説明

消費電力制御システム

【課題】自走不能な状態に陥らないように電気自動車の消費電力を制御する「消費電力制御システム」を提供する。
【解決手段】制御装置2は、さらに使用しても、現在地最寄りの充電スタンドへの到達に支障の生じない消費電力を余裕消費電力Pmとして算出し、アクセサリ電装機器8の消費電力が、そのアクセサリ電装機器8の現在の消費電力Pcに余裕消費電力Pmを加えた消費電力Pmax以下となるアクセサリ電装機器8の設定値の範囲を、アクセサリ電装機器8の設定値制限範囲として設定する。そして、設定値制限範囲を逸脱する、アクセサリ電装機器8の設定値のユーザの変更操作を無効化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部充電されるバッテリの電力を用いて走行する電気自動車において、電気自動車の消費電力を制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外部充電されるバッテリの電力を用いて走行する電気自動車における消費電力に関する技術としては、電気自動車が備える空調機の消費電力を考慮した航続可能距離を算出して、ユーザに提示する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
また、空調機の消費電力を考慮して算出した航続可能距離が目的地到達に不足する場合に、空調機の消費電力量に主に関わる設定温度を、航続可能距離が目的地到達に足りる距離となる温度に変更するようにユーザに対して勧奨する技術も知られている(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-226795号公報
【特許文献2】特開2010-210271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車は、自走不能な状態に陥らないようにするために、バッテリの残容量が、バッテリへの充電が可能な充電施設までの走行に必要な電力量を下回らないよう、バッテリの残容量や電気自動車における消費電力を管理する必要がある。
しかしながら、上述した従来の技術によれば、当該管理はユーザに委ねられるため、バッテリの電力によって充電施設まで走行可能であることを確実に保証することはできない。
そこで、本発明は、電気自動車が自走不能な状態に陥らないように、電気自動車の消費電力を制御することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題達成のために、本発明は、外部充電されるバッテリの電力を用いて走行する電気自動車に搭載される消費電力制御システムに、前記バッテリの電力を用いて動作する、前記電気自動車の走行及び運転用の電装機器ではない1または複数の電装機器を対象電装機器とし、各対象電装機器の動作特性を規定する、ユーザ操作によって設定値を変更可能な設定項目を対象設定項目として、各対象電装機器の前記対象設定項目に対して、当該対象設定項目の設定値の範囲である設定値制限範囲を設定する設定値制限範囲設定部と、前記各対象電装機器の前記対象設定項目の設定値の、当該対象設定項目に対して設定された設定値制限範囲外の設定値への、ユーザ操作に応じた変更を抑止する設定値変更制限部とを設け、前記設定値制限範囲設定部において、前記対象電装機器の前記対象設定項目に対して前記設定値制限範囲として、当該対象設定項目の設定値を当該設定値制限範囲内の任意の設定値に変更して当該対象電装機器を動作させた場合の当該対象電装機器の消費電力の変化によって、前記電気自動車の航続可能距離が、前記バッテリに充電可能な所定の充電施設までの道程距離もしくは当該道程距離に所定のマージン距離を加えた距離より小さくならない範囲を設定するようにしたものである。
【0006】
ここで、このような消費電力制御システムは、より具体的には、前記設定値制限範囲設定部において、前記電気自動車の航続可能距離が、前記バッテリに充電可能な所定の充電施設までの道程距離もしくは当該道程距離に所定のマージン距離を加えた距離以下となる、前記電気自動車全体の消費電力の最大増加可能量を余裕消費電力とし、前記対象電装機器の前記対象設定項目に対して前記設定値制限範囲として、当該対象設定項目の設定値を当該設定値制限範囲内の任意の設定値に変更して当該対象電装機器を動作させた場合の当該対象電装機器の消費電力の最大値が、当該対象電装機器の現在の消費電力に前記余裕消費電力を加えた消費電力となる範囲を設定するように構成してもよい。
【0007】
このような消費電力制御システムによれば、電気自動車の走行及び運転用の電装機器ではない1または複数の電装機器を対象電装機器の動作特性を規定する設定項目の設定値のユーザ操作に応じた変更は、当該変更後の設定値で当該対象電装機器を動作させた場合の当該対象電装機器の消費電力の変化によって、前記電気自動車の航続可能距離が、前記バッテリに充電可能な所定の充電施設までの道程距離もしくは当該道程距離に所定のマージン距離を加えた距離より小さくならない場合にのみ許容されるようになる。
【0008】
よって、ユーザが対象電装機器の設定値を変更したことにより電気自動車全体の消費電力の変化による電力不足の発生によって充電施設まで走行できなくなってしまうことを排除して、バッテリの電力によって充電施設まで走行可能であることを保証することができるようになる。
【0009】
なお、以上のような消費電力制御システムにおいて、前記所定の充電施設は、前記電気自動車の現在位置最寄りの充電施設とすることも好ましい。
また、このような消費電力制御システムが、移動操作可能な移動部と、選択的に当該移動部の移動を制限可能な制限機構を備えた操作子と、前記操作子の移動部の移動を、前記対象電装機器の前記対象設定項目の設定値の変更を指示するユーザ操作として受け付けるユーザ操作受付部とを備えるものである場合には、前記設定値変更制限部において、前記対象電装機器の前記対象設定項目の設定値の当該対象設定項目に対して設定された設定値制限範囲外の設定値への変更を指示するユーザ操作として前記ユーザ操作受付部が受け付けることとなる、前記操作子の移動部の移動を、前記制限機構を用いて制限するようにしてもよい。
【0010】
また、消費電力制御システムにおいて、前記対象電装機器に、少なくとも空調機を含め、当該空調機の前記対象設定項目として、少なくとも空調機の設定温度を含めるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、電気自動車が自走不能な状態に陥らないように、電気自動車の消費電力を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車載システムの表示画面例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車載システムが備える消費電力テーブルを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る消費電力制御処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る操作制限処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係るハプティックコマンダの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る車載システムの構成を示す。
本実施形態に係る車載システムは、外部充電されるバッテリ(蓄電池)電力のみを用いて走行する自動車に搭載されるシステムであり、図示するように、ナビゲーション装置1、制御装置2、表示装置3、バッテリ管理装置4、環境センサ5、消費電力計6、操作パネル7、各種のアクセサリ電装機器8とを備えている。
【0014】
ここで、アクセサリ電装機器8とは、電気自動車の原動機となるモータや、各種補機類や、ヘッドライトやウインカーなどの灯火類や、パワーステアリングなどの運転支援装置などの、電気自動車の走行や運転に関わる電装品以外の、電気自動車の走行や運転に直接関わらない電装品を言い、本実施形態では、アクセサリ電装機器8として、電気自動車の車内の空調を行う空調機や、オーディオ装置や、その他のAV機器などのアクセサリ電装機器8を備えている。
【0015】
但し、以上の車載システムは、ハードウエア的には、マイクロプロセッサや、メモリや、その他の周辺デバイスを有する一般的な構成を備えたコンピュータを用いて構成されるものであって良く、この場合、以上に示した車載システムの各部は、マイクロプロセッサが予め用意されたプログラムを実行することにより具現化するプロセス、リソースとして実現される。また、この場合、このようなプログラムは、記録媒体や適当な通信路を介して、車載システムに提供されるものであって良い。
【0016】
ここで、バッテリ管理装置4は、電気自動車のバッテリの残容量を検出管理する他、バッテリへの充電中の有無を検出する。また、環境センサ5は外気温などの周辺環境の状態を検出するセンサであり、消費電力計6は、バッテリの現在の電力消費、すなわち、電気自動車全体の消費電力を計測するものである。
次に、ナビゲーション装置1は、地図データを記憶した地図データ記憶部11、GPSセンサや方位センサ車速センサなどを備え、これらセンサの出力と地図データとに基づいて自動車の現在位置や現在の進行方向を算出する現在位置算出部12、ユーザによって指定された目的地までの現在位置からの経路を地図データを参照して探索し誘導ルートとして設定する経路算出部13、電気自動車に対する充電施設を備えた充電スタンドなどの各種施設の種別や名称や位置を表す施設データを記憶した施設データ記憶部14、これら各部を統括制御すると共に、ユーザの走行を案内する案内画像を生成し、制御装置2を介して表示装置3に表示するナビゲーション制御部15とを備えている。
【0017】
ここで、このようにナビゲーション制御部15が生成する案内画像は、図2aに示すように、地図表示範囲内の地図を表す地図211上に、現在位置を表す現在位置マーク212や、誘導ルートを表す誘導ルート図形213や、目的地を表す目的地マーク214や、施設データが示す各施設の位置を表す施設の種別を図形形状によって表す施設マーク215が表示されたものになる。
【0018】
さて、このような車載システムの構成において、制御装置2には、電気自動車の消費電力を制御するために用いるテーブルとして、予め、各アクセサリ電装機器8の消費電力テーブルが記憶されている。
ここで、アクセサリ電装機器8の消費電力テーブルとは、そのアクセサリ電装機器8の動作特性を規定する、ユーザが設定値を変更可能な設定項目の設定値と、当該設定値が設定された状態で動作したときの、そのアクセサリ電装機器8の消費電力とを対応づけて登録したテーブルである。
すなわち、たとえば、オーディオ装置であるアクセサリ電装機器8については、オーディオ装置の出力音の音量の各設定値と、当該設定値で動作させたときのオーディオ装置の消費電力との対応を予め求めて、図3aに示すようなオーディオ装置消費電力テーブルとして記憶しておく。
【0019】
また、空調機であるアクセサリ電装機器8については、空調機の設定温度の設定値と外気温との組み合わせと、当該外気温のときに当該設定温度の設定値で空調機を動作させたときの、空調機の消費電力との対応を予め求めて、図3bに示すような空調機消費電力テーブルとして記憶しておく。
【0020】
また、制御装置2は、このような消費電力テーブルを用いて、電気自動車の消費電力を制御するために消費電力制御処理と操作制限処理とを行う。
まず、消費電力制御処理について説明する。
図4に、消費電力制御処理の手順を示す。
図示するように、消費電力制御処理では、まず、電気自動車の航続可能距離を算出する(ステップ402)。
航続可能距離は、たとえば、バッテリ管理装置4が管理しているバッテリの残容量を、電気自動車全体の現在の消費電力で除算した値を、走行可能時間Tとし、走行可能時間Tに電気自動車の標準速度Vを乗じて求める。ここで、電気自動車全体の現在の消費電力は、消費電力計6で検出した電気自動車の走行中の電気自動車全体の消費電力の過去所定時間分の平均値などを用いる。また、標準速度Vとしては自動車の平均的な速度として予め定めた値を用いてもよいし、電気自動車の過去の走行時の平均速度を標準速度Vとして用いるようにしてもよい。
【0021】
次に、ナビゲーション装置1に、現在位置から、施設データが表す現在地最寄りの充電スタンドまでの道程距離を算出させると共に、算出した道程距離に所定のマージン距離Mrgn(たとえば、15km)を加えた距離よりも、ステップ402で算出した航続可能距離が大きいかどうかを判定する(ステップ404)。ただし、ステップ404では、現在位置から現在地最寄りの充電スタンドまでの道程距離に代えて、現在位置から自宅などの所定の充電施設までの道程距離を算出させると共に、算出した道程距離に所定のマージン距離Mrgnを加えた距離よりも、ステップ402で算出した航続可能距離が大きいかどうかを判定するようにしてもよい。
【0022】
そして、航続可能距離の方が小さければ、ナビゲーション装置1に最寄りの充電スタンドを案内させ(ステップ408)、バッテリ管理装置4がバッテリへの充電が開始されたことを検知したならば(ステップ410)、ステップ402からの処理に戻る。
ここで、ステップ408における、ナビゲーション装置1による最寄りの充電スタンドの案内は、たとえば、図2bに示すように、充電の実行を促すメッセージ230を表示装置3に表示すると共に、現在位置から最寄りの充電スタンド2151までの誘導ルートを設定し、当該誘導ルートを誘導ルート図形2131で表す案内画像を表示することなどにより行う。
【0023】
一方、ステップ404において、航続可能距離の方が大きいと判定された場合には、各アクセサリ電装機器8の設定値制限範囲を設定し(ステップ406)、ステップ402からの処理に戻る。
ここで、各アクセサリ電装機器8の設定値制限範囲は、次のように設定する。
すなわち、まず、現在地最寄りの充電スタンドに到達する上での余剰電力量を算出する。
余剰電力量Wmは、Wc=現在のバッテリの残容量、Ls=現在地最寄りの充電スタンドまでの道程距離、D=航続可能距離として、
Wm=Wc×{1-(Ls/D)}として求めることができる
次に、現在地最寄りの充電スタンドに到達に要する時間Tsを、標準速度Vを用いて、
Ts=Ls/Vにより求め、
余裕消費電力Pmを、余剰電力量Wmと時間Tsを用いて、
Pm=Wm/Tsにより算出する。
【0024】
ここで、この余裕消費電力Pmは、航続可能距離を現在位置から現在地最寄りの充電スタンドまでの道程距離以下とすることなく、電気自動車全体の消費電力を増加できる最大値を表している。
そして、各アクセサリ電装機器8の設定値制限範囲は、そのアクセサリ電装機器8の消費電力が、そのアクセサリ電装機器8の現在の消費電力Pcに余裕消費電力Pmを加えた消費電力Pmax以下となる設定値の範囲とする。
ここで、アクセサリ電装機器8の現在の消費電力Pcは、そのアクセサリ電装機器8の現在の設定値と、環境センサ5で検出している周辺環境の状態に応じて決定する。
すなわち、たとえば、オーディオ装置であるアクセサリ電装機器8については、図3aに示したオーディオ装置消費電力テーブルから、現在のオーディオ装置の出力音の音量の設定値に対応する消費電力を求めて、現在のオーディオ装置の消費電力とする。
また、空調機であるアクセサリ電装機器8については、図3bに示した空調機消費電力テーブルから、現在の空調機の設定温度の設定値と環境センサ5で検出した現在の外気温の組み合わせに対応する消費電力を求めて、空調機の現在の消費電力とする。
ただし、消費電力計6で、さらに個々のアクセサリ電装機器8の消費電力を計測するようにし、消費電力計6で計測した個々のアクセサリ電装機器8の現在の消費電力の計測値を、そのアクセサリ電装機器8の現在の消費電力とするようにしてもよい。
また、各アクセサリ電装機器8の消費電力Pmax以下となる設定値の範囲は、そのアクセサリ電装機器8の消費電力テーブルと、環境センサ5で検出している周辺環境の状態に応じて決定する。
すなわち、たとえば、オーディオ装置であるアクセサリ電装機器8については、図3aに示したオーディオ装置消費電力テーブルから、消費電力が、消費電力Pmax以下となる音量の設定値の範囲を求めて、オーディオ装置の消費電力Pmax以下となる音量の設定値の範囲を設定値制限範囲として設定する。
【0025】
また、空調機であるアクセサリ電装機器8については、図3bに示した空調機消費電力テーブルから、環境センサ5で検出している現在の外気温において、消費電力が、消費電力Pmax以下となる設定温度の設定値の範囲を求めて、空調機の消費電力Pmax以下となる設定温度の設定値の範囲を設定値制限範囲として設定する。
【0026】
以上、消費電力制御処理について説明した。
次に、制御装置2が行う操作制限処理について説明する。
図5に、この操作制限処理の手順を示す。
図示するように、この処理では、操作パネル7に対するユーザの、アクセサリ電装機器8の設定値の変更を指示する変更操作が発生したならば(ステップ502)、当該変更操作によって指示された設定値の変更先の値である指示値が、当該変更操作によってユーザが設定値の変更を指示したアクセサリ電装機器8に対して設定されている設定値制限範囲内であるかどうかを調べる(ステップ504)。
【0027】
そして、設定値制限範囲内であれば、当該変更操作によってユーザが設定値の変更を指示したアクセサリ電装機器8の設定値を、当該変更操作によって指示された設定値の変更先である指示値に変更する(ステップ506)。そして、ステップ502からの処理に戻る。
【0028】
一方、設定値制限範囲内でなければ(ステップ504)、当該変更操作によってユーザが設定値の変更を指示したアクセサリ電装機器8の設定値を、設定値制限範囲内の値の内の、当該変更操作によって指示された設定値の変更先である所定値に最も近い値に設定する(ステップ508)。すなわち、たとえば、空調機の設定温度の設定値制限範囲が21度-25度であるときに、空調機の設定温度の18度への変更を指示するユーザの変更操作が発生した場合には、設定値制限範囲21度-25度の内の、指示されたえ18度に最も近い21度に空調機の設定温度を変更する。
【0029】
そして、変更操作不能を通知するメッセージを表示装置3に表示し(ステップ510)、ステップ502からの処理に戻る。
ここで、ステップ510で表示するメッセージ240は、たとえば、図2cに示すように、「電力が不足する恐れがあるため設定を変更できません。変更するためには、他の機器の設定を変更してから再度行って下さい。」と言った、変更操作に従った設定値の変更を行わなかったのは電力不足によるものであることと、他の機器の設定変更によって、当該変更が可能となる旨との通知を行うものとする。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明した。
ところで、以上の実施形態は、ユーザが移動操作を受け付ける移動部材と、移動部材の位置をロックして当該操作子でユーザ操作を受け付けないようにすることのできるロック機構を備えた操作子を備えた操作パネル7を用い、制御部2において、操作子の移動部材の移動操作によって、設定値の変更を指示するユーザ操作を受け付ける場合には、図5に示した操作制限処理において、操作子のロック機構を制御して、操作子の移動部材の、設定値制限範囲を超える値への変更を指示するユーザの移動操作を受け付けないように制御するようにしてもよい。
【0031】
ここで、選択的に操作子の位置をロックして当該操作子でユーザ操作を受け付けないようにすることのできる機構を備えた操作子としては、ハプティックコマンダなどの、操作子のユーザ操作に対する反力を加えることのできる操作子がある。
図6は、このようなハプティックコマンダの一例を示したものであり、図示するように、ハプティックコマンダは、図6aの外観図、図6bの模式構造図に示すように水平方向の回転、前後左右とその間の8水平方向への移動又は傾け、垂直方向の押し下げ操作が可能なコマンダノブ611を移動部材として有する。またコマンダノブ611の水平方向の回転角を検出するロータリセンサ612と、コマンダノブ611の垂直方向への押し下げの有無を検出するプッシュセンサ613と、コマンダノブ611の8水平方向それぞれへの移動又は傾きの有無を検出する水平方向センサ614と、コマンダノブ611に水平回転方向へのトルクを与えるDCモータなどのアクチュエータ615とを有している。
【0032】
より詳細には、コマンダノブシャフト617を垂直方向に滑動可能に保持すると共にコマンダノブシャフト617を自身と共に水平方向に回転させるロータ618と、ロータ618を水平方向に回転可能に保持する傾け可能な可傾部材619と、可傾部材619中に配置された、ロータ618にアクチュエータ615の発生トルクを伝達するプーリ615aと、ユーザから力を加えられていない状態において、可傾部材619を正立位置に保ち、コマンダノブ611を垂直方向に関して中立位置に保つ板バネ616の群などの付勢機構とを備えている。
【0033】
そして、アクチュエータ615とロータリセンサ612とプーリ615aは、可傾部材619中に配置され、プッシュセンサ613は、コマンダノブシャフト617の下方への押し下げを検出し、水平方向センサ614は、可傾部材619の傾きを検出する。
そして、操作パネル7が、このようなハプティックコマンダを備えたものである場合には、制御装置2は、たとえば、次のようにして、設定値制限範囲を超える所定値への変更を指示する変更操作を受け付けないように制御する。
すなわち、たとえば、ユーザのコマンダノブ611の回転操作によって、当該回転操作によって回転されたコマンダノブ611の回転角度に比例する値分の、空調機の設定温度の設定値の変更を受け付ける場合には、ユーザがコマンダノブ611を、当該回転操作に応じて受け付ける変更による変更先の設定温度が設定値制限範囲の上限値または下限値となる回転角度まで回転させたならば、それ以上、設定値制限範囲を逸脱する方向へコマンダノブ611が回転しないようにアクチュエータ615を制御して、コマンダノブ611の当該逸脱方向への回転をロックする。ここで、このようなコマンダノブ611の設定値制限範囲を逸脱する方向への回転のロックは、ロータリエンコーダで設定値制限範囲を逸脱する回転方向へのコマンダノブ611の回転が検出されている期間、アクチュエータ615で反対回転方向への強いトルクをコマンダノブ611に与えることなどによって実現できる。
【0034】
また、以上の実施形態は、電気自動車がシガーソケット等の室内電源端子を備えているものである場合には、室内電源端子からの出力電力量を制御する外部給電制御部を車載システムに設け、制御装置2において、電源端子からの出力電力の変動を、当該変動による航続可能距離の変化によって、当該航続可能距離が、現在地最寄りの充電スタンドまでの道程距離に所定のマージン距離Mrgn(たとえば、15km)を加えた距離よりも航続可能距離が下回ることのないように、外部給電制御部を介して制限するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…ナビゲーション装置、2…制御装置、3…表示装置、4…バッテリ管理装置、5…環境センサ、6…消費電力計、7…操作パネル、8…アクセサリ電装機器、11…地図データ記憶部、12…現在位置算出部、13…経路算出部、14…施設データ記憶部、15…ナビゲーション制御部、215…施設マーク、611…コマンダノブ、612…ロータリセンサ、613…プッシュセンサ、614…水平方向センサ、615…アクチュエータ、615a…プーリ、617…コマンダノブシャフト、618…ロータ、619…可傾部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部充電されるバッテリの電力を用いて走行する電気自動車に搭載される消費電力制御システムであって、
前記バッテリの電力を用いて動作する、前記電気自動車の走行及び運転用の電装機器ではない1または複数の電装機器を対象電装機器とし、各対象電装機器の動作特性を規定する、ユーザ操作によって設定値を変更可能な設定項目を対象設定項目として、各対象電装機器の前記対象設定項目に対して、当該対象設定項目の設定値の範囲である設定値制限範囲を設定する設定値制限範囲設定部と、
前記各対象電装機器の前記対象設定項目の設定値の、当該対象設定項目に対して設定された設定値制限範囲外の設定値への、ユーザ操作に応じた変更を抑止する設定値変更制限部とを有し、
前記設定値制限範囲設定部は、前記対象電装機器の前記対象設定項目に対して前記設定値制限範囲として、当該対象設定項目の設定値を当該設定値制限範囲内の任意の設定値に変更して当該対象電装機器を動作させた場合の当該対象電装機器の消費電力の変化によって、前記電気自動車の航続可能距離が、前記バッテリに充電可能な所定の充電施設までの道程距離もしくは当該道程距離に所定のマージン距離を加えた距離より小さくならない範囲を設定することを特徴とする消費電力制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の消費電力制御システムであって、
前記設定値制限範囲設定部は、前記電気自動車の航続可能距離が、前記バッテリに充電可能な所定の充電施設までの道程距離もしくは当該道程距離に所定のマージン距離を加えた距離以下となる、前記電気自動車全体の消費電力の最大増加可能量を余裕消費電力とし、前記対象電装機器の前記対象設定項目に対して前記設定値制限範囲として、当該対象設定項目の設定値を当該設定値制限範囲内の任意の設定値に変更して当該対象電装機器を動作させた場合の当該対象電装機器の消費電力の最大値が、当該対象電装機器の現在の消費電力に前記余裕消費電力を加えた消費電力となる範囲を設定することを特徴とする消費電力制御システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の消費電力制御システムであって、
前記所定の充電施設は、前記電気自動車の現在位置最寄りの充電施設であることを特徴とする消費電力制御システム。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の消費電力制御システムであって、
移動操作可能な移動部と、選択的に当該移動部の移動を制限可能な制限機構を備えた操作子と、
前記操作子の移動部の移動を、前記対象電装機器の前記対象設定項目の設定値の変更を指示するユーザ操作として受け付けるユーザ操作受付部とを備え、
前記設定値変更制限部は、前記対象電装機器の前記対象設定項目の設定値の当該対象設定項目に対して設定された設定値制限範囲外の設定値への変更を指示するユーザ操作として前記ユーザ操作受付部が受け付けることとなる、前記操作子の移動部の移動を、前記制限機構を用いて制限することを特徴とする消費電力制御システム。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の消費電力制御システムであって、
前記対象電装機器は、少なくとも空調機を含み、当該空調機の前記対象設定項目は、少なくとも空調機の設定温度を含むことを特徴とする消費電力制御システム。
【請求項6】
外部充電されるバッテリの電力を用いて走行する電気自動車に搭載されるコンピュータによって読み取られ実行されるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記バッテリの電力を用いて動作する、前記電気自動車の走行及び運転用の電装機器ではない1または複数の電装機器を対象電装機器とし、各対象電装機器の動作特性を規定する、ユーザ操作によって設定値を変更可能な設定項目を対象設定項目として、各対象電装機器の前記対象設定項目に対して、当該対象設定項目の設定値の範囲である設定値制限範囲を設定する設定値制限範囲設定部と、
前記各対象電装機器の前記対象設定項目の設定値の、当該対象設定項目に対して設定された設定値制限範囲外の設定値への、ユーザ操作に応じた変更を抑止する設定値変更制限部として機能させ、
前記設定値制限範囲設定部は、前記対象電装機器の前記対象設定項目に対して前記設定値制限範囲として、当該対象設定項目の設定値を当該設定値制限範囲内の任意の設定値に変更して当該対象電装機器を動作させた場合の当該対象電装機器の消費電力の変化によって、前記電気自動車の航続可能距離が、前記バッテリに充電可能な所定の充電施設までの道程距離もしくは当該道程距離に所定のマージン距離を加えた距離より小さくならない範囲を設定することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項7】
請求項6記載のコンピュータプログラムであって、
前記設定値制限範囲設定部は、前記電気自動車の航続可能距離が、前記バッテリに充電可能な所定の充電施設までの道程距離もしくは当該道程距離に所定のマージン距離を加えた距離以下となる、前記電気自動車全体の消費電力の最大増加可能量を余裕消費電力とし、前記対象電装機器の前記対象設定項目に対して前記設定値制限範囲として、当該対象設定項目の設定値を当該設定値制限範囲内の任意の設定値に変更して当該対象電装機器を動作させた場合の当該対象電装機器の消費電力の最大値が、当該対象電装機器の現在の消費電力に前記余裕消費電力を加えた消費電力となる範囲を設定することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項8】
請求項6または7記載の消費電力制御システムであって、
前記所定の充電施設は、前記電気自動車の現在位置最寄りの充電施設であることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項6、7または8記載のコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータは、移動操作可能な移動部と、選択的に当該移動部の移動を制限可能な制限機構を備えた操作子を備え、
当該コンピュータプログラムは前記コンピュータを、さらに、前記操作子の移動部の移動を、前記対象電装機器の前記対象設定項目の設定値の変更を指示するユーザ操作として受け付けるユーザ操作受付部として機能させ、
前記設定値変更制限部は、前記対象電装機器の前記対象設定項目の設定値の当該対象設定項目に対して設定された設定値制限範囲外の設定値への変更を指示するユーザ操作として前記ユーザ操作受付部が受け付けることとなる、前記操作子の移動部の移動を、前記制限機構を用いて制限することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項6、7、8または9記載のコンピュータプログラムであって、
前記対象電装機器は、少なくとも空調機を含み、当該空調機の前記対象設定項目は、少なくとも空調機の設定温度を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項11】
外部充電されるバッテリの電力を用いて走行する電気自動車に搭載される車載システムにおいて、前記電気自動車の消費電力を制御する消費電力制御方法であって、
前記車載システムが、前記バッテリの電力を用いて動作する、前記電気自動車の走行及び運転用の電装機器ではない1または複数の電装機器を対象電装機器とし、各対象電装機器の動作特性を規定する、ユーザ操作によって設定値を変更可能な設定項目を対象設定項目として、各対象電装機器の前記対象設定項目に対して、当該対象設定項目の設定値の範囲である設定値制限範囲を設定する設定値制限範囲設定ステップと、
前記各対象電装機器の前記対象設定項目の設定値の、当該対象設定項目に対して設定された設定値制限範囲外の設定値への、ユーザ操作に応じた変更を抑止する設定値変更制限ステップとを有し、
前記設定値制限範囲設定ステップにおいて、前記対象電装機器の前記対象設定項目に対して前記設定値制限範囲として、当該対象設定項目の設定値を当該設定値制限範囲内の任意の設定値に変更して当該対象電装機器を動作させた場合の当該対象電装機器の消費電力の変化によって、前記電気自動車の航続可能距離が、前記バッテリに充電可能な所定の充電施設までの道程距離もしくは当該道程距離に所定のマージン距離を加えた距離より小さくならない範囲を設定することを特徴とする消費電力制御方法。
【請求項12】
請求項11記載の消費電力制御方法であって、
前記設定値制限範囲設定ステップにおいて、前記電気自動車の航続可能距離が、前記バッテリに充電可能な所定の充電施設までの道程距離もしくは当該道程距離に所定のマージン距離を加えた距離以下となる、前記電気自動車全体の消費電力の最大増加可能量を余裕消費電力とし、前記対象電装機器の前記対象設定項目に対して前記設定値制限範囲として、当該対象設定項目の設定値を当該設定値制限範囲内の任意の設定値に変更して当該対象電装機器を動作させた場合の当該対象電装機器の消費電力の最大値が、当該対象電装機器の現在の消費電力に前記余裕消費電力を加えた消費電力となる範囲を設定することを特徴とする消費電力制御方法。
【請求項13】
請求項11または12記載の消費電力制御方法であって、
前記所定の充電施設は、前記電気自動車の現在位置最寄りの充電施設であることを特徴とする消費電力制御方法。
【請求項14】
請求項11、12または13記載の消費電力制御システムであって、
前記車載システムは、移動操作可能な移動部と、選択的に当該移動部の移動を制限可能な制限機構を備えた操作子と、
前記操作子の移動部の移動を、前記対象電装機器の前記対象設定項目の設定値の変更を指示するユーザ操作として受け付けるユーザ操作受付部とを備え、
前記設定値変更制限ステップにおいて、前記対象電装機器の前記対象設定項目の設定値の当該対象設定項目に対して設定された設定値制限範囲外の設定値への変更を指示するユーザ操作として前記ユーザ操作受付部が受け付けることとなる、前記操作子の移動部の移動を、前記制限機構を用いて制限することを特徴とする消費電力制御方法。
【請求項15】
請求項11、12、13または14記載の消費電力制御方法であって、
前記対象電装機器は、少なくとも空調機を含み、当該空調機の前記対象設定項目は、少なくとも空調機の設定温度を含むことを特徴とする消費電力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−139026(P2012−139026A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289572(P2010−289572)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】