説明

液体のメニスカス及び振動を制御する内部構造を備えた測定先端

臨床分析装置に使用される測定先端であって、内部に少なくとも1つの段部を有するテーパ状本体を含む。それぞれの段部は、測定先端から分注される液体メニスカスをラッチして測定中の液体の振動を低減するための鋭い内周縁を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、液体の流れをより効果的に制御する少なくとも1つの段部が内側に設けられた改良された測定先端に関する。
【0002】
血液、血清、及び体液の分析に用いられる、例えばアボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories)及びオルト・クリニカル・ダイアグノースティックス社(Ortho Clinical Diagnostics, Inc.,)が製造するような自動臨床装置では、通常はプラスチック製の使い捨て測定先端に所定量の液体サンプルまたは試薬を吸引するのが一般的である。この先端を用いて液体を分析器内の別の位置に移送し、後にこの液体をインキュベーション及び分析のためにキュベットなどの反応容器内に導入する。このような測定先端は、その下端部に細いノズルを備えたほぼ円筒状であって、そのデザインはハンドヘルドピペットに一般に用いられる先端と本質的に変わらない。より高速でより高感度の測定モニタリングを実現するべく分析技術が進歩した。更なる進歩には、単純ではない液体の吸引及び排出のための機能が必要である。最後に、従来の先端デザインは、もはや十分とは言えない。
【0003】
測定先端内に液体を吸引した後、続く一般的な測定サイクルの間、液柱の質量に反対に作用する力の組合せによって液体が先端内に保持される。このような力には、(1)測定システムによる弱い吸引力、(2)先端の内孔に作用する上部の液体メニスカスの表面張力効果、(3)先端のノズルに作用する下部の液体メニスカスの表面張力効果が含まれる。
【0004】
先端のノズルと液体メニスカスと間の相互作用は、上記した力のバランスの重要な要素である。先端の端部(以降、端部「ランド」と呼ぶ)と先端の孔の交差部分は、通常は先端のランドと外側ノズルとの交差部分と同様に鋭い縁からなる。このジオメトリは、全製造工程にとって単なる便利を超えている。先端ランドの鋭い縁と相互作用する液体の表面張力が、液体メニスカスの移動に対するエネルギー抵抗障壁となる。先端ノズルのこのような鋭い縁構造が、先端ブランドの外側ノズル縁または孔の縁でメニスカスを効率的に「ラッチ」することが分かっている。液体メニスカスのこの「ラッチング」が、臨床分析器の様々なステーション内での先端の移動による加速力や測定システム内の圧力変化にもかかわらず、液体を所定の位置に保持するのに十分であるのが理想である。
【0005】
自動分析器の高スループットの要望から、測定システムは高速で機能する必要がある。これは、測定要素として使い捨て先端を用いる殆どの測定システムが空気を作動流体として用いているため困難である。空気は圧縮性であるため、先端の液体が垂直方向に加速されると、この力がメニスカス「ラッチング」力を破壊するのに十分であって、これにより液柱が先端の領域内で振動する。ラッチが破壊されると、たとえ分析測定システムがアクティブモニタリング及び内圧制御を有していても、ラッチを再び形成するのは困難である。このような振動は、様々な理由から非常に大きな問題である。第1に、サンプルを乾燥試薬に分注する分析システムの場合、実際に液体を分注する前に液体が試薬に接触するとアッセイの結果が偏ってしまう。第2に、分注体積内に気泡の存在を検出するソフトウエアを有する分析器では、先端の液体の振動により下部の液体メニスカスが先端のバレル内を上下動してエラーが頻繁に起こることになる。第3に、極端に液体が振動すると、液体が先端から流出して反応容器に分注する容量が減少してしまう可能性がある。一般的な自動分析器では、分注する液体は比較的少量であるため、分析結果の必要な精度を得るには厳密な許容範囲を維持しなければならない。たとえ少量のサンプルのロスであっても、アッセイの結果を偏らせ得る。
【0006】
液体の振動によって起こる上記した問題などの問題の重大性から、振動を防止する或いは効果的に減少させる構造、及び/または振動を最小限にする構造を提供する測定先端を有するのが有用である。
【0007】
発明の要約
本発明の主な目的は、従来技術の上記した欠点を解消することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、分注または測定される液体の測定先端の領域内での振動の発生を低減することである。
【0009】
従って、本発明の好適な態様に従って、テーパ状の分注用端部及び液体を保持するための内部を含む測定先端を提供する。この測定先端は、その内部に複数の段部を有する。それぞれの段部は、液体メニスカスにラッチして分注される液体の振動を低減するための鋭い内周縁を有する。
【0010】
近接する一連の段部を測定先端の内側に設けて、液体の振動の影響を著しく低減または防止するのが好ましい。これらの各段部は、分注される液体メニスカスをラッチするために鋭い内周縁を有するのが好ましい。
【0011】
一実施形態に従えば、測定先端は更に、内部の液体の光学的検査または他の検査を可能にする測定領域を含む。好適な実施形態に従えば、測定先端の測定領域に対して少なくとも1つの段部を設けて、測定先端に残る最小化された液体のデッドボリュームの測定を可能にする。
【0012】
本発明によって得られる利点は、測定先端に少なくとも1つの段部を設けることで液体の振動の影響を著しく低減できることである。
【0013】
別の利点は、測定先端の測定窓に対して段部を設けることで測定先端の最小化されたデッドボリュームを用いた分光光度測定などの光学検査が可能になることである。
【0014】
これら及び他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読めばより良く理解できるであろう。
【0015】
詳細な説明
本発明は、主に臨床分析器に用いられる、液体を吸引及び分注するための測定先端の特定の実施形態を説明する。しかしながら、当業者であれば、ここに開示する本発明の概念を用いた他のデザインに容易に想到することが明らかであろう。
【0016】
本発明の先端デザインは、下部の液体メニスカスが先端ランドからラッチが外れた場合に液体の振動を効果的に低減する。発明の背景目的として、図1及び図2に従来の測定先端10が示されている。測定先端10は、成型用プラスチック材料から形成するのが好ましく、下部先端開口14、先端ノズル24、及び上部先端開口18を含むテーパ状円筒構造によって画定されている。この先端10は、中空のテーパ状内部20によって画定されている。図2に示されているように、測定先端10の内部形状は、それぞれのテーパ状表面の間に連続的或いは平滑な移行部を含む。このデザインは、自動分析器及びピペット先端に使用される殆どの測定先端に共通である。
【0017】
図3に、本発明の好適な実施形態に従った形成された測定先端60が示されている。この先端60は、複数の近接した内側段部68を有する内部ノズル64を含む。複数の近接した内側段部68のそれぞれは、先端ランド76の鋭い縁と同様に液体メニスカスと相互作用する鋭い内周縁72を含む。従って、液体メニスカス82が段部68のそれぞれの内周縁72を通過する時に、図4‐図10に時系列に示されているように、液体メニスカスが縁にラッチしようとして動きが遅くなる。本発明の実施形態では、先端60内に一連の段部68を設けることで、この振動防止が先端ノズル64のより長い範囲に亘って作用し、図4‐図10に示されているようにより強い振動を防止している。
【0018】
図3に示されている先端構造を、比較目的で、現在の分析器プラットフォームで検査した。この検査結果は、先端60の内部に近接した段部68を設けることで、液体の振動及びこれに関連した測定誤差が実質的に最小限になったことを示している。
【0019】
ここに開示する複数の振動防止段部68を含む図3の測定先端60は別の機能も果たす。この他の適用例では、全てのサンプルが測定先端60から分注された後に、先端に残った液体の分光光度測定をするのが望ましい場合が多い(この残った液体を以降、デッドボリュームと呼ぶ)。
【0020】
図12を参照されたい。分光光度測定は、先端60の円柱部分74に位置する測定窓96を介して行われる。具体的には、測定窓96は、別の画定された段部78のすぐ下側であって外側円錐部分の上に位置している。先端60が測定システムプローブ(不図示)に取り付けられていると、タイミングの制約から先端60を介した分光光度測定ができないため、先端60を測定システムから取り外して保管し、後に分光光度測定を行うのが望ましい。先端60を取り外してノズル64が空気に触れると、先端60内の液体のロスすなわち分散が起こりやすい。液体が分散すると、分光光度測定のために液体を正確に配置することができない。この問題の有効な解決策の1つは、加熱したアンビル(不図示)に先端を接触させて先端ノズルの先端部を融解して先端60をシールすることである。このシールした先端は有効な「キュベット」になり、後の分光光度測定のために保管装置(不図示)内に保管することができる。上記したシール技術に関連した更なる詳細については、言及することを以って本明細書の一部とする同時係属中の本発明の譲渡人に譲渡された米国特許出願第09/910,399号に開示されている。
【0021】
図12に示されているように、シールする前に、まず液体のデッドボリューム94を測定先端60のノズル64の中に引き戻す。この引き戻しには2つの理由がある。第1に、先端ノズル64の端部にできた気泡によって、残った液体がシール工程の熱から絶縁される。熱は、ある種の分析物の濃度に影響を与えることがある。第2に、特に液体が小児サンプルの場合、デッドボリュームを最小限にするのが強く望まれる。
【0022】
図12に示されているように、吸引された気泡によってデッドボリューム94の上部メニスカス98が上昇するため、分光光度測定中に上部メニスカスによる光学的影響が起こらない。図11に、比較のために従来技術の結果が示されている。上記したように、先端ノズル64の内側の複数の段部は、所定の位置に気泡をラッチして、分光光度測定に先立つ先端部の取外し及び保管装置(不図示)への移送のショックに耐えるように作用する。
【0023】
図12に示されているように、上部メニスカスの光学的影響を低減するために、分光光度測定用の窓96のすぐ上の先端60内に別の段部92を設けることができる。図11に示されている従来のノズルのように段部92がないと、上部メニスカス88が、表面張力によってほぼ球面の曲率をとるであろう。デッドボリュームの許容範囲の下限では、曲率によって光の反射が起こり、分光光度側手の精度に影響を及ぼす。先端部の取外し及び続く保管装置(不図示)への移送のショックによって、上部メニスカス88が傾斜して、そのメニスカスの下側が分光光度計の光路に十分に侵入し得る。段部92の効果により、液体が効果的にラッチされメニスカス88が平坦になる。
【0024】
図面に例示されている好適な形態を用いて本発明を説明してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の概念及び範囲から逸脱することなく、好適な形態を様々に変更できることを理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来技術に従って形成された測定先端の斜視図である。
【図2】図1の測定先端の断面図である。
【図3】本発明に従って形成された測定先端の断面図である。
【図4】液体の分注を連続的に示す第1の図3の測定先端の断面図である。
【図5】液体の分注を連続的に示す第2の図3の測定先端の断面図である。
【図6】液体の分注を連続的に示す第3の図3の測定先端の断面図である。
【図7】液体の分注を連続的に示す第4の図3の測定先端の断面図である。
【図8】液体の分注を連続的に示す第5の図3の測定先端の断面図である。
【図9】液体の分注を連続的に示す第6の図3の測定先端の断面図である。
【図10】液体の分注を連続的に示す最後の図3の測定先端の断面図である。
【図11】従来技術の測定先端における光学的測定のための液体のデッドボリュームの形成を示す断面図である。
【図12】本発明に従って形成された測定先端における光学的測定のための液体のデッドボリュームの形成を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の液体を吸引及び分注できる測定先端であって、
内部及び先端開口を含むテーパ状のプラスチック本体を含み、
前記内部が、複数の近接した段部を含み、前記段部がそれぞれ、液体メニスカスをラッチして分注される液体の振動を最小限にするための鋭い内周縁を含むことを特徴とする測定先端。
【請求項2】
前記測定先端が、実質的に一定の直径を有する軸部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の測定先端。
【請求項3】
実質的に一定の直径を有する前記軸部分が測定窓を含むことを特徴とする請求項2に記載の測定先端。
【請求項4】
前記測定窓よりも上に形成された少なくとも1つの段部を含むことを特徴とする請求項3に記載の測定先端。
【請求項5】
前記複数の段部が、前記先端開口と前記測定窓との間に軸方向に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の測定先端。
【請求項6】
所定量の液体を吸引及び分注できる測定先端であって、
内部及び先端開口を含むテーパ状のプラスチック本体を含み、
前記プラスチック本体が更に、実質的に一定の直径を有する軸部分を含み、全機軸部分の少なくとも一部が測定窓を画定しており、
前記内部が、液体メニスカスをラッチして分注される液体の振動を低減するための鋭い内周縁を有し、前記段部の少なくとも1つが前記測定窓よりも上に形成されていることを特徴とする測定先端。
【請求項7】
前記段部の少なくとも1つが前記測定窓よりも下に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の測定先端。
【請求項8】
複数の段部が、前記先端開口と前記測定窓との間に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の測定先端。
【請求項9】
測定先端から分注される液体の振動を低減する方法であって、
測定先端の内部に少なくとも1つの段部を設けるステップを含み、
前記段部が、そこを通る液体メニスカスをラッチするための鋭い内周縁を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記測定先端がその内部に受容した液体を光学的に測定可能な測定窓を含み、更に、前記少なくとも1つの段部を前記測定窓よりも上に設けるステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2006−513401(P2006−513401A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−524741(P2004−524741)
【出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/023096
【国際公開番号】WO2004/011913
【国際公開日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願人】(501131014)オーソ−クリニカル・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド (30)
【氏名又は名称原語表記】Ortho−Clinical Diagnostics, Inc.
【住所又は居所原語表記】100 Indigo Creek Drive, Rochester, NY 14626−5101, U.S.A.
【Fターム(参考)】