説明

液体の分析方法及び装置

液体、特に血液の凝固状態を決定するための装置及び方法。該装置は、前記液体の量を保持するためのチャンバー(1)、該チャンバー内に配置した物体(2)及び磁気装置(4,5)を備え、該磁気装置は前記チャンバーと協働し、使用時に物体が非凝固液体を介してチャンバー内で前後に移動する磁場を提供するように配列される。該物体は、粒子以外であって、使用時の通常の運動方向と一般に直交する平面で測定した物体の断面積が、同一の平面におけるチャンバーの断面積の少なくとも半分でよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の凝固状態を決定する方法及び装置に関し、また、液体の凝固状態を決定するために液体中の物体の移動及び/又は位置を検出する少なくとも一つの磁場センサーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特に限定されないが、生物流体試料を分析して粘性の変化をもたらす止血障害を決定するための方法及び装置が開示されている。その実施例においては、該方法及び装置を用いて血液又は血漿の試料の凝固又はプロトロンビン時間(PT)を決定することができる。これを国際標準比(INR)として表すことができる。決定され得る他の止血障害としては、血小板凝集の程度、血餅形成及び/又は血餅融解の速度又は量、フィブリンクロット形成に必要な時間、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、活性化全血凝固時間(ACT)、プロテインC活性化時間(PCAT)、ラッセル蛇毒時間(RVVT)及びトロンビン時間(TT)の測定が挙げられる。
【0003】
生体における血液凝固、つまり血栓症は、世界中で主な死亡原因の一つである。心臓病や血管病に苦しむ人々や外科的処置を受けた患者は、生命にかかわる臨床症状をもたらし得る血餅を発症する危険性がある。かかる人々を、しばしばワルファリン又はアスピリン等の抗凝血剤又は抗凝固剤で治療する。しかし、血流中の抗凝固剤の量を適切なレベルに維持しなければならず、少な過ぎると望まれない凝固をもたらす一方、多過ぎると生命にかかわる結果を伴う出血をもたらす。その結果、血液又は血漿の凝固状態を評価するために、日常的な凝固スクリーニングテストが開発されてきた。
【0004】
実験室で用いるために、且つポイントオブケア検査(PCTA)として種々の装置が開発されてきた。これに加えて、患者が血液凝固を自宅で監視することができる、コアグチェックプラス(CoaguChek Plus)(登録商標)凝固計測器のような装置が開発されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施態様の目的は、血液凝固を監視するための代替装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の観点によれば、ある量の液体を保持するためのチャンバーと、該チャンバー内に配置した物体と、磁気装置とを備え、該磁気装置が前記チャンバーと協働し、使用時に前記物体が未凝固液体を介してチャンバー内を前後に移動する磁場を提供するために配列され、該物体が粒子以外である液体の凝固状態を決定するための装置を提供する。
【0007】
本発明の第二の観点によれば、ある量の液体を保持するためのチャンバーと、該チャンバー内に配置した物体と、磁気装置とを備え、該磁気装置が前記チャンバーと協働し、使用時に前記物体が未凝固液体を介してチャンバー内を前後に移動する磁場を提供するために配列され、使用時における通常の運動方向と一般に直交する平面で測定した物体の断面積が、同一の平面におけるチャンバーの断面積の少なくとも半分である液体の凝固状態を決定するための装置を提供する。
【0008】
本発明の第三の観点によれば、物体を含むチャンバーに液体試料を供給する工程と、該チャンバーに磁場を付与して前記物体を未凝固液体を介してチャンバー内で前後に移動させる工程とを備え、該物体が粒子以外である液体試料の凝固状態を決定するための方法を提供する。
【0009】
本発明の第四の観点によれば、物体を含むチャンバーに液体試料を供給する工程と、該チャンバーに磁場を付与して前記物体を未凝固液体を介してチャンバー内で前後に移動させる工程とを備え、使用時における通常の運動方向と一般に直交する平面で測定した物体の断面積が、同一の平面におけるチャンバーの断面積の少なくとも半分である液体試料の凝固状態を決定するための方法を提供する。
【0010】
本発明の第五の観点によれば、液体の凝固状態を決定するためにチャンバー内に配置した液体中の物体の移動及び/又は位置を検出する少なくとも一つの磁場センサーの使用方法を提供し、ここで該物体が磁場中に置かれた際に力を受ける材料からなり、該物体が粒子以外である。
【0011】
上記方法は、第一及び第二磁場を循環的に供給することを備えることができ、前記第一磁場によって物体が第一方向に移動し、前記第二磁場によって物体が第一方向と反対である第二方向に移動する。第一及び第二磁場を、異なる空間位置からか、又は同一の空間位置から与えることができる。各磁場を短パルスとして与えることが好ましく、短パルス間に無磁場の期間を有する。各パルス時間は、500ms未満でよく、一実施態様においては、10〜250msの間である。上記物体を0.1〜10Hzの周波数でチャンバー内で前後に移動させることができる。
【0012】
かかる磁場の大きさは、25mT未満であるのが好ましく、15mT未満であるのがより好ましく、10mT未満であるのが更に好ましい。
【0013】
チャンバー内の物体の移動及び/位置を検出する手段を提供することができる。かかる手段は、ホール効果センサー、磁気抵抗センサー、サーチコイル又は磁場の変化を検出するあらゆる他の手段を含むのが好ましい。一実施態様においては、二つ以上のセンサーを備え、各センサーがそれぞれのチャンバーに付随する。作動時にセンサーによって測定された磁場は、他のものの中で該センサーに対する物体の位置によって影響を受けることになる。すなわち、センサーの出力を利用して、チャンバー内の物体の位置及び/又は移動を決定することができる。また、センサーは、位置ではなく動きを検出する磁場の変化率に応答することができる。
【0014】
チャンバーは、適当な容積であればいずれでもよい。一実施態様においては、チャンバーが物体を含んだ場合のチャンバー内の自由容積が10μl未満であって、他の実施態様においては、5μl未満である。チャンバーは、好都合な形状であればいずれでもよい。一実施態様においては、チャンバーを装置から取り外し可能な使い捨て支持ストリップで形成する。毛管作用を含むあらゆる好都合な手段によって流体をチャンバーに投入することができる。チャンバーは、検査を行うことが可能となる適切な材料であるならいずれでもよく、非磁性の材料で構成してもよい。
【0015】
一実施態様においては、容器を満たすための充填装置は毛管を含む。他の実施態様において、充填装置はプランジャーを含む。上記装置は、二つ以上のチャンバーを備えることができる。チャンバーを二つ、三つ又はそれ以上の区画に分けてもよい。
【0016】
チャンバーを細長くすることができる。一実施態様においては、長さが3〜5mmの間である。チャンバーが任意の適切な断面、例えば、実質的に円形、長方形又は正方形を有し得る。チャンバーは、実質的に均一の断面が好ましい。
【0017】
物体を細長くすることができる。物体は、チャンバーの断面と実質的に同一の形状の断面を有し得る。この場合、断面において物体とチャンバーの内壁との間に少なくとも50ミクロンの間隙が存在するように、物体の大きさを合わせることが好ましい。該間隙は、300ミクロン未満とすることができる。使用時におけるチャンバー内での物体の対象とする運動方向に対して横断方向に取った物体の断面積は、対応するチャンバーの断面の少なくとも半分の面積でよい。チャンバー及び物体の長さは、該物体がチャンバー内を前後に少なくとも0.5mm移動し得るように選択することができる。一実施態様においては、物体がチャンバー内を前後に最大2mm移動することができる。物体は、チャンバー内に緊密な滑りばめを有してもよい。
【0018】
物体は、磁場中に置かれた際に力を受ける材料からなるのが好ましく、強磁性とすることができる。他には、常磁性である。更に他には、超常磁性である。物体が強磁性である場合、これは希土類磁石とすることができる。物体が強磁性である場合、常磁性体及び超常磁性体に比べて、低い外部磁場を付与してチャンバー内の物体を移動させることができる。
【0019】
一実施態様においては、チャンバーが単一の物体のみを含む。更に他には、チャンバーが二つ以上の物体を含む。
【0020】
分析すべき試料の投入に先立って凝固試薬をチャンバーに配置することができる。PT測定に適した試薬としては、トロンボレル S(登録商標)及びイノビン(登録商標)(デイド社製)並びにトロンボテスト(登録商標)(アクシスシールド社製)が挙げられる。
【0021】
二つ以上のチャンバー又は区画を用いる場合、夫々に配置された試薬は、凝固速度及び/又は凝固時間を変えるために異なるものでよい。代わりに、凝固試薬に依存しない凝固時間を更に測定できるように、区画又はチャンバーの一つに試薬がなくてもよい。
【0022】
更に代替として、区画の一つに、検査の時間枠内で凝固しないように試料の凝固を抑制する試薬が存在してもよい。
【0023】
磁気装置は、単一の電磁石を備え得る。代わりに、間隙を介した二つの電磁石を備えてもよい。電磁石を互いにチャンバーの両側に配置することができる。或いは、チャンバーの同じ側に配置してもよい。各電磁石は、ソレノイド、即ち、コイルを含むことができる。ソレノイド、即ち、コイルを実質的に同軸に配置してもよい。
【0024】
一実施態様においては、電磁石を直流で交互に作動させて一定の磁場を形成する。一方の磁石により形成した磁場の大きさが、他方より大きくてもよい。
【0025】
本発明の装置は、試料の投入から凝固を検出するまでの経過時間を測定するための回路を含むことができる。該装置は、マイクロプロセッサからなり得る制御手段を備えることができる。前記装置は、使用者に情報を表示するために作動するディスプレイを備えることができる。該装置は、凝固時間及び/又はINR値を表示することができる。
【0026】
本発明の装置は、チャンバーを加熱して分析される試料を所望の温度、例えば37℃で維持するための手段を備えることができる。
【0027】
本発明をより明瞭に理解し得るために、本発明の実施態様を、添付図面を参照した一例として以下に記載するものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1の装置は、測定部と、使用時に該測定部に差し込まれる個別の試料チャンバー1とを備える。
【0029】
この実施態様においては、試料チャンバー1を、以後ストリップと称する積層したスライド状の構造(図示せず)の範囲内に画成する。チャンバー1を画成する構造の材料は非磁性である。チャンバー1は、実質的に形状が長方形であり、内部に約4mmの長さと約1.2mmの幅を有する。チャンバー1は、実質的に立方体の希土類磁性体を含有する。該磁性体の幅は、チャンバーより狭い約200ミクロンで、その高さはチャンバーより低い約200ミクロンで、その長さはチャンバーより短い約1.5mmである。該磁性体2をその回転(長)軸に沿って磁化する。また、チャンバー1は、該チャンバー1の内面の周りに分布させた血液凝固用乾燥試薬3を含有する。適した凝固剤は、組換えヒト組織因子(イノビン(登録商標))である。
【0030】
毛管は、チャンバー1から離れたストリップ上の一点からチャンバー1まで延在する。使用時に、毛管の試料受入開口部に置かれた血液の試料が、毛管作用を受けて毛管に沿ってチャンバー1の中に流れる。磁性体2は、該チャンバーの容積の半分を超えて満たし、毛管作用によりチャンバーの充填を高める。
【0031】
測定部は、間隙を介してほぼ同軸の第一及び第二ソレノイド4,5を備える。ホール効果センサー6をソレノイド4,5の間に配置し、該ソレノイドの共通軸からずらすことで、試料チャンバー1をソレノイド間の同軸上に導入した場合、該試料チャンバー1に隣接して位置する。また、測定部1には、マイクロプロセッサ7を含む種々の関連した電気回路(特に図2を参照)が含まれる。また、該測定部は、電源(図示せず)、ディスプレイ8、分析すべき試料を加熱するための抵抗加熱素子9、及びセンサー6や各ソレノイド4,5にそれぞれ結合した増幅器10を備える。
【0032】
測定部は、図示されていないストリップ用支持体を有するため、ストリップを該支持体により拘束する場合、チャンバー1がソレノイド4,5の間でほぼそれらの軸上に位置する。この配置において、ホール効果磁場センサー6がチャンバーに極めて接近して位置する。
【0033】
また、抵抗加熱素子9は、ストリップを測定部1に差し込む場合、チャンバー1と結合するように位置させるので、チャンバー1内の試料を37℃の温度に加熱するように作動する。別の実施態様においては、抵抗加熱素子を設けていない。代わりに、チャンバー1内の試料に必要な加熱は、高周波交流で一つ又は両方のソレノイド4,5を駆動して交流磁場を発生し、チャンバー1内の磁性体2の誘導加熱を起こし、その結果、チャンバー1内のいずれの試料をも加熱することによって達成される。
【0034】
マイクロプロセッサ10は、特に、二つのソレノイド4,5への電流の供給をそれぞれの増幅器10によって制御するために作動する。
【0035】
ホール効果センサー6を、該センサーの出力をADC回路(図示せず)を経由してマイクロプロセッサに供給する増幅器10に接続する。
【0036】
使用時に使用者は測定部のスイッチを入れ、試料チャンバー1をソレノイド4,5の間に位置するように該チャンバー1を含有するストリップを差し込む。
【0037】
所要に応じて、マイクロプロセッサ8によってチャンバー1を約37℃の温度に加熱する。マイクロプロセッサは、ホール効果センサー6の出力の変化を決定し、これによりチャンバー1の温度を測定することができる。他の手法がもちろん可能で、加熱素子9の抵抗の測定又は別の熱センサーの用意が挙げられる。
【0038】
他の実施態様においては、チャンバーを37℃に加熱することは必要でない。試料の温度の知見を用いて本発明の装置により決定された時間を、基準となる37℃で用いた場合に得られる値に補正できるので、他の温度、例えば、低い温度を使用できる。一の実施態様においては、加熱を利用せずに、例えば、センサーにより温度を測定して、必要な補正を適用する。
【0039】
チャンバー1が望ましい温度である場合、使用者は、血液試料をチャンバー1中に置くようにする。同時にソレノイド4,5を交互に付勢して、磁性体2を約5〜10Hzの周波数でチャンバー1内で振動させる。これは、チャンバー1の迅速な充填を可能にするのに役立ち、チャンバー内を流れる血液を試薬3と混合する。この間に、ホール効果磁場センサー6の出力を監視する。血液の固有の磁化率によって、センサー6からの出力は、チャンバーが満たされるにつれて急速に上昇する。センサー6からの出力が安定した場合は、チャンバーの充填を停止することを示す。
【0040】
マイクロプロセッサ8は、出力の安定化を検出し、それに応じて測定順序を開始するようにタイマーをスタートさせる。この順序の間、マイクロプロセッサは、実質的に反対方向の交流磁場を形成するように重複のない方法でソレノイド4,5を交互に付勢し、ホール効果センサー6の出力を記録する。
【0041】
図2及び図3を参照すると、第一のソレノイド4を約25msの期間11の間付勢し、該ソレノイドにより生じた磁場を形成し、安定させる。次に、磁性成分は時間12の間往復運動して、次いで、マイクロプロセッサ8は、他方のソレノイド5が逆方向の電流で付勢する際に終了する約100msの持続期間の測定時間13の間にホール効果センサー6の出力を測定する前と同程度の期間待機して、その後、該処理を繰り返す。各ソレノイドを付勢すると、生じた磁場により磁性体2が付勢したソレノイドに向かうか又は離れるように推し進める力を受け、一方のソレノイドが力を一方向に働かせ、他方のソレノイドが反対方向に働かせる。チャンバーを液状の血液で満たした場合、付与した磁場により磁性体がチャンバー1の一端から他端を動き、血液が磁性体2とチャンバー1の内側との間の環状の間隙を介して磁性体2の一端から他端に流れる。このことは、チャンバーにおいて血液の乱流を起こし、血液及び凝固試薬を十分に混合するのを保持する。
【0042】
どちらのソレノイドも作動させないと、ホール効果センサーの出力はチャンバー1内の磁性体の位置に依存する。図3は、磁性体2がチャンバー1内を前後に移動する際の磁場センサー6の出力(付勢したソレノイドのセンサー出力への影響を無視する)を示す。
【0043】
チャンバー1中の血液が凝固し始めるにつれて、磁性体1が生成する血餅マトリクス内で拘束される。該磁性体は、チャンバー1内での移動を緩徐に且つ最終的に停止することになる。このことは、図5に示すように、ホール効果センサー6の出力の変化を低減し、次いで停止する効果を有する。
【0044】
センサー6の出力をマイクロプロセッサ8により分析して磁性体2の移動が止まる時を決定する。これは、種々の手法を用いて達成され得る。一実施態様においては、センサーの出力を、磁性成分が移動する度に方形波の出力を形成し、停止する時に定常出力を形成するコンパレーターに通す。このことは、その後、血餅点を与えると解釈され得る。他の実施態様においては、コイルの一つの付勢後の所定時間にセンサー6の出力値を記録し、その後のコイルの付勢による同等な値と比較する。磁性体をコイルにより移動させる間、監視したセンサー出力は実質的に一定のままである。磁性体が移動を停止した場合、出力は変化する可能性がある。
【0045】
磁性体2が移動を停止した場合は、試料が凝固したことを示す。タイマーを停止し、記録された経過時間が試料の凝固時間であり、該時間からチャンバー1内の凝固試薬の知見を用いてINR値をマイクロプロセッサ8により算出し、ソレノイドの作動を停止する。
【0046】
高いINRを測定することになる場合、ソレノイド4,5の付勢周波数及び/又はそれらが形成する磁場の大きさを低減するように、マイクロプロセッサ8を配置する。このことは、測定の精度を維持しながら、装置による所要電力の低下をもたらす。高いINR値に関係する周波数及び/又は磁場の強さの低減が、血餅が潜在的に弱い場合に重要な磁性体2による血餅形成の障害を減らす。図6は、2%と5%の誤差での測定について試料期間(磁性体2の移動期間)対測定したプロトロンビン時間をプロットした試料時間曲線を示す。
【0047】
凝固時間を決定することに加えて、装置は、磁性体2がチャンバー1の両端間の既知の距離を横切って往復運動する時間を測定することにより試料の粘度を測定することもできる。
【0048】
図7は、ソレノイド4,5を駆動する代替の方法を示す。この実施態様の場合、両方のソレノイドを一緒に駆動し、電流を逆向きにして磁性体をチャンバー内で前後に移動させる。両方のソレノイドを一緒に駆動することは、所定の駆動電流に対して形成される磁場を高め、図1の実施態様と比べて、装置の所要電力を低減する。
【0049】
図8は、装置の更なる実施態様を示す。ここで、試料チャンバー1を単一のソレノイド14と結合し、ホール効果磁場センサー6をチャンバー1の一端に隣接して配置する。ソレノイド14はチャンバー1の周囲に延在しているので、チャンバー1の大部分が該ソレノイド内に配置される。使用に際し、ソレノイドを図9に示すような反転流で駆動する。単一ソレノイドを用いる実施態様は、電力消費を低減することができ、二つのソレノイドを用いる実施態様に比べて小型にできる。
【0050】
有意義な結果を得るために、装置を較正しなければならない。該装置の自己較正は、単一又は複数のソレノイドによって形成された磁場中に配置され、各チャンバーに付随した磁場センサーを有する二つ以上のチャンバーを設けることにより行うことができる。この配列の場合、各チャンバーは、異なる量及び/又は異なる種類の凝固試薬を含有する。使用に際し、各チャンバーを血液試料で同時に満たし、測定順序を開始する。次に、各チャンバー中の磁性体が移動を停止する相対時間を記録する。各チャンバーの凝固試薬の種類と量から分かった各チャンバーの期待された相対凝固時間の知見を用いて、装置を較正することが可能である。
【0051】
上記の実施態様を、ほんの一例として記載する。多様な変化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を例示する装置の概念図である。
【図2】図1の装置のブロック回路図である。
【図3】作動時の図1の装置のソレノイドについて電流対時間を示す。
【図4】未凝固試料についてのセンサー出力と共に図3の電流対時間を示す。
【図5】図4のセンサー出力が試料の凝固時に如何に変化するかを示す。
【図6】異なる誤差を一緒に取る測定についての試料期間対測定したプロトロンビン時間のグラフである。
【図7】図1の装置を作動する代替方法について電流対時間を示す。
【図8】本発明を例示する代替装置の概念図である。
【図9】図8の装置についてセンサー出力と共に駆動電流を示す。
【符号の説明】
【0053】
1 試料チャンバー
2 磁性体
3 血液凝固用乾燥試薬
4 ソレノイド
5 ソレノイド
6 ホール効果磁場センサー
7 マイクロプロセッサ
8 ディスプレイ
9 抵抗加熱素子
10 増幅器
14 ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある量の液体を保持するためのチャンバーと、該チャンバー内に配置した物体と、磁気装置とを備え、該磁気装置が前記チャンバーと協働し、使用時に前記物体が未凝固液体を介してチャンバー内を前後に移動する磁場を提供するために配列され、該物体が粒子以外である液体の凝固状態を決定するための装置。
【請求項2】
ある量の液体を保持するためのチャンバーと、該チャンバー内に配置した物体と、磁気装置とを備え、該磁気装置が前記チャンバーと協働し、使用時に前記物体が未凝固液体を介してチャンバー内を前後に移動する磁場を提供するために配列され、使用時における通常の運動方向と一般に直交する平面で測定した物体の断面積が、同一の平面におけるチャンバーの断面積の少なくとも半分である液体の凝固状態を決定するための装置。
【請求項3】
前記チャンバー内で物体の移動及び/又は位置を検出するための手段を設ける請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記移動を検出するための手段が磁場センサーからなる請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記チャンバーが物体を含んだ場合のチャンバー内の自由容積が10μl未満である請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記チャンバーを装置から取り外し可能な使い捨て支持ストリップ中に形成する請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記チャンバーが細長く、実質的に均一の断面となる請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記チャンバーが長さ3〜5mmの間である請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記物体が細長く、チャンバーの断面と実質的に同一形状の断面を有する請求項1〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
断面において物体とチャンバーの内壁との間に少なくとも50ミクロンの間隙が存在するように、物体の大きさを合わせる請求項1〜9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記間隙が300ミクロン未満である請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記チャンバー及び物体の長さを、該物体がチャンバー内で少なくとも0.5mm前後に移動するように選択する請求項1〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記物体がチャンバー内で最大2mm前後に移動する請求項1〜12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記物体が、磁場に置かれた際に力を受ける材料からなる請求項1〜13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
凝固試薬をチャンバーに配置する請求項1〜14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
物体を含むチャンバーに液体試料を供給する工程と、該チャンバーに磁場を付与して前記物体を未凝固液体を介してチャンバー内で前後に移動させる工程とを備え、該物体が粒子以外である液体試料の凝固状態を決定するための方法。
【請求項17】
物体を含むチャンバーに液体試料を供給する工程と、該チャンバーに磁場を付与して前記物体を未凝固液体を介してチャンバー内で前後に移動させる工程とを備え、使用時における通常の運動方向と一般に直交する平面で測定した物体の断面積が、同一の平面におけるチャンバーの断面積の少なくとも半分である液体試料の凝固状態を決定するための方法。
【請求項18】
第一及び第二磁場を循環的に供給する工程を更に備え、前記第一磁場によって物体が第一方向に移動し、前記第二磁場によって物体が第一方向と反対である第二方向に移動する請求項17又は18に記載の方法。
【請求項19】
各磁場を短パルスとして与え、短パルスの間に無磁場の期間を有する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
各パルスの時間が500ms未満である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記物体を0.1〜10Hzの周波数でチャンバー内で前後に移動させる請求項17〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記磁場の大きさが25mT未満である請求項17〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
磁場センサーを用いて物体の移動及び/又は位置を検出する工程を更に備える請求項17〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
分析すべき試料の投入に先立って凝固をチャンバー内に配置する請求項17〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
液体の凝固状態を決定するためにチャンバー内に配置した液体中の物体の移動及び/又は位置を検出する少なくとも一つの磁場センサーの使用で、該物体が磁場中に置かれた際に力を受ける材料からなり、該物体が粒子以外である使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−511756(P2007−511756A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538927(P2006−538927)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004676
【国際公開番号】WO2005/047895
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(506153619)アイヴィーエムディー (ユーケイ) リミテッド (1)
【Fターム(参考)】