説明

消臭芳香器、それに用いる揮散体およびこの揮散体の製造方法ならびに消臭芳香方法

【課題】芳香液中の香料成分等の吸着量が少なく、優れた消臭機能と芳香機能を兼ね備えた消臭芳香器を提供すること。
【解決手段】容器内に収容された芳香液を、吸上芯で吸上げ、吸上げた芳香液を該吸上芯と接触して設けられた揮散体から該容器外に揮散させる消臭芳香器において、該揮散体に亜鉛化合物を担持させたことを特徴とする消臭芳香器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭芳香器、それに用いる揮散体およびこの揮散体の製造方法ならびに消臭芳香方法に関し、更に詳細には、消臭芳香器の芳香機能を低下させることなく、優れた消臭効果を奏することのできる消臭芳香器、それに用いる揮散体およびこの揮散体の製造方法ならびに消臭芳香方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、部屋、トイレ、玄関等の生活空間の悪臭を消臭し、周囲に芳香を付与するために消臭芳香器が広く利用されている。このうち芳香器には、芳香剤がゲル状、液状又は固形状等種々の形状のものを使用する芳香器が提案されているが、現在では、芳香剤が液状の芳香器が主に用いられている。
【0003】
この液状芳香剤の芳香器の一般的な構造は、図4に例示されるように、芳香液を収納した容器Aaの開口部に、一端部が芳香液に浸漬され、他端部が容器Aaの開口部から露出している吸上芯aを挿入し、該吸上芯の前記他端部に揮散体eを設置した揮散部材をもちいて内部の芳香液を空気中に揮散させるようにしたものである。
【0004】
吸上芯aは、一般にパルプや合成繊維等の繊維を柱状にしたもので、毛細管現象により芳香液を吸上げ揮散体eに芳香液を導く。揮散体eも、通常、パルプ等の繊維を熱融着性のバインダー等と混合し熱圧着等の方法により板状にしたもので吸上芯aに導かれた芳香液を、揮散体eの表面から揮散させて空間に芳香を付与するようにしたものである。
【0005】
このような液状の芳香剤を揮散させる芳香器に、さらに脱臭効果を付与する目的で、揮散部材に粒状の活性炭を含ませることが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、このような揮散部材に活性炭を含ませた芳香器では、活性炭が悪臭成分を吸着するだけでなく、芳香液に含まれる香料等の成分をも吸着するため、かえって芳香機能が低下してしまうばかりか、脱臭機能も十分に発揮されないという問題が生じていた。
【0006】
この問題を解決するために、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどの特定の構造式で示される化合物を芳香液に含有させることによって、香料の活性炭への吸着を抑制する技術が開示されている(特許文献2参照)。また、2,4,6−トリメチル−2−フェニル−1,3−ジオキサンなどの特定の芳香成分を用いた芳香液や、特定構造の界面活性剤を用いた芳香液も提案されている(特許文献3および4参照)。しかしながら、これらの技術では、芳香液の処方の自由度が制限されてしまい、香りの嗜好性を十分に高いものとすることが困難であった。
【0007】
【特許文献1】特開2005−329号公報
【特許文献2】特開2005−40593号公報
【特許文献3】特開2005−40594号公報
【特許文献4】特開2005−40595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、芳香液中の香料成分等の吸着量が少なく、優れた消臭機能と芳香機能を兼ね備えた消臭芳香器の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、脱臭機能と芳香機能の両効果が十分に発揮される消臭芳香器について鋭意研究を行った結果、特定の消臭剤を担持させた揮散体を用いる事により上記問題点が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、容器内に収容された芳香液を、吸上芯で吸上げ、吸上げた芳香液を該吸上芯と接触して設けられた揮散体から該容器外に揮散させる消臭芳香器において、該揮散体に亜鉛化合物を担持させたことを特徴とする消臭芳香器である。
【0011】
また本発明は、繊維成型品に亜鉛化合物を担持させてなる芳香液用揮散体およびその製造方法である。
【0012】
さらに本発明は、芳香液の揮散部位に亜鉛化合物を存在させることを特徴とする消臭芳香方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の消臭芳香器は、揮散体に活性炭を含有させたものに比べ、揮散体での香料等の成分の吸着が少なく、芳香効果及び消臭効果の低下を抑制することができるため、悪臭の除去と芳香の付与を同時に行うことができ、その効果が長期間持続するものである。
【0014】
また、本発明の消臭芳香器は、上記のように揮散体での香料等の吸着が少ないため、芳香液の処方が制限されることなく、自由な商品設計が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の消臭芳香器は、通常の芳香液を用いる芳香器、すなわち、容器内に収容された芳香液を、吸上芯で吸上げ、吸上げた芳香液を該吸上芯と接触して設けられた揮散体から該容器外に揮散させる消臭芳香器において、使用する揮散体として亜鉛化合物を担持させたものを使用する点に特徴を有するものである。
【0016】
本発明において、揮散体中に担持される亜鉛化合物は、従来より消臭剤として使用されているものを使用できる。亜鉛化合物のうち水に対して不溶性又は難溶性のものが、芳香液への溶解による揮散体からの脱離がなく好ましい。
【0017】
一方で、揮散体への担持の容易性の点から固体の亜鉛化合物が好ましい。亜鉛化合物としては、具体的には、酸化亜鉛、酸化アルミニウム亜鉛、ケイ酸亜鉛、ケイ酸アルミニウム亜鉛、層状アルミノケイ酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛等が挙げられる。これらのうち、水に対して不溶性又は難溶性であり且つ固体である酸化亜鉛、酸化アルミニウム亜鉛、ケイ酸亜鉛、ケイ酸アルミニウム亜鉛、層状アルミノケイ酸亜鉛が好ましく用いられる。

【0018】
上記亜鉛化合物のうち、酸化アルミニウム亜鉛は、ZnO・Alと表される化合物であり、例えば、シーバイオZ−24(海水化学研究所社製)として市販されているものを用いることもできる。また、ケイ酸アルミニウム亜鉛はZnO・Al・SiOと表される化合物であり、これも例えば、シーデオKZ−4(海水化学研究所社製)として市販されているものを用いることもできる。
【0019】
また、上記層状アルミノケイ酸亜鉛は、式(Zn6−nAl)(Si4−nAl)O10(OH)・nHOと表される層状構造の化合物であり、本発明では、この化合物のみを用いてもよいが、層状アルミノケイ酸亜鉛が単層又は数層の状態で非晶質シリカ粒子などの無機粒子に担持されているもの(例えば、5ZnO・Al・3SiO・5HO/4SiOと表せる)を用いることもできる。このような層状アルミノケイ酸亜鉛の市販品としてミズカナイト(水沢化学工業社製)やライオナイト(ライオン社製)があり、これらを用いることもできる。
【0020】
一方、揮散体としては、従来公知の揮散体を使用することができるが、例えば2枚の不織布を用い、基体となる不織布上に、エアーレイ法等従来公知のウェブ形成法により繊維と熱融着性バインダーを混合した繊維層を形成し、その上から被覆体となる不織布で覆い、スルーエアドライヤーを通過させる方法等で乾燥し、熱カレンダー装置や熱エンボス装置により接着、成型することができる。揮散体に亜鉛化合物を担持させるに当たっては、従来公知の担持方法により担持させることができるが、好ましくは次に挙げるいずれかの方法により、この揮散体中に亜鉛化合物を担持させれば良い。
【0021】
すなわち、図1に示すタイプの揮散体の製造方法としては、繊維および熱融着性バインダーに亜鉛化合物を混合し、これを基体となる不織布上(図1の下面)にエアーレイ法等の公知のウェブ形成方法によって積層して繊維層を形成したのち被覆体となる不織布で覆い、以下常法に従って揮散体を成型する方法が挙げられる(製造方法1)。
【0022】
また図2に示すタイプの揮散体の製造方法としては、繊維および熱融着バインダーを混合後、これを基体となる不織布上にエアーレイ法等の公知のウェブ形成方法によって積層して繊維層を形成し、次いで繊維層上に、亜鉛化合物を必要によりバインダーとともに撒布したのち被覆体となる不織布で覆い、その後常法に従って揮散体を成型する方法が挙げられる(製造方法2)。
【0023】
さらに、別のタイプの揮散体の製造方法としては、基体となる不織布上に亜鉛化合物を必要により熱融着バインダーとともに撒布し、その上に、繊維および熱融着バインダーの混合物を公知のウェブ形成方法によって積層してウェブを形成したのち被覆体となる不織布で覆い、以下、常法に従って揮散体を成型する方法が挙げられる(製造方法3)。この場合、揮散体は、基体側を表面側として用いることになる。なお、基体及び被覆体は織布、不織布、紙等の通気性素材を使用することができる。

【0024】
上記各方法において、繊維層に用いられる繊維としては、従来公知のもの、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、パルプ、レーヨン、セルロース、アセテート、アクリル、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、羊毛、綿、シルク等の長繊維又は短繊維の1種若しくは2種以上を混合したものが挙げられる。
【0025】
また、この繊維層には、上記繊維のほか必要によりポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、ポリウレタン等のバインダーを用いることができ、熱融着性のものが好ましく用いられる。また、バインダーの形状は、粒状や繊維状のものが用いられ、繊維状のバインダーとして、複合成分型熱融着繊維、例えば、ポリエチレン/低融点ポリエチレン芯鞘複合繊維、ポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘複合繊維、ポリエステル/ポリエチレン芯鞘複合繊維、ポリエステル/低融点ポリエステル芯鞘複合繊維、ポリプロピレン/ポリビニルアルコール芯鞘複合繊維、ポリエチレン/ポリビニルアルコール芯鞘複合繊維等を用いることもできる。
【0026】
また、基体あるいは被覆体として用いられる不織布としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、パルプ、レーヨン、セルロース、アセテート、アクリル、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、羊毛、綿、シルクなどで形成された不織布を用いることができる。
【0027】
上記の各製造方法のうち、製造方法1(図1)では、亜鉛化合物をより多く担持できるが、亜鉛化合物Bが繊維層A中に担持される形となり、揮散体の内部に入り込んだ亜鉛化合物は消臭効果に寄与し難くなる傾向がある。これに対し、製造方法2(図2)および3の方法では、被覆あるいは基体となる不織布Cと繊維層Aの間に亜鉛化合物Bが担持される形となり、消臭効率の観点から好ましい。特に、製造方法3では、亜鉛化合物を揮散体の表面のより近傍に担持することができる為さらに好ましい。
【0028】
本発明の揮散体中での亜鉛化合物の担持量は、適宜選択できるが、0.1g/m〜1000g/m、好ましくは1g/m〜100g/m、さらに好ましくは、1g/m〜10g/mの範囲である。1000g/mより多いと、香料成分の揮散が抑制されてしまい、充分な芳香効果が得られない。また、0.1g/mより少ないと充分な脱臭効果が得られない。
【0029】
また、亜鉛化合物の平均粒径は0.1μm〜10mm、好ましくは1μm〜1mm、さらに好ましくは1μm〜100μmであり、10mmより大きい場合は、揮散体に保持することが難しく、脱落などが発生するおそれがあり、また、0.1μmより小さい場合は、上記製造方法2又は3で製造した場合でも、亜鉛を含有する無機消臭剤が揮散体内部に入り込む為、揮散体表面での担持が困難になる。
【0030】
なお、これまで吸上芯と分離された揮散体について説明して来たが、揮散体と吸上芯が一体のものであっても、揮散体中に亜鉛化合物が担持されていれば本発明の効果を得ることができることは明らかである。この場合には、吸上芯部分に亜鉛化合物が担持されていてもいなくてもよいが、少なくとも揮散体部分の一部または全部に亜鉛化合物が担持されている必要がある。
【0031】
かくして得られる揮散体は、前記したように通常の芳香液を用いる芳香器において、特段制約なく使用される。すなわち、芳香液用容器や、この容器内に挿通して設けられた吸上芯等は、従来公知のものを広く使用することができ、その形状、構造にも何ら制約はない。
【0032】
また、本発明に用いられる芳香液も、従来公知の芳香液を用いることができ、その主な構成例としては香料成分を水に界面活性剤を用いて可溶化乃至乳化させたものが挙げられる。
【0033】
上記香料成分としては、天然香料、人工香料の何れも使用可能であり、調合香料であってもかまわない。また、動物性香料、植物性香料のいずれも用いることができる。動物性香料としては、例えば、麝香、霊猫香、竜延香等の動物性香料、アビエス油、アクジョン油、アルモンド油、アンゲリカルート油、ページル油、ベルガモット油、パーチ油、ボアバローズ油、カヤブチ油、ガナンガ油、カプシカム油、キャラウェー油、カルダモン油、カシア油、セロリー油、シナモン油、シトロネラ油、コニャック油、コリアンダー油、クミン油、樟脳油、ジル油、エストゴラン油、ユーカリ油、フェンネル油、ガーリック油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、ホップ油、レモン油、レモングラス油、ナツメグ油、マンダリン油、ハッカ油、オレンジ油、セージ油、スターアニス油、テレピン油、等の植物性香料を挙げることができる。
【0034】
上記人工香料は、合成香料又は抽出香料であり、例えば、ピネン、リモネン等の炭化水素系香料、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、βフェネチルアルコール等のアルコール系香料、アネトール、オイゲノール等のフェノール系香料、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド等のアルデヒド系香料、カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、イオノン等のケトン系香料、γ―ブトルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトン系香料、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系香料等が挙げられる。また、上記香料の2種以上を混合した調合香料も使用することができる。
【0035】
香料の配合量は組成物中0.01〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは1〜15質量%である。
【0036】
界面活性剤としては、従来公知の、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤または両性界面活性剤の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0037】
上記アニオン系界面活性剤としては、例えば、石けん(高級脂肪酸石けん)、石けん用素地、金属石けん、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、N−アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホ琥珀酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム(N−ココイル−N−メチルタウリンナトリウム)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルβ−アラニンナトリウム液、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
また、カチオン系界面活性剤としては、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル、脂肪酸アルカノールアミド、第3級アミンオキサイド等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルはポリオキシエチレン鎖が3から18好ましくは7から12であり、アルキル鎖は直鎖または分岐のどちらでも良く、アルキル鎖長は8〜22好ましくは12〜14である。
【0041】
また、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルはポリオキシエチレン鎖が3から18好ましくは5から12であり、アルキル鎖は直鎖または分岐のどちらでも良く、アルキル鎖長は8〜22好ましくは12〜14である。
【0042】
上記脂肪酸アルカノールアミドは、椰子油脂肪酸、ステアリン酸、ラウリン酸、のモノエタノールアミド、ジエタノールアミド等が挙げられ、第3級アミンオキサイドとしては、ラウリルジメチルアミンオキサイド、椰子油脂肪酸ジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0043】
また、上記両性界面活性剤としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0044】
これらの界面活性剤のうち、可溶化能乃至乳化能の点でアニオン系界面活性剤及び/又はノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0045】
また、界面活性剤の配合量は、配合される芳香成分の種類、量により適宜選択することができるが、組成物中0.01〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは0.5〜15質量%である。0.01質量%より少ないと香料成分を乳化もしくは可溶化できず、液体芳香剤の安定性に影響を与える。
【0046】
本発明に用いる芳香液中には、さらに消臭剤を配合することができ、より強力な消臭効果を得ることができる。この消臭剤としては、植物抽出物、塩素化合物、アルデヒド化合物、有機酸化合物、サイクロデキストリン、界面活性剤等を挙げることができる。
【0047】
さらに本発明の芳香液には、本発明の効果に影響を与えない範囲内において、必要に応じて、アルコール、グリコール等の溶媒、可溶化助剤、消臭剤、ゲル化剤、増粘剤、防かび剤、防菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、色素等を配合することも可能である。
【実施例】
【0048】
次に製造例、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら製造例、実施例等に何ら限定されるものではない。
【0049】
製 造 例 1
揮散体の製造方法(1):
パルプ(平均繊維長1.5mm)と、バインダーとして粉末状ポリエチレン及び1mあたり100gの層状アルミノケイ酸亜鉛化合物(ミズカナイトHQ−048:粒径0.3〜0.8mm、水沢化学工業社製)を混合したものを、パルプ製不織布の上に撒布し、その上にパルプ製不織布を載せ、オーブンで加熱後熱エンボス装置を通して厚さ10mmの本発明の揮散体(本発明品1)を製造した。
【0050】
製 造 例 2
揮散体の製造方法(2):
パルプ(平均繊維長1.5mm)と、バインダーとして粉末状ポリエチレンを混合したものを、パルプ製不織布の上に撒布し、その上に層状アルミノケイ酸亜鉛化合物(ミズカナイトHP:粒径3〜5μm、水沢化学工業社製)を1mあたり15g撒布した後、パルプ製不織布を載せ、オーブンで加熱後熱エンボス装置を通して厚さ10mmの本発明の揮散体(本発明品2)を製造した。
【0051】
製 造 例 3
揮散体の製造方法(3):
パルプ(平均繊維長1.5mm)と、バインダーとして粉末状ポリエチレンを混合したものを、パルプ製不織布の上に撒布し、その上に層状アルミノケイ酸亜鉛化合物(ミズカナイトHQ−048:粒径0.3〜0.8mm、水沢化学工業社製)を1mあたり20g撒布した後パルプ製不織布を載せ、オーブンで加熱後熱エンボス装置を通して厚さ10mmの本発明の揮散体(本発明品3)を製造した。
【0052】
製 造 例 4
揮散体の製造方法(4):
層状アルミノケイ酸亜鉛に代えて酸化亜鉛(粒径0.2〜0.6μm)を用い、製造例2と同様の方法で本発明の揮散体(本発明品4)を製造した。
【0053】
製 造 例 5
揮散体の製造方法(5):
層状アルミノケイ酸亜鉛に代えて酸化アルミニウム亜鉛(商品名:シーバイオZ−24:平均粒径5μm:海水化学研究所社製)を用い、製造例2と同様の方法で本発明の揮散体(本発明品5)を製造した。
【0054】
製 造 例 6
揮散体の製造方法(6):
層状アルミノケイ酸亜鉛に代えてケイ酸アルミニウム亜鉛(商品名:シーデオKZ−4:粒径1〜5μm:海水化学研究所社製)を用い、製造例2と同様の方法で本発明の揮散体(本発明品6)を製造した。
【0055】
実 施 例 1
消臭試験 :
本発明品2、4〜6の揮散体を用いて、消臭試験を行った。各製造例で製造した揮散体を55mm×55mm、厚さ10mm(約5.0g)に裁断したものに、表1の処方で作成した芳香液を25g含浸させた。これを10リットルのテドラーバッグ内に入れ、悪臭として硫化水素ガスを注入し、悪臭注入1分後の悪臭濃度と、180分後の悪臭濃度を測定し、下記式により消臭率を計算した。なお、比較品として、亜鉛を含有する無機消臭剤を担持させていない揮散体(比較品1)、亜鉛を含有する無機消臭剤に代え椰子殻活性炭(平均粒径:50μm、ヨウ素吸着量:1500mg/g、メチレンブルー吸着量:300ml/g)を担持させた揮散体(比較品2)、亜鉛を含有する無機消臭剤に代え人工ゼオライトを担持させた揮散体(比較品3)を用いた。これらは製造例2と同様にして製造した。結果を表2に示す。
消臭率(%)=( A−B )/ A×100
A:1分後の悪臭濃度(ppm)
B:180分後の悪臭濃度(ppm)
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
この結果から明らかなように、本発明品はいずれも芳香液の影響を受けることなく硫化水素に対して優れた消臭効果を発揮した。
【0059】
実 施 例 2
官能評価試験:
製造例2、4〜6で作成した揮散体を55mm×55mm、厚さ10mm(約5.0g)に裁断し、表1の芳香液400gを、図3の消臭芳香器 を用いて揮散させた(揮散体の芳香液含浸量:約25.0g)。揮散初期(1日後)及び揮散終期(60日後)において、2mの空間でこれを揮散させ、香りの強度についてパネラー10名により下記の基準で評価し、その平均値を求めた。比較品1および3についても同様に試験および評価を行った。本試験において、比較品1は芳香成分を吸着する消臭剤を担持しないものであるためこれをコントロールとした。結果を表3に示す。
【0060】
* 図3は、実施例2で用いた消臭芳香器の一部切欠断面図である。容器1と中栓2、該中栓2に装着された吸上芯3、揮散体32、芳香揮散孔48、49、57が穿孔された拡散カバー体30を備えている。該吸上芯3の上端部3aは、中栓2の上面より突出し、容器1の開口部6より延出しており、開口部6に設けられた保持部材31上に、吸上芯3の上端部3aと当接して揮散体32が設置される。該容器1には芳香液が収容され、吸上芯3の下端部3bは該芳香液に浸漬しており芳香液を上方に吸上げる。吸上げられた芳香液は揮散体32に導かれ、揮散体32から芳香剤が揮発し、拡散カバー体30に設けられた芳香揮散孔48、49、57から空気中に揮散する。
【0061】
(評価基準)
0:無臭
1:やっと感知できるにおい
2:何のにおいであるかがわかる弱いにおい
3:らくに感知できるにおい
4:強いにおい
5:強烈なにおい
【0062】
【表3】

【0063】
以上の結果より、比較品2、3は揮散終期に消臭剤による吸着の影響により、香り強度が大きく低下したのに対し、本発明品は揮散終期に至っても、比較品1と殆ど差異がなく、消臭剤の影響による香り強度の低下が見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の消臭芳香器は、優れた消臭機能と芳香機能とを兼ね備え、その効果が長期間持続するものであるため、極めて有利に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】繊維層中に亜鉛を含有する無機消臭剤が担持された本発明の揮散体の断面図である。
【図2】繊維層と不織布の間に亜鉛を含有する無機消臭剤が担持された本発明の揮散体の断面図である。
【図3】実施例2で用いた消臭芳香器の一部切欠断面図である。
【図4】従来の芳香器の説明図である。
【符号の説明】
【0066】
3、a 吸上芯
2、b 中栓
30、c カバー体
31、d 支持部材
32、e 揮散体
48、49、57、f 芳香拡散孔
A 繊維層
B 亜鉛化合物
C 不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に収容された芳香液を、吸上芯で吸上げ、吸上げた芳香液を該吸上芯と接触して設けられた揮散体から該容器外に揮散させる消臭芳香器において、該揮散体に亜鉛化合物を担持させたことを特徴とする消臭芳香器。
【請求項2】
亜鉛化合物が、水に対して不溶性または難溶性の亜鉛化合物である請求項1記載の消臭芳香器。
【請求項3】
亜鉛化合物が、酸化亜鉛、酸化アルミニウム亜鉛、ケイ酸亜鉛、ケイ酸アルミニウム亜鉛及び層状アルミノケイ酸亜鉛からなる群から選ばれたいずれか1種以上の亜鉛化合物である請求項1または2記載の消臭芳香器。
【請求項4】
亜鉛化合物が、固体消臭剤として作用するものである請求項1ないし3の何れかの項記載の消臭芳香器。
【請求項5】
繊維成型品に亜鉛化合物を担持させてなる芳香液用揮散体。
【請求項6】
亜鉛化合物が、酸化亜鉛、酸化アルミニウム亜鉛、ケイ酸亜鉛、ケイ酸アルミニウム亜鉛及び層状アルミノケイ酸亜鉛からなる群から選ばれたいずれか1種以上の亜鉛化合物である請求項5記載の芳香液用揮散体。
【請求項7】
繊維、熱融着バインダーおよび亜鉛化合物を基体上に積層したのち被覆体で覆い、次いでこの積層物を熱圧着することを特徴とする芳香液用揮散体の製造方法。
【請求項8】
繊維と熱融着バインダーを基体上に積層した後、亜鉛化合物を必要により熱融着バインダーとともに積層させたのち被覆体で覆い、次いでこの積層物を熱圧着することを特徴とする芳香液用揮散体の製造方法。
【請求項9】
芳香液の揮散部位に亜鉛化合物を存在させることを特徴とする消臭芳香方法。
【請求項10】
亜鉛化合物が、酸化亜鉛、酸化アルミニウム亜鉛、ケイ酸亜鉛、ケイ酸アルミニウム亜鉛及び層状アルミノケイ酸亜鉛からなる群から選ばれたいずれか1種以上の亜鉛化合物である請求項9記載の消臭芳香方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−136558(P2008−136558A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323699(P2006−323699)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】