説明

液体の粘性又は/及び弾性測定法

【課題】低粘度から高粘度の測定液まで幅広くその粘弾性を的確に測定でき、更には該粘弾性から粘性又は弾性を的確に把握できる液体の粘性又は/及び弾性測定法を提供する。
【解決手段】検液子1の測定液内振動における振幅特性曲線上の共振周波数値(f0)と、同振幅特性曲線上の共振周波数値(f0)より低い低周波数値(f1)と、同振幅特性曲線上の共振周波数値(f0)より高い高周波数値(f2)の3つの周波数値を測定し、測定液のインピーダンスの実数部を上記高周波数値(f2)と低周波数値(f1)を用いて演算すると共に、測定液のインピーダンスの虚数部を上記共振周波数値(f0)を用いて演算し、該インピーダンスの実数部と虚数部から測定液の粘性値又は/及び弾性値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定液の粘弾性を適切に測定でき、更には該粘弾性から粘性又は弾性を適切に把握できるようにした液体の粘性又は/及び弾性測定法に係る。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、振動子(圧電素子等)を測定液中において共振せしめ、該共振周波数値より低い低周波数値(半値周波数f1)或いは同共振周波数値より高い高周波数値(半値周波数f2)の何れか一方と、共振周波数の差から粘性値(粘度)を測定する方法が開示されている。
【0003】
他方特許文献2には、測定液内における検液子の振動から液体固有の粘弾性に起因して変化する周波数と振幅を検出し、該周波数と振幅から液体のインピーダンスを求め、該インピーダンスの実数部及び虚数部から粘性値と弾性値を求める液体の粘弾性測定法が開示されている。
【特許文献1】特許第4083621号公報
【特許文献2】特許第3348162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然しながら上記特許文献1に係る粘度測定法は、半値周波数f1或いは同f2の一方と共振周波数の差から液体のインピーダンスの実数部を求めることにより粘性値を測定する発明であり、この発明の如くインピーダンスの実数部のみを用いる測定法では複素粘性の実数部のみしか求めることができず、そのため粘弾性の高い測定液の粘性値を正確に測定できないばかりか、液体の力学的特性を把握する上で必要な粘性値と弾性値の双方を測定することは不能である。
【0005】
他方特許文献2の如く液体固有の粘弾性に起因する周波数と振幅から液体のインピーダンスを求める測定法では、即ち実数部を振幅に比例したセンサー出力電圧の逆数として捉える測定法では、測定液の粘度が高くなると振幅が小さくなるため、測定精度が悪化するという問題点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は測定液の粘弾性を適切に測定でき、更には該粘弾性から粘性又は弾性を適切に把握できるようにした液体の粘性又は/及び弾性測定法を提供するものである。
【0007】
本発明は第一の測定法として、測定液内に浸着した検液子を圧電素子等から成る振動子の駆動源で振動せしめ、又は振動子そのものを検液子として測定液中に浸着し振動せしめることにより測定液の粘性値又は/及び弾性値を測定する測定法において、上記検液子の測定液内振動における振幅特性曲線上の共振周波数値(f0)と、同振幅特性曲線上の共振周波数値(f0)より低い低周波数値(f1)と、同振幅特性曲線上の共振周波数値(f0)より高い高周波数値(f2)の3つの周波数値を測定し、測定液のインピーダンスの実数部を上記高周波数値(f2)と低周波数値(f1)を用いて演算すると共に、測定液のインピーダンスの虚数部を上記共振周波数値(f0)を用いて演算し、該インピーダンスの実数部と虚数部から測定液の粘性値又は/及び弾性値を算出する方法を採る。
【0008】
又本発明は第二の測定法として、上記検液子の測定液内振動における振幅特性曲線上の共振周波数値(f0)と、同振幅特性曲線上の共振周波数値(f0)より低い低周波数値(f1)と、同振幅特性曲線上の共振周波数値(f0)より高い高周波数値(f2)の3つの周波数値を測定し、測定液のインピーダンスの実数部と虚数部を上記共振周波数値(f0)と低周波数値(f1)と高周波数値(f2)の3つの周波数値を用いて演算し、該インピーダンスの実数部と虚数部から測定液の粘性値又は/及び弾性値を算出する方法を採る。
【0009】
好ましくは、上記低周波数値(f1)と高周波数値(f2)として、上記測定液内振動における位相角特性曲線上の共振点に対して対称の位相角における周波数を用いる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、共振周波数値(f0)と低周波数値(f1)と高周波数値(f2)とを用い、インピーダンスの実数部と虚数部を求める上記測定法により、測定液が高粘度である場合でも、その粘弾性を的確に測定でき、更には該粘弾性から粘性又は弾性を的確に把握できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図1乃至図4に基づき説明する。
図1におけるG1は測定液中において振動する検液子1の振動周波数に対する振幅の遅れ角、即ち位相角の特性曲線である。
【0012】
これに対しG2は同検液子1を空気中で振動させた場合の振動周波数に対する振幅の遅れ角、即ち位相角の特性曲線である。
【0013】
図2におけるG3は測定液中で振動する検液子1の振動周波数に対する振幅の特性曲線である。
【0014】
これに対しG4は同検液子1を空気中で振動させた場合の振動周波数に対する振幅の特性曲線である。
【0015】
図1の位相角特性曲線G1,G2におけるf0,f1,f2は、位相角90度、90度−d、90度+dの夫々における周波数を示し、f0は共振周波数、f1は同共振周波数より低い周波数、f2は同共振周波数より高い周波数である。
【0016】
−dは90度からの減角度であり、+dは90度からの増角度であり、例えば90度に対し対称点にある45度の角度を意味し、この場合、90度−d=45度、90度+d=135度となる。
【0017】
f1,f2は測定液内振動における位相角特性曲線上の共振点に対して対称の位相角における周波数であるものを適例として用いる。
【0018】
これに対し図2の振幅特性曲線G3,G4におけるf0,f1,f2は、上記位相角特性曲線G1,G2のf0,f1,f2に対応する、同振幅特性曲線上の周波数であり、f0は共振周波数、f1は同共振周波数より低い周波数、f2は同共振周波数より高い周波数である。
【0019】
本発明に係る検液子1の振動装置としては、図4に示すように、測定液外で駆動される圧電素子又は電磁駆動装置から成る駆動源2の振動を振動伝達軸3を介して検液子1を振動(共振)させるもの、或いは前記特許文献1に示すように、圧電素子から成る振動子そのものを検液子1として測定液中に浸着して振動させるものの何れかである。
【0020】
又図3に示すように、前者の検液子1内に圧電素子から成る駆動源2を内蔵し、検液子1を測定液中において振動せしめる場合を含む。
そして上記検液子1の振動モードとしては、図3Aに示すように、軸線を中心に円方向振動させるもの、図3Bに示すように、測定液中において横方向に振動させるもの等が用いられる。
【0021】
本発明は上記の如く測定液内に振動子にて振動される検液子1を浸着し、測定液の粘性値又は/及び弾性値を測定する測定法に係わり、その第一の測定法は、上記検液子1の測定液内振動における位相角特性曲線(図1のG1)及び振幅特性曲線(図2のG3)上の共振周波数値f0と、同振幅特性曲線上の共振周波数値f0より低い低周波数値f1と、同振幅特性曲線上の共振周波数値f0より高い高周波数値f2の3つの周波数値を測定し、測定液のインピーダンスの実数部を上記高周波数値f2と低周波数値f1を用いて演算すると共に、測定液のインピーダンスの虚数部を上記共振周波数値f0を用いて演算し、該インピーダンスの実数部と虚数部から測定液の粘性値又は/及び弾性値を算出する。
【0022】
又本発明に係る第二の測定法は、上記検液子1の測定液内振動における振幅特性曲線上の共振周波数値f0と、同振幅特性曲線上の共振周波数値f0より低い低周波数値f1と、同振幅特性曲線上の共振周波数値f0より高い高周波数値f2の3つの周波数値を測定し、測定液のインピーダンスの実数部と虚数部を上記共振周波数値f0と低周波数値f1と高周波数値f2の3つの周波数値を用いて演算し、該インピーダンスの実数部と虚数部から測定液の粘性値又は/及び弾性値を算出する。
【0023】
望ましくは前記の通り、上記低周波数値f1と高周波数値f2として、上記測定液内振動における位相角特性曲線G1上の共振点に対して対称点に存する位相角における周波数を用いる。
【0024】
換言すると、低周波数値f1と高周波数値f2として、上記測定液内振動における振幅特性曲線G3上の共振点に対して同一振幅レベルに存する対称点における周波数を用いる。
【0025】
図1、図2における位相角特性曲線G1とG2の対比、並びに振幅特性曲線G3とG4の対比から理解されるように、測定液中の共振周波数値f0は空気中の同f0より低周波になり、測定液中の高周波数値f2と低周波数値f1の差は空気中の同f2とf1の差より大きくなる。
【0026】
即ち、測定液の粘性が大きくなる程、共振周波数値f0はより低周波側に移り、高周波数値f2と低周波数値f1の差はより大きくなる。
【0027】
以下、本発明に係る上記第一、第二の液体の粘性又は/及び弾性測定法を以下に述べる数式1乃至数式47を用いて更に説明する。
【0028】
駆動信号に対する振動振幅の遅れを位相角d0,d1,d2とする。f0は共振点であるためにd0=90度である。f1,f2において、d1=90度−d、d2=90度+dとし、f0,f1,f2の角周波数をω,ω,ωとする。ω=2πfである。
【0029】
空気中におけるf0,f1,f2における角周波数を夫々ω00,ω01,ω02とする。ω00,ω01,ω02は図3,図4に示した振動装置固有の値であり、予め測定し、振動装置に設けてある処理装置のメモリー内に記憶させた定数である。処理装置は演算機能を持つ。
【0030】
粘度η、密度ρの液体を検液子1により検液子1の共振角周波数ω数で振動させる。測定液の振動速度νと測定液により発生する抵抗力Fの比、F/νを測定液のインピーダンスZと呼ぶ。
【0031】
測定液に伝播する波動の振動速度νを波動方程式の解として求めることができる。平面波近似で求めた振動速度νにより測定液のインピーダンスZは数式1のように求めることができる。ここでSは検液子1の表面積に比例する定数であり、jは虚数符号である。
【数1】

【0032】
上記数式1をωの近傍でマクローリン展開してインピーダンスZをωで表すと、ω,ωがωのごく近くにある時、測定液のインピーダンスZは数式2となる。
【数2】

【0033】
ω,ωがωと大きく異なっている時、測定液のインピーダンスZは数式3となる。ωはω,ω,ωの何れかである。
【数3】

【0034】
測定液が粘弾性体の時、測定液の粘度ηは複素数となり、数式4のように表すことができる。
【数4】

【0035】
複素粘度の位相角δを数式5のように定義する。
【数5】

【0036】
又複素粘度の絶対値ηを数式6のように定義する。
【数6】

【0037】
ηにより数式4は数式7のように表すことができる。
【数7】

【0038】
数式1乃至数式7は、第一と第二の液体の粘性又は/及び弾性測定法に共通である。以下、数式8乃至数式29を用いて第一の測定法におけるインピーダンスZの実数部Rと虚数部Xの演算について説明する。
【0039】
ω,ωがωのごく近傍の時、即ち3つの測定値における測定液のインピーダンスZが略同一と見なされる時、該インピーダンスZは数式7を数式2に代入して数式8,数式9が求まる。
【数8】

【数9】

【0040】
インピーダンスZの実数部Rと虚数部Xを数式10,数式11で定義すると、インピーダンスZは数式12のように表すことができる。
【数10】

【数11】

【数12】

【0041】
検液子1の慣性モーメントをM、捩れバネ常数をK、捩れバネ常数の内部抵抗をrとする。
【0042】
この検液子1を空気中で駆動力F=F・ejωtで駆動した時、検液子1の変位をχ=χ・ejωtとする。変位は数式13に示す振動方程式で表すことができる。
【数13】

【0043】
検液子1を測定液中に浸着すると、測定液のインピーダンスZの実数部Rと虚数部Xは該振動装置に対して夫々抵抗の増加及び慣性モーメントの増加として作用する。
【0044】
即ち内部抵抗rと慣性モーメントMは夫々r+R及びM+X/ωとなり、数式13は数式14となる。
【数14】

【0045】
数式14を変形して、検液子1の運動の駆動力Fに対する伝達関数χ/Fは数式15のように表現できる。
【数15】

【0046】
ω00=K/Mとおいて数式15の分母を有理化すると、数式16となる。
【数16】

【0047】
駆動力に対する検液子1の運動の遅れを表す位相角をDとする。tanDは数式17となる。
【数17】

【0048】
Dを図1に示す位相角特性曲線におけるd,d,d の3つの点の位相角とする。この3点の角周波数は夫々ω,ω,ωであるので、(d,ω)、(d,ω)、(d,ω)の3つの組で表される3つの式が数式18,数式19,数式20のようになる。
【数18】

【数19】

【数20】

【0049】
=90−d、d=90+dであるので、tand=cotd、tand=−cotdである。ここでcotd=1/Cと置く。このCを用いて数式18,数式19,数式20を書き換えると数式21,数式22,数式23となる。
【数21】

【数22】

【数23】

【0050】
数式21,数式22より数式24が得られる。
【数24】

【0051】
数式24よりr+R/Mが数式25のように求まる。
【数25】

【0052】
又数式23よりX/Mが数式26のように求まる。
【数26】

【0053】
空気中においてはω,ω,ωは夫々既知の常数ω01,ω02,ω00であり、振動装置から得られる信号を処理する処理装置のメモリー内に記憶させておく。
【0054】
空気中ではR=0、X=0であるので数式25は数式27となる。
【数27】

【0055】
数式27より明らかなように、r/Mは既知の常数である。数式27のr/Mを用いると、実数部Rと虚数部Xを数式28,数式29により求めることができる。
【数28】

【数29】

【0056】
以下、数式30乃至数式33を用いて第二の測定法におけるインピーダンスZの実数部Rと虚数部Xの演算について説明する。
【0057】
ω,ωがωから大きく異なっている時、測定液のインピーダンスZは数式3のように表される。装置の内部抵抗rは充分小さく、無視できると考えられるので、数式21,数式22は数式30,数式31となる。
【数30】

【数31】

【0058】
数式30,数式31より、実数部Rと虚数部Xは数式32,数式33と求まる。
【数32】

【数33】

【0059】
以上に述べたように、第一の測定法においては測定液中で検液子1を振動させ、3つの位相差d,d,dにおける3つの角周波数ω,ω,ωを測定し、上記処理装置によって測定液のインピーダンスZの実数部Rを高周波数値f2と低周波数値f1を用いて数式28により演算し、測定液のインピーダンスZの虚数部Xを共振周波数値f0を用いて数式29により演算する。
【0060】
又第二の測定法においては、測定液のインピーダンスZの実数部R及び虚数部Xを、高周波数値f2と低周波数値f1と共振周波数値f0を用いて数式32及び数式33により演算する。
【0061】
以下、数式28,数式29に基づき求められた実数部Rと虚数部Xから、液体の粘性又は/及び弾性を測定する第一の測定法を数式34乃至数式40を用いて説明する。
【0062】
数式10及び数式11から複素粘度の位相角δを数式34により演算する。
【数34】

【0063】
又数式10,数式11よりR+X=S・ω・ρ・ηなので、数式28,数式29で求めたR,Xを用いて、複素粘度の絶対値ηを数式35により演算する。
【数35】

【0064】
数式34より求まる複素粘度の位相角δ及び数式35より求まる複素粘度の絶対値ηより、複素粘度ηを数式36により演算する。
【数36】

【0065】
数式36から複素粘度ηの実数部η′を数式37により演算する。
【数37】

【0066】
複素粘度ηの虚数部η″を数式38により演算する。
【数38】

【0067】
複素弾性率Gの実数部G′を数式39により演算する。
【数39】

【0068】
複素弾性率Gの虚数部G″を数式40により演算する。
【数40】

【0069】
以下、数式32,数式33に基づき求められた実数部Rと虚数部Xから、液体の粘性又は/及び弾性を測定する第二の測定法を数式41乃至数式47を用いて説明する。
【0070】
インピーダンスZが数式3で表される時も、共振周波数値におけるインピーダンスZの実数部Rと虚数部Xは数式10及び数式11で表される。数式10及び数式11から複素粘度の位相角δを数式41により演算する。
【数41】

【0071】
又数式10,数式11よりR+X=S・ω・ρ・ηなので、数式32,数式33で求めたR,Xを用いて複素粘度の絶対値ηを数式42により演算する。
【数42】

【0072】
数式41より求まる複素粘度の位相角δ及び数式42より求まる複素粘度の絶対値ηより、複素粘度ηを数式43により演算する。
【数43】

【0073】
数式43から複素粘度ηの実数部η′を数式44により演算する。
【数44】

【0074】
複素粘度ηの虚数部η″を数式45により演算する。
【数45】

【0075】
複素弾性率Gの実数部G′を数式46により演算する。
【数46】

【0076】
複素弾性率Gの虚数部G″を数式47により演算する。
【数47】

【0077】
以上の通り、上記検液子1の測定液内振動における位相角特性曲線(図1のG1)及び振幅特性曲線(図2のG3)上の共振周波数値f0と、同振幅特性曲線上の共振周波数値f0より低い低周波数値f1と、同振幅特性曲線上の共振周波数値f0より高い高周波数値f2の3つの周波数値を測定し、測定液のインピーダンスの実数部を上記高周波数値f2と低周波数値f1を用いて演算すると共に、測定液のインピーダンスの虚数部を上記共振周波数値f0を用いて演算し、該インピーダンスの実数部と虚数部から測定液の粘性値又は/及び弾性値を算出する第一の測定法と、上記検液子1の測定液内振動における振幅特性曲線上の共振周波数値f0と、同振幅特性曲線上の共振周波数値f0より低い低周波数値f1と、同振幅特性曲線上の共振周波数値f0より高い高周波数値f2の3つの周波数値を測定し、測定液のインピーダンスの実数部と虚数部を上記共振周波数値f0と低周波数値f1と高周波数値f2の3つの周波数値を用いて演算し、該インピーダンスの実数部と虚数部から測定液の粘性値又は/及び弾性値を算出する第二の測定法により、低粘度から高粘度の測定液まで幅広くその粘弾性を的確に測定でき、更には該粘弾性から粘性又は弾性を的確に把握できる。
【0078】
よって、特許文献1の如くインピーダンスの実数部のみを用いる測定法における問題点、即ち複素粘性の実数部と虚数部を求めることができない、そのため粘弾性の高い測定液の粘性値を正確に測定できない、液体の力学的特性を把握する上で必要な粘性値と弾性値の双方を測定することは不能である等の問題点を有効に解決する。
【0079】
又特許文献2の如く液体固有の粘弾性に起因する周波数と振幅から液体のインピーダンスを求める測定法、即ち実数部を振幅に比例したセンサー出力電圧の逆数として捉える測定法における、測定液の粘度が高くなると振幅が小さくなるため、測定精度が悪化するという問題点を有効に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】検液子を測定液内で振動させた場合の位相角特性曲線である。
【図2】同振幅特性曲線である。
【図3】A,Bは測定液内に浸着される検液子内に駆動源を内蔵した振動装置における検液子の振動モードを夫々示す斜視図。
【図4】測定液外に設けられた駆動源により検液子を振動させる振動装置とその振動モードを夫々示す斜視図
【符号の説明】
【0081】
1…検液子、2…駆動源、3…振動伝達軸、f0…共振周波数値、f1…共振周波数より低い低周波数値、f2…共振周波数より高い高周波数値、G1…空気中の位相特性曲線、G2…測定液中の位相特性曲線、G3…空気中の振幅特性曲線、G4…測定液中の振幅特性曲線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定液内に検液子を浸着して振動せしめ測定液の粘性値又は/及び弾性値を測定する測定法において、上記検液子の測定液内振動における振幅特性曲線上の共振周波数値(f0)と、同振幅特性曲線上の共振周波数値(f0)より低い低周波数値(f1)と、同振幅特性曲線上の共振周波数値(f0)より高い高周波数値(f2)の3つの周波数値を測定し、測定液のインピーダンスの実数部を上記高周波数値(f2)と低周波数値(f1)を用いて演算すると共に、測定液のインピーダンスの虚数部を上記共振周波数値(f0)を用いて演算し、該インピーダンスの実数部と虚数部から測定液の粘性値又は/及び弾性値を算出することを特徴とする液体の粘性又は/及び弾性測定法。
【請求項2】
測定液内に検液子を浸着して振動せしめ測定液の粘性値又は/及び弾性値を測定する測定法において、上記検液子の測定液内振動における振幅特性曲線上の共振周波数値(f0)と、同振幅特性曲線上の共振周波数値(f0)より低い低周波数値(f1)と、同振幅特性曲線上の共振周波数値(f0)より高い高周波数値(f2)の3つの周波数値を測定し、測定液のインピーダンスの実数部と虚数部を上記共振周波数値(f0)と低周波数値(f1)と高周波数値(f2)の3つの周波数値を用いて演算し、該インピーダンスの実数部と虚数部から測定液の粘性値又は/及び弾性値を算出することを特徴とする液体の粘性又は/及び弾性測定法。
【請求項3】
上記低周波数値(f1)と高周波数値(f2)が上記測定液内振動における位相角特性曲線上の共振点に対して対称の位相角における周波数であることを特徴とする請求項1又は2記載の液体の粘性又は/及び弾性測定法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−19694(P2010−19694A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180590(P2008−180590)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000132518)株式会社セコニック (22)