説明

消防指令システム及び応援出動方法

【課題】消防応援協定を締結した消防本部間での応援出動依頼を、迅速に且つ最適な緊急車両を選定して発する、ことを可能とさせる。
【解決手段】消防指令システムは、複数の消防本部が有するサーバがネットワークを介して接続され、前記サーバの各々は、前記消防本部が管理する緊急車両の出動管理を行う制御手段を有している。前記制御手段は、災害発生情報が入力された際、当該災害の災害種別と災害住所に基づき、当該災害に対応する前記緊急車両の車両種別と車両数を抽出する。また、前記抽出した緊急車両が、車両種別或いは車両数又は前記緊急車両の出動状態の面から判断して、当該消防本部が管理する前記緊急車両だけでは不足すると判定した場合、他消防本部の前記サーバに前記緊急車両の応援出動依頼情報を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応援協定を締結した消防本部間の応援出動指令を自動化する、消防指令システム及び応援出動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では、消防の任務は警防、救急、救助、予防に大別されている。
【0003】
警防は、ポンプ隊が火災の防禦・消火にあたる業務であり、火災の発生を覚知した時に、消火隊を編成して現場へ急行し、防禦・消火活動を行う。救急は、生命・身体に危機が差し迫った傷病者を病院まで搬送する業務である。救助は、災害や事故により危険の迫った者を救出する業務である。予防は、火災の原因を調査し、火災が発生しないよう建物管理者への指導を行う業務をいう。
【0004】
ここで、警防においては、火災や救急・救助の通報を受信し、各隊へ出動指令を出す通信指令業務も行っている。管轄区域内からの通報は、一旦、消防本部に設置されている指令室で受信し、発生場所に応じて所管の消防署などへ出動指令を発するようにしている。そして近年、高機能の指令システムが開発され、各消防本部などに導入されるようになってきている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
上述した特許文献1「通信指令システム」には、以下の記載がなされている。
【0006】
すなわち、通信指令システムは、本部署所や関連署所のいずれか複数の場所に配設される通信指令施設と署所端末とから構成される。通信指令施設は、緊急通報を受信し、迅速に出動可能かどうかの出動隊の可動状態を判断して管理する可動状態管理装置と、緊急通報を、発信場所に近い、通信指令施設を配設しているいずれかの本部署所または関連署所に自動転送する緊急通報転送装置とを備えている。このことにより、通報者からの発呼信号を、緊急車両や要員が確保されている出動先に近い地域の消防署や警察署などの緊急連絡先に着信または転送することができるようになる、としている。
【0007】
上述した特許文献1に記載されている消防署は、消防を行う組織であるところの消防本部の業務実施機関として位置付けられている。消防本部は消防専門の市町村部局である。そして、市町村消防の間では消防広域応援が実施されている。これは、大規模災害や特殊災害が発生したとき、災害発生地の消防だけでは対応しきれない場合に備えて、市町村消防の間で消防応援協定を締結するようにしているものである。
【0008】
通常、消防応援協定を締結している消防本部間においては、各消防本部から出動させる緊急車両が足りなくなった場合には、司令員が電話等を用いて緊急車両の応援出動要請を行っている。
【0009】
電話等による応援出動要請であるため、司令員がその時点で認識している緊急車両の必要台数に基づいて、他消防本部などへの応援出動要請を行うこととなる。その結果、出動する緊急車両の台数に多寡が生じてしまう場合も有り得る、という課題を有している。多めの緊急車両が出動した場合には、他災害に出動できる緊急車両の台数を減らしてしまうことになりかねない。出動した緊急車両が少なかった場合には、災害などへの適切な対応が出来なくなる事態も生じうる。また、要請を受ける側の消防本部では、出動可能な緊急車両が現在どこに存在するか、などの確認に手間が掛かる場合もあり、緊急車両を出動させるタイミングが遅れてしまう場合も有り得る、という課題を有している。
【0010】
このような課題を解決するために、各管轄内で、災害に対する最適な緊急車両の配置を決定するシステムを提案しているものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
上述した特許文献2「緊急車両管理システム」には以下の記載がなされている。
【0012】
すなわち、緊急車両管理システムは、緊急車両を有する施設単位に設置され、緊急車両の稼働状態を管理する複数の施設サーバと、複数の施設サーバと通信が可能な中央サーバとから構成されている。中央サーバは、緊急車両の稼働状態情報及び位置情報を複数の施設サーバのそれぞれより取得して記憶する。そして、複数の施設サーバからの稼働状態情報の取得要求に対して稼働状態情報を送信する。施設サーバは、緊急車両の稼働状態情報及び位置情報を記憶して中央サーバへ通知し、中央サーバから他の施設が有する緊急車両の稼働状態情報及び位置情報を取得する。このことにより、管轄の緊急車両の不足に応じて、他管轄に応援を要請することが出来るようになる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−060809号公報(第5〜7頁、図1〜3)
【特許文献2】特開2009−134490号公報(第4〜9頁、図1〜11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した特許文献2に記載の緊急車両管理システムは、緊急車両を有する施設単位(例えば、消防本部単位)に設置される施設サーバと、複数の施設サーバと通信が可能な中央サーバとから構成されている。施設サーバは、緊急車両に関する情報(すなわち、稼働状態情報と位置情報)を管理している。また、中央サーバは、複数の施設サーバから、緊急車両に関する情報を受信し、中央サーバが管理する全ての緊急車両に関する情報を、総合動態管理テーブルに保存するようにしている。そして、中央サーバは、或る施設サーバに対し、他の施設サーバが管理している緊急車両に関する情報を送信するようになっている。
【0015】
つまり、緊急車両に関する情報は、施設サーバと中央サーバの間で、情報を送受信することにより情報内容を一致させる、すなわち、情報内容の同期をとる、ようにしている。従って、両サーバ間で情報の送受信が行われないタイミングにおいては、両サーバの緊急車両に関する情報が一致しない場合が有り得る、という課題を有している。例えば、中央サーバが管理している緊急車両の稼働状態情報が待機中であるにも拘わらず、施設サーバが管理している当該緊急車両の稼働状態情報は出動中になっている場合が有り得る。
【0016】
また、特許文献2の緊急車両管理システムでは、災害の発生場所や規模に応じて出動させる緊急車両の種別や台数が予め定められておらず、災害が発生した後に、出動させる緊急車両の種別や台数を決めるようになっている。従って、管轄の緊急車両の不足に応じて他管轄に応援を要請する際に遅れが生じかねない、という課題を有している。
【0017】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものである。従って、本発明の目的は、消防応援協定を締結した消防本部間での応援出動依頼を、迅速に且つ最適な緊急車両を選定して発する、ことを可能とする、消防指令システム及び応援出動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の消防指令システムは、複数の消防本部がそれぞれ有するサーバがネットワークを介して相互に接続されている。そして、前記サーバの各々は、前記消防本部がそれぞれ管理する緊急車両の出動管理を行う制御手段を有している。
【0019】
前記制御手段は、災害発生情報が入力された際、当該災害の災害種別と災害住所に基づき、当該災害に対応する前記緊急車両の車両種別と車両数を抽出する。また、前記抽出した緊急車両が、車両種別或いは車両数又は前記緊急車両の出動状態の面から判断して、当該消防本部が管理する前記緊急車両だけでは不足すると判定した場合、他消防本部の前記サーバに前記緊急車両の応援出動依頼情報を送信する。さらに、前記抽出した緊急車両の車両種別と車両数に基づき、当該消防本部が管理し出動状態が出動可の前記緊急車両の中から、前記緊急車両の車両位置が前記災害住所に近い前記緊急車両から順に、実際に出動する前記緊急車両を決定する。またさらに、前記災害住所周辺の地図画像を取得し、前記決定した緊急車両に出動指令として渡す前記地図画像を付した指令書を印刷する。
【0020】
本発明の応援出動方法は、災害発生情報が通報された際、当該災害の災害種別と災害住所に基づき、当該災害に対応する緊急車両の車両種別と車両数を抽出する。そして、前記抽出した緊急車両が、車両種別或いは車両数又は前記緊急車両の出動状態の面から判断して、消防本部が管理する前記緊急車両だけでは不足すると判定した場合、他消防本部が管理する前記緊急車両の応援出動を依頼する。また、前記抽出した緊急車両の車両種別と車両数に基づき、前記消防本部が管理し出動状態が出動可の前記緊急車両の中から、前記緊急車両の車両位置が前記災害住所に近い緊急車両から順に、実際に出動する前記緊急車両を決定する。さらに、前記災害住所周辺の地図画像を取得し、前記決定した緊急車両に出動指令として渡す前記地図画像を付した指令書を印刷する、ようにしている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、消防応援協定を締結した消防本部間での応援出動依頼を、迅速に且つ最適な緊急車両を選定して発する、ことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の消防指令システムの第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の消防指令サーバの構成を示すブロック図である。
【図3】緊急車両情報管理テーブルの一例を示す図である。
【図4】出動計画データテーブルの一例を示す図である。
【図5】住所情報管理テーブルの一例を示す図である。
【図6】本実施形態の動作を説明する第1のフローチャートである。
【図7】本実施形態の動作を説明する第2のフローチャートである。
【図8】本発明の消防指令システムの第2の実施形態を示すブロック図である。
【図9】第2の実施形態の消防指令サーバの構成を示すブロック図である。
【図10】第2の実施形態における無線発信設備の無線アンテナ設備の設置例を示す図である。
【図11】第2の実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の消防指令システムの第1の実施形態を示すブロック図である。
【0024】
図1に示す消防指令システム100には、ある地域を管轄する消防本部Aと、消防本部Aとは異なる地域を管轄する消防本部Bと、消防本部A及び消防本部Bとは異なる地域を管轄する消防本部Nとが含まれている。なお、消防本部の数はこれに限定されるものではなく、図示しない他の消防本部が含まれていてもよい。ここで、消防本部とは、消防専門の市町村部局であるものとする。
【0025】
そして、各消防本部(消防本部A、消防本部B、・・・、消防本部N)には、消防指令サーバ1が設置され、各消防本部の消防指令サーバ1はネットワーク1000を介して相互に接続されている。各消防本部の消防指令サーバ1は、ネットワーク1000を介して通信による情報の送受信が可能となっている。また、消防本部A、B、・・・、Nは相互に消防応援協定を締結した消防本部であるものとする。
【0026】
消防本部Aには、緊急車両a1、緊急車両a2、・・・、緊急車両akが配備されている。消防本部Bには、緊急車両b1、緊急車両b2、・・・、緊急車両bmが配備されている。消防本部Nには、緊急車両n1、緊急車両n2、・・・、緊急車両nnが配備されている。なお、緊急車両の数はこれに限定されるものではなく、図示しない他の緊急車両が配備されていてもよい。緊急車両とは、緊急時に出動する車両であり、具体的には、指令車、ポンプ車、化学車、機材搬送車、はしご車、救急車、給水車、等々である。
【0027】
そして、各緊急車両には、車両情報発信機が搭載されている。例えば、消防本部Aの緊急車両a1、a2、・・・、akには、それぞれ、車両情報発信機a101、車両情報発信機a102、・・・、車両情報発信機a10kが搭載されている。消防本部Bの緊急車両b1、b2、・・・、bmには、それぞれ、車両情報発信機b101、車両情報発信機b102、・・・、車両情報発信機b10mが搭載されている。消防本部Nの緊急車両n1、n2、・・・、nnには、それぞれ、車両情報発信機n101、車両情報発信機n102、・・・、車両情報発信機n10nが搭載されている。
【0028】
なお、車両情報発信機は、当該緊急車両の車両情報として、緊急車両名(例えば、緊急車両a1、緊急車両a2、など)、出動状態(出動中、帰署中、待機中、など)、車両位置(緯度、経度、など)、を発信する。ここで、出動状態の出動中とは、災害現場に出動していることを示し、帰署中とは、消防本部に帰署中であることを示し、待機中とは、消防本部に待機中であることを示している。また、車両位置は、当該緊急車両に搭載されているGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)受信機により取得するものとする。
【0029】
各消防本部(消防本部A、消防本部B、・・・、消防本部N)には、消防指令サーバ1が設置されている。そして、消防指令サーバ1には、車両情報受信機2、地図検索サーバ4、指令書プリンタ5が、LAN(Local Area Network:ラン)などで接続されている。
【0030】
車両情報受信機2は、緊急車両(例えば、緊急車両a1)の車両情報発信機(例えば、車両情報発信機a101)が発信する車両情報を無線電波として受信する。
【0031】
地図検索サーバ4は、各消防本部(A、B、・・・、N)が管轄する地域の地図画像を保持管理し、必要に応じて災害発生現場周辺の地図画像を検索し取得する。
【0032】
指令書プリンタ5は、緊急車両(例えば、緊急車両a1)に乗車する隊員が所持する指令書を印刷する。印刷した指令書を隊員に渡すことが、当該緊急車両を出動させる指令となる。
【0033】
なお、各消防本部(消防本部A、消防本部B、・・・、消防本部N)の消防指令サーバ1、車両情報受信機2、地図検索サーバ4、指令書プリンタ5は同一の構成であるため、同一の参照符号を付している。
【0034】
次に、本実施形態における消防指令サーバ1の構成について説明する。
【0035】
図2は、本実施形態の消防指令サーバの構成を示すブロック図である。
【0036】
消防指令サーバ1は、緊急車両情報管理部10、出動計画情報管理部11、住所情報管理部12、車両情報受信部13、緊急車両選別部14、応援出動依頼送受信部15、地図画像取得部16、指令書印字部17を備えている。
【0037】
緊急車両情報管理部10は、消防本部(例えば、消防本部A)が保有し管理する緊急車両(例えば、緊急車両a1、a2・・・、ak)の車両名称、車両種別、現在の出動状態、現在の車両位置を管理する緊急車両情報管理テーブルを有している。
【0038】
ここで、図3を参照して、緊急車両情報管理テーブルについて説明する。
【0039】
図3は、緊急車両情報管理テーブルの一例を示す図である。
【0040】
図3に示す緊急車両情報管理テーブル300は、車両名称の欄(301列)、車両種別の欄(302列)、出動状態の欄(303列)、車両位置の欄(304列)を有している。
【0041】
車両名称としては、緊急車両a1(311行)、緊急車両a2(312行)、緊急車両ak(31k行)などが記載される。
【0042】
車両種別としては、ポンプ車(311行)、はしご車(312行)、救急車(31k行)などが記載される。車両種別としては、他に、指令車、化学車、機材搬送車、給水車、なども有る。
【0043】
出動状態としては、帰署中(311行)、待機中(312行)、出動中(31k行)などが記載される。ここで、帰署中および待機中の緊急車両は、災害が発生した場合に出動可の状態であると判断され、出動中の緊急車両は出動不可の状態であると判断される。
【0044】
車両位置としては、当該緊急車両の現在位置を緯度、経度のデータとして記載する。
【0045】
出動計画情報管理部11は、災害が発生した場合に出動する緊急車両の出動計画データとして、災害種別、災害住所、車両種別、車両数を管理する出動計画データテーブルを有している。
【0046】
ここで、図4を参照して、出動計画データテーブルについて説明する。
【0047】
図4は、出動計画データテーブルの一例を示す図である。
【0048】
図4に示す出動計画データテーブル400は、災害種別の欄(401列)、災害住所の欄(402列)、車両種別の欄(403列)、車両数の欄(404列)を有している。
【0049】
災害種別としては、火災(木造家屋)(411行)、火災(ビルディング)(412行、413行)などが記載される。災害種別としては、他に、車両事故、河川氾濫、土砂崩れ、等々、多くの災害の種別が有り得る。
【0050】
災害住所としては、当該消防本部が管轄する全ての地域の住所が記載される。住所は、□□町或いは○丁目を単位にしてまとめて記載される場合も有り得るし、○丁目△番地−△のように詳細に記載される場合も有り得る。
【0051】
車両種別および車両数としては、当該住所に当該災害が発生した場合に出動すべき緊急車両の種別(ポンプ車、はしご車、給水車、等々)と、その種別の緊急車両の台数が記載される。
【0052】
図4の411行には、災害住所(東京都○○区○○△1丁目)にて、災害種別(火災(木造家屋))の災害が発生した場合、ポンプ車2台と給水車1台が当該災害住所に出動する、と記載されている。
【0053】
また、図4の412行には、災害住所(東京都○○区○○△1丁目)にて、災害種別(火災(ビルディング))の災害が発生した場合、ポンプ車3台、給水車1台、はしご車1台が当該災害住所に出動する、と記載されている。図4の411行と412行の災害住所は同一であるが、災害種別が木造家屋の火災かビルディングの火災か、の違いにより、出動する緊急車両の車両種別および車両数が異なるものとなっている。
【0054】
さらに、図4の413行には、災害住所(東京都○○区○○△3丁目2−2)にて、災害種別(火災(ビルディング))の災害が発生した場合、ポンプ車3台、給水車1台、はしご車1台が当該災害住所に出動する、と記載されている。図4の412行と413行の災害住所は異なっているが、災害種別は同一であるため、出動すべき緊急車両の車両種別および車両数は同一となっている。
【0055】
図4に示した出動計画データテーブル400は、各消防本部の消防指令サーバ1の出動計画情報管理部11内に予め設定され、管理されている。
【0056】
なお、我が国において、消防活動のためのシステムを設置していない消防では、管轄内の全ての災害住所と、あらゆる災害種別に対応するための車両種別(或いは、実際の車両名称)および車両数の情報を、電話帳のような出動計画書として保持するようにしている。そして、災害発生の通報を受けた場合には、出動計画書を、辞書を引くかのようにして調べ、出動する車両種別および車両数を決めるようにしている。本実施形態においては、上述した出動計画書を、消防指令サーバ1の出動計画情報管理部11内に出動計画データテーブル400として設定・管理するようにしている。
【0057】
住所情報管理部12は、当該消防本部が管轄する地域全体の住所と当該住所の位置座標としての住所位置を管理する住所情報管理テーブルを有している。
【0058】
ここで、図5を参照して、住所情報管理テーブルについて説明する。
【0059】
図5は、住所情報管理テーブルの一例を示す図である。
【0060】
図5に示す住所情報管理テーブル500は、住所の欄(501列)、住所位置の欄(502列)を有している。
【0061】
住所としては、管轄内の地域の住所が詳細に、或いは、有る程度まとめられて、記載される。
【0062】
住所位置としては、住所の欄(501列)に記載されている住所の緯度、経度が、それぞれ一定の範囲を示す値として記載される。
【0063】
車両情報受信部13は、車両情報受信機2から緊急車両の車両情報(緊急車両名、出動状態、車両位置)を受信し、緊急車両選別部14を介して緊急車両情報管理部10に送出する。
【0064】
緊急車両選別部14には、管轄区域内からの災害通報を消防本部が受信した際、当該災害通報の内容(すなわち災害種別および災害住所)が、消防指令サーバ1の図示していない入力部から入力される。そして、緊急車両選別部14は、緊急車両情報管理部10、出動計画情報管理部11、住所情報管理部12と連携して、当該消防本部から出動可能な緊急車両を選定する。ここで、出動可能な緊急車両に不足があれば、応援出動依頼情報を生成し、応援出動依頼送受信部15を介して他消防本部の消防指令サーバ1に送信することにより、他消防本部に対し緊急車両の応援出動を依頼する。
【0065】
応援出動依頼送受信部15は、緊急車両選別部14から送出される応援出動依頼情報を、他消防本部の消防指令サーバ1に送信する。また、他消防本部の消防指令サーバ1から送信された応援出動依頼情報を受信し、緊急車両選別部14に送出する。
【0066】
地図画像取得部16は、地図検索サーバ4から災害住所周辺の地図画像を取得する。
【0067】
指令書印字部17は、指令書プリンタ5に地図画像付き指令書を印字するよう要求する。
【0068】
次に、図6、図7を参照して、本実施形態の動作について説明する。なお、図6、図7に示す動作は、複数の消防本部(A、B、・・・、N)の内の何れかの消防本部の消防指令サーバ1の動作を示すものである。
【0069】
図6は、本実施形態の動作を説明する第1のフローチャートである。
【0070】
まず、災害通報を受信した消防本部の消防指令サーバ1には、災害種別と災害住所が入力される(図6のステップS100)。なお、図6、図7に示す動作説明においては、災害通報を受信した消防本部を「当該消防本部」と記載し、当該消防本部の消防指令サーバ1を「(当該)消防指令サーバ1」と記載するものとする。また、緊急車両の応援出動を依頼された消防本部を「他消防本部」と記載し、他消防本部の消防指令サーバ1を「(他)消防指令サーバ1」と記載するものとする。
【0071】
次に、(当該)消防指令サーバ1の緊急車両選別部14は、出動計画情報管理部11の出動計画データテーブル400から、災害種別(401列)と災害住所(402列)が一致する車両種別(403列)と車両数(404列)を抽出する(S101)。
【0072】
次に、緊急車両選別部14は、緊急車両情報管理部10の緊急車両情報管理テーブル300から、車両種別(302列)が一致し、且つ出動状態(303列)が出動可能(帰署中或いは待機中)な状態の緊急車両を選定する(S102)。
【0073】
そして、緊急車両選別部14は、選定した緊急車両の車両種別と車両数が、出動計画データテーブル400の該当欄(災害種別、災害住所が一致)に記載されている車両種別と車両数を満たしているか否かを判定する(S103)。
【0074】
満たしている場合(S103でYes)、(当該)消防指令サーバ1の緊急車両選別部14は、住所情報管理部12の住所情報管理テーブル500の住所(501列)が、災害住所と一致する住所位置(502列)を抽出する。そして、抽出した住所位置と、緊急車両情報管理テーブル300の車両位置(304列)が近い順に、出動する緊急車両を決定する(S104)。そして、ステップS115へ進む。
【0075】
一方、ステップS103の判定で、車両種別と車両数が満たされていない場合(S103でNo)、(当該)消防指令サーバ1の緊急車両選別部14は、応援出動依頼情報を生成する。そして、応援出動依頼送受信部15を介して他消防本部全ての(他)消防指令サーバ1に対し、応援出動依頼情報を送信する。このことにより、出動して貰いたい緊急車両の車両種別と車両数が他消防本部の(他)消防指令サーバ1に送信されることとなる(S105)。
【0076】
応援出動依頼情報を受信した他消防本部の複数の(他)消防指令サーバ1の各々は、応援出動依頼送受信部15を介して、緊急車両選別部14が緊急車両の応援出動依頼情報を受け取る(S106)。(他)消防指令サーバ1の緊急車両選別部14は、受信した応援出動依頼情報に記載されている車両種別と一致し、且つ出動可能な緊急車両を、緊急車両情報管理部10の緊急車両情報管理テーブル300から選定する(S107)。次に、選定した緊急車両の車両名称と車両位置を記載した応援出動回答情報を生成する。そして、生成した応援出動回答情報を、応援出動依頼送受信部15を介して、応援出動依頼情報を送信した(当該)消防指令サーバ1に返信する(S108)。
【0077】
応援出動依頼情報を送信した(当該)消防指令サーバ1の応援出動依頼送受信部15は、複数の(他)消防指令サーバ1から応援出動回答情報を受信して緊急車両選別部14に送出する。緊急車両選別部14は、応援出動回答情報に記載されている緊急車両の車両名称と車両位置を受け取る。次に、緊急車両選別部14は、災害が発生した住所位置(図5の住所情報管理テーブル500の502列)と、受け取った車両位置(他消防指令サーバ1の図3の緊急車両情報管理テーブル300の304列)が近い順に緊急車両を選定する(S109)。
【0078】
次に、(当該)消防指令サーバ1の緊急車両選別部14は、地図画像取得部16を介して地図検索サーバ4から災害住所周辺の地図画像を取得する(S110)。そして、複数の(他)消防指令サーバ1の内、応援用の緊急車両を選定した(他)消防指令サーバ1に対し、選定した車両名称と取得した地図画像を応援出動結果情報として送信する(S111)。
【0079】
(他)消防指令サーバ1は、応援出動依頼送受信部15を介して応援出動結果情報を受信し、緊急車両選別部14に送出する。緊急車両選別部14は、応援出動結果情報に記載されている車両名称と地図画像を受け取る(S112)。
【0080】
他消防本部の(他)消防指令サーバ1の緊急車両選別部14は、緊急車両情報管理部10の緊急車両情報管理テーブル300の車両名称と一致する緊急車両の出動状態を出動中に設定する(S113)。そして、当該緊急車両を出動させるために、指令書印字部17を介して指令書プリンタ5に、災害住所周辺の地図画像を付けた指令書を印刷させる(S114)。そして、指令書を、他消防本部の緊急車両に乗車する隊員に渡し、当該緊急車両を出動させる。
【0081】
災害通報を受信した当該消防本部の(当該)消防指令サーバ1の緊急車両選別部14は、ステップS102で選定し、当該消防本部が管理する緊急車両を出動させるため、指令書印字部17を介して指令書プリンタ5に、災害住所周辺の地図画像を付けた指令書を印刷させる(S115)。また、出動させる緊急車両の出動状態を出動中に設定する(S116)。そして、指令書を、当該消防本部の緊急車両に乗車する隊員に渡し、当該緊急車両を出動させる。
【0082】
次に、図7を参照して、発生した災害に対する処置が終了した場合の動作について説明する。
【0083】
図7は、本実施形態の動作を説明する第2のフローチャートである。
【0084】
図6で説明したところの、災害通報を受信した当該消防本部に、発生した災害に対する処置が終了した旨を示す情報が入った際、災害通報を受信した当該消防本部の(当該)消防指令サーバ1には、災害処置終了の情報が入力される(図7のステップS200)。
【0085】
当該消防本部の(当該)消防指令サーバ1の緊急車両選別部14は、当該消防本部から出動していた緊急車両の出動状態を変更する。出動状態を変更するにあたり、先ず、出動していた緊急車両(例えば、緊急車両a1)の車両情報発信機(車両情報発信機a101)から送信される車両情報を、(当該)消防指令サーバ1の車両情報受信機2で受信する。車両情報受信機2で受信した車両情報は、車両情報受信部13を介して緊急車両選別部14に送出される。緊急車両選別部14は、受け取った車両情報に記載されている緊急車両名、出動状態、車両位置に基づき、緊急車両情報管理部10の緊急車両情報管理テーブル300の該当車両名称の出動状態と車両位置を変更する。該当車両名称の緊急車両の出動状態は、帰署中または待機中(出動可の状態)に変更される(S201)。
【0086】
次に、当該消防本部の(当該)消防指令サーバ1は、他消防本部の(他)消防指令サーバ1が管理する緊急車両を応援のために出動させていたか否かを判定する(S202)。
【0087】
出動させていない場合(S202でNo)、(当該)消防指令サーバ1の処理を終了する。
【0088】
一方、出動させていた場合(S202でYes)、当該消防本部の(当該)消防指令サーバ1の緊急車両選別部14は、応援出動依頼送受信部15を介して応援用の緊急車両を出動させた(他)消防指令サーバ1に対し、出動していた緊急車両の車両名称を通知する。すなわち、応援出動が完了した旨を通知する(S203)。この通知を受信した(他)消防指令サーバ1の緊急車両選別部14は、出動していた緊急車両の車両名称の出動状態と車両位置を変更する。すなわち、該当車両名称の緊急車両の出動状態は、帰署中または待機中(出動可の状態)に変更される(S204)。そして、(他)消防指令サーバ1と(当該)消防指令サーバ1は処理を終了する。
【0089】
以上、本実施形態の動作について説明した。
【0090】
上述した実施形態においては、災害通報を受信した消防本部からは、災害への対応に必要とされる車両種別・車両数の緊急車両を出動させることが可能となっている。また、災害通報を受信した消防本部だけでは当該災害に対応できる緊急車両が不足する場合には、他消防本部からも応援の緊急車両を出動させることが可能となっている。
【0091】
本実施形態においては、上述した事柄に加え、以下に示す動作を追加するようにしてもよい。
【0092】
すなわち、当該災害に対応する緊急車両を出動させた消防本部の管轄地域において、仮に別の災害が発生してしまった場合、別の災害に対応可能な緊急車両が不足してしまう事態が生じてしまうこととなる。
【0093】
そこで、上述の当該災害に対応する緊急車両を出動させた消防本部の消防指令サーバ1は、緊急車両を出動させていない他の消防本部の消防指令サーバ1に対し、他の消防本部が管理する緊急車両を一時的に貸与して貰う依頼情報を送信する。この依頼情報を受信した他の消防本部の消防指令サーバ1は、当該他の消防本部が管理する緊急車両の中から、依頼情報に記載されている車両種別の緊急車両を選定する。そして、選定した緊急車両を、依頼情報を送信した消防指令サーバ1を有する消防本部へ一時的に移動させ貸与する。
【0094】
この動作を追加することにより、災害に対応する緊急車両を出動させた消防本部において、別の災害が発生した場合であっても、適切に緊急車両を出動させることが可能となる。
【0095】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
【0096】
以上説明したように、本実施形態の消防指令システム100は、複数の消防本部(A、B、・・・、N)がそれぞれ有するサーバ(消防指令サーバ1)がネットワーク1000を介して相互に接続されている。そして、前記サーバの各々は、前記消防本部がそれぞれ管理する緊急車両(a1、a2、・・・、b1、b2、・・・、n1、n2、・・・)の出動管理を行う制御手段(緊急車両選別部14)を有している。
【0097】
前記制御手段は、災害発生情報が入力された際、当該災害の災害種別と災害住所に基づき、当該災害に対応する前記緊急車両の車両種別と車両数を抽出する。また、前記抽出した緊急車両が、車両種別或いは車両数又は前記緊急車両の出動状態の面から判断して、当該消防本部が管理する前記緊急車両だけでは不足すると判定した場合、他消防本部の前記サーバに前記緊急車両の応援出動依頼情報を送信する。さらに、前記抽出した緊急車両の車両種別と車両数に基づき、当該消防本部が管理し出動状態が出動可の前記緊急車両の中から、前記緊急車両の車両位置が前記災害住所に近い前記緊急車両から順に、実際に出動する前記緊急車両を決定する。またさらに、前記災害住所周辺の地図画像を取得し、前記決定した緊急車両に出動指令として渡す前記地図画像を付した指令書を印刷する。なお、前記消防本部間では、消防応援協定が締結されている。
【0098】
従って、本実施形態によれば、消防応援協定を締結した消防本部間での応援出動依頼を、迅速に且つ最適な緊急車両を選定して発する、ことが可能となる。
【0099】
また、本実施形態の消防指令システム100は、前記応援出動依頼情報を受信した前記他消防本部の前記サーバから、応援出動回答情報を受信した場合、以下のように動作する。すなわち、前記制御手段は、前記応援出動回答情報に記載されている車両位置が前記災害住所に近い順に前記緊急車両を選定し、前記選定した緊急車両の車両名称と前記地図画像を応援出動結果情報として前記他消防本部の前記サーバに送信する。そして、前記応援出動結果情報を受信した前記他消防本部の前記サーバの前記制御手段は、前記車両名称の緊急車両に出動指令として渡す前記地図画像を付した指令書を印刷する、ようになっている。
【0100】
従って、他消防本部が管理する緊急車両であっても、当該他消防本部の管轄外の災害発生場所への地図が容易に得られ、災害発生場所に速やかに出動することが可能となる。
【0101】
さらに、本実施形態の消防指令システム100の前記制御手段が当該災害に対応する前記緊急車両の車両種別と車両数を抽出する際、前記サーバ内に予め設定してある災害種別・災害住所に対応する車両種別・車両数を記載したテーブルを参照して前記当該災害に対応する緊急車両を抽出する。
【0102】
従って、紙の書類となっている出動計画書を、辞書を引くようにして調べる必要が無く、当該災害に対応する緊急車両を迅速に選別することが可能となる。
【0103】
またさらに、前記サーバは、前記サーバを有する消防本部が管理する前記緊急車両が出動した際、前記緊急車両を出動させていない別の消防本部から、前記緊急車両を一時的に貸与して貰う依頼情報を、前記別の消防本部の前記サーバに送信する。
【0104】
従って、災害に対応する緊急車両を出動させた消防本部において、別の災害が発生した場合であっても、適切に緊急車両を出動させることが可能となる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、図8から図11を参照して説明する。
【0105】
図8は、本発明の消防指令システムの第2の実施形態を示すブロック図である。
【0106】
なお、本発明の消防指令システムの第2の実施形態は、第1の実施形態と比較すると、以下の点でのみ異なるものである。
【0107】
すなわち、第1の実施形態の各消防本部の消防指令サーバに、緊急車両に対して無線連絡を行う無線発信設備を追加して接続した点でのみ異なっている。従って、第2の実施形態においては、第1の実施形態で示した構成要素には同一の参照番号または符号を付し、その説明を極力省略するものとする。
【0108】
図8に示す消防指令システム100−1には、ある地域を管轄する消防本部A、他の地域を管轄する消防本部B、・・・、さらに他の地域を管轄する消防本部Nが含まれている。
【0109】
そして、各消防本部(消防本部A、消防本部B、・・・、消防本部N)には、消防指令サーバ1−1が設置され、各消防本部の消防指令サーバ1−1はネットワーク1000を介して相互に接続されている。消防本部A、B、・・・、Nは相互に消防応援協定を締結した消防本部である。
【0110】
各消防本部(A、B、・・・、N)には、緊急車両(a1、a2、・・・、b1、b2、・・・、n1、n2、・・・)が配備されている。そして、各緊急車両には、車両情報発信機が搭載されている。
【0111】
各消防本部(A、B、・・・、N)には、消防指令サーバ1−1が設置されている。そして、消防指令サーバ1−1には、車両情報受信機2、地図検索サーバ4、指令書プリンタ5、無線発信設備6が、LANなどで接続されている。無線発信設備6には、無線アンテナ設備6−1が接続されている。
【0112】
車両情報受信機2、地図検索サーバ4、指令書プリンタ5は、第1の実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0113】
無線発信設備6は、各消防本部が管理する緊急車両(a1、a2、・・・、b1、b2、・・・、n1、n2、・・・)と無線連絡を行う設備であり、図示しない音声入出力部を備えている。無線発信設備6には、緊急車両との間で無線電波の送受信を行う無線アンテナ設備6−1が接続されている。
【0114】
次に、本実施形態における消防指令サーバ1−1の構成について説明する。
【0115】
図9は、第2の実施形態の消防指令サーバの構成を示すブロック図である。
【0116】
消防指令サーバ1−1は、緊急車両情報管理部10、出動計画情報管理部11、住所情報管理部12、車両情報受信部13、緊急車両選別部14−1、応援出動依頼送受信部15、地図画像取得部16、指令書印字部17、無線発信設備起動送受信部18を備えている。
【0117】
緊急車両情報管理部10、出動計画情報管理部11、住所情報管理部12、車両情報受信部13、応援出動依頼送受信部15、地図画像取得部16、指令書印字部17は、第1の実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0118】
緊急車両選別部14−1は、第1の実施形態における緊急車両選別部14の有する機能に加え、以下の機能を有している。
【0119】
すなわち、緊急車両選別部14−1は、無線発信設備6を使用して緊急車両と無線連絡を行う必要が生じた場合、無線発信設備起動送受信部18を介して無線発信設備起動情報を送信し、無線発信設備6を起動させる。無線発信設備6が起動すると、消防本部と緊急車両との間で無線連絡を行うことが可能となる。
【0120】
なお、緊急車両選別部14−1は、他消防本部の無線発信設備6を起動する必要が生じた場合には、無線発信設備起動送受信部18を介して、他消防本部の消防指令サーバ1−1に対し、無線発信設備起動依頼を送信する。当該無線発信設備起動依頼を受信した他消防本部の消防指令サーバ1−1は、他消防本部の無線発信設備6を起動させる。他消防本部の無線発信設備6が起動すると、当該無線発信設備起動依頼を送信した消防本部は、他消防本部の無線発信設備6を使用することが可能となる。この時、緊急車両との無線連絡の内容(音声)は、ネットワーク1000を介して送受信するようにしておけばよい。
【0121】
無線発信設備起動送受信部18は、緊急車両選別部14−1から送出される無線発信設備起動情報を、無線発信設備6に送信する。また、緊急車両選別部14−1から送出される無線発信設備起動依頼を、他消防本部の消防指令サーバ1−1に送信する。さらに、他消防本部の消防指令サーバ1−1から送信された無線発信設備起動依頼を受信して、緊急車両選別部14−1に送出する。
【0122】
次に、図10を参照して、本実施形態における無線発信設備6の無線アンテナ設備6−1の設置例について説明する。
【0123】
図10は、第2の実施形態における無線発信設備の無線アンテナ設備の設置例を示す図である。
【0124】
図10においては、一例として、消防本部Aと消防本部Bが隣接した地域を管轄するものとする。そして、消防本部Aが管轄する地域を、点線で囲んだ地域Aとして示し、消防本部Bが管轄する地域を、一点鎖線で囲んだ地域Bとして示す。また、消防本部Aの無線発信設備6に接続されている無線アンテナ設備6−1を無線アンテナ設備Aとして示し、消防本部Bの無線発信設備6に接続されている無線アンテナ設備6−1を無線アンテナ設備Bとして示すものとする。
【0125】
図10に示すように、消防本部Aが管轄する地域Aは、山々に囲まれた盆地のような所であり、その内側に無線発信設備6の無線アンテナ設備Aが設置されている。また、消防本部Bが管轄する地域Bは、概ね平野であるが、地域Bの内側にそびえる周辺地域内では一番高い山の山頂付近に無線アンテナ設備Bが設置されている。
【0126】
このような環境で、消防本部Aの無線発信設備6を使用して、消防本部Aが管理する緊急車両a1と無線連絡を行おうとした際、緊急車両a1が地域A内に存在する場合は上手く無線連絡を行うことが出来る。しかし、消防本部Aが管理する緊急車両a2が、地域B内に存在する場合には、消防本部Aの無線発信設備6を使用しても、緊急車両a2との無線連絡は上手く行うことが出来ない。これは、地域A内に設置されている無線アンテナ設備Aから送出される電波が、地域A周辺の山々に遮られ、地域B内の緊急車両a2には上手く届かないためである。このような場合、消防本部Aから消防本部Bの無線発信設備6を使用することができれば、消防本部Bの無線アンテナ設備Bと緊急車両a2との間では電波が届くようになり、無線連絡を行うことが可能となる。
【0127】
従って、本実施形態においては、各消防本部の消防指令サーバ1−1に、緊急車両に対して無線連絡を行う無線発信設備6を追加して接続するようにしている。
【0128】
次に、図11を参照して、本実施形態の動作について説明する。なお、図11に示す動作は、複数の消防本部(A、B、・・・、N)の内の何れかの消防本部の消防指令サーバ1−1の動作を示すものである。
【0129】
図11は、第2の実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【0130】
先ず、或る消防本部において、緊急車両と無線連絡を行う必要が生じた場合、自消防本部の消防指令サーバ1−1の緊急車両選別部14−1に、無線発信設備6を起動させる指示を入力する。緊急車両選別部14−1は、無線発信設備起動情報を生成し、無線発信設備起動送受信部18を介して無線発信設備6に送信する。無線発信設備起動情報を受信した無線発信設備6は起動する(図11のステップS300)。
【0131】
次に、当該消防本部では緊急車両と無線連絡を行い、緊急車両との無線連絡が出来たか否かを判定する(ステップS301)。
【0132】
無線連絡が出来なかった場合(ステップS301でNo)、他消防本部の無線発信設備6を起動させるため、他消防本部の無線発信設備6を起動させるための指示を、自消防本部の消防指令サーバ1−1の緊急車両選別部14−1に入力する。緊急車両選別部14−1は、無線発信設備起動依頼を生成し、無線発信設備起動送受信部18を介して他消防本部の消防指令サーバ1−1に送信する。無線発信設備起動依頼を受信した他消防本部の消防指令サーバ1−1は、他消防本部の無線発信設備6を起動させる(ステップS302)。次に、自消防本部では、他消防本部の無線発信設備6を使用して緊急車両との無線連絡を行う。そして、ステップS301に戻る。
【0133】
無線連絡が出来た場合(ステップS301でYes)、無線連絡が終了した際に、起動した無線発信設備6の終了処理を行う(ステップS303)。終了処理は、自消防本部の消防指令サーバ1−1の緊急車両選別部14−1に、無線発信設備6を終了させる指示を入力することにより行う。緊急車両選別部14−1は、無線発信設備終了処理情報を生成し、無線発信設備起動送受信部18を介して無線発信設備6に送信する。無線発信設備終了処理情報を受信した無線発信設備6は終了処理を行う。なお、他消防本部の無線発信設備6も起動させていた場合には、他消防本部の無線発信設備6の終了処理も、自消防本部と同様の手順を用いて行う。
【0134】
以上、第2の実施形態の構成及び動作について説明した。
【0135】
前述したように、本発明の第2の実施形態は、図1に示した第1の実施形態の各消防本部の消防指令サーバに、緊急車両に対して無線連絡を行う無線発信設備を追加して接続した点でのみ異なるものである。従って、以下に於いては、第2の実施形態に特有の箇所に関してのみ説明するものとする。
【0136】
以上説明したように、本実施形態の消防指令システム100−1は、複数の消防本部(A、B、・・・、N)がそれぞれ有するサーバ(消防指令サーバ1−1)がネットワーク1000を介して相互に接続されている。そして、前記サーバの各々は、前記消防本部がそれぞれ管理する緊急車両(a1、a2、・・・、b1、b2、・・・、n1、n2、・・・)の出動管理を行う制御手段(緊急車両選別部14−1)を有している。
【0137】
そして、前記制御手段は、さらに、前記サーバに接続されている自消防本部或いは他消防本部の無線発信設備(無線発信設備6)の起動を行う。
【0138】
従って、本実施形態によれば、自消防本部の無線発信設備を使用して緊急車両との無線連絡が出来ない場合であっても、他消防本部の無線発信設備を使用して緊急車両との無線連絡を行うことが可能となる。
【0139】
なお、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
複数の消防本部がそれぞれ有するサーバがネットワークを介して相互に接続され、前記サーバの各々は、前記消防本部がそれぞれ管理する緊急車両の出動管理を行う制御手段を有し、
前記制御手段は、災害発生情報が入力された際、当該災害の災害種別と災害住所に基づき、当該災害に対応する前記緊急車両の車両種別と車両数を抽出し、
前記抽出した緊急車両が、車両種別或いは車両数又は前記緊急車両の出動状態の面から判断して、当該消防本部が管理する前記緊急車両だけでは不足すると判定した場合、他消防本部の前記サーバに前記緊急車両の応援出動依頼情報を送信し、
前記抽出した緊急車両の車両種別と車両数に基づき、当該消防本部が管理し出動状態が出動可の前記緊急車両の中から、前記緊急車両の車両位置が前記災害住所に近い前記緊急車両から順に、実際に出動する前記緊急車両を決定し、
前記災害住所周辺の地図画像を取得し、
前記決定した緊急車両に出動指令として渡す前記地図画像を付した指令書を印刷する、
ことを特徴とする消防指令システム。
(付記2)
前記応援出動依頼情報を受信した前記他消防本部の前記サーバから、応援出動回答情報を受信した場合、
前記制御手段は、前記応援出動回答情報に記載されている車両位置が前記災害住所に近い順に前記緊急車両を選定し、前記選定した緊急車両の車両名称と前記地図画像を応援出動結果情報として前記他消防本部の前記サーバに送信し、
前記応援出動結果情報を受信した前記他消防本部の前記サーバの前記制御手段は、前記車両名称の緊急車両に出動指令として渡す前記地図画像を付した指令書を印刷する、
ことを特徴とする付記1に記載の消防指令システム。
(付記3)
前記制御手段が当該災害に対応する前記緊急車両の車両種別と車両数を抽出する際、前記サーバ内に予め設定してある災害種別・災害住所に対応する車両種別・車両数を記載したテーブルを参照して前記当該災害に対応する緊急車両を抽出する、
ことを特徴とする付記1或いは付記2の何れかに記載の消防指令システム。
(付記4)
前記サーバは、前記サーバを有する消防本部が管理する前記緊急車両が出動した際、前記緊急車両を出動させていない別の消防本部から、前記緊急車両を一時的に貸与して貰う依頼情報を、前記別の消防本部の前記サーバに送信する、
ことを特徴とする付記1から付記3の何れかに記載の消防指令システム。
(付記5)
前記制御手段は、さらに、前記サーバに接続されている自消防本部或いは他消防本部の無線発信設備の起動を行う、
ことを特徴とする付記1から付記4の何れかに記載の消防指令システム。
(付記6)
前記消防本部がそれぞれ管理する前記緊急車両の前記車両位置は、前記緊急車両が備えるGPS受信機で取得された位置情報である、
ことを特徴とする付記1から付記5の何れかに記載の消防指令システム。
(付記7)
災害発生情報が通報された際、当該災害の災害種別と災害住所に基づき、当該災害に対応する緊急車両の車両種別と車両数を抽出し、
前記抽出した緊急車両が、車両種別或いは車両数又は前記緊急車両の出動状態の面から判断して、消防本部が管理する前記緊急車両だけでは不足すると判定した場合、他消防本部が管理する前記緊急車両の応援出動を依頼し、
前記抽出した緊急車両の車両種別と車両数に基づき、前記消防本部が管理し出動状態が出動可の前記緊急車両の中から、前記緊急車両の車両位置が前記災害住所に近い緊急車両から順に、実際に出動する前記緊急車両を決定し、
前記災害住所周辺の地図画像を取得し、
前記決定した緊急車両に出動指令として渡す前記地図画像を付した指令書を印刷する、
ことを特徴とする応援出動方法。
(付記8)
前記緊急車両の応援出動の依頼に対し、応援出動の回答を得た場合、
前記応援出動の回答として得られた前記緊急車両の車両位置が前記災害住所に近い順に前記緊急車両を選定し、前記選定した緊急車両の車両名称と前記地図画像を前記応援出動の回答への結果として返信し、
前記応援出動の回答への結果を受信した際、前記車両名称の緊急車両に出動指令として渡す前記地図画像を付した指令書を印刷する、
ことを特徴とする付記7に記載の応援出動方法。
(付記9)
前記当該災害に対応する緊急車両の車両種別と車両数を抽出する際、予め設定してある災害種別・災害住所に対応する車両種別・車両数を記載したテーブルを参照して前記当該災害に対応する緊急車両を抽出する、
ことを特徴とする付記7或いは付記8の何れかに記載の応援出動方法。
(付記10)
前記消防本部が管理する前記緊急車両が出動した際、前記緊急車両を出動させていない別の消防本部が管理する前記緊急車両を一時的に貸与して貰う、
ことを特徴とする付記7から付記9の何れかに記載の応援出動方法。
(付記11)
前記緊急車両が出動した際、さらに、自消防本部或いは他消防本部が管理する無線発信設備を起動して、前記出動した緊急車両と無線連絡を行う、
ことを特徴とする付記7から付記10の何れかに記載の応援出動方法。
(付記12)
前記消防本部が管理する前記緊急車両の前記車両位置は、前記緊急車両が備えるGPS受信機で取得された位置情報である、
ことを特徴とする付記7から付記11の何れかに記載の応援出動方法。
【符号の説明】
【0140】
a1 緊急車両
a2 緊急車両
ak 緊急車両
b1 緊急車両
b2 緊急車両
bm 緊急車両
n1 緊急車両
n2 緊急車両
nn 緊急車両
a101 車両情報発信機
a102 車両情報発信機
a10k 車両情報発信機
b101 車両情報発信機
b102 車両情報発信機
b10m 車両情報発信機
n101 車両情報発信機
n102 車両情報発信機
n10n 車両情報発信機
1 消防指令サーバ
1−1 消防指令サーバ
10 緊急車両情報管理部
11 出動計画情報管理部
12 住所情報管理部
13 車両情報受信部
14 緊急車両選別部
14−1 緊急車両選別部
15 応援出動依頼送受信部
16 地図画像取得部
17 指令書印字部
2 車両情報受信機
4 地図検索サーバ
5 指令書プリンタ
6 無線発信設備
6−1 無線アンテナ設備
100 消防指令システム
100−1 消防指令システム
1000 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の消防本部がそれぞれ有するサーバがネットワークを介して相互に接続され、前記サーバの各々は、前記消防本部がそれぞれ管理する緊急車両の出動管理を行う制御手段を有し、
前記制御手段は、災害発生情報が入力された際、当該災害の災害種別と災害住所に基づき、当該災害に対応する前記緊急車両の車両種別と車両数を抽出し、
前記抽出した緊急車両が、車両種別或いは車両数又は前記緊急車両の出動状態の面から判断して、当該消防本部が管理する前記緊急車両だけでは不足すると判定した場合、他消防本部の前記サーバに前記緊急車両の応援出動依頼情報を送信し、
前記抽出した緊急車両の車両種別と車両数に基づき、当該消防本部が管理し出動状態が出動可の前記緊急車両の中から、前記緊急車両の車両位置が前記災害住所に近い前記緊急車両から順に、実際に出動する前記緊急車両を決定し、
前記災害住所周辺の地図画像を取得し、
前記決定した緊急車両に出動指令として渡す前記地図画像を付した指令書を印刷する、
ことを特徴とする消防指令システム。
【請求項2】
前記応援出動依頼情報を受信した前記他消防本部の前記サーバから、応援出動回答情報を受信した場合、
前記制御手段は、前記応援出動回答情報に記載されている車両位置が前記災害住所に近い順に前記緊急車両を選定し、前記選定した緊急車両の車両名称と前記地図画像を応援出動結果情報として前記他消防本部の前記サーバに送信し、
前記応援出動結果情報を受信した前記他消防本部の前記サーバの前記制御手段は、前記車両名称の緊急車両に出動指令として渡す前記地図画像を付した指令書を印刷する、
ことを特徴とする請求項1に記載の消防指令システム。
【請求項3】
前記制御手段が当該災害に対応する前記緊急車両の車両種別と車両数を抽出する際、前記サーバ内に予め設定してある災害種別・災害住所に対応する車両種別・車両数を記載したテーブルを参照して前記当該災害に対応する緊急車両を抽出する、
ことを特徴とする請求項1或いは請求項2の何れかに記載の消防指令システム。
【請求項4】
前記サーバは、前記サーバを有する消防本部が管理する前記緊急車両が出動した際、前記緊急車両を出動させていない別の消防本部から、前記緊急車両を一時的に貸与して貰う依頼情報を、前記別の消防本部の前記サーバに送信する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の消防指令システム。
【請求項5】
前記制御手段は、さらに、前記サーバに接続されている自消防本部或いは他消防本部の無線発信設備の起動を行う、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の消防指令システム。
【請求項6】
災害発生情報が通報された際、当該災害の災害種別と災害住所に基づき、当該災害に対応する緊急車両の車両種別と車両数を抽出し、
前記抽出した緊急車両が、車両種別或いは車両数又は前記緊急車両の出動状態の面から判断して、消防本部が管理する前記緊急車両だけでは不足すると判定した場合、他消防本部が管理する前記緊急車両の応援出動を依頼し、
前記抽出した緊急車両の車両種別と車両数に基づき、前記消防本部が管理し出動状態が出動可の前記緊急車両の中から、前記緊急車両の車両位置が前記災害住所に近い緊急車両から順に、実際に出動する前記緊急車両を決定し、
前記災害住所周辺の地図画像を取得し、
前記決定した緊急車両に出動指令として渡す前記地図画像を付した指令書を印刷する、
ことを特徴とする応援出動方法。
【請求項7】
前記緊急車両の応援出動の依頼に対し、応援出動の回答を得た場合、
前記応援出動の回答として得られた前記緊急車両の車両位置が前記災害住所に近い順に前記緊急車両を選定し、前記選定した緊急車両の車両名称と前記地図画像を前記応援出動の回答への結果として返信し、
前記応援出動の回答への結果を受信した際、前記車両名称の緊急車両に出動指令として渡す前記地図画像を付した指令書を印刷する、
ことを特徴とする請求項6に記載の応援出動方法。
【請求項8】
前記当該災害に対応する緊急車両の車両種別と車両数を抽出する際、予め設定してある災害種別・災害住所に対応する車両種別・車両数を記載したテーブルを参照して前記当該災害に対応する緊急車両を抽出する、
ことを特徴とする請求項6或いは請求項7の何れかに記載の応援出動方法。
【請求項9】
前記消防本部が管理する前記緊急車両が出動した際、前記緊急車両を出動させていない別の消防本部が管理する前記緊急車両を一時的に貸与して貰う、
ことを特徴とする請求項6から請求項8の何れかに記載の応援出動方法。
【請求項10】
前記緊急車両が出動した際、さらに、自消防本部或いは他消防本部が管理する無線発信設備を起動して、前記出動した緊急車両と無線連絡を行う、
ことを特徴とする請求項6から請求項9の何れかに記載の応援出動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−109406(P2013−109406A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251846(P2011−251846)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】