説明

涙膜浸透圧法

【課題】患者に対して不便と不快を極力かけずに、且つ、測定するのに多大の熟練を要することなく、高度の反復性と精度でもって、信頼し得る涙膜等のサンプル流体の浸透度測定装置を提供する。
【解決手段】基板層710に印刷された少なくとも2個の電極711によって形成されるサンプル領域704に、挿入された涙膜等のサンプル流体702に正弦波信号を印加し、複素インピーダンスの実部と虚部が測定される。サンプル流体のイオン濃度が変化すれば、流体の導電率と浸透度は対応して変化するため、導電率から流体の浸透度が得られる。付与されるエネルギーは、上記電気エネルギーの他、光エネルギー又は熱エネルギーであり光エネルギーの場合、エネルギー特性は蛍光性であり得る。熱エネルギーの場合、測定される特性はサンプル流体の凝固点であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、流体の浸透圧の測定に関し、更に詳しくは、涙膜の浸透度の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
涙液は、目の表面の完全な状態を維持し、細菌の侵入に対して保護すると共に、視力を保持する上で重要な役割を果たす。これらの機能は、次に、下方に位置するむちムチン基部、中間の水性成分と上方に位置する脂質層を含む涙膜構造の組成と安定性に精確に依存する。涙膜の分裂、異常又は欠如は目に激しい悪影響を与える。もし人工涙液又は涙膜保存療法で処置されなければ、これらの不調は、角膜上皮の難治性乾燥、角膜の潰瘍及び穿孔、伝染病の発生の増加と最終的にはっきりした視力障害及び失明につながる。
【0003】
乾性角結膜炎(KCS)又は「ドライアイ」は、上記の涙膜構造成分の1個以上が、存在する量において不十分であったり、他の成分と不均衡な状態である。KCSの患者では、涙液の流体張性又は浸透度が増加することが知られている。KCSは、シェーグレン症候群、老化、アンドロゲン欠乏等の身体の一般的健康に影響する条件と関連している。従って、涙膜の浸透度は、KCS及び他の状態の診断のための高感度で特別なインジケータであり得る。
【0004】
サンプル流体(例えば、涙液)の浸透度は、溶媒(即ち、水)中の溶質又はイオンが、流体凝固点をイオンが無い状態から降下させる「凝固点降下」と呼ばれるエクスビボ手法によって決定することができる。凝固点降下分析では、ある体積(典型的に、約数ミリリットル程度)のサンプルが容器(例えば、管〕内で最初に凝固を開始する温度を検出することによって、イオン化サンプル流体の凝固点が見出される。凝固点を測定するには、ある体積のサンプル流体が管等の容器内に採取される。次に、温度センサーがサンプル流体内に浸没されて、容器が冷凍槽又はペルチエ冷却装置に接触させられる。サンプルは、その凝固点より下の過冷却状態となるように、連続的に撹拌される。機械的誘導により、サンプルは、融解の熱力学的熱により凝固点まで上昇して、凝固する。サンプル凝固点の0℃からのずれは、サンプル流体内の溶質レベルに比例する。この型式の測定装置は、時には、浸透圧計と呼ばれる。
【0005】
今日、凝固点降下測定は、マイクロピペット又は毛管を使用して目から涙液サンプルを採取すると共に、浸透度の上昇による凝固点の降下を測定することにより、エクスビボでなされる。しかしながら、これらのエキスビボ測定は、しばしば多くの困難に見舞われる。例えば、涙液サンプルの凝固点降下を分析するには、典型的に20マイクロリットル(μL)の程度の相対的に大きな体積の涙膜を採取しなければならない。約10〜100ナノリットル(nL)以下の涙液サンプルはKCS患者から1度にいつでも得ることができるから、従来のエクスビボ手法用に十分な量の流体を採取するには、医者が患者に反射的な流涙を誘起する必要がある。反射的な流涙は、大きなほこりが目に入った時に類似して、目の表面に対する鋭い又は長引いた刺激によって生じる。反射的な涙液は、目の上に通常見れる涙液よりも薄い、即ち、より少ない溶質イオンを有する。涙膜のどんな希釈も、ドライアイの浸透度試験の診断能力を無価値にするので、現在得られるエクスビボ方法を医療現場において禁止的にする。
【0006】
同様のエキスビボ手法は、十分な流体が吸収されるまで小さな円形の濾紙を患者のまぶたの下に当てる蒸気圧浸透圧法である。濾紙円板は、密封容器内に配置され、そこで、冷却された温度センサーがその表面の蒸気の凝縮を測定する。最後に、温度センサーは、サンプルの露点まで上げられる。水に比例する露点の減少が、次に、浸透度に変換される。現存する蒸気圧浸透圧計の反射的な流涙の誘起と大体積要件のために、現存する蒸気圧浸透圧計はドライアイの決定に対して実用的でない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
米国、ニューヨーク州、ハートフォードのクリフトン・テクニカル・フィジックス(Clifton Technical Physics)社から市販されているクリフトン・ナノリットル浸透圧計(Clifton Nanoliter Osmometer)は、KCS患者の溶質濃度を定量するのに、研究室環境で広範に使用されてきたが、この機械は操作するのに大量の訓練を要する。それは、まずまずのデータを出すために、1時間に及ぶ較正と熟練技術者を必要とする。クリフトン・ナノリットル浸透圧計は、又、かさばると共に相対的に高価である。これらの特性が、それを医療用浸透圧計として使用することを大きく阻んでいる。
【0008】
目の表面から採取した涙液サンプルの浸透度を測定するエクスビボ手法と異なり、目の表面上で直接浸透度を測定するインビボ手法は、患者のまぶたの真下に置かれる1対の可撓性電極を使用する。次に、電極は、電極を囲む流体の導電率を決定するために、LCRメータに差込まれる。導電率が、イオン濃度、よって溶液の浸透度に直接関係することが長く知られている一方、センサーをまぶたの下に30秒間置くことで反射的な流涙が誘起されがちであった。更に、これらの電極は、製造が困難であると共に、細管で単に涙液を採取するのと比較して患者に対する健康上の危険を増大させた。
【0009】
上記説明から明らかなように、現在の浸透度測定手法は、医療現場で利用できないと共に、ドライアイ患者に必要な体積に到達することができない。よって、改良されて医療的に実行可能なナノリットルスケールの浸透度測定の必要がある。本発明はこの必要を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0010】
涙膜等のサンプル流体の浸透度測定は、基板と基板のサンプル領域を有するマイクロチップ上にアリコート体積のサンプル流体を載置することによって達成される。この時、サンプル流体の浸透度を指示する出力信号を生成するために、サンプル流体に付与されたエネルギーがサンプル領域から検出されるように、その体積のサンプル流体がサンプル領域の十分な部分を操作的に覆う。よって、サンプル流体の浸透度測定を、サンプル流体体積の検出されたエネルギーから得ることができる。アリコート寸法のサンプル流体体積は、ドライアイ患者からでさえ迅速に且つ容易に得ることができる。アリコート体積は、例えば、20マイクロリットル(μL)未満の体積であり得るが、1nL程小さくてもよい。浸透度測定装置は、マイクロチップとサンプル体積を受入れることができると共に、正確な浸透度測定値を表示するように、サンプル流体体積からエネルギーを検出することができる。このようにして、患者に対して不便と不快を極力かけずに、且つ、測定するのに多大の熟練を要することなく、更に、高度の反復性と精度でもって、信頼し得る浸透度測定値を得ることができる。
【0011】
サンプル流体体積は、基板のサンプル領域上に容易に載置することができる。サンプル流体の浸透度の正確な測定値を提供するために、サンプル流体のエネルギー特性を検出することができるように、エネルギーがサンプル流体に伝達される。伝達されるエネルギーは電気エネルギーであり得る。例えば、基板の電極を離隔させて、アリコート寸法のサンプル流体体積が少なくとも2個の電極をまたぐようにできる。電極を通過する電気エネルギーは、導電率を測定するのに使用されることにより、浸透度値を供給することができる。伝達されるエネルギーは光エネルギーであり得る。例えば、ナノメーター寸法の球に、発光性、イオン感受性化学物質を被覆することができる。球が、涙膜サンプルに暴露されて、レーザ光等の光エネルギーで励起される時、球は発光して、発射光をサンプルの浸透度と相関付けることができる。伝達されるエネルギーは熱エネルギーであり得る。サンプルを連続的に冷却することにより、凝固と共にサンプルの導電率が減少して、決定された凝固点をサンプルの浸透度と相関付けることができる。
【0012】
サンプル流体の浸透度を測定する浸透度測定装置は、サンプル流体受け装置とデータ通信用プラットフォームを含む。サンプル流体受け装置は、例えば、半導体製作手法を使用して製造することができる。マイクロプロセッサ製作手法により、サンプル流体受け装置を、マイクロチップ上に印刷された1組の電極のように簡単に又はサンプル流体受け素子上の測定力学を作用させ得るロジックイネーブル・マイクロプロセッサのように複雑にできる。マイクロファブリケーションは、又、サンプル流体受け装置上で直接に温度検知と温度制御を可能にする。データ通信用プラットフォームは、サンプル流体受け装置から出力を受けると共に、この情報を、サンプル流体の浸透度として液晶表示装置(LCD)又は同等の表示機構により使用者に解釈及び表示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
アリコート体積のサンプル流体(例えば、涙膜、汗、血液又は他の流体)の浸透度を測定する実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態1にかかる電子線装置を示す。実施の形態は、相対的に迅速、非侵襲性、安価で、使用が容易で、且つ、患者の負傷の危険を極力抑えるように構成されている。ナノリットル程の小さな体積のサンプル流体で正確な測定をすることができる。例えば、本発明に従って構成された測定装置は、20μL以下のサンプル流体で浸透度測定を可能にし、典型的にはもっと小さな体積をうまく測定することができる。後述する一実施の形態においては、浸透度測定精度は、採取されたサンプル流体の体積の変動によって悪化されないので、浸透度測定は、採取された体積から大略独立している。サンプル流体は、涙膜、汗、血液又は他の体液を含み得る。しかしながら、サンプル流体は、牛乳や他の飲料等の他の流体を含み得ることに注目すべきである。
【0014】
図1は、涙膜サンプル等のサンプル流体102の浸透度を測定するのに使用することできる浸透度チップ100の一例としての実施の形態を示す。図1の実施の形態において、浸透度チップ100は基板104を含み、基板104は、センサー電極108及び109と、基板104上に捺印された回路結線110とを持つサンプル領域を有する。電極と回路結線は、公知の光リソグラフィ手法を使用して印刷されることが好ましい。例えば、現在の手法は、電極108と109が、約1〜80ミクロンの範囲の直径を有すると共に、サンプル流体が無い場合に導電路が存在しない程十分に離隔されることを可能にする。しかしながら、現在得られる手法は、1ミクロンより小さい直径の電極を提供することができ、これらの電極は、本発明に従って構成されるチップに対して充分である。測定に必要なサンプル流体の量は、一方の電極から他方の電極まで延在して、動作導電路を形成するのに必要なだけである。浸透度チップ100の光リソグラフィスケールは、マイクロスケール・レベル又はナノスケール・レベルでのアリコート寸法のサンプルの測定を可能にする。例えば、20μLより小さいサンプル体積の涙膜で信頼し得る浸透度測定を得ることができる。典型的なサンプル体積は、100ナノリットル(nL)より小さい。ドライアイを患っている患者からでも10nLの涙膜サンプルを採取することは相対的に容易であると期待される。
【0015】
浸透度チップ100は、サンプル流体102にエネルギーを伝達すると共に、サンプル流体エネルギー特性の検出を可能にする。これに関して、電流源が、回路結線110を介して電極108と109をまたいで印加される。サンプル流体102のエネルギー伝達特性を検知することによって、サンプル流体の浸透度を測定することができる。エネルギー伝達特性は、例えば、導電率を含んで、回路結線110と電極108及び109を介して特定量の電力(例えば、電流)がサンプルに伝達された場合のサンプル流体のインピーダンスが測定される。
【0016】
もしサンプル流体の導電率を測定すべきならば、約10kHzにおいて10ボルトの程度の正弦波信号が印加されることが好ましい。一方の電極108からサンプル流体102を介して他方の電極109までの回路の複素インピーダンスの実部と虚部が測定される。問題の周波数において、電気信号の大部分が実部の半分内にあることにより、サンプル流体の導電率が低減される。この電気信号(以下、「導電率」と呼ぶ)は、サンプル流体102のイオン濃度に直接関連づけることができので、浸透度を測定することができる。更に、もしサンプル流体102のイオン濃度が変化すれば、流体の導電率と浸透度は対応して変化する。従って、信頼できる浸透度が得られる。その上に、インピーダンス値はサンプル流体102の体積に依存しないので、浸透度測定を、サンプル体積から大略独立して行うことができる。
【0017】
上記の入力信号の代わりに、より複雑な信号をサンプル流体に印加することにより、サンプル流体の応答が浸透度のより完全な推定に貢献するようにできる。例えば、ある範囲の周波数に対してインピーダンスを測定することによって、較正を行うことができる。これらのインピーダンスは、(組合せ波形入力又はフーリエ分解により)同時に又は逐次測定される。周波数対インピーダンスのデータは、サンプルと、サンプル流体測定回路の相対性能途についての情報を提供する。
【0018】
図2は、サンプル流体202の浸透度を測定するサンプル受けチップ200の別の実施の形態を示し、サンプル受けチップ200は、電極208のアレイを含む捺印回路を備えるサンプル領域206を持つ基板層204を有する。図2に示す実施の形態において、サンプル領域206は、光リソグラフィ手法で捺印された5×5の電極のアレイを有し、各電極208は、基板層204の一側部への結線210を有する。図示の簡潔さのために、図2の全ての電極208に結線を設けていることはない。電極208は、後述する別個の処理ユニットに測定値を提供する。
【0019】
図2の電極アレイは、導電電極208の大きさを検出することで、液滴の大きさを決定することにより、涙滴202の寸法を測定する手段を提供する。特に、処理回路は、導電している電極208の個数を決定できるから、液滴202によって覆われた近傍の電極208の個数が決定される。それにより、サンプル流体によって覆われた基板の平面面積が決定される。サンプル流体の既知の公称表面張力で、平面面積上のサンプル流体の高さを信頼性高く推定することができ、従って、液滴202の体積を決定することができる。
【0020】
図3は、サンプル流体302が載置されたサンプル受けチップ300の他の実施の形態を示す。サンプル受けチップ300は、複数の同心円に配置された電極308を設けた基板層304を備える。図2の正方形アレイと同様に、図3の電極308の円形配置もサンプル流体302の寸法の推定を与える。これは、液滴がサンプル領域302の円形又は長円形の区域を典型的に覆うからである。処理回路は、導電している電極の最大(一番外の)円を検出することにより、サンプル流体が覆う平面面積を決定することができる。上記したように、決定された平面面積は、サンプル流体302の既知の表面張力と対応する高さと一緒に体積推定を与える。図3に示す実施の形態において、電極308を、1〜80ミクロンの直径を電極が有することを現在許容する公知の光リソグラフィ手法で印刷することができる。これにより、マイクロリットル以下の液滴が電極を大略覆うことができる。電極は、一般に1mm〜1cmを覆って、サンプル流体を受ける寸法の区域に印刷され得る。
【0021】
図1、図2と図3に示す電極と結線を、光リソグラフィ手法を使用して、接点パッドを有する電極として夫々の基板層上に捺印することができる。例えば、電極に、アルミニウム、白金、チタン、チタンータングステンと他の同様の材料等の異なる導電金属化部を形成することができる。一実施の形態において、電極に、電極の縁部における電界密度を保護するために、誘電へりを形成することができる。これは、電極のへりにおけるもし無ければ不安定な電界を低減することができる。
【0022】
サンプル受けチップ200と300の実施の形態の平面図が、夫々、図4と図5に示されている。その実施の形態は、電極と結線の詳細な配置を示すと共に、サンプル液滴の電気的性質を測定するために、どのように各電極が電気的に接続されているかを図示する。上記したように、電極と結線の配置を、公知の光リソグラフィ手法を使用して、基板100、200と300の上に捺印することができる。
【0023】
図6は、本発明に従って構成された浸透度測定装置600のブロック図であり、サンプル流体の浸透度を決定するプロセスにおいて情報がどのように決定及び使用されるかを示す。浸透度測定装置600は、測定装置604と処理装置606を含む。測定装置604は、ある体積のサンプル流体を採取装置608から受ける。採取装置608は、例えば、マイクロピペット又は毛管であり得る。採取装置608は、患者の目の表面の近傍から小さな体積の涙液を引出すように、一定体積マイクロピペットからの負圧又は毛管からの装入引力等を用いて、患者のサンプル涙膜を採取する。
【0024】
測定装置604は、サンプル領域内の流体にエネルギーを伝達すると共に付与されたエネルギーを検出する装置を備え得る。例えば、測定装置604は、機能発生器等からの特定の波形の電気エネルギーを、サンプル流体がまたぐ2個の電極から成る電路に供給する回路を備えることができる。処理装置606は、サンプル流体に付与されたエネルギーを検出して、浸透度を決定する。処理装置606は、例えば、2個の電極の間の導電路を形成する流体のリアクタンスに関するデータを生成するRLCマルチメータと、テーブル探索法で浸透度を決定するプロセッサとを含むシステムを備えることができる。もし望ましければ、処理装置606を、上記のチップの一つを収容するベースユニット内に収納することができる。
【0025】
上述したように、浸透度測定をするのに十分なサンプルは、20マイクロリットル(μL)未満の流体を含有し得る。本発明にかかる涙膜の典型的なサンプルは、しばしば1マイクロリットルの涙膜を収容し得る毛管等の流体採取器によって採取される。医療専門家は、マイクロピペットと毛管の使用に慣れていて、ドライアイの患者の場合でも、ここで記載している小体積のサンプルを容易に採取することができる。
【0026】
採取されたサンプル流体は、採取装置608から測定装置604に排出される。採取装置608は、医療専門家が手動で、又は、サンプル領域を機械的に案内されることにより、チップ基板のサンプル領域の上方に配置され得る。一実施の形態において、例えば、採取装置(例えば、毛管)は、ベースユニット内の射出成形したプラスチック穴で所定位置に機械的に案内されるか、又は、精密ねじで1組のクランプに装着される。別の実施の形態において、ガイドは、毛管を保持すると共に毛管を適当な位置に自動的に降下させるコンピュータ支援フィードバック制御回路である。
【0027】
チップの電極と結線は、導電率等のサンプル流体のエネルギー特性を測定すると共に、測定された特性を処理装置606に受信させることができる。サンプル流体の測定されたエネルギー特性は、導電率を含むと共に、サンプルの複素インピーダンスの実部と虚部、出力信号のノイズの分散とサンプル流体の抵抗加熱による測定ドリフト等の他のパラメーターを含み得る。処理装置606は、測定されたエネルギー特性を処理して、サンプルの浸透度を提供する。一実施の形態において、処理装置606は、チップを受入れることができると共にチップと処理装置606を電気接続するベースユニットを備える。別の実施の形態において、ベースユニットは、浸透度値を表示する表示装置を含み得る。処理装置606と、特に、ベースユニットはハンドヘルド装置であり得ることを注意すべきである。
【0028】
図7は、本発明に従って構成された涙膜浸透度測定装置700の斜視図である。図7に示す実施の形態に置いて、一例としての装置700は、測定ユニット701は、上記のチップの一つ等のチップから成る測定ユニット701と、適当な測定出力を供給するコネクタ又はソケットベース710とを含む。装置700は、サンプル流体の導電率を測定することにより、浸透度を決定する。従って、測定チップ701は、図1乃至図5に関して上述したチップと同様の構造を有する基板付き半導体集積回路(IC)から成る。よって、チップ701は、基板層に印刷された少なくとも2個の電極によって形成されるサンプル領域を有する基板層を含むが、この詳細は、図7では尺度が小さ過ぎて見ることができないので、図1乃至図5を参照されたい。当業者には知られているように、基板とサンプル領域は、不活性ガスパッケージ内に収納される。特に、チップ701は、従来の半導体製作手法を用いて、ICパッケージ707に製作され、ICパッケージ707は、電気信号をチップ701に受信させると共にチップの外方に通信されるように出力させる電気接続脚部708を含む。パッケージ707は、チップの取扱いをより便利にすると共にサンプル流体の蒸発の低減を助ける容器を提供する。
【0029】
図8は、測定チップ701に、サンプル流体702が挿入される外方穴720を形成したことを示す。よって、穴720は、半導体パッケージ707に形成されて、チップを貫通して基板804とサンプル領域806の外部に至る経路を提供することができる。マイクロピペットや毛管等の採取装置808は、穴720内に配置されて、サンプル流体702が採取装置808から基板808のサンプル領域806上に直接排出される。穴720は、採取装置808の先端を受入れるように寸法設定されている。穴720は、チップの外方から基板808のサンプル領域806上に通じる開口又は漏斗を形成する。このようにして、サンプル流体702は、採取装置808から排出されて、基板804のサンプル領域806上に直接載置される。サンプル領域806は、採取装置808からサンプル流体702の体積を受けるように寸法設定されている。図8において、例えば、電極が、大体約1mm〜1cmの範囲の面積のサンプル領域806を形成する。
【0030】
図7に戻って、チップ701は、例えば、チップのサンプル領域電極に印加される所望波形の信号を発生する機能発生器から成る処理回路704と、チップ電極から読取られる二乗平均(RMS)電圧値を測定する電圧測定装置とを含み得る。機能発生器は、測定プロセスに対する望ましくない直流効果を避けるために、高周波交流を生成し得る。電圧測定装置は、RLC測定装置の機能性を組込み得る。よって、チップ701は、測定回路とサンプル領域電極を組込み得る。処理回路704は、中央処理装置(CPU)と、ファームウエア等のプログラム命令を記憶し得ると共にデータも記憶し得る関連するメモリとを含み得る。このようにして、単一のチップが、電極と、サンプル領域のための関連する結線とを含み得ると共に、測定回路も含み得る。この構成は、回路構造の関連する漂遊抵抗を最小にする。
【0031】
上記したように、処理回路704は、サンプル領域電極に信号波形を印加する。処理回路704は、又、電極からエネルギー特性信号を受けて、サンプル流体の浸透度を決定する。例えば、処理装置は、1組の電極対から導電率値を受取る。当業者は、2個以上の電極の間の導電路を形成するサンプル流体の導電率を決定する手法及び回路を熟知している。
【0032】
図7の実施の形態において、処理ユニット701は、100kHz等の信号周波数と10Vピークピークにおいて信号波形を生成する。次に、処理回路704は、図9に示す曲線のような較正曲線を使用して導電率に関連付けたナトリウム含有量から浸透度値を決定する。この場合、較正曲線は、導電率(電圧)と浸透度値(即ち、ナトリウム含有量)の間の伝達関数として作図される。しかしながら、他のエネルギー特性と浸透度値の間の伝達関数を提供するように、他の較正曲線を作図することもできることを注意すべきである。例えば、信号の分散、自己相関とドリフトを浸透度計算に含めることができる。もし望ましければ、浸透度値を測定値の任意に大きな集合で最適化できるように、浸透度値を、重相関係数図表又はニューラルネットワークの解釈に基づくこともできる。
【0033】
図7の実施の形態の別の形態では、処理ユニット704は、1kHzインクレメントで1kHz〜100kHz等の所定周波数掃引の信号波形を生成すると共に、各周波数において組の電極対から受けた導電率と分散値を記憶する。次に、出力信号対周波数の曲線は、理想的な浸透度の読みを与えるように上記の伝達関数で使用できるサンプルについてのより高度の情報を提供できるように使用することができる。
【0034】
図7に示すように、ベースソケットコネクタ710は、対応するソケット711においてチップ701のピン708を受承する。例えば、コネクタ710は、チップの処理回路704と電極に必要な電力を供給することができる。よって、チップ701は、浸透度を決定するのに必要なサンプル領域電極、信号発生器と処理回路を含み得る一方、浸透度値から成る出力を、チップからピン708とコネクタ710を介して表示読出しに通信することができる。
【0035】
もし望ましければ、ベースコネクタソケット710は、チップ701のピン708を受入れるソケットの下方に位置するペルチエ層712を含み得る。当業者は、適当に印加された電流がペルチエ層を冷却又は加熱するように、ペルチエ層が電気的/セラミック接点から成ることを理解するであろう。このようにして、サンプルチップ701を、加熱又は冷却することにより、サンプル流体の蒸発が更に制御される。サンプル流体から正確な浸透度値が確実に得られるように、サンプル流体の蒸発を注意深く制御すべきことが明らかである。
【0036】
図10は、チップが上述したようなオンチップ処理ユニットを含まず、むしろ、主に、サンプル領域電極と連結部から成る限定された回路を含む。即ち、処理ユニットは、チップから別個に配置されていて、ベースユニット内に設けることができる。
図10は、ベースユニット1004を含む浸透圧計1000を詳細に示す。ベースユニット1004は、ベースコネクタ710、ベースコネクタ710を閉鎖するヒンジ式カバー1006と受承された測定チップ710を収容する。よって、サンプル流体がチップ上に計量分配された後、チップはベースユニット1004のソケットコネクタ710に挿入され、ヒンジ式カバー1006が、サンプル流体の蒸発速度を減らすように、チップ上にかぶされる。
【0037】
サンプル流体の相対的に速い蒸発の問題は、一般に、2個の方法のいずれかで処理することができることを注意すべきである。一つの方法は、液滴がチップのサンプル領域に配置された後できるだけ早く迅速にサンプル流体電圧を測定することである。別の方法は、測定ユニットで蒸発速度を導電率値の対応する変化と共に測定することである。処理ユニットは、その出力を後処理して、浸透度値を推定することができる。処理は、ハードウエア又はハードウエアに記憶されたソフトウエアで行うことができる。よって、処理ユニットは、浸透度、温度変動、体積変化と他の関連パラメーターが測定される流体サンプルの特性を採取及び認知するように、ニューラルネットワーク等の異なる処理手法を組込んで、より迅速でより正確な浸透度測定をするように、システムをニューラルネットワーク手法に従って訓練することができる。
【0038】
図11は、浸透度測定装置が、図7に示すようなICパッケージを含まないサンプル受けチップ1102を利用する別の代わりの構造を示す。むしろ、図11の測定チップ1102は、電極と関連結線から成る露出サンプル領域を有するチップとして構成されるが、処理回路は、サンプル流体のエネルギー特性を測定するベースユニット内に配置されている。この代わりの構造において、コネクタソケット710に類似したコネクタが、測定されたエネルギー特性をベースユニット内の処理ユニットに伝送する。当業者は、このような構造が、通常、「プローブカード構造」と呼ばれることを理解するだろう。
【0039】
図11は、サンプルチッププローブカード1102を受けるプローブカードベースユニット1100を示す。サンプルチッププローブカード1102は、プローブカードのエッジコネクタ1110にワイヤボンディングされる電極1108が形成されるサンプル領域1106を有する基板1104を備える。ベースユニットのヒンジ式ふた1112がプローブカード1102にかぶさる時、ふた1112の下面上の接続分岐1114がエッジコネクタ1110に当接する。このようにして、サンプル領域1106の電極1108が処理回路に連結され、測定が行われ得る。図11のプローブカード1102の実施の形態の処理回路は、上記構成のいずれかを取り得る。即ち、電流を電極に印加し、サンプル流体のエネルギー特性を検出すると共に、浸透度を決定する処理を、オンチップでプローブカード1102の基板1104上で行うか、又は、処理回路を、オフチップでベースユニット1100内に配置することができる。
【0040】
上記の全ての代わりの実施の形態において、ヒンジ式頂部を開放している間に新しい測定チップをベースユニットに装入することにより、浸透圧計が使用される。ベースユニットに装入すると、チップは給電されて、その環境の監視を開始する。例えば、1kHzの速度でチップから出力信号を記録することにより、システムの挙動が十分に補足される。電極アレイの任意の位置にサンプルを配置することにより、サンプル流体によって覆われたどの対の電極間の導電率におけるS/N比が増大する。処理ユニットは、導電率の変化をサンプル流体の追加に直接関係すると認識すると共に、一旦この型式の変化が識別されると、電子信号の浸透度データへの変換を開始する。この戦略は医療専門家の介入無しに発生する。即ち、チップ処理は、ベースユニットへの連結時に開始されると共に、ベースユニットのふたの操作や他のなんらかの使用者介入に依存しない。
【0041】
上記のパッケージ化チップ(図7と図10)又はプローブカード(図11)における処理回路オンチップ(図7)を有する「スマートチップ」又は処理回路オフチップ(図10)を有する電極のみの構造において、サンプル受けチップは各使用後に使い捨てできるので、ベースユニットは、使い捨て測定チップとインターフェース接続されるプラットフォームとして働く。ベースユニットは、関連制御、通信、表示回路(不図示)とソフトウエアを含み得るが、このような特徴はベースユニットにオフチップで設けることもできる。この点に関して、処理回路は、サンプル領域電極に十分な電力を自動的に供給して、測定サイクル後にサンプル領域電極を非可逆的に酸化するように構成されることにより、電極は、どの後続測定サイクルにおいても動作不能となる。使用済みチップをベースユニットに挿入した時、使用者は、電極が動作不能であるとの指示が与えられる。これは、不正確な浸透度の読みと潜在的に不衛生な状態につながるサンプルチップの不適当な使用を防止する。
【0042】
以前使用したチップを機械に確実に戻さない第2の方策は、通し番号をコード化又はチップ上に直接コード化することである。ベースユニットは、使用済みチップの番号をメモリに記憶すると共に、ベースユニットに装入された新しいチップに対して使用済みチップの番号を相互参照する。もしベースユニットが、使用済みチップの通し番号が古いチップと同じであることを見つけたならば、システムは、新たなチップが挿入されるまで浸透度の測定を拒絶する。蒸発の終結後にたんぱく質を吸収したり塩結晶が電極上に形成され、これらは測定電極の保全性を壊すので、各試験毎に新たなチップを使用することが重要である。
【0043】
図12に示す別の実施の形態において、サンプル流体の浸透度は、チップ基板1204の測定領域1212上に配置された光学インジケータ1202を使用することにより、光学測定装置1200で光学的に測定することができる。光学インジケータ1202は、例えば、変動する浸透度のサンプル流体への暴露により蛍光性が変動する化学物質、即ち、イオン透過担体で被覆したナノビーズとも呼ばれるナノスケール球から成る。ナノビーズ1202を、導電率測定チップ用の上記電極の頂部上のチップ基板1204上に載置することができる。上述したように、電極は、サンプル流体の体積を決定するのに有用である。しかしながら、サンプル流体の体積を決定するのに、他の体積測定部材を使用してもよい。光学チップは、採取装置先端を挿入するチップ穴を含んで、図7について説明した不活性ガスパッケージで製造されることが好ましい。次に、サンプル流体は、採取装置から排出されて、電極個所当たり所定の一定数がサンプル流体に浸漬されるナノビーズと当接する。
【0044】
ナノビーズ1202がレーザ等の光エネルギー源1210で照明される時、ビーズ1202は、サンプル流体1206の浸透度に従って蛍光を発する。蛍光性は、従来の電荷結合素子(CCD)アレイ、フォトダイオード等の適当な光検出装置1208を使用して検出することができる。受光アレイの出力信号はサンプル流体の浸透度値を指示することができる。アリコート寸法の流体サンプル1206、即ち、20マイクロリットル以下の流体が、光検出装置1208によって検出し得ると共にサンプル流体の浸透度を示し得る出力信号を供給するために、通常、十分な蛍光を発するように、ナノスケールビーズが寸法設定されていることに注意すべきである。どの対の電極対がサンプル流体によって活性化されたかを決定して、流体によって活性化されたナノビーズの個数を計算することにより、蛍光量を正規化することができる。この正規化は、サンプル体積を説明すると共に、前出の実施の形態の体積独立特性を維持する。
【0045】
図13は、本発明に従った一例としての浸透度測定手法を説明するフローチャートである。涙液等の体液サンプルがステップ1300で採取される。そのサンプルは、典型的に1マイクロリットル未満を含む。ステップ1302において、採取されたサンプルが、チップ基板のサンプル領域上に載置される。次に、ステップ1304で、サンプルのエネルギー特性が測定される。次に、ステップ1306で、測定されたエネルギー特性を処理して、サンプルの浸透度を測定する。もしチップが導電率測定に従って動作するならば、ステップ1306における測定処理は、後続測定サイクルに対してチップ電極を動作不能にする上記電極酸化操作を含み得る。
【0046】
導電率測定装置のための測定プロセスにおいて、基板の電極アレイ上へのサンプル涙膜の配置により、開路電圧から採取時のサンプルの状態を厳密に表す値への大略瞬間的な移行が観察される。次に、サンプルの導電率のドリフトが、出力の連続的な変化として反映される。
【0047】
測定チップの出力は、浸透度値に変換される時間変動電圧であり得る。よって、導電率基準システムでは、最終段階処理を改良する周波数応答を広範囲の入力信号に対して測定することにより、サンプルの導電率だけより多くの情報を得ることができる。例えば、測定プロセスが相対計算するように、多数の周波数に対して較正を行う、例えば、10、20、30、40、50と100Hzにおける信号の比を測定することができる。これは、チップ間の電圧ドリフトを小さくすることができる。マクロスケール電極基準の測定(即ち、pHメータやマイクロ細管手法)用の標準方法は、直線状較正曲線を作るのに公知のバッファーに依存する。光リソグラフィは、周波数掃引と組合せる時、極めて再現性の高い製造手法であるので、較正を、操作者の介入無しに行うことができる。
【0048】
上述したように、エネルギー特性の処理を、単一のエネルギー特性測定からよりも正確な浸透度読みを供給するために、エネルギー特性から得た見た所同等でない測定データ点を使用できるニューラルネットワークにおいて、エネルギー特性の処理を行うことができる。例えば、サンプルの導電率を測定するならば、導電率に対応する浸透度値を単に得るために、較正曲線を使用することができる。しかしながら、この浸透度値は、一般に、ニューラルネットワークの出力ほど正確でない。
【0049】
ニューラルネットワークは、サンプル流体のエネルギー特性と浸透度の間の大略最適化された伝達関数を反映する較正曲線の集合に応じて動作するように設計されている。よって、一実施の形態において、ニューラルネットワークは、電圧、蒸発速度と体積変化等の関心のある全ての変数に対する較正曲線の集合を作図することができる。ニューラルネットワークは、又、最終結果又は浸透度値に対する変数の重要度を指示するように、重要度ファクターを各変数に対して割当てる優先度リストを作製又は入力として受ける。ニューラルネットワークは、最終結果が先験的に既知である真のデータの例に基づいて訓練することにより、較正曲線を作図する。従って、ニューラルネットワークは、変数のできるだけ最高の組合せから最終結果を予想するように、訓練される。変数を効率的な組合せで処理するこのニューラルネットワーク構成は、次に、測定チップ701又はベースユニットに位置する処理ユニットに搬入される。一旦訓練されると、ニューラルネットワークはソフトウエア又はハードウエアで構成し得る。
【0050】
浸透度を測定する上記実施の形態は、凝固点降下手法等の従来の浸透度測定手法に対して大幅な利点を有するが、凝固点降下手法に従ってサンプルの浸透度を決定するために、本発明の教示内容を使用することができる。従って、凝固点降下手法に基づく浸透度値を供給するために、図6の一例としての浸透度測定装置600を使用することができる。
【0051】
凝固点降下装置は、図13のフローチャートのステップ1300と1302と同様にサンプル流体を採取及び載置することを含む。しかしながら、上記したように、浸透圧計装置の浸透圧計は、ペルチエ冷却装置のような冷却装置を含み得る。上記の図7の実施の形態において、ペルチエ装置は、サンプルを冷却するように、ソケット710又はチップ701上に配置される。もし望ましければ、ペルチエ冷却装置は、サンプル流体をサンプル流体の凝固点まで冷却するために使用することができる。熱電対として知られる、光リソグラフィ加工の金属接合又はpn接合を、アリコート寸法のサンプルの温度を監視するのに使用することができる。熱電対は、電極アレイと、サンプルが固体になるようにチップが凝固点以下に冷却されるペルチエ冷却装置とに平行に動作する。凝固により、サンプルの導電率は急激に変化する。熱電対は温度を連続的に測定しているので、導電率がスパイク状である点を降下凝固点に相関させることができる。別のやり方として、ペルチエ装置によるサンプルの導入の直前にチップを過冷却して、次に、電極に固有の抵抗加熱を使用することにより、電流を固相材料に流すことができる。融解すると、導電率は、再び急激に変化する。第2の測定手法において、蒸発はファクター程でもないことが起こりがちである。よって、本発明は、凝固点降下を以前可能であったより大幅に小さい体積のサンプル流体で行うことを許容する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】サンプル流体の浸透度を測定するアリコート寸法のサンプル受けチップを示す。
【図2】光リソグラフィ手法で捺印された電極のアレイを有する回路領域を含むサンプル受けチップの別の実施の形態を示す。
【図3】回路領域が複数の同心円に配置された印刷電極を含む、図1のチップの他の実施の形態を示す。
【図4】図2に示すチップの平面図である。
【図5】図3に示すチップの平面図である。
【図6】本発明に従って構成された浸透度測定装置のブロック図である。
【図7】本発明に従って構成された涙膜浸透度測定装置の斜視図である。
【図8】外部包装の開口を示すサンプル受けチップの側断面図である。
【図9】サンプル流体のナトリウム含有量を導電率と関連づける較正曲線である。
【図10】図1乃至図5のサンプル受けチップを用いる浸透圧計のヒンジ式ベースユニットを示す。
【図11】サンプル受けチップ・処理ユニット用のプローブカード構造を示す。
【図12】本発明に従って構成された光学浸透度測定装置を示す。
【図13】本発明に従った一例としての浸透度測定手法を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
100 浸透度チップ
102 サンプル流体
104 基板
108 電極
109 電極
110 回路結線
200 サンプル受けチップ
202 サンプル流体
204 基板層
206 サンプル領域
208 電極
210 結線
600 浸透度測定装置
604 測定装置
606 処理装置
608 採取装置
700 涙膜浸透度測定装置
701 測定ユニット
704 処理回路
707 ICパッケージ
710 コネクタ
712 ペルチエ層
1000 浸透圧計
1004 ベースユニット
1006 ヒンジ式カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリコート体積のサンプル流体を受入れると共にサンプル領域を有する基板を備えるサンプル受けチップにおいて、
その体積のサンプル流体がサンプル領域の一部を操作的に覆うのに十分であるように、サンプル領域が寸法設定されていることにより、サンプル流体の読みを生成するように、サンプル流体のエネルギー特性をサンプル領域から検出でき、更に、サンプル流体の読みがサンプル流体の浸透度を指示するサンプル受けチップ。
【請求項2】
サンプル領域が、サンプル流体と当接するように配置された複数の電極を含む請求項1に記載のサンプル受けチップ。
【請求項3】
複数の電極が行列のアレイとして配置された請求項2に記載のサンプル受けチップ。
【請求項4】
複数の電極が複数の同心円上に配置された請求項2に記載のサンプル受けチップ。
【請求項5】
複数の電極に連結された複数の導電結線を更に備え、又、導電結線が、サンプル流体に及びサンプル流体からエネルギーを移送する手段を提供する請求項2に記載のサンプル受けチップ。
【請求項6】
サンプル流体のエネルギー特性を導電結線から受けるように構成された処理ユニットを更に備え、又、処理ユニットが、受けたエネルギー特性を処理すると共に、サンプル流体の浸透度を出力する請求項5に記載のサンプル受けチップ。
【請求項7】
処理ユニットが、受けたエネルギー特性を効率的に組合せるように訓練されたニューラルネットワークを含む請求項6に記載のサンプル受けチップ。
【請求項8】
基板上のサンプル領域の面積が約1cm平方より小さい請求項1に記載のサンプル受けチップ。
【請求項9】
基板と連通する温度制御素子を更に備える請求項1に記載のサンプル受けチップ。
【請求項10】
温度制御素子がペルチエ冷却装置を含む請求項9に記載のサンプル受けチップ。
【請求項11】
サンプル領域が、サンプル流体に当接するように配置された複数の光学インジケータを含む請求項1に記載のサンプル受けチップ。
【請求項12】
複数の光学インジケータが、変動する浸透度と共に蛍光性が変動する化学物質で被覆された複数のナノスケールビーズを含む請求項11に記載のサンプル受けチップ。
【請求項13】
サンプル流体が体液を含む請求項1に記載のサンプル受けチップ。
【請求項14】
体液が涙膜である請求項13に記載のサンプル受けチップ。
【請求項15】
サンプル流体が飲料を含む請求項1に記載のサンプル受けチップ。
【請求項16】
サンプル流体の浸透度を測定する浸透度測定装置において、
サンプル流体のエネルギー特性を測定するためにサンプル流体に当接するように構成されたサンプル領域を有する基板を含むサンプル受けチップから成る測定装置と、測定装置に連結された処理装置とを備え、又、サンプル領域が、アリコート体積のサンプル流体によって大略覆われるように寸法設定され、更に、処理装置が、測定されたエネルギー特性を受けて、受けたエネルギー特性を処理すると共に、処理されたエネルギー特性からサンプル流体の浸透度を推定するように構成された浸透度測定装置。
【請求項17】
処理装置が、測定装置を封入するように構成されたベースユニットを含む請求項16に記載の浸透度測定装置。
【請求項18】
ベースユニットが、基板からのサンプル流体の蒸発を大幅に低減するように構成されたカバーを含む請求項17に記載の浸透度測定装置。
【請求項19】
基板が集積回路(IC)チップに封入された請求項17に記載の浸透度測定装置。
【請求項20】
一定回数の測定に使用後にICチップが捨てられるように、ICチップが使い捨てである請求項19に記載の浸透度測定装置。
【請求項21】
ベースユニットが、ICチップを受承するソケットを含む請求項19に記載の浸透度測定装置。
【請求項22】
ICチップが、サンプル流体を基板上に導入できるように基板のサンプル領域に設けた開口を有する請求項19に記載の浸透度測定装置。
【請求項23】
ベースユニットが、浸透度値を表示する表示装置を含む請求項17に記載の浸透度測定装置。
【請求項24】
適量のサンプル流体を採取すると共に、サンプル流体を基板のサンプル領域に計量分配するように構成された採取装置を更に備える請求項16に記載の浸透度測定装置。
【請求項25】
基板が導電率測定回路を含む請求項16に記載の浸透度測定装置。
【請求項26】
測定装置が複数の電極を含む請求項16に記載の浸透度測定装置。
【請求項27】
電極にアルミニウム材料が形成された請求項26に記載の浸透度測定装置。
【請求項28】
電極に白金材料が形成された請求項26に記載の浸透度測定装置。
【請求項29】
電極にチタン材料が形成された請求項26に記載の浸透度測定装置。
【請求項30】
電極にチタンータングステン材料が形成された請求項26に記載の浸透度測定装置。
【請求項31】
各電極が、電極の縁部における電界密度を保護するために、誘電周辺部を含む請求項26に記載の浸透度測定装置。
【請求項32】
測定装置が、更に、オンチップ温度センサーを含む請求26に記載の浸透度測定装置。
【請求項33】
オンチップ温度センサーが、電極と共に動作するように構成されたpn接合又は金属化熱電対を含む請求項32に記載の浸透度測定装置。
【請求項34】
測定装置が、変動する浸透度のサンプル流体への暴露により蛍光を発する複数のナノスケール球を含む請求項16に記載の浸透度測定装置。
【請求項35】
ナノスケール球を光エネルギーで照明するように構成された光源を更に備える請求項34に記載の浸透度測定装置。
【請求項36】
照明されたナノスケール球から光エネルギーを受けるように構成された光検出器を更に備え、又、光エネルギーが浸透度と共に変動する請求項35に記載の浸透度測定装置。
【請求項37】
基板がプローブカードを含む請求項16に記載の浸透度測定装置。
【請求項38】
プローブカードが、複数の電極と、電極にワイヤボンディングされた複数のエッジコネクタとを備える請求項37に記載の浸透度測定装置。
【請求項39】
処理装置が、ヒンジ式ふたを有するベースユニットを含む請求項38に記載の浸透度測定装置。
【請求項40】
ヒンジ式ふたが、開口と、開口内に位置する複数の接続分岐とを含み、又、接続分岐が、ヒンジ式ふたがプローブカードに対して閉鎖される時にプローブカードのエッジコネクタに当接するように構成されている請求項37に記載の浸透度測定装置。
【請求項41】
サンプル流体の浸透度を測定する光学測定装置において、
サンプル流体を受けるように構成されている基板であって、アリコート体積のサンプル流体によって操作的に覆われるように寸法設定されたサンプル領域を含む基板から成るサンプル受けチップと、サンプル流体を含むサンプル領域を照明する光エネルギー源と、照明されたサンプル領域から光エネルギーを受けて、受けた光エネルギーを処理して、サンプル流体の光学的特性を決定すると共に、サンプル流体の浸透度を推定する光検出器とを備える光学測定装置。
【請求項42】
サンプル流体のアリコート体積を決定する体積測定部材を更に備える請求項41に記載の光学測定装置。
【請求項43】
体積測定部材が複数の電極を含む請求項42に記載の光学測定装置。
【請求項44】
サンプル領域上に配置された複数のナノスケール球を更に備え、又、ナノスケール球が、変動する浸透度のサンプル流体への暴露により蛍光性が変動する化学物質で被覆されている請求項41に記載の光学測定装置。
【請求項45】
光エネルギー源がレーザを含む請求項41に記載の光学測定装置。
【請求項46】
光検出器が電荷結合素子(CCD)を含む請求項41に記載の光学測定装置。
【請求項47】
光検出器がフォトダイオードを含む請求項41に記載の光学測定装置。
【請求項48】
サンプル流体の浸透度値を決定する方法において、
アリコート体積のサンプル流体を基板のサンプル領域上に載置するステップと、サンプル流体のエネルギー特性を測定するステップと、測定されたエネルギー特性を処理して、サンプル流体の浸透度値を供給するステップとを備える方法。
【請求項49】
エネルギー特性測定ステップが、サンプル流体の導電率の測定を含む請求項48に記載の方法。
【請求項50】
適量のサンプル流体を採取するステップを更に備える請求項48に記載の方法。
【請求項51】
適量のサンプル流体が20マイクロリットル未満である請求項50に記載の方法。
【請求項52】
エネルギー特性測定ステップが、基板のサンプル領域上に複数の電極を設けることと、サンプル流体を複数の電極に当接させることとを含む請求項48に記載の方法。
【請求項53】
電極を介してサンプル流体に電流を印加するステップを更に備える請求項52に記載の方法。
【請求項54】
電流印加ステップが、サンプル流体の物理的範囲を決定するために、電極対の異なる組に選択的に電流を印加することを含む請求項53に記載の方法。
【請求項55】
処理ステップが、後続の測定サイクルに対して電極を動作不能にするために、電極に十分な電流を印加することを含む請求項53に記載の方法。
【請求項56】
処理ステップが、測定されたエネルギー特性から引出した関心のある実験的に決定された変数の集合に基づいて訓練されるようにニューラルネットワークを構成することを含み、又、このニューラルネットワーク構成は、関心のある変数の最も効率的な組合せから浸透度値の最適予想を可能にする請求項48に記載の方法。
【請求項57】
エネルギー特性測定ステップが、基板のサンプル領域上に載置されたサンプル流体の体積から独立している請求項48に記載の方法。
【請求項58】
エネルギー特性測定ステップが、浸透度に従って蛍光を発する材料を被覆した光学ナノスフィアを基板のサンプル領域上に設けることと、ナノスフィアをエネルギー源で照明することと、サンプル領域内のナノスフィアの蛍光性を受光装置で検出することとを含む請求項48に記載の方法。
【請求項59】
エネルギー特性測定ステップが、基板のサンプル領域に適当な熱エネルギーを供給して、サンプル流体を凝固させることと、熱エネルギーによる上記凝固に相関してサンプル流体の導電率が変化する温度を検出することとを含む請求項48に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−255802(P2012−255802A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−181045(P2012−181045)
【出願日】平成24年8月17日(2012.8.17)
【分割の表示】特願2012−26775(P2012−26775)の分割
【原出願日】平成15年3月25日(2003.3.25)
【出願人】(506115514)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (87)
【Fターム(参考)】