説明

液中貯蔵装置及び方法並びに淡水製造貯蔵システム

【課題】環境液より比重が小さい被貯蔵流体を可撓性の袋に入れて環境液中に貯蔵する際、袋の破損や過度な張力の発生を防止する。
【解決手段】液中貯蔵装置1の可撓性膜からなる袋10内を第1貯蔵室11と第2貯蔵室12とに仕切る。この袋10を環境液2中に配置する。第1貯蔵室11には被貯蔵流体3を貯蔵する。第2貯蔵室12には環境液2より比重が大きい平衡流体4を貯蔵する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、比重が環境液の比重とは異なる被貯蔵流体を環境液中に貯蔵する装置及び方法、並びに淡水を製造及び貯蔵するシステムに関し、特に被貯蔵流体の比重が環境液より軽い場合に適した液中貯蔵装置及び液中貯蔵方法、並びに淡水製造貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
海上に浮遊させた貯蔵槽に淡水や石油を貯蔵する方法は公知である。貯蔵槽は海流に流されないように繋留する。
特許文献1(実公平3−3518号公報)の水中貯蔵装置は、外袋と内袋を有している。内袋に被貯蔵流体を貯蔵する。外袋と内袋の間に体積調整用の液体を充填する。内袋内の被貯蔵流体の体積に応じて、内袋が膨張又は収縮し、これに伴なって、外袋と内袋の間の体積調整用の液体が出し入れされる。外袋には複数の浮力調節装置が設けられ、かつアンカーによって外袋が水底に繋留されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平3−3518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可撓性の膜からなる袋内に被貯蔵流体を入れ、上記袋を海上に浮かせた場合、波や風によって袋が破損して被貯蔵流体が流出するおそれがある。また、袋が海流に流されないように繋留すると、繋留綱との連結部分に局所的に張力が集中して袋が破損するおそれがある。さらに、袋が海面に浮かんでいると、船舶の航行の邪魔になる。特許文献1(実公平3−3518号公報)では、外袋の複数箇所に錘又は浮きからなる浮力調節装置を設けて浮力を調節しているが、そうすると浮力調節装置の設置部分に局所的な張力が発生する。被貯蔵流体の量が大きくなると、浮力調節装置も大きくしなければならず、局所的な張力がますます増大する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、本発明装置は、環境液より比重が小さい被貯蔵流体を前記環境液中に貯蔵する液中貯蔵装置であって、前記環境液中に配置される可撓性膜からなる袋を備え、前記袋の内部に第1貯蔵室と第2貯蔵室とが設けられ、前記第1貯蔵室には前記被貯蔵流体が貯蔵され、前記第2貯蔵室には前記環境液より比重が大きい平衡流体(バランサー)が貯蔵されることを特徴とする。
また、本発明方法は、環境液より比重が小さい被貯蔵流体を前記環境液中に貯蔵する液中貯蔵方法であって、第1貯蔵室と第2貯蔵室を有する可撓性膜からなる袋の前記第1貯蔵室に前記被貯蔵流体を貯蔵し、前記第2貯蔵室には前記環境液より比重が大きい平衡流体を貯蔵し、前記袋を前記環境液中に配置することを特徴とする。
これによって、袋の第1貯蔵室内の被貯蔵流体は浮力が重力より大きくて浮こうとし、第2貯蔵室内の平衡流体は重力が浮力より大きくて沈もうとする。これらの力をバランスさせることで、液中貯蔵装置の袋を環境液中(海中等)の所望の水深範囲内に浮遊させることができる。或いは、袋を環境液底(海底等)に沈めて設置することもできる。第1、第2貯蔵室ひいては被貯蔵流体と平衡流体を袋の広い範囲に行き渡らせることで、袋の広い範囲ないしは略全域において被貯蔵流体の浮力を平衡流体の沈力で抑えてバランスをとることができ、袋の局所に張力が集中するのを回避又は緩和できる。一般に水中は水面より流れが安定しているため、袋が破損するおそれが小さい。船舶の航行の邪魔になることも少ない。また、袋を繋留する必要がなく、繋留したとしても袋に作用する局所的な張力を軽減できる。
【0006】
前記袋が、前記第1貯蔵室と前記第2貯蔵室とを仕切る隔膜を有していることが好ましい。これによって、被貯蔵流体と平衡流体が混ざるのを防止できる。
第1貯蔵室内の被貯蔵流体の貯蔵量と第2貯蔵室の平衡流体の貯蔵量を調節することによって、液中貯蔵装置の袋全体に作用する浮力と重力のバランスを取ることができる。例えば、被貯蔵流体及び平衡流体が貯蔵された袋全体の重量と体積の比が環境液の密度とほぼ等しくなるよう調節することによって、袋全体の比重を環境液の比重とほぼ等しくなるようにでき、環境液中の袋に作用する浮力と重力を互いにほぼ相殺することができる。これによって、袋の水深を簡単に操作することができる。
【0007】
前記第2貯蔵室を上側にし、前記第1貯蔵室を下側にすることが好ましい。
前記隔膜が前記袋内を上下に仕切り、前記隔膜より上側に前記第2貯蔵室が配置され、前記隔膜より下側に前記第1貯蔵室が配置されることが好ましい。これによって、袋内の上側部に平衡流体が配置され、袋内の下側部に被貯蔵流体が配置される。
袋内の上側部の平衡流体は沈もうとし、袋内の下側部の被貯蔵流体は浮こうとするため、袋に作用する張力を十分に小さくできる。
【0008】
前記第1貯蔵室又は前記第2貯蔵室が、隔膜部によって複数の室部に区画されていることが好ましい。これによって、袋の形状及び姿勢を安定させることができる。重比重の第2貯蔵室を上にし、かつ軽比重の第1貯蔵室を下にしたときでも、第2貯蔵室が第1貯蔵室の中央部にめり込んだり、袋が上下にひっくり返ったりするのを防止できる。
【0009】
前記袋が、筒状であり、前記第1貯蔵室と前記第2貯蔵室とが前記袋の軸方向と直交する方向に区画されていてもよい。これによって、被貯蔵流体の浮力を袋の略全域で抑えることができ、袋に作用する張力を確実に低減できる。袋を軸方向に長くし、かつ各貯蔵室ひいては各流体を袋の軸方向に行き渡らせることで、袋に作用する張力を一層確実に低減できる。
前記袋が、扁平状であり、前記第1貯蔵室と前記第2貯蔵室とが前記袋の厚さ方向に区画されていてもよい。これによって、袋の略全域に被貯蔵流体と平衡流体を行き渡らせることができ、被貯蔵流体の浮力を袋の略全域で抑えることができ、袋に作用する張力を一層低減できる。
【0010】
前記環境液が海水であり、前記被貯蔵流体が淡水であり、前記平衡流体が海水より塩分濃度が高い濃塩水であることが好ましい。これによって、淡水を海中に貯蔵することができる。
前記環境液が海水であり、前記被貯蔵流体が石油であり、前記平衡流体が海水より塩分濃度が高い濃塩水であってもよい。
【0011】
前記袋を、防波堤が設けられた港湾の海中に設置することが好ましい。これによって、袋を安定的に設置できる。
【0012】
前記袋の水深が所定範囲になるよう調節する調節手段を設けることが好ましい。前記袋の水深が所定範囲になるよう、前記被貯蔵流体と前記平衡流体の体積比を調節することが好ましい。
前記所定範囲は、船舶の航行に支障がない水深であり、かつ可能な限り海面近くに設定することが好ましい。
前記所定範囲は、前記袋を設置した付近の海上を航行する可能性のある船舶の吃水より例えば5m〜10m程度の深さになるよう設定するのが好ましい。小型船舶用の港湾の場合、前記所定範囲は、海面から例えば5m〜10m程度の深さにしてもよい。
【0013】
前記調節手段として、例えば繋留ロープが挙げられる。前記第1貯蔵室内の被貯蔵流体の体積を前記第2貯蔵室内の平衡流体の体積より大きくして、前記袋の浮力を大きくするとともに、前記繋留ロープの下端部を海底等に固定し、かつ前記繋留ロープの上端部を前記袋に連結し、かつ前記繋留ロープの長さを調節することによって、前記袋の水深を調節できる。袋にかかる浮力を平衡流体によって減殺できるため、袋における繋留ロープの連結部分に過度な張力が作用するのを回避できる。
【0014】
前記液中貯蔵装置が、前記調節手段として、前記袋の水深を測定する水深センサと、前記第2貯蔵室又は前記第1貯蔵室に接続された補助容器と、前記第2貯蔵室又は前記第1貯蔵室と前記補助容器との間で濃塩水又は淡水を授受させる授受手段と、前記水深センサの検出値に基づいて、前記袋の水深が前記所定範囲になるように前記授受手段を操作する制御部とを備えていることが好ましい。前記補助容器が前記第2貯蔵室に接続されるときは、前記平衡流体を前記補助容器に充填しておく。袋の水深が所定範囲より浅くなったときは、授受手段によって補助容器内の平衡流体を第2貯蔵室に補充する。袋の水深が所定範囲より深くなったときは、授受手段によって第2貯蔵室内から平衡流体の一部を取り出して補助容器に送る。また、前記補助容器が前記第1貯蔵室に接続されるときは、前記被貯蔵流体を前記補助容器に充填しておく。袋の水深が所定範囲より浅くなったときは、授受手段によって第1貯蔵室内から被貯蔵流体の一部を取り出して補助容器に送る。袋の水深が所定範囲より深くなったときは、授受手段によって補助容器内の被貯蔵流体を第1貯蔵室に補充する。これによって、袋の水深を所定範囲なるように確実に制御できる。
【0015】
前記袋の外周に漁礁部材を設けてもよい。例えば、袋に漁礁部材として網を被せる。これによって、袋の外周に海藻が付着し易くなり、袋を漁礁として利用できる。また、漁礁部材が紐状又は帯状(長片状)であってもよい。紐状又は帯状の漁礁部材は疑似海藻になって魚を集めることができ、袋を漁礁として利用できる。
【0016】
また、本発明は、海水から淡水を製造して貯蔵する淡水製造貯蔵システムであって、
海中に配置される可撓性膜からなる袋を含み、前記袋の内部に第1貯蔵室と第2貯蔵室とが設けられ、前記第1貯蔵室には淡水が貯蔵され、前記第2貯蔵室には海水より高塩分濃度の濃塩水が貯蔵される液中貯蔵装置と、
海水から水分を分離して淡水を製造する淡水製造装置と、
を備え、前記淡水製造装置における淡水の出口ポートと、前記第1貯蔵室とが、淡水路にて接続され、前記淡水製造装置における水分を分離した後の海水の出口ポートと前記第2貯蔵室とが、濃塩水路にて接続されていることを特徴とする。
これによって、淡水製造装置で生成した淡水を、その出口ポートから淡水路を経て液中貯蔵装置の第1貯蔵室に供給でき、第1貯蔵室内に被貯蔵流体として貯蔵することができる。
淡水製造装置において、水分を分離した後の海水は塩分濃度が高くなり、濃塩水になる。この濃塩水を出口ポートから濃塩水路を経て液中貯蔵装置の第2貯蔵室に供給する。これによって、淡水製造装置で生成された濃塩水を前記平衡流体として第2貯蔵室に貯蔵でき、袋のバランサーとして利用することができる。
【0017】
好ましくは、淡水製造装置から第2貯蔵室への濃塩水の供給と、淡水製造装置から第1貯蔵室への淡水の供給を同時併行して行なう。これによって、第1、第2貯蔵室のうち下側に配置される室への所要供給圧の増大するのを抑えることができる。
さらに、濃塩水の塩分濃度(ひいては比重)に応じて、濃塩水の供給流量と淡水の供給流量の比を調節することによって、液中貯蔵装置の袋全体に作用する浮力と重力のバランスを取ることができる。例えば、充填後の袋全体の重量と体積の比が海水の密度とほぼ等しくなるよう、濃塩水の供給量と淡水の供給量を調節することによって、袋全体の比重を海水の比重とほぼ等しくなるようにでき、海水中の袋に作用する浮力と重力を互いに相殺することができる。そのために、充填後の袋を小さい力で海中に浮遊させて設置でき、または海底に沈めて設置することができる。
【0018】
前記淡水路から淡水の出力路が分岐し、前記濃塩水路から濃塩水の排出路が分岐していることが好ましい。これによって、淡水貯蔵時には、淡水製造装置にて生成した淡水の一部又は全部を、淡水路を経て、液中貯蔵装置の第1貯蔵室に供給し、残部がある場合はそれを出力路に分流して淡水の利用部へ供給できる。かつ淡水製造装置からの濃塩水の一部又は全部を、濃塩水路を経て液中貯蔵装置の第2貯蔵室に供給し、残部がある場合はそれを排出路に分流させて海等へ排出できる。また、貯蔵淡水の放出時には、液中貯蔵装置の第1貯蔵室から淡水を淡水路へ導出し、淡水製造装置からの淡水と合わせて、出力部から淡水利用部へ供給できる。かつ液中貯蔵装置の第2貯蔵室から濃塩水を濃塩水路へ導出し、淡水製造装置からの濃塩水と一緒に排出できる。1つの淡水路を、淡水製造装置から液中貯蔵装置への淡水貯蔵路、及び液中貯蔵装置から淡水利用部への淡水放出路として共用できる。1つの濃塩水路を、淡水製造装置から液中貯蔵装置への濃塩水貯蔵路、及び液中貯蔵装置からの濃塩水排出路として共用できる。したがって、配管構造を簡素化できる。
【0019】
一般に、淡水製造装置は、一年中運転するよりも、ダム等の水源設備の貯水量が少ない期間のみ運転することが多く、淡水の最大需要に合わせて淡水製造装置の規模(淡水製造能力)を設定している。したがって、淡水製造装置の規模は大きくても、実際の造水量は少ないのが常である。
これに対して、本淡水製造貯蔵システムによれば、水源設備の貯水量が充分に大きいときは、淡水製造装置にて生産した淡水を液中貯蔵装置に貯蔵することができる。そして、水源設備の貯水量が不足してきたときは、淡水製造装置からの淡水に加えて、液中貯蔵装置に貯蔵されている淡水をも供給することで、淡水供給量を増やすことができる。したがって、淡水製造装置を比較的小さい造水量で定常運転することができ、淡水製造装置の規模を上記定常運転の造水量に合わせて決定できる。この結果、淡水製造装置を小型化できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、袋の第1貯蔵室内の被貯蔵流体の浮力と第2貯蔵室内の平衡流体の重力をバランスさせることで、袋を環境液中に浮遊させることができる。或いは、袋を環境液底に沈めて設置することもできる。バランサーとして流体を用いることによって、袋の局所に過大な張力が発生するのを防止又は緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液中貯蔵装置の正面図である。
【図2】上記第1実施形態に係る液中貯蔵装置の側面図である。
【図3】上記第1実施形態に係る液中貯蔵装置を海中に設置した状態を示す側面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る液中貯蔵装置の側面図である。
【図5】上記第2実施形態に係る液中貯蔵装置の平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態を示し、液中貯蔵装置の袋を海中に設置した状態を示す側面図である。
【図7】本発明の第4実施形態を示し、液中貯蔵装置の袋を海中に設置した状態を示す側面図である。
【図8】本発明の第5実施形態を示し、液中貯蔵装置の袋を海中に設置した状態を示す側面図である。
【図9】本発明の第6実施形態を示し、液中貯蔵装置の袋を海中に設置した状態を示す側面図である。
【図10】本発明の第7実施形態を示し、液中貯蔵装置を海中に設置した状態を示す側面図である。
【図11】本発明の第8実施形態を示し、液中貯蔵装置を海中に設置した状態を示す側面図である。
【図12】本発明の第9実施形態を示し、液中貯蔵装置を海中に設置した状態を示す側面図である。
【図13】本発明の第10実施形態を示し、液中貯蔵装置を海中に設置した状態を示す側面図である。
【図14】本発明の第11実施形態に係る淡水製造貯蔵システムを示す解説図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1〜図3は、本発明の第1実施形態を示したものである。図3に示すように、液中貯蔵装置1は、被貯蔵流体3を環境液2中に貯蔵する装置である。ここでは、被貯蔵流体3は、淡水である。例えば、液中貯蔵装置1は、防波堤で囲まれた港湾内の海中に設置される。環境液2は、海水である。海水の水に対する比重は約1.04である。したがって、被貯蔵流体3(淡水)は、環境液2(海水)より比重が小さい軽比重流体である。
【0023】
図1及び図2に示すように、液中貯蔵装置1は、袋10を備えている。袋10は、可撓性の膜によって構成されている。袋10の材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂が挙げられる。これら樹脂は1方向又は2方向に延伸されていてもよい。袋10は、袋本体19と、隔膜13を含み、その内部に第1貯蔵室11と第2貯蔵室12が形成されている。図2に示すように、袋本体19ひいては袋10は、左右方向(図1の紙面と直交する方向、以下「軸方向」と称す)に長く延びる筒状になっている。
【0024】
図1に示すように、袋10の軸方向と直交する断面は、2つの円を連ねた形状になっている。袋10の上下方向の中央部がくびれて幅狭になっている。袋10のくびれ部分10aの内部に隔膜13が設けられている。隔膜13の周縁の全周が袋本体19に一体に連なっている。図2に示すように、袋10の軸方向の両端部は、中央部が凹んでいる。この凹み部分10eが袋10の両側面のくびれ部分10a(図1参照)に連続している。隔膜13の軸方向の端部が、凹み部分10eの袋本体19に一体に連なっている。
【0025】
隔膜13によって袋10の内部が上下に仕切られている。袋10内の隔膜13より上側部分が第1貯蔵室11になっている。袋10内の隔膜13より下側部分が第2貯蔵室12になっている。第1貯蔵室11及び第2貯蔵室12の断面がそれぞれほぼ円形になっている。第1貯蔵室11と第2貯蔵室12とが袋10の軸方向と直交する方向に区画されている。
【0026】
袋10の軸方向の長さLは、袋10の幅W(各貯蔵室11,12の略円形断面の直径)より十分に大きいことが好ましい(L>>W)。更に、袋10の軸方向の長さLは、袋10の軸方向と直交する断面の周長L(≒2πW)より十分に大きいことが好ましい(L>>L,2W<L<2πW)。袋10の軸方向の長さLは、L=5m〜1000m程度であることが好ましい。袋10の幅Wは、W=1m〜20m程度であることが好ましい。なお、図2において、袋10の高さ寸法(幅Wの約2倍)は、軸長Lに対し誇張されている。
【0027】
上側の第1貯蔵室11には、被貯蔵流体3を構成する淡水が貯蔵されている。下側の第2貯蔵室12には、海水2より高塩分濃度の濃塩水4が貯蔵されている。濃塩水4は、平衡流体(バランサー)を構成する。濃塩水4は、淡水3より比重が大きく、更には海水2より比重が大きい。袋10内において淡水3と濃塩水4が隔膜13によって仕切られ、互いに混合するのが阻止されている。淡水3(被貯蔵流体)が袋10内の上側部に配置され、濃塩水4(平衡流体)が袋10内の下側部に配置されている。
【0028】
濃塩水4の塩分濃度は、4wt%〜20wt%程度が好ましく、ここでは例えば7wt%程度になっている。海水2の塩分濃度は3.5wt%程度であるから、淡水3と海水2の比重差の絶対値と、濃塩水4と海水2の比重差の絶対値は、ほぼ等しい。
淡水3と海水2の比重差の絶対値が、濃塩水4と海水2の比重差の絶対値とは異なっていてもよい。淡水3と海水2の比重差の絶対値が、濃塩水4と海水2の比重差の絶対値より大きくてもよく、小さくてもよい。
【0029】
第1貯蔵室11の内容積と第2貯蔵室12の内容積は、ほぼ等しいが、互いに異なっていてもよい。袋10内における淡水3の貯蔵量(体積)と濃塩水4の貯蔵量(体積)はぼ等しいが、互いに異なっていてもよい。淡水3の貯蔵量(体積)が濃塩水4の貯蔵量(体積)より大きくてもよく、小さくてもよい。
【0030】
上記のように構成された液中貯蔵装置1の作用を説明する。
袋10内の軽比重の淡水3は、浮力が重力より大きくて浮こうとする。一方、袋10内の重比重の濃塩水4は、浮力が重力より小さくて沈もうとする。これらの力をバランスさせることで、液中貯蔵装置1を海水2中に浮遊させることができる。一般に海中は海面より流れが安定しているため、袋10が破損するおそれが小さいく、袋10を繋留する必要もない。たとえ繋留したとしても、袋10に作用する局所的な張力を軽減できる。
各貯蔵室11,12ひいては各流体3,4を袋10の略全域に行き渡らせることで、袋10の略全域で被貯蔵流体3の浮力と平衡流体4の沈力とのバランスをとることができ、袋10の局所に張力が集中するのを確実に回避できる。特に、筒状の袋10を軸方向に長くし、かつ各流体3,4を袋10の軸方向に行き渡らせることで、袋10の局所に過大な張力が印加されるのを確実に回避できる(下式1参照)。これによって、袋10を大きくして、被貯蔵流体3の貯蔵量を大きくできる。かつ、袋本体19の厚さを十分に小さくでき、袋材料の所要量を小さくできる。
図3に示すように、液中貯蔵装置1の水深は、当該液中貯蔵装置1の設置場所付近での船舶5の航行に支障が生じない深さにすることが好ましく、船舶5の航行に支障が生じない範囲内で出来るだけ浅い水深であることがより好ましい。例えば、液中貯蔵装置1の水深は、船舶5の吃水より5m〜10m程度深ければよい。漁港等の小型の船舶しか航行しない港湾の場合、液中貯蔵装置1の水深は、海面から5m〜10m程度で十分である。
【0031】
濃塩水4の塩分濃度ひいては比重や淡水3と濃塩水4の体積比を調節することで、液中貯蔵装置1の水深を調節することができる。
液中貯蔵装置1の設置場所が、河口に面した港湾等のように河川の水が流れ込む海域である場合、海底部の海水の密度(塩分濃度、比重)と上部ないしは海面部の海水の密度に差ができる。したがって、このような場所では、液中貯蔵装置1全体の重量と体積の比が、海底部の海水密度より小さく、かつ上部の海水密度より大きくなるよう、濃塩水4の塩分濃度(比重)や淡水3と濃塩水4の体積比を調節することによって、液中貯蔵装置1を海水の密度が不連続に変化する深さ付近に浮遊させることができる。
【0032】
第1貯蔵室11と第2貯蔵室12の体積が等しく、袋10が海中に浮遊していて、L>>Lの場合、袋10にかかる最大張力Tは、概略下式で表される。
T=ρgV/(2L) (式1)
したがって、袋10の軸方向の長さLを十分に大きくすることによって、袋10にかかる張力を軽減できる。また、張力を袋10の周方向にほぼ一様にすることができ、袋10のくびれ部分10a(ひいては隔膜13)に張力が集中するのを防止できる。なお、式1において、ρは、淡水3と海水2の密度差又は濃塩水4と海水2の密度差である。例えば、濃塩水4の塩分濃度が7wt%のとき、淡水3と海水2の密度差と、濃塩水4と海水2の密度差は互いに等しく、ρ=40kg/mである。gは、重力加速度である。Vは、淡水3の貯蔵量又は濃塩水4の貯蔵量であり、V≒π(W/2)L=LL/(16π)である。袋10の材質がポリエチレン膜である場合、その破壊強度Eは、E=20×10[pa]程度であり、必要な最小膜厚dは、d=T/E=ρgL/(32πE)=1.95×10−5[m]である。袋10の幅WをW=1.6[m]とすると、周長Lは、L=10[m]であり、最小膜厚dは、d=1950[μm]になる。そこで、安全率を約2倍取り、袋本体10の膜厚は4000μm程度にするのがよい。袋10の長さLをL=100mとすると、袋本体19の膜材料の総体積は4m、淡水貯蔵量Vは、V=79.6m、袋本体19の単位膜材料体積あたりの淡水貯蔵量rは、r≒19.9になる。また、袋本体19の膜材料として、内部に繊維を埋入して破壊強度を10倍にした膜材料を使用すると、膜厚を上記の10分の1の0.4mmにできるから、r=199になる。
【0033】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
図4及び図5は、本発明の第2実施形態を示したものである。図4に示すように、第2実施形態では、袋10X内の隔膜13より下側に第1貯蔵室11が配置され、隔膜13より上側に第2貯蔵室12が配置されている。したがって、袋10X内の下側部分に被貯蔵流体の淡水3が貯蔵され、袋10X内の上側部分に平衡流体の濃塩水4が貯蔵されている。
【0034】
図5に示すように、第2実施形態の袋10Xは、平面視で例えば四角形の扁平状になっている。扁平な袋10Xが海中にほぼ水平に配置されている。第1貯蔵室11と第2貯蔵室12とが扁平な袋10Xの厚さ方向(上下)に区画されている。被貯蔵流体3と平衡流体4が共に扁平な袋10Xの面全体(長さ方向及び幅方向)に行き渡っている。袋10Xの長さL及び幅Wは、袋10Xの厚さより十分に大きく、ひいては各貯蔵室11,12の高さH(図4)より十分に大きい(L>>H、W>>H)。例えば、袋10Xの長さLは、L=10m〜1000m程度であり、袋10Xの幅Wは、W=1m〜50m程度である。各貯蔵室11,12の高さHは、H=1m〜10m程度である。なお、図4において、袋10Xの厚さは、袋10Xの長さに対して誇張されている。
【0035】
図4及び図5に示すように、袋10Xの第1貯蔵室11は、1又は複数の隔膜部14によって複数の室部16に区画されている。複数の隔膜部14は、平面視で格子状になっており、第1貯蔵室11を軸方向に分割するとともに幅方向にも分割している。各室部16に淡水3が充填されている。
第1貯蔵室11が、軸方向と幅方向のうちどちらか一方向にだけ分割されていてもよい。
【0036】
袋10Xの第2貯蔵室12は、1又は複数の隔膜部15によって複数の室部17に区画されている。複数の隔膜部15は、平面視で格子状になっており、第2貯蔵室12を軸方向に分割するとともに幅方向にも分割している。各室部17に濃塩水4が充填されている。隔膜部14と隔膜部15は、袋10Xの軸方向及び幅方向の同じ位置に配置され、平面視で重なっている。
第2貯蔵室12が、軸方向と幅方向のうちどちらか一方向にだけ分割されていてもよい。
【0037】
各室部16,17の長さ×幅は、0.5m×0.5m〜5m×5m程度が好ましい。
袋10Xの軸方向の両端部及び幅方向の両端部は共に半円状に膨らんでいる。
【0038】
第2実施形態によれば、袋10Xの上側部の重比重の濃塩水4が沈もうとし、袋10Xの下側部の軽比重の淡水3が浮こうとするため、袋10Xに作用する張力を十分に小さくできる。各流体3,4を扁平な袋10Xの全域に行き渡らせることで、袋10の全域で被貯蔵流体3の浮力と平衡流体4の沈力とのバランスをとることができ、袋10Xの局所に過大な張力が印加されるのを回避できる。これによって、袋10Xを大きくでき、被貯蔵流体3の貯蔵量を増大できる。かつ、袋本体19の厚さを十分に小さくでき、袋材料の所要量を小さくできる。
また、袋10Xの周縁部が全周にわたって半円状に膨らんでいるため、隔膜13に作用する張力を一層低減できる。したがって、隔膜13の厚さを十分に小さくできる。
さらに、貯蔵室11,12を隔膜部14,15によって複数の室部16,17に仕切ることによって、袋10Xの扁平形状及び姿勢を安定させることができる。特に、重比重の濃塩水4が袋10Xの上側部に配置され、軽比重の淡水3が袋10Xの下側部に配置されていても、袋10Xを扁平状に保ち、かつほぼ水平な姿勢に維持することができる。例えば上側の第2貯蔵室12が下側の第1貯蔵室11の中央部にめり込んだり、袋10Xが上下にひっくり返ったりするのを防止できる。
【0039】
袋10Xにかかる最大張力Tは、W>>H、2W≒L(Lは周長)とすることで、
T=ρgH/2 (式2)
となる。したがって、各貯蔵室11,12の高さHひいては袋10Xの厚さを小さくすることによって、袋10Xにかかる張力を軽減できる。袋10Xの長さL及び幅Wを大きくすることによって、淡水貯蔵量を大きくできる。袋10Xの材質がポリエチレン膜である場合、その破壊強度Eは、E=20×10[pa]程度であり、必要な最小膜厚dは、d=T/E=ρgH/(2E)=9.8×10−6[m]である。貯蔵室11,12の高さHをH=2.8[m]とすると、最小膜厚dは、d=76.9[μm]になる。そこで、安全率を約2倍取り、袋本体10の膜厚は150μm程度にするのがよい。袋10の長さL及びWをL=W=100mとすると、袋本体19の膜材料の体積は3m、淡水貯蔵量Vは、V=28000m、袋本体19の単位膜材料体積あたりの淡水貯蔵量rは、r=9333になる。
【0040】
図6は、本発明の第3実施形態を示したものである。この実施形態の液中貯蔵装置1は、袋10の水深を調節する調節手段20を備えている。袋としては、第1実施形態(図1〜図3)と同様の筒状の袋10が用いられている。調節手段20は、補助容器21と、連結管22と、可逆式送液ポンプ23と、水深センサ24と、制御部25を備えている。補助容器21は、海底に設置されている。補助容器21は、可撓性の袋にて構成されていてもよく、剛性部材にて構成されていてもよい。補助容器21の内部には、第2貯蔵室12内の濃塩水4と同じ濃塩水が貯蔵されている。
【0041】
補助容器21から連結管22が袋10へ延びている。連結管22の先端が袋10の第2貯蔵室12に接続されている。袋10の第2貯蔵室12と補助容器21とが連結管22を介して連結されている。連結管22は、好ましくは可撓管にて構成されている。
【0042】
連結管22に可逆式送液ポンプ23が設けられている。連結管22及び送液ポンプ23は、第2貯蔵室12と補助容器21との間で濃塩水4を授受させる授受手段を構成する。すなわち、送液ポンプ23を正転させると、補助容器21内の濃塩水4が連結管22を経て第2貯蔵室12に送り込まれる。送液ポンプ23を反転させると、第2貯蔵室12内から濃塩水4が取り出され、連結管22を経て補助容器21に送られる。
可逆式送液ポンプ23に代えて、単方向の送液ポンプ23と方向制御弁とを組み合わせて連結管22内の流れ方向を切り替えることにしてもよい。
【0043】
袋10には水深センサ24が設けられている。水深センサ24は、例えば圧力センサにて構成され、袋10の水深に応じた検知信号を出力する。
【0044】
送液ポンプ23の制御信号線及び水深センサ24の検出信号線が制御部25に接続されている。送液ポンプ23及び水深センサ24と、制御部25との接続は、有線に限られず、無線であってもよい。詳細な図示は省略するが、制御部25は、マイクロコンピュータ、A/D変換器、送液ポンプ23の駆動回路などを含む。制御部25は、海上又は地上に設置されていてもよく、袋10の近く又は調節手段20の近くの海中に設置されていてもよい。制御部25を海上又は海中に設置する場合、制御部25の上記内蔵素子を収容する筺体を防水性にすることが好ましい。制御部25のマイクロコンピュータには、入出力インターフェース、CPU、メモリ等が含まれている。メモリには、袋10の水深の所定範囲のデータが格納されている。
【0045】
第3実施形態では、水深センサ24が袋10の水深を検知し、その検知信号を制御部25に入力する。制御部25は、この入力信号及びメモリの上記データに基づいて、袋10の水深が所定範囲になるように送液ポンプ23を操作する。すなわち、袋10の水深が所定範囲より浅くなったときは、送液ポンプ23を正転させる。これによって、補助容器21内の濃塩水4が連結管22を経て第2貯蔵室12に補充される。したがって、袋10の濃塩水4の体積が大きくなって袋10に働く重力が大きくなり、袋10が沈降する。また、袋10の水深が所定範囲より深くなったときは、送液ポンプ23を上記とは逆方向に回転させる。これによって、第2貯蔵室12内から濃塩水4の一部が取り出され、この濃塩水4が連結管22を経て補助容器21に送られる。したがって、袋10の濃塩水4の体積が小さくなって袋10に働く重力が小さくなり、相対的に袋10に働く浮力が大きくなり、袋10が浮上する。これによって、袋10の水深を所定範囲内に維持することができる。
【0046】
図7は、本発明の第4実施形態を示したものである。第4実施形態は、上記水深調節手段20を第2実施形態(図4、図5)の袋10Xに適用したものである。調節手段20の連結管22は、複数の枝管26に分岐している。これら枝管26が、袋10Xの第2貯蔵室12の各室部17に1対1に接続されている。
【0047】
袋10Xの水深が所定範囲より浅くなったときは、送液ポンプ23を正転させることで、補助容器21内の濃塩水4を連結管22から各枝管26に分流させて、各室部17に均等に補充する。また、袋10Xの水深が所定範囲より深くなったときは、送液ポンプ23を逆回転させることで、各室部17から互いに等量の濃塩水4を取り出し、この濃塩水4を枝管26から連結管22を経て補助容器21に送る。これによって、袋10Xの水深を所定範囲内に維持することができる。各室部17の濃塩水4を均等に出し入れすることで、袋本体19や膜13、隔膜部15の一部分に過度な張力がかかるのを防止できる。また、袋10Xの姿勢を安定させることができる。
【0048】
図8は、本発明の第5実施形態を示したものである、この実施形態は、第4実施形態(図7)の変形例に係り、枝管26が袋10Xの外端部の室部17にだけ接続されている。これによって、枝管26を袋10Xの中央の室部17だけに接続するよりも張力の影響を低減できる。
【0049】
図9は、本発明の第6実施形態を示したものである。この実施形態の水深調節手段20は、濃塩水を充填した補助容器21に代えて、補助容器27を備えている。補助容器27の内部には淡水3が充填されている。補助容器27は、例えば可撓性の袋にて構成され、海面に浮んでいる。補助容器27は、船舶5の航行の障害にならないよう、容積が補助容器21より小さくなっている。補助容器27は、波風等で破損しない程度の強度を有していることが好ましい。
【0050】
補助容器27から連結管22が延びて複数の枝管26に分岐している。これら枝管26が、第1貯蔵室11の各室部16に1対1に連なっている。
【0051】
第6実施形態において、袋10Xの水深が所定範囲より深くなったときは、送液ポンプ23を正転させることで、補助容器27内の淡水3を連結管22から各枝管26に分流させて、各室部16に均等に補充する。これによって、袋10Xの淡水3の体積が大きくなって袋10Xに働く浮力が大きくなり、袋10Xが浮上する。また、袋10Xの水深が所定範囲より浅くなったときは、送液ポンプ23を逆回転させることで、各室部16から互いに等量の淡水3を取り出し、枝管26から連結管22を経て補助容器27に送る。これによって、袋10Xの淡水3の体積が小さくなって袋10Xに働く浮力が小さくなり、相対的に袋10Xに働く重力が大きくなり、袋10Xが沈降する。この結果、袋10Xの水深を所定範囲内に維持することができる。
【0052】
図10は、本発明の第7実施形態を示したものである。この実施形態では、袋10Xの水深調節手段として、繋留ロープ30が用いられている。海底にはアンカー31が設置されている。繋留ロープ30の下端部がアンカー31に連結され、繋留ロープ30の上端部が袋10Xに連結されている。袋10Xが、繋留ロープ30を介してアンカー31に繋留されている。袋10Xには繋留突片18が設けられている。この繋留突片18に繋留ロープ30を止められている。
【0053】
第7実施形態における袋10Xの第1貯蔵室11の内容積は、第2貯蔵室12の内容積より大きい。したがって、袋10Xの淡水3の貯蔵量(体積)が濃塩水4の貯蔵量(体積)より多い。このため、袋10Xには比較的大きな浮力が作用している。図10の二点鎖線で示すように、袋10Xを繋留ロープ30から切り離した場合、袋10Xは、所定範囲より浅い水深でバランスする。繋留ロープ30の長さは、袋10Xの上記バランスする位置から海底までの距離より短い。したがって、袋10Xは繋留ロープ30によって引き下げられ、所定の水深範囲内に維持される。しかも、袋10Xを所定範囲内のなるべく浅い水深に位置させることができる。繋留ロープ30の長さを調節することで、袋10Xの水深をほぼ正確に制御できる。濃塩水4によって袋10Xにかかる浮力を減殺できるため、繋留突片18や袋本体19の繋留突片18との接続部分に過度な張力が作用するのを回避できる。
【0054】
図11は、本発明の第8実施形態を示したものである。この実施形態では、袋10Xの外周に網40(漁礁部材)が設けられている。網40は、袋10Xの全体を覆っている。網40の材質は、特に限定がなく、ポリエチレン等の合成樹脂繊維でもよく、麻糸等の天然繊維でもよい。
【0055】
第8実施形態では、網40によって袋10Xを補強できる。更に、網40を設けることで袋10Xの外周に海藻が付着しやすくなる。これによって、袋10Xの周りに魚6を集めることができ、袋10Xを人口漁礁として利用できる。
【0056】
図12は、本発明の第9実施形態を示したものである。この実施形態では、袋10Xの下側の外面に複数の紐状又は帯状(長片状)の漁礁部材41が設けられている。漁礁部材41の材質は、特に限定がないが、海水より比重が大きい樹脂であることが好ましい。例えば、漁礁部材41の材質として、ナイロン、麻等が挙げられる。海中に浮遊する袋10Xの下面から漁礁部材41が垂れ下がっている。複数の漁礁部材41は、等間隔に配列されていてもよく、不規則に配列されていてもよい。複数の漁礁部材41の長さや幅は、互いに等しくてもよく、ランダムであってもよい。これら漁礁部材41によって、液中貯蔵装置1の周りに魚6を集めることができ、液中貯蔵装置1を人口漁礁として利用することができる。
【0057】
図13は、本発明の第10実施形態を示したものである。この実施形態では、袋10Xの第2貯蔵室の内容積が、第1貯蔵室11の内容積より大きい。したがって、袋10Xの濃塩水4の貯蔵量(体積)が淡水3の貯蔵量(体積)より多い。このため、袋10Xに作用する重力が浮力より大きく、袋10Xが海底に着地している。第10実施形態では、複数の紐状又は帯状(長片状)の漁礁部材42が袋10Xの上側の外面に設けられている。海底の袋10Xから漁礁部材42が上へ延びている。漁礁部材42の材質は、特に限定がないが、海水より比重が小さい樹脂であることが好ましい。例えば、漁礁部材42の材質として、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。漁礁部材42として、例えば梱包や物を縛るための市販の樹脂テープを用いることができる。これら漁礁部材42が疑似海藻になり、袋10Xの周りに魚6を集めることができる。これによって、液中貯蔵装置1を人口漁礁として利用することができる。
【0058】
図14は、本発明の第11実施形態を示したものである。第11実施形態は、海水から淡水を製造して貯蔵する淡水製造貯蔵システムSに係る。淡水製造貯蔵システムSは、液中貯蔵装置1と、淡水製造装置7を備えている。液中貯蔵装置1は、海中に設置され、淡水製造装置7は海の近くの地上に設置されている。この実施形態では、液中貯蔵装置1として第2実施形態(図4〜図5)の扁平状の袋10Xが用いられているが、第1実施形態(図1〜図3)の筒状の袋10を用いてもよい。1つの液中貯蔵装置1が、複数の袋10Xを有していてもよい。
【0059】
淡水製造装置7は、海水から水分を分離して淡水を製造するものであり、例えば逆浸透膜を含む膜ユニット70と、加圧ポンプ75を備えている。海水を加圧ポンプ75によって加圧して膜ユニット70の逆浸透膜に接触させ、海水中の水分を抽出する。水分抽出後の海水は塩分濃度が高まり、濃塩水になる。
なお、膜ユニット70は、逆浸透圧方式に限られず、蒸留膜を含む膜蒸留方式などであってもよい。膜蒸留方式の場合、海水を加熱し、海水中の水蒸気を蒸留膜に通して取り出す。
【0060】
膜ユニット70には、海からの海水2を取り入れる海水入口ポート71と、水分抽出後の海水(濃塩水)を導出する濃塩水出口ポート72と、抽出した水分(淡水)を導出する淡水出口ポート73とが設けられている。更に、淡水製造装置7には、前処理部74と、消毒部76,77が設けられている。前処理部74は、膜ユニット70への導入海水中の不純物を沈殿、濾過等によって除去する。消毒部76,77は、淡水を塩素等にて消毒する。
【0061】
淡水製造貯蔵システムSは、海水取り入れ管51と、濃塩水管52(濃塩水路)と、淡水管53(淡水路)を更に備えている。これら管51,52,53は、海中から地上にかけて配管されている。
【0062】
海水取り入れ管51の海側の端部には海水取り入れ口51aが設けられている。海水取り入れ口51aが海中に開放されている。海水取り入れ管51の中間部に海水汲み上げポンプ61が設けられている。ポンプ61は、海水取り入れ管51における地上又は海上の部分(図では海上)に設けられていが、海中に設けられていてもよい。海水取り入れ管51の地上側の端部は、淡水製造装置7内に挿入され、膜ユニット70の入口ポート71に接続されている。淡水製造装置7内の海水取り入れ管51に、上記の前処理部74及び加圧ポンプ75が設けられている。前処理部74は、加圧ポンプ75の前段(管51の上流側)に設けられている。
【0063】
淡水製造装置7の出口ポート72に濃塩水管52の地上側の端部が接続されている。濃塩水管52は、海水2(環境液)中の液中貯蔵装置1へ延びている。濃塩水管52の海側の端部は、液中貯蔵装置1の近くにおいて複数の枝管52bに分岐されている。これら枝管52bが、第2貯蔵室12の複数の室部17に一対一に連なっている。
【0064】
濃塩水管52の中間部には、弁ユニット54が設けられている。詳細な図示は省略するが、弁ユニット54は、方向制御弁や流量制御弁を含む。濃塩水管52から弁ユニット54の方向制御弁を介して排出管55が分岐されている。弁ユニット54は、濃塩水管52における地上又は海上の部分(図では海上)に設けられている。排出管55は、弁ユニット54から海へ向けて延び、その先端部が海水2の内部に差し入れられ、海水2中に開放されている。弁ユニット54が、海中に設けられていてもよい。
【0065】
弁ユニット54は、分流モードと合流モードを選択できるようになっている。分流モードでは、出口ポート72からの流体を、当該弁ユニット54より液中貯蔵装置1側の濃塩水管52(以下「濃塩水管52a」と称す)と、排出管55とに分流させる。更に分流モードの弁ユニット54は、濃塩水管52aへの流量と排出管55への流量の比を調節できる。出口ポート72からの流体の全量を濃塩水管52aへ流したり、出口ポート72からの流体の全量を排出管55へ流したりすることもできる。
【0066】
合流モードの弁ユニット54は、出口ポート72からの流体と濃塩水管52aからの流体とを合流させて排出管55へ送出する。更に、合流モードの弁ユニット54は、濃塩水管52aからの流体の流量を調節できる。
【0067】
濃塩水管52aにはポンプユニット62が設けられている。ポンプユニット62は、弁ユニット54を連動して動作する。弁ユニット54が分流モードのとき、ポンプユニット62は、袋10X側へ向けて流体が流れるのを許容する。弁ユニット54が合流モードのとき、ポンプユニット62は、内蔵のポンプによって流体を袋10X側から弁ユニット54へ向けて圧送する。ポンプユニット62が、停止時に圧送方向とは逆方向の流体圧が作用すると上記逆方向への流れを許容するポンプにて構成されていてもよい。かかるポンプとして、例えば遠心ポンプが好適である。ポンプユニット62は、濃塩水管52aにおける地上又は海上の部分(図では海上)に設けられていが、海中に設けられていてもよい。
【0068】
淡水製造装置7の出口ポート73に淡水管53の地上側の端部が接続されている。淡水管53に上記消毒部76が設けられている。消毒部76より下流の淡水管53には、弁ユニット56が設けられている。詳細な図示は省略するが、弁ユニット56は、方向制御弁や流量制御弁を含む。淡水管53から弁ユニット56の方向制御弁を介して出力管57が分岐されている。出力管57は、淡水の利用部(図示せず)へ延びている。
【0069】
弁ユニット56は、分流モードと合流モードを選択できるようになっている。分流モードでは、出口ポート73からの流体を、当該弁ユニット56より海側の淡水管53(以下「淡水管53a」と称す。)と、出力管57とに分流させる。更に分流モードの弁ユニット56は、淡水管53aへの流量と出力管57への流量の比を調節できる。出口ポート73からの流体の全量を淡水管53aへ流したり、出口ポート73からの流体の全量を出力管57へ流したりすることもできる。
【0070】
合流モードの弁ユニット56は、出口ポート73からの流体と淡水管53aからの流体とを合流させて出力管57へ送出する。更に、合流モードの弁ユニット56は、淡水管53aからの流体の流量を調節できる。図14において、弁ユニット56は、淡水製造装置7の内部に設けられているが、淡水製造装置7の外部に設けられていてもよい。
【0071】
淡水製造装置7内における淡水管53aに上記消毒部77が設けられている。なお、消毒部76,77に代えて、出力管57に消毒部を設けてもよい。
【0072】
淡水製造装置7の外部の淡水管53aにはポンプユニット63が設けられている。ポンプユニット63は、弁ユニット56を連動して動作する。弁ユニット56が分流モードのとき、ポンプユニット63は、袋10X側へ向けて流体が流れるのを許容する。弁ユニット56が合流モードのとき、ポンプユニット63は、内蔵のポンプによって流体を袋10X側から淡水製造装置7側へ向けて圧送する。ポンプユニット63が、停止時に圧送方向とは逆方向の流体圧が作用すると上記逆方向への流れを許容するポンプにて構成されていてもよい。かかるポンプとして、例えば遠心ポンプが好適である。ポンプユニット63は、淡水管53aにおける地上又は海上の部分(図では海上)に設けられていが、海中に設けられていてもよい。
【0073】
淡水管53の海側の端部は、液中貯蔵装置1の近くにおいて複数の枝管53bに分岐されている。これら枝管53bが、第1貯蔵室11の複数の室部16に一対一に連なっている。
【0074】
淡水製造貯蔵システムSは、例えば次のように動作する。
海水汲み上げポンプ61を駆動することによって、海水2を取り入れ口51aに取り込んで取り入れ管51に沿って汲み上げ、淡水製造装置70へ送る。淡水製造装置70では、前処理部74によって上記海水中の不純物を除去する。清浄後の海水を加圧ポンプ75にて加圧して膜ユニット70へ導入する。この導入海水を膜ユニット70によって濃塩水と淡水とに分離する。濃塩水は、出口ポート72から濃塩水管52へ導出する。淡水は、出口ポート73から淡水管53へ導出し、消毒部76によって消毒する。管52,53内の上記濃塩水及び淡水は、加圧ポンプ75によって高圧に維持され、流通力が確保されている。
【0075】
ダム等の水源設備の貯水量が水の需要に対して充分に大きい期間(例えば雨季)は、淡水製造貯蔵システムSの弁ユニット54を分流モードにし、かつ弁ユニット56を分流モードにする。分流モードの弁ユニット54は、淡水製造装置7からの濃塩水の一部を濃塩水管52aへ導き、上記濃塩水の残部を排出管55へ導く。上記濃塩水の一部は、複数の枝管52bに分流して、袋10Xの第2貯蔵室12の各室部17内に供給される。これによって、淡水製造装置7で生成した濃塩水を液中貯蔵装置1の平衡流体4として第2貯蔵室12に貯蔵でき、袋10Xのバランサーとして利用することができる。このとき、ポンプユニット62は、ポンプ停止状態になっており、濃塩水が袋10X側へ流通するのを許容する。上記濃塩水の残部は、排出管55を経て海中に排出される。膜ユニット70からの濃塩水の全部を袋10Xへ流して第2貯蔵室12の各室部17に貯蔵してもよい。或いは、膜ユニット70からの濃塩水の全部を排出管55から排出してもよい。
【0076】
上記濃塩水の流通と併行して、分流モードの弁ユニット56が、淡水製造装置7からの淡水の一部を淡水管53aへ導き、上記淡水の残部を出力管57へ導く。上記淡水の一部は、淡水管53aを経て複数の枝管53bに分流し、袋10Xの第1貯蔵室11の各室部16内に供給される。これによって、淡水製造装置7で生成した淡水を被貯蔵流体3として液中貯蔵装置1の第1貯蔵室11に貯蔵できる。このとき、ポンプユニット63は、ポンプ停止モードになっており、淡水が袋10X側へ流通するのを許容する。上記淡水の残部は、出力管57によって淡水利用部へ供給される。膜ユニット70からの淡水の全部を袋10Xへ流して第1貯蔵室11の各室部16に貯蔵してもよい。或いは、膜ユニット70からの淡水の全部を出力管57にて淡水利用部へ供給してもよい。
【0077】
淡水製造装置7から第2貯蔵室12への濃塩水の供給と、淡水製造装置7から第1貯蔵室11への淡水の供給を同時併行して行なうことによって、貯蔵室11,12のうち下側の室への流体(ここでは淡水)の所要供給圧を抑えることができる。さらに、濃塩水の塩分濃度(ひいては比重)に応じて、濃塩水の供給流量と淡水の供給流量の比を調節することによって、袋10X全体に作用する浮力と重力のバランスを取ることができ、袋10Xの水深を調節することができる。例えば、充填後の袋10X全体の重量と体積の比が海水の密度とほぼ等しくなるよう、淡水製造装置7からの濃塩水の供給量と淡水の供給量を調節することによって、袋10X全体の比重を海水の比重とほぼ等しくなるようにでき、海水2中の袋10Xに作用する浮力と重力を互いに相殺することができる。したがって、袋10Xを例えば繋留ロープ30(図10参照)によって繋留したとしても、繋留部18に作用する張力を十分に小さくできる。
【0078】
ダム等の水源設備の貯水量が不足する期間(例えば乾季)は、淡水製造貯蔵システムSの弁ユニット54を合流モードにし、かつ弁ユニット56を合流モードにする。更に、ポンプユニット62,63をポンプ駆動モードにする。ポンプユニット63の駆動によって、液中貯蔵装置1の第1貯蔵室11の各室部16内の淡水3を、枝管53bを経て淡水管53aに導出し、淡水製造装置7へ向けて圧送できる。この液中貯蔵装置1からの淡水を、消毒部77によって消毒したうえで、弁ユニット56において膜ユニット70からの淡水と合流させる。合流後の淡水を出力管57に導出し、淡水利用部へ供給する。したがって、淡水利用部への淡水供給流量を淡水製造装置7の造水流量より大きくでき、上記水源設備の貯水不足を充分に補うことができる。
【0079】
上記淡水3の供給と併行して、ポンプユニット62の駆動によって、液中貯蔵装置1の第2貯蔵室12の各室部17内の濃塩水4を、枝管52bを経て濃塩水管52aに導出し、淡水製造装置7へ向けて圧送する。この液中貯蔵装置1からの濃塩水4と、膜ユニット70からの濃塩水とを、弁ユニット54において合流させ、排出管55から排出する。これによって、第1貯蔵室11の淡水貯蔵量が減少するのに合わせて、第2貯蔵室12の濃塩水の貯蔵量を減らすことができ、袋10Xの浮力と重力の平衡状態を維持することができる。
【0080】
このように、淡水製造貯蔵システムSによれば、水源設備の貯水量が充分に大きいときは、淡水製造装置7にて生産した淡水を液中貯蔵装置1に貯蔵しておき、水源設備の貯水量が不足してきたときは、淡水製造装置7からの淡水に加えて、液中貯蔵装置1に貯蔵されている淡水3をも淡水利用部に供給することで、淡水供給量を増やすことができる。したがって、淡水製造装置7を比較的小さい造水量で定常運転することができ、淡水製造装置7の規模を上記定常運転の造水量に合わせて決定できる。この結果、淡水製造装置7を小型化できる。
【0081】
例えば、乾季が年間60日有り、かつ乾季1日当たりの淡水製造装置7に対する水需要が1万トンとすると、年間の要求造水量は60万トンである。システムSが淡水製造装置7のみで上記要求造水量を満たそうとすると、淡水製造装置7を1万m/day級の規模にする必要がある。一方、第11実施形態のように淡水製造装置7と液中貯蔵装置1を組み合わせ、淡水製造装置7を年間を通して乾季以外の期間にも運転し、かつ液中貯蔵装置1の淡水貯蔵容量を60万トンとすると、淡水製造装置7の規模は1644m/day級で足りる。液中貯蔵装置1は、上記淡水貯蔵容量を満たすために袋10Xを複数備えていてもよい。例えば、第2実施形態で例示した大きさの袋10X(長さL=100m、幅W=100m、室部16の高さH=2.8m、淡水貯蔵量V=28000m)の場合、21基の袋10Xを設置する。1基の淡水製造装置7からの淡水管53を分岐させて、これら袋10Xに接続するとよい。
【0082】
淡水製造貯蔵システムSでは、淡水製造装置7から液中貯蔵装置1への淡水貯蔵路、及び液中貯蔵装置1から淡水利用部への淡水放出路を、共通の淡水路53によって兼用できる。また、淡水製造装置7から液中貯蔵装置1への濃塩水貯蔵路、及び液中貯蔵装置1からの濃塩水排出路を、共通の濃塩路53によって兼用できる。したがって、配管構造を簡素化できる。
【0083】
本発明は、上記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変をなすことができる。
例えば、被貯蔵流体3は淡水に限られない。被貯蔵流体3が石油であってもよい。被貯蔵流体3が石油であり、平衡流体4が海水より高塩分濃度の濃塩水であってもよい。
被貯蔵流体3は液体に限られず、気体であってよい。例えば、被貯蔵流体3が天然ガスであってもよい。
環境液が石油であってもよい。液中貯蔵装置の袋を石油タンク内に設置してもよい。
【0084】
第1実施形態(図1〜図3)において隔膜13を省略してもよい。
筒状の袋10の軸方向(延び方向)は、直線状に限られず、湾曲又は屈曲していてもよい。
袋10Xの平面視形状は四角形に限られず、円形、四角形以外の多角形であってもよい。
【0085】
複数の実施形態を互いに組み合わせてもよい。例えば、第3実施形態(図6)において、補助容器21に代えて、第6実施形態(図9)の補助容器27を用い、第1貯蔵室11内の被貯蔵流体3の体積を調節することで袋10の水深を制御することにしてもよい。第7実施形態(図10)〜第11実施形態(図14)において、袋10Xに代えて第1実施形態(図1〜図3)の袋10を用いてもよい。第10実施形態(図13)以外の実施形態において、第2貯蔵室12の内容積及び濃塩水4の体積を、第1貯蔵室11及び淡水3の体積より十分に大きくすることによって、液中貯蔵装置1を海水2の底部(海底)に沈めて設置することにしてもよい。第11実施形態の淡水製造貯蔵システムSの液中貯蔵装置1に、第4、第5実施形態(図7、図8)等の水深調節手段20を設けてもよい。
【0086】
筒状の袋10においても、袋10Xと同様に第1貯蔵室11又は第2貯蔵室12が隔膜部14にて複数に仕切られていてもよい。扁平状の袋10Xの第1貯蔵室11又は第2貯蔵室12が、袋10と同様に複数の室部16,17に仕切られていなくてもよい。
袋10,10Xの第1貯蔵室11だけが隔膜部14にて複数の室部16に仕切られていてもよい。
袋10,10Xの第2貯蔵室12だけが隔膜部15にて複数の室部17に仕切られていてもよい。
隔膜部14と隔膜部15が袋10,10Xの軸方向及び幅方向にずれていてもよい。室部16の数と室部17の数が一致していなくてもよい。
【0087】
第11実施形態(図14)の淡水製造貯蔵システムSにおいて、淡水製造装置7から液中貯蔵装置1への淡水貯蔵路と、液中貯蔵装置1から淡水利用部への淡水放出路とが別々に設けられていてもよい。淡水製造装置7から液中貯蔵装置1への濃塩水貯蔵路と、液中貯蔵装置1からの濃塩水排出路とが別々に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、例えば淡水を海中に貯蔵する淡水貯蔵技術に適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
S 淡水製造貯蔵システム
1 液中貯蔵装置
2 海水(環境液)
3 淡水(被貯蔵流体)
4 濃塩水(平衡流体)
5 船舶
6 魚
7 淡水製造装置
10,10x 袋
10a くびれ部分
10e 凹み部分
11 第1貯蔵室
12 第2貯蔵室
13 隔膜
14,15 隔膜部
16,17 室部
18 繋留突片
19 袋本体
20 調節手段
21 補助容器
22 連絡管(授受手段)
23 可逆式送液ポンプ(授受手段)
24 水深センサ
25 制御部
26 枝管
27 補助容器
30 繋留ロープ(調節手段)
31 アンカー
40 網状漁礁部材
41,42 長片状漁礁部材
51 海水取り入れ管
51a 海水取り入れ口
52 濃塩水管(濃塩水路)
52b 枝管
53 淡水管(淡水路)
53b 枝管
54 弁ユニット
55 排出管
56 弁ユニット
57 出力管
61 海水汲み上げポンプ
62,63 ポンプユニット
70 膜ユニット
71 海水入口ポート
72 濃塩水出口ポート
73 淡水出口ポート
74 前処理部
75 加圧ポンプ
76,77 消毒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境液より比重が小さい被貯蔵流体を前記環境液中に貯蔵する液中貯蔵装置であって、
前記環境液中に配置される可撓性膜からなる袋を備え、前記袋の内部に第1貯蔵室と第2貯蔵室とが設けられ、前記第1貯蔵室には前記被貯蔵流体が貯蔵され、前記第2貯蔵室には前記環境液より比重が大きい平衡流体が貯蔵されることを特徴とする液中貯蔵装置。
【請求項2】
前記袋が、前記第1貯蔵室と前記第2貯蔵室とを仕切る隔膜を有していることを特徴とする請求項1に記載の液中貯蔵装置。
【請求項3】
前記隔膜が前記袋内を上下に仕切り、前記隔膜より上側に前記第2貯蔵室が配置され、前記隔膜より下側に前記第1貯蔵室が配置されることを特徴とする請求項2に記載の液中貯蔵装置。
【請求項4】
前記第1貯蔵室又は前記第2貯蔵室が、隔膜部によって複数の室部に区画されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の液中貯蔵装置。
【請求項5】
前記袋が、筒状であり、前記第1貯蔵室と前記第2貯蔵室とが前記袋の軸方向と直交する方向に区画されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の液中貯蔵装置。
【請求項6】
前記袋が、扁平状であり、前記第1貯蔵室と前記第2貯蔵室とが前記袋の厚さ方向に区画されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の液中貯蔵装置。
【請求項7】
前記環境液が海水であり、前記被貯蔵流体が淡水であり、前記平衡流体が海水より塩分濃度が高い濃塩水であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の液中貯蔵装置。
【請求項8】
前記環境液が海水であり、前記被貯蔵流体が石油であり、前記平衡流体が海水より塩分濃度が高い濃塩水であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の液中貯蔵装置。
【請求項9】
前記袋の水深を測定する水深センサと、前記第2貯蔵室又は前記第1貯蔵室に接続された補助容器と、前記第2貯蔵室又は前記第1貯蔵室と前記補助容器との間で濃塩水又は淡水を授受させる授受手段と、前記水深センサの検出値に基づいて、前記袋の水深が前記所定範囲になるように前記授受手段を操作する制御部とを備えたことを特徴とする請求項7または8に記載の液中貯蔵装置。
【請求項10】
前記袋の外周に漁礁部材を設けたことを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載の液中貯蔵装置。
【請求項11】
環境液より比重が小さい被貯蔵流体を前記環境液中に貯蔵する液中貯蔵方法であって、
第1貯蔵室と第2貯蔵室を有する可撓性膜からなる袋の前記第1貯蔵室に前記被貯蔵流体を貯蔵し、前記第2貯蔵室には前記環境液より比重が大きい平衡流体を貯蔵し、前記袋を前記環境液中に配置することを特徴とする液中貯蔵方法。
【請求項12】
前記第2貯蔵室を上側にし、前記第1貯蔵室を下側にすることを特徴とする請求項11に記載の液中貯蔵方法。
【請求項13】
前記袋を、防波堤が設けられた港湾の海中に設置することを特徴とする請求項11又は12に記載の液中貯蔵方法。
【請求項14】
前記袋の水深が所定範囲になるよう、前記被貯蔵流体と前記平衡流体の体積比を調節することを特徴とする請求項11〜13の何れか1項に記載の液中貯蔵方法。
【請求項15】
海水から淡水を製造して貯蔵する淡水製造貯蔵システムであって、
海中に配置される可撓性膜からなる袋を含み、前記袋の内部に第1貯蔵室と第2貯蔵室とが設けられ、前記第1貯蔵室には淡水が貯蔵され、前記第2貯蔵室には海水より高塩分濃度の濃塩水が貯蔵される液中貯蔵装置と、
海水から水分を分離して淡水を製造する淡水製造装置と、
を備え、前記淡水製造装置における淡水の出口ポートと前記第1貯蔵室とが、淡水路にて接続され、前記淡水製造装置における水分を分離した後の海水の出口ポートと前記第2貯蔵室とが、濃塩水路にて接続されていることを特徴とする淡水製造貯蔵システム。
【請求項16】
前記淡水路から淡水の出力路が分岐し、前記濃塩水路から濃塩水の排出路が分岐していることを特徴とする請求項15に記載の淡水製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−153425(P2012−153425A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16627(P2011−16627)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】