液体の処理装置
【課題】液体とII価III価鉄塩を含む粒体とを接触させる処理、および、液体中に微小気泡を生成する処理、の2つの処理それぞれ単独では得られない大きな効果を得る。
【解決手段】 液体とII価III価鉄塩を含む粒体とを接触させた後に該液体を吐出するII価III価鉄塩を含む粒体保持容器、および、液体中に微小気泡を生成し該液体を吐出する微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)とを組み合わせ、両者の内部に液体を順次通過させるようにした。
【解決手段】 液体とII価III価鉄塩を含む粒体とを接触させた後に該液体を吐出するII価III価鉄塩を含む粒体保持容器、および、液体中に微小気泡を生成し該液体を吐出する微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)とを組み合わせ、両者の内部に液体を順次通過させるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば機能水製造装置に関するものであって、液体に洗浄・殺菌効果を与えるための処理、液体に生物や細胞に対する活性化効果を付与する処理等を実行する装置に関する。被処理液体は液体一般であって、機能水であれば水、そのほかアルコール、有機溶媒、無機溶媒である。
【0002】
本発明は、公知の2つの液体処理を組み合わせて相乗効果を得るものである。
【0003】
その液体処理の一方は、液体とII価III価鉄塩を含む粒体とを接触させる処理、他方は、液体中に微小気泡を生成する処理である。
【0004】
前者の、液体とII価III価鉄塩を含む粒体とを接触させる処理とその効果については、特許文献1から特許文献6に開示されている。
【0005】
すなわち(図1参照)、II価III価鉄塩を含むセラミックスなどの粒体F1を充填したカラムで液体を内部導入し液体とF1表面とを接触させる容器F2、あるいは、F1を充填した金属網など外部液体とF1表面とが接触可能な容器F3を用いた処理であり、かかる処理でII価III価鉄塩のイオン化物が液体中に極微量溶出して、液体を機能性飲料、肥料、植物成長補助剤などとして利用する。
【0006】
図1中に、II価III価鉄塩(塩化物)の化学式も示した。化学式中の「m」「n」は任意の自然数である。
【0007】
一方後者の、液体中に微小気泡を生成する処理の、微小気泡とは「マイクロバブル」、「ナノバブル」、「マイクロナノバブル」と呼称されるものであって、その生成法は多様である。
【0008】
超音波や電磁波による生成法その他が研究中であるが、コストパフォーマンスの点では加圧開放型や機械的キャビテーションによるものが優れている。これらはモータで回転する部材による回転エネルギーを用いる点で、超音波や電磁波による生成法に比べて単純で効率も悪くないからである。
【0009】
典型的な加圧開放型のマイクロバブル発生器の模式図を図2に示す。図2のM14で液体を吸引する。吸引のための圧力低下は渦流ポンプM10の作用である。逆に吐出側では、M15の内部に、図では省略せる特許文献4などに開示された加圧手段(オリフィスや網目などの液体圧力加圧手段および流れの方向を急変させる衝突部材等)が配設されているため、3−5気圧に高圧化する。
【0010】
この高圧によって、M4で吸引された気体が過飽和で液体中に溶け込んだ状態で吐出され、物理的な刺激でマイクロバブルを生成する。
【0011】
また、ナノバブルはマイクロバブルをイオンリッチな液体中で安定化させることでつくられる、とされ電解や放電プロセスを付加した製法が提案されている。図2の構成の「次プロセス」で放電や電解プロセス装置と結合した構成でナノバブル生成させてもよい。もちろん、液体貯留槽MR内部に電極を配設して放電や電解プロセスを行うようにしてもよい。
【0012】
これらの製法は公知であり、マイクロバブルやナノバブル、それらの中間的なマイクロナノバブルを液体に混入させることで種々の効果が実験的に発見され、実際に利用されている。
【0013】
たとえば洗浄、殺菌、魚介類などの生育向上、生ものの保存、栄養成分の抽出などである。(特許文献8から特許文献25参照)
特許文献8は、本発明者のひとりが提案するマイクロバブル生成装置の改良改善である。これに先んじた特許文献9から特許文献25は、産業総合研究所の高橋ら、レオ研究所の千葉ら、によるナノバブル、マイクロナノバブルの生成法とその利用の開示で、これらを補足する公知文献として、非特許文献1から非特許文献3がある。
【0014】
また一方、ミネラル成分を溶出する粒の表面をマイクロバブルで洗浄して、効果を延命する技術が特許文献7に開示されている。本発明の効果の理由のひとつが、II価III価鉄塩を含むセラミックスなどの粒体表面が、微小気泡によって洗浄されることと考えられるので、引用しておく。
【0015】
本発明は、これらの公知技術をふまえ、2つの液体処理を組合わせて相乗効果を得るシステムを提案するものである。特許文献25と特許文献26は次節発明の開示にて引用する。
【特許文献1】特開平02−184387号公報「水改質活性剤」
【特許文献2】特開2000ー279959号公報「活性水の製造方法及び製造装置」
【特許文献3】特開平5−245481号公報「機能性飲料用水」
【特許文献4】特開平10−066982号公報「活性水」
【特許文献5】特開2003−321288号公報「有機質肥料」
【特許文献6】特開2004−217611号公報「植物成長補助剤」
【特許文献7】特願2007−000694号公報「雨水利用システム」
【特許文献8】特願2010−000569号公報「微小気泡粒径と微小気泡濃度が可変である微小気泡発生装置、該装置を利用した微小気泡発生装置の変更(スケールアップ/スケールダウン)設計方法」
【特許文献9】特開2009−131770号公報「二酸化炭素ナノバブル水の製造方法」
【特許文献10】特開2009−131769号公報「窒素ナノバブル水の製造方法」
【特許文献11】特開2009−084258号公報「ナノバブルを含む癌の治療又は予防のための薬剤 」
【特許文献12】特開2009−039600号公報「超微細気泡生成装置」
【特許文献13】特開2008−259456号公報「魚介類の保存方法」
【特許文献14】特開2008−237950号公報「水酸基ラジカルを含む水の製造方法および水酸基ラジカルを含む水」
【特許文献15】特開2008−093612号公報「反応活性種を含む水の製造方法および反応活性種を含む水」
【特許文献16】特開2008−093611号公報「極微小気泡を含む水の製造方法および極微小気泡を含む水」
【特許文献17】特開2008−063258号公報「組織保存液」
【特許文献18】特開2007−275089号公報「長期持続型オゾン水、長期持続型オゾン水を利用した環境殺菌・脱臭浄化方法 」
【特許文献19】特開2006−223239号公報「酸素ナノバブルを利用した魚介類焙焼有効成分抽出方法およびその抽出方法によって得られた有効成分を添加した魚肉加工品素材」
【特許文献20】特開2005−246294号公報「酸素ナノバブル水およびその製造方法」
【特許文献21】特開2005−246293号公報「オゾン水およびその製造方法」
【特許文献22】特開2005−245817号公報「ナノバブルの製造方法」
【特許文献23】特開2005−110552号公報「加圧多層式マイクロオゾン殺菌・浄化・畜養殺菌システム」
【特許文献24】再表2005/030649号公報「微小気泡の圧壊」
【特許文献25】特願2009−265832号公報「液体中に微小気泡を生成して液体を発熱させる装置および方法」
【特許文献26】特公平06-083828号公報「有機塩素化合物含有水の処理方法及び装置」
【非特許文献1】平成17年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託調査研究 バイオ分野におけるナノバブル水の産業利用に関する調査 成果報告書 38−40「ナノバブル水を利用した生体組織の保存等に関する評価研究」
【非特許文献2】Hojo Y,et al.“Anti−inflammatory Property of Oxygen Nano−bubbles” Circulation Journal vol.70, supplement I,p276(第70回 日本循環器学会総会・学術集会)
【非特許文献3】平成17年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託調査研究 バイオ分野におけるナノバブル水の産業利用に関する調査 成果報告書 40−45「細胞の生理機能に対するナノバブル水の影響評価」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、液体とII価III価鉄塩を含む粒体とを接触させる処理、および、液体中に微小気泡を生成する処理、の2つの処理を組合わせて、それぞれ単独では得られない大きな効果を得ることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は(請求項1、図3参照)、液体を導入し該液体とII価III価鉄塩を含む粒体とを接触させた後に該液体を吐出する、II価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器「F」、および、液体を吸引し該液体中に微小気泡を生成し該液体を吐出する、微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)「M」を有し、前記粒体を保持する容器「F」の液体吐出手段から前記微小気泡発生器「M」の液体吸引手段に至る液体流送系、または/および、前記微小気泡発生器「M」の液体吐出手段から前記粒体を保持する容器「F」の液体導入手段に至る液体流送系を具備して、処理対象液体を「F」の内部から「M」の内部に順次通過させる、または、処理対象液体を「M」の内部から「F」の内部に順次通過させることを特徴とする液体の処理装置である。
【0018】
図3は、本発明の請求項1の一の実施態様を示す模式図であって、II価III価鉄塩を含む粒体表面と液体とを接触させるII価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器F2、および、液体を吸引し該液体中に微小気泡を生成し吐出する微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)Mを有し、前記容器F2の液体吐出手段から前記発生器Mの液体吸引手段に至る液体の流送系を具備して、液体源の供給系LSから供給される処理対象液体をF2の内部からMの内部に順次通過してM15から吐出する構成である。
【0019】
また、本発明の一態様として(請求項2、図4参照)、微小気泡発生器「M」が生成する微小気泡を含む液体を貯留保持する貯留容器「MR」が、該発生器「M」の液体吐出手段を介して配設されていてもよい。
【0020】
また、本発明の他の態様として(請求項3、図4参照)、貯留容器「MR」と前記粒体を保持する容器「F」とが、該容器「F」の液体導入手段を介した液体流送系で結合されていてもよい。
【0021】
図4は、本発明の請求項2および請求項3の一の実施態様を示す模式図であって、微小気泡発生器Mの液体吐出手段M15を介し結合してMが生成する微小気泡を含む液体を貯留保持する貯留容器MRを具備し、該貯留容器「MR」と前記粒体を保持する容器「F」とが、該容器「F」の液体導入手段を介した液体流送系で結合されている構成の例図である。
【0022】
この構成で液体は循環され順次連続的に「F」と「M」の処理を長時間に渡って効率的にうけるので好適である。
【0023】
また、本発明のさらに他の態様として(請求項4、図5参照)、容器「F」を内包し、II価III価鉄塩を含む粒体表面と接触した液体を貯留保持する貯留容器「FR」をさらに具備してもよい。
【0024】
図5は、本発明の請求項4の一の実施態様を示す模式図であって、前記II価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器F3を内包してII価III価鉄塩を含む粒体表面と接触した液体を貯留保持する貯留容器FRを具備した構成の例図である。
【0025】
また、本発明のさらに他の態様として(請求項5、図6参照)、貯留容器「FR」と前記微小気泡発生器「M」とが、該微小気泡発生器「M」の液体吸引手段を介した液体流送系で結合されていてもよい。
【0026】
図6は、図5の態様に、さらに請求項5の態様を付加した実施態様の液体の処理装置の例図、すなわち、貯留容器FRと微小気泡発生器Mとが、該微小気泡発生器Mの液体吸引手段を介した液体流送系で結合されている構成の例図である。
【0027】
この構成で液体は循環され順次連続的に「M」と「F」の処理を長時間に渡って効率的にうけるので好適である。
【0028】
また、本発明の請求項1の別の実施態様を示す模式図を図7に示す。すなわち、微小気泡発生器Mの液体吐出手段M15を介し結合してMが生成する微小気泡を含む液体を貯留保持する貯留容器MRをさらに具備し、該貯留容器「MR」と前記粒体を保持する容器「F」とが、該容器「F」の液体導入手段を介した液体流送系で結合されている態様であって、この態様も好適である。
【0029】
図8は、図7の構成に、さらに請求項2および請求項3の態様を付加した実施態様の液体の処理装置の例図、すなわち、微小気泡発生器Mの液体吐出手段M15を介し結合してMが生成する微小気泡を含む液体を貯留保持する貯留容器MRをさらに具備し、該貯留容器「MR」と前記粒体を保持する容器「F」とが、該容器「F」の液体導入手段を介した液体流送系で結合されている構成の例図である。
【0030】
この構成でも前記同様に液体は循環され順次連続的に「M」と「F」の処理を長時間に渡って効率的にうけるので好適である。
【0031】
また、図8の構成にさらに請求項4の態様を付加した例図を図9に示す。すなわち、II価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器F3を内包してII価III価鉄塩を含む粒体表面と接触した液体を貯留保持する貯留容器FRを具備した態様であって、この態様も好適である。
【0032】
さらにまた、液体処理にて液体の温度がきわめて重要な要素であるので、液体温度の制御調整手段を、液体貯留槽MRやFRに温度センサーと共にさらに具備することは好適である。
【0033】
<温度制御の付加> ここで、液体の温度の最適範囲は、「F」のII価III価鉄塩を含む粒体表面との接触処理と、「M」の微小気泡発生処理とで異なる。
【0034】
この温度の最適範囲について、以下に説明する。
【0035】
すなわち、「F」「M」の処理でヒドロキシルラジカル (hydroxyl radical) (・OH)という高反応性の活性酸素が生成される場合があると考えられている。この生成が温度がきわめて敏感である。
【0036】
それで、たとえば、機能水製造にて、その機能水を人体に作用させる場合と単細胞生物に作用させる場合とでは、・OHの生成をよしとするか、生成を避けるべきか、の相違が生じる。
【0037】
前者の場合、つまり、人体などのようにラジカル・スカベンジャーを生合成できて、・OHに対して耐性のある大きな生物体が対象の場合なら、比較的多くの・OHを機能水に含有させてかまわない。
【0038】
一方、後者の場合、つまり、サンゴなどの小型生物や大腸菌のような単細胞生物では、ラジカル・スカベンジャーを持たず、・OHに対して無防備である。ゆえに、その細胞膜が・OHで損傷してしまい、これらを培養する場合では不適である。
【0039】
もちろん、単細胞生物を殺滅対象にする場合は問題はないが、いずれにせよ、用途ごとに適切なる制御温度範囲を実験的に決定して、温度がきわめて敏感な・OH生成をコントロールしなければならない。
【0040】
いまのところ、・OH生成の温度依存機序が未解明であるし、かつまた、対象生物の・OH耐性も定量化されてはいないので、温度制御範囲は個別の対象生物にて温度をパラメータとしてふった実験から実験的(経験的)に決定せざるをえない。
【0041】
以上が、・OH生成という観点から見た温度の最適化である。これに対して、対象生物そのものが温度に対して敏感であること、も液体の温度がきわめて重要な要素であることの別の理由である。
【0042】
すなわちこの観点から、「F」「M」の処理で最終段に位置する処理での温度を、温度に対して敏感な対象生物にフィットさせるべきである。
【0043】
たとえば、サンゴなどの小型生物の場合、22から27℃程度の温度範囲で0.2度の温度差異で生体反応が異なる。逆に言えば、0.2度の温度差異が望まない生体ショックの原因となるのである。
【0044】
よって、「F」「M」の処理で最終段に位置する処理にて、その前段階の処理とは違う対象生物に適切な温度の範囲となるように液体温度コントロールして、対象生物に生体ショックを与えることをなくすことが重要である。
【0045】
当然同様に、「FR」「MR」の液体貯留槽にて、対象生物を培養する場合においても、「FR」「MR」の液体貯留槽の温度は、対象生物に適切な温度の範囲となるように液体温度コントロールして、対象生物に生体ショックを与えることをなくすことが重要である。
【0046】
対象生物に適切な温度範囲が決定されたのちに、以下の工夫を加味することも有効である。すなわち、「F」のII価III価鉄塩を含む粒体表面との接触処理では温度の発熱・吸熱は生じないが、「M」の微小気泡発生処理で、本発明で例示された加圧開放型のマイクロバブル発生器を用いた場合、気体の断熱圧縮と開放過程で発熱が起こる。(特許文献25参照)
この発熱エネルギーによる液体貯留槽MRの温度エネルギーを、必要に応じて液体貯留槽FRに移送して有効である場合には、ヒートパイプなどでMRとFRとを熱的に結合する工夫を加味してもよい。
【0047】
以上の「温度制御」に関して、図6の構成に付加した実施態様の模式図を図11に例示する。
【0048】
<反応促進剤・原料剤の付加投入> 同様に反応の促進剤、または、反応原料剤、たとえばフェントン反応の反応原料である「過酸化水素」の供給手段、その他反応促進剤・反応原料剤の供給手段を組み合わせてもよい。これを、図5の構成に付加した実施態様として図12に例示する。
【0049】
当然のことながら、触媒の併用も有効である。たとえば、液体貯留槽FRにて、ある反応を促進させ、反応生成物質後段Fに流送して種々の利用に応用する場合、図12中に図示するように液体貯留槽FR内に触媒を配設するのが好適である。
【0050】
フェントン反応は、II価鉄イオンの存在下でヒドロキシルラジカル (hydroxyl radical) (・OH)を生成する反応であって、有害な有機塩素化合物などの分解困難な物質の分解などへ利用されている。(特許文献26参照)
図12の構成の場合、フェントン反応で生成されたヒドロキシルラジカルが高反応性であるため、液体貯留槽FRがヒドロキシルラジカルの反応場になる。
【0051】
フェントン反応で生成されるヒドロキシルラジカルを本発明装置の外部でなす場合には、図13に示すように、吐出手段(図13の場合にはM15)の近傍に過酸化水素を供給する構成が好適である。
【0052】
<撹拌の付加> さらにまた、液体処理にて液体の撹拌混合も重要な操作であるので、通常のミリスケール以上のサイズのバブリング手段を液体貯留槽MRやFRにさらに具備すること、あるいは、撹拌羽根やマグネティック・スティアラなどの物理的撹拌手段を液体貯留槽MRやFRにさらに具備することは好適である。
【0053】
以上のごとく、本発明では公知のII価III価鉄塩を利用した処理と微小気泡生成との双方を「連続的に順次に」液体に施すことができる。
【0054】
次節の試験実施例に示すように、かかる本発明装置の処理においては、液体に対し公知2つの処理単独になしたもの、および、2つの処理単独になした液体の混合液体よりも、さらに大きな効果を有する機能付与ができるので有用である。
【発明の効果】
【0055】
本発明の効果の試験の実施例を図10に示す。(図10とその図面の簡単な説明参照)
本発明の液体処理装置によって処理した液体、特に水(蒸留水)を源水として処理した液体について、油脂の洗浄除去、人体に与える温浴効果、その他の効果を他の処理と比較した。その結果すべてにおいて、本発明の装置による被処理液体が他を圧倒する大きな効果が認められた。
【0056】
すなわち、本発明の装置では、ラジカルの発生量その他において、II価III価鉄塩を極微量含有させること、および、微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)にて微小気泡を含有させることにおいて、相乗効果が生起すると考えられる。
【0057】
また、II価III価鉄塩を含むセラミックスなどの粒体表面が、微小気泡によって洗浄されることも相乗効果を大きくしているものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】II価III価鉄塩を含むセラミックスなどの粒体F1を充填したカラムであって液体を内部導入し液体とF1表面とを接触させる容器F2、および、F1を充填した金属網など外部液体とF1表面とが接触可能な容器F3の説明図である。なお、図中の化学式は、II価III価鉄塩(塩化物)を示す。化学式中の「m」「n」は任意の自然数である。
【図2】液体を吸引し該液体中に微小気泡を生成し吐出する微小気泡発生器(マイクロバブル発生器)「M」の一例の模式図。ナノバブル発生は、液体M1にイオンが多量に含有する場合に安定化する傾向にあるので、この図の構成の「次プロセス」で放電や電解プロセス装置と結合して構成してもよい。もちろん、液体貯留槽MR内部に電極を配設して放電や電解プロセスを行うようにしてもよい。
【図3】本発明の請求項1の一の実施態様を示す模式図であって、II価III価鉄塩を含む粒体表面と液体とを接触させるII価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器F2、および、液体を吸引し該液体中に微小気泡を生成し吐出する微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)Mを有し、前記容器F2の液体吐出手段から前記発生器Mの液体吸引手段に至る液体の流送系を具備して、液体源の供給系LSから供給される処理対象液体をF2の内部からMの内部に順次通過してM15から吐出する構成である。
【図4】本発明の請求項2および請求項3の一の実施態様を示す模式図であって、微小気泡発生器Mの液体吐出手段M15を介し結合してMが生成する微小気泡を含む液体を貯留保持する貯留容器MRを具備し、該貯留容器「MR」と前記粒体を保持する容器「F」とが、該容器「F」の液体導入手段を介した液体流送系で結合されている構成の例図である。
【図5】本発明の請求項4の一の実施態様を示す模式図であって、前記II価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器F3を内包してII価III価鉄塩を含む粒体表面と接触した液体を貯留保持する貯留容器FRを具備した構成の例図である。
【図6】図5の態様に、さらに請求項5の態様を付加した実施態様の液体の処理装置の例図、すなわち、貯留容器FRと微小気泡発生器Mとが、該微小気泡発生器Mの液体吸引手段を介した液体流送系で結合されている構成の例図である。
【図7】本発明の請求項1の別の実施態様を示す模式図であって、微小気泡発生器Mの液体吐出手段から容器F2の液体導入手段に至る液体の流送系を具備して、液体源の供給系LSから供給される処理対象液体をMの内部からF2の内部に順次通過してF2の吐出手段から吐出する構成の例図である。
【図8】図7の構成に、さらに請求項2および請求項3の態様を付加した実施態様の液体の処理装置の例図、すなわち、微小気泡発生器Mの液体吐出手段M15を介し結合してMが生成する微小気泡を含む液体を貯留保持する貯留容器MRをさらに具備し、該貯留容器「MR」と前記粒体を保持する容器「F」とが、該容器「F」の液体導入手段を介した液体流送系で結合されている構成の例図である。
【図9】図8の構成にて、請求項4の態様を付加した例図、すなわち、II価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器F3を内包してII価III価鉄塩を含む粒体表面と接触した液体を貯留保持する貯留容器FRを具備した構成の例図である。
【図10】蒸留水を液体として用いた本発明の効果の試験の実施例。すなわち蒸留水に各方式の処理を施した。(以下被処理液体原料は蒸留水)Mにて微小気泡(マイクロバブルまたはナノバブル)を含有させた液体「ML」、II価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器Fを通過させた液体「FL」、前記「ML」と「FL」の容量50−50%混合液「MFL」、「F」の内部から「M」の内部に順次通過させた液体「F→M」、「M」の内部から「F」の内部に順次通過させた液体「M→F」にて種々の比較を試行した結果である。結果は定性的な官能試験に依拠するものであって、「+」が多いほど効果が大である。試験は、1)タオル地の布の油脂汚れを各種液体で洗浄したときの汚れ墜ちの程度、2)各種液体を37℃に加熱して足湯浸漬した人体における上腕部血流量の上昇の大きさ、3)各種液体を37℃に加熱して全身浸漬したの人体における直腸温の温度上昇の大きさ、4)カイワレ大根の種子を各種液体を浸した不織布上に播種して発芽成長の程度を目視で評価、5)大腸菌(E. coli)培地100シャーレについて、各種液体を同量滴下。その後24時間後のコロニー状態で大腸菌に対する殺菌効果を評価、6)密閉容器中にてメタンチオール (methanethiol) 1マイクロモルを1マイクロリットル滴下した布に、各種液体を同量滴下、120分後に検知管で残留濃度を測定し、悪臭物質の分解能力を評価。これら1)から6)のすべてにおいて、本発明の装置による「M→F」と「F→M」の被処理液体が他を圧倒する大きな効果が認められた。
【図11】図6の構成に処理対象液体の温度を制御する手段を付加した実施態様を例示した模式図。
【図12】図5の構成に反応促進剤・反応原料剤を供給する手段、および、反応触媒を付加した実施態様を例示した模式図。
【図13】図5の構成にて、本発明装置の系外部にフェントン反応で生成されるヒドロキシルラジカルの反応対象がある場合の実施態様を例示した模式図。
【符号の説明】
【0059】
F II価III価鉄塩を含むセラミックスなどの粒体F1を保持する容器
F1 II価III価鉄塩を含むセラミックスなどの粒体
F2 F1を保持する容器Fであり、F1を充填したカラムであって液体をカラム導入孔から導入し液体とF1表面とを接触させて導出孔から出す容器
F3 F1を保持する容器Fであり、F1を充填した金属網であって外部液体が金属網を介してF1表面とが拡散接触が可能な容器
FR 液体貯留槽
LS 液体源の供給系
M 微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)
M1 液体
M4 気体吸引手段
M10 渦流ポンプ
M11 渦流ポンプの内蔵インペラ
M14 液体吸引手段(の先端部分)
M15 液体吐出手段(の先端部分)であって、特許文献4などに開示されたノズル構造(オリフィスや網目などの液体圧力加圧手段および流れの方向を急変させる衝突部材等)を有する。
MR 液体貯留槽
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば機能水製造装置に関するものであって、液体に洗浄・殺菌効果を与えるための処理、液体に生物や細胞に対する活性化効果を付与する処理等を実行する装置に関する。被処理液体は液体一般であって、機能水であれば水、そのほかアルコール、有機溶媒、無機溶媒である。
【0002】
本発明は、公知の2つの液体処理を組み合わせて相乗効果を得るものである。
【0003】
その液体処理の一方は、液体とII価III価鉄塩を含む粒体とを接触させる処理、他方は、液体中に微小気泡を生成する処理である。
【0004】
前者の、液体とII価III価鉄塩を含む粒体とを接触させる処理とその効果については、特許文献1から特許文献6に開示されている。
【0005】
すなわち(図1参照)、II価III価鉄塩を含むセラミックスなどの粒体F1を充填したカラムで液体を内部導入し液体とF1表面とを接触させる容器F2、あるいは、F1を充填した金属網など外部液体とF1表面とが接触可能な容器F3を用いた処理であり、かかる処理でII価III価鉄塩のイオン化物が液体中に極微量溶出して、液体を機能性飲料、肥料、植物成長補助剤などとして利用する。
【0006】
図1中に、II価III価鉄塩(塩化物)の化学式も示した。化学式中の「m」「n」は任意の自然数である。
【0007】
一方後者の、液体中に微小気泡を生成する処理の、微小気泡とは「マイクロバブル」、「ナノバブル」、「マイクロナノバブル」と呼称されるものであって、その生成法は多様である。
【0008】
超音波や電磁波による生成法その他が研究中であるが、コストパフォーマンスの点では加圧開放型や機械的キャビテーションによるものが優れている。これらはモータで回転する部材による回転エネルギーを用いる点で、超音波や電磁波による生成法に比べて単純で効率も悪くないからである。
【0009】
典型的な加圧開放型のマイクロバブル発生器の模式図を図2に示す。図2のM14で液体を吸引する。吸引のための圧力低下は渦流ポンプM10の作用である。逆に吐出側では、M15の内部に、図では省略せる特許文献4などに開示された加圧手段(オリフィスや網目などの液体圧力加圧手段および流れの方向を急変させる衝突部材等)が配設されているため、3−5気圧に高圧化する。
【0010】
この高圧によって、M4で吸引された気体が過飽和で液体中に溶け込んだ状態で吐出され、物理的な刺激でマイクロバブルを生成する。
【0011】
また、ナノバブルはマイクロバブルをイオンリッチな液体中で安定化させることでつくられる、とされ電解や放電プロセスを付加した製法が提案されている。図2の構成の「次プロセス」で放電や電解プロセス装置と結合した構成でナノバブル生成させてもよい。もちろん、液体貯留槽MR内部に電極を配設して放電や電解プロセスを行うようにしてもよい。
【0012】
これらの製法は公知であり、マイクロバブルやナノバブル、それらの中間的なマイクロナノバブルを液体に混入させることで種々の効果が実験的に発見され、実際に利用されている。
【0013】
たとえば洗浄、殺菌、魚介類などの生育向上、生ものの保存、栄養成分の抽出などである。(特許文献8から特許文献25参照)
特許文献8は、本発明者のひとりが提案するマイクロバブル生成装置の改良改善である。これに先んじた特許文献9から特許文献25は、産業総合研究所の高橋ら、レオ研究所の千葉ら、によるナノバブル、マイクロナノバブルの生成法とその利用の開示で、これらを補足する公知文献として、非特許文献1から非特許文献3がある。
【0014】
また一方、ミネラル成分を溶出する粒の表面をマイクロバブルで洗浄して、効果を延命する技術が特許文献7に開示されている。本発明の効果の理由のひとつが、II価III価鉄塩を含むセラミックスなどの粒体表面が、微小気泡によって洗浄されることと考えられるので、引用しておく。
【0015】
本発明は、これらの公知技術をふまえ、2つの液体処理を組合わせて相乗効果を得るシステムを提案するものである。特許文献25と特許文献26は次節発明の開示にて引用する。
【特許文献1】特開平02−184387号公報「水改質活性剤」
【特許文献2】特開2000ー279959号公報「活性水の製造方法及び製造装置」
【特許文献3】特開平5−245481号公報「機能性飲料用水」
【特許文献4】特開平10−066982号公報「活性水」
【特許文献5】特開2003−321288号公報「有機質肥料」
【特許文献6】特開2004−217611号公報「植物成長補助剤」
【特許文献7】特願2007−000694号公報「雨水利用システム」
【特許文献8】特願2010−000569号公報「微小気泡粒径と微小気泡濃度が可変である微小気泡発生装置、該装置を利用した微小気泡発生装置の変更(スケールアップ/スケールダウン)設計方法」
【特許文献9】特開2009−131770号公報「二酸化炭素ナノバブル水の製造方法」
【特許文献10】特開2009−131769号公報「窒素ナノバブル水の製造方法」
【特許文献11】特開2009−084258号公報「ナノバブルを含む癌の治療又は予防のための薬剤 」
【特許文献12】特開2009−039600号公報「超微細気泡生成装置」
【特許文献13】特開2008−259456号公報「魚介類の保存方法」
【特許文献14】特開2008−237950号公報「水酸基ラジカルを含む水の製造方法および水酸基ラジカルを含む水」
【特許文献15】特開2008−093612号公報「反応活性種を含む水の製造方法および反応活性種を含む水」
【特許文献16】特開2008−093611号公報「極微小気泡を含む水の製造方法および極微小気泡を含む水」
【特許文献17】特開2008−063258号公報「組織保存液」
【特許文献18】特開2007−275089号公報「長期持続型オゾン水、長期持続型オゾン水を利用した環境殺菌・脱臭浄化方法 」
【特許文献19】特開2006−223239号公報「酸素ナノバブルを利用した魚介類焙焼有効成分抽出方法およびその抽出方法によって得られた有効成分を添加した魚肉加工品素材」
【特許文献20】特開2005−246294号公報「酸素ナノバブル水およびその製造方法」
【特許文献21】特開2005−246293号公報「オゾン水およびその製造方法」
【特許文献22】特開2005−245817号公報「ナノバブルの製造方法」
【特許文献23】特開2005−110552号公報「加圧多層式マイクロオゾン殺菌・浄化・畜養殺菌システム」
【特許文献24】再表2005/030649号公報「微小気泡の圧壊」
【特許文献25】特願2009−265832号公報「液体中に微小気泡を生成して液体を発熱させる装置および方法」
【特許文献26】特公平06-083828号公報「有機塩素化合物含有水の処理方法及び装置」
【非特許文献1】平成17年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託調査研究 バイオ分野におけるナノバブル水の産業利用に関する調査 成果報告書 38−40「ナノバブル水を利用した生体組織の保存等に関する評価研究」
【非特許文献2】Hojo Y,et al.“Anti−inflammatory Property of Oxygen Nano−bubbles” Circulation Journal vol.70, supplement I,p276(第70回 日本循環器学会総会・学術集会)
【非特許文献3】平成17年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託調査研究 バイオ分野におけるナノバブル水の産業利用に関する調査 成果報告書 40−45「細胞の生理機能に対するナノバブル水の影響評価」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、液体とII価III価鉄塩を含む粒体とを接触させる処理、および、液体中に微小気泡を生成する処理、の2つの処理を組合わせて、それぞれ単独では得られない大きな効果を得ることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は(請求項1、図3参照)、液体を導入し該液体とII価III価鉄塩を含む粒体とを接触させた後に該液体を吐出する、II価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器「F」、および、液体を吸引し該液体中に微小気泡を生成し該液体を吐出する、微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)「M」を有し、前記粒体を保持する容器「F」の液体吐出手段から前記微小気泡発生器「M」の液体吸引手段に至る液体流送系、または/および、前記微小気泡発生器「M」の液体吐出手段から前記粒体を保持する容器「F」の液体導入手段に至る液体流送系を具備して、処理対象液体を「F」の内部から「M」の内部に順次通過させる、または、処理対象液体を「M」の内部から「F」の内部に順次通過させることを特徴とする液体の処理装置である。
【0018】
図3は、本発明の請求項1の一の実施態様を示す模式図であって、II価III価鉄塩を含む粒体表面と液体とを接触させるII価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器F2、および、液体を吸引し該液体中に微小気泡を生成し吐出する微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)Mを有し、前記容器F2の液体吐出手段から前記発生器Mの液体吸引手段に至る液体の流送系を具備して、液体源の供給系LSから供給される処理対象液体をF2の内部からMの内部に順次通過してM15から吐出する構成である。
【0019】
また、本発明の一態様として(請求項2、図4参照)、微小気泡発生器「M」が生成する微小気泡を含む液体を貯留保持する貯留容器「MR」が、該発生器「M」の液体吐出手段を介して配設されていてもよい。
【0020】
また、本発明の他の態様として(請求項3、図4参照)、貯留容器「MR」と前記粒体を保持する容器「F」とが、該容器「F」の液体導入手段を介した液体流送系で結合されていてもよい。
【0021】
図4は、本発明の請求項2および請求項3の一の実施態様を示す模式図であって、微小気泡発生器Mの液体吐出手段M15を介し結合してMが生成する微小気泡を含む液体を貯留保持する貯留容器MRを具備し、該貯留容器「MR」と前記粒体を保持する容器「F」とが、該容器「F」の液体導入手段を介した液体流送系で結合されている構成の例図である。
【0022】
この構成で液体は循環され順次連続的に「F」と「M」の処理を長時間に渡って効率的にうけるので好適である。
【0023】
また、本発明のさらに他の態様として(請求項4、図5参照)、容器「F」を内包し、II価III価鉄塩を含む粒体表面と接触した液体を貯留保持する貯留容器「FR」をさらに具備してもよい。
【0024】
図5は、本発明の請求項4の一の実施態様を示す模式図であって、前記II価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器F3を内包してII価III価鉄塩を含む粒体表面と接触した液体を貯留保持する貯留容器FRを具備した構成の例図である。
【0025】
また、本発明のさらに他の態様として(請求項5、図6参照)、貯留容器「FR」と前記微小気泡発生器「M」とが、該微小気泡発生器「M」の液体吸引手段を介した液体流送系で結合されていてもよい。
【0026】
図6は、図5の態様に、さらに請求項5の態様を付加した実施態様の液体の処理装置の例図、すなわち、貯留容器FRと微小気泡発生器Mとが、該微小気泡発生器Mの液体吸引手段を介した液体流送系で結合されている構成の例図である。
【0027】
この構成で液体は循環され順次連続的に「M」と「F」の処理を長時間に渡って効率的にうけるので好適である。
【0028】
また、本発明の請求項1の別の実施態様を示す模式図を図7に示す。すなわち、微小気泡発生器Mの液体吐出手段M15を介し結合してMが生成する微小気泡を含む液体を貯留保持する貯留容器MRをさらに具備し、該貯留容器「MR」と前記粒体を保持する容器「F」とが、該容器「F」の液体導入手段を介した液体流送系で結合されている態様であって、この態様も好適である。
【0029】
図8は、図7の構成に、さらに請求項2および請求項3の態様を付加した実施態様の液体の処理装置の例図、すなわち、微小気泡発生器Mの液体吐出手段M15を介し結合してMが生成する微小気泡を含む液体を貯留保持する貯留容器MRをさらに具備し、該貯留容器「MR」と前記粒体を保持する容器「F」とが、該容器「F」の液体導入手段を介した液体流送系で結合されている構成の例図である。
【0030】
この構成でも前記同様に液体は循環され順次連続的に「M」と「F」の処理を長時間に渡って効率的にうけるので好適である。
【0031】
また、図8の構成にさらに請求項4の態様を付加した例図を図9に示す。すなわち、II価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器F3を内包してII価III価鉄塩を含む粒体表面と接触した液体を貯留保持する貯留容器FRを具備した態様であって、この態様も好適である。
【0032】
さらにまた、液体処理にて液体の温度がきわめて重要な要素であるので、液体温度の制御調整手段を、液体貯留槽MRやFRに温度センサーと共にさらに具備することは好適である。
【0033】
<温度制御の付加> ここで、液体の温度の最適範囲は、「F」のII価III価鉄塩を含む粒体表面との接触処理と、「M」の微小気泡発生処理とで異なる。
【0034】
この温度の最適範囲について、以下に説明する。
【0035】
すなわち、「F」「M」の処理でヒドロキシルラジカル (hydroxyl radical) (・OH)という高反応性の活性酸素が生成される場合があると考えられている。この生成が温度がきわめて敏感である。
【0036】
それで、たとえば、機能水製造にて、その機能水を人体に作用させる場合と単細胞生物に作用させる場合とでは、・OHの生成をよしとするか、生成を避けるべきか、の相違が生じる。
【0037】
前者の場合、つまり、人体などのようにラジカル・スカベンジャーを生合成できて、・OHに対して耐性のある大きな生物体が対象の場合なら、比較的多くの・OHを機能水に含有させてかまわない。
【0038】
一方、後者の場合、つまり、サンゴなどの小型生物や大腸菌のような単細胞生物では、ラジカル・スカベンジャーを持たず、・OHに対して無防備である。ゆえに、その細胞膜が・OHで損傷してしまい、これらを培養する場合では不適である。
【0039】
もちろん、単細胞生物を殺滅対象にする場合は問題はないが、いずれにせよ、用途ごとに適切なる制御温度範囲を実験的に決定して、温度がきわめて敏感な・OH生成をコントロールしなければならない。
【0040】
いまのところ、・OH生成の温度依存機序が未解明であるし、かつまた、対象生物の・OH耐性も定量化されてはいないので、温度制御範囲は個別の対象生物にて温度をパラメータとしてふった実験から実験的(経験的)に決定せざるをえない。
【0041】
以上が、・OH生成という観点から見た温度の最適化である。これに対して、対象生物そのものが温度に対して敏感であること、も液体の温度がきわめて重要な要素であることの別の理由である。
【0042】
すなわちこの観点から、「F」「M」の処理で最終段に位置する処理での温度を、温度に対して敏感な対象生物にフィットさせるべきである。
【0043】
たとえば、サンゴなどの小型生物の場合、22から27℃程度の温度範囲で0.2度の温度差異で生体反応が異なる。逆に言えば、0.2度の温度差異が望まない生体ショックの原因となるのである。
【0044】
よって、「F」「M」の処理で最終段に位置する処理にて、その前段階の処理とは違う対象生物に適切な温度の範囲となるように液体温度コントロールして、対象生物に生体ショックを与えることをなくすことが重要である。
【0045】
当然同様に、「FR」「MR」の液体貯留槽にて、対象生物を培養する場合においても、「FR」「MR」の液体貯留槽の温度は、対象生物に適切な温度の範囲となるように液体温度コントロールして、対象生物に生体ショックを与えることをなくすことが重要である。
【0046】
対象生物に適切な温度範囲が決定されたのちに、以下の工夫を加味することも有効である。すなわち、「F」のII価III価鉄塩を含む粒体表面との接触処理では温度の発熱・吸熱は生じないが、「M」の微小気泡発生処理で、本発明で例示された加圧開放型のマイクロバブル発生器を用いた場合、気体の断熱圧縮と開放過程で発熱が起こる。(特許文献25参照)
この発熱エネルギーによる液体貯留槽MRの温度エネルギーを、必要に応じて液体貯留槽FRに移送して有効である場合には、ヒートパイプなどでMRとFRとを熱的に結合する工夫を加味してもよい。
【0047】
以上の「温度制御」に関して、図6の構成に付加した実施態様の模式図を図11に例示する。
【0048】
<反応促進剤・原料剤の付加投入> 同様に反応の促進剤、または、反応原料剤、たとえばフェントン反応の反応原料である「過酸化水素」の供給手段、その他反応促進剤・反応原料剤の供給手段を組み合わせてもよい。これを、図5の構成に付加した実施態様として図12に例示する。
【0049】
当然のことながら、触媒の併用も有効である。たとえば、液体貯留槽FRにて、ある反応を促進させ、反応生成物質後段Fに流送して種々の利用に応用する場合、図12中に図示するように液体貯留槽FR内に触媒を配設するのが好適である。
【0050】
フェントン反応は、II価鉄イオンの存在下でヒドロキシルラジカル (hydroxyl radical) (・OH)を生成する反応であって、有害な有機塩素化合物などの分解困難な物質の分解などへ利用されている。(特許文献26参照)
図12の構成の場合、フェントン反応で生成されたヒドロキシルラジカルが高反応性であるため、液体貯留槽FRがヒドロキシルラジカルの反応場になる。
【0051】
フェントン反応で生成されるヒドロキシルラジカルを本発明装置の外部でなす場合には、図13に示すように、吐出手段(図13の場合にはM15)の近傍に過酸化水素を供給する構成が好適である。
【0052】
<撹拌の付加> さらにまた、液体処理にて液体の撹拌混合も重要な操作であるので、通常のミリスケール以上のサイズのバブリング手段を液体貯留槽MRやFRにさらに具備すること、あるいは、撹拌羽根やマグネティック・スティアラなどの物理的撹拌手段を液体貯留槽MRやFRにさらに具備することは好適である。
【0053】
以上のごとく、本発明では公知のII価III価鉄塩を利用した処理と微小気泡生成との双方を「連続的に順次に」液体に施すことができる。
【0054】
次節の試験実施例に示すように、かかる本発明装置の処理においては、液体に対し公知2つの処理単独になしたもの、および、2つの処理単独になした液体の混合液体よりも、さらに大きな効果を有する機能付与ができるので有用である。
【発明の効果】
【0055】
本発明の効果の試験の実施例を図10に示す。(図10とその図面の簡単な説明参照)
本発明の液体処理装置によって処理した液体、特に水(蒸留水)を源水として処理した液体について、油脂の洗浄除去、人体に与える温浴効果、その他の効果を他の処理と比較した。その結果すべてにおいて、本発明の装置による被処理液体が他を圧倒する大きな効果が認められた。
【0056】
すなわち、本発明の装置では、ラジカルの発生量その他において、II価III価鉄塩を極微量含有させること、および、微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)にて微小気泡を含有させることにおいて、相乗効果が生起すると考えられる。
【0057】
また、II価III価鉄塩を含むセラミックスなどの粒体表面が、微小気泡によって洗浄されることも相乗効果を大きくしているものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】II価III価鉄塩を含むセラミックスなどの粒体F1を充填したカラムであって液体を内部導入し液体とF1表面とを接触させる容器F2、および、F1を充填した金属網など外部液体とF1表面とが接触可能な容器F3の説明図である。なお、図中の化学式は、II価III価鉄塩(塩化物)を示す。化学式中の「m」「n」は任意の自然数である。
【図2】液体を吸引し該液体中に微小気泡を生成し吐出する微小気泡発生器(マイクロバブル発生器)「M」の一例の模式図。ナノバブル発生は、液体M1にイオンが多量に含有する場合に安定化する傾向にあるので、この図の構成の「次プロセス」で放電や電解プロセス装置と結合して構成してもよい。もちろん、液体貯留槽MR内部に電極を配設して放電や電解プロセスを行うようにしてもよい。
【図3】本発明の請求項1の一の実施態様を示す模式図であって、II価III価鉄塩を含む粒体表面と液体とを接触させるII価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器F2、および、液体を吸引し該液体中に微小気泡を生成し吐出する微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)Mを有し、前記容器F2の液体吐出手段から前記発生器Mの液体吸引手段に至る液体の流送系を具備して、液体源の供給系LSから供給される処理対象液体をF2の内部からMの内部に順次通過してM15から吐出する構成である。
【図4】本発明の請求項2および請求項3の一の実施態様を示す模式図であって、微小気泡発生器Mの液体吐出手段M15を介し結合してMが生成する微小気泡を含む液体を貯留保持する貯留容器MRを具備し、該貯留容器「MR」と前記粒体を保持する容器「F」とが、該容器「F」の液体導入手段を介した液体流送系で結合されている構成の例図である。
【図5】本発明の請求項4の一の実施態様を示す模式図であって、前記II価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器F3を内包してII価III価鉄塩を含む粒体表面と接触した液体を貯留保持する貯留容器FRを具備した構成の例図である。
【図6】図5の態様に、さらに請求項5の態様を付加した実施態様の液体の処理装置の例図、すなわち、貯留容器FRと微小気泡発生器Mとが、該微小気泡発生器Mの液体吸引手段を介した液体流送系で結合されている構成の例図である。
【図7】本発明の請求項1の別の実施態様を示す模式図であって、微小気泡発生器Mの液体吐出手段から容器F2の液体導入手段に至る液体の流送系を具備して、液体源の供給系LSから供給される処理対象液体をMの内部からF2の内部に順次通過してF2の吐出手段から吐出する構成の例図である。
【図8】図7の構成に、さらに請求項2および請求項3の態様を付加した実施態様の液体の処理装置の例図、すなわち、微小気泡発生器Mの液体吐出手段M15を介し結合してMが生成する微小気泡を含む液体を貯留保持する貯留容器MRをさらに具備し、該貯留容器「MR」と前記粒体を保持する容器「F」とが、該容器「F」の液体導入手段を介した液体流送系で結合されている構成の例図である。
【図9】図8の構成にて、請求項4の態様を付加した例図、すなわち、II価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器F3を内包してII価III価鉄塩を含む粒体表面と接触した液体を貯留保持する貯留容器FRを具備した構成の例図である。
【図10】蒸留水を液体として用いた本発明の効果の試験の実施例。すなわち蒸留水に各方式の処理を施した。(以下被処理液体原料は蒸留水)Mにて微小気泡(マイクロバブルまたはナノバブル)を含有させた液体「ML」、II価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器Fを通過させた液体「FL」、前記「ML」と「FL」の容量50−50%混合液「MFL」、「F」の内部から「M」の内部に順次通過させた液体「F→M」、「M」の内部から「F」の内部に順次通過させた液体「M→F」にて種々の比較を試行した結果である。結果は定性的な官能試験に依拠するものであって、「+」が多いほど効果が大である。試験は、1)タオル地の布の油脂汚れを各種液体で洗浄したときの汚れ墜ちの程度、2)各種液体を37℃に加熱して足湯浸漬した人体における上腕部血流量の上昇の大きさ、3)各種液体を37℃に加熱して全身浸漬したの人体における直腸温の温度上昇の大きさ、4)カイワレ大根の種子を各種液体を浸した不織布上に播種して発芽成長の程度を目視で評価、5)大腸菌(E. coli)培地100シャーレについて、各種液体を同量滴下。その後24時間後のコロニー状態で大腸菌に対する殺菌効果を評価、6)密閉容器中にてメタンチオール (methanethiol) 1マイクロモルを1マイクロリットル滴下した布に、各種液体を同量滴下、120分後に検知管で残留濃度を測定し、悪臭物質の分解能力を評価。これら1)から6)のすべてにおいて、本発明の装置による「M→F」と「F→M」の被処理液体が他を圧倒する大きな効果が認められた。
【図11】図6の構成に処理対象液体の温度を制御する手段を付加した実施態様を例示した模式図。
【図12】図5の構成に反応促進剤・反応原料剤を供給する手段、および、反応触媒を付加した実施態様を例示した模式図。
【図13】図5の構成にて、本発明装置の系外部にフェントン反応で生成されるヒドロキシルラジカルの反応対象がある場合の実施態様を例示した模式図。
【符号の説明】
【0059】
F II価III価鉄塩を含むセラミックスなどの粒体F1を保持する容器
F1 II価III価鉄塩を含むセラミックスなどの粒体
F2 F1を保持する容器Fであり、F1を充填したカラムであって液体をカラム導入孔から導入し液体とF1表面とを接触させて導出孔から出す容器
F3 F1を保持する容器Fであり、F1を充填した金属網であって外部液体が金属網を介してF1表面とが拡散接触が可能な容器
FR 液体貯留槽
LS 液体源の供給系
M 微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)
M1 液体
M4 気体吸引手段
M10 渦流ポンプ
M11 渦流ポンプの内蔵インペラ
M14 液体吸引手段(の先端部分)
M15 液体吐出手段(の先端部分)であって、特許文献4などに開示されたノズル構造(オリフィスや網目などの液体圧力加圧手段および流れの方向を急変させる衝突部材等)を有する。
MR 液体貯留槽
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を導入し該液体とII価III価鉄塩を含む粒体とを接触させた後に該液体を吐出する、II価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器「F」、および、
液体を吸引し該液体中に微小気泡を生成し該液体を吐出する、微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)「M」を有し、
前記粒体を保持する容器「F」の液体吐出手段から前記微小気泡発生器「M」の液体吸引手段に至る液体流送系、または/および、
前記微小気泡発生器「M」の液体吐出手段から前記粒体を保持する容器「F」の液体導入手段に至る液体流送系を具備して、
処理対象液体を「F」の内部から「M」の内部に順次通過させる、または、
処理対象液体を「M」の内部から「F」の内部に順次通過させることを特徴とする液体の処理装置。
【請求項2】
請求項1の液体の処理装置において、
前記微小気泡発生器「M」が生成する微小気泡を含む液体を貯留保持する貯留容器「MR」が、
該発生器「M」の液体吐出手段を介して配設されている液体の処理装置。
【請求項3】
請求項2の液体の処理装置において、
前記貯留容器「MR」と前記粒体を保持する容器「F」とが、
該容器「F」の液体導入手段を介した液体流送系で結合されている液体の処理装置。
【請求項4】
請求項1の液体の処理装置において、
前記容器「F」を内包し、II価III価鉄塩を含む粒体表面と接触した液体を貯留保持する貯留容器「FR」をさらに具備した液体の処理装置。
【請求項5】
請求項4の液体の処理装置において、
前記貯留容器「FR」と前記微小気泡発生器「M」とが、
該微小気泡発生器「M」の液体吸引手段を介した液体流送系で結合されている液体の処理装置。
【請求項1】
液体を導入し該液体とII価III価鉄塩を含む粒体とを接触させた後に該液体を吐出する、II価III価鉄塩を含む粒体を保持する容器「F」、および、
液体を吸引し該液体中に微小気泡を生成し該液体を吐出する、微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)「M」を有し、
前記粒体を保持する容器「F」の液体吐出手段から前記微小気泡発生器「M」の液体吸引手段に至る液体流送系、または/および、
前記微小気泡発生器「M」の液体吐出手段から前記粒体を保持する容器「F」の液体導入手段に至る液体流送系を具備して、
処理対象液体を「F」の内部から「M」の内部に順次通過させる、または、
処理対象液体を「M」の内部から「F」の内部に順次通過させることを特徴とする液体の処理装置。
【請求項2】
請求項1の液体の処理装置において、
前記微小気泡発生器「M」が生成する微小気泡を含む液体を貯留保持する貯留容器「MR」が、
該発生器「M」の液体吐出手段を介して配設されている液体の処理装置。
【請求項3】
請求項2の液体の処理装置において、
前記貯留容器「MR」と前記粒体を保持する容器「F」とが、
該容器「F」の液体導入手段を介した液体流送系で結合されている液体の処理装置。
【請求項4】
請求項1の液体の処理装置において、
前記容器「F」を内包し、II価III価鉄塩を含む粒体表面と接触した液体を貯留保持する貯留容器「FR」をさらに具備した液体の処理装置。
【請求項5】
請求項4の液体の処理装置において、
前記貯留容器「FR」と前記微小気泡発生器「M」とが、
該微小気泡発生器「M」の液体吸引手段を介した液体流送系で結合されている液体の処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−167634(P2011−167634A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33783(P2010−33783)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(310003740)
【出願人】(596174329)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(310003740)
【出願人】(596174329)
【Fターム(参考)】
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