説明

消費電力を低減することができるクレーンとその消費電力削減方法と消費電力を表示するプログラム

【課題】消費される電力を削減することができるクレーンとその消費電力削減方法と消費電力を表示するプログラム。
【解決手段】吊り具14と巻上げ装置と前記巻上げ装置が消費する電力を計測する電力計測装置とを備え、船舶S上に積み付けされたコンテナC1、C2の情報(高さH1、H2と重量)を取得する手段(位置計測工程と重量計測工程)を有し、前記吊り具14の巻上げ下げが行われるクレーンにおいて、高さH1、H2と重量からコンテナC1が荷役される際の前記吊り具14の予想巻上げ高さh2を算出する手段(予想巻上げ高さ算出工程)と、予想巻上げ高さh2から予想消費電力を算出する手段(予想消費電力算出工程)と、前記吊り具14の巻上げ高さh1を算出する手段(巻上げ高さ計測工程)を備え、予想消費電力と前記電力計測装置で計測された消費電力と、前記予想巻上げ高さh2と前記巻上げ高さh1を表示する表示装置を備えて構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転手の技量によらずに消費電力を低減することができ、吊荷を巻上げ下げするクレーンとその消費電力削減方法とその消費電力を表示するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、国際航路におけるコンテナ輸送システムの急速な進展に伴い、コンテナ船は大型化しており、コンテナ船との吊荷の積み卸しを行うコンテナクレーンの荷役効率を上げることが求められている。また、社会的に環境問題としてCOを削減する省エネルギー化が求められている。コンテナターミナル全体の消費電力からみて、コンテナクレーンのエネルギーの消費量は全体の10%にもなり、コンテナクレーンの消費電力を低減することが求められている。
【0003】
安全性を確保するため、自動化できず、運転手の技量により吊荷を巻上げ下げするクレーンは、仮に自動化されたクレーンの動作と比べると吊荷を巻上げる高さが不必要に高くなるなどの無駄な操作が多く、その分電力を消費している。また、吊荷を巻上げる高さが不必要に高くなることで荷役に係る時間も増加していることになる。
【0004】
ここで、図7に示すように、従来の岸壁クレーン10の動作を説明する。岸壁クレーン10はブーム11を備える。また、ブーム11上を横行するトロリ12と運転室13と吊り具14とワイヤー15と機械室16も備えている。そして、岸壁Gに接岸する船舶Sに積み付けられたコンテナCを運転室13に運転手が乗り込み、運転装置を操作する。ワイヤー15は機械室16に接続されており、機械室16に設けられた巻上げ装置(図示しない)がワイヤー15を巻上げ又は巻下げることにより、トロリ12の横行と吊り具14の巻上げ下げを行う。
【0005】
まず運転手は、巻上げ装置によって、トロリ12をコンテナC上まで横行させて、ワイヤー15を巻下げ、吊り具14がコンテナCを掴める位置に配置する。次に、吊り具14がコンテナCを掴むと、今度は巻上げ装置により、ワイヤー15を巻上げる。そして、トロリ12をコンテナCの受け渡しを行う搬送台車17上に横行させて、ワイヤー15を巻下げ、コンテナCを搬送台車17へ渡す。
【0006】
コンテナCを荷役する際は、コンテナCが他のコンテナCにぶつからない位置まで巻上げる必要がある。例えばコンテナC1を荷役する場合を説明する。船舶上に積み付けされたコンテナC1の下面と岸壁Gとの高さH1の位置からコンテナC1を巻上げて、横行させるには、障害物となるコンテナC2の上面と岸壁Gとの高さH2よりも、巻上げられたコンテナC1の下面と岸壁Gとの高さH3が大きくなければならない。
【0007】
高さH3から高さH1を減算した数値となる巻上げ高さh1は、運転室13に搭乗している運転手(図示しない)の操縦の技量に左右されてしまう。運転手が障害物となるコンテナC2にコンテナC1が衝突しないように、安全にコンテナC1を荷役しようとすると、巻上げ高さh1が高くなってしまうことがある。
【0008】
ここで、障害物となるコンテナC2に接触することがない範囲で、コンテナC1の巻上げを低くした最適な巻上げ高さを予想巻上げ高さh2とする。この予想巻上げ高さh2分コンテナC1を巻上げて荷役することができれば、荷役効率が高く、しかも、消費する電力を削減した荷役作業を行うことができる。
【0009】
一方、コンテナC1を巻上げ高さh1まで巻上げてしまうことは荷役効率を下げることになり、また、無駄な電力を消費することになる。そのため、岸壁クレーン10の消費する電力を抑えながら効率よく荷役する、つまり予想巻上げ高さh2までコンテナC1を巻上げ、横行させることができれば、岸壁クレーン10の効率のよい荷役を達成でき、且つ消費電力を削減することに繋がる。この予想巻上げ高さh2で荷役するには、船舶S上に配置されたコンテナC1、C2の位置を取得する必要がある。
【0010】
そこで船舶とクレーンにそれぞれGPSを設け、荷物の横行時の障害物高さ及び横行される荷物の下面の高さを演算して、クレーンの巻上げ量を制御するクレーンや(例えば特許文献1参照)、距離センサー及びカメラを設け、コンテナとの相対位置を測定するクレーンがある(例えば特許文献2参照)。
【0011】
さらには、船舶に積み込みする前、もしくは積み込みする際にコンテナの配置位置の情報を取得して、船舶から荷役する際に、コンテナターミナル管理システムにその情報を送り、その情報を元に岸壁クレーンへ荷役順などを指示する方法もある。
【0012】
しかし、上記の装置、方法によって船舶上の吊荷の配置情報を取得しても、クレーンの巻上げ下げを自動化しなければそれらの作用効果を生じ得ない。ところが、クレーンを自動化するためには安全面の問題が発生すると共に、クレーンに制御装置やセンサー類を多く搭載しなければならず、製造コストも高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−320737号公報
【特許文献2】特開2006−273533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで本発明の目的は、上記の問題を解決するために、従来の運転手によって操縦されるクレーンにおいて、最適な荷役動作による消費電力と、実際に運転手が操縦した荷役動作による消費電力との比較から、運転手に無駄な動作を報知して、運転手の技量によらずにクレーンの荷役効率を上げると共に、消費電力を削減することができるクレーンとその消費電力削減方法とその消費電力を表示するプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の問題を解決するための本発明のクレーンは、吊荷の吊り具と前記吊り具を巻上げ下げする巻上げ装置と前記巻上げ装置が消費する電力を計測する電力計測装置とを備え、吊荷の少なくとも配置位置と重量を取得する手段を有し、前記吊り具の巻上げ下げが行われるクレーンにおいて、前記配置位置から吊荷が荷役される際の前記吊り具の予想巻上げ高さを算出する手段と、前記予想巻上げ高さと前記重量から予想消費電力を算出する手段とを備え、前記予想消費電力と前記電力計測装置で計測された消費電力とを表示する表示装置を備えて構成される。
【0016】
安全性の問題などから自動化できずに、有人操作が必要なクレーンにおいては、仮に自動化されたクレーンの動作と比べると吊荷を巻上げる高さが高くなるなどの無駄な操作が多く、その分電力を消費している。吊荷を巻上げる高さを最適な高さにして、消費電力の少ない荷役を行うには運転手の技量に左右されてしまう。
【0017】
この構成によれば、船舶に積み付けされた、又は蔵置レーンに蔵置された吊荷の位置と
吊荷の重量とから予想される吊荷の巻上げ高さのうち、障害物に接触することがない範囲で一番低い高さである予想巻上げ高さで吊荷を荷役した際の消費電力となる予想消費電力を算出する。そして、巻上げ装置に設けた電力計測装置で実際の荷役の際に消費される電力を計測して、クレーンの運転手にその予想消費電力と実際の消費電力とを報知することができる。そのため、運転手がクレーンの操作の無駄を認識することができる。
【0018】
また、無駄を認識した運転手は実際の荷役した際に消費される電力を予想消費電力に近づけようとクレーンの操作を修正するため、運転手の技量に左右されずに、クレーンの消費電力を削減することができる。加えて、クレーンの消費電力が削減されることは吊荷の荷役効率が上がることにもつながり、運転手の技量による荷役効率のばらつきもなくすことができる。
【0019】
上記の構成では、船舶上に積み付けされた、又は蔵置レーンに蔵置された吊荷の情報の内、少なくとも配置位置(岸壁から吊荷までの距離)や重量が必要であり、その取得手段は例えば船舶に積み込む際に、又は蔵置レーンに蔵置する際に計測された各吊荷の情報を、クレーンを管理、指示する管理システムから通信で受け取る手段を用いることができる。また、クレーンに備えたトロリに設けたカメラやレーザー装置から形成される位置計測センサーから船舶上の吊荷の配置位置を計測する手段と電力計測装置で計測した電流又は電力から重量を算出する手段などを用いることができる。
【0020】
また、上記のクレーンは、前記吊り具の巻上げ高さを算出する手段を備え、前記表示装置に前記巻上げ高さと前記予想巻上げ高さとを表示して構成される。
【0021】
この構成によれば、吊荷を巻上げる際の吊り具の巻上げ高さを計測し、最適巻上げ高さと実際の巻上げ高さとを比較することができ、より運転手に消費電力を低減したクレーンの操縦を促すことができる。予想巻上げ高さと実際の巻上げ高さとを比較した数値やグラフなどを運転手に報知することで、より予想巻上げ高さに近づけた操縦を行うことができる。
【0022】
吊り具の巻上げ高さを計測する手段は、船舶上に段積みされた、又は蔵置レーンに段積みされたコンテナのプロファイル(各列のコンテナの高さ)の測定と吊り具の高さの測定の2つの方式が必要となる。前者はトロリ下に配置された距離計測のセンサー(レーザー、超音波又はミリ波など)、後者は枚揚げドラム軸端に設置されたパルスジェネレーターが行う。さらに、吊り具を巻上げる際に実際に消費される電力から巻上げ高さを算出する手段もあり、この手段であれば、前述のようにセンサーなどが不必要となり、クレーンの製造コストを低減することができる。
【0023】
加えて、上記のクレーンは、前記巻上げ高さが前記予想巻上げ高さよりも低くなると、前記表示装置が前記吊り具に吊り上げられた吊荷の下面と障害物との異常接近を警報する手段を備えて構成される。
【0024】
この構成によれば、吊荷を吊り具が掴む際、又は吊荷を横行する際、あるいは吊荷を巻下げる際に吊荷が最適高さよりも低くなった場合又は吊荷が障害物と異常接近した場合に運転手に警報を知らせることができる。そのため、消費電力を低減するために、最適巻上げ高さにできるだけ近づけて荷役しても、吊荷が障害物と接触することなく、安全性の高い荷役を行うことができる。この警告する手段としては、例えば表示装置に運転手に警告と判断できる表示をする手段や警告音を発する手段などである。
【0025】
また、上記の問題を解決するためのクレーンの消費電力低減方法は、吊荷の吊り具と前記吊り具を巻上げ下げする巻上げ装置と前記巻上げ装置が消費する電力を計測する電力計
測装置とを備え、前記吊り具の巻上げ下げが行われるクレーンが吊荷の少なくとも配置位置と重量を取得する工程を有したクレーンの消費電力低減方法において、前記配置位置から吊荷が荷役される際の前記吊り具の予想巻上げ高さを算出し、前記予想巻上げ高さと前記重量から予想消費電力を算出する工程を含み、前記予想消費電力と前記電力計測装置で計測された消費電力とを表示装置に表示する。
【0026】
この方法によれば、前述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0027】
さらに、上記の問題を解決するためのクレーンの消費電力を表示するプログラムは、吊荷の吊り具と前記吊り具を巻上げ下げする巻上げ装置と前記巻上げ装置が消費する電力を計測する電力計測装置とを備え、吊荷の少なくとも配置位置と重量を取得する手段を有したクレーンの演算装置を、前記配置位置から吊荷が荷役される際の前記吊り具の予想巻上げ高さを算出する手段と、前記予想巻上げ高さと前記重量から予想消費電力を算出する手段と、前記予想消費電力と前記電力計測装置で計測された消費電力とを表示装置に表示する手段として機能させる。
【0028】
この構成によれば、クレーンに設けた演算装置が、クレーンの消費電力の比較を表示装置に表示させることができ、運転手に消費電力からクレーンの操作の無駄を教示することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、従来の運転手によって操縦されるクレーンにおいて、最適な荷役動作による消費電力と、実際に運転手が操縦した荷役動作による消費電力との比較から、運転手に無駄な動作を報知して、運転手の技量によらずにクレーンの荷役効率を上げると共に、消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態のクレーンを示した側面図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態のクレーンを示したブロック図である。
【図3】本発明に係る第1の実施の形態の動作を示したフローチャートである。
【図4】図3に示した予想消費電力算出工程を示したフローチャートである。
【図5】本発明に係る第2の実施の形態のクレーンを示したブロック図である。
【図6】本発明に係る第1及び第2の実施の形態の表示装置を示した図である。
【図7】従来のクレーンを示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施の形態のクレーンについて、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1に示すように、本発明に係る第1の実施の形態の岸壁クレーン10は、前述した従来の岸壁クレーンに、図2に示す装置及び手段を備えたクレーンである。具体的に説明すると、岸壁クレーン10の機械室16に巻上げ装置20と巻上げ装置20に電力を供給する電力供給装置21と電力計測装置22とを設ける。電力供給装置21はケーブルリールやバスバーを通じた地上より給電され、トランスやインバータなども含む。電力計測装置22は流れる電力又は電流を計測して、消費電力を算出する装置である。
【0033】
機械室16には演算装置31を設け、演算装置31が予想消費電力算出手段(工程)S1と予想巻上げ高さ算出手段(工程)S5とを備える。加えて、運転室13には、運転手が目視できる表示装置32と岸壁クレーン10を操縦するための運転装置33とを設ける。表示装置32と運転装置33とは運転室13のコンソールになる。
【0034】
演算装置31はパーソナルコンピュータ(以下PCという)のように通信手段や記憶手段などを備えており、予想消費電力算出手段(工程)S1と巻上げ高さ計測手段(工程)S2と予想巻上げ高さ算出手段(工程)S5はプログラムとして組み込まれている。表示装置32はディスプレイで形成され、船舶S上のコンテナCの積み付け情報などが表示されている。また、表示装置32は警告手段(工程)S3を備える。
【0035】
巻上げ装置20に巻上げ装置20が巻上げ下げするワイヤー15の長さを計測する巻上げ高さ計測装置23を設ける。この巻上げ高さ計測装置23はワイヤー15の長さを計測する方法以外にも、例えば巻上げ装置20のワイヤー15を巻き付けるドラム(図示しない)の回転角度を計測する方法をでもよい。具体的にはドラムの軸端に設けたパルスジェネレーターなどである。
【0036】
図示しないコンテナターミナルの管理棟に管理システム40を設ける。この管理システム40はコンテナターミナルのシステムの制御を行う制御部でもあり、船舶S上に積み込まれたコンテナCの積み込み状態や、コンテナCを荷役する際の荷役順番などを表示装置32へと送っている。管理システム40は位置計測手段(工程)S4と重量計測手段(工程)S6とを備える。それぞれ、コンテナCが船舶Sに積み込みする前又は積み込み時に取得したデータ(情報)を用いて、各コンテナCの配置位置や重量を取得しており、演算装置31へ送っている。
【0037】
本発明に係る第1の実施の形態のクレーンは上記の構成の岸壁クレーン10に限らず、例えばヤードクレーンや倉庫内に設けられる天井クレーンなどでもよい。また、運転室13は必ずしもクレーンに設けられる必要はなく、例えば管理棟に運転装置33や表示装置32を設けてもよい。その場合クレーンは遠隔操作で動作する。
【0038】
次に、岸壁クレーン10の動作を説明する。図3に示すように、岸壁クレーン10が荷役するコンテナC1が管理システム40で選択され、管理システム40が岸壁クレーン10にコンテナC1を荷役するように指示を送る。このとき、次に荷役するコンテナC1の位置データが送られ、表示装置32に表示される。その表示に従った運転手によって、コンテナC1を荷役するためにトロリ12がブーム11上を横行する。このとき、同時に管理システム40は、演算装置31へコンテナC1の位置データ(図1に示す、岸壁GとコンテナC1の下面との高さH1を含む)とコンテナC1の重量W1とを送る。
【0039】
運転手の操縦と平行して、次に予想消費電力算出工程S1を開始する。
【0040】
図4に示すように、位置計測工程S4と重量計測工程S6が開始する。位置計測工程S4は荷役するコンテナC1とコンテナC1から岸壁Gに向かって並ぶコンテナの列の中で一番高いコンテナC2を決定する。すると先程、管理システム40から得たデータ(情報)から岸壁GからコンテナC1の下面までの高さH1と岸壁GからコンテナC2の上面までの高さH2を算出する。
【0041】
同時の開始された重量計測工程S6は、先程の位置計測工程S4と同様に管理システム40から得たデータ(情報)からコンテナC1の重量W1を算出する。
【0042】
次に予想巻上げ高さ算出工程S5が開始される。予想巻上げ高さh2は以下の数式1で表すことができる。
【数1】

【0043】
数式1において、XはコンテナC2の上面に対して、荷役中にコンテナC1の下面が接触せずに、安全に荷役することができるように考慮された高さである。よって、予想巻上げ高さh2はコンテナC1を横行させるときに、障害物となるコンテナC2にコンテナC1が接触しない範囲で、且つ巻上げる高さを低く制限した高さとなる。このとき考慮される高さXは0.5m〜1.0mの範囲である。
【0044】
次に算出された予想巻上げ高さh2と重量W1とを用いて、コンテナC1を予想巻上げ高さh2分巻上げたときに消費される予想消費電力P2を算出する。この予想消費電力P2は以下の数式2で表すことができる。
【数2】

【0045】
数式2において、ηは機械効率、V1は巻上げ速度を示す。
【0046】
実際問題として考える場合、右の項は全体の1%未満であるため無視出来る。例えばW1=30t、η=0.88、H3=15m、V1=1m/sとすると、左項は5013、右項は4となる。従って、予想消費電力P2は巻上げ速度V1に依存せず、コンテナC1の重量W1と予想巻上げ高さh2に依存することが分かる。よって、予想消費電力P2を以下の数式3から算出する。
【数3】

【0047】
そして、予想巻上げ高さh2と予想消費電力P2とを表示装置32に表示し、予想消費電力算出工程S1が完了する。運転手は表示装置32に表示された予想巻上げ高さh2と予想消費電力P2とを確認して、コンテンC1の巻上げ作業を行う。
【0048】
次に、運転手の運転装置33の操縦によって、巻上げ装置20が動作して、ワイヤー15を巻下げ、吊り具14とコンテナC1の上面とが接触する。そして、コンテナC1を吊り具14が掴み、その後、運転装置33の操縦によって、巻上げ装置20が動作し、ワイヤー15を巻上げ、コンテナC1を巻き上げる。
【0049】
上記の動作中に、図3に示すように、電力計測装置22が実際のコンテナC1の巻上げ動作で消費される電力P1を計測する。表示装置32はこの消費電力P1を表示する。また、同時に巻上げ高さ計測工程S2が開始する。巻上げ高さ計測装置23が巻上げ装置20で巻上げられるワイヤー15の長さを計測し、その長さからコンテナC1の実際の巻上げ高さh1を計測する。そして、表示装置32は計測した巻上げ高さh1を表示する。
【0050】
この消費電力P1と巻上げ高さh1の計測はコンテナC1を荷役するまで一定の単位時間毎、もしくは消費電力P1の計測を一定の単位kW毎に計測し、巻上げ高さh1を一定の単位距離(m)毎に行う。
【0051】
ここまでの動作で、表示装置32は予想消費電力算出工程S1で算出及び計測された予想巻上げ高さh2と予想消費電力P2と実際の消費電力P1、そして、巻上げ高さ計測工程S2で計測された巻上げ高さh1とを表示する。
【0052】
ここで、図1に示すように、コンテナC1を実際に荷役した際のコンテナC1の軌跡を軌跡r1、予想巻上げ高さh2で荷役した際のコンテナC1の軌跡を軌跡r2とする。すると表示装置32には巻上げ高さh1が予想巻上げ高さh2よりも大きく、また消費電力P1が予想消費電力P2よりも大きく表示されているため、運転手は実際の荷役作業に無駄な操縦があることが分かる。
【0053】
図3に示すように、巻上げ高さh1が予想巻上げ高さh2よりも小さくなるときに、警告工程S3が開始する。例えば、図1に示すように、コンテナC1を実際に荷役した際のコンテナC1の軌跡を軌跡r3とすると、その巻上げ高さは予想巻上げ高さh2よりも小さい。予想巻上げ高さh2は障害物となるコンテナC2を避けることができる高さであるため、それよりも小さい巻上げ高さでは、コンテナC1とコンテナC2とが接触してしまう。そのため、それを運転手に知らせるために表示装置32は運転手に一目で警告と分かる表示を行う、又は警告音を出す。運転手はその警告により、巻上げ高さを修正することで安全に荷役を行うことができる。
【0054】
最後に、搬送台車17にコンテナC1を受け渡すと荷役作業が完了する。
【0055】
上記の動作によって、岸壁クレーン10を操縦する運転手が、荷役効率が高く、消費される電力が少ない最適なコンテナC1の予想巻上げ高さh2と予想消費電力P2と、実際のコンテナC1の巻上げ高さh1と消費電力P1とを比較することができ、操縦の無駄を知ることができる。また、その操縦を修正して最適な荷役操縦に近づけることができる。そのため、荷役効率を上げると共に、消費される電力を低減することができる。また、巻上げ高さh1が予想巻上げ高さh2より低くなると運転手に対して警告することで、安全な荷役を行うことができる。
【0056】
次に、図5に示すように、本発明に係る第2の実施の形態の岸壁クレーン10について説明する。岸壁クレーン10は機械室16に電力計測装置22を備える。また、トロリ12に位置計測センサー24を設け、演算装置31に重量計測手段(工程)S6と巻上げ高さ計測手段(工程)S2と位置計測手段(工程)S4とを備える。
【0057】
位置計測センサー24は例えばレーザー、超音波及びミリ波などを用いて距離を計測することができる装置である。他にも位置計測センサー24をカメラのような画像または映像撮影装置で形成し、撮影した画像などを解析して岸壁Gや吊り具14との相対距離を算出する方法を備えてよい。
【0058】
次に本発明に係る第2の実施の形態の岸壁クレーン10の動作を説明する。図3、図4に示し、前述した動作と同様の動作を行うが、巻上げ高さ計測工程S2と位置計測工程S4と重量計測工程S6とが、装置とその方法も異なるため、説明する。
【0059】
トロリ12に設けた位置計測センサー24が、吊り具14の巻上げ高さh1を計測する巻上げ高さ計測工程S2を行う。また、位置計測センサー24が、船舶S上に積み付けられたコンテナCを計測する位置計測工程S4も行う。
【0060】
まず位置計測工程S4は、位置計測センサー24によって、船舶S上に積み付けされたコンテナCが計測され、荷役するコンテナC1とコンテナC1から岸壁Gに向かって並ぶコンテナの列の中で一番高いコンテナC2を抽出する。そして、岸壁GからコンテナC1
の下面までの高さH1と岸壁GからコンテナC2の上面までの高さH2を計測する。
【0061】
次いで、巻上げ高さ計測工程S2は、位置計測センサー24によって、吊り具14を一定の単位時間毎に、位置計測工程S4と同様に計測し、巻上げ高さh1を計測して、表示装置32に送る。
【0062】
重量計測工程S6は、電力計測装置22によって、巻上げ装置20が吊り具14を巻き上げる際に流れる電流I又は電力P1を計測し、そのデータを演算装置31に送る。
【0063】
上記の動作によって、前述した作用効果と同様の効果を得ることができる。また、位置計測センサー24と電力計測装置22とで、コンテナC1の位置情報や重量を計測するため、管理システム40からのデータ(情報)を利用する方法と比べ、正確に計測することができる。例えばコンテナC1の位置情報は海面の状態によっても変化する。そのため、船舶Sから荷役する際に計測することが望ましい。
【0064】
前述したように巻上げ高さ計測工程S2、位置計測工程S4、及び重量計測工程S6は上記の構成に限らない。例えば、巻上げ高さ計測工程S2は数式2及び数式3の式と消費電力P1を用いて、実際の巻上げ高さh1を算出する方法を用いることができる。この方法によれば、実際の巻上げ高さh1を計測するための装置が不要となり、製造コストを抑えることができる。また、巻上げ高さ計測装置23を巻上げ装置20のドラムの回転角を計測することで、吊り具14の巻上げ高さh1を算出する方法でもよい。
【0065】
加えて、位置計測工程S4は、岸壁Gからの距離ではなく、吊り具14との相対距離を計測した数値を用いたりすることができ、コンテナC1、C2と吊り具14のそれぞれの高さを計測できればよい。さらに、重量計測工程S6は、吊り具14に加重変換器を設けて重量を計測する方法を用いることができる。
【0066】
次に図6に示す、表示装置32に表示される運転エコメータ34について説明する。運転エコメータ34は上記の方法によって算出された実際のコンテナC1の巻上げ高さh1と消費電力P1と、最適な荷役動作を示す予想巻上げ高さh2と予想消費電力P2とを表示することができるプログラムである。
【0067】
項目35は予想巻上げ高さh2を目標値として表示し、一定の単位時間毎に計測された巻上げ高さh1をグラフ上に表示して、目標値として設定した予想巻上げ高さh2に対して、運転手の操縦による巻上げ高さh1がどの程度乖離しているかを知ることができる。
【0068】
項目36は消費電力P1と予想消費電力P2とを単位時間あたりの消費電力として換算して、表示する。単位時間あたりにどのぐらい消費電力P1と予想消費電力P2とが乖離しているかを知ることができる。
【0069】
運転エコメータ34はその他にも、項目37のように、荷役毎の巻上げ高さh1と予想巻上げ高さh2との差を表示することや、項目38のように、消費電力P1と予想消費電力P2とから削減することができた二酸化炭素の削減量を表示することもできる。
【0070】
また、トロリ12の横行装置の動作を計測した実際の横行距離L1と、前述のコンテナC1の配置位置のデータから算出した予想横行距離L2とを表示する項目51を設けてもよい。加えて、そのトロリ12の横行によって消費される電力P3と予想横行消費電力P4とを表示する項目52を設けてもよい。
【0071】
さらに、巻上げ消費電力P1と横行消費電力P3を加算し、また、予想巻上げ消費電力
P2と予想横行消費電力P4とを加算して表示すると、クレーンの消費している電力や二酸化炭素の排出量をより正確に把握することができる。
【0072】
上記の構成によれば、運転手が一目見て、現在の荷役作業が最適な動作かどうか知ることができる。そのため、運転手が巻上げ下げ動作をすぐに修正することができる。また、無駄な操縦を運転手が知ることで、次回からの操縦の目安にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のクレーンは、コンテナを荷役する際に、運転手に無駄な巻上げ高さを知らせることができるので、荷役効率を上げると共にエネルギーの消費を抑えることができる。そのため、岸壁などに設け、海上輸送と陸上輸送との拠点として用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
10 岸壁クレーン
11 ブーム
12 トロリ
13 運転室
14 吊り具
15 ワイヤー
16 機械室
20 巻上げ装置
21 電力供給装置
22 電力計測装置
23 巻上げ高さ計測装置
24 位置計測センサー
31 演算装置
32 表示装置
33 運転装置
34 運転エコメータ
G 岸壁
S 船舶
C、C1、C2 コンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊荷の吊り具と前記吊り具を巻上げ下げする巻上げ装置と前記巻上げ装置が消費する電力を計測する電力計測装置とを備え、吊荷の少なくとも配置位置と重量を取得する手段を有し、前記吊り具の巻上げ下げが行われるクレーンにおいて、
前記配置位置から吊荷が荷役される際の前記吊り具の予想巻上げ高さを算出する手段と、前記予想巻上げ高さと前記重量から予想消費電力を算出する手段とを備え、
前記予想消費電力と前記電力計測装置で計測された消費電力とを表示する表示装置を備えたことを特徴とするクレーン。
【請求項2】
前記吊り具の巻上げ高さを算出する手段を備え、前記表示装置に前記巻上げ高さと前記予想巻上げ高さとを表示することを特徴とする請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記巻上げ高さが前記予想巻上げ高さよりも低くなると、前記表示装置が前記吊り具に吊り上げられた吊荷の下面と障害物との異常接近を警報する手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のクレーン。
【請求項4】
吊荷の吊り具と前記吊り具を巻上げ下げする巻上げ装置と前記巻上げ装置が消費する電力を計測する電力計測装置とを備え、前記吊り具の巻上げ下げが行われるクレーンが吊荷の少なくとも配置位置と重量を取得する工程を有したクレーンの消費電力低減方法において、
前記配置位置から吊荷が荷役される際の前記吊り具の予想巻上げ高さを算出し、前記予想巻上げ高さと前記重量から予想消費電力を算出する工程を含み、前記予想消費電力と前記電力計測装置で計測された消費電力とを表示装置に表示することを特徴とするクレーンの消費電力低減方法。
【請求項5】
吊荷の吊り具と前記吊り具を巻上げ下げする巻上げ装置と前記巻上げ装置が消費する電力を計測する電力計測装置とを備え、吊荷の少なくとも配置位置と重量を取得する手段を有したクレーンの演算装置を、
前記配置位置から吊荷が荷役される際の前記吊り具の予想巻上げ高さを算出する手段と、前記予想巻上げ高さと前記重量から予想消費電力を算出する手段と、前記予想消費電力と前記電力計測装置で計測された消費電力とを表示装置に表示する手段として機能させることを特徴とするクレーンの消費電力を表示するプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−232829(P2012−232829A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102891(P2011−102891)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)