量%の範囲で含有することを特徴としている。
さらに、抗菌・消臭性金属成分を酸化物換算で0.1〜20重量%の範囲で含むことが好ましい。
前記抗菌・消臭性金属成分が銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の金属成分であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る消臭性塗膜形成用塗布液は、前記いずれかに記載の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子が分散媒中に分散してなることを特徴としている。
前記分散媒が水溶性金属キレート化合物を含有する水系分散媒であることが好ましい。
前記水溶性金属キレート化合物がチタンキレート化合物であることが好ましい。
前記チタンキレート化合物がチタンラクテートアンモニウム塩であることが好ましい。
【0015】
全固形分濃度が0.01〜20重量%の範囲にあり、前記消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の固形分としての濃度が0.005〜19.9重量%の範囲にあり、前記水溶性金属キレート化合物のTiO2としての濃度が0.0001〜10.0 重量%の範囲にあり、消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の重量(Wa)と水溶性金属キレート化合物のTiO2としての重量(Wb)の重量比(Wb)/(Wa)が0.005〜1.0の範囲にあることが好ましい。
【0016】
本発明に係る消臭性塗膜付基材は、基材と、基材上に形成された消臭性塗膜とからなり、該消臭性塗膜が前記いずれかに記載の消臭性塗膜形成用塗布液を用いて形成された消臭性塗膜であることを特徴としている。
前記消臭性塗膜中の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の固形分としての含有量が50〜100重量%の範囲にあり、水溶性金属キレート化合物のTiO2としての含有量が0〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子を用いることにより、可視光照射下で揮発性有機化合物(VOC)およびアンモニア等の臭気成分を効率よく分解することができる消臭性塗膜形成用塗布液を得ることができる。
本発明の消臭性塗膜形成用塗布液を各種の基材に適用することによって、耐候性に優れた消臭性塗膜付基材を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[消臭性ルチル型酸化チタン微粒子]
本発明に係る消臭性ルチル型酸化チタン微粒子は、平均粒子幅(W)が2〜50nmの範囲にあり、平均長さ(L)が2〜500nmの範囲にあり、アスペクト比(L)/(W)が1〜10の範囲にあり、消臭成分として鉄をFe23換算で0.01〜2重量%の範囲で含有することを特徴としている。
【0019】
ルチル型酸化チタン微粒子
本発明には消臭成分の担体としてルチル型酸化チタン微粒子を用いる。
ルチル型酸化チタン微粒子は、アナターゼ型酸化チタン微粒子、アナターゼ型管状酸化チタン微粒子に比べて担体自体の光触媒活性が低く、耐候性に優れている。また、アナターゼ型管状酸化チタン微粒子に比べて極めて安価である。
【0020】
本発明に用いるルチル型酸化チタン微粒子は、本願の出願人による特開平2−255532号公報に開示した、水和酸化チタンのゲルまたはゾルを過酸化水素にて溶解し、スズ酸カリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリしたスズ化合物であるスズ酸水溶液の共存下で水熱処理することによって得ることができる。
【0021】
他の方法としては、本願の出願人による特開2009−179521号公報に開示した、チタンアルコキシドと過酸化水素とを、過酸化水素のH22としてのモル数(MHP)とチタンアルコキシドのTiO2としてのモル数(MTi)とのモル比(MHP)/(MTi)が2〜50の範囲で反応させた後、100〜350℃で水熱処理する方法によって得ることができる。さらには本願の出願人による特開2009−227519号公報に開示した、チタン化合物とスズ化合物との混合水溶液を調製し、NH4OH水溶液を加えて加水分解し、ゲルを洗浄し、過酸化水素を、過酸化水素のH22としてのモル数(MHP)とチタン化合物とスズ化合物の合計のモル数((MTi)+(MS))とのモル比(MHP)/((MTi)+(MS))が2〜50の範囲となるように加えて溶解し、ついで、100〜350℃で水熱処理する方法によって得ることができる。
【0022】
上記方法はいずれも高温で焼成することなくルチル型酸化チタン微粒子が得られる。
得られるルチル型酸化チタン微粒子は、後述する消臭性ルチル型酸化チタン微粒子と概ね同じで、平均粒子幅(W)が2〜50nmの範囲にあり、平均長さ(L)が2〜500nmの範囲にあり、アスペクト比(L)/(W)が1〜10の範囲にある。
【0023】
消臭成分
消臭成分としては、酸化鉄が担持されている。酸化鉄の含有量は担持方法によっても異なるが、Fe23換算で0.01〜2重量%、さらには0.02〜1.5重量%の範囲にあることが好ましい。
酸化鉄の含有量がFe23換算で0.01重量%未満の場合は、発生した電子のトラップが不十分で逆反応が発生し、光活性が不十分となり、消臭性能が不充分となる場合がある。
酸化鉄の含有量がFe23換算で2重量%を越えると、発生した電子がトラップされすぎて、ホールを呼び込み、酸化鉄が担持されてない場合よりも消臭性能が低くなる場合がある。
【0024】
消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の製造方法
消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の製造方法としては、充分な消臭性能、耐候性を有する消臭性ルチル型酸化チタン微粒子が得られれば特に制限はないが、例えば特許文献8(特開平08−230950号公報)に開示した方法に準じて製造することができる。
具体的には、消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の第1の製造方法は、上記のように高温で焼成することなく得られたルチル型酸化チタン微粒子の分散液にイオン交換樹脂の存在下、硝酸第2鉄水溶液を混合し、ついで、必用に応じて加熱処理することが好ましい。
【0025】
ルチル型酸化チタン微粒子分散液の濃度は後述するイオン交換樹脂を分散でき、分散液が均一に撹拌できれば特に制限はないが、固形分として1〜30重量%、さらには2〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
ルチル型酸化チタン微粒子分散液の濃度が固形分として1重量%未満の場合は生産性が低下し、30重量%を越えると酸化鉄の担持が不均一になるためか、前記酸化鉄担持効果が低減し消臭性能の向上効果が充分得られない場合がある。
【0026】
イオン交換樹脂としては、硝酸第2鉄の硝酸根を除去するために従来公知の陰イオン交換樹脂を用いることができる。
イオン交換樹脂の使用量はイオン交換樹脂のイオン交換容量および硝酸第2鉄の使用量によって変えることができるが、硝酸根を実質的に全量除去できる量とすることが好ましい。
硝酸第2鉄を用いるが、硝酸第1鉄も使用することができ、さらに硫酸第2鉄、塩化第2鉄も使用することができる。しかしながら、理由は明らかではないが硝酸第2鉄は消臭性能向上効果に最も優れていることから好適に用いることができる。さらに、硝酸第2鉄と他の前記塩を混合して用いることもできる。
【0027】
硝酸第2鉄の使用量は最終的に得られる酸化鉄を担持したルチル型酸化チタン微粒子中の酸化鉄の含有量がFe23として0.01〜2重量%、さらには0.02〜1.5重量%の範囲となるように使用する。
ついで、硝酸第2鉄水溶液を添加後、必要に応じて撹拌を継続した後、イオン交換樹脂を分離することによって酸化鉄を担持したルチル型酸化チタン粒子の分散液を得ることができる。得られた酸化鉄担持ルチル型酸化チタン微粒子分散液はそのまま使用することができるが、必要に応じて濃縮、あるいは希釈して用いることができる。さらに乾燥し、さらに必要に応じて加熱処理し、粉体として、さらには粉体を成型して、成型体として用いることもできる。
【0028】
この時、乾燥温度は水分を実質的に除去できれば特に制限はないが、80〜250℃、さらには95〜200℃の範囲にあることが好ましい。
必用に応じて加熱処理する際の加熱温度は概ね200〜650℃、さらには300〜600℃の範囲である。加熱温度が200℃未満では硝酸根の分解、脱離が不充分で充分な消臭性能の向上効果が得られないことがある。加熱温度が650℃を超えると消臭性金属成分である酸化鉄が粒子成長したり、ルチル型酸化チタン微粒子が強く凝集し、粉砕を必要としたり、充分な消臭性能が得られない場合がある。
【0029】
消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の第2の製造方法は、上記のように高温で焼成することなく得られたルチル型酸化チタン微粒子分散液を乾燥して得たルチル型酸化チタン微粒子粉末に前記鉄化合物水溶液、好ましくは硝酸第2鉄水溶液を吸収させ、ついで、乾燥し、必用に応じて加熱処理することが好ましい。
粉末であるルチル型酸化チタン微粒子に硝酸第2鉄水溶液を吸収させる際の硝酸第2鉄水溶液の量はルチル型酸化チタン微粒子の平均粒子径によっても異なるが、ルチル型酸化チタン微粒子が全体的に均一に硝酸第2鉄水溶液を吸収し、ペースト状となる程度が好ましい。この時、ペースト状混合物中のルチル型酸化チタン微粒子の濃度は固形分として概ね25〜60重量%程度である。
【0030】
ペースト状混合物中のルチル型酸化チタン微粒子の濃度が固形分として25重量%未満の場合は酸化鉄の全量を担持することができない場合があり、60重量%を越えるとルチル型酸化チタン微粒子に均一に酸化鉄を担持できない場合があり、消臭性能が不充分となる場合がある。
硝酸第2鉄の使用量は最終的に得られる酸化鉄を担持したルチル型酸化チタン微粒子中の酸化鉄の含有量がFe23として0.01〜2重量%、さらには0.02〜1.5重量%の範囲となるように使用する。
【0031】
ついで、ペースト状の混合物を乾燥する。乾燥方法は特に制限はなく従来公知の方法を採用することができる。乾燥温度は水分を実質的に除去できれば特に制限はないが、80〜250℃、さらには95〜200℃の範囲にあることが好ましい。
ついで、必用に応じて加熱処理するが、加熱温度は概ね200〜650℃、さらには300〜600℃の範囲である。加熱温度が200℃未満では硝酸根の分解、脱離が不充分で充分な消臭性能の向上効果が得られないことがある。加熱温度が650℃を超えると消臭性金属成分である酸化鉄が粒子成長したり、ルチル型酸化チタン微粒子が強く凝集し、粉砕を必要としたり、充分な消臭性能が得られない場合がある。
【0032】
抗菌・消臭性金属成分
本発明では、さらに、抗菌・消臭性金属成分として銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上を含むことが好ましい。なかでも銀または亜鉛は抗菌性能と消臭性能のいずれも優れているので好ましい。特に亜鉛の場合は全く変色することもないので好適に採用することができる。
このような抗菌・消臭成分はイオン、酸化物、水酸化物等の化合物またはこれらの混合物のいずれの形態で存在していてもよい。抗菌性の観点からはイオンの形態が好ましく、酸化物であれば消臭性にも優れた抗菌・消臭性塗膜が得られる。
【0033】
また、抗菌・消臭金属成分は消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の表層に存在するか、消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の内部まで比較的均一に分布していることが好ましい。
抗菌・消臭金属成分を消臭性ルチル型酸化チタン微粒子に担持する方法としては、例えば前記特許文献4(特開2005−318999号公報)に開示した方法に準じて担持することができる。
具体的には、例えば、負の電荷を有する消臭性ルチル型酸化チタン微粒子が分散した分散液に、抗菌・消臭性金属成分の金属塩水溶液を添加する方法が挙げられる。
【0034】
前記金属塩水溶液はアンミン錯塩水溶液が好ましい。アンミン錯塩水溶液を用いると消臭性ルチル型酸化チタン微粒子分散液の安定性を低下させたり、ゲル化させることなく長期にわたって安定な消臭性塗膜形成用塗布液、さらには抗菌・消臭性能に優れた消臭性塗膜付基材を得ることができる。
安定性が低下したり、ゲル化した消臭性塗膜形成用塗布液は用途が制限されたり、抗菌性能、消臭性能が不充分となることがある。
好適なアンミン錯塩水溶液は、例えば、酸化亜鉛、酸化銀あるいは酸化銅などをアンモニア水に溶解することによって、亜鉛、銀あるいは銅等のアンミン錯塩水溶液を調製することができる。
【0035】
なお、前記した方法以外にも、用途、用法によっては従来公知の含浸法等を採用することもできる。
抗菌・消臭性金属成分の含有量は酸化物換算で0.1〜20重量%、さらには0.2〜15重量%の範囲にあることが好ましい。
抗菌・消臭性金属成分の含有量が酸化物換算で0.1重量%よりも少ない場合には充分な抗菌・消臭性能が得られにくい。
抗菌・消臭性金属成分の含有量が酸化物換算で20重量%よりも多い場合には、さらに消臭性能および抗菌性能が向上することもなく、むしろ抗菌・消臭性金属成分が凝集するためかこれら性能が低下する場合がある。
【0036】
消臭性ルチル型酸化チタン微粒子は平均粒子幅(W)が2〜50nmの範囲にあり、平均長さ(L)が2〜500nmの範囲にあり、アスペクト比(L)/(W)が1〜10の範囲にあることが好ましい。
平均粒子幅(W)が2nm未満のものは得ることが困難であり、平均粒子幅(W)が50nmを越えると、後述する平均長さ(L)も長くなり、分散液、塗布液等に用いる場合に容易に沈降するため用途に制限がある。さらに好ましい平均粒子幅(W)は5〜30nmの範囲である。
【0037】
平均長さ(L)が2nm未満のものも得ることが困難であり、平均長さ(L)が500nmを越えると分散液、塗布液等に用いる場合容易に沈降するため用途に制限がある。さらに好ましい平均長さ(L)は5〜300nmの範囲である。
また、アスペクト比(L)/(W)は1未満になることはなく、アスペクト比(L)/(W)が10を越えものは得ることが困難である。
本発明での、平均粒子幅(W)、平均粒子長(L)の測定は、透過型電子顕微鏡写真を撮影し50個の粒子について粒子幅、粒子長を求め、その平均値として示した。
上記した消臭性ルチル型酸化チタン微粒子は、必用に応じてシランカップリング剤等により表面処理して用いることもできる。
【0038】
[消臭性塗膜形成用塗布液]
ついで、本発明に係る消臭性塗膜形成用塗布液について説明する。
本発明に係る消臭性塗膜形成用塗布液は、前記いずれかに記載の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子が分散媒中に分散してなることを特徴としている。
【0039】
消臭性ルチル型酸化チタン微粒子
消臭性ルチル型酸化チタン微粒子としては、前記した消臭性ルチル型酸化チタン微粒子を用いる。
【0040】
水溶性金属キレート化合物
本発明の消臭性塗膜形成用塗布液は、水系分散媒に溶解した水溶性金属キレート化合物を含有していることが好ましい。
本発明に用いる水溶性金属キレート化合物としては、金属がTi、Al、Zr、Si等である水溶性金属キレート化合物が挙げられる。なかでも、金属がTiである水溶性チタンキレート化合物は抗菌・消臭性能を低下させることがないので好適に使用することができる。
【0041】
水溶性チタンキレート化合物としては、水溶性チタンラクテートアンモニウム塩、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミン)、チタンラクテート等が挙げられる。
これらの水溶性チタンキレート化合物は、溶液自体も安定であるが、消臭性塗膜形成用塗布液に用いた場合も、安定で、これを塗布して得られる消臭性塗膜は基材との密着性、透明性、塗膜表面の平坦性に優れ、且つ、抗菌・消臭性能に優れている。
【0042】
水系分散媒
本発明に用いる水系分散媒としては、水、または水とアルコールの混合分散媒が好ましい。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、等が挙げられる。
混合分散媒の場合、混合比率は特に制限はないが、概ね水の割合が10重量%以上であることが好ましい。
【0043】
消臭性塗膜形成用塗布液中の水溶性金属キレート化合物のTiO2としての濃度は0.0001〜10重量%、さらには0.0005〜8重量%の範囲にあることが好ましい。
消臭性塗膜形成用塗布液中の水溶性金属キレート化合物のTiO2としての濃度が0.0001重量%未満の場合は、塗布液の安定性、基材との密着性、透明性等が不充分となる場合がある。
消臭性塗膜形成用塗布液中の水溶性金属キレート化合物のTiO2としての濃度が10重量%を超えると、塗布液の安定性がさらに向上することもなく、得られる消臭性塗膜中の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の含有量が低下するために、抗菌・消臭性能が不充分となる場合がある。
【0044】
消臭性塗膜形成用塗布液中の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の固形分としての重量(Wa)と水溶性金属キレート化合物のTiO2としての重量(Wb)の重量比(Wb)/(Wa)が0.005〜1.0、さらには0.01〜0.5の範囲にあることが好ましい。
前記重量比(Wb)/(Wa)が0.005未満の場合は、水溶性金属キレート化合物が少なくなり、塗布液の安定性、基材との密着性、透明性、表面平坦性等が低下したり、膜強度が不充分となる場合がある。
【0045】
前記重量比(Wb)/(Wa)が1.0を超えると、塗布液の安定性がさらに向上することもなく、得られる消臭性塗膜中の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の含有量が低下するために、抗菌・消臭性能が不充分となる場合がある。
さらに、本発明の消臭性塗膜形成用塗布液には他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、顔料、分散材、界面活性剤等の他、通常塗料やインキに配合剤として用いられる成分が挙げられる。
【0046】
消臭性塗膜形成用塗布液の全固形分濃度は0.01〜20重量%、さらには0.1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
全固形分濃度が0.01重量%未満の場合は、塗布して得られる消臭性塗膜の膜厚が薄くなり、抗菌・消臭性能が不充分となるほか、膜の強度が不充分、基材表面に凹凸がある場合は表面の平坦性が不充分となる場合がある。
全固形分濃度が20重量%を超えると、塗布液の安定性が不充分となったり、塗工性が低下し、得られる消臭性塗膜の基材との密着性、表面平坦性、透明性、耐久性、クラック抑制等が低下するとともに抗菌性能、消臭性能が不充分となる場合がある。
【0047】
消臭性塗膜形成用塗布液中の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の濃度は固形分として0.005〜19.9重量%、さらには0.1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
消臭性塗膜形成用塗布液中の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の濃度が形分として0.005重量%未満の場合は、抗菌・消臭性能が不充分となる場合がある。
消臭性塗膜形成用塗布液中の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の濃度が固形分として19.9重量%を超えると、水溶性金属キレート化合物が制限されるが、この場合、塗布液の安定性、基材との密着性、透明性等が低下し膜強度が不充分となる場合がある。
【0048】
[消臭性塗膜付基材]
つぎに、本発明に係る消臭性塗膜付基材について説明する。
本発明に係る消臭性塗膜付基材は、基材と、基材上に形成された消臭性塗膜とからなり、該消臭性塗膜が前記いずれかに記載の消臭性塗膜形成用塗布液を用いて形成された消臭性塗膜であることを特徴としている。
【0049】
基材
基材としては、ガラス、金属、樹脂、セラミック、木、無機酸化物等の基材が挙げられる。
前記消臭性塗膜中の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の固形分としての含有量が50〜100重量%の範囲にあり、水溶性金属キレート化合物のTiO2としての含有量が0〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
【0050】
消臭性塗膜中の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の固形分としての含有量は50〜100重量%、さらには60〜96重量%の範囲にあることが好ましい。
消臭性塗膜中の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の固形分としての含有量が50重量%未満の場合は、抗菌・消臭性能が不充分となる場合がある。
【0051】
消臭性塗膜に水溶性金属キレート化合物を含む場合、消臭性塗膜中の水溶性金属キレート化合物のTiO2としての含有量は50重量%以下、さらには4〜40重量%の範囲にあることが好ましい。
消臭性塗膜中の水溶性金属キレート化合物のTiO2としての含有量が少ない場合は基材との密着性、透明性、表面平坦性、膜強度等が不充分となる場合がある。
消臭性塗膜中の水溶性金属キレート化合物のTiO2としての含有量が50重量%を超えると、消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の含有量が少ないために抗菌・消臭性能が不充分となる場合がある。
【0052】
消臭性塗膜の膜厚は50μm以下、さらには20μm以下の範囲にあることが好ましい。
消臭性塗膜の膜厚が50μmを超えても、抗菌・消臭性能がさらに向上することもなく、塗膜にクラックが生じたり、透明性が低下するため用途が制限される場合がある。
なお、消臭性塗膜の膜厚の下限値としては、消臭性能が得られれば特に限定するものではなく、基材上に消臭性ルチル型酸化チタン微粒子が点在していてもよい。
消臭性塗膜形成用塗布液に水溶性金属キレート化合物を含む場合、消臭性塗膜の膜厚は0.1μm以上であることが好ましい。この場合、消臭性塗膜の膜厚が0.1μm未満の場合は、抗菌・消臭性能が不充分となる場合があり、長期に亘って高い抗菌・消臭性能を維持できない場合がある。
【0053】
このような抗菌・消臭性塗膜付基材は、前記抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液を、ディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコーター法等の周知の方法で前記した基材に塗布し、乾燥し、さらに必要に応じて加熱処理によって硬化させることによって製造することができる。
【0054】
本発明の消臭性塗膜において消臭の対象となる臭気成分としては、法定悪臭8物質(硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化ジメチル、アンモニア、トリメチルアミン、アセトアルデヒド、スチレン)、炭化水素、ケトン、アルデヒド、アルコール類、エステル類、窒素化合物、硫黄化合物、低級脂肪酸等が挙げられる。
抗菌の対象となる菌類としては、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌、緑膿菌、プロテウス菌、肺炎桿菌、枯草菌等、真菌としては黒かび、黒麹かび、白かび等、ウイルスとしてはインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ノロウイルス等、藻類としてはクロレラ等が挙げられる。
本発明の消臭性塗膜は、居住空間、公共施設、医療施設、養護施設、自動車内装等において、消臭性能、抗菌性能が求められる箇所において、特に可視光を含む自然光もしくは人工光源の照射下で有用である。
【実施例】
【0055】
[実施例1]
消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(1)の調製
濃度35重量%の過酸化水素水1425gを純水7122gで希釈した過酸化水素水溶液に濃度63重量%の硝酸6.3gを加え、これにテトライソプロピルチタネート143gを添加し黄褐色のペルオキソチタン酸水溶液を得た。
ついで、ペルオキソチタン酸水溶液を90℃で2時間、95℃で12時間熟成した。溶液は、最初黄褐色であったが、熟成後には乳白色の透明性液体(コロイド液)となった。
ついで、透明性液体(コロイド液)に濃度63重量%の硝酸3.2g添加し、180℃で16時間水熱処理(加熱)してルチル型酸化チタン微粒子(1)分散液を調製した。
得られたルチル型酸化チタン微粒子(1)分散液を限外濾過膜法により、洗浄し、ついで濃縮し、消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(1)分散ゾルを得た。
【0056】
乾燥したルチル型酸化チタン微粒子(1)について、平均粒子幅(W)、平均粒子長(L)を測定し、BET法により比表面積を測定し、X線回折法(理学電機製:LAD−IIC型、Cu管球、35kV、12.5mA)により結晶形を測定し結果を表に示した。
【0057】
ついで、ルチル型酸化チタン微粒子(1)分散ゾル(固形分10重量%)80gを水720gに分散し、充分撹拌した後、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SA20A)5gを混合し、ついで、温度を50℃に調整した後、Fe23としての濃度0.1重量%の硝酸第2鉄水溶液8gを添加し、2時間撹拌した後、95℃で1時間熟成し、ついで、イオン交換樹脂を分離し、限外濾過膜法により、固形分濃度10重量%の酸化鉄を担持した消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(1)分散液を得た。酸化鉄の担持量を表に示した。
【0058】
消臭性塗膜形成用塗布液(1)の調製
イオン交換水85重量部に、固形分濃度10重量%の酸化鉄を担持した消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(1)分散液10重量部を配合し、充分に分散させた後、これに水溶性金属キレート化合物としてチタンラクテートアンモニウム塩溶液(マツモトファインケミカル(株)製:オルガチックスTC-300、チタンラクテートアンモニウム塩42重量%、水20重量%、イソプロピルアルコール38重量%、TiO2としての濃度10.0重量%)5重量部を添加して、固形分濃度1.5重量%の消臭性塗膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0059】
消臭性塗膜付基材(1)の作成
厚さ0.105mmの工業用純アルミニウム板を脱脂し、苛性処理し、充分に水で洗浄して乾燥したアルミニウム基材表面に抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1)をバーコーター法で膜厚が約10μmになるように塗布し、120℃で2分間乾燥した。次いで200℃で2分間加熱処理して消臭性塗膜付基材(1)を作成した。
得られた消臭性塗膜付基材(1)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。なお、評価方法、評価基準は以下に示す。
【0060】
膜厚
垂直に切断した膜の断面を走査型電子顕微鏡観察により観察して測定した。
【0061】
密着性
JIS K 5400に基づく基盤目試験に準拠し、塗膜付基材(1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロハンテープ(登録商標)を接着し、ついで、セロハンテープ(登録商標)を剥離したときに塗膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することによって密着性を評価した。結果を表1に示す。
残存升目の数98個以上 :◎
残存升目の数93〜97個:○
残存升目の数85〜92個:△
残存升目の数84個以下 :×
【0062】
表面平坦性
触針式表面荒さ計(東京精密(株)製:サーフコム)で表面の平均荒さ(μm)を評価した。
【0063】
消臭性能
試験臭(1):アセトアルデヒド(初期濃度:60ppm)
試験方法:1Lテドラーバッグに検体(10cm×10cm)を入れ、臭気1Lを添加後、室温にて、蛍光灯照射下(照度:4klux)で放置した。24時間後、検知管にて測定した臭気残存濃度から消臭率を求め、また二酸化炭素発生量(ppm)を測定した。
【0064】
試験臭(2,3):硫化水素(初期濃度:4ppm)、アンモニア(初期濃度:100ppm)
試験方法:5Lテドラーバッグに検体(10cm×10cm)を入れ、臭気3Lを添加後、室温にて、蛍光灯照射下(照度:400lux)で放置した。2時間後検知管にて測定した臭気残存濃度から消臭率を求めた。
【0065】
抗菌性能
JIS Z2801に準拠し、抗菌・消臭性塗膜付基材(1)に菌懸濁液、0.4mlを接種し、その上に被覆フイルムを被せて蓋をした後、35±1℃、RH90以上で24時間放置後、菌懸濁液を回収して生菌数を測定し、次式(1)の殺菌活性値により抗菌性能を評価した。
結果を表2に示す。
試験菌には、黄色ぶどう球菌、大腸菌、およびMRSAを用い、菌懸濁液の栄養として、肉エキス(3g/L)+ペプトン(10g/L)+塩化ナトリウム(5g/L)を100倍に薄めたものを使用した。
殺菌活性値=Log(植菌数)−Log(試験片生菌数) ・・・(1)
【0066】
[実施例2]
消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(2)の調製
実施例1において、Fe23としての濃度0.1重量%の硝酸第2鉄水溶液4gを添加した以外は同様にして消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(2)分散液を得た。
消臭性塗膜形成用塗布液(2)の調製
実施例1において、消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(2)分散液を用いた以外は同様にして固形分濃度1.5重量%の消臭性塗膜形成用塗布液(2)を調製した。
【0067】
消臭性塗膜付基材(2)の作成
実施例1において、消臭性塗膜形成用塗布液(2)を用いた以外は同様にして消臭性塗膜付基材(2)を作成した。
得られた消臭性塗膜付基材(2)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0068】
[実施例3]
消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(3)の調製
実施例1において、Fe23としての濃度0.1重量%の硝酸第2鉄水溶液40gを添加した以外は同様にして消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(3)分散液を得た。
消臭性塗膜形成用塗布液(3)の調製
実施例1において、消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(3)分散液を用いた以外は同様にして固形分濃度1.5重量%の消臭性塗膜形成用塗布液(3)を調製した。
【0069】
消臭性塗膜付基材(3)の作成
実施例1において、消臭性塗膜形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にして消臭性塗膜付基材(3)を作成した。
得られた消臭性塗膜付基材(3)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0070】
[実施例4]
消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(4)の調製
実施例1と同様にして調製したルチル型酸化チタン微粒子(1)分散ゾル(固形分10重量%)80gを水720gに分散する。一方、酸化銀、0.4gに水39.6gを入れ、15%アンモニアを6g添加して攪拌し、溶解後、ルチル型酸化チタン微粒子(1)分散ゾルに添加して、95℃で4時間熟成し、限外濾過膜法により固形分の100倍量の水で洗浄、濃縮後、Ag2O担持されたルチル型酸化チタン微粒子(4)分散ゾルを得た。
【0071】
ついで、ルチル型酸化チタン微粒子(4)分散ゾル(固形分10重量%)80gを水720gに分散し、充分撹拌した後、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SA20A)5gを混合し、ついで、温度を50℃に調整した後、Fe23としての濃度0.1重量%の硝酸第2鉄水溶液8gを添加し、2時間撹拌した後、95℃で1時間熟成し、ついで、イオン交換樹脂を分離し、限外濾過膜法により、固形分濃度10重量%の酸化鉄を担持した消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(4)分散液を得た。
【0072】
消臭性塗膜形成用塗布液(4)の調製
実施例1において、消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(4)分散液を用いた以外は同様にして固形分濃度1.5重量%の消臭性塗膜形成用塗布液(4)を調製した。
【0073】
消臭性塗膜付基材(4)の作成
実施例1において、消臭性塗膜形成用塗布液(4)を用いた以外は同様にして消臭性塗膜付基材(4)を作成した。
得られた消臭性塗膜付基材(4)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0074】
[実施例5]
消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(5)の調製
濃度35重量%の過酸化水素水1425gを純水7122gで希釈した過酸化水素水溶液に濃度63重量%の硝酸6.3gを加え、これにテトライソプロピルチタネート143gを添加し黄褐色のペルオキソチタン酸水溶液を得た。
ペルオキソチタン酸水溶液(固形分1%)800gを50℃に加温し、15%アンモニアでpHを9.0に調整した。一方、硝酸亜鉛2.92gに水79.2gを加え攪拌溶解する。硝酸亜鉛溶液を1時間かけて、ペルオキソチタン酸水溶液(固形分1%)に添加し、同時に陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製ダイヤイオンSA20A)をpHが9.0を切らないように添加する。添加終了後、イオン交換樹脂を分離した。
【0075】
ついで、ペルオキソチタン酸水溶液を90℃で2時間、95℃で12時間熟成した。溶液は、最初黄褐色であったが、熟成後には乳白色の透明性液体(コロイド液)となった。
ついで、透明性液体(コロイド液)に濃度63重量%の硝酸3.2g添加し、180℃で16時間水熱処理(加熱)してルチル型酸化チタン微粒子(5)分散液を調製した。
得られた亜鉛担持ルチル型酸化チタン微粒子(5)分散液を限外濾過膜法により、洗浄し、ついで濃縮し、亜鉛担持ルチル型酸化チタン微粒子(5)分散ゾルを得た。
【0076】
ついで、ルチル型酸化チタン微粒子(5)分散ゾル(固形分10重量%)80gを水720gに分散し、充分撹拌した後、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SA20A)5gを混合し、ついで、温度を50℃に調整した後、Fe23としての濃度0.1重量%の硝酸第2鉄水溶液8gを添加し、2時間撹拌した後、95℃で1時間熟成し、ついで、イオン交換樹脂を分離し、限外濾過膜法により、固形分濃度10重量%の酸化鉄を担持した消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(5)分散液を得た。
【0077】
消臭性塗膜形成用塗布液(5)の調製
実施例1において、消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(5)分散液を用いた以外は同様にして固形分濃度1.5重量%の消臭性塗膜形成用塗布液(5)を調製した。
【0078】
消臭性塗膜付基材(5)の作成
実施例1において、消臭性塗膜形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にして消臭性塗膜付基材(5)を作成した。
得られた消臭性塗膜付基材(5)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0079】
[実施例6]
消臭性塗膜形成用塗布液(6)の調製
実施例1において、チタンラクテートアンモニウム塩溶液(マツモトファインケミカル(株)製:オルガチックスTC-300、チタンラクテートアンモニウム塩42重量%、水20重量%、イソプロピルアルコール38重量%、TiO2としての濃度10.0重量%)2.5重量部を添加して、固形分濃度1.25重量%の消臭性塗膜形成用塗布液(6)を調製した。
【0080】
消臭性塗膜付基材(6)の作成
実施例1において、消臭性塗膜形成用塗布液(6)を用いた以外は同様にして消臭性塗膜付基材(6)を作成した。
得られた消臭性塗膜付基材(6)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0081】
[実施例7]
消臭性塗膜形成用塗布液(7)の調製
実施例1において、チタンラクテートアンモニウム塩溶液(マツモトファインケミカル(株)製:オルガチックスTC-300、チタンラクテートアンモニウム塩42重量%、水20重量%、イソプロピルアルコール38重量%、TiO2としての濃度10.0重量%)1.25重量部を添加して、固形分濃度1.125重量%の消臭性塗膜形成用塗布液(7)を調製した。
【0082】
消臭性塗膜付基材(7)の作成
実施例1において、消臭性塗膜形成用塗布液(7)を用いた以外は同様にして消臭性塗膜付基材(7)を作成した。
得られた消臭性塗膜付基材(7)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0083】
[実施例8]
消臭性塗膜形成用塗布液(8)の調製
イオン交換水90重量部に、固形分濃度10重量%の酸化鉄を担持した消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(1)分散液10重量部を配合し、固形分濃度1.0重量%の消臭性塗膜形成用塗布液(8)を調製した。
【0084】
消臭性塗膜付基材(8)の作成
実施例1において、消臭性塗膜形成用塗布液(8)を用いた以外は同様にして消臭性塗膜付基材(8)を作成した。
得られた消臭性塗膜付基材(8)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0085】
[比較例1]
消臭性アナターゼ型酸化チタン微粒子(R1)の調製
酸化チタン系微粒子分散液(日揮触媒化成(株)製:ATOMYBALL-(TZ-R)、平均粒子径10nm、固形分濃度10.0重量%、固形分中の抗菌消臭成分(ZnO)含有量8.0重量%、アナターゼ型)80gを水720gに分散し、充分撹拌した、
ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SA20A)5gを混合し、ついで、温度を50℃に調整した後、Fe23としての濃度0.1重量%の硝酸第2鉄水溶液8gを添加し、2時間撹拌した後、95℃で1時間熟成し、ついで、イオン交換樹脂を分離し、限外濾過膜法により、固形分濃度10重量%の酸化鉄を担持した消臭性アナターゼ型酸化チタン微粒子(R1)分散液を得た。
【0086】
消臭性塗膜形成用塗布液(R1)の調製
イオン交換水85重量部に、固形分濃度10重量%の酸化鉄を担持した消臭性アナターゼ型酸化チタン微粒子(R1)分散液10重量部を配合し、充分に分散させた後、これに水溶性金属キレート化合物としてチタンラクテートアンモニウム塩溶液(マツモトファインケミカル(株)製:オルガチックスTC-300、チタンラクテートアンモニウム塩42重量%、水20重量%、イソプロピルアルコール38重量%、TiO2としての濃度10.0重量%)5重量部を添加して、固形分濃度1.5重量%の消臭性塗膜形成用塗布液(R1)を調製した。
【0087】
消臭性塗膜付基材(R1)の作成
実施例1において、消臭性塗膜形成用塗布液(R1)を用いた以外は同様にして消臭性塗膜付基材(R1)を作成した。
得られた消臭性塗膜付基材(R1)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0088】
[比較例2]
消臭性塗膜形成用塗布液(R2)の調製
イオン交換水90重量部に、比較例1と同様にして調製した固形分濃度10重量%の酸化鉄を担持した消臭性アナターゼ型酸化チタン微粒子(R1)分散液10重量部を配合し、固形分濃度1.0重量%の消臭性塗膜形成用塗布液(R2)を調製した。
【0089】
消臭性塗膜付基材(R2)の作成
実施例1において、消臭性塗膜形成用塗布液(R2)を用いた以外は同様にして消臭性塗膜付基材(R2)を作成した。
得られた消臭性塗膜付基材(R2)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0090】
[比較例3]
消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(R3)の調製
実施例1において、硝酸第2鉄水溶液を添加することなく固形分濃度10重量%のルチル型酸化チタン微粒子(R3)分散液を得た。
【0091】
消臭性塗膜形成用塗布液(R3)の調製
イオン交換水85重量部に、固形分濃度10重量%のルチル型酸化チタン微粒子(R3)分散液10重量部を配合し、充分に分散させた後、これに水溶性金属キレート化合物としてチタンラクテートアンモニウム塩溶液(マツモトファインケミカル(株)製:オルガチックスTC-300、チタンラクテートアンモニウム塩42重量%、水20重量%、イソプロピルアルコール38重量%、TiO2としての濃度10.0重量%)5重量部を添加して、固形分濃度1.5重量%の消臭性塗膜形成用塗布液(R3)を調製した。
【0092】
消臭性塗膜付基材(R3)の作成
実施例1において、消臭性塗膜形成用塗布液(R3)を用いた以外は同様にして消臭性塗膜付基材(R3)を作成した。
得られた消臭性塗膜付基材(R3)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0093】
[比較例4]
抗菌性ルチル型酸化チタン微粒子(R4)の調製
濃度35重量%の過酸化水素水1425gを純水7122gで希釈した過酸化水素水溶液に濃度63重量%の硝酸6.3gを加え、これにテトライソプロピルチタネート143gを添加し黄褐色のペルオキソチタン酸水溶液を得た。
ペルオキソチタン酸水溶液(固形分1%)800gを50℃に加温し、15%アンモニアでpHを9.0に調整した。一方、硝酸亜鉛2.92gに水79.2gを加え攪拌溶解する。硝酸亜鉛溶液を1時間かけて、ペルオキソチタン酸水溶液(固形分1%)に添加し、同時に陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製ダイヤイオンSA20A)をpHが9.0を切らないように添加する。添加終了後、イオン交換樹脂を分離した。
【0094】
ついで、ペルオキソチタン酸水溶液を90℃で2時間、95℃で12時間熟成した。溶液は、最初黄褐色であったが、熟成後には乳白色の透明性液体(コロイド液)となった。
ついで、透明性液体(コロイド液)に濃度63重量%の硝酸3.2g添加し、180℃で16時間水熱処理(加熱)してルチル型酸化チタン微粒子(R4)分散液を調製した。
得られた亜鉛担持ルチル型酸化チタン微粒子(R4)分散液を限外濾過膜法により、洗浄し、ついで濃縮して、固形分濃度10重量%の抗菌性ルチル型酸化チタン微粒子(R4)分散液を得た。
【0095】
消臭性塗膜形成用塗布液(R4)の調製
イオン交換水85重量部に、固形分濃度10重量%抗菌性のルチル型酸化チタン微粒子(R4)分散液10重量部を配合し、充分に分散させた後、これに水溶性金属キレート化合物としてチタンラクテートアンモニウム塩溶液(マツモトファインケミカル(株)製:オルガチックスTC-300、チタンラクテートアンモニウム塩42重量%、水20重量%、イソプロピルアルコール38重量%、TiO2としての濃度10.0重量%)5重量部を添加して、固形分濃度1.5重量%の消臭性塗膜形成用塗布液(R4)を調製した。
【0096】
消臭性塗膜付基材(R4)の作成
実施例1において、消臭性塗膜形成用塗布液(R4)を用いた以外は同様にして消臭性塗膜付基材(R4)を作成した。
得られた消臭性塗膜付基材(R4)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0097】
[比較例5]
消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(R5)の調製
実施例1において、Fe23としての濃度1重量%の硝酸第2鉄水溶液50gを添加した以外は同様にして固形分濃度10重量%の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子(R5)分散液を得た。酸化鉄の担持量を表に示した。
【0098】
消臭性塗膜形成用塗布液(R5)の調製
イオン交換水85重量部に、固形分濃度10重量%抗菌性のルチル型酸化チタン微粒子(R5)分散液10重量部を配合し、充分に分散させた後、これに水溶性金属キレート化合物としてチタンラクテートアンモニウム塩溶液(マツモトファインケミカル(株)製:オルガチックスTC-300、チタンラクテートアンモニウム塩42重量%、水20重量%、イソプロピルアルコール38重量%、TiO2としての濃度10.0重量%)5重量部を添加して、固形分濃度1.5重量%の消臭性塗膜形成用塗布液(R5)を調製した。
【0099】
消臭性塗膜付基材(R5)の作成
実施例1において、消臭性塗膜形成用塗布液(R5)を用いた以外は同様にして消臭性塗膜付基材(R5)を作成した。
得られた消臭性塗膜付基材(R5)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子幅(W)が2〜50nmの範囲にあり、平均長さ(L)が2〜500nmの範囲にあり、アスペクト比(L)/(W)が1〜10の範囲にあり、消臭成分として鉄をFe23換算で0.01〜2重量%の範囲で含有することを特徴とする消臭性ルチル型酸化チタン微粒子。
【請求項2】
さらに、抗菌・消臭性金属成分を酸化物換算で0.1〜20重量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子。
【請求項3】
前記抗菌・消臭性金属成分が銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の金属成分であることを特徴とする請求項1または2に記載の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子が分散媒中に分散してなることを特徴とする消臭性塗膜形成用塗布液。
【請求項5】
前記分散媒が水溶性金属キレート化合物を含有する水系分散媒であることを特徴とする請求項4に記載の消臭性塗膜形成用塗布液。
【請求項6】
前記水溶性金属キレート化合物がチタンキレート化合物であることを特徴とする請求項4または5に記載の消臭性塗膜形成用塗布液。
【請求項7】
前記チタンキレート化合物がチタンラクテートアンモニウム塩であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液。
【請求項8】
全固形分濃度が0.01〜20重量%の範囲にあり、前記消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の固形分としての濃度が0.005〜19.9重量%の範囲にあり、前記水溶性金属キレート化合物のTiO2としての濃度が0.0001〜10.0重量%の範囲にあり、消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の重量(Wa)と水溶性金属キレート化合物のTiO2としての重量(Wb)の重量比(Wb)/(Wa)が0.005〜1.0の範囲にあることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の消臭性塗膜形成用塗布液。
【請求項9】
基材と、基材上に形成された消臭性塗膜とからなり、該消臭性塗膜が請求項4〜8のいずれかに記載の消臭性塗膜形成用塗布液を用いて形成された消臭性塗膜であることを特徴とする消臭性塗膜付基材。
【請求項10】
前記消臭性塗膜中の消臭性ルチル型酸化チタン微粒子の固形分としての含有量が50〜100重量%の範囲にあり、水溶性金属キレート化合物のTiO2としての含有量が0〜50重量%の範囲にあることを特徴とする請求項9に記載の消臭性塗膜付基材。

【公開番号】特開2012−96133(P2012−96133A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243613(P2010−243613)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】