説明

液位制御システム

【課題】 アナログ出力式水位センサの劣化による水位制御の不具合を解決すること。
【解決手段】 水位制御システムであって、特定の高水位および低水位を検出する第一水位センサ16B,16Cと、連続的に水位を検出する第二水位センサ16Aとから構成される水位センサ16と、第一水位センサ16B,16Cが高水位および低水位を検出した時の第二水位センサ16Aの水位検出結果の差が設定値以下の時、第二水位センサ16Aが異常と判定し、第二水位センサ16Aによる水位制御を中止する制御器17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体を貯留する槽における液位制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を貯留する槽には、液位の制御を行うことなどを目的として、液位検出手段が設けられている。液位検出手段としては、たとえば前記槽の液位検出部位に設けられた電極と液面との接触,不接触による導通状態の変化により、特定液位を検出する電極式レベルスイッチなどのように、前記槽内の特定液位における出力状態の変化に基づいて、前記特定液位を検出する接点出力式液位検出手段が知られている。また、たとえば前記槽の液位検出部位に設けられた電極を用いて測定された静電容量に基づいて、前記槽内の液位を連続して検出する静電容量式レベルセンサなどのように、前記槽内の液位を連続して検出する伝送出力式液位検出手段が知られている。
【0003】
そして、接点出力式液位検出手段と伝送出力式液位検出手段とを備え、接点出力式液位検出手段を用いて伝送出力式液位検出手段の異常を検出する技術も知られている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−55712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の伝送出力式液位検出手段の異常検出は、伝送出力式液位検出手段によって検出した液位が、接点出力式液位検出手段によって検出した液位に対して所定の誤差範囲を超える場合には、伝送出力式液位検出手段の異常と判断するものである。
【0006】
この出願の発明者等は、図2に示すように、接点出力式液位検出手段(L電極,H電極)が高液位および低液位を検出した時の伝送出力式液位検出手段(水位センサ)の液位検出結果を結んだ直線から槽の許容液位制御帯の下限液位または上限液位を求め、伝送出力式液位検出手段による下限液位と上限液位との間で槽内の液位を制御する液位制御システムを開発した。この開発過程において、特許文献1に記載の異常判定だけでは適切な液位制御ができず、伝送出力式液位検出手段の劣化による液位制御に関して、つぎの課題を見出した。前記許容液位制御帯とは、この制御帯を越えて液位を制御するとシステムにおいて不都合が生ずる制御帯を意味する。
【0007】
第一の課題として、図3に示すように、伝送出力式液位検出手段の液位変化に対する出力変化の勾配が小さくなると液位検知の分解能が低下し、PID制御などのフィードバック制御を行う場合、液位が安定しなかったり、安定するまでに時間がかかる。第二の課題として、図5または図6に示すように、接点出力式液位検出手段が高液位および低液位を検出した時の伝送出力式液位検出手段の液位検出結果(出力)を結んだ直線から槽内の許容液位制御帯の下限液位または上限液位に対応する伝送出力式液位検出手段の出力を求めると、この出力が伝送出力式液位検出手段の定格出力範囲外となり、前記下限液位または前記上限液位を正常に検出することができず、給液や排液のタイミングや量を正しく制御できない。その結果、装置の性能低下につながる。
【0008】
この発明は、伝送出力式液位検出手段の劣化による前記第一の課題および/または前記第二の課題を解決する液位制御システムを提供することである。また、伝送出力式液位検出手段の劣化による異常が判定されても液位制御を継続できる液位制御システムを提供す
ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、槽内の液位を検出する液位検出手段と、前記槽へ液体を供給する給液手段および/または前記槽から液体を排出する排液手段と、前記液位検出手段の検出液位に基づき前記給液手段および/または前記排液手段を制御する制御手段を備える液位制御システムであって、前記液位検出手段は、前記槽内の許容液位制御帯の内側において特定の高液位および低液位を検出する第一液位検出手段と、前記許容液位制御帯の下限値よりも低い液位から前記許容液位制御帯の上限値よりも高い液位まで連続的に液位を検出する第二液位検出手段とから構成され、前記制御手段は、前記第二液位検出手段による液位に基づき前記給液手段および/または前記排液手段を制御するとともに、前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力の差が設定値以下の時、前記第二液位検出手段が異常と判定し、前記第二液位検出手段による液位制御を中止することを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、前記制御手段により、前記第二液位検出手段の液位検出出力の差が設定値以下の状態で液位制御を行うことが防止され、液位検知の分解能低下による液位制御の不良を防止することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、槽内の液位を検出する液位検出手段と、前記槽へ液体を供給する給液手段および/または前記槽から液体を排出する排液手段と、前記液位検出手段の検出液位に基づき前記給液手段および/または前記排液手段を制御する制御手段を備える液位制御システムであって、前記液位検出手段は、前記槽内の許容液位制御帯の内側において特定の高液位および低液位を検出する第一液位検出手段と、前記許容液位制御帯の下限値よりも低い液位から前記許容液位制御帯の上限値よりも高い液位まで連続的に液位を検出する第二液位検出手段とから構成され、前記制御手段は、前記第二液位検出手段による液位に基づき前記給液手段および/または前記排液手段を制御するとともに、前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出結果を結んだ直線から求められる前記許容液位制御帯の下限液位または上限液位に対応する前記第二液位検出手段の出力が同第二液位検出手段の定格出力範囲外となる時、前記第二液位検出手段が異常と判定し、前記第二液位検出手段による液位制御を中止することを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、前記制御手段により、前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出結果を結んだ直線から求められる前記許容液位制御帯の下限液位または上限液位に対応する前記第二液位検出手段の出力が同第二液位検出手段の定格出力範囲外となることが防止され、前記下限液位または前記上限液位を正常に検出して、液位制御を行うことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、槽内の液位を検出する液位検出手段,前記槽へ液体を供給する給液手段および前記液位検出手段の検出液位に基づき前記給液手段を制御する制御手段を備える液位制御システムであって、前記液位検出手段は、前記槽内の許容液位制御帯の内側において特定の高液位および低液位を検出する第一液位検出手段と、前記許容液位制御帯の下限値よりも低い液位から前記許容液位制御帯の上限値よりも高い液位まで連続的に液位を検出する第二液位検出手段とから構成され、前記制御手段は、前記第二液位検出手段による液位に基づき前記給液手段を制御するとともに、前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力の差が設定値以下という第一条件と、前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力を結んだ直線から求められる前記許容液位制
御帯の下限液位または上限液位に対応する前記第二液位検出手段の出力が同第二液位検出手段の定格出力範囲外となる第二条件とのいずれかを満たした時、前記第二液位検出手段が異常と判定し、前記第二液位検出手段による液位制御を中止することを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、前記制御手段により、前記第二液位検出手段の液位検出出力の差が設定値以下の状態で液位制御を行うことが防止され、液位検知の分解能低下による液位制御の不良を防止することができるとともに、前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力を結んだ直線から求められる前記許容液位制御帯の下限液位または上限液位に対応する前記第二液位検出手段の出力が同第二液位検出手段の定格出力範囲外となることが防止され、前記下限液位または前記上限液位を正常に検出して、液位制御を行うことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3において、前記制御手段は、前記第二液位検出手段が異常と判定された時、前記第一液位検出手段による液位制御を行うことを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜請求項3に記載の発明による効果に加えて、前記第一液位検出手段により液位制御を継続することができるという効果を奏する。
【0017】
さらに、請求項5に記載の発明は、請求項4において、前記制御手段は、前記第一液位検出手段の異常を判定し、前記第一液位検出手段の異常が判定されないという条件下で、前記第一液位検出手段による液位制御を行うことを特徴としている。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明による効果に加えて、異常な前記第一液位検出手段によるバックアップ制御を防止することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、第二液位検出手段の液位検知の分解能が低下による液位制御不良や、前記槽内の許容液位制御帯の下限液位または上限液位に対応する前記第二液位検出手段の出力が定格出力範囲外となる異常な液位制御を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、タワー型脱気装置,ボイラ,蒸気滅菌装置などの液位制御システムに好適に実施される。
【0021】
(実施の形態1)
この実施の形態1を具体的に説明する。この実施の形態1は、図3に示すような、前記第二液位検出手段の性能劣化により、液位検知の分解能が低下することによる不適切な液位制御を防止するものである。
【0022】
この実施の形態1は、槽内の液位を検出する液位検出手段と、前記槽へ液体を供給する給液手段および/または前記槽から液体を排出する排液手段と、前記液位検出手段の検出液位に基づき前記給液手段および/または前記排液手段を制御する制御手段を備える液位制御システムであって、前記液位検出手段は、前記槽内の許容液位制御帯の内側において特定の高液位および低液位を検出する第一液位検出手段と、前記許容液位制御帯の下限値よりも低い液位から前記許容液位制御帯の上限値よりも高い液位まで連続的に液位を検出する第二液位検出手段とから構成され、前記制御手段は、前記第二液位検出手段による液位に基づき前記給液手段および/または前記排液手段を制御するとともに、前記第一液位
検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出結果(出力)の差が設定値以下の時、前記第二液位検出手段が異常と判定し、前記第二液位検出手段による液位制御を中止することを特徴とする液位制御システムである。
【0023】
この発明の実施の形態1においては、前記制御手段は、定期的に前記第二液位検出手段の異常判定を行う。この異常判定は、前記第一液位検出手段が前記高液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力と前記第一液位検出手段が前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力との差が設定値以下の時、前記第二液位検出手段の性能劣化による異常と判定する。そして、異常と判定すると、前記第二液位検出手段による液位制御を中止する。こうして、前記差が設定値以下の状態,すなわち液位検知の分解能が低い状態での液位制御が防止される。
【0024】
ここで、この発明の実施の形態1を構成する構成要素を説明する。前記槽は、何らかの液体(典型的には水)を貯留する容器であればよく、特定の構造のものに限定されない。この槽は、この実施の形態1が適用される装置がタワー型脱気装置であれば、処理槽が該当し、ボイラであれば、缶体が該当する。この槽には、前記許容液位制御帯が設定される。この許容液位制御帯とは、前述のように、この制御帯を越えて液位を制御するとシステムにおいて不都合が生ずる制御帯を意味する。たとえば、タワー型脱気装置の許容液位制御帯の下限値は、脱気水を連続的に供給可能とするために処理槽内に最低限必要な下限液位であり、液位がこの下限液位まで低下すると、排液ポンプがエアかみ等を起こし、それ以降ポンプが正常に機能しなくなる。また、上限値は前記処理槽に設けた液体噴霧ノズルが液体中に没しないように設定される上限液位である。
【0025】
前記給液手段は、前記槽内へ液体を供給する手段であり、好ましくは、給液ポンプとする。前記排液手段は、前記槽内の液体を外部へ排出する手段であり、好ましくは、排液ポンプとする。
【0026】
前記第二液位検出手段は、前記許容液位制御帯の下限値よりも低い液位から前記許容液位制御帯の上限値よりも高い液位まで,すなわち前記槽内の液位を前記許容液位制御帯を越えて広い範囲で連続して検出するレベルセンサ(液位センサ)であり、伝送出力式液位検出手段またはアナログ出力式液位検出手段と称することができる。この第二液位検出手段は、前記槽内の液体が導電性か非導電性かにより、また前記槽の容器の材質が金属かどうかで、構成を異にするが、この実施の形態1は、どのような構成の第二液位検出手段でも適用可能である。また、第二液位検出手段は、好ましくは、静電容量式レベルセンサとするが、前記の課題を同じくするものであれば、これに限定されないものであり、水頭圧を検知して液位を測定する圧力センサや、フロート式の水位センサ、超音波式の水位センサなどとすることができる。
【0027】
前記第一液位検出手段は、前記許容液位制御帯の内側において、前記槽内の特定液位における出力状態の変化に基づいて、前記特定液位を検出するレベルセンサであり、接点出力式液位検出手段と称することができ、好ましくは、特定液位を検出する電極式レベルスイッチとするが、フロート式レベルスイッチなどとすることができる。この実施の形態1においては、好ましくは、前記高液位を検出する高液位レベルスイッチと前記低液位を検出する低液位レベルスイッチとの二つのレベルスイッチとから構成する。
【0028】
前記制御手段による制御手順は、少なくとも前記槽内の液位制御プログラムと、前記第二式液位検出手段が正常かどうかを判定する第一異常判定プログラムとを含んで構成される。そして、前記制御手順は、好ましくは、前記第一液位検出手段が正常かどうかを判定する第二異常判定プログラムを更に含んで構成される。
【0029】
前記第一異常判定プログラムは、前記第一液位検出手段が前記高液位および低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力の差が設定値以下の時、前記第二液位検出手段が異常と判定するように構成される。前記「液位検出出力の差」は、前記第一液位検出手段が前記高液位および低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力を結ぶ直線の勾配と言い換えることができ、この勾配を含む概念である。さらに、前記「液位検出出力の差」は、前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出結果を結んだ直線から求められる前記許容液位制御帯の下限液位に対応する出力と前記許容液位制御帯の上限液位に対応する出力との差をも含む概念である。この第一異常判定プログラムは、意図的に液位を変化させてチェックを行う必要があるために、定期的(たとえば、1日1回や付1月1回)に実行される。
【0030】
前記第二異常判定プログラムは、好ましくは、前記第二液位検出手段の液位検出出力に基づき、検出されるべき液位が検出されない時、異常と判定する第一判定と、前記第一液位検出手段の出力の論理に矛盾が有る時、異常と判定する第二判定とを含んで構成される。前記第二判定は、たとえば、前記第一液位検出手段が、前記高液位レベルスイッチと前記低液位レベルスイッチとから構成される場合、前記高液位レベルスイッチが液有りを検出しているのに、前記低液位レベルスイッチが液無しを検出するようなレベルスイッチ間の出力にあり得ない関係が生じている場合、異常と判定する。しかしながら、この第二異常判定プログラムは、前記第一判定と前記第二判定とのいずれか一方を行うように構成することができる。この第二異常判定プログラムは、意図的な液位の変化を必要としないので、常時実行されるが、定期的に実行するように構成することができる。
【0031】
前記液位制御プログラムは、前記第二液位検出手段の異常が判定されない時、前記第二液位検出手段の検出液位に基づき、前記給液手段または前記排液手段を制御することにより、前記槽内の液位を設定液位(目標液位)に制御する。この液位制御プログラムは、PIDなどのフィードバック制御にて行われる。PID制御を行う場合、PID制御機能を前記制御手段に持たせるか、前記制御手段により制御されるインバータに持たせるかは任意である。前記設定液位は、前記第一液位検出手段が、前記高液位レベルスイッチと前記低液位レベルスイッチとから構成される場合、好ましくは、両レベルスイッチの検出液位の丁度中間に設定する。
【0032】
前記第二液位検出手段の異常が判定されると、前記液位制御プログラムは、前記第二液位検出手段による液位制御を中止する。そして、好ましくは、前記第一液位検出手段の検出液位に基づき、液位制御を行う。この液位制御は、好ましくは、前記第一液位検出手段を、前記高液位レベルスイッチと前記低液位レベルスイッチとから構成し、前記給液手段により液位を制御する場合は、前記第一液位検出手段が、前記高液位レベルスイッチにより液有りが検出されると前記給液手段の作動を停止し、前記低液位レベルスイッチによる液無しが検出されると前記給液手段を作動させる制御を行う。前記排液手段により液位を制御する場合は、前記高液位レベルスイッチにより液有りが検出されると前記排液手段を作動させ、前記低液位レベルスイッチによる液無しが検出されると前記排液手段の作動を停止する制御を行う。こうした制御により、前記槽内の液位は、前記高液位レベルスイッチの検出液位と前記低液位レベルスイッチの検出液位との間で制御される。前記丁度中間が目標水位となるように設定しておけば、前記第一液位検出手段による液位制御に切り換えると、液位は変動するが、タワー型脱気装置においては、脱気装置としての性能に支障はない。しかしながら、前記給液手段および前記排液手段の発停回数が増加する。
【0033】
この第一液位検出手段による液位制御に切り換えるに際して、好ましくは、前記第二異常プログラムを実行し、前記第一液位検出手段の異常が判定されない時、前記第一液位検出手段による液位制御に切り換え、異常が判定されると、前記第一液位検出手段による液位制御を行わず、液位制御自体を中止するように構成する。この中止に際しては、前記第
二液位検出手段および前記第一液位検出手段の異常を報知するものとする。
【0034】
また、前記第一液位検出手段が複数のレベルスイッチから構成される場合において、前記第一液位検出手段の異常が判定されても、正常なレベルスイッチが確認されるならこのレベルスイッチに基づき前記液位制御を行うように構成することができる。
【0035】
この発明は前記の発明の実施の形態1に限定されるものではなく、つぎの実施の形態2,3を含む。
【0036】
(実施の形態2)
この実施の形態2は、図5,6に示すような、前記槽内の許容液位制御帯の下限液位または上限液位に対応する前記第二液位検出手段の出力が定格出力範囲外となる異常な液位制御を防止するものである。
【0037】
この実施の形態2は、槽内の液位を検出する液位検出手段と、前記槽へ液体を供給する給液手段および/または前記槽から液体を排出する排液手段と、前記液位検出手段の検出液位に基づき前記給液手段および/または前記排液手段を制御する制御手段を備える液位制御システムであって、前記液位検出手段は、前記槽内の許容液位制御帯の内側において特定の高液位および低液位を検出する第一液位検出手段と、前記許容液位制御帯の下限値よりも低い液位から前記許容液位制御帯の上限値よりも高い液位まで連続的に液位を検出する第二液位検出手段とから構成され、前記制御手段は、前記第二液位検出手段による液位に基づき前記給液手段および/または前記排液手段を制御するとともに、前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力を結んだ直線から求められる前記許容液位制御帯の下限液位または上限液位に対応する前記第二液位検出手段の出力が同第二液位検出手段の定格出力範囲外となる時、前記第二液位検出手段が異常と判定し、前記第二液位検出手段による液位制御を中止することを特徴とする液位制御システムである。
【0038】
この発明の実施の形態2において、前記実施の形態1と異なるのは、前記第二液位検出手段の異常判定のみであり、その他は同様であるので、その説明を省略する。
【0039】
この実施の形態2の異常判定は、前記制御手段の第一異常判定プログラムにより実行される。この第一異常判定プログラムは、つぎのように構成される。前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二式液位検出手段の液位検出出力(2点)を直線で結び、その延長線上において前記許容液位制御帯の下限および上限に対応する前記第二液位検出手段の出力値を求める。そして、この出力値が図5または図6に示すように前記第二液位検出手段の定格出力範囲(4mA〜20mA)外となる時、前記第二液位検出手段が異常であると判定する。
【0040】
(実施の形態3)
この実施の形態3は、図3に示すような、前記第二液位検出手段の性能劣化により、液位検知の分解能が低下することによる不適切な液位制御を防止するとともに、図4,5に示すような、前記槽内の許容液位制御帯の下限液位または上限液位に対応する前記第二液位検出手段の出力が定格出力範囲外となる異常な液位制御を防止するものである。
【0041】
この実施の形態3は、槽内の液位を検出する液位検出手段,前記槽へ液体を供給する給液手段および前記液位検出手段の検出液位に基づき前記給液手段を制御する制御手段を備える液位制御システムであって、前記液位検出手段は、前記槽内の許容液位制御帯の内側において特定の高液位および低液位を検出する第一液位検出手段と、前記許容液位制御帯の下限値よりも低い液位から前記許容液位制御帯の上限値よりも高い液位まで連続的に液
位を検出する第二液位検出手段とから構成され、前記制御手段は、前記第二液位検出手段による液位に基づき前記給液手段を制御するとともに、前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力の差が設定値以下という第一条件と、前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力を結んだ直線から求められる前記許容液位制御帯の下限液位または上限液位に対応する前記第二液位検出手段の出力が同第二液位検出手段の定格出力範囲外となる第二条件とのいずれかを満たした時、前記第二液位検出手段が異常と判定し、前記第二液位検出手段による液位制御を中止することを特徴とする液位制御システムである。
【0042】
この発明の実施の形態3においては、前記実施の形態1と異なるのは、前記第二液位検出手段の異常判定のみであり、その他は同様であるので、その説明を省略する。
【0043】
この実施の形態3の異常判定は、前記制御手段の第一異常判定プログラムにより実行される。この第一異常判定プログラムは、前記実施の形態1の第一異常判定プログラムと同じ第一条件と前記実施の形態2の第一異常判定プログラムと同じ第二条件とのいずれかを満たした時、前記第二液位検出手段が異常と判定するように構成される。前記第一条件は、前記第一液位検出手段が前記高液位および低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力の差が設定値以下という条件である。また、前記第二条件は、前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力を結んだ直線から求められる前記許容液位制御帯の下限液位または上限液位における前記第二液位検出手段の出力が同第二液位検出手段の定格出力範囲外となる条件である。
【実施例1】
【0044】
(実施例1の構成)
以下、この発明の実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施例1に係る脱気装置の概略構成図を示し、図2は、初期状態における水位センサの水位−出力特性を示す図であり、図3は、初期状態および劣化状態にある水位センサの水位−出力特性を示す図であり、図4は、本実施例1の制御手順を説明するフローチャート図である。
【0045】
本実施例1に係る脱気装置は、たとえば蒸気ボイラや排ガスボイラ等の熱機器,あるいはビルやマンション等の建造物などの給水系統に設置され、伝熱管や給水配管の防食を目的として給水中の溶存酸素を低減する場合に適用される。図1において、脱気装置1は、処理槽2と、ノズル3と、真空吸引手段4とを主に備えている。
【0046】
前記処理槽2は、垂直に立設された筒状の胴部5を有しており、下端開口部を底板6で封鎖するとともに、上端開口部を天板7で封鎖することにより、一体化された密閉容器を構成している。ここにおいて、前記処理槽2は、耐圧性,耐熱性および耐食性を確保する観点から、通常、ステンレス鋼(たとえば、SUS304など)を使用して形成される。
【0047】
前記底板6には、被処理水の供給口8と処理水の排出口9とがそれぞれ設けられており、前記供給口8は、前記底板6の中央部,すなわち前記底板6のほぼ中心部に設けられている。一方、前記天板7には、排気口10が設けられており、この排気口10には、前記真空吸引手段4が接続されている。この真空吸引手段4の詳細については、後述する。
【0048】
前記処理槽2内において、前記供給口8には、上方へと延びる供給管11の一端側が液密に接続されており、この供給管11の他端側には、前記ノズル3が接続されている。すなわち、前記ノズル3は、前記処理槽2の軸方向の中央部に噴出方向が上向きになるように配設され、前記供給管11を介して供給された被処理水が前記天板7へ向かって噴出さ
れるように構成されている。
【0049】
前記処理槽2内において、前記ノズル3の噴出口よりも上方の空間は、被処理水の脱気部12に設定されている。この脱気部12の高さは、前記ノズル3から被処理水が所定角度で噴出されたとき、噴出コーン裾部の水滴が前記胴部5の側壁まで到達可能な高さが確保されている。一方、前記ノズル3の噴出口よりも下方の空間は、処理水の貯留部13に設定されている。ここにおいて、前記処理槽2の上部には、脱気効率を高めるため、前記ノズル3からの噴出水と前記脱気部12から落下水とを衝突させ、被処理水の前記貯留部13への落下を遅延させる脱気促進部14が設けられていてもよい。この脱気促進部14の具体的な構成と作用については、本願出願人らによる特願2006−13552号に記載されている。
【0050】
前記胴部5の側方には、処理水の水位を検出する水位検出筒15が併設されており、この水位検出筒15の上部が前記脱気部12と連通されているとともに、前記水位検出筒15の下部が前記貯留部13と連通されている。前記水位検出筒15には、前記処理槽2内の水位を検知する水位センサ(第二液位検出手段)16Aが挿入されており、この水位センサ16Aは、前記脱気装置1の運転を制御する制御部17と接続されている。
【0051】
前記水位センサ16Aは、減圧状態下で前記処理槽2内の水位を連続的に検知可能なものであって、この実施例1では、絶縁被覆した金属電極と金属製胴部5と間の静電容量の変化に基づき水位を検出する静電容量式のセンサとしている。
【0052】
また、前記水位検出筒15には、前記処理槽2内の水位を検知する第一電極(第一液位検出手段で、以下、L電極という。)16B,第二電極(第一液位検出手段で、以下、H電極という。)16Cが挿入されており、これらの電極16B,16Cも、前記制御部17と接続されている。前記L電極16Bおよび前記H電極16Cは、補助電極,出力補正用電極またはバックアップ制御用電極と称することができる。前記水位センサ16Aと前記電極16B,16Cとで、水位検出手段16を構成する。
【0053】
ここにおいて、前記処理槽2には、図2に示すように、下限水位(位置)LL(例えば、50mm)〜上限水位(位置)HH(例えば、250mm)の間の許容水位制御帯御帯が設定されている。この許容水位制御帯とは、この制御帯を越えて水位が制御されると実施例1の脱気装置において不都合が生ずる制御帯である。前記下限位置LLは、脱気水を連続的に供給可能とするために前記処理槽2内に最低限必要な下限水位であり、上限位置HHは、前記処理槽2ノズル3が水中に没しないように設定される上限水位である。
【0054】
前記水位センサ16Aは、前記許容水位制御帯の下限位置LLよりも低い水位から前記許容水位制御帯の上限位置HHよりも高い水位まで,連続して検出することが可能となるように構成されている。
【0055】
前記L電極16Bおよび前記H電極16Cは、前記許容水位制御帯の内側において、前記処理槽2内の水位の変化に基づいて、それぞれL位置,H位置を検出する。後述のように、前記処理槽2内の水位は設定水位(目標水位)に制御されるが、前記設定水位は、前記L位置とH位置の丁度中間に設定している。
【0056】
さて、前記供給口8には、被処理水供給ライン18が接続されており、この被処理水供給ライン18には、上流側から順にストレーナ19,第一ポンプ20,開閉弁21および第一流量センサ22が設けられている。前記第一ポンプ20は、前記ストレーナ19で懸濁物質が濾過された被処理水を前記ノズル3へ供給するためのものであって、第一インバータ23と接続され、その回転数が前記第一インバータ23からの出力周波数に応じて可
変されるように構成されている。また、前記第一インバータ23は、前記制御部17と接続され、前記制御部17からの指令信号によって作動するように構成されている。
【0057】
前記開閉弁21は、脱気運転の停止時に、前記ノズル3への被処理水の供給を遮断するためのものであって、前記制御部17と接続され(図示省略)、前記制御部17からの指令信号によって作動するように構成されている。さらに、前記第一流量センサ22は、前記ノズル3への被処理水の供給流量を検知するためのものであって、前記制御部17と接続されている。ここにおいて、前記第一流量センサ22から前記制御部17へ入力される流量検知信号は、前記第一インバータ23への指令信号の生成に利用される。
【0058】
前記排出口9には、処理水排出ライン24が接続されており、この処理水排出ライン24には、上流側から順に第一逆止弁25および第二ポンプ26が設けられている。前記第二ポンプ26は、前記処理槽2内から処理水を排出するためのものであって、第二インバータ27と接続され、その回転数が前記第二インバータ27からの出力周波数に応じて可変されるように構成されている。また、前記第二インバータ27は、前記制御部17と接続され、前記制御部17からの指令信号によって作動するように構成されている。ここにおいて、前記水位センサ16Aから前記制御部17へ入力される水位検知信号は、前記第二インバータ27への指令信号の生成に利用される。
【0059】
つぎに、前記真空吸引手段4について詳細に説明する。前記真空吸引手段4は、水封式の真空ポンプ28と、封水回収タンク29と、封水還流ポンプ30とを主に備えている。前記真空ポンプ28は、前記排気口10と真空吸引ライン31で接続され、この真空吸引ライン31には、前記排気口10側から順に第二逆止弁32および真空センサ33が設けられている。
【0060】
前記真空ポンプ28は、前記処理槽2内を減圧し、被処理水から分離された気体を排気するものであって、前記制御部17と接続され(図示省略)、前記制御部17からの指令信号によって作動するように構成されている。前記真空センサ33は、前記処理槽2内の真空度を検知するものであって、前記制御部17と接続されている(図示省略)。ここにおいて、前記真空センサ33から前記制御部17へ入力される真空度検知信号は、前記真空ポンプ28への指令信号の生成に利用される。
【0061】
また、前記真空ポンプ28は、前記開閉弁21の下流側の前記被処理水供給ライン18と封水供給ライン34で接続されている。この封水供給ライン34は、被処理水の一部を封水として前記真空ポンプ28へ供給するためのものであって、前記封水供給ライン34には、上流側から順に第三逆止弁35および定流量弁36が設けられている。前記定流量弁36は、前記脱気装置1の運転中に、前記真空ポンプ28へ封水を一定流量で供給することにより、封水の温度上昇を抑制し、前記真空ポンプ28を所定の到達真空度で運転するためのものである。
【0062】
さらに、前記真空ポンプ28は、前記封水回収タンク29と封水回収ライン37で接続されており、前記真空ポンプ28からの使用済みの封水が前記封水回収タンク29内へ回収されるように構成されている。前記封水回収タンク29は、前記ストレーナ19の上流側の前記被処理水供給ライン18と封水還流ライン38で接続されており、この封水還流ライン38には、上流側から順に前記封水還流ポンプ30および第四逆止弁39が設けられている。前記封水還流ポンプ30は、前記封水回収タンク29内に回収された封水を被処理水として返送するためのものであって、前記制御部17と接続され(図示省略)、前記制御部17からの指令信号によって作動するように構成されている。
【0063】
前記制御部17は、その制御手順として、前記処理槽2内の水位制御プログラムと、前
記水位センサ16Aが正常かどうかを判定する第一異常判定プログラムと、前記L電極16BおよびH電極16Cが正常かどうかを判定する第二異常判定プログラムを含む。
【0064】
前記第一異常判定プログラムは、図3に示すように、前記L電極16Bが前記L位置を検出した時の前記水位センサ16Aの水位検出結果(出力)と前記H電極16Cが前記H位置を検出した時の前記水位センサ16Aの水位検出結果(出力)とを直線で結び、この直線の延長線上に位置する前記許容液位制御帯の下限液位に対応する出力と前記許容液位制御帯の上限液位に対応する出力との差が設定値(たとえば、5)(mA)以下の時、前記水位センサ16Aが異常と判定するように構成されている。この第一異常判定プログラムは、定期的(たとえば、1日1回)に実行される。
【0065】
前記第二異常判定プログラムは、前記水位センサ16AがL位置を下回る水位を検出しているのに前記L電極16Bが水無しを出力しているとき、前記電極16Bを異常と判定し、前記水位センサ16AがH位置を上回る水位を検出しているのに前記H電極16Cが水無しを出力しているとき、前記H電極16Cを異常と判定する第一判定を含む。この実施例1では、前記L電極16B,前記H電極16Cのいずれかが異常の時、補助電極異常と判定するように構成している。また、前記第二異常判定プログラムは、前記H電極16Cが水有りを検出しているのに、前記L電極16Bが液無しを検出している場合、異常と判定する第二判定を含んでいる。この第二異常判定プログラムは、常時実行される。
【0066】
前記水位制御プログラムは、前記電極16B,16Cの異常が判定されない時、前述のように基本的には前記水位センサ16Aの検出水位に基づき、前記第二ポンプ26を作動または作動停止とすることにより、前記処理槽2内の水位を前記設定水位に制御するように構成されている。
【0067】
なお、この実施例1においては、前記制御部17と接続され、前記封水回収タンク29に同タンク29内の水位を一定に維持するためのフロートスイッチ42を備え、このフロートスイッチ42を用いてつぎの基本動作と異常判定の制御を行うように構成している。前記基本動作制御は、脱気装置1が運転している時は、常時封水供給を行い、前記フロートスイッチ42の接点がOFF→ONとなってから、第一設定時間後、前記封水還流ポンプ30を運転し、前記接点がOFFとなると、前記封水還流ポンプ30を停止する。
【0068】
前記異常判定制御は、脱気装置1運転中において、(1)前記接点不良、封水供給不良と(2)封水供給不足と(3)前記接点不良、前記封水還流ポンプ30動作不良に関する判定である。
(1)前記接点不良、封水供給不良
前記接点がOFF(前記封水還流ポンプ30停止)となってから、第二設定時間経過しても前記接点がONとならない場合は、前記封水回収タンク29への封水供給しか無い条件で、水面上昇検知が行えないということであり、前記接点不良もしくは封水供給が行われていない封水供給不良と判定する。
(2)封水供給不足
前記封水還流ポンプ30運転開始後第三設定時間以内に前記接点がOFFとなった場合、前記封水回収タンク29の水位下降は封水排出量と封水供給量の差で起こる為、前記第三設定時間以上の時間で下降する場合は封水供給量が少ない、封水供給不足と判定する。(3)前記接点不良、前記封水還流ポンプ30動作不良
前記封水還流ポンプ30運転開始後、第四設定時間経過しても前記接点がOFFとならない場合、前記封水回収タンク29の水位下降条件で、前記第四設定時間内に水面下降検知が行えないことは、前記接点不良もしくは前記封水還流ポンプ30動作不良(封水排水不良)と判定する。
【0069】
(実施例1の基本動作)
以下、実施例1に係る前記脱気装置1の脱気運転の基本動作について説明する。この脱気運転は、たとえば前記脱気装置1の下流側に設置された処理水タンク(図示省略)の水位情報に基づく運転開始信号の入力によって開始される。あるいは、前記脱気運転は、たとえば運転開始時刻および運転終了時刻がそれぞれ設定されたタイマ部(図示省略)からの運転開始信号の入力によって開始される。そして、運転開始信号が入力されると、前記制御部17は、前記開閉弁21を開状態にするとともに、前記第一ポンプ20,前記第二ポンプ26および前記真空ポンプ28を作動させる。
【0070】
前記脱気運転において、被処理水は、前記ストレーナ19で懸濁物質が濾過されたのち、前記第一ポンプ20で加圧されながら、前記被処理水供給ライン18および前記供給管11を介して前記ノズル3へ供給される。前記ノズル3へ供給された被処理水は、前記処理槽2の軸方向の中央部から前記天板7へ向かって上向きに噴出される。前記処理槽2内は、前記真空センサ33からの真空度検知信号に基づいて、前記真空ポンプ28の運転を制御することによって、所定真空度の減圧状態に維持されており、前記ノズル3からの被処理水は、水滴として前記脱気部12を上昇しながら脱気される。
【0071】
つぎに、被処理水の水滴は、前記胴部5の側壁に衝突すると、前記処理槽2の中央部へ向かう落下水となる。落下水となった被処理水は、後続の噴出水と衝突することにより、前記処理槽2の上部に押し上げられ、前記脱気促進部14に所定量が保有されながらさらに脱気される。
【0072】
前記脱気促進部14での落下水の保有量が所定量を超え、噴出水で押し上げることができなくなった落下水の一部は、前記脱気促進部14の下部から押し出される。押し出された被処理水は、流下水として前記胴部5の側壁に沿って下降しながらさらに脱気される。
【0073】
前記胴部5の側壁に沿って下降した流下水は、前記処理槽2の下部に順次貯留される。貯留された被処理水は、前記貯留部13において、水面付近に存在しているときに、さらに脱気され、最終的に処理水として確保される。そして、この処理水は、前記第二ポンプ26によって前記処理槽2内から排出される。
【0074】
さて、前記脱気運転中には、前記第一ポンプ20の定流量制御が行われる。この定流量制御は、前記第一インバータ23のPID制御機能(P制御:比例制御,I制御:積分制御,D制御:微分制御)を使用し、被処理水の供給流量が予め設計された基準処理流量と一致するように、前記第一インバータ23の出力周波数を制御する。なお、前記PID制御機能は、前記制御部17にて行うように構成することができる。
【0075】
前記第一インバータ23のPID制御では、まず前記制御部17が前記第一流量センサ22からの流量検知信号を受けて指令信号(たとえば、4〜20mAの電流値,もしくは1〜5Vの電圧値)を生成し、この指令信号を前記第一インバータ23へ出力する。つぎに、前記第一インバータ23は、前記制御部17からの指令信号をフィードバック値として目標値(すなわち、前記基準処理流量に対応する電流値または電圧値)と比較を行い、これらの値の間に偏差があると、この偏差をゼロにするように出力周波数を制御する。そして、前記第一ポンプ20は、前記第一インバータ23の出力周波数に応じてその回転数が変更される。
【0076】
前記第一ポンプ20の定流量制御によれば、被処理水の供給流量が前記基準処理流量と一致するように運転される。したがって、前記ノズル3からの水滴の大きさが一定となるように、前記第一ポンプ20の運転圧力が自動的に調整されることになり、所定の脱気効率を維持しながら、前記第一ポンプ20の消費電力が低減される。
【0077】
また、前記脱気運転中には、前記第一ポンプ20の定流量制御とともに、前記第二ポンプ26の定流量制御が行われる。この定流量制御は、前記水位制御プログラムにより、前記第一インバータ23と同様に、前記第二インバータ27のPID制御機能を使用し、前記処理槽2内における処理水の水位が予め設定された設定水位と一致するように、前記第二インバータ27の出力周波数を制御する。
【0078】
前記第二インバータ27のPID制御では、まず前記制御部17が前記水位センサ16Aからの流量検知信号を受けて指令信号(たとえば、4〜20mAの電流値,もしくは1〜5Vの電圧値)を生成し、この指令信号を前記第二インバータ27へ出力する。つぎに、前記第二インバータ27は、前記制御部17からの指令信号をフィードバック値として目標値(すなわち、前記設定水位に対応する電流値または電圧値)と比較を行い、これらの値の間に偏差があると、この偏差をゼロにするように出力周波数を制御する。そして、前記第二ポンプ26は、前記第二インバータ27の出力周波数に応じてその回転数が変更される。
【0079】
前記第一ポンプ20の定流量制御とともに行われる前記第二ポンプ26の定流量制御によれば、前記処理槽2内における処理水の水位が一定となるように,すなわち前記第一ポンプ20による被処理水の供給流量と前記第二ポンプ26による処理水の排出流量とが等しくなるように運転される。したがって、前記ノズル3からの水滴の大きさが一定となるように、前記第一ポンプ20の運転圧力が自動的に調整されるとともに、前記処理槽2内での脱気時間が一定となるように、前記第二ポンプ26の運転圧力が自動的に調整されることになり、所定の脱気効率を維持しながら、前記両ポンプ20,26の消費電力が同時に低減される。
【0080】
さらに、前記脱気運転中には、前記被処理水供給ライン18を流れる被処理水の一部が前記封水供給ライン34を介して前記真空ポンプ28へ供給される。この被処理水は、封水として前記真空ポンプ28で利用されたのち、前記処理槽2内から吸引された気体とともに、前記封水回収ライン37を介して前記封水回収タンク29へ回収される。前記封水回収タンク29内では、封水と気体とが分離され、分離された気体は、大気中へ放出される。そして、前記封水回収タンク29内の封水が所定水位を超えると、前記封水還流ポンプ30が駆動され、回収された封水は、前記封水還流ライン38を介して前記被処理水供給ライン18へ返送される。
【0081】
ここにおいて、前記真空ポンプ28では、封水が連続的に入れ替えられているため、封水の温度上昇が生じない。したがって、前記真空ポンプ28を所定の到達真空度で安定して運転することができる。また、前記封水回収タンク29では、封水が連続的に入れ替えられながら、封水と気体とが分離されているため、吸引した気体の濃縮が生じない。したがって、前記封水回収タンク29の腐食を効果的に抑制することができる。さらに、回収された封水は、被処理水として再利用されるので、無駄な廃水も生じない。
【0082】
(水位センサ16Aの異常時の動作)
つぎに前記水位センサ16Aの異常が判定された時の動作を図2〜図4に基づき説明する。前記水位センサ16Aの初期状態(劣化が生じていない状態)では、図2に示すように、前記許容水位制御帯における水位変化(50mm〜250mm)に対して、前記水位センサ16Aの水位検出結果,すなわち出力はLLmA〜HHmAと変化する。この前記水位センサ16Aの出力に基づき、前述のように前記処理槽2内の水位を目標水位に制御する。この制御が、図4の処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNと称する。)に相当する。
【0083】
ところが、前記水位センサ16Aの経年変化による劣化や前記水位センサ16Aにゴミが付着すると、図3に示すように、前記数位センサ16Aの出力の前記L電極16Bが水位を検出した時の前記水位センサ16Aの出力点と、前記H電極16Cが水位を検出した時の前記水位センサ16Aの出力点とを結ぶ直線の傾斜が緩やかになる。これは、前記水位センサ16Aの水位検知分解能が低下したことを意味している。
【0084】
まず、S2にて前記第二異常判定プログラムにより、前記電極16B,16Cの異常が判定される。異常と判定されると、S5へ移行して、水位制御を中止して、脱気運転を中止する。
【0085】
S2でYESが判定されると、S3へ移行する。前述の水検知の分解能低下の状態が悪化すると、S3において、前記第一異常判定プログラムにより前記水位センサ16Aの異常が判定される。この判定は、図3において、前記水位センサ16Aの水位50mmに対応する出力LLと水位250mmに対応する出力LLとの差が前記設定値以下の時、異常と判定される。
【0086】
S3にて異常が判定されると、S4へ移行して、前記電極16B,16Cの検出水位に基づき、水位制御を行う。すなわち、前記H電極16Cにより水有りが検出されると前記第二ポンプ26を作動させ、前記L電極16Bによる水無しが検出されると前記第二ポンプ26の作動を停止する制御を行う。こうした制御により、前記処理槽2内の水位は、変動はあるものの、前記H電極16Cの検出水位と前記L電極16Bの検出水位との間で制御される。
【0087】
S3において、NOが判定されるとS1に戻り、前述の基本動作が実行される。
【0088】
以上の実施例1によれば、前記第一異常判定プログラムにより、前記水位センサ16Aの水位検知の分解能が低い状態での水位制御が防止され、前記処理槽2の水位を安定的に制御することができる。そして、前記水位センサ16Aが異常と判定されると、前記電極16B,16Cの検出水位に基づき、バックアップ水位制御が行われるので、むやみに脱気装置の運転停止を避けることができる。さらに、前記電極16B,16Cのバックアップ水位制御に切り換えるに際しては、前記第二異常判定プログラムにより、前記電極16B,16Cが正常かどうかを判定するので、確実なバックアップ制御を行うことができる。
【0089】
また、この実施例1によれば、被処理水の供給流量の調整作業を容易化するとともに、供給側のポンプの消費電力を低減することができる。また、この実施例1によれば、被処理水の供給流量および処理水の排出流量の調整作業を容易化するとともに、供給側および排出側の両ポンプの消費電力を同時に低減することができる。この結果、脱気性能の維持とランニングコストの低減とが同時に実現され、とくに伝熱管や給水配管などの防食を確実,かつ低コストで行うことができる。
【実施例2】
【0090】
つぎにこの発明に係る実施例2を図5〜図7に基づき説明する。図5,6は、所期状態および劣化状態にある水位検出手段の水位−出力特性を示す図であり、図7は、本実施例2の制御手順を説明するフローチャート図である。
【0091】
この実施例2において、前記実施例1と異なるのは、前記水位センサ16Aの異常判定(第一異常判定プログラム)のみであり、その他は同様であるので、同じ処理ステップには、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0092】
この実施例2の第一異常判定プログラムは、つぎのように構成されている。まず、前記電極16B,16Cが前記L位置および前記H位置を検出した時の前記水位センサ16Aの水位検出結果,すなわち出力(2点)を直線で結び、その延長線上において前記許容液位制御帯の下限(50mm)および上限(250mm)に対応する前記水位センサ16Aの出力値を求める。そして、前記上限に対応する出力値が図5に示すように前記水位センサ16Aの定格出力範囲(20mA)を越える大きい値となる時、前記水位センサ16Aが異常と判定する。また、前記下限に対応する出力値が図6に示すように前記水位センサ16Aの定格出力範囲(4mA)を越えて、小さい値となる時、前記水位センサ16Aが異常と判定する。
【0093】
この実施例2における前記制御部17による制御手順は、図7にて示される。この制御手順において、前記実施例1の図4に示す制御手順と異なるのは、S1の後に実行される前記第一異常判定プログラム(図7のS6)のみであるので、その動作説明を省略する。
【0094】
この実施例2によれば、前記処理槽2内の許容液位制御帯のLL位置またはHH位置に対応する前記水位センサ16Aの出力が定格出力範囲外(4〜20mA)となる異常な水位制御を防止することができるという効果を奏する。その他の作用効果は、前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【実施例3】
【0095】
つぎにこの発明に係る実施例3を図8に基づき説明する。図8は、本実施例3の制御手順を説明するフローチャート図である。
【0096】
この発明の実施の形態3においては、前記実施の形態1と異なるのは、前記第二液位検出手段の異常判定のみであり、その他は同様であるので、その説明を省略する。
【0097】
この実施例3の第一異常判定プログラムは、前記実施例1の第一異常判定プログラムと同じ第一条件と前記実施例2の第一異常判定プログラムと同じ第二条件とのいずれかを満たした時、前記水位センサ16Aを異常と判定するように構成されている。この制御手順は、図8に示され、図8のS3にて前記第一条件が判定され、図8のS6にて前記第二条件が判定される。
【0098】
この実施例3によれば、図3に示すような、前記水位センサ16Aの性能劣化により、水位検知の分解能が低下することによる不適切な液位制御を防止するとともに、図4,5に示すような、前記処理槽2内の許容液位制御帯のLL位置またはHH位置に対応する前記水位センサ16Aの出力が前記定格出力範囲外となる異常な水位制御を防止することができるという効果を奏する。その他の作用効果は、前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【0099】
この発明は、前記実施例1〜3に限定されるものではなく、例えば、ボイラの缶体の水位制御システムに適用可能である。また、前記実施例1〜3において、処理ステップS5を省略して、S2でNOが判定されたとき、S1に戻すように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】この発明の実施例1に係る脱気装置の概略構成図。
【図2】初期状態における水位センサ16Aの水位−出力特性を示す図。
【図3】劣化状態にある水位センサ16Aの水位−出力特性を示す図。
【図4】本実施例1の制御手順を説明するフローチャート図。
【図5】劣化状態にある水位センサ16Aの水位−出力特性を示す図。
【図6】劣化状態にある水位センサ16Aの他の水位−出力特性を示す図。
【図7】本実施例2の制御手順を説明するフローチャート図。
【図8】本実施例3の制御手順を説明するフローチャート図。
【符号の説明】
【0101】
1 脱気装置
2 処理槽
16 水位検出手段(液位検出手段)
16A 水位センサ(第二液位検出手段)
16B L電極(第一液位検出手段)
16C H電極(第一液位検出手段)
17 制御部(制御手段)
20 第一ポンプ(給液手段)
26 第二ポンプ(排液手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽内の液位を検出する液位検出手段と、前記槽へ液体を供給する給液手段および/または前記槽から液体を排出する排液手段と、前記液位検出手段の検出液位に基づき前記給液手段および/または前記排液手段を制御する制御手段を備える液位制御システムであって、
前記液位検出手段は、前記槽内の許容液位制御帯の内側において高液位および低液位を検出する第一液位検出手段と、前記許容液位制御帯の下限値よりも低い液位から前記許容液位制御帯の上限値よりも高い液位まで連続的に液位を検出する第二液位検出手段とから構成され、前記制御手段は、前記第二液位検出手段による液位に基づき前記給液手段および/または前記排液手段を制御するとともに、前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力の差が設定値以下の時、前記第二液位検出手段が異常と判定し、前記第二液位検出手段による液位制御を中止することを特徴とする液位制御システム。
【請求項2】
槽内の液位を検出する液位検出手段と、前記槽へ液体を供給する給液手段および/または前記槽から液体を排出する排液手段と、前記液位検出手段の検出液位に基づき前記給液手段および/または前記排液手段を制御する制御手段を備える液位制御システムであって、
前記液位検出手段は、前記槽内の許容液位制御帯の内側において高液位および低液位を検出する第一液位検出手段と、前記許容液位制御帯の下限値よりも低い液位から前記許容液位制御帯の上限値よりも高い液位まで連続的に液位を検出する第二液位検出手段とから構成され、
前記制御手段は、前記第二液位検出手段による液位に基づき前記給液手段および/または前記排液手段を制御するとともに、前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力を結んだ直線から求められる前記許容液位制御帯の下限液位または上限液位に対応する前記第二液位検出手段の出力が同第二液位検出手段の定格出力範囲外となる時、前記第二液位検出手段が異常と判定し、前記第二液位検出手段による液位制御を中止することを特徴とする液位制御システム。
【請求項3】
槽内の液位を検出する液位検出手段と、前記槽へ液体を供給する給液手段および/または前記槽から液体を排出する排液手段と、前記液位検出手段の検出液位に基づき前記給液手段および/または前記排液手段を制御する制御手段を備える液位制御システムであって、
前記液位検出手段は、前記槽内の許容液位制御帯の内側において高液位および低液位を検出する第一液位検出手段と、前記許容液位制御帯の下限値よりも低い液位から前記許容液位制御帯の上限値よりも高い液位まで連続的に液位を検出する第二液位検出手段とから構成され、
前記制御手段は、前記第二液位検出手段による液位に基づき前記給液手段および/または前記排液手段を制御するとともに、前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力の差が設定値以下という第一条件と、前記第一液位検出手段が前記高液位および前記低液位を検出した時の前記第二液位検出手段の液位検出出力を結んだ直線から求められる前記許容液位制御帯の下限液位または上限液位に対応する前記第二液位検出手段の出力が同第二液位検出手段の定格出力範囲外となる第二条件とのいずれかを満たした時、前記第二液位検出手段が異常と判定し、前記第二液位検出手段による液位制御を中止することを特徴とする液位制御システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第二液位検出手段が異常と判定された時、前記第一液位検出手段による液位制御を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の液位
制御システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第一液位検出手段の異常を判定し、
前記第一液位検出手段の異常が判定されないという条件下で、前記第一液位検出手段による液位制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の液位制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−53892(P2009−53892A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219361(P2007−219361)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】