説明

液体の微粒化のためのマイクロ流体装置

液体の微粒化のための装置(1)であって、少なくとも1つの作業面(7)、圧電基板(5)上に支持された少なくとも1つの電極(9)、圧電基板(5)の作業面(7)において弾性表面波(SAW)を発生させるために該電極(9)に超音波信号を適用するための信号発生手段(21)を備えた圧電基板(5);作業面(7)と接触した、その液体を送達するための芯(17)を含む液体送達配置を含み、作業面(7)に送達された液体がSAW照射によって微粒化される装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の微粒化のためのマイクロ流体装置に関する。本発明はその使用に関して肺送達装置として記載されるが、当然のことながら、本発明はこの適用に限定されるものではなく、他の適用も考えられる。
【発明の背景】
【0002】
遺伝子療法は疾病治療の新たなパラダイムであり、疾病は、欠陥のある生体機能を修復すること、または細胞内のホメオスタシス機構を再構成することによって分子レベルで治療される。効果的な遺伝子療法は、デオキシリボ核酸(DNA)が標的細胞に首尾よく接近し、インターナリゼーションのために細胞に取り込まれ、細胞から、分解経路を逃れた後に核へと移行し、次に、転写および翻訳されて目的の遺伝子産物を産生する必要がある。
【0003】
肺は遺伝子送達の重要な標的であり、これはエアゾール送達が非侵襲的技術であり、かつ、肺の多大な表面積を直接標的とすることができるためである。プラスミドDNA(pDNA)は、エアゾール吸入により肺に導入することができる。しかしながら、ストリンジェントな条件に応じた遺伝子ベクターの送達効率および耐久性が、このアプローチが成功するかどうかの重要な領域である。現行の肺送達デバイスの潜在的な障害として、そのトラスフェクト能力を保持し、製品品質に対する規制要件に応じ、また、肺表面への最適な送達に適当なサイズのエアゾール粒子を形成するためのエアゾール中でのプラスミドのスーパーコイル構造の保持が挙げられる。
【0004】
非複合体化pDNAを肺へ送達する場合の肺送達デバイスの実現可能性を判断するために多くの研究が行われてきた。残念なことに、5キロベースペア(kbp)よりも大きなpDNAのスーパーコイル三次構造は、ジェットネブライザーおよび超音波ネブライザーでの噴霧化の際の流体力学的剪断および衝撃波によって、著しく剪断されて開環したり、DNAが断片化されたりすることが分かった。メッシュネブライザー、電気流体力学(EHD)デバイスおよび微細噴霧化カテーテルデバイスなどの新しいデバイスの出現は、より高いエアゾール化効率を与え、エアゾール中でpDNAの完全性を保つと言われてきた。しかしながら、これらのデバイスはこれを実証するためにさらなる臨床試験を必要とする。
【0005】
吸入療法は喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療選択肢となってきた。経口投与とは違い、吸入療法は高濃度の薬剤を投与すること、および肺内の局部的炎症部位を直接標的とすることを可能とし、それにより、総用量の低減、全身性副作用の軽減および可能性としては薬剤の作用の開始の促進を可能とする。定量噴霧式吸入器(MDI)およびドライパウダー吸入器(DPI)は一般に、喘息およびCOPD治療のための気管支拡張薬の投与に用いられ、患者は予め測定された用量を1回の強制的に息を吸い込むという動作で吸入する。しかしながら、MDIまたはDPIが最も効果的かどうか、あるいは最大数分間通常呼吸をしている患者に連続的な噴霧化が必要かどうかを判断する上で、研究者間で活発な議論が交わされている。議論は続いているが、このような判断をする上で重要な因子は、一般に、用量レベル、薬剤の有効性と安全特性、患者の年齢群、疾病の重篤度、投与の容易さおよびコストなどの因子を考慮した臨床判断に基づく。
【0006】
ネブライザーは、長時間作動するので、現行のMDIおよびDPIよりも多量の薬剤を送達することができる。さらに、ネブライザーは、MDIと違って患者の協調技能を必要とせず、また、DPIと違って患者の吸入による発動を必要としない。ネブライザーは一般に、患者が自ら薬剤を服用できないCOPDまたは重度の喘息発作の急性症例に用いられる。同じ理由で、ネブライザーは小児および高齢者の患者集団により適当なものとなり得る。
【0007】
従来、ネブライザーは、大型で、場所をとり、持ち運びがしにくく、MDIまたはDPIよりも高価であった。さらに、従来のネブライザーは一般に用量効率が低く、すなわち、より多くの薬剤をエアゾールへ送達することができるものの、エアゾール化された薬剤の多くはその後、以下の理由で浪費される:
1.患者がネブライザーの排気口に吐き出す薬剤を浪費しながら、エアゾールが生成され続けるため、
2.エアゾールは多分散粒径分布を示し、液滴のかなりの部分が大き過ぎて肺深部に定着しないため、および
3.ネブライザーは一般に大きな内部残留量を有するため。
【0008】
最も効果的な吸入療法には、液滴の空気力学的挙動(ストークスの法則によって支配)が基本的に重要である。肺深部への定着には、エアゾールが口咽頭領域で慣性衝突を避けることができるよう、5μm未満または好ましくは3μm未満の空気力学的粒径が、適当と考えられる。気道のより上部への定着には、より大きな空気力学的粒径が好ましい。結果として、エアゾール液滴の大きさは吸入療法の有効性に極めて重要であり、従って、高用量の薬剤を効率的に送達することができる理想的なデバイスは、液滴の粒径分布の厳密な制御を可能とし、好ましくは、患者の苦痛や不自由が極力最小となる短い時間で所望の用量を送達するよう大きな微粒化率が得られるものである。
【0009】
微粒化プロセスにより大きな制御を与えて、多分散性が収束した、かつ、液滴粒径調節能を有するエアゾールを与えることができる、超音波および電気流体力学的微粒化を用いる新規な方法を用いた噴霧化技術が近年、急速に進歩してきた。さらに、これらの方法は小型化を可能とし、現在市販されている大型で、場所をとるネブライザーに代わる魅力的なものを与える。残念なことに、これらの方法は内在する制限を持つ。例えば、電気流体力学的微粒化は、高電圧作動、一般に数キロボルトに限られ、消費者の使用に安全性および確実性の問題が持ち上がる。種々のタイプの超音波微粒化が何年もかけて考案され、圧電ディスクがエアゾールプルームを生成する液槽を用いるシステムが最も多い。これらの超音波ネブライザーも比較的大型であり、出力および粒径制御に制限があり、溶媒蒸発のために微粒化リザーバー壁に可溶化した薬剤が沈殿し、薬剤を浪費し、使用者による定期的洗浄が必要となる。噴霧化にメッシュを使用するもっと最近の設計では、持ち運び、投与割合、およびエアゾール単分散性がより良好となる。このメッシュは化学的に、またはレーザーでカットされた微小孔を持ち、超音波照射下で液滴を生成する数千のオリフィスを形成するが、これらのメッシュは目詰まりがしやすく、処理量を著しく低下させる。これらの過去そして現在の技術に関して、小型で、持ち運びでき、信頼性の高い、かつ、比較的コスト効率のよいデバイス、特に、好適な単分散性を持ち、粒径5〜10μm未満の非凝集性液滴粒径分布を効果的に生成し得るものには、まだ到達していない。
【発明の概要】
【0010】
このことを念頭において、本発明は、液体の微粒化のための装置であって、
少なくとも1つの作業面を備えた圧電基板、
該圧電基板上に支持された少なくとも1つの電極、
該圧電基板の作業面において弾性表面波(surface acoustic wave)(SAW)を発生させるために前記電極に超音波信号を適用するための信号発生手段;
作業面と接触した、その液体を送達するための芯を含む液体送達配置
を含み、該芯によって作業面に送達された液体がSAW照射によって微粒化される装置を提供する。
【0011】
該電極は、くし形電極の形態であり得る。より好ましくは、電極形状は楕円EWC(electrode width controlled)型単相一方向性変換器(EWC−SPUDT)であり得る。
【0012】
該電極は好ましくはEWC−SPUDTとして構成されるが、これはこの形状が、基板上に置かれた液体に、ストレート標準型およびSPUDT型のくし形変換器電極、環状EWC−SPUDT電極、ならびに現在知られている他の形状と比較して、最大の弾性表面波強度を与えるためである。従って、ある入力に対して、楕円EWC−SPUDTはこれらの種々の形状の最良の微粒化性能を与え、このようにして選択されたEWC−SPUDTの幅および楕円率は好ましくは基板上に置かれた液滴の大きさに合わせて調節される。液滴の大きさとEWC−SPUDTの出口開口(幅)の間の関係は液体の特性によって異なるが、出口開口に対する液滴径の比率は好ましくは0.5〜2の間である。
【0013】
好ましくは、2つ以上のEWC−SPUDTを用いることができる。例えば、ニオブ酸リチウム(クラス[3m])のような極めて異方性の圧電材料に2つのEWC−SPUDTを用いることができ、ZnO、AINまたはPZTのような異方性の低い材料にはさらに多くのものを使用することができる。
【0014】
微粒化の周波数は好ましくは微粒化される液体に応じて10MHz〜250MHzの間であり、これはEWC−SPUDTにおける電極指幅およびそれらの間隔を規定する。
【0015】
液体送達配置の芯は少なくとも1つの紙片または紙ひもによって設けることができ、毛管作用によって液体が送達される。例えば、布地またはその他の親水性材料など、同様の毛管作用をもたらす多孔質材料も考えられる。
【0016】
液体送達配置は好ましくは装置に送達される液体の入った液体リザーバー容器も含んでいてもよい。芯は、圧電基板の表面から液体リザーバーの内部まで延ばすことができる。あるいは、液体リザーバーから毛管が延びていてもよく、芯はこの毛管を経て液体を受容する。液体リザーバー自体は交換可能なバイアルによって提供することができる。
【0017】
毛管は好ましくは様々な形状とし(例えば、デバイス設計に合わせて湾曲させる)、基板と接触するよう様々な向きに芯を配置し、液滴を形成させることができる。しなしながら、毛管を省き、液体リザーバーと基板の間に芯だけがあってもよい。
【0018】
駆動回路は好ましくは使用者の呼吸の測定とユーザーインターフェースから命令される装置上の安全インターロックに基づいて装置を制御する。
【0019】
弾性表面波(SAW)微粒化の使用には、超音波噴霧化に優るいくつかの利点がある。弾性表面波は、ほんの数ナノメートルの変位振幅を有する、MHz〜GHz程度の横断楕円電気音響偏波(transverse-axial polarized elliptical electroacoustic waves)である。ここで、それらは圧電基板表面上にそれを横切って生成される。バルク現象である典型的な超音波とは違い、SAWは基板表面付近に限られ、その振幅は基板材料中、4〜5波長(数百ミクロン)の深度にわたって急速に減衰する。10W程度の電力を消費する従来の超音波微粒化装置に比べ、本発明による装置は、大部分のエネルギーが基板表面付近の局部的領域に含まれるので0.5〜3Wの間を消費するだけでよく、ゆえに、超音波よりも遙かに効率的に液体へと伝達することができる。さらに、この装置および電源は小型であって、持ち運び用の装置の可能性を示す。さらに、この装置に用いられる10〜500MHz程度の周波数は、典型的な超音波デバイスの20kHz〜3MHzという周波数域よりも有意に高く、液体中の大分子に関連する分子弛緩時間スケールよりも遙かに短い時間で振動を誘発し、従って、分子を変性させる、または細胞を溶解するリスクが大きく軽減される。さらに、周波数が大きくなるほど、キャビテーションを誘発するのに必要な電力が、微粒化に必要とされるものを遙かに超えて増大し、その装置においてキャビテーションにより誘発される溶解または剪断の影響がなくなる。
【0020】
サルブタモールエタノール/オクタナール溶液に特徴的な微粒化に対して発明者らが行った予備実験では、SAW微粒化を用いて、2.84±0.14μmという平均エアゾール径が達成された。サルブタモールは喘息の処置に用いられる薬剤であり、達成されたエアゾール径は、十分、肺深部への定着に最適な範囲内である。
【0021】
SAWの振幅はわずか数ナノメートルであるが、高い作動周波数のために表面の加速度は信じられないほど高い(10/秒)。従って、SAWが基板上に置かれた液滴に伝わる場合、液滴の自由表面を横切る表面張力波を形成することができるだけでなく、1〜10μmという制御された平均径を有する液滴のミストへと粉砕させることができる。マイクロおよびナノ粒子はこれらの液滴の制御された蒸発を介して形成することができるが、目的生成物には関係なく、この試みは、微粒化源としてのSAW装置上に比較的静止した自由液体表面を維持することである。
【0022】
本発明による液体送達配置は、これらの問題を解決する。芯を用いて液体リザーバーから装置の作業面へ液体をサイホンで吸い上げることにより、ポンプ機構が無くとも継続した流れが得られる。従って、芯は、装置の性能に影響を及ぼすことなく微粒化を可能とし、このようなペーパー芯を用いて本発明者らによる最近の実験で示されるように、表面上の芯の末端の外側に安定なメニスカスを保持するのに十分な圧迫が得られる。
【0023】
これらの実験では、このメニスカスは、ペーパーから移動してくる液体によってペーパー芯から移動してくる液体によって絶えず補充され、表面に表面張力波の形成と不安定化をもたらし、エアゾールを噴射する。エアゾールはメニスカスの形状に応じた角度で噴射され、メニスカスの形状自体は、SAWを生成するために用いた電力によって異なる。パーパーの液体吸収速度は、その装置の流速の上限を規定する。
【0024】
本発明による装置の好ましい実施形態を示す添付図面に関して、本発明をさらに説明するのがよいであろう。本発明の他の実施形態も可能であり、結果として、添付図面の特殊性は、本発明の前述の記載の普遍性に取って代わるものと理解すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明による液体の微粒化のための装置の概略図である。
【図2】図2は、図1の装置のくし形電極の概略平面図である。
【発明の具体的説明】
【0026】
図1に示されるように、本発明による装置1は、その装置に作業面7を提供する圧電基板5を備えた変換素子3を含む。
【0027】
くし形電極9が作業面7に支持されており、好ましい電極形状は、EWC(electrode with controlled)型単相一方向性変換器(EWC−SPUDT)であることが分かっている。このような電極は、作業面7に送達された液体に最大のSAW強度を提供することが分かっている。くし形電極9は、図2によりよく示され、図2は、楕円形に湾曲した一連の電極指10を備えた電極を示す。これらの電極指の幅と間隔は好ましくはSAW波長の1/4となるように設定される。
【0028】
液体送達配置11は、作業面7に液体を送達するために設けられている。この配置は、交換可能なバイアルの形態であり得る液体リザーバー13を含む。毛管15は、液体を供給するための液体リザーバー11から、その一方の末端が作業面に接触し、かつ、その反対側の末端が毛管15内にある芯17まで延びている。従って、この液体送達配置は、微粒化のため、作業面7上に液体メニスカス19を形成することができる。
【0029】
芯17は、芯の一方の末端が作業面7に接触した紙片または紙ひもの形態にできる。この芯17を通って作業面7に液体が供給され、芯17の末端と作業面7の間にメニスカス19が形成される。このメニスカス19は、芯17から移動してくる液体によって絶えず補充され、表面に表面張力波の形成と不安定化をもたらし、そこから微粒化された液滴を噴射する。
【0030】
駆動回路21は、くし形電極9に、一般に10〜250MHzの間の超音波信号を適用し、それにより、結果として、作業面7においてSAW23が発生する。SAW23と液体メニスカス19の相互作用の結果、微粒化された液滴ミストが生じる。
【0031】
駆動回路21は、検知センサー25による使用者の呼吸の測定に基づき、また、ユーザーインターフェース29を経た安全回路27制御における安全インターロックによって制御される。
【0032】
本発明の装置1は様々な適用を有し、プラスミドDNA、siRNA、タンパク質分子などを含み得る遺伝的生体分子材料を用いた吸入遺伝子療法および予防接種に使用することができる。他の適用としては、DNAカプセル封入、DNAストレッチング/ハイブリダイゼーションおよびDNAマイクロアレイプリンティングが挙げられる。
【0033】
また、本発明は有利なことに、10〜100MHz程度の周波数を使用することにより装置1において振動を誘発するための時間が、液体中での高分子の分子弛緩時間スケールよりも遙かに短いので、分子を変性させるリスクが小さくなることも分かった。さらに、周波数が数MHzを超えて大きくなる場合には、キャビテーションは著しく無くなるので、目的遺伝子がコードされている裸のpDNAなどの剪断感受性分子にとって、キャビテーションにより誘発される溶解または剪断の影響が無くなる。さらに、装置1により生成される液滴の大きさは、定常波から進行波に切り換えることにより制御可能な様式でほぼ数マイクロ秒の桁で変化させることができる。従って、本発明は、技術の現状に当たる超音波医療用ネブライザーに優る有意な利点を有する。
【0034】
さらに、SAWマイクロ流体発動は、従来の超音波法を悩ませている制限に取り組みつつ、流体の動きを駆動するために音場を使用する利益、すなわち、大きな発動速度および関連する慣性力の作用による流動の非線形性を保持する。高いメガヘルツ(>10MHz)でのSAW振動は、流体および粒子の取扱いを遙かに精密なスケールで助長し、流体の狭い表面領域にエネルギー集中させることによって、よりエネルギー効率の良い機構を提供する。これらのひときわ優れた利点により、このような短時間で形成される剪断勾配はDNAを分解するには十分でないので、DNAの損傷は回避される。
【0035】
本発明により提供されるSAW微粒化は、剪断感受性生物治療薬、すなわち、プラスミドDNAのエアゾールを生成するための実行可能な手段であり、スーパーコイル内容物のほぼ無視できる変性をもたらすのみである。本発明は、最適な肺深部定着のための5μmを超える液滴径を有するプラスミド負荷エアゾールを提供するために利用することができ、かつ、SAW微粒化後の哺乳類細胞における遺伝子発現の成功を実証する試験をもって、生物活性を残している。従って、本発明の装置1は、DNA分子、タンパク質および他の生体分子のための肺送達プラットフォームとして好適である。また、試験では、SAW照射後に間葉幹細胞に損傷はほとんどなく、それらの生存力、増殖および分化は阻害されないことが分かっている。従来の超音波ネブライザーを用いた場合に必要な電力に比べて低い電力(1Wという低さ)しか要求しないので、装置1を、電池を電源とし、適応送達のための先進的電子検知およびで制御を組み込んだ持ち運び可能な手のひらサイズのデバイスに小型化することが可能となる。
【0036】
本発明は、生体分子、例えば、遺伝子療法用のDNA生体分子の本質的構造への支障を最小限にして、生体分子負荷エアゾールを生成する効率的かつ迅速なプロセスを提供する。これは有利には、ワクチンおよび薬剤などの高価な分子の浪費を最小限にすることができ、生体分子を破壊する他の総ての微粒化プロセスに比べて効果的な治療を可能とする。本発明は、エアゾール遺伝子送達に大きな進展をもたらし、非侵襲的アプローチを用いる非ウイルス遺伝子療法に大いに有望なものとなる。
【0037】
当業者にとって自明であると思われる改変形態および変形形態は、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の微粒化のための装置であって、
少なくとも1つの作業面、圧電基板上に支持された少なくとも1つの電極、圧電基板の作業面において弾性表面波(SAW)を発生させるために該電極に超音波信号を適用するための信号発生手段を備えた圧電基板、および
作業面と接触した、その液体を送達するための芯を含む液体送達配置
を含み、作業面に送達された液体がSAW照射によって微粒化される、装置。
【請求項2】
電極が楕円EWC(electrode width controlled)型単相一方向性変換器(EWC−SPUDT)である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
液体送達配置の芯が少なくとも1つの紙片または紙ひもによって設けられている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
液体送達配置が装置に送達される液体を収容するための液体リザーバーをさらに含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
液体リザーバーから延長する毛管をさらに含み、前記芯が該毛管から液体を受容する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置を用いた核酸組成物の肺送達を含む方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置を用いたサルブタモールの肺送達を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−525944(P2012−525944A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510069(P2012−510069)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000548
【国際公開番号】WO2010/129994
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(508109922)モナシュ、ユニバーシティ (6)
【氏名又は名称原語表記】MONASH UNIVERSITY