説明

消臭材及びその製造方法

【課題】メチルメルカプタン、硫化水素、ジメチルジスルフィド等の硫黄系悪臭に対して優れた消臭性能を発揮し、しかもこの優れた消臭性能を長く維持できる消臭材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】合成繊維にバインダー樹脂を介して消臭剤を付着させた消臭材において、合成繊維の少なくとも一部に鹸化度が95.0〜99.5%の範囲の水溶性ポリビニルアルコール樹脂からなるバインダー樹脂と、架橋剤と、金属フタロシアニン錯体とを付着させることによって、硫黄系悪臭に対して優れた消臭性能を発揮し、しかもこの優れた消臭性能を長く維持できることを見出し本発明に到達した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば家庭用または業務用のエアコン、消臭シート等の消臭フィルター等として用いられる消臭材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境の快適さに対し一層の向上が求められている。それに伴い、住宅の高気密化が進み臭いがこもりやすく、例えばメチルメルカプタン、硫化水素、トリメチルアミン、ジメチルジスルフィド、酢酸、アセトアルデヒド等の臭いを除去したいという要望が高まっている。
【0003】
そのため、各種の消臭材が提案されている。例えば活性炭を不織布に坦持した消臭シートや、鉄フタロシアニン錯体を坦持したものが知られている。しかしながら、前者の活性炭による吸着タイプの消臭シートは、速効性は十分にあるものの消臭効果の持続性に乏しい点があった。また、後者の鉄フタロシアニン錯体を坦持したものは、消臭効果の持続性について十分といえるものではなかった。
【0004】
出願人は、ヒドラジド誘導体と金属フタロシアニン錯体と無機多孔質体とを含む消臭組成物を坦持した消臭材について開示(特許文献1)している。このような消臭材は、優れた消臭性能を発揮するとともに優れた消臭性能を長く維持できるものの、消臭性能をさらに長く持続できる消臭材が求められている。
【0005】
また、例えばポリプロピレン等の合成繊維にバインダー樹脂を介して消臭剤を付着させたものや、例えばレーヨン等の天然繊維に金属フタロシアニン錯体を坦持させたものが公知である。しかしながら、バインダー樹脂を介して付着させたものは、金属フタロシアニン錯体がバインダー樹脂に埋没するため、金属フタロシアニン錯体の付着量に見合う十分な消臭性能を発揮しないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−275288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、メチルメルカプタン、硫化水素、ジメチルジスルフィド等の硫黄系悪臭に対して優れた消臭性能を発揮し、しかもこの優れた消臭性能を長く維持できる消臭材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1]合成繊維にバインダー樹脂を介して消臭剤を付着させた消臭材において、合成繊維の少なくとも一部に鹸化度が95.0〜99.5%の範囲の水溶性ポリビニルアルコール樹脂からなるバインダー樹脂と、架橋剤と、金属フタロシアニン錯体とを付着させていることに特徴のある消臭材。
【0010】
[2]前記架橋剤は、有機チタン系架橋剤、有機ジルコニウム系架橋剤、ホウ素系架橋剤から選ばれる1種または複数の架橋剤である前項1に記載の消臭材。
【0011】
[3]前記水溶性ポリビニルアルコール樹脂の合成繊維に対する付着量が5〜30質量%、前記架橋剤の合成繊維に対する付着量が0.4〜2.4質量%、前記金属フタロシアニン錯体の合成繊維に対する付着量が0.1〜0.6質量%である前項1または2に記載の消臭材。
【0012】
[4]前項1〜3のいずれか1項に記載の消臭材を少なくとも一部に含む消臭フィルター。
【0013】
[5]前項1〜3のいずれか1項に記載の消臭材を少なくとも一部に含む繊維布帛。
【0014】
[6]水溶性ポリビニルアルコール樹脂と架橋剤とを含む処理液に浸漬してから加熱乾燥し、次にカチオン化処理液に浸漬して水洗後加熱乾燥し、最後に金属フタロシアニン錯体溶液に浸漬し、水洗後加熱乾燥して金属フタロシアニン錯体を合成繊維の少なくとも一部に付着させることに特徴のある消臭材の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
[1]の発明では、鹸化度が95.0〜99.5%の範囲の水溶性ポリビニルアルコール樹脂からなるバインダー樹脂と架橋剤によって、前記水溶性ポリビニルアルコール樹脂の鹸化度が95.0〜99.5%の範囲に規定されているので、水溶性ポリビニルアルコール樹脂の水溶性を確保しつつ、加熱乾燥後に形成される皮膜の耐水性を向上させることができるとともに、合成繊維の少なくとも一部に水溶性ポリビニルアルコール樹脂を付着させることができる。さらに、皮膜化したポリビニルアルコール樹脂をカチオン化処理することによって、皮膜化したポリビニルアルコール樹脂に金属フタロシアニン錯体を結合させることができる。そうすると、合成繊維の少なくとも一部に金属フタロシアニン錯体を付着させることができるので、メチルメルカプタン、硫化水素、ジメチルジスルフィド等の硫黄系悪臭に対して優れた消臭性能を発揮し、しかもこの優れた消臭性能を長く維持できる。
【0016】
[2]の発明では、前記架橋剤は有機チタン系架橋剤、有機ジルコニウム系架橋剤、ホウ素系架橋剤から選ばれる1種または複数の架橋剤からなるので、水溶性ポリビニルアルコール樹脂の加熱乾燥後に形成される皮膜の耐水性を格段に向上させることができる。そうすると、水溶性ポリビニルアルコール樹脂の合成繊維からの脱離を防止することができるので、消臭性能の持続耐久性を格段に向上させることができる。
【0017】
[3]の発明では、前記水溶性ポリビニルアルコール樹脂の合成繊維に対する付着量が、5〜30質量%範囲に規定されているので、十分に金属フタロシアニン錯体を合成繊維に付着させることができる。前記架橋剤の合成繊維に対する付着量が、0.4〜2.4質量%範囲に規定されているので、水溶性ポリビニルアルコール樹脂の加熱乾燥後に形成される皮膜の耐水性を効果的に向上させることができる。そうすると、水溶性ポリビニルアルコール樹脂の合成繊維からの脱離を防止することができるので、消臭性能の持続耐久性を効果的に向上させることができる。前記金属フタロシアニン錯体の合成繊維に対する付着量が、0.1〜0.6質量%範囲に規定されているので、より低コストで十分な消臭性能を確保することができる。
【0018】
[4]の発明では、優れた消臭性能を発揮し、しかもこの優れた消臭性能を長く維持できる消臭フィルターが提供される。
【0019】
[5]の発明では、優れた消臭性能を発揮し、しかもこの優れた消臭性能を長く維持できる繊維布帛が提供される。
【0020】
[6]の発明では、水溶性ポリビニルアルコール樹脂と架橋剤とを含む処理液に浸漬するので、塗布ムラのない均一な塗布を合成繊維に行うことができ、加熱乾燥するので、架橋剤によって水溶性ポリビニルアルコール樹脂が架橋して耐水性の向上した皮膜となるとともに、合成繊維への付着性がより高まる。次にカチオン化処理液に浸漬するので、塗布ムラのない均一な塗布を行うことができ、水洗後加熱乾燥するので、不要なカチオン化処理液は除去され、皮膜化したポリビニルアルコール樹脂を十分にカチオン化することができる。最後に金属フタロシアニン錯体溶液に浸漬するので、塗布ムラのない均一な塗布を行うことができ、水洗後加熱乾燥するので、不要な金属フタロシアニン錯体は除去され、金属フタロシアニン錯体を十分に付着させることができ、優れた消臭性能を発揮し、しかもこの優れた消臭性能を長く維持できる消臭材の製造方法とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の消臭材について、さらに詳しく説明する。
【0022】
本発明において、水溶性ポリビニルアルコール樹脂の鹸化度は95.0〜99.5%の範囲である必要がある。鹸化度が95.0%未満では、水への溶解性は良好であるが、加熱乾燥後に形成する皮膜の耐水性が劣るものとなるので、合成繊維からの脱離を十分に抑制することができなくなる。一方、鹸化度が99.5%を越えると、加熱乾燥後に形成する皮膜の耐水性は十分であるが逆に水溶性が著しく低下するので、合成繊維へ付着させることが困難になる。前記水溶性ポリビニルアルコール樹脂の付着量は5〜30質量%の範囲である必要がある。付着量が5質量%未満では、十分に金属フタロシアニン錯体を付着させることができなくなるので、十分な消臭効果が得られなくなる。一方、付着量が30質量%を越えても、付着量の増加に見合った効果の向上が得られず、徒に材料コストの上昇を招くことになる。
【0023】
本発明において、合成繊維は特に限定するものではないが、例えばポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維等を挙げることができる。
【0024】
本発明において、架橋剤は有機チタン系架橋剤、有機ジルコニウム系架橋剤、ホウ素系架橋剤から選ばれる1種または複数の架橋剤である。有機チタン系架橋剤としては、例えばチタンジイソプロポキシ-ビス-トリエタノールアミネート、チタンラクテート、ポリヒドロキシチタンステアレート等を挙げることができる。有機ジルコニウム系架橋剤としては、例えば塩化ジルコニウムアミノカルボン酸、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート、炭酸ジルコニルアンモニウム等を挙げることができる。ホウ素系架橋剤としては、例えばホウ砂を挙げることができる。架橋剤が、水溶性ポリビニルアルコール樹脂の加熱乾燥後に形成される皮膜の耐水性さらに向上させるので、合成繊維からの脱離を十分に防止することができるので、消臭性能の持続耐久性を向上させることができる。前記架橋剤の付着量は0.4〜2.4質量%の範囲である必要がある。付着量が0.4質量%未満では、水溶性ポリビニルアルコール樹脂の皮膜を十分に形成することができなくなるので、合成繊維からの脱離を十分に抑制することができなくなる。一方、付着量が2.4質量%を越えても、付着量の増加に見合った効果の向上が得られず、徒に材料コストの上昇を招くことになる。
【0025】
本発明において、前記金属フタロシアニン錯体としては、特に限定されないが、コバルトフタロシアニン錯体、鉄フタロシアニン錯体、ニッケルフタロシアニン錯体、銅フタロシアニン錯体などが挙げられる。中でも、コバルトフタロシアニン錯体または鉄フタロシアニン錯体を用いるのが好ましく、硫黄系悪臭に対して優れた消臭性能を発揮し、しかもこの優れた消臭性能を長く維持できる。前記コバルトフタロシアニン錯体としては、例えばコバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウム、コバルトフタロシアニンテトラカルボン酸ナトリウム等が挙げられ、また前記鉄フタロシアニン錯体としては、例えば鉄フタロシアニンオクタカルボン酸ナトリウム等が挙げられる。前記金属フタロシアニン錯体の付着量は0.1〜0.6質量%の範囲である必要がある。付着量が0.1質量%未満では、十分な消臭効果が得られなくなる。一方、付着量が0.6質量%を越えても、水溶性ポリビニルアルコール樹脂の水酸基と化学的に結合しない状態の金属フタロシアニン錯体が存在することになり、金属フタロシアニン錯体同士が会合するばかりで、付着量の増加に見合った効果の向上が得られず、徒に材料コストの上昇を招くことになる。
【0026】
前記カチオン化処理に用いるカチオン化剤としては、特に限定されないが、四級アンモニウム塩を用いるのが好ましい。前記四級アンモニウム塩としては、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド縮合ポリマー等を例示できる。中でも3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを用いるのが好ましく、この場合は金属フタロシアニン錯体と良好な化学結合を形成することができる。
【0027】
前記カチオン化処理の方法としては、特に限定されないが、例えばディッピング等の浸漬処理、スプレー処理などが挙げられる。
【0028】
本発明の消臭材を少なくとも一部に含む消臭フィルターは、例えばポリプロピレン製スパンボンド不織布に、鹸化度が95.0〜99.5%の範囲の水溶性ポリビニルアルコール樹脂からなるバインダー樹脂と、架橋剤と、金属フタロシアニン錯体とを付着させ骨材層とし、さらにその上に、例えばポリエステル製不織布を重ね合わせ、熱処理して一体化しシートを作成し、プリーツ加工機にてひだ折り加工してプリーツフィルターの形状にすることによって得られる。
【0029】
本発明の消臭材を少なくとも一部に含む繊維布帛は、例えばポリプロピレン製の織物に、鹸化度が95.0〜99.5%の範囲の水溶性ポリビニルアルコール樹脂からなるバインダー樹脂と、架橋剤と、金属フタロシアニン錯体とを付着させても良いし、ポリプロピレン糸に、鹸化度が95.0〜99.5%の範囲の水溶性ポリビニルアルコール樹脂からなるバインダー樹脂と、架橋剤と、金属フタロシアニン錯体とを付着させ、該ポリプロピレン糸を少なくとも一部に用いて公知の方法で織物にしても良い。本発明の消臭材を少なくとも一部に含む繊維布帛は、これらに限定されるものではなく、例えば不織布、織物、編物、パイル布帛等のいずれの形態であっても良い。
【0030】
本発明に係わる消臭材は、例えば次のようにして製造することができる。まず、水溶性ポリビニルアルコール樹脂を水に溶かした水溶液と、架橋剤をアルコールに溶かした溶液をさらに水に溶かした水溶液とを、調合して処理液を得る。これらの調合は、いずれも可能な限り均一に分散させるのが好ましい。このようにして得られた処理液に合成繊維を浸漬した後、加熱乾燥させることによって、架橋剤によって水溶性ポリビニルアルコール樹脂が架橋するので耐水性の向上した皮膜を形成することができる。次に、カチオン化処理液に浸漬し、水洗後加熱乾燥させることによって、皮膜化したポリビニルアルコール樹脂を十分にカチオン化することができる。前記水洗によって、不要なカチオン化処理液を除去することができる。最後に、金属フタロシアニン錯体溶液に浸漬し、水洗後加熱乾燥させることによって、金属フタロシアニン錯体を十分に付着させることができる。前記水洗によって、不要な金属フタロシアニン錯体を除去することができる。
【実施例】
【0031】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例のものに特に限定されるものではない。なお、各消臭材、消臭フィルター及び繊維布帛に対して次の試験法に従い試験を行ない即効性試験とした。さらに、即効性試験を5回、10回繰返して行ない耐久性試験とした。試験結果を表1に示す。
【0032】
<消臭性能試験法>
(メチルメルカプタン消臭性能)
内容積2Lのテドラーバックに消臭材(幅100mm×長さ70mm×厚さ0.5mm)を設置した後、テドラーバック内の濃度が5〜10ppm程度となるようにメチルメルカプタンガスを注入した。注入してから30分経過後と60分経過後のメチルメルカプタンガスの残存濃度を検知管(ガステック社製70L)を用いて測定し、この測定値よりメチルメルカプタンガス残存率(%)を算出した。なお、測定は室温20℃、85%RHの環境下で行った。
【0033】
(硫化水素消臭性能)
メチルメルカプタンガスに代えて硫化水素ガスを注入した以外は、メチルメルカプタン消臭性能試験と同様にして、注入してから30分経過後と60分経過後の硫化水素ガスの残存率(%)を算出した。
【0034】
(ジメチルジスルフィド消臭性能)
メチルメルカプタンガスに代えてジメチルジスルフィドガスを注入した以外は、メチルメルカプタン消臭性能試験と同様にして、注入してから30分経過後と60分経過後のジメチルジスルフィドガスの残存率(%)を算出した。
【0035】
<実施例1>
鹸化度が98.5%の水溶性ポリビニルアルコール樹脂を20質量%水に溶かした水溶液90gと、チタンジイソプロポキシ-ビス-トリエタノールアミネートをイソプロピルアルコールに溶解した溶液(固形分80%)を20質量%水に溶かした水溶液10gとを室温で混合した処理液に、目付100g/mのポリプロピレン製スパンボンド不織布(目付100g/m、厚さ0.5mm)をディッピング処理した後、マングルで絞り(絞り率100%)、80℃で加熱乾燥させ、続いて、水1000g、水酸化ナトリウム3.5g、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド10.0gからなるカチオン化処理液に5分間ディッピング処理した後、水洗し、80℃で加熱乾燥した。最後に、水1000g、水酸化ナトリウム5.0g、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウム2.0gからなる消臭剤含有液に5分間ディッピング処理した後、水洗し、80℃で加熱乾燥して、消臭材を得た。水溶性ポリビニルアルコール樹脂の付着量は18質量%、架橋剤の付着量は1.6質量%、金属フタロシアニン錯体の付着量は0.4質量%であった。
【0036】
<実施例2>
実施例1において、マングルの絞り率40%にした以外は、実施例1と同様にして消臭材を得た。水溶性ポリビニルアルコール樹脂の付着量は8質量%、架橋剤の付着量は0.7質量%、金属フタロシアニン錯体の付着量は0.2質量%であった。
【0037】
<実施例3>
実施例1において、マングルの絞り率150%にし、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウムに代えて鉄フタロシアニンポリスルホン酸ナトリウムとした以外は、実施例1と同様にして消臭材を得た。水溶性ポリビニルアルコール樹脂の付着量は25質量%、架橋剤の付着量は2.2質量%、金属フタロシアニン錯体の付着量は0.3質量%であった。
【0038】
<実施例4>
実施例1において、チタンジイソプロポキシ-ビス-トリエタノールアミネートに代えて塩化ジルコニウムアミノカルボン酸とし、マングルの絞り率90%にした以外は、実施例1と同様にして消臭材を得た。水溶性ポリビニルアルコール樹脂の付着量は15質量%、架橋剤の付着量は1.3質量%、金属フタロシアニン錯体の付着量は0.3質量%であった。
【0039】
<実施例5>
実施例1において、鹸化度が98.0%の水溶性ポリビニルアルコール樹脂に代えて鹸化度が99.0%の水溶性ポリビニルアルコール樹脂とした以外は、実施例1と同様にして消臭材を得た。水溶性ポリビニルアルコール樹脂の付着量は25質量%、架橋剤の付着量は2質量%、金属フタロシアニン錯体の付着量は0.5質量%であった。
【0040】
<実施例6>
実施例1で得られた消臭材を骨材層とし、その上にポリエチレンホットメルト樹脂(融点100℃)パウダーを5g/m撒き、さらにその上に、ポリエステル製不織布(目付20g/m、厚さ0.2mm)を重ね合わせた後に、熱プレスして積層一体化したシートを作成した。次に、プリーツ加工機にてひだ折り加工して消臭フィルターを得た。各消臭性能試験には、山数26の消臭フィルター(幅100mm×長さ70mm×厚さ20mm)を用いた。
【0041】
<実施例7>
実施例1において、ポリプロピレン製スパンボンド不織布(目付100g/m、厚さ0.5mm)に代えてポリエステル製織物(目付150g/m、厚さ1.5mm)とした以外は、実施例1と同様にして繊維布帛を得た。水溶性ポリビニルアルコール樹脂の付着量は30質量%、架橋剤の付着量は2.5質量%、金属フタロシアニン錯体の付着量は0.7質量%であった。
【0042】
<比較例1>
実施例1において、水溶性ポリビニルアルコール樹脂を用いなかった以外は、実施例1と同様にして消臭材を得た。水溶性ポリビニルアルコール樹脂がないので、架橋剤も、金属フタロシアニン錯体も付着しなかった。
【0043】
<比較例2>
実施例1において、鹸化度が98.0%の水溶性ポリビニルアルコール樹脂に代えて鹸化度が60.0%の水溶性ポリビニルアルコール樹脂とした以外は、実施例1と同様にして消臭材を得た。水溶性ポリビニルアルコール樹脂の付着量は0.5質量%、架橋剤の付着量は0.05質量%、金属フタロシアニン錯体の付着量は0.01質量%であった。
【0044】
<比較例3>
実施例1において、架橋剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして消臭材を得た。架橋剤がないので水溶性ポリビニルアルコール樹脂の皮膜を十分に形成することができなかったので、金属フタロシアニン錯体は付着しなかった。水溶性ポリビニルアルコール樹脂の付着量は18.0質量%であった。
【0045】
<比較例4>
実施例1において、金属フタロシアニン錯体を用いなかった以外は、実施例1と同様にして消臭材を得た。水溶性ポリビニルアルコール樹脂の付着量は18質量%、架橋剤の付着量は1.6質量%であった。
【0046】
<比較例5>
実施例1において、鹸化度が98.0%の水溶性ポリビニルアルコール樹脂に代えて鹸化度が100.0%の水溶性ポリビニルアルコール樹脂とした以外は、実施例1と同様にして消臭材を得た。水溶性ポリビニルアルコール樹脂の付着量は2質量%、架橋剤の付着量は0.2質量%、金属フタロシアニン錯体の付着量は0.05質量%であった。
【0047】
【表1】

表1から明らかなように、本発明に係る実施例1〜5の消臭材、実施例6の消臭フィルター及び実施例7の繊維布帛は、メチルメルカプタンガス、硫化水素、ジメチルジスルフィドガスのいずれも 短時間で十分に消臭することができ、かつ消臭性能を長く維持することができた。
【0048】
これに対して、比較例1〜5の消臭材は、メチルメルカプタンガス、硫化水素、ジメチルジスルフィドガスのいずれも消臭性能が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば一般家庭用、工業用のエアコン、空気清浄機等に用いられる消臭材として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維にバインダー樹脂を介して消臭剤を付着させた消臭材において、合成繊維の少なくとも一部に鹸化度が95.0〜99.5%の範囲の水溶性ポリビニルアルコール樹脂からなるバインダー樹脂と、架橋剤と、金属フタロシアニン錯体とを付着させていることに特徴のある消臭材。
【請求項2】
前記架橋剤は、有機チタン系架橋剤、有機ジルコニウム系架橋剤、ホウ素系架橋剤から選ばれる1種または複数の架橋剤である請求項1に記載の消臭材。
【請求項3】
前記水溶性ポリビニルアルコール樹脂の合成繊維に対する付着量が5〜30質量%、前記架橋剤の合成繊維に対する付着量が0.4〜2.4質量%、前記金属フタロシアニン錯体の合成繊維に対する付着量が0.1〜0.6質量%である請求項1または2に記載の消臭材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の消臭材を少なくとも一部に含む消臭フィルター。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の消臭材を少なくとも一部に含む繊維布帛。
【請求項6】
水溶性ポリビニルアルコール樹脂と架橋剤とを含む処理液に浸漬してから加熱乾燥し、次にカチオン化処理液に浸漬して水洗後加熱乾燥し、最後に金属フタロシアニン錯体溶液に浸漬し、水洗後加熱乾燥して金属フタロシアニン錯体を合成繊維の少なくとも一部に付着させることに特徴のある消臭材の製造方法。

【公開番号】特開2012−45084(P2012−45084A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188119(P2010−188119)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】