説明

消臭組成物及びその消臭組成物を付着した消臭布帛

【課題】本発明は、貯蔵安定性が高く、長時間の放置の後にも優れた消臭性能を発揮するとともに、濃色に染められた繊維布帛においても、優れた摩擦堅牢度を確保する消臭組成物を提供することと、その消臭組成物を付着した消臭布帛を得ること。
【解決手段】アミン化合物と、無機多孔質物質と、金属酸化物と、水酸化金属とを含む消臭組成物において、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とノニオン系帯電防止剤を配合することによって、消臭性能と液安定性と摩擦堅牢度を確保したことに特徴のある消臭組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内における空気中の、アンモニア、トリメチルアミン等の塩基性ガスや、硫化水素、メルカプタン類等の硫黄系ガス、酢酸等の酸性ガス、アルデヒド等の中性ガスの悪臭を効率よく吸着除去することができる消臭組成物において、そのエマルジョンの貯蔵安定性を高め、長時間の放置の後にも、優れた消臭性能を発揮することのできる消臭組成物と、その消臭組成物を付着した消臭布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現代人にとって生活臭の問題は大きな関心事となってきている。また、住宅に限らず、自動車の室内や、電車、旅客機等の室内空間の様々ないやな臭いに対する消臭の要求も大きくなってきており、様々な悪臭に有効な消臭組成物を用いて消臭する方法が開示されている。
【0003】
出願人は、このような要求に答えるべく、特許文献1や特許文献2のような提案を行ってきた。しかしながら、これらの技術の消臭液は、エマルジョンの貯蔵安定性が高く、長時間の放置の後にも優れた消臭性能を発揮するものの、濃色に染められた繊維布帛では摩擦堅牢度の点で劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−336170号公報
【特許文献2】特開2009−285164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、エマルジョンの貯蔵安定性が高く、長時間の放置の後にも優れた消臭性能を発揮するとともに、濃色に染められた繊維布帛においても、摩擦堅牢度を確保する消臭組成物を提供することと、その消臭組成物を付着した消臭布帛を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0007】
[1]アミン化合物と、無機多孔質物質と、金属酸化物と、水酸化金属とを含む消臭組成物において、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とノニオン系帯電防止剤を配合し、消臭性能と液安定性を確保したことに特徴のある消臭組成物。
【0008】
[2]前記消臭組成物を構成する前記各成分の粒径が10nm〜100μmである前項1に記載の消臭組成物。
【0009】
[3]前記アニオン系界面活性剤がアルキルスルホコハク酸塩 、アルキルスルホン酸、モノアルキルホスフェートから選択された少なくとも1種類の界面活性剤で、前記ノニオン系界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルから選択された少なくとも1種類の界面活性剤であり、かつ前記ノニオン系帯電防止剤が塩酸グアニジンである前項1または2に記載の消臭組成物。
【0010】
[4]前項1〜3の消臭組成物が、バインダー樹脂によって布帛の少なくとも一部に付着していることを特徴とする消臭布帛。
【0011】
[5]前記消臭布帛が壁紙、椅子張り地、車両用天井材、カーテンまたはカ−ペットである前項4に記載の消臭布帛。
【発明の効果】
【0012】
[1]の発明では、アミン化合物と、無機多孔質物質と、金属酸化物と、水酸化金属とを含む消臭組成物であるので、様々な悪臭ガスに対して優れた消臭性能が得られると同時に、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とノニオン系帯電防止剤を配合しているので、その共同作用によって液安定性を格段に高めることができ、長期間の放置の後にも、優れた消臭性能を発揮することができ、しかも濃色に染められた繊維布帛においても、摩擦堅牢度を確保する消臭組成物とすることができる。
【0013】
[2]の発明では、前記消臭組成物を構成する前記各成分の粒径が10nm〜100μmであるので、液安定性に優れ、布帛に付着させてもざらつき感のない消臭布帛とすることができる。
【0014】
[3]の発明では、前記アニオン系界面活性剤がアルキルスルホコハク酸塩 、アルキルスルホン酸、モノアルキルホスフェートから選択された少なくとも1種類の界面活性剤で、前記ノニオン系界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルから選択された少なくとも1種類の界面活性剤であるので、複数種類の界面活性剤の共同作用によって液安定性を格段に高めることができ、かつ前記ノニオン系帯電防止剤が塩酸グアニジンであるので摩擦堅牢度を確保することができる。
【0015】
[4]の発明では、前記消臭組成物が、バインダー樹脂によって布帛の少なくとも一部に付着しているので、アンモニア、トリメチルアミン等の塩基性ガスや、硫化水素、メルカプタン類等の硫黄系ガス、酢酸等の酸性ガスの悪臭を効率よく吸着除去することができるとともに、アセトアルデヒド等の中性ガスの悪臭も効率よく効果的に消臭する消臭布帛とすることができる。また、耐洗濯性や耐摩耗性にも優れ長期間にわたって消臭効果を持続する消臭布帛とすることができる。
【0016】
[5]の発明では、前記消臭布帛が壁紙、椅子張り地、車両用天井材、カーテンまたはカ−ペットであるので、住宅や自動車の室内、電車、旅客機等の室内空気の悪臭成分の消臭に効果のある消臭布帛とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、消臭組成物を構成するアミン化合物と、無機多孔質物質と、金属酸化物と、水酸化金属は、いずれも粉体であって水に不溶解であるので、これらをバインダー樹脂とともに水等の溶媒に均一に分散させ、長時間の放置の後にも、優れた消臭性能を発揮することのできる消臭組成物を提供するのは困難なことであった。本発明は、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤の両者を配合することによりこの問題を解決するに到ったものである。
【0018】
前記アニオン系界面活性剤としては、アルキルスルホコハク酸塩 、アルキルスルホン酸、モノアルキルホスフェート等を挙げることができる。アニオン系界面活性剤は、分散粒子に吸着して負の電荷を与え、負電荷間の斥力により液を安定化する。また、前記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができる。ノニオン系界面活性剤は、分子量の大きい非イオン性界面活性剤が分散粒子に吸着すると、形成された厚い吸着層によって粒子間に立体障害斥力が与えられて、液を安定化することができる。このため、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤の両者を配合することで、さらに液安定性を格段に高めることができ、長期間の放置の後にも凝集したり、偏在することのない、貯蔵安定性に優れたものとすることができる。
【0019】
両者を合わせた配合量は、水100質量部に対して2〜8質量部が好ましい。2質量部未満では液安定性に効果がなく好ましくない。また、8質量部を超えても粘度が上昇することになり好ましくない。より好ましい配合量は2〜4質量部である。さらにアニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤との配合比率は、アニオン系界面活性剤/ノニオン系界面活性剤=0.1〜6である。アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤の配合比率が0.1を下回ると液安定性が低下し好ましくない。また、6を上回っても液安定性が低下することとなり好ましくない。より好ましい配合比率は1〜4である。
【0020】
本発明において、消臭組成物を構成するアミン化合物としては、ヒドラジン誘導体あるいは、ポリアミン化合物を担持した無機ケイ素化合物を挙げられる。ヒドラジン誘導体は、例えば、ヒドラジン系化合物と長鎖の脂肪族系化合物とを反応させたもの、あるいはヒドラジン系化合物と芳香族系化合物とを反応させたもの等が挙げられる。中でも、ヒドラジン及びセミカルバジドからなる群より選ばれる1種または2種の化合物と、炭素数8〜16のモノカルボン酸、ジカルボン酸、芳香族モノカルボン酸、および芳香族ジカルボン酸からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物との反応生成物や、ヒドラジン及びセミカルバジドからなる群より選ばれる1種または2種の化合物と炭素数8〜16のモノグリシジル誘導体及びジグリシジル誘導体からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物との反応生成物が好適である。
【0021】
このようなヒドラジン誘導体を用いることによりアルデヒド類に対して化学反応を起こし優れた吸着作用を発揮し悪臭除去性能を確保することができる。前記反応生成物としては、具体的には、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンニ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等を挙げられる。なお、このようなヒドラジン誘導体の水に対する溶解度は25℃において5g/L以下であるのが望ましい。水に対する溶解度がこの範囲内であれば、洗濯等によって水と接触することがあっても、ヒドラジン誘導体がこの水に溶解して流出してしまうことが防止される。
【0022】
また、ポリアミン化合物を担持した無機ケイ素化合物としては、特に限定されるものではないが、例えばポリアミン化合物を担持した多孔質二酸化ケイ素、ポリアミン化合物を担持したケイ酸アルミニウム等が挙げられる。
【0023】
前記ポリアミン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、脂環式ポリアミン等が挙げられる。具体的には、例えば、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
【0024】
前記ポリアミン化合物は、特にアルデヒドガスの消臭に有効で、また、無機ケイ素化合物は塩基性ガスの消臭に有効であって、さらに無機多孔質物質と、金属酸化物と、水酸化金属を併用することにより、様々な臭気を効果的に消臭することができる。
【0025】
次に、本発明の消臭組成物を構成する無機多孔質物質は、多孔質故に表面積が大きく、悪臭の吸着能力の優れたものとなる。例えばこのような無機多孔質物質としては、多孔質シリカ、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、麦飯石等が挙げられる。中でも、酢酸やアンモニアガス等に対して優れた吸着能を有するゼオライトを用いるのが好ましい。また、ゼオライトは、白色であり繊維に担持させた場合に活性炭よりも布帛の色彩に影響が少ないので良好である。ゼオライトは、ケイ素とアルミニウムが酸素を介して三次元的に結合した骨格構造をしている。この骨格中には分子レベルの穴(細孔)が開き、水や有機分子など様々な分子を骨格中に取り込むことから、吸着剤として非常に有用なものである。
【0026】
ゼオライトには、種々のものが存在し、中でも人工ゼオライトのMFI型ゼオライトは、結晶構造に由来する2種類の細孔が三次元的につながっていることから、吸着剤として非常に効果のあるものとして認められている。本発明では、MFI型ゼオライトを、吸着剤として使用すれば、アンモニア、トリメチルアミン等の塩基性ガスに優れた吸着能を発揮し、アルデヒド類や1−ノネン等の微量な中性ガスの吸着にも優れた効果を発揮する。
【0027】
本発明において、消臭組成物を構成する金属酸化物としては、例えば酸化銅、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物を挙げられるが、これら例示のものに特に限定されるものではない。これら金属酸化物は、アンモニア、トリメチルアミン等の塩基性ガスの分解に優れた効果を発揮する。
【0028】
本発明において、消臭組成物を構成する水酸化金属としては、例えば水酸化ジルコニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第一鉄、水酸化銅などの水酸化金属を挙げられるが、これら例示のものに特に限定されるものではない。これら水酸化金属は、酢酸等の酸性ガスの分解に優れた効果を発揮する。
【0029】
本発明において、消臭組成物を構成するノニオン系帯電防止剤としては、例えば、塩酸グアニジン、ポリオキシエチレン酸脂肪エステル、多価アルコール、ソルビタンモノパルシテート、ノニルフェノールエーテルエチレンオキサイド等を挙げることができる。中でも、塩酸グアニジンが好ましい。
【0030】
アミン化合物と、無機多孔質物質と、金属酸化物と、水酸化金属の配合比率は特に限定しないが、酸化チタン等の金属酸化物の配合量が増えると、金属酸化物の繊維布帛に結合する確率が増え、繊維布帛を劣化させる原因となる。また、ゼオライト等の無機多孔質物質の配合量が増えると、布帛が白化して好ましくない。また、バインダー樹脂の配合量が増えた場合は、多孔質物質や金属酸化物の表面をバインダー樹脂が覆ってしまうことになり、消臭性能が低下することから、アミン化合物と、無機多孔質物質と、金属酸化物と、水酸化金属とバインダー樹脂の五者の配合バランスが大切である。消臭成分四種(アミン化合物と、無機多孔質物質と、金属酸化物と、水酸化金属)とバインダー樹脂の配合比率としては、消臭成分四種/バインダー樹脂=1〜4がよい。
【0031】
消臭組成物の粒径としては、平均粒径が10nm〜100μmである消臭組成物が好ましい。平均粒径が10nm〜100μmであるので、布帛に担持したとき、ざらつき感を受けることなく、風合も良好な消臭布帛を得ることができる。中でも、平均粒径は10nm〜10μmにするのが好ましく、特に好ましくは10nm〜5μmである。
【0032】
前記消臭組成物の布帛への塗布量は、消臭をする室内空間の大きさによるが、2〜50g/m(乾燥重量)とするのが好ましい。2g/m未満では十分な除去性能が得られなくなるので好ましくない。また、50g/mを超えても大きな消臭性能の向上はなく、徒にコストを増大することになり好ましくない。
【0033】
前記消臭組成物の塗布液の作成方法は、まず前記アミン化合物と、無機多孔質物質と、金属酸化物と、水酸化金属とバインダ−樹脂を水に分散させた水分散液からなる処理液を調合する。この時、これらの消臭成分四者とバインダ−樹脂を可能な限り分散させることが好ましく、バインダ−樹脂については、水との間でエマルジョン状態を形成することがより好ましい。また、調合の際予め先に消臭成分四種を水に分散させておいてから、バインダ−樹脂を分散するのが、消臭成分四種とバインダ−樹脂をより均一に分散させるのに好ましい。その後アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤を加え、可能な限り分散させて消臭組成物とする。
【0034】
前記バインダ−樹脂は、どのような樹脂でも使用することができる。例えば、自己架橋型アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、グリオキザ−ル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ブタジエン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル−シリコン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、イソブチレン無水マレイン酸共重合体樹脂、エチレン−スチレン−アクリレート−メタアクリレ−ト共重合体樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂を2種類以上混合してバインダ−樹脂としてもよい。
【0035】
また、前記消臭組成物の塗布液には、分散剤や、増粘剤などの各種添加剤を、各種特性向上のため配合してもよい。こうして得られる消臭組成物を壁紙、椅子張り地、車両用天井材、カ−ペットやカーテン等の布帛に塗布させる。この塗布する手段としては、特に限定されるものではないが、例えばスプレ−法、浸漬法、コ−ティング法、パディング法等が挙げられる。塗布する時期は、例えばカ−ペットの場合、パイル糸、基布、バッキング層それぞれ単体の状態で塗布してもよいし、基布にパイル糸を殖設した表皮層の形態で塗布液を塗布してもよいし、接着層を介して表皮層とバッキング層と接着一体化した形態で塗布してもよい。また、消臭組成物を目止め層の処理液に混入し、スプレ−やロ−ラ−コ−ティングで塗布して消臭機能のある目止め層としてもよい。また、カーテンの場合は、縫製したあとスプレ−法等で塗布しても良いし、生地の状態で浸漬法、コ−ティング法、パディング法等で塗付し乾燥してもよい。
【0036】
上記のように、処理液を付与した後に乾燥させるが、乾燥手段としては、加熱処理する方法が乾燥効率から好ましい。加熱処理温度は、100〜180℃とするのが好ましい。この温度での加熱処理によって、消臭組成物の固着性をより高め、悪臭除去性能の持続耐久性を一層向上させることができる。
【0037】
一般に布帛には、消臭性能以外に、難燃、防虫、防汚等の各種機能性を付与すべく加工が施されることが多く、その加工を加えることにより、消臭布帛表面のpH値が酸性側に振れたり、塩基性に振れたりして消臭効果の低下を招くことがある。消臭布帛表面のpH値が酸性側に振れた場合は、酸性ガスの悪臭除去率の低下がみられ、消臭布帛表面のpH値が塩基性に振れた場合は、塩基性ガスの悪臭除去率の低下となってしまう。本発明においては、消臭加工を施す前の布帛表面のpH値を6〜8に保つことが大切で、各種機能性を付与する加工によって布帛表面のpH値が酸性側に振れたり、塩基性に振れた場合には、中和処理をしたほうがよく、布帛表面のpH値を6〜8に調整した後で消臭加工を施すことにより、酸性ガスや塩基性ガスに効果的に作用し、消臭効率のよい消臭布帛とすることができる。
【0038】
この実施形態の布帛としては、特に限定されず、織物、編物の、カーテン、椅子張り地、壁紙や、不織布、タフテッドカーペット、モケットのような立毛布帛等を挙げられる。中でも、室内空気が自然な対流のうちに出来るだけ多くの消臭組成物と接する方が消臭効率は良いので、通気性があり、厚みの有る布帛が好適である。布帛を形成する繊維についても特に限定されず、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、レ−ヨン繊維等の繊維からなるもの等を好適に使用でき、その他麻、綿、羊毛等の天然繊維からなるもの等も使用できる。
【実施例】
【0039】
<実施例1>
次に、この発明の一例として、リン酸グアニジンによって難燃処理を施したポリエステル製のカーテン生地(目付435g/mpH5)を、リン酸ナトリウム水溶液で中和処理し乾燥した難燃性カーテン生地(pH7)を用意した。次ぎに、平均粒径10nmの酸化亜鉛5質量部と、平均粒径5μmのゼオライト5質量部と、平均粒径1μmのセバシン酸ジヒドラジド3質量部と、平均粒径2μmの水酸化ジルコニウム3質量部と塩酸グアニジン1.5質量部を65.5質量部の水に加えた後、攪拌機により攪拌を行ない、分散液を得た。この分散液にさらに15質量部のアクリルシリコン系バインダー樹脂(固形分25%)を加え、良く攪拌してから、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル1質量部とアルキルスルホコハク酸塩1質量部を加え良く攪拌して均一な処理液を得た。こうして得られた処理液を透明容器にとり45℃で10日間放置し、凝集や沈殿の状況を観察し、長期間の液安定性の評価を行い問題ないことを確認した。また、次に、前記作成した処理液中に、前記難燃性カーテン生地(PH7)を浸漬し、マングルで絞った後、130℃、15分間乾燥させ、難燃性消臭カーテン生地を得た。酸化亜鉛のカーテン生地への付着量は0.5g/m、ゼオライトのカーテン生地への付着量は0.5g/m、セバシン酸ジヒドラジドのカーテン生地への付着量は0.3g/m、水酸化ジルコニウムのカーテン生地への付着量は0.3g/m、塩酸グアニジンのカーテン生地への付着量は0.15g/mでであった。こうして得られた難燃性消臭カーテン生地について、下記の各種ガスの消臭試験をおこない悪臭の除去率と評価、及び摩擦堅牢度試験をおこなった評価を表1に記載した。
【0040】
<実施例2〜6、比較例1〜7>
実施例1において、処理液の組成を表2のようにした以外は実施例1と同様にして消臭カーテンを得た。各種組成物の布帛への付着量を表3に、各種ガスの消臭試験をおこない悪臭の除去率と評価、及び摩擦堅牢度試験をおこなった評価を表1に記載した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
表1からも解るように、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とノニオン系帯電防止剤を共に含む実施例1〜6においては、摩擦堅牢度と液安定性ともを確保され、各種ガスに対する消臭性能も良好であった。アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とノニオン系帯電防止剤を含まない比較例1や比較例2や比較例7においては、摩擦堅牢度と液安定性を確保することができなかった。
【0045】
<消臭試験>
なお上記例における各種消臭性能の測定は次のように行った。
(アンモニア消臭性能)
試験片(10cm×10cm)を内容量500ミリリットルの袋内に入れた後、袋内において濃度が200ppmとなるようにアンモニアガスを注入し、1時間経過後にアンモニアガスの残存濃度を測定し、この測定値よりアンモニアガスを除去した総量を算出し、これよりアンモニアガスの除去率(%)を算出した。
【0046】
(硫化水素消臭性能)
アンモニアガスに代えて硫化水素ガスを用いて袋内において濃度が20ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にして硫化水素の除去率(%)を算出した。
【0047】
(メチルメルカプタン消臭性能)
アンモニアガスに代えてメチルメルカプタンガスを用いて袋内において濃度が40ppmとなるように注入し、4時間経過後にメチルメルカプタンガスの残存濃度を測定した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてメチルメルカプタンガスの除去率(%)を算出した。
【0048】
(酢酸消臭性能)
アンモニアガスに代えて酢酸ガスを用いて袋内において濃度が100ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にして酢酸ガスの除去率(%)を算出した。
【0049】
(ホルムアルデヒド消臭性能)
アンモニアガスに代えてホルムアルデヒドガスを用いて袋内において濃度が80ppmとなるように注入し、4時間経過後にホルムアルデヒドガスの残存濃度を測定した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてホルムアルデヒドの除去率(%)を算出した。
【0050】
(アセトアルデヒド消臭性能)
アンモニアガスに代えてアセトアルデヒドガスを用いて袋内において濃度が80ppmとなるように注入し、4時間経過後にアセトアルデヒドガスの残存濃度を測定した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてアセトアルデヒドの除去率(%)を算出した。
【0051】
そして、除去率が95%以上であるものを「◎」、除去率が90%以上95%未満であるものを「○」、除去率が85%以上90%未満であるものを「△」、除去率が80%以上85%未満であるものを「▽」、除去率が80%未満であるものを「×」と評価し表1のような結果を得た。
【0052】
(加工液安定性)
10%加工液を常温で6時間放置し、水と分離していないものを「○」、分離したものを「×」と評価し表1のような結果を得た。
【0053】
(摩擦堅牢度試験)
JIS L 0849 摩擦試験機II型(学振型)に準拠し、試験を実施した。4級以上を「○」、4級未満を「×」と評価し表1のような結果を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン化合物と、無機多孔質物質と、金属酸化物と、水酸化金属とを含む消臭組成物において、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とノニオン系帯電防止剤を配合し、消臭性能と液安定性を確保したことに特徴のある消臭組成物。
【請求項2】
前記消臭組成物を構成する前記各成分の粒径が10nm〜100μmである請求項1に記載の消臭組成物。
【請求項3】
前記アニオン系界面活性剤がアルキルスルホコハク酸塩 、アルキルスルホン酸、モノアルキルホスフェートから選択された少なくとも1種類の界面活性剤で、前記ノニオン系界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルから選択された少なくとも1種類の界面活性剤であり、かつ前記ノニオン系帯電防止剤が塩酸グアニジンである請求項1または2に記載の消臭組成物。
【請求項4】
前記請求項1〜3の消臭組成物が、バインダー樹脂によって布帛の少なくとも一部に付着していることを特徴とする消臭布帛。
【請求項5】
前記消臭布帛が壁紙、椅子張り地、車両用天井材、カーテンまたはカ−ペットである請求項4に記載の消臭布帛。

【公開番号】特開2013−51993(P2013−51993A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190162(P2011−190162)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】