説明

液体カートリッジ

【課題】液体カートリッジの仕様が変更になっても、印刷装置やホスト装置のプログラム
を、液体カートリッジ仕様に合わせて変更する必要の無い液体カートリッジ、印刷装置お
よび印刷装置の制御方法を提供する。
【解決手段】装置1に装着され装置1へ液体を供給するインクカートリッジ10であって
、液体を収容する収容部と、書き換え可能な不揮発性の記憶部15であって収容部内の液
体の体積の閾値を記憶する記憶部15と、を備え、閾値は収容部が空に近いことを表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に書き換え可能な記憶部を備える液体カートリッジ、印刷装置および
印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク(液体)を液滴状態でヘッドから吐出して、被印刷物へ印刷を行うインク
ジェット方式の印刷装置では、ヘッドへ供給するインクを貯留している着脱式インクカー
トリッジ(液体カートリッジ)内のインク量情報を、インクカートリッジの記憶部(内蔵
メモリ)に記憶させている。また、インクカートリッジ内のインク量が空に近いことを示
す閾値情報は、印刷装置本体に記憶させている。
【0003】
特許文献1によれば、インクカートリッジの記憶部には、インクの内蔵量に関する情報
が記憶されている。印刷装置は、記憶部からインクの内蔵量に関する情報を読み取り、印
刷装置が算出した印刷等によるインクの消費量を、読み取った情報から減算して、インク
の内蔵量に関する情報を更新する。更新した情報は、インクカートリッジの記憶部へ上書
きされる。
【0004】
印刷装置は、最新のインクの内蔵量に関する情報と、印刷装置が有するインクカートリ
ッジ内のインク量が空に近いことを示す閾値情報と、を比較して、インクカートリッジ内
のインク量が空に近いか否かを判定する。インクの内蔵量が閾値に達すると、印刷装置は
、インク量が空に近くなったことを表示し、ユーザーに警告を発する。
【0005】
また、特許文献2によれば、印刷装置に替ってホスト装置が、インクカートリッジの記
憶部からの情報読み取りおよび閾値情報との比較判断を行っている。
【0006】
また、従来のインクジェット方式の印刷装置では、ヘッドを清浄な状態に保ち、常に確
実な印刷が行えるように、随時、ヘッドの保守を実施している。ヘッドの保守として、ヘ
ッドから被印刷物以外の所定部へインクを吐出したり、ヘッドからインクを強制的に吸引
して、ヘッドの詰まりや汚れ等を防いでいる。保守に使用されたインクは、廃液貯蔵カー
トリッジ(液体カートリッジ)に収容される。
【0007】
特許文献3によれば、廃液貯蔵カートリッジは記憶部を備え、記憶部には、収容した廃
液の量を都度加算した合計量が記憶されている。印刷装置は、廃液の合計量と、印刷装置
が保有している該当廃液貯蔵カートリッジの収容量である閾値と、を比較して、廃液貯蔵
カートリッジが満杯状態であるかどうかを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−199081号公報
【特許文献2】特開2001−71533号公報
【特許文献3】特開2002−29065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、例えばインクカートリッジに関する従来のいずれの技術においても、インクカ
ートリッジ内蔵メモリは、インクの内蔵量に関する情報を値として記憶しているだけであ
る。従って、インクの内蔵量に関する情報からインクの内蔵量が空に近いかどうかを判断
するためには、印刷装置やホスト装置が保有している閾値と比較して判断しなくてはなら
ない。そのため、印刷装置やホスト装置は、装着可能なインクカートリッジの仕様情報、
およびインク残量が残り少なくなったことを判定するための閾値を、基本情報として持っ
ておく必要がある。さらに、インクカートリッジの新規追加や、既存インクカートリッジ
のインク容量などの仕様変更が行われると、印刷装置のプログラムを変更し、インクカー
トリッジの仕様変更に合わせて、正しくインク内蔵量が把握できるようにしなくてはなら
ない。
【0010】
また、廃液貯蔵カートリッジに関する従来の技術では、廃液貯蔵カートリッジの記憶部
は、収容した廃液の内蔵量を値として記憶しているだけである。従って、廃液の内蔵量に
関する情報から廃液貯蔵カートリッジが満杯に近いかどうかを判断するためには、印刷装
置が保有している閾値と比較して判断しなくてはならない。そのため、印刷装置は、廃液
の総収容量を示す閾値、および装着可能な廃液貯蔵カートリッジの仕様情報を、基本情報
として持っておく必要がある。さらに、廃液貯蔵カートリッジの新規追加や、既存廃液貯
蔵カートリッジの収容量などの仕様変更が行われると、印刷装置のプログラムを変更し、
廃液貯蔵カートリッジの仕様変更に合わせて、正しく廃液の収容量、満杯状況が把握でき
るようにしなくてはならない。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされており、その目的の一つは、インクカートリッジや廃
液貯蔵カートリッジ等として使用される液体カートリッジの仕様が変更になっても、印刷
装置やホスト装置のプログラムを、液体カートリッジ仕様に合わせて変更する必要の無い
液体カートリッジ、印刷装置および印刷装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の液体カートリッジは、装置に装着され装置へ液体を供給する液体カートリッジ
であって、液体を収容する収容部と、書き換え可能な不揮発性の記憶部であって、前記収
容部内の前記液体の体積の閾値を記憶する記憶部と、を備え、前記閾値は前記収容部が空
に近いことを表す。
【0013】
この液体カートリッジによれば、液体カートリッジに備えている記憶部には、収容して
いる液体の体積が閾値として記憶されている。閾値は、液体が装置へ供給されて、残り少
なくなった時の体積を表す値である。従って、閾値を参照すれば、液体カートリッジ内の
液体の残量がなくなって、収容部が空に近い状態かどうかが、容易に把握できる。つまり
、液体カートリッジの取り替え時期が明確に判断できる。
【0014】
本発明の液体カートリッジは、装置に装着され装置からの液体を収容する液体カートリ
ッジであって、液体を収容する収容部と、書き換え可能な不揮発性の記憶部であって、収
容部内の液体の体積の閾値を記憶する記憶部と、を備え、閾値は収容部が満杯に近いこと
を表す。
【0015】
この液体カートリッジによれば、液体カートリッジに備えている記憶部には、収容して
いる液体の体積が閾値として記憶されている。閾値は、液体が液体カートリッジへ収容さ
れて、液体カートリッジが満杯に近くなった時の体積を表す値である。従って、閾値を参
照すれば、液体カートリッジ内が満杯に近い状態かどうかが、容易に把握できる。つまり
、液体カートリッジの取り替え時期が明確に判断できる。
【0016】
これらの液体カートリッジの場合、記憶部は、収容部に収容している液体の内蔵量に関
する情報をさらに記憶しており、液体カートリッジが装置に装着される場合に、記憶部と
装置とは電気的に導通し、記憶部は内蔵量に関する情報および閾値を装置に提供し、液体
の内蔵量が変化する毎に、記憶部内の内蔵量に関する情報が装置によって更新されること
が好ましい。
【0017】
この構成によれば、液体カートリッジの記憶部には、閾値に加え、収容部内の液体の内
蔵量に関して、最新の内蔵量が常に更新されて、記憶されている。この最新の内蔵量と閾
値とを比較して、液体カートリッジの交換時期を判定できる。判定するための内蔵量およ
び閾値は、共に液体カートリッジの記憶部に記憶されていて、記憶部の情報だけで、交換
時期の判定ができる。
【0018】
また、収容部は、複数種類の液体を収容する複数のタンクを備えており、記憶部は、複
数種類の液体のそれぞれの内蔵量に関する情報を個別に記憶していることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、収容部は、種々の機能を有する液体を個別に収容して、装置の要求
に応じて、適切な液体を供給する。記憶部は、液体個々の内蔵量を記憶しており、それぞ
れの使用量が、常時確認可能である。
【0020】
また、装置へ液体を供給する本発明の液体カートリッジの場合、液体はインクであり、
液体カートリッジは、インクカートリッジであることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、印刷を行うためのインクを装置へ供給するためのカートリッジとし
て使用するのに好適である。
【0022】
また、装置からの液体を収容する本発明の液体カートリッジの場合、液体は装置からの
廃液であり、液体カートリッジは、廃液貯蔵カートリッジであることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、使用されなかった廃液を回収するためのカートリッジとして使用す
るのに好適である。
【0024】
本発明の印刷装置は、ヘッドと着脱可能なインクカートリッジとを備え、インクカート
リッジから供給されるインクを、ヘッドより被印刷物上へ吐出して印刷を行う印刷装置で
あって、インクカートリッジは、インクを収容する収容部と、書き換え可能な不揮発性の
記憶部であって、収容部内のインクの体積の閾値を記憶する記憶部と、を備え、閾値は収
容部が空に近いことを表す。
【0025】
この印刷装置によれば、印刷に供されるインクを収容しているインクカートリッジは、
記憶部を備えていて、記憶部には、収容しているインクの体積が閾値として記憶されてい
る。閾値は、インクが印刷装置へ供給されて、残り少なくなった時の体積を表す値である
。従って、閾値を参照すれば、インクカートリッジ内のインクの残量がなくなって、収容
部が空に近い状態かどうかが、容易に把握できる。つまり、インクカートリッジの取り替
え時期が明確に判断できる。
【0026】
この場合、記憶部は収容部に残っているインクの内蔵量に関する情報をさらに記憶して
おり、印刷装置は、記憶部から内蔵量に関する情報を読み出す書込/読出部と、ヘッドに
よるインクの消費量および読み出された内蔵量に関する情報に基づいてインクの内蔵量を
示す情報を更新するインク消費量演算部と、を備え、書込/読出部は、更新された内蔵量
に関する情報を記憶部に書き込むことが好ましい。
【0027】
この構成によれば、インクカートリッジの記憶部には、閾値に加え、収容部内のインク
の内蔵量が、記憶されている。印刷装置は、記憶部から内蔵量を読み出し、印刷装置が印
刷に消費したインク量に基づいて、読み出した内蔵量を更新する。そして、更新した内蔵
量を記憶部へ書き込む。印刷装置はこうした機能を持つ書込/読出部や、インク消費量演
算部を備えていて、これら機能によって、インクカートリッジの記憶部は、更新された最
新のインク内蔵量を常に記憶している。
【0028】
また、インク消費量演算部は、印刷による前記ヘッドからのインク吐出量を算出する演
算と、インクカートリッジ装着時のヘッドへのインク吸引量およびヘッドのクリーニング
によるインク吸引量を算出する演算と、印刷時に被印刷物以外の所定部分へインクを吐出
してヘッドの詰まりを防ぐフラッシングによるインク吐出量を算出する演算と、演算の各
結果によるインク吐出量および吸引量を基にインクの内蔵量を新たに算出する演算と、に
基づいて消費量を算出することが好ましい。
【0029】
この構成によれば、印刷装置のインク消費量演算部は、印刷に供されたインクの量、お
よびヘッドの機能維持のためのクリーニング、フラッシング等に使用したインクの量、を
それぞれ算出し、その算出結果に基づいて、インクカートリッジのインクの内蔵量を新た
に算出する。インク消費量演算部によって、目的別のインク消費量が算出でき、インクカ
ートリッジのインクの内蔵量も把握できる。
【0030】
また、装着部をさらに備え、インクカートリッジが装着部に装着される場合に、記憶部
は、書込/読出部と電気的に導通状態となるとともに、内蔵量に関する情報および閾値を
書込/読出部へ提供し、インクの内蔵量が変化する毎に記憶部に記憶された内蔵量に関す
る情報が書込/読出部を介して更新されることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、インクカートリッジが印刷装置に装着されると、印刷装置は、イン
クカートリッジの記憶部から、インクの内蔵量情報、および閾値を読み出す。印刷装置に
よってインクが消費され、インク消費量演算部でインク消費量が算出されると、印刷装置
の書込/読出部を介して、インクカートリッジの記憶部のインク残量情報が更新される。
こうして、記憶部には、常に最新のインクの残量情報が記憶される。
【0032】
さらに、収容部は、複数種類のインクを収容する複数のタンクを備えており、記憶部は
、複数種類のインクのそれぞれの内蔵量に関する情報を個別に記憶していることが好まし
い。
【0033】
この構成によれば、収容部は、例えばカラー印刷のための複数色のインクを個別に収容
して、印刷装置の印刷表現の多様化が図れる。記憶部は、インク個々の内蔵量を記憶して
おり、それぞれの使用量が、常時確認可能である。
【0034】
本発明の印刷装置の制御方法は、ヘッドと着脱可能なインクカートリッジとを備え、イ
ンクカートリッジから供給されるインクを、ヘッドより被印刷物上へ吐出して印刷を行う
印刷装置の制御方法であって、インクカートリッジの書き換え可能な不揮発性の記憶部に
記憶されたインクの体積の閾値を読み出すステップと、インクカートリッジに残っている
インクの内蔵量が、読み出された閾値に達した場合には、所定の指示を行うステップと、
を有する。
【0035】
この印刷装置の制御方法によれば、インクカートリッジの記憶部は、収容しているイン
クの体積を閾値として有している。印刷装置は、インクカートリッジに残っているインク
の内蔵量が、記憶部から読み出した閾値に達した場合に、例えばインクが残り少なくなっ
ている旨の表示をディスプレイに表示したり、あるいはランプ表示で示すなどして、ユー
ザーへ告知する。ユーザーは、告知によってインクの内蔵量が残り少なくなっていること
を知ることができる。
【0036】
この場合、記憶部からインクの内蔵量に関する情報を読み出すステップと、ヘッドによ
るインクの消費量を算出するステップと、インクの消費量と、読み出された内蔵量に関す
る情報とに基づいて、内蔵量に関する情報を更新するステップと、更新された内蔵量に関
する情報が閾値に達した場合に、ニアエンドの判定を行うステップと、更新された内蔵量
に関する情報を記憶部に書き込むステップと、を有することが好ましい。
【0037】
この構成によれば、印刷装置は、印刷装置が消費したインクの消費量に基づいて、イン
クの内蔵量を算出する。そして、算出された内蔵量が閾値に達して、インクの内蔵量が残
り少ない状態であるニアエンドかを判定する。算出された内蔵量は、インクカートリッジ
の記憶部へ上書きされ、常に最新の内蔵量が記憶される。
【0038】
この場合、インクの消費量を算出するステップは、印刷による前記ヘッドからのインク
吐出量を算出する演算ステップと、インクカートリッジ装着時のヘッドへのインク吸引量
およびヘッドのクリーニングによるインク吸引量を算出する演算ステップと、印刷時に被
印刷物以外の所定部分へインクを吐出してヘッドの詰まりを防ぐフラッシングによるイン
ク吐出量を算出する演算ステップと、演算の各結果によるインク吐出量および吸引量を基
にインクの内蔵量を新たに算出する演算ステップと、を有することが好ましい。
【0039】
この構成によれば、インクの消費量を算出するステップは、印刷に供されたインクの量
、およびヘッドの機能維持のためのクリーニング、フラッシング等に使用したインクの量
、をそれぞれ算出し、その算出結果に基づいて、インクカートリッジのインクの内蔵量を
新たに算出する各ステップからなっている。各ステップにより、目的別のインク消費量が
算出でき、且つインクカートリッジのインクの内蔵量も把握できる。
【0040】
本発明の印刷装置は、ヘッドと着脱可能なインクカートリッジを備え、インクカートリ
ッジから供給されるインクを、ヘッドより被印刷物上へ吐出して印刷を行い、印刷に供さ
れないインクを廃液として収容する廃液貯蔵カートリッジをさらに備えた印刷装置であっ
て、廃液貯蔵カートリッジは、廃液を収容する収容部と、書き換え可能な不揮発性の記憶
部であって、収容部内の廃液の体積の閾値を記憶する記憶部と、を備え、閾値は前記収容
部が満杯に近いことを表す。
【0041】
この印刷装置によれば、印刷に供されないインクを廃液として収容している廃液貯蔵カ
ートリッジは、記憶部を備えていて、記憶部には、収容部内の廃液の体積が閾値として記
憶されている。閾値は、廃液が廃液貯蔵カートリッジへ供給されて、満杯に近くなった時
の体積を表す値である。従って、閾値を参照すれば、廃液貯蔵カートリッジ内の廃液の量
が満杯に近い状態かどうかが、容易に把握できる。つまり、廃液貯蔵カートリッジの取り
替え時期が明確に判断できる。
【0042】
この場合、記憶部は、収容部に収容されている廃液の内蔵量を示す情報をさらに記憶し
ており、印刷装置は、記憶部から内蔵量を示す情報を読み出す書込/読出部と、ヘッドに
よるインクの吐出量のうち廃液に該当する吐出量および読み出された内蔵量を示す情報に
基づいて廃液の内蔵量を示す情報を更新する廃液量演算部と、を備え、書込/読出部は、
更新された内蔵量を示す情報を記憶部に書き込むことが好ましい。
【0043】
この構成によれば、廃液貯蔵カートリッジの記憶部には、閾値に加え、収容部内の廃液
の内蔵量が、記憶されている。印刷装置は、記憶部から内蔵量を読み出し、印刷装置が印
刷以外に消費したインク量である廃液量に基づいて、読み出した内蔵量を更新する。そし
て、更新した内蔵量を記憶部へ書き込む。印刷装置はこうした機能を持つ書込/読出部や
、廃液量演算部を備えていて、これら機能によって、廃液貯蔵カートリッジの記憶部は、
更新された最新の廃液の内蔵量を常に記憶している。
【0044】
この場合、廃液量演算部は、インクカートリッジ装着時の前記ヘッドへのインク吸引量
を算出する演算と、ヘッドのクリーニングによるインク吸引量を算出する演算と、印刷時
に被印刷物以外の所定部分へインクを吐出してヘッドの詰まりを防ぐフラッシングによる
インク吐出量を算出する演算と、演算の各結果によるインク吐出量および吸引量を基に廃
液の内蔵量を新たに算出する演算と、に基づいて廃液量を算出することが好ましい。
【0045】
この構成によれば、印刷装置の廃液量演算部は、クリーニング、フラッシングに使用し
たインクの量を廃液量として算出し、その算出結果に基づいて、廃液貯蔵カートリッジの
廃液の内蔵量を新たに算出する。廃液量演算部によって、最新の廃液量が常に把握されて
いる。
【0046】
この場合、装着部をさらに備え、廃液貯蔵カートリッジが装着部に装着される場合に、
記憶部は、書込/読出部と電気的に導通状態となるとともに、内蔵量を示す情報および閾
値を書込/読出部へ提供し、廃液の内蔵量が変化する毎に記憶部に記憶された内蔵量を示
す情報が前記書込/読出部を介して更新されることが好ましい。
【0047】
この構成によれば、廃液貯蔵カートリッジが印刷装置に装着されると、印刷装置は、廃
液貯蔵カートリッジの記憶部から、廃液の内蔵量情報、および閾値を読み出す。印刷装置
によってインクが消費され、廃液量演算部で廃液量が算出されると、印刷装置の書込/読
出部を介して、廃液貯蔵カートリッジの記憶部の廃液量情報が更新される。こうして、記
憶部には、常に最新の廃液量情報が記憶される。
【0048】
この場合、廃液貯蔵カートリッジがインクカートリッジと一体の構成になっていること
が好ましい。
【0049】
この構成によれば、廃液とインクとが一体のカートリッジに収容されるため、装着構造
が簡単であり、記憶部も一箇所にまとめることができ、取り扱いやすいカートリッジとな
る。
【0050】
本発明の印刷装置の制御方法は、ヘッドと着脱可能なインクカートリッジとを備え、イ
ンクカートリッジから供給されるインクを、ヘッドより被印刷物上へ吐出して印刷を行い
、印刷に供されないインクを廃液として収容する収容部を備えた廃液貯蔵カートリッジを
さらに備えた印刷装置の制御方法であって、廃液貯蔵カートリッジの書き換え可能な不揮
発性の記憶部に記憶された廃液の体積の閾値を読み出すステップと、廃液貯蔵カートリッ
ジに収容されている廃液の内蔵量が、読み出された閾値に達した場合には、所定の指示を
行うステップと、を有する。
【0051】
この印刷装置の制御方法によれば、廃液貯蔵カートリッジの記憶部は、廃液の体積を閾
値として記憶している。印刷装置は、廃液貯蔵カートリッジに収容している廃液の内蔵量
が、記憶部から読み出した閾値に達した場合に、例えば廃液が満杯に近くなっている旨の
表示をディスプレイに表示したり、あるいはランプ表示で示すなどして、ユーザーへ告知
する。ユーザーは、告知によって廃液が満杯に近くなっていることを知ることができる。
【0052】
この場合、記憶部から廃液の内蔵量を示す情報を読み出すステップと、ヘッドによるイ
ンクの消費量のうち廃液に該当する消費量を算出するステップと、廃液に該当する消費量
と、読み出された内蔵量を示す情報とに基づいて、内蔵量を示す情報を更新するステップ
と、更新された内蔵量を示す情報が閾値に達した場合に、ニアフルの判定を行うステップ
と、更新された内蔵量を示す情報を記憶部に書き込むステップと、を有するすることが好
ましい。
【0053】
この構成によれば、印刷装置は、印刷装置が消費したインクの消費量に基づいて、廃液
に該当するインク量を基に、廃液貯蔵カートリッジの廃液内蔵量を算出する。そして、算
出された内蔵量が閾値に達して、廃液量が満杯に近いニアフルかを判定する。算出された
内蔵量は、廃液貯蔵カートリッジの記憶部へ上書きされ、常に最新の内蔵量が記憶されて
いる。
【0054】
この場合、廃液に該当する消費量を算出するステップは、インクカートリッジ装着時の
ヘッドへのインク吸引量を算出する演算ステップと、ヘッドのクリーニングによるインク
吸引量を算出する演算ステップと、印刷時に被印刷物以外の所定部分へインクを吐出して
ヘッドの詰まりを防ぐフラッシングによるインク吐出量を算出する演算ステップと、演算
の各結果によるインク吐出量および吸引量を基に廃液の内蔵量を新たに算出する演算ステ
ップと、を有することが好ましい。
【0055】
この構成によれば、インクの消費量を算出するステップは、印刷に供されたインクの量
、およびヘッドの機能維持のためのクリーニング、フラッシング等に使用したインクの量
、をそれぞれ算出し、その算出結果に基づいて、廃液貯蔵カートリッジの廃液の内蔵量を
新たに算出する各ステップからなっている。各ステップにより、廃液量を含めた目的別の
インク消費量が算出でき、緻密なインク管理が可能である。
【0056】
また、本発明のプリンタは、
ヘッドと着脱可能なインクカートリッジと、
前記インクカートリッジから供給されるインクを、前記ヘッドより被印刷物上へ吐出し
て印刷を行い、前記印刷に供されない前記インクを廃液として収容する廃液貯蔵カートリ
ッジと有する液体カートリッジを備えた印刷装置であって、
前記インクカートリッジおよび前記廃液貯蔵カートリッジは、それぞれ、前記液体を収
容する収容部を備えて、一体型であり、
当該液体カートリッジは、各前記収容部内の前記液体の体積の閾値を記憶する、書き換
え可能な不揮発性の記憶部を備え、
前記インクカートリッジの閾値は前記インクカートリッジの収容部が空に近いことを表
し、
前記廃液貯蔵カートリッジの閾値は前記廃液貯蔵カートリッジの収容部が満杯に近いこ
とを表し、
前記インクカートリッジの収用部のインク量を検出する第1の検出手段と、
前記廃液貯蔵カートリッジの閾値の廃液インク量を検出する第2の検出手段と、
を備え、
前記第1の検出手段が、前記インク量が前記インクカートリッジの閾値以下であること
を検出するか、
前記第2の検出手段が、前記廃液インク量が前記廃液貯蔵カートリッジの閾値以上であ
ることを検出するときは、前記一体型カートリッジの寿命であると判断することを特徴と
する。
【0057】
この構成によれば、廃液インク収用部と、使用前インク収用部とが、一体的に形成され
ているが、廃液インク収用部の体積<使用前インク収用部のYMCK色の総体積のため、
使用前インクをすべてクリーニング操作などで吸い出してしまうと、廃液インク収用部に
廃インクが収用しきれなくなってしまうという課題がある。
【0058】
本願発明では、この課題を解決するために、廃インク収用部にもニアフル検出機構を設
け、廃インク収用部のインクがフルになるか、使用前インク収用部のインクがエンドにな
るか、を検出し、いずれかがその状態になったとき、インクカートリッジの寿命と判断で
きるようにした。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のインクカートリッジと装置とのデータ授受関係を示す模式図。
【図2】本発明の廃液貯蔵カートリッジと装置とのデータ授受関係を示す模式図。
【図3】印刷装置の外観斜視図。
【図4】インクカートリッジの外観図。
【図5】印刷装置のインク供給系統の構成を示す断面図。
【図6】印刷装置の概構成を示す模式図。
【図7】ヘッドの構成を示す平面図。
【図8】インクカートリッジ記憶部と印刷装置とのデータ処理の概念を示すフローチャート。
【図9】インクカートリッジ記憶部と印刷装置とのインク量に関する処理を示すブロック図。
【図10】待機状態からの演算処理およびデータ保存処理の流れを示すフローチャート。
【図11】電源ON時の実行処理の流れを示すフローチャート。
【図12】インク消費量の演算、ニアエンド判定およびデータ書き込みの処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下に添付図面を参照して、本発明の液体カートリッジとしてのインクカートリッジに
ついて説明する。図1に示すように、インクカートリッジ10は、装置1に装着されて、
インクカートリッジ10が内蔵している液体を装置1へ供給する。また、インクカートリ
ッジ10は、書き換え可能な不揮発性の記憶部15を備えている。記憶部15は、インク
カートリッジが内蔵する液体の内蔵量に関する残量情報を、値として記憶する液体残量メ
モリ部51と、液体の体積の閾値を記憶するニアエンド閾値メモリ部50とを有する。閾
値は、液体の残量が残り少ない空の状態に近いことを表す値である。装置1は、制御部3
6と、制御状態を表示する表示部56と、液体の吐出等を行う図示していない機構部と、
を備えている。制御部36は、インクカートリッジ10の記憶部15およびパーソナルコ
ンピュータなどのホストととの入出力を扱う入出力インタフェース52と、各種の処理を
行うCPU53と、ROM54と、RAM55と、を有している。
【0061】
インクカートリッジ10が装置1に装着されると、インクカートリッジ10の記憶部1
5と装置1の制御部36とが電気的に導通する。そして、液体残量メモリ部51から、イ
ンクカートリッジ10が内蔵する液体の残量値が、制御部36へ取り込まれ、ニアエンド
閾値メモリ部50から、ニアエンド閾値が制御部36へ取り込まれる。制御部36は、残
量値とニアエンド閾値とを比較して、インクカートリッジ10内の液体が空に近い状態か
どうかを判定する。液体残量メモリ部51に記憶されている残量値は、装置1の機構部か
ら液体が吐出等されることで、インクカートリッジ内の液体の残量が変化すると、制御部
36によって、都度、更新される。更新された残量値は、記憶部15へ書き込まれる。イ
ンクカートリッジ10が複数種類の液体を収容していても、液体個々に、同様な管理およ
び処理を行う。
【0062】
インクカートリッジ10に内蔵の液体が空に近いことを表すニアエンド閾値と、液体の
残量値とを、インクカートリッジ10に持たせることにより、制御部36は、記憶部15
からのデータ取り込み、データ比較、および残量値の更新などの汎用的な処理のための能
力を持つだけでよい。従って、装置1の制御部36は、インクカートリッジ10の新規追
加、仕様変更等によるバージョンアップが不必要で、装置維持面でユーザーの負担が少な
い構成である。
【0063】
次に、本発明の廃液貯蔵カートリッジについて説明する。図2に示すように、廃液貯蔵
カートリッジ19は、装置1に装着されて、装置1からの廃液を収容する。また、廃液貯
蔵カートリッジ19は、書き換え可能な不揮発性の記憶部15を備えている。記憶部15
は、廃液貯蔵カートリッジ19の収容部に内蔵する廃液の内蔵量に関する情報を、値とし
て記憶する廃液量メモリ部61と、収容部の体積の閾値を記憶するニアフル閾値メモリ部
60とを有する。閾値は、廃液が収容部に満杯近いことを表す値である。装置1は、制御
部36と、制御状態を表示する表示部56と、装置1の機能作用を行う図示していない機
構部と、を備えている。制御部36は、廃液貯蔵カートリッジ19の記憶部15およびパ
ーソナルコンピュータなどのホストとの入出力を扱う入出力インタフェース52と、各種
の処理を行うCPU53と、ROM54と、RAM55とを有している。
【0064】
廃液貯蔵カートリッジ19が装置1に装着されると、廃液貯蔵カートリッジ19の記憶
部15と装置1の制御部36とが電気的に導通する。そして、廃液量メモリ部61から、
廃液貯蔵カートリッジ19が内蔵する廃液の内蔵量の値が、制御部36へ取り込まれ、ニ
アフル閾値メモリ部60から、ニアフル閾値が制御部36へ取り込まれる。制御部36は
、内蔵量の値とニアフル閾値とを比較して、廃液貯蔵カートリッジ19内の廃液が満杯に
近い状態かどうかを判定する。廃液量メモリ部61に記憶されている内蔵量の値は、装置
1の機構部から廃液が回収されることで、廃液貯蔵カートリッジ内の廃液の内蔵量が変化
すると、制御部36によって、都度、更新される。更新された内蔵量の値は、記憶部15
へ書き込まれる。
【0065】
廃液貯蔵カートリッジ19に内蔵の廃液が満杯に近いことを表すニアフル閾値と、廃液
の内蔵量の値とを、廃液貯蔵カートリッジ19に持たせることにより、制御部36は、記
憶部15からのデータ取り込み、データ比較、および内蔵値の更新などの汎用的な処理の
ための能力を持つだけでよい。従って、装置1の制御部36は、廃液貯蔵カートリッジ1
9の新規追加、仕様変更等によるバージョンアップが不必要で、装置維持面でユーザーの
負担がない構成である。
【0066】
次に、装置1として、インクカートリッジ10が装着され、インクを液滴状態でヘッド
から吐出して、被印刷物である用紙へ印刷を行うインクジェット方式の印刷装置に廃液貯
蔵カートリッジ19を取り付けた場合を例に、本発明について詳細に説明する。
【実施例1】
【0067】
図3は本発明の印刷装置1の外観斜視図である。印刷装置1は、基部2と、基部2の一
端部に位置する片持部4と、片持部4を介して片持ち支持されている記録部3とから構成
されている。そして、基部2と記録部3との間には、用紙が挿入される用紙搬送路5が設
けられている。用紙搬送路5は、片持部4以外の3方向が、正面開口5a、背面開口5b
、側面開口5cとして連通している。また、記録部3の基部2側と反対側に、インクカー
トリッジ10の脱着等のための開口部7と、開口部7を塞ぐカバー6と、カバー6を記録
部3へ取り付けるヒンジ6aと、カバー6の一隅にあり開閉を容易にするための開閉突起
6bと、が設けられている。片持部4の背面開口5b側には、用紙搬送路5の用紙を押さ
えたり、あるいは開放するためのレリーズレバー8が備えられている。レリーズレバー8
が用紙を開放している場合には、ユーザーは手動で用紙を抜き差しできる。そして、イン
クカートリッジ10が、開口部7から脱着可能なように、記録部3内へ収容されている。
【0068】
図4は、インクカートリッジ10の外観図である。インクカートリッジ10は、印刷用
のシアン色インクを収容するシアン色タンク11aと、マゼンタ色タンク11bと、イエ
ロ色タンク11cと、クロ色タンク11dと、廃液貯蔵カートリッジ19である廃液タン
ク11eと、を順に連結して一体化した略直方体の収容部11を備え、インクカートリッ
ジ10を印刷装置1からとりだすためのタブ16が、収容部11の一面に設けられている
。また、各インクタンクは、タブ16が設けられている面と反対側の面に、インクを印刷
装置1へ供給するためのインク供給口12をそれぞれ備え、廃液タンク11eは、廃液を
受け入れるための廃液受入口13を備えている。
【0069】
さらに、廃液タンク11eの一側面には、インクカートリッジ10に関する情報を記憶
する記憶部15が設けられている。記憶部15は、書き換え可能な不揮発性のメモリであ
るフラッシュメモリなどのEEPROMである。
【0070】
図5は、印刷装置1のインク供給系統の構成を示す断面図であり、図6は、印刷装置1
の概構成を示す模式図である。両図を参照して印刷装置1のインクに関する部分から説明
をする。印刷装置1の記録部3は、インクカートリッジ10を装着するカートリッジホル
ダ31と、カートリッジホルダ31からヘッド20へインクを供給するためのインク供給
チューブ32と、ヘッド20を保持するキャリッジ25と、キャリッジ25の移動をガイ
ドするガイド軸26、およびキャリッジ25に設けられているスライド溝40と係合する
ガイドプレート28と、を内蔵している。
【0071】
ガイド軸26とガイドプレート28とは、記録部3の側面開口5c側から片持部4の方
向へ延在しており、このため、キャリッジ25は、ガイド軸26、ガイドプレート28に
沿って移動可能である。キャリッジ25の移動は、ガイドプレート28と平行に配置され
、両端を回転自在のプーリーで張設されている、リング状のタイミングベルト41によっ
て行われる。片持部4側のプーリ―42は、モータと連動しており、プーリー42の回転
によってタイミングベルト41が回転し、タイミングベルト41と連結しているキャリッ
ジ25を移動させることができる。
【0072】
カートリッジホルダ31からは、さらに、廃液をインクカートリッジ10へ受け入れる
ための廃液チューブ33が設けられており、片持部4の下部に設置されているポンプ34
、キャッピング部35と連通している。キャッピング部35は、ヘッド20の機能を維持
するためのメンテナンス装置である。ヘッド20がキャッピング部35の直上へ移動して
来ると、キャッピング部35はカム機構によって上昇し、ヘッド20と密着する。そして
、ポンプ34の吸引作用によりヘッド20からインクを強制的に吸引する。この吸引作用
によって、インク乾燥によるヘッド20の詰まり、異物の付着、等を防ぐことができる。
このメンテナンスをクリーニングと称する。また、印刷の途中において、キャッピング部
35の位置で、ヘッドから一斉にインクを吐出して、インク吐出の少ないヘッド部が、詰
まりなどの異常をきたさないようにする。このメンテナンスをフラッシングと称する。ク
リーニング、フラッシングは、所定量の印刷がなされた時点で定期的に行われ、常に、正
常なインク吐出のできる状態が維持される。
【0073】
ここで、インクカートリッジ10を装着するカートリッジホルダ31について説明する
。カートリッジホルダ31は、インクカートリッジ10を装着する内側部分に、インクカ
ートリッジ10の対応するインク供給口12からインクを受け入れる4つのインク受入部
18と、廃液受入口13へ廃液を供給する廃液供給部17と、記憶部15と導通してデー
タの授受を行うホルダ基板部14と、を備えている。
【0074】
カートリッジホルダ31へインクカートリッジ10が装着されると、インク供給口12
とインク受入部18とが接続され、各インク色毎にインク供給チューブ32a、32b、
32c、32dを通してヘッド20へ各インクが供給される。この時、ホルダ基板部14
に対してインクカートリッジ10の記憶部15が、反対方向へ向いて装着されないように
、図4に示す通り、記憶部15が設けられている面は角状で、反対側の面は円状となって
いる。従って、インクカートリッジ10は、カートリッジホルダ31へ正しい方向でのみ
、確実に押し込むことができる。
【0075】
この場合、インクカートリッジ10と、キャリッジ25とが別々に離れて位置する、い
わゆるオフキャリッジ構造を採用しているが、キャリッジ25がインクカートリッジ10
を背負う構成で、一体となって移動する、いわゆるオンキャリッジ構造を採用することも
可能である。
【0076】
次に、用紙9の搬送機構について説明する。印刷装置1の背面開口5bから正面開口5
aに至る用紙搬送路5の下面は、板状部材のプラテン21で主に構成され、さらに用紙9
の搬送の上流側である背面開口5b方向から、用紙9を感知するBOFレバー27と、用
紙送りローラ24と、用紙搬送サブローラ30と、が配置されている。プラテン21と対
向する用紙搬送路5の上面は、背面開口5b方向から、用紙ガイド22と、用紙送りロー
ラ24に対峙する用紙搬送メインローラ23と、キャリッジ25と、用紙搬送サブローラ
30に対峙するTOFレバー29と、が配置されている。TOFレバー29は、BOFレ
バー27と同様、用紙9を感知するためのものである。そして、プラテン21の下方には
、制御部36が配置されている。
【0077】
印刷装置1では、図5に示すように用紙搬送路5の上下方向が離れている状態の時、用
紙9を挿入することができる。用紙搬送路5に用紙9を挿入して、レリーズレバー8を上
げると、プラテン21が上昇して用紙を挟み込む。この時、BOFレバー27は用紙9に
よって押し下げられ、TOFレバー29は押し上げられて、それぞれ用紙9が挿入された
ことを感知する。用紙9は、用紙搬送メインローラ23と用紙送りローラ24とで挟まれ
、モータで駆動される用紙搬送メインローラ23の回転によって、背面開口5b方向へ一
旦送られる。用紙9がTOFレバー29から離れると、その位置が用紙9の先端部である
と認識して、その後の用紙9送りを制御する基準となる。用紙9が、BOFレバー27あ
るいはTOFレバー29のどちらかにかかっていない状態で挿入されると、まず、両レバ
ーで用紙9が感知される位置まで、用紙を移動させてから、先端部の認識を行う。
【0078】
このように用紙搬送路5の3方向が開口している構成であるため、特に、綴じられた多
数の用紙の中の一枚に、綴じたまま印刷することなどの、特殊な状態での印刷が可能であ
る。定型紙給材装置やロール紙給材装置を取り付けての自動給紙も可能である。
【0079】
次に、図7を基にヘッド20の構成について説明する。図7は、ヘッド20を用紙9の
側から見た図である。ヘッド20は、インクを吐出する128個のノズル45を有する。
そして、128個のノズル45は、それぞれ64個のノズル45を有するA列、B列の2
つのノズル列からなる。A列に属するノズル45のうち、32個のノズル45(20a)
は、シアン色のインクを吐出し、残りの32個のノズル45(20b)は、マゼンタ色の
インクを吐出する。同様に、B列のノズル45の20c、20dは、それぞれイエロ色と
クロ色を吐出する。この構成のヘッド20では、A列およびB列が用紙9の搬送方向と同
じ方向に配置されており、印刷時に32個のノズル45で印刷した幅ずつ用紙送りが行わ
れる。例えば、インクをすべてクロ色にすると、64個のノズル45で印刷した幅で用紙
送りができ、印刷速度を早めることも可能である。
【0080】
ノズル45からインクを吐出する機構は、既に知られている静電アクチュエータ方式を
用いており、顔料系、染料系等のインクの種類に適した吐出パターンや、吐出量を設定す
ることができる。従って、インクを幅広く選定でき、多用途の印刷に対応できるものであ
る。異なったインクを収容しているインクカートリッジ10を使用する場合には、印刷装
置1のインク流路の洗浄が必要となる。その場合、インクの代わりに洗浄液を収容したイ
ンクカートリッジ10を、印刷装置1に装着し、クリーニングを行う。洗浄液は同じイン
クカートリッジ10へ廃液として回収されるため、印刷装置1側は、洗浄のためのプログ
ラムや付加装置等の、特別な配慮が不要である。なお、インクを吐出する機構は、静電ア
クチュエータ方式以外に、ピエゾ素子や電気熱変換素子を用いた方式であっても良い。
【0081】
さらに、インクカートリッジ10は、インクの収容部と廃液の収容部とが一体の構成の
ものが扱いやすいが、インクと廃液の収容部を別体にして、それぞれ個別に交換すること
も可能である。また、インクも各色を別体の収容部として、それぞれ個別に交換できるよ
うにしても良い。こうすることにより、各インク色および廃液をより緻密に管理すること
ができる。
【0082】
以上、印刷装置1の構成および作用について説明した。次に、インクに関連する印刷装
置1の制御方法について述べる。図8は、インクカートリッジ10の記憶部15と印刷装
置1の制御部36とのデータ処理の概念を示すフローチャートである。インクカートリッ
ジ10が印刷装置1へ装着されると、インクカートリッジ10の記憶部15と印刷装置の
制御部36とが電気的に導通し、記憶部15のインクに関するデータが制御部36へ送出
される(ステップS1)。制御部36において、CPU53の制御下に、記憶部15のデ
ータがRAM55に取り込まれ、ヘッド20やポンプ34の駆動制御等が予め組み込まれ
ているROM54の情報と合わせて、各種制御が行われる。
【0083】
インクに関する主なデータは、図9のインクカートリッジ記憶部15に示す通り、イン
ク残量を記憶するインク残量メモリ部51と、インクが残り少なくなったことを判定する
ためのニアエンド閾値を記憶するニアエンド閾値メモリ部50と、廃液量を記憶する廃液
量メモリ部61と、廃液量が廃液タンク11eに満杯近いことを判定するためのニアフル
閾値を記憶するニアフル閾値メモリ部60と、である。その他に、インクが顔料系か染料
系かの種別や、収容しているインクの色や、製造年月日・シリアル番号などの情報がある
。このうち、印刷装置1のインク消費に基づき編集および更新されるデータは、インク残
量値と、廃液量値である。
【0084】
記憶部15から送出されたデータ(情報)は、制御部36のRAM55の生データ領域
へ取り込まれ保存される(S2)。さらに、インク残量値と、廃液量値とは、編集のため
編集データ領域へ送られる(S3)。編集データ領域のデータは、変数(パラメータ)と
して扱われ、パラメータ作業領域に取り込まれて演算される(S4)。パラメータ作業領
域での演算時には、ヘッド20からのインクの吐出回数を数えることによって、インクの
消費量を算出するショットカウンタ値領域からのデータの取り込み(S5)と、フラッシ
ングおよびクリーニングによるインクの消費量を算出するフラッシングカウンタ値領域か
らのデータの取り込み(S6)とを行う。また、インクの種別による、ヘッド20の吐出
パターンや、一回当たりのインク吐出量等の各データも取り込む(S7)。
【0085】
ショットカウンタ値領域は、印刷にかかわるヘッド20からのインクの吐出回数を計数
してインク消費量算出の処理を行う。また、フラッシングカウンタ値領域は、キャッピン
グ位置でのヘッド20からのフラッシングによるインク吐出回数を計数するとともに、同
じくキャッピング位置でのクリーニングによるインク吸引量を、ヘッド20からのインク
吐出回数に置き換えて計数することにより、インク消費量算出の処理を行う。つまり、イ
ンクの総消費量は、ショットカウンタ値領域で算出したインク消費量の合計である。そし
て、廃液として回収するインクの量は、フラッシングカウンタ値領域で算出したインク消
費量が該当する。インク量は、吐出回数を代用値として表される。
【0086】
ショットカウンタ値領域におけるインク消費量算出の処理は、ヘッド20からのインク
の吐出回数が、一定の回数に達するごとに、パラメータ作業領域において取り込まれてい
るインク残量値から所定の値、例えば1Digitずつを減算していく。この場合、イン
ク残量値は、一定の吐出回数で吐出されるインク量を基に、Digit値に換算した値を
用いる。ヘッド20からインクが吐出されると、インク残量を示すDigit値がしだい
に減少していき、インクが消費される過程が把握できる。なお、この処理は、インクカー
トリッジ10が収容しているインク色毎に行われる。
【0087】
フラッシングカウンタ値領域におけるインク消費量算出の処理も、同様に行われ、吐出
回数が、一定の回数に達するごとに、パラメータ作業領域において取り込まれている廃液
量値から所定の値、例えば1Digitずつを減算していく。この場合、廃液量値は、一
定の吐出回数で吐出されるインク量を基に、収容できる廃液量をDigit値に換算した
値を用いる。フラッシングおよびクリーニングが行われると、廃液量を示すDigit値
がしだいに減少していく。
【0088】
ここでは、Digit値を減算する処理方法を説明したが、加算して行く処理方法であ
っても、同様にインク残量、廃液量を管理できる。また、インク残量、廃液量をDigi
t値に換算せずに、例えば、インクカートリッジ容量を50cc、一定吐出回数のインク
吐出量を0.1ccと算定して、容量値をそのまま使用しても良い。あるいは、容量値で
はなく重量値を使用することも可能である。
【0089】
このように、パラメータ作業領域で処理されたインク残量および廃液量のデータは、記
憶部15からデータを読み出すのと逆の流れにより、記憶部15へ書き込まれる。まず、
パラメータ作業領域で処理されたデータは、編集データ領域へ書き込まれて保存される。
この時、編集データ領域からパラメータ作業領域へ、データを読み込んで処理を行い、再
び編集データ領域へ処理データを書き込む、という一連の作業は、常に1セットになって
おり、都度セットで実行される。編集データ領域に書き込まれたデータは、生データ領域
のデータと比較され、データが更新されているかどうかの判定を受け、更新されていれば
インクカートリッジ10の記憶部15へ書き込まれる。
【0090】
以上述べたデータ処理について、図9のブロック図を参照して、さらに詳細に説明する
。インクカートリッジ10の記憶部15は、インク内蔵量に関する情報として、インク残
量を記憶するインク残量メモリ部51と、ニアエンド閾値を記憶するニアエンド閾値メモ
リ部50と、廃液量を記憶する廃液量メモリ部61と、ニアフル閾値を記憶するニアフル
閾値メモリ部60と、を有する。
【0091】
インクカートリッジ10が印刷装置1に装着されると、印刷装置1の制御部36の書込
/読出部78は、記憶部15からインク残量、ニアエンド閾値、廃液量およびニアフル閾
値を読み出して保存する。書込/読出部78は、図8で述べた生データ領域に該当する。
そして、インク残量および廃液量は、編集データ領域/パラメータ作業領域であるインク
消費量演算部72と廃液量演算部76へ、それぞれ取り込まれる。
【0092】
インク消費量演算部72は、ヘッド20から吐出されたインク消費量を算出するため、
ショットカウンタ値領域である印刷制御部70、フラッシングカウンタ値領域であるフラ
ッシング制御部73およびクリーニング制御部74へアクセスして、それぞれが持ってい
るデータを基に全インク消費量を算出する。
【0093】
印刷制御部70は、ホストからの印刷指令を受けて、ヘッド駆動部71を介して、各色
のインクを吐出するヘッド20a、20b、20c、20dを駆動させ、用紙9へ印刷を
行う。同時に、印刷に要したインク吐出回数をカウントしており、インク消費量演算部7
2は、この吐出回数をインク消費量の値として算出する。
【0094】
また、クリーニング制御部74は、一定の印刷実行後等に、ポンプ駆動部75を介して
、ヘッド20からインクを吸引するクリーニングを行う。また、インクカートリッジ10
装着時には、ヘッド20までインクが充填するように、インクの吸引を行う。インク消費
量演算部72は、ポンプ一回転のインク吸引量とポンプ34の回転数とから吸引したイン
ク量を算出する。インク量としては、印刷に供されたインク消費量の演算に合わせて、吸
引したインク量をヘッド20からのインク吐出回数に置き換えた値にして用いる。クリー
ニングは、ホストからの指令による実行や、印刷装置1に設けられているボタン等のクリ
ーニング指令部79の指令を、検知部80で受けて強制的に実行することもできる。この
強制クリーニングによるインク消費量も、クリーニングにより吸引されたインク量の演算
に含まれる。
【0095】
さらに、フラッシング制御部73は、一定の印刷実行毎に行われるフラッシングによっ
て吐出されるインク量を算出する。インク消費量は、印刷制御部70と同様に吐出回数で
算出される。そして、印刷に供されたインク消費量、クリーニングにより吸引されたイン
ク量、フラッシングによって吐出されたインク量の各演算結果に基づいて、インク残量が
新たに算出される。新たに算出されたインク残量は、書込/読出部78を通じて、インク
カートリッジ10のインク残量メモリ部51へ書き込まれる。このようにして、インク残
量メモリ部51は、常に最新のインク残量情報を保持している。
【0096】
インク残量メモリ部51へ書き込まれる更新されたインク残量は、一定の吐出回数を1
DigitとしてDigit数で表されている。そのため、電源OFF等の作動終了時に
は、一定の吐出回数に満たない端数回数の処理を行う。端数回数が一定の吐出回数の半分
以上の回数の場合は、繰り上げて1Digitとして扱う。それ以下の場合は、切り捨て
る。繰上げの端数処理が行われたという情報は、インク残量メモリ部51へフラグとして
記憶される。
【0097】
廃液量演算部76は、クリーニングにより吸引されたインク量の演算、フラッシングに
よって吐出されたインク量の演算によるインク消費量を、廃液と判断して、既に読み込ま
れている廃液量の値を更新する。更新された廃液量は、書込/読出部78を通じて、イン
クカートリッジ10の廃液量メモリ部61へ書き込まれる。このようにして、廃液量メモ
リ部61は、常に最新の廃液量情報を保持している。
【0098】
判定部77は、書込/読出部78に読み込まれているニアエンド閾値と、インク消費量
演算部72により算出された新たなインク残量と、を比較していて、インク残量の値がニ
アエンド閾値に達した場合に、インク残量が残り少なくなったニアエンドの状態である、
と判定する。そして、表示部56にニアエンドであるとの表示を、LEDのランプ点滅で
行う。
【0099】
判定部77は、さらに、書込/読出部78に読み込まれているニアフル閾値と、インク
消費量演算部72による、クリーニングにより吸引されたインク量の演算及びフラッシン
グによって吐出されたインク量の演算で算出された新たな廃液量と、を比較していて、廃
液量の値がニアフル閾値に達した場合に、廃液量が廃液タンク11eに満杯に近くなった
ニアフルの状態である、と判定する。そして、表示部56にニアフルであるとの表示を、
LEDのランプ点滅で行う。これらニアエンド、ニアフルの表示は、液晶パネルによる画
像や文字によって行い、ユーザーに知らせる方法もある。
【0100】
ここで、インクカートリッジ10の記憶部15のデータ構造について簡単に説明する。
表1がデータ構造の一部を表す表である。記憶部15は、更新情報として、4種類のイン
クのインク残量と、廃液吸収可能量とを持ち、閾値情報として、インクのニアエンド閾値
と、廃液のニアフル閾値と、を持っている。すなわち、インクカートリッジ10にかかわ
る固有の情報は、すべて記憶部15で有していることになる。
【0101】
【表1】

【0102】
このように、インクカートリッジ10の記憶部15が、インク残量等の情報に加え、ニ
アエンド閾値をも有することにより、印刷装置1の制御部36は、装着可能なインクカー
トリッジ10の個別情報を保持する必要が無くなる。従って、制御部36は、インク残量
の更新、更新したインク残量とニアエンド閾値との比較判定などの、汎用的な処理が行え
ればよく、インクカートリッジ10の新規追加、仕様変更などがあっても、制御部36の
プログラム変更を行う等の必要が無い。
【0103】
また、廃液貯蔵カートリッジ19を備えたインクカートリッジ10の記憶部15が、廃
液量等の情報に加え、ニアフル閾値をも有することにより、印刷装置1の制御部36は、
装着可能なインクカートリッジ10の個別情報を保持する必要が無くなる。従って、制御
部36は、廃液量の更新、更新した廃液量とニアフル閾値との比較判定などの、汎用的な
処理が行えればよく、廃液貯蔵カートリッジ19の仕様変更などがあっても、制御部36
のプログラム変更を行う等の必要が無い。
【0104】
次に、図10、図11、図12を参照して、インクカートリッジ10を装着した印刷装
置1によるインク関連の処理の流れについて説明する。図10は、印刷装置1の待機状態
からの演算処理およびデータ保存処理の流れを示すフローチャートである。フローは、A
、B、Cの3つのフローがある。待機状態とは、電源OFFの状態を含めて、印刷装置が
即作動可能状態で次の指令を待つ状態のことである。フローAは、待機状態(ステップS
10)から、電源がONされた時、あるいは電源ONの待機状態で、インクカートリッジ
10の交換等で開けられていたカバー6が閉じられて、カバークローズ状態になった時に
実行され、インクカートリッジ10の記憶部15からデータを読み出して、各種の判定処
理を行う(S11)。判定処理が終わると判定結果に応じたレスポンスを行い(S12)
、待機状態へ戻る。
【0105】
フローBは、クリーニング開始直前と、1パスの印字終了後と、インク量計算および判
定要求がなされた時とに実行され、インク残量の算出、インク状態の判定を行い(S13
)、待機状態へ戻る。
【0106】
フローCは、電源OFF指令の入力時と、省電力休止状態であるスリーブ開始時と、デ
ータ保存要求時と、カバーオープンの時とに実行され、データがインクカートリッジ10
の記憶部15へ保存される(S14)。
【0107】
まず、図11を参照して、フローAの流れの詳細な説明から行う。待機状態(S10)
から、最初に、記憶部15のデータを書込/読出部78へ読み出し(S21)、判定部7
7にて以下の判定を行う。まず、インクカートリッジ10の有無を判定し(S22)、有
りならば、印刷装置1が使用するインクの色モードが確定しているかどうかの判定をする
(S23)。インクカートリッジ10を装着せずにカバークローズしたり、インクカート
リッジ10のデータが読み込めなかった場合等は、インクカートリッジ10が無しと判定
して処理する(S24)。ステップS23にて色モードが確定していれば、印刷装置1の
色モードとインクカートリッジ10の色モードとが合致しているかを判定する(S25)
。色モードが確定していなければ、印刷装置1の色モードを、装着したインクカートリッ
ジ10の色モードに設定し(S26)、ステップS27の処理へ進む。
【0108】
ステップS25にて印刷装置1の色モードとインクカートリッジ10の色モードとが合
致していれば、インクカートリッジ10が新品かどうかの判定を行う(S27)。S25
において、合致していなければ、インクカートリッジ10無しの判定をして処理する(S
24)。S27において、インクカートリッジ10が新品であると判定されれば、次回再
装着されることがあった場合に、新品と判定されないように、インクカートリッジ10の
新品フラグをOFFにして、記憶部15のデータを書き戻し処理する(S28)。この時
同時に、印刷装置1側の新品交換カウンタの回数を1回増やす処理を行い、次に、新品交
換回数が5回になったかを判定する(S29)。5回に達していれば、交換クリーニング
フラグをセットし、クリーニング開始指令を出す。そして印刷装置1側の新品交換カウン
タの回数をクリアし(S30)、判定終了レスポンスを行う(S35)。5回に達してい
なければ、判定終了レスポンスを行う(S35)。
【0109】
ステップS27で新品でないと判定されると、前回装着したインクカートリッジ10と
同じものか、交換されたものかを判定する(S31)。交換されたものである場合には、
印刷制御部70、フラッシング制御部73が持っている吐出回数(ショット数)、クリー
ニングを含めたフラッシングの吐出回数をクリアし、インクカートリッジ10の持つイン
ク残量に置き換える。同時に制御部36のニアエンド閾値も置き換える(S32)。イン
クカートリッジ10が交換されていない場合には、インクカートリッジ10に書き込まれ
ている端数処理のフラグを認識して、繰上げの端数処理が行われていれば、フラグ設定を
クリアする(S33)。ステップS32およびS33は、インク残量についてだけでなく
、廃液量、ニアフル閾値についても、同様に処理される。ステップS32あるいはS33
のあと、インク残量がニアエンド閾値に達しているか、また、廃液量がニアフル閾値に達
しているか、を判定して、閾値に達していればニアエンド、ニアフルの表示指示を行い(
S34)、判定終了レスポンスを行う(S35)。判定終了レスポンスを行った後、待機
状態へ戻る。
【0110】
以上のようなフローAによって、装着されたインクカートリッジ10のインク残量、廃
液量等のインク情報を正しく認識でき、印刷途中のインク切れ、廃液溢れなどの障害を防
ぐことができる。インク情報は、インクカートリッジ10にすべて記憶されていて、印刷
装置1で情報を持つ必要がない。
【0111】
次は、図12を参照して、フローBおよびフローCについて説明する。フローBは、ス
テップS41の容量計算処理において、クリーニングを行うのに必要なインク残量の確認
と、1パスの印字終了後に消費したインク量の算出と、判定要求内容の確認と、インク消
費量の内、廃液となるインク量の算出と、を行う。そして、インク消費量演算部72でイ
ンク残量の新たな算出と、廃液量演算部76で廃液量の新たな算出とが行われる。次いで
、インク状態判定処理S42において、容量計算処理S41で算出されたインク残量およ
び廃液量と、ニアエンド閾値およびニアフル閾値とをそれぞれ比較して、インク状態を判
定する。この判定結果を基に、計算・判定終了レスポンスS43において、インク残量が
ニアエンド状態か、廃液量がニアフル状態か、正常状態か、をレスポンスする。
【0112】
ステップS43の後、1パスの印字終了後のインク量計算の場合は、待機状態を経て印
字を継続し、判定要求の場合は、待機状態に戻る。クリーニングの場合は、クリーニング
を実行してフローCへ進む。ニアエンドあるいはニアフルの状態と判定された場合は、表
示部56に状態表示を表示する。
【0113】
フローCは、インク残量、廃液量の端数処理S44において、印刷制御部70、フラッ
シング制御部73、およびクリーニング制御部74のそれぞれで計数している吐出回数の
中で、一定の吐出回数に満たない端数回数を処理する。端数回数が一定の吐出回数の半分
以上の回数の場合は、1Digitとして繰り上げ、それ以下の場合は、切り捨てる処理
を、インク消費量演算部72が行い、インク残量を算出する。廃液量演算部76は、廃液
となるフラッシング制御部73およびクリーニング制御部74の端数回数の処理を行い、
廃液量を算出する。
【0114】
端数処理が行われたインク残量および廃液量は、書込/読出部78を介してインクカー
トリッジ10の記憶部15へ書き込まれる(S45)。正常に書き込みが行われると、書
き込み終了のレスポンスを指示元へ行い(S46)、待機状態へ戻り、指令された電源O
FF等の状態となる。以上が、インクに関連する処理の流れである。
【0115】
最後に、これまで説明した液体カートリッジ、印刷装置および印刷装置の制御方法によ
る効果をまとめて述べる。
【0116】
(1)インクカートリッジ10のインク残量と、インクが残り少なく収容部11が空に
近いことをインク体積で表すニアエンド閾値と、をインクカートリッジ10に記憶させる
ことにより、印刷装置1は、装着可能なインクカートリッジ10の個別情報を保有してお
く必要が無い。
【0117】
(2)廃液貯蔵カートリッジ19の廃液量と、廃液が収容部11に満杯近いことを、収
容部11の体積で表すニアフル閾値と、を廃液貯蔵カートリッジ19に記憶させることに
より、印刷装置1は、装着可能な廃液貯蔵カートリッジ19の個別情報を保有しておく必
要が無い。
【0118】
(3)印刷装置1は、データの読み出し、書き込み、比較判定等の汎用処理ができれば
よく、インクカートリッジ10の仕様変更等に対応したバージョン変更が不要である。従
って、新規仕様のインクカートリッジ等が交換装着されても、インクカートリッジ10か
らインク情報を読み出し、確実なニアエンド情報を表示できる。
【0119】
(4)印刷装置1は、データの読み出し、書き込み、比較判定等の汎用処理ができれば
よく、廃液貯蔵カートリッジ19の仕様変更等に対応したバージョン変更が不要である。
従って、新規仕様の廃液貯蔵カートリッジが交換装着されても、廃液貯蔵カートリッジ1
9から廃液に関する情報を読み出し、確実なニアフル情報を表示できる。
【0120】
(5)インクカートリッジ10及び廃液貯蔵カートリッジ19の記憶部15に、フラッ
シュメモリを用いており、読み出し書き込みが瞬時にできる。そのため、インク情報や廃
液に関する情報の更新を随時行っても、印刷装置1等への負荷が少ない。
【0121】
(6)インクカートリッジ10に、随時、最新のインク情報が更新保存されているため
、印刷装置1の異常な電源遮断等に対して、印刷装置1の状態に左右されることなく、イ
ンクカートリッジ10にインク情報が保持できている。
【0122】
(7)廃液貯蔵カートリッジ19に、随時、最新の廃液情報が更新保存されているため
、印刷装置1の異常な電源遮断等に対して、印刷装置1の状態に左右されることなく、廃
液貯蔵カートリッジ19に廃液に関する情報が保持できている。
【0123】
(8)インクカートリッジ10が、複数色のインクを一体のインクカートリッジ内に収
容せずに、個別の単体インクカートリッジに収容する場合でも、単体インクカートリッジ
に記憶部15を設けて、一体のインクカートリッジと同様にニアエンド確認ができる。
【0124】
(9)廃液貯蔵カートリッジ19が、印刷に使用するインクを収容しているインクタン
クと一体の構成になっており、脱着操作がしやすい。また、一体構成であるため、廃液お
よびインク情報を、1つの記憶部15にすべて記憶させておけばよく、廃液用、インク用
個々に設ける必要がない。
【0125】
(10)インク消費量が、印刷に使用されたインク量と、キャッピング部35でのフラ
ッシングおよびクリーニングに使用されたインク量と、により目的別に算出されるため、
緻密なインク量の管理ができる。
【0126】
(11)キャッピング部35でのフラッシングおよびクリーニングに使用された廃液と
なるインク量と、印刷に供されたインク量と、を目的別に算出することにより、緻密なイ
ンク量の管理ができる。
【符号の説明】
【0127】
1…印刷装置、10…インクカートリッジ、11…収容部、14…ホルダ基板部、15
…記憶部、19…廃液貯蔵カートリッジ、20…ヘッド、31…カートリッジホルダ、3
5…キャッピング部、36…制御部、50…ニアエンド閾値メモリ部、51…インク残量
メモリ部、70…印刷制御部、72…インク消費量演算部、73…フラッシング制御部、
74…クリーニング制御部、77…判定部、78…書込/読出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置に装着され前記装置へ液体を供給するインクカートリッジと前記装置からの廃液と
しての液体を収容する廃液貯蔵カートリッジとを備えた液体カートリッジであって、
前記インクカートリッジおよび前記廃液貯蔵カートリッジは、それぞれ、前記液体を収
容する収容部を備え、
当該液体カートリッジは、各前記収容部内の前記液体の体積の各閾値を記憶する、書き
換え可能な不揮発性の記憶部を備え、
前記インクカートリッジの閾値は前記インクカートリッジの収容部が空に近いことを表
し、
前記廃液貯蔵カートリッジの閾値は前記廃液貯蔵カートリッジの収容部が満杯に近いこ
とを表す、液体カートリッジ。
【請求項2】
前記記憶部は、各前記収容部に収容している各前記液体の各内蔵量に関する情報をさら
に記憶しており、
前記液体カートリッジが前記装置に装着される場合に、前記記憶部と前記装置とは電気
的に導通し、
前記記憶部は各前記内蔵量に関する情報および各前記閾値を前記装置に提供し、
各前記液体の各前記内蔵量が変化する毎に、前記記憶部内の各前記内蔵量に関する情報
が前記装置によって更新される、請求項1に記載の液体カートリッジ。
【請求項3】
前記インクカートリッジの収容部は、複数種類の前記液体を収容する複数のタンクを備
えており、
前記記憶部は、前記複数種類の液体のそれぞれの内蔵量に関する情報を個別に記憶する
、請求項1または2に記載の液体カートリッジ。
【請求項4】
ヘッドと着脱可能なインクカートリッジと、
前記インクカートリッジから供給されるインクを、前記ヘッドより被印刷物上へ吐出し
て印刷を行い、前記印刷に供されない前記インクを廃液として収容する廃液貯蔵カートリ
ッジと有する液体カートリッジを備えた印刷装置であって、
前記インクカートリッジおよび前記廃液貯蔵カートリッジは、それぞれ、前記液体を収
容する収容部を備え、
当該液体カートリッジは、各前記収容部内の前記液体の体積の閾値を記憶する、書き換
え可能な不揮発性の記憶部を備え、
前記インクカートリッジの閾値は前記インクカートリッジの収容部が空に近いことを表
し、
前記廃液貯蔵カートリッジの閾値は前記廃液貯蔵カートリッジの収容部が満杯に近いこ
とを表す、印刷装置。
【請求項5】
前記記憶部は前記インクカートリッジの収容部に残っている前記インクの内蔵量を示す
情報と前記廃液貯蔵カートリッジの収容部に収容されている前記廃液の内蔵量を示す情報
とをさらに記憶しており、
前記印刷装置は、
前記記憶部から前記インクの内蔵量および前記廃液の内蔵量を示す情報を読み出す書込/
読出部と、
前記ヘッドによる前記インクの消費量および読み出された前記インクの内蔵量に関する情
報に基づいて前記インクの内蔵量を示す情報を更新するインク消費量演算部と、
前記ヘッドによる前記インクの吐出量のうち前記廃液に該当する吐出量および読み出され
た前記廃液の内蔵量を示す情報に基づいて前記廃液の内蔵量を示す情報を更新する廃液量
演算部と、を備え、
前記書込/読出部は、前記更新された前記インクの内蔵量を示す情報、および前記更新
された前記廃液の内蔵量を示す情報を前記記憶部に書き込む、請求項4に記載の印刷装置

【請求項6】
前記インク消費量演算部は、
前記印刷による前記ヘッドからのインク吐出量を算出する演算と、
前記インクカートリッジ装着時の前記ヘッドへのインク吸引量および前記ヘッドのクリ
ーニングによるインク吸引量を算出する演算と、
前記印刷時に前記印刷物以外の所定部分へインクを吐出して前記ヘッドの詰まりを防ぐ
フラッシングによるインク吐出量を算出する演算と、
前記演算の各結果によるインク吐出量および吸引量を基に前記インクの内蔵量を新たに
算出する演算と、に基づいて前記消費量を算出する請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記廃液量演算部は、
前記インクカートリッジ装着時の前記ヘッドへのインク吸引量を算出する演算と、
前記ヘッドのクリーニングによるインク吸引量を算出する演算と、
前記印刷時に前記被印刷物以外の所定部分へインクを吐出して前記ヘッドの詰まりを防
ぐフラッシングによるインク吐出量を算出する演算と、
前記演算の各結果によるインク吐出量および吸引量を基に前記廃液の内蔵量を新たに算
出する演算と、に基づいて前記廃液量を算出する請求項5または6に記載の印刷装置。
【請求項8】
装着部をさらに備え、
前記液体カートリッジが前記装着部に装着される場合に、前記記憶部は、
前記書込/読出部と電気的に導通状態となるとともに、
前記インクの内蔵量を示す情報と、前記廃液の内蔵量を示す情報と、各前記閾値と、を前
記書込/読出部へ提供し、
前記インクの内蔵量が変化する毎に前記記憶部に記憶された前記インクの内蔵量に関する
情報が前記書込/読出部を介して更新されるとともに、前記廃液の内蔵量が変化する毎に
前記記憶部に記憶された前記廃液の内蔵量を示す情報が前記書込/読出部を介して更新さ
れる、請求項5から7のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項9】
前記インクカートリッジの収容部は、複数種類の前記インクを収容する複数のタンクを
備えており、
前記記憶部は、前記複数種類のインクのそれぞれの内蔵量に関する情報を個別に記憶し
ている請求項4から8のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項10】
前記インクカートリッジと前記廃液貯蔵カートリッジとが一体の構成になっている請求
項4から9のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項11】
ヘッドと着脱可能なインクカートリッジと、
前記インクカートリッジから供給されるインクを、前記ヘッドより被印刷物上へ吐出し
て印刷を行い、前記印刷に供されない前記インクを廃液として収容する廃液貯蔵カートリ
ッジと有する液体カートリッジを備えた印刷装置の制御方法であって、
前記液体カートリッジの書き換え可能な不揮発性の記憶部に記憶された前記インクの体
積の閾値を読み出すステップと、
前記記憶部に記憶された前記廃液の体積の閾値を読み出すステップと、
前記インクカートリッジに残っている前記インクの内蔵量が前記閾値に達した場合、も
しくは、前記廃液貯蔵カートリッジに収容されている前記廃液の内蔵量が読み出された閾
値に達した場合に、所定の指示を行うステップと、を有する印刷装置の制御方法。
【請求項12】
前記記憶部から前記インクの内蔵量を示す情報を読み出すステップと、
前記ヘッドによる前記インクの消費量を算出するステップと、
前記インクの消費量と、読み出された前記インクの内蔵量に関する情報とに基づいて、
前記インクの内蔵量を示す情報を更新するステップと、
更新された前記インクの内蔵量を示す情報が前記閾値に達した場合に、ニアエンドの判
定を行うステップと、
更新された前記インクの内蔵量を示す情報を前記記憶部に書き込むステップと、を有す
る請求項11に記載の印刷装置の制御方法。
【請求項13】
前記インクの消費量を算出するステップは、
前記印刷による前記ヘッドからのインク吐出量を算出する演算ステップと、
前記インクカートリッジ装着時の前記ヘッドへのインク吸引量および前記ヘッドのクリ
ーニングによるインク吸引量を算出する演算ステップと、
前記印刷時に被印刷物以外の所定部分へインクを吐出して前記ヘッドの詰まりを防ぐフ
ラッシングによるインク吐出量を算出する演算ステップと、
前記演算の各結果によるインク吐出量および吸引量を基に前記インクの内蔵量を新たに
算出する演算ステップと、を有する請求項12に記載の印刷装置の制御方法。
【請求項14】
前記記憶部から前記廃液の内蔵量を示す情報を読み出すステップと、
前記ヘッドによる前記インクの消費量のうち前記廃液に該当する消費量を算出するステ
ップと、
前記廃液に該当する消費量と、読み出された前記廃液の内蔵量を示す情報とに基づいて
、前記廃液の内蔵量を示す情報を更新するステップと、
更新された前記廃液の内蔵量が前記閾値に達した場合に、ニアフルの判定を行うステッ
プと、
更新された前記廃液の内蔵量を示す情報を前記記憶部に書き込むステップと、を有する
請求項11から13のいずれかに記載の印刷装置の制御方法。
【請求項15】
前記廃液に該当する消費量を算出するステップは、
前記インクカートリッジ装着時の前記ヘッドへのインク吸引量を算出する演算ステップ
と、
前記ヘッドのクリーニングによるインク吸引量を算出する演算ステップと、
前記印刷時に被印刷物以外の所定部分へインクを吐出して前記ヘッドの詰まりを防ぐフ
ラッシングによるインク吐出量を算出する演算ステップと、
前記演算の各結果によるインク吐出量および吸引量を基に前記廃液の内蔵量を新たに算
出する演算ステップと、を有する請求項14に記載の印刷装置の制御方法。
【請求項16】
ヘッドと着脱可能なインクカートリッジと、
前記インクカートリッジから供給されるインクを、前記ヘッドより被印刷物上へ吐出し
て印刷を行い、前記印刷に供されない前記インクを廃液として収容する廃液貯蔵カートリ
ッジと有する液体カートリッジを備えた印刷装置であって、
前記インクカートリッジおよび前記廃液貯蔵カートリッジは、それぞれ、前記液体を収
容する収容部を備えて、一体型であり、
当該液体カートリッジは、各前記収容部内の前記液体の体積の閾値を記憶する、書き換
え可能な不揮発性の記憶部を備え、
前記インクカートリッジの閾値は前記インクカートリッジの収容部が空に近いことを表
し、
前記廃液貯蔵カートリッジの閾値は前記廃液貯蔵カートリッジの収容部が満杯に近いこ
とを表し、
前記インクカートリッジの収用部のインク量を検出する第1の検出手段と、
前記廃液貯蔵カートリッジの閾値の廃液インク量を検出する第2の検出手段と、
を備え、
前記第1の検出手段が、前記インク量が前記インクカートリッジの閾値以下であること
を検出するか、
前記第2の検出手段が、前記廃液インク量が前記廃液貯蔵カートリッジの閾値以上であ
ることを検出するときは、前記一体型カートリッジの寿命であると判断することを特徴と
する印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−245787(P2012−245787A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180734(P2012−180734)
【出願日】平成24年8月17日(2012.8.17)
【分割の表示】特願2005−12398(P2005−12398)の分割
【原出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】