説明

液体、特に血液から物質を除去するための装置

【解決手段】本発明は、被処理液体用の一次回路と、一次回路に組み込まれたフィルターとを備え、フィルターの二次側に二次回路が接続されており、二次回路に少なくとも1つの吸着器が配置されており、一次回路および二次回路にそれぞれポンプが備えられている、液体、特に血液から物質を除去するための装置に関する。本発明によれば、二次回路に、二次回路の液体を断続的に吸引および再放出する膨張タンクが組み込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体、特に血液から物質を除去するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液を血液透析器またはヘモフィルターを介して一次体外回路へまず導入する血液処理装置は既に知られている。上記フィルターの第2室は、血液の特定成分だけが循環される二次回路の一部である。吸着素子などの実際の血液処理素子は、この二次回路に設けられている。2つの回路に分離することは、吸着素子が全血に接触してはならず、血漿に接触するほうがよい場合に必要であろう。
【0003】
このような装置は、例えば、特許文献1に既に記載されている。ここでは、被処理液体用の一次回路に、フィルターが組み込まれて設けられている。このフィルターの二次側に、二次回路が接続されており、二次回路には、少なくとも1つの吸着器が配置されている。
【0004】
図1に示すような対応する装置が知られている。図1には、一次回路12が示されている。一次回路12において、一次回路の液体、例えば血液は、ポンプ16によって循環されている。一次回路に、フィルター10が組み込まれている。フィルター10の二次側に、二次回路14が接続されている。この二次回路14において、二次回路の液体は、ローラーポンプ18を介して、一定の体積で循環されている。この回路には、二次回路14の液体を浄化するための2つの吸着素子38,40が組み込まれている。この構成において、特定の圧力勾配が、ヘモフィルターにおいて採用される。血液回路への二次液体の注入は、フィルターの上部(二次液体の入口)において行なわれ、血液回路からの液体の除去は、下部(二次液体の出口)において行なわれる。置換される体積は、一定の体積によって正確に釣り合っている。しかしながら、完全に置換された液体の体積、したがって浄化された液体の体積、が正確に定義されないということは欠点である。
【0005】
肝不全が深刻な場合にフィルター10を用いた血液の解毒は可能であるが、従来技術の図1に示すように、一次回路に血液透析器42がさらに設けられていてもよい。この血液透析器42を用いて、血液から水溶性の毒素を、体外血液回路を介した透析装置によって除去することができる。
【特許文献1】欧州特許第0776223号B1明細書
【特許文献2】欧州特許第0472480号B1明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、二次回路において置換される体積を正確に検知できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、請求項1の特徴の組み合わせにより本発明に基づいて達成される。したがって、本発明によれば、二次回路に、二次回路の液体を断続的に吸引および再放出することのできる膨張タンクが組み込まれている。この解決法において、本発明は、例えば特許文献2に記載されているようないわゆる「単一針」システムの原理を利用する。このような方法では、患者とは、血液の吸引と返還とを交互に行う単一カニューレにより繋がっている。このため、血液を途中で膨張タンクに貯蔵する必要がある。本発明の範囲内では、「単一針」システムは使用されず、むしろ膨張タンクが二次回路に組み込まれている。第1段階において、液体は、フィルターを通して膨張タンクへ吸引されまたは押し入れられる。次に、後続の第2段階において、液体は、膨張タンクから少なくとも1つのフィルターを介して血液へ戻される。血液への注入または血液からの濾過は周期に応じてフィルターによって行なわれるので、また、二次回路における注入速度が正確に分かっているので、置換される液体の体積を正確に記録することができ、そしてそれゆえに釣り合いがとられる。ユーザーは、ここで提案された装置を用いて、特定の濾液流量を予め設定することができる。例えば、本質的に比較的低い流通体積流量をここでは選択することができ、その結果、血液処理素子、すなわち例えば吸着器における二次液体の滞留時間は、比較的長くなり、毒素の吸着度が向上するであろう。
【0008】
本発明の更なる詳細および利点は、主請求項に続く従属請求項から明らかとなる。
【0009】
有利には、二次回路に、膨張タンクを断続的に充填するおよび空にする際に二次回路の液体を分配するためのバルブが設けられていてもよい。
【0010】
本発明の他の有利な観点によれば、膨張タンクの充填レベルは、圧力センサーによって検知可能である。
【0011】
二次回路のポンプのために、いわゆる「単一針」システムのモジュールを使用してもよく、この場合、圧力センサーが組み込まれている。血液は一次回路を循環し、血漿は二次回路を循環することができる。この応用形態では、好ましくは、(例えば、ポリスルホンベースの)中空糸メンブランフィルターをフィルターとして使用することができる。中空糸メンブランフィルターは、血液から血漿を分離する機能を果たす。アルブミンおよび低分子量を有する物質は、このメンブランフィルターを透過することができる。
【0012】
有利には、一次回路に、同時透析治療用の血液透析器がさらに組み込まれていてもよい。したがって、透析治療では、体外血液回路を介した透析装置を用いて、水溶性毒素が血液から除去される。肝不全では、患者の血液中に蓄積して蛋白質、通常はアルブミン、と結合する不溶性毒素を、本装置の二次回路によって、ここでは特に吸着によって、分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の更なる特徴、詳細、および利点は、図に示す実施形態から明らかとなる。
【0014】
図2の本発明の装置は、一次回路12を備えている。一次回路12において、患者の血液は、ポンプ16を介して搬送される。一次回路12に、フィルター10が組み込まれている。フィルター10は、ポリスルホンからなるメンブランフィルターとして構成されている。フィルター10に、二次回路14が接続されている。二次回路14において、ローラーポンプとして構成されているポンプ18は、二次回路に搬送された血漿を搬送する機能を果たす。二次回路内に、2つの吸着器38,40が設けられている。蛋白質結合している、すなわち水不溶性の毒素を、これら吸着器によって吸着することにより血漿から除去することができる。
【0015】
二次回路14に、膨張タンク28が組み込まれている。膨張タンク28に、二次回路14の液体、つまり血漿を断続的に引き入れ、そして、再び放出することができる。バルブ20,22とバルブ24,26とが、膨張タンク28を断続的に充填するおよび空にする際に二次回路の液体を分配するために設けられている。図2に示すように、ポンプ18は、一方ではバルブ20とバルブ22との間に、また、他方ではバルブ24と26との間に配置されている。膨張タンクは、さらに、圧力センサー44と接続されている。圧力センサーは、「単一針」システムにおいてモジュールの形で既に使用されているように、ポンプの組み込まれた構成要素であってもよい。
【0016】
疎水性フィルター30,32と、圧力測定接続部34とが設けられている。バランスタンクを36で示す。血漿流量を、圧力センサー44によって制御することができる。
【0017】
個々の断続した周期の処理手順は、以下のようになる。まず、バルブ20,24を開き、バルブ22,26を閉じる。この状態でポンプ18は、新鮮な血漿を、フィルター10を介して吸引し、切り替え圧力に達するまで膨張タンク28に搬入する。切り替え圧力は、圧力センサー44によって測定される。続いて、バルブ22,26を開き、バルブ20,24を閉じる。この場合、血漿は膨張タンク28から搬出されフィルター10へ、つまり、吸着器38,40を流通して一次回路へ返還される。これにより、正確に定義された濾液体積総流量を設定することができる。一般的なシステムでは、体積流量は、20〜50ml/分となる。したがって、吸着器における血漿の滞留時間は、比較的長い。これにより、毒素の吸着を向上できる。
【0018】
あるいは、従来技術において既に知られているように、血漿側では比較的高い再循環流量でシステムを操作することもできる。このためには、バルブ20,26を開き、バルブ22,24を閉じる。この場合、上記体積流量に比べて、300ml/分程度の血漿の体積流量を実現することができる。
【0019】
フィルター10は、アルブミンおよび低分子量を有する物質を透過させるポリスルホンのメンブランフィルターを備えている。メンブランフィルターは、患者の血漿を血液から分離する機能を果たす。上記で詳しく説明したように、二次回路では、蛋白質結合した毒素を除去するための吸着手段によって、血漿分離が行われる。
【0020】
さらに、一次回路における血液透析器42を介して、透析治療を行える。この透析治療によって、体外血液回路を介したここでは詳しく示していない透析装置を用いて、血液から水溶性毒素を除去する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、血液から物質を除去するための従来技術の装置を示す図である。
【図2】図2は、血液から物質を除去するための本発明の装置の一実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液体用の一次回路(12)と、前記一次回路(12)に組み込まれたフィルター(10)とを備え、前記フィルター(10)の二次側に二次回路(14)が接続されており、前記二次回路(14)に少なくとも1つの血液処理素子、特に吸着器(38,40)が配置されており、前記一次回路(12)および前記二次回路(14)にそれぞれポンプ(16,18)が備えられている、液体、特に血液から物質を除去するための装置において、
前記二次回路(14)に、前記二次回路(14)の液体を断続的に吸引および再放出する膨張タンク(28)が組み込まれていることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1の装置において、前記二次回路(14)に、前記膨張タンク(28)を断続的に充填するおよび空にする際に前記二次回路(14)の液体を分配するためのバルブ(20,22または24,26)が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2の装置において、前記膨張タンク(28)の充填レベルは、圧力センサー(44)を介して検知可能であることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項3の装置において、前記二次回路(14)の前記ポンプと、前記圧力センサー(44)とは、1つのモジュールに組み込まれていることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つの装置において、前記一次回路(12)を血液が循環し、前記二次回路(14)を血漿が循環することを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5の装置において、前記フィルターとして、ポリスルホンからなることが好ましいメンブランフィルター(10)が使用されていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つの装置において、前記一次回路(12)に、同時透析治療用の血液透析器(42)がさらに組み込まれていることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−529692(P2008−529692A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555490(P2007−555490)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000885
【国際公開番号】WO2006/087103
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(599117152)フレゼニウス メディカル ケアー ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Deutschland GmbH
【Fターム(参考)】