説明

消霧方法および消霧装置

【課題】広範囲に渡って霧を消すことが可能で、直流高圧電源の小型化、省電力化及び低コスト化に寄与する消霧方法および消霧装置を提供する。
【解決手段】空気との接触面積が広い平板状電極5、6に、コロナ放電を生じさせないように直流高電圧を印加し電界を発生させてコロナ放電を生じさせない暗放電の状態下で荷電粒子を発生させ、荷電粒子に作用するクーロン力に基づいて消霧対象空間13に向かう荷電粒子の流れを生じさせて消霧対象空間13の霧を消す。そのため、コロナ放電を利用する場合のように電圧が低下することなく電界を大きくすることができ、広範囲の消霧が可能になると共に、直流高圧電源10の小型化、省電力化および低コスト化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路等の自動車道路および空港の滑走路などに発生する霧を消すための消霧方法および消霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
霧に起因する視程障害は、高速道路や空港の滑走路等での安全性を阻害して事故を誘発させるおそれがあるなど、大きな問題となっている。このような観点から、霧を消すための方法として、コロナ放電を生じさせ、コロナ放電により荷電粒子を発生させることによって、霧を積極的に消散させる方法が提案されている。このような消霧技術として、例えば特許文献1に記載の霧消散装置および特許文献2に記載の静電式霧消装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−80347号公報
【特許文献2】特開平10−382号公報
【0004】
特許文献1には、コロナ放電が発生し且つアーク放電が発生しない直流高電圧を高圧電線に印加し、コロナ放電により霧粒子に電荷を帯電させることにより、霧を消散させる霧消散装置が開示されている。また、特許文献2には、ジグザグ状の金属ネットの間に細線を等間隔に張って構成された放電極を配置し、放電極の細線部分から金属ネットに向かってコロナ放電を発生させて霧の微粒子を帯電させることにより、消霧効果を与える静電式霧消装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの特許文献によれば、コロナ放電を発生しやすい高圧電線、または、細線を等間隔に張って構成した放電極を用いて、高圧電線または放電極の細線にコロナ放電を発生させることにより霧を消すようにしている。このようにコロナ放電を利用するため、暗放電の状態からコロナ放電に移行すると、電流の急激な上昇に伴って電圧が急激に低下することとなり、高圧電線または放電極の細線に発生する電界を大きくすることができず、帯電した霧粒子を含む荷電粒子の流れが生じにくくなり、広範囲に渡って消霧できないという問題がある。
【0006】
また、コロナ放電の状態下で電圧を高くして電界を大きくしようとすると、高圧電線または放電極に直流高電圧を印加する直流高圧電源を極めて大容量のものにして電圧を高くしなければならないので、小型化、省電力化、低コスト化等を図ることができないなどの問題がある。
【0007】
本発明は、このような観点に基づいてなされたものであり、より広範囲に渡って霧を消すことが可能で、直流高圧電源の小型化、省電力化及び低コスト化にも寄与する消霧方法および消霧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、空気との接触面積が広い平板状電極に、コロナ放電を生じさせないように直流高電圧を印加して電界を発生させ、コロナ放電が生じない暗放電の状態下で荷電粒子を発生させて、前記荷電粒子に作用するクーロン力により消霧対象空間に向かう前記荷電粒子の流れを生じさせて前記消霧対象空間の霧を消すようにした消霧方法によって、上記目的を達成する。
【0009】
また、本発明においては、空気との接触面積が広い平板状電極と、前記平板状電極にコロナ放電を生じさせないように直流高電圧を印加して電界を発生させ、コロナ放電が生じない暗放電の状態下で荷電粒子を発生させる直流高圧電源とを有し、前記荷電粒子に作用するクーロン力により消霧対象空間に向かう前記荷電粒子の流れが生じるように前記平板状電極を設けて前記消霧対象空間の霧を消すようにした消霧装置によって、上記目的を達成する。
【0010】
このような消霧方法および消霧装置によれば、空気との接触面積が広い平板状電極を用い、当該平板状電極にコロナ放電を生じさせないように直流高電圧を印加し、平板状電極にコロナ放電を生じさせない暗放電の状態下で空気および霧粒子等をイオン化して帯電した霧粒子を含む荷電粒子を発生させるので、コロナ放電を利用する場合のように電圧を低下させず、電界を大きくすることができる。しかも、空気との接触面積が広い平板状電極により空気や霧粒子等との接触面が広くなり、荷電粒子の発生を増大させることができる。そのため、電界を大きくすることができるので荷電粒子に作用するクーロン力が大きくなり、消霧対象空間に向かう荷電粒子の流れ、即ち、イオン風による荷電粒子の流れを発生させることができ、広範囲の消霧が可能になる。更に、コロナ放電を発生させないので電圧の低下を招来することがなく、平板状電極に直流高電圧を印加する直流高圧電源の小型化、省電力化および低コスト化を図ることができる。
【0011】
また、前記平板状電極は、その周囲の縁部を丸めて角部分がないように形成されることにより、コロナ放電を生じにくく構成することができる。これにより、平板状電極の縁部分に尖った部分がなくなり、コロナ放電の発生をより抑えることが可能となる。
【0012】
また、前記平板状電極は、パンチング孔のないフルメタル又はパンチングメタル又はメッシュの平板で構成することができる。更に、前記平板状電極にコロナ放電が生起する直前の直流高電圧を印加するように設定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コロナ放電を利用する場合のように電圧が低下しないので電界を大きくすることができ、しかも、平板状電極により空気や霧粒子等との接触面が広くなり荷電粒子の発生を増大させることができるので、消霧対象空間に向かう荷電粒子の流れを発生させことができ、広範囲の消霧が可能になる。しかも、コロナ放電を発生させないので電圧の低下を招来することがなく、平板状電極に直流高電圧を印加する直流高圧電源の小型化、省電力化および低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明者が行った霧消実験の構成を示す図である。
【図2】図2は図1の霧消実験の実験結果を示す図である。
【図3】図3は図1の平板状電極の別の例を示す図である。
【図4】図4は図1の平板状電極の更に別の例を示す図である。
【図5】図5は本発明に係る消霧方法および消霧装置の第1実施例を示す構成図である。(実施例1)
【図6】図6は図5の構成の平板状電極部分を矢印A方向から見た図である。
【図7】図7は図5の平板状電極を示す図である。
【図8】図8は図7の平板状電極のI−I断面を示す図である。
【図9】図9は図7の平板状電極のII−II断面を示す図である。
【図10】図10は図5の平板状電極の別の例を示す図である。
【図11】図11は図10の平板状電極のIII−III断面を示す図である。
【図12】図12は図10の平板状電極のIV−IV断面を示す図である。
【図13】図13は図5の平板状電極の更に別の例を示す図である。
【図14】図14は図13の平板状電極のV−V断面を示す図である。
【図15】図15は図13の平板状電極のVI−VI断面を示す図である。
【図16】図16は本発明に係る消霧方法および消霧装置の第2実施例を示す構成図である。(実施例2)
【図17】図17は本発明に係る消霧方法および消霧装置の第3実施例を示す構成図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明者が行った消霧実験の構成を示す図である。
【0016】
図1において、1は透明ケースである。本実験では、透明ケース1は、3m(長さ)×1m(幅)×1m(高さ)の透明のプラスチックで構成され、合板製の床面2とによって閉空間3を構成している。この閉空間3の内部には、霧発生装置4および一対の平板状電極5、6が設置されている。霧発生装置4は、温水をドライアイスで急速に冷却することによって自然発生に近い霧を発生させることができるもので、一対の平板状電極5、6の斜め上方から霧7を平板状電極5、6に向けて噴霧するようなっている。
【0017】
一対の平板状電極5、6は、本実験では、300mm(長さ)×100mm(幅)のパンチングされていないフルメタルの平板で夫々構成され、アルミニウム製である。そのため、平板状電極5、6は、針電極や電線と比較して、空気との接触面積が広くなると共に、平板状電極5、6の面からのコロナ放電の発生が抑えられ同一の直流高電圧を印加した場合にコロナ放電が発生しにくくなる。このような一対の平板状電極5、6は、塩化ビニルパイプからなる絶縁性の支持脚8a、8b、9a、9bを介して床面2の上方に、本実験では50cmの間隔Lを介して互いに対峙するように透明ケース1の長さ方向に直交する形で支持されており、一対の平板状電極5、6の間に消霧対象空間13を形成している。
【0018】
一対の平板状電極5、6には、床面2にアースされた直流高圧電源10から、平板状電極5、6にコロナ放電を生じさせない+30kVの直流高電圧が夫々に印加されるようになっている。上述した構成の平板状電極5、6に+30kVの直流高電圧を印加しても、平板状電極5、6がコロナ放電を生じない暗放電の状態におかれることは、本発明者によって確認されている。更に、光源11および照度計12が、平板状電極5、6の間隔Lを通して光源11からの光を照度計12で受けることができるように透明ケース1の外側部に設けられ、平板状電極5、6の間の視程の程度、即ち、消霧対象空間13の光の透過量を計測することができるようになっている。
【0019】
このような実験構成で、直流高圧電源10から+30kVの直流高電圧を平板状電極5、6の夫々に印加すると、直流高圧電源10は床面2にアースされているので平板状電極5、6以外の床面2等がアース電位すなわち0ボルトとなり、各平板状電極5、6とアースとの間に大きな電位差が生じ、平板状電極5、6に床面2等に向かう電界が発生する。しかも、平板状電極5、6はコロナ放電を生じない暗放電の状態であるので、コロナ放電を生じさせた場合のように電圧が低下することはなく、大きな電界が発生する。これにより、接触面積が大きい平板状電極5、6に空気や霧粒子等が大量に接触してイオン化され、大量の荷電粒子がクーロン力によってアース側に動き始め、一対の平板状電極5、6の間の消霧対象空間13を通して床面2に向かうイオン風による流れが生じる。そのため、消霧対象空間13の霧は荷電粒子に結合し凝縮して床面2に落下し、消霧対象空間13の霧が消されることとなる。
【0020】
図2は図1の構成による霧消実験の実験結果を示す図で、縦軸は照度計12によって計測された照度(ルクス)であり、横軸は時間経過(sec)である。霧発生装置4から霧を発生させる前の透明ケース1内の照度計12により測定された照度は175ルクスであり、霧発生装置4を駆動して透明ケース1内に霧を充満させた場合に照度計12によって測定された照度は89ルクスであった。霧発生装置4を駆動して透明ケース1内に霧を充満させている状態で、一対の平板状電極5、6に夫々+30kVの直流高電圧を印加して消霧を開始すると、図2の実験結果から明らかなように、消霧開始後、8sec(秒)の時間経過で照度計12の測定照度は140ルクスに達し、11secで160ルクスを越えた。図2の実験結果は、霧発生装置4を消霧開始後連続的に駆動して霧を発生している環境で得られたものである。
【0021】
この実験結果から明らかなように、空気や霧粒子との接触面積が広い平板状電極5、6にコロナ放電を生じさせないように直流高電圧を印加して電界を発生させ、平板状電極5、6にコロナ放電を生じさせない暗放電の状態下で荷電粒子を発生させれば、荷電粒子に作用するクーロン力に基づいて消霧対象空間13に向かう荷電粒子の流れを生じさせることができ、消霧対象空間13の霧を有効に消すことができた。
【0022】
上述した実験では、平板状電極5、6の夫々に+30kVの直流高電圧を印加するようにしたが、平板状電極5、6の夫々に−30kVの直流高電圧を印加しても同様の実験結果を得た。
【0023】
また、上記実験では夫々に+30kVの直流高電圧が印加される一対の平板状電極5、6を用いたが、一対の平板状電極5、6の一方のみを設けるようにしても、当該一方の平板状電極5または6とアースとの間でイオン風による流れによる消霧が可能であることが本発明者の実験により確認された。
【0024】
更に、平板状電極5、6に印加する直流高電圧は上記電圧値に限定されるものではなく、平板状電極5、6にコロナ放電が生ずる直前の電圧値に設定することができ、これにより更に大きな電界の発生が可能になる。
【0025】
図3は平板状電極の別の例を示す図で、図1のパンチングされていないフルメタルの平板状電極5、6に代えて、多数のパンチング孔15が形成されたパンチングメタルの平板状電極14を用いて上述した消霧実験を行った。パンチングメタルの平板状電極14において、パンチング孔15をあまり大きくするとコロナ放電が生じやすくなるので、本実験では、パンチング孔15の大きさが直径1cm程度の平板状電極14を使用した。パンチングメタルの平板状電極14によれば、消霧開始後10secの時間経過で140ルクスに達し、16secの時間経過で160ルクス以上になった。この実験結果から、パンチングメタルの平板状電極14でも、フルメタルの平板状電極5、6と比較して消霧に若干時間がかかるが、同様の消霧効果の得られることが確認された。
【0026】
図4は平板状電極の更に別の例を示す図で、図1のフルメタルの平板状電極5、6に代えて、メッシュの平板で構成された平板状電極16を用いて上述した消霧実験を行った。パンチングメタルの平板状電極14と同様に、メッシュをあまり大きくするとコロナ放電が発生しやすくなるので、本実験では、平板状電極16のメッシュは1〜2cm程度の大きさに形成されている。このようなメッシュの平板状電極16によれば、消霧開始後15secの時間経過で140ルクスに達し、28secの時間経過で160ルクス以上になった。この実験結果から、メッシュの平板状電極16を用いた場合でも、フルメタルの平板状電極5、6およびパンチングメタルの平板状電極14と比較して消霧に更に時間がかかるが、同様の消霧効果の得られることが確認された。
【0027】
上述した図1のフルメタルの平板状電極5、6、図3のパンチングメタルの平板状電極14および図4のメッシュの平板状電極16は、周囲が切り落し状態になっているので、周囲の縁部からコロナ放電が生じるおそれがあり直流高電圧の印加電圧値が制限されることとなる。しかし、以下の実施例で述べるように、平板状電極5、6、14、16の周囲の縁部を丸めて角部分がないように平板状電極5、6、14、16が形成されることにより、コロナ放電を更に生じにくく構成することができ、コロナ放電を生じさせることなく印加される電圧値をより一層高くすることができる。
【0028】
このような消霧実験により得られた消霧原理に基づく実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0029】
図5は本発明の消霧方法および消霧装置の第1実施例を示す構成図、図6は図5の構成の平板状電極部分を矢印A方向から見た図、図7は図1の構成の平板状電極の平面図、図8は図7の平板状電極のI−I断面図、および、図9は図7の平板状電極のII−II断面図である。
【0030】
図5において、20は高速道路や一般道路等の車両が通る道路であり、この道路20の車両の走行の妨げにならない一方の側部の側に、道路20の消霧対象空間20Aを消霧するための消霧装置21が設置されている。消霧装置21は2つの平板状電極22、23を有している。図6に示すように、一方の平板状電極22は2個の絶縁性の保持具24a、24bを介して道路20の一方の側部の側に立設された支柱26a、26bに保持され、他方の平板状電極23は2個の絶縁性の保持具25a、25bを介して同様に支柱26a、26bに保持されている。
【0031】
平板状電極22、23は、パンチング孔のないフルメタルの平板状電極で、屋外での耐久性等を考慮すれば例えばアルミニウムやステンレスで構成されることが望ましい。平板状電極22、23は、図7、図8および図9に示されているように、それらの周囲の縁部27が例えばプレス加工により丸められて縁部27に角部分がないように形成されることにより、コロナ放電が極めて生じにくくなるように構成されている。このような平板状電極22、23は、周囲に丸められた縁部27が形成された面と反対の平坦面22aと23aとが間隔Laを介して上下方向で対向するように、支柱26a、26bに保持具24a、24b、25a、25bを介して保持されている。平板状電極22と23との間隔Laは、あまり短いとコロナ放電が発生しやすくなるので、コロナ放電を発生させることなく暗放電状態にするという観点から長く設定され、例えば30〜50cm以上に設定される。更に、本例では、平板状電極22、23は、道路20の消霧対象空間20Aに向かって若干傾斜するように設けられ、荷電粒子が消霧対象空間20Aに流れやすくなるように構成されている。
【0032】
このように構成された平板状電極22、23には、道路20にアースされた直流高圧電源28から、上方に設けられた一方の平板状電極22にプラスの直流高電圧として例えば+30kVが印加され、下方に設けられた他方の平板状電極23にマイナスの直流高電圧として例えば−30kVが印加されるようになっている。本例では、一方の平板状電極22と他方の平板状電極23との電位差は60kVになり、また、直流高圧電源28は道路20にアースされているので、一方の平板状電極22とアースとの電位差は30kV、他方の平板状電極23とアースとの電位差も30kVになり、平板状電極22と23との間および各平板状電極22、23とアース電位である道路20との間に大きな電界が発生するようになっている。
【0033】
このような構成で、直流高圧電源28から平板状電極22、23の夫々に直流高電圧が印加されると、一方の平板状電極22と他方の平板状電極23との間および各平板状電極22、23とアース電位の道路20との間に大きな電位差が生じ、平板状電極22と23との間および各平板状電極22、23と道路20との間に電界が発生する。しかも、平板状電極22、23は、コロナ放電が発生しにくくなるように縁部27が丸められて角部分がなくなるように構成されているので、コロナ放電を生じない暗放電の状態におかれ、コロナ放電に起因する電圧低下をきたすことなく、大きな電界が発生する。これにより、接触面積が大きい平板状電極22、23に空気や霧粒子等が大量に接触してイオン化され、発生した大量の荷電粒子がクーロン力によって平板状電極22と23との間で動き始めると共に、平板状電極22、23とアース電位である道路20との間で動き始め、道路20の消霧対象空間20Aに向かうイオン風による流れが生じる。大きな電界が発生しているので、平板状電極22と23との間の霧が荷電粒子に結合して凝縮すると共に、道路20の消霧対象空間20Aに向かう荷電粒子の流れ即ちイオン風による流れが道路20の消霧対象空間20Aに向かって広範囲に広がり、道路20の消霧対象空間20Aの霧が荷電粒子と結合し凝縮して道路20に落下し、道路20の消霧対象空間20Aの霧が消されることとなる。
【0034】
上述した実施例では、消霧装置21を道路20の一方の側部の側すなわち道路20の片側に設けることとしたが、道路20の幅が広い場合などのように消霧対象空間20Aの広さに応じて道路20の両側に設置するようにしてもよい。
【0035】
また、平板状電極22、23に印加される直流高電圧の電圧値は±30kVに限定されるものではなく、コロナ放電が発生しない暗放電の状態に平板状電極22、23がおかれる電圧値であればよく、コロナ放電が生ずる直前の電圧値に設定することもでき、これによれば更に大きな電界の発生が可能になる。更に、平板状電極22と23との間隔Laは30〜50cm以上を例に説明したが、コロナ放電の発生を抑制するという観点から更に長くすることもできる。
【0036】
図10は図5の平板状電極の別の例を示す図、図11は図10の平板状電極のIII−III断面図、および、図12は図10の平板状電極のIV−IV断面図である。
【0037】
図10から明らかなように、本例の平板状電極30は、図5のパンチング孔のないフルメタルの平板状電極22、23に代えて、多数のパンチング孔31が形成されたパンチングメタルで構成されている。パンチングメタルの平板状電極30において、前述したように、パンチング孔31をあまり大きくするとコロナ放電が生じやすくなるので、パンチング孔31の大きさは直径1cm程度が望ましい。このようなパンチングメタルの平板状電極30は、図11及び図12に示されているように、図7〜図9のフルメタルの平板状電極22、23と同様に、周囲の縁部32が丸められて縁部32に角部分がないように形成され、コロナ放電が極めて生じにくくなるように構成されている。パンチングメタルの平板状電極30によれば、金属量が少なくなるので経済的であり、また重量的にも取り扱いが容易になる。このような構成の平板状電極30を、フルメタルの平板状電極22、23に代えて図5の消霧装置21に適用することができ、同様の消霧効果を奏することができる。
【0038】
図13は図5の平板状電極の更に別の例を示す図、図14は図13の平板状電極のV−V断面図、図15は図13の平板状電極のVI−VI断面図である。
【0039】
図13から明らかなように、本例の平板状電極40は、図5のパンチング孔のないフルメタルの平板状電極22、23に代えて、メッシュ41の網目状電極で構成される。メッシュの平板状電極40において、メッシュ41の大きさをあまり大きくするとコロナ放電が生じやすくなるので、メッシュ41の網目の大きさは1〜2cm程度が望ましい。このようなメッシュの平板状電極40は、図14及び図15に示されているように、周囲の縁部42が丸められて縁部42に角部分がないように形成され、コロナ放電が極めて生じにくくなるように、図7〜図9のフルメタルの平板状電極22、23と同様に構成されている。メッシュの平板状電極40によれば、図10のパンチングメタルの平板状電極30と同様に、経済的および重量的なメリットが得られる。このような構成の平板状電極40を、フルメタルの平板状電極22、23に代えて図5の消霧装置21に適用することができ、同様の消霧効果を奏することができる。
【実施例2】
【0040】
図16は本発明の消霧方法および消霧装置の第2実施例を示す構成図である。
【0041】
本実施例では、車両が通る道路20の車両の走行の妨げにならない一方の側部の側に、図5の2つの平板状電極22、23に代えて一つの平板状電極50を有する消霧装置51が設置されて、道路20の消霧対象空間20Aを消霧するように構成されている。平板状電極50は、絶縁性の保持具52を介して、道路20の一方の側部側に立設された支柱53に保持されている。
【0042】
平板状電極50としては、図7〜図9で述べたパンチング孔のないフルメタルの平板状電極22、23、図10〜図12で述べた多数のパンチング孔が形成されたパンチングメタルの平板状電極30、または、図13〜図15で述べたメッシュの平板状電極40が用いられる。平板状電極50は、第1実施例で述べたように、その周囲の縁部が丸められて縁部に角部分がないように形成されることにより、コロナ放電が極めて生じにくくなるように構成されている。このような平板状電極50は、周囲に丸められた縁部が形成された面と反対の平坦面50aが道路20の消霧対象空間20Aに向くように道路20に対して略垂直に、保持具52を介して支柱53に保持されている。
【0043】
このように構成された平板状電極50には、道路20にアースされた直流高圧電源54から、平板状電極50にプラスの直流高電圧として例えば+30kVが印加されるようになっている。本例では、直流高圧電源54は道路20にアースされているので、平板状電極50とアースされている道路20との電位差が30kVになり、平板状電極50とアースとの間に大きな電界が発生するようになっている。なお、平板状電極50に印加される直流高電圧の電圧値は+30kVに限定されるものではなく、コロナ放電が発生しない暗放電の状態に平板状電極50がおかれる電圧値であればよく、コロナ放電が生ずる直前の電圧値に設定することもでき、これによれば更に大きな電界の発生が可能になる。また、平板状電極50にマイナスの直流高電圧を印加するようにしてもよい。
【0044】
このような構成で、直流高圧電源54から平板状電極50に直流高電圧が印加されると、平板状電極50とアース電位の道路20との間に大きな電位差が生じ、平板状電極50と道路20との間に電界が発生する。しかも、平板状電極50は、コロナ放電が発生しにくくなるように周囲の縁部が丸められて角部分がなくなるように構成されているので、コロナ放電を生じない暗放電の状態におかれ、コロナ放電に起因する電圧低下をきたすことなく、大きな電界が発生する。平板状電極50は空気との接触面積が広いので平板状電極50に空気や霧粒子等が大量に接触してイオン化され、発生した大量の荷電粒子がクーロン力によって平板状電極50からアース電位である道路20へ動き始め、道路20の消霧対象空間20Aに向かうイオン風による流れが生じる。大きな電界が発生しているので、道路20の消霧対象空間20Aに向かう荷電粒子の流れ即ちイオン風による流れが道路20の消霧対象空間20Aに向かって広範囲に広がり、道路20の消霧対象空間20Aの霧が荷電粒子に結合し凝縮して道路20に落下し、道路20の消霧対象空間20Aの霧が消されることとなる。
【実施例3】
【0045】
図17は本発明の消霧方法および消霧装置の第3実施例を示す構成図である。
【0046】
本実施例では、車両が通る道路20の車両の走行の妨げにならない一方の側部の側に図16の消霧装置51が設置されると共に、道路20の他方の側部の側に消霧装置51と同様の構成を有する別の消霧装置60が設置され、道路20の両側に設置された消霧装置51、60によって道路20の消霧対象空間20Aの消霧が行われるように構成されている。
【0047】
道路20の他方の側部に設置された消霧装置60は、道路20の他方の側部の側に立設された支柱61に絶縁性の保持具62を介して保持された平板状電極63を有している。平板状電極63は、第2実施例の平板状電極50と同様に構成され、丸められた縁部が形成された面と反対の平坦面63aが道路20の消霧対象空間20Aに向くように設けられており、道路20にアースされた直流高圧電源64から直流高電圧、本例では一方の側の消霧装置51と同様の+30kVが印加されるようになっている。その他の構成は図16の第2実施例で述べた通りである。
【0048】
このような構成によれば、道路20の一方の側部に設置された消霧装置51の平板状電極50に発生した荷電粒子が電界によって道路20の消霧対象空間20Aに向かって動きだすと共に、他方の側部に設置された消霧装置60の平板状電極63に発生した荷電粒子が電界によって消霧対象空間20Aに向かって動きだす。上述したように、平板状電極50、63は、コロナ放電が発生しにくくなるように周囲の縁部が丸められて角部分がなくなるように構成されているので、コロナ放電を生じない暗放電の状態におかれ、コロナ放電に起因する電圧低下をきたすことなく大きな電界が発生し、消霧装置51の平板状電極50および消霧装置60の平板状電極63から道路20の消霧対象空間20Aに向かうイオン風による流れが道路20の両側から生じる。消霧装置51の平板状電極50および消霧装置60の平板状電極63は空気との接触面積が大きいので、平板状電極50、63に空気や霧粒子等が大量に接触してイオン化され、発生した大量の荷電粒子がクーロン力によって道路20の消霧対象空間20Aに向かって道路20の両側から広がり、道路20の消霧対象空間20Aの霧が荷電粒子に結合し凝縮して道路20に落下し、道路20の消霧対象空間20Aの霧が消されることとなる。このような構成によれば、道路20の幅が広いような場合でも有効に霧を消すことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、高速道路や一般道路等の車両が通る道路および空港の滑走路などの消霧に有効に利用することができ、霧による視程障害に起因する危険性を排除し安全性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0050】
5、6 フルメタルの平板状電極
10 直流高圧電源
13 消霧対象空間
14 パンチングメタルの平板状電極
15 パンチング孔
16 メッシュの平板状電極
20A 消霧対象空間
21 消霧装置
22、23 フルメタルの平板状電極
27 縁部
28 直流高圧電源
30 パンチングメタルの平板状電極
31 パンチング孔
32 縁部
40 メッシュの平板状電極
41 メッシュ
42 縁部
51、60 消霧装置
50、63 平板状電極
54、64 直流高圧電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気との接触面積が広い平板状電極に、コロナ放電を生じさせないように直流高電圧を印加して電界を発生させ、コロナ放電が生じない暗放電の状態下で荷電粒子を発生させて、前記荷電粒子に作用するクーロン力により消霧対象空間に向かう前記荷電粒子の流れを生じさせて前記消霧対象空間の霧を消すことを特徴とする消霧方法。
【請求項2】
前記平板状電極が、その周囲の縁部を丸めて角部分がないように形成されることにより、コロナ放電を生じにくく構成されることを特徴とする請求項1に記載の消霧方法。
【請求項3】
前記平板状電極が、パンチング孔のないフルメタル又はパンチングメタル又はメッシュの平板で構成されることを特徴とする請求項2に記載の消霧方法。
【請求項4】
前記直流高電圧が、前記平板状電極にコロナ放電が生起する直前の電圧値に設定されることを特徴とする請求項1に記載の消霧方法。
【請求項5】
空気との接触面積が広い平板状電極と、
前記平板状電極にコロナ放電を生じさせないように直流高電圧を印加して電界を発生させ、コロナ放電が生じない暗放電の状態下で荷電粒子を発生させる直流高圧電源とを有し、
前記荷電粒子に作用するクーロン力により消霧対象空間に向かう前記荷電粒子の流れが生じるように前記平板状電極を設けて前記消霧対象空間の霧を消すことを特徴とする消霧装置。
【請求項6】
前記平板状電極が、その周囲の縁部を丸めて角部分がないように形成されることにより、コロナ放電を生じにくく構成されることを特徴とする請求項5に記載の消霧装置。
【請求項7】
前記平板状電極が、パンチング孔のないフルメタル又はパンチングメタル又はメッシュの平板で構成されることを特徴とする請求項6に記載の消霧装置。
【請求項8】
前記直流高圧電源が、前記平板状電極にコロナ放電が生起する直前の直流高電圧を印加することを特徴とする請求項5に記載の消霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−117131(P2011−117131A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273087(P2009−273087)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000232922)日油技研工業株式会社 (67)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(596147699)株式会社ニチホク (3)