説明

液体クリーマー及びそれらの製造方法

液体クリーマー及び液体クリーマーの製造方法を提供する。一般的な実施形態において、本開示は、ガム成分、タンパク質、乳化剤系及び油の特定の組み合わせを有する液体クリーマーに関する。乳化剤系は、製品の保存寿命全体にわたって種々の貯蔵条件において相分離を起こさずに、良好な乳化安定性及び扱いやすい粘度を有する液体クリーマーを提供する。液体クリーマーは、飲料に加えた場合に、フェザリング、凝集、沈降分離及び他の相分離の問題を起こさずに、良好な物理化学的安定性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は一般に、食品に関する。より詳しくは、本開示は、コーヒー及び茶(tea)などの食品用の液体クリーマーを対象とする。
【背景技術】
【0002】
[0002]クリーマーは、高温及び低温の飲料、例えば、コーヒー、ココア、茶と共に白色化剤(whitening agent))として広く用いられている。クリーマーは、ミルク及び/又は乳製品クリーム(dairy cream)の代わりに粉末又は粒子状物質、例えば、シリアルと共に使用することも多い。クリーマーは、種々の風味を有することができ、口当たり、こく(body)及びより滑らかな質感を与えることもある。
【0003】
[0003]クリーマーは液体又は粉末の形態であることができる。粉末の形態は一般に、伝統的な乳製品クリーマーの感じを与えない。粉末クリーマーを使用する別の不利点としては、コーヒーに加えた場合に溶解しにくいこと、及びさらに、飲料が不均質となる可能性を挙げることができる。
【0004】
[0004]新鮮な又は冷蔵された液体の乳製品ホワイトナー(dairy whitener)は通常、良好な口当たりを与える。しかし、このような乳製品ホワイトナーは、乳製品不耐症(dairy intolerance)のある人々の場合には受け入れられない。このような乳製品ホワイトナーは、短期の保存能力のため、使いにくい。さらに、液体乳製品クリーマーは、冷蔵条件下であっても急速に劣化する。
【0005】
[0005]コーヒーホワイトナーとしての非乳製品クリーマー(nondairy creamer)の市場は急速に成長しつつあり、米国はこの種の製品の市場リーダーである。望ましいホワイトナーは、貯蔵期間中は相分離、クリーム分離、ゲル化及び沈降分離を起こさずに保存安定性でなければならず、一定の期間にわたって一定の粘度を保持しなければならない。コーヒー又は茶のような低温又は高温の飲料に加える場合、クリーマーは、急速に溶解し、良好な白色化能を示し、フェザリング及び/又は沈降分離を起こさずに安定であり続け、上質な味を提供することが必要である。
【0006】
[0006]エマルジョン及び懸濁液が熱力学的に安定でないのは、周知である。真の課題は、油及び他の水不溶性物質を含有する液体クリーマー、特に無菌液体クリーマーにおいて、長期貯蔵時間にわたる高温での物理化学的な不安定性の問題を克服することである。例えば、強力な白色化剤である二酸化チタン(「TiO」)の沈降分離は、白色化能の低下及び貯蔵容器底部の沈降物の白色層による、許容されない外観をもたらす可能性がある。さらに、室温及び高温で貯蔵された液体飲料中のまだ目には見えないクリーム分離が、時間とともに、冷蔵時にボトル内でプラグを生じる可能性がある。他の望ましくない問題としては、液体クリーマーを飲料に、特にコーヒーなどの高温の酸性環境に加えた場合の、フェザリング及び他の種類の飲料不安定化が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]前記考察に鑑みて、冷蔵温度又は周囲温度で数ヶ月の貯蔵期間にわたって持続的な扱いやすい粘度及び安定性を有しながら、エマルジョンの破壊及び相分離を起こさない、均質な無菌の保存安定性液体製品を開発することが、課題である。別の主要な課題は、飲料に加えた場合に容易に分散でき、高温及び低温の酸性環境で安定であり、フェザリング、エマルジョンの破壊、脱油、凝集及び沈降分離を起こさない、無菌の保存安定性液体クリーマーを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]本開示は、食品用の液体クリーマー及びそのような液体クリーマーの製造方法に関する。この液体クリーマーは保存安定性で、無菌であることができる。この液体クリーマーは、高い白色化能及び心地良い口当たりを有することができる。この液体クリーマーは、液体クリーマーの保存寿命全体にわたって種々の貯蔵条件において相分離(例えば、クリーム分離、沈降分離、経時的ゲル化)を起こさずに、扱いやすい粘度において良好な物理化学的性質、特に乳化安定性及び懸濁安定性を保持できる。
【0009】
[0009]一般的な一実施形態において、本開示は、κ−カラギーナンとι−カラギーナンの重量比約1:2〜約1:6のブレンドを含むガム成分、約0.5〜約2.5重量%の範囲のタンパク質、少なくとも2種の乳化剤のブレンドを含む約0.2〜約0.7重量%の範囲の乳化剤系、及び約8〜約20重量%の範囲の油を含む液体クリーマーを開示する。乳化剤系:タンパク質:ガム成分の重量比は、(2〜14):(5〜50):1である。ここでの重量%は、特に断らない限り、液体クリーマーの総重量に基づく。
【0010】
[0010]一実施形態において、ガム成分は、約0.05〜約0.10重量%の範囲である。タンパク質は、カゼイン、カゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸カリウム、カゼイン酸カルシウム、大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、ホエータンパク質又はそれらの組み合わせであることができる。乳化剤は、モノグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、モノグリセリドのコハク酸エステル又はそれらの組み合わせであることができる。
【0011】
[0011]一実施形態において、乳化剤は、親水性・親油性バランス値の低い乳化剤などである。あるいは、乳化剤は、親水性・親油性バランス値が中程度の乳化剤であってもよい。
【0012】
[0012]一実施形態において、油は、植物油、例えば、大豆油、ココナッツ油、パーム油、パーム分別油(palm oil franction)、綿実油、キャノーラ油、オリーブ油、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、ベニバナ油又はそれらの組み合わせなどである。さらに、一実施形態において、油には、65%以下の飽和脂肪酸及び1%以下のトランス脂肪酸を含む植物油のブレンドが含まれる。
【0013】
[0013]一実施形態において、液体クリーマーは緩衝剤を含む。液体クリーマーは、香味料、甘味料、着色剤又はそれらの組み合わせなどの成分を含んでいてもよい。
【0014】
[0014]別の実施形態において、本開示は、安定な液体クリーマーの製造方法を提供する。この方法は、κ−カラギーナンとι−カラギーナンの重量比約1:2〜約1:6のブレンドを含むガム成分、約0.5〜約2.5重量%の範囲のタンパク質、少なくとも2種の低分子量乳化剤のブレンドを含む約0.2〜約0.7重量%の範囲の乳化剤系、及び約8〜約20重量%の範囲の油の組み合わせを水和させて、液体クリーマーを形成するステップと、容器に液体クリーマーを無菌充填するステップとを含む。乳化剤系:タンパク質:ガム成分の重量比は、(2〜14):(5〜50):1である。
【0015】
[0015]一実施形態において、この方法は、容器に充填するステップの前に、液体クリーマーを熱処理するステップを含む。この方法はまた、容器に充填するステップの前に、液体クリーマーを均質化するステップを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0016】
[0016]本開示の利点は、改善された保存安定性液体クリーマーを提供することである。
【0017】
[0017]本開示の別の利点は、高い白色化能を有する液体クリーマーを提供することである。
【0018】
[0018]本開示のさらに別の利点は、長期貯蔵期間にわたって扱いやすい粘度を保持する液体クリーマーを提供することである。
【0019】
[0019]本開示のさらに別の利点は、貯蔵中に及び高温で飲料に加えた場合に脱油、凝集、フェザリング及び/又は沈降分離などの安定性の問題がない、液体クリーマーを提供することである。
【0020】
[0020]本開示の別の利点は、高温で飲料に加えた場合に脱油、凝集、フェザリング及び/又は沈降分離などの安定性の問題がない、液体クリーマーを提供することである。
【0021】
[0021]本開示のさらに別の利点は、良好な口当たり、こく、滑らかな質感及び異臭(off−note)のない良好な風味を有する液体クリーマーを提供することである。
【0022】
[0022]さらなる特徴及び利点は、本明細書中に記載してあり、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0023]本開示は、液体クリーマー及び液体クリーマーの製造方法に関する。この液体クリーマーは、飲料にクリーミング効果を与えるのに十分な量で、任意の適当な飲料に加えることができる。クリーミング効果は、クリーム又は乳製品に関連する品質、例えば、望ましい風味、質感、こく及び/又は色(淡色化又は白色化)を与える。他の実施形態において、液体クリーマーは、安定であり、冷蔵温度(例えば、約4℃)、室温(例えば、約20℃)及び高温(例えば、約30〜38℃)での貯蔵中の相分離の問題(例えば、クリーム分離、プラグ形成、ゲル化、シネレシス、沈降分離など)を克服している。安定な液体クリーマーは、保存寿命安定性、例えば、20℃で少なくとも9ヶ月間、30℃で少なくとも6ヶ月間及び38℃で少なくとも1ヶ月間の保存寿命安定性を有することができる。このような液体クリーマーは一般に、水中油型エマルジョンと称することができ、水性連続相及び油性分散相を有する。
【0024】
[0024]意外にも、ガム成分、タンパク質、乳化剤系及び油の特定の組み合わせが、特定の範囲及び重量比で、液体クリーマーの物理化学的安定性を著しく改善したことが判明している。例えば、これらの成分の特定の組み合わせは、長期間にわたって種々の貯蔵条件において相分離を起こさずに良好な乳化安定性及び扱いやすい粘度を有する、安定な液体クリーマーを提供する。
【0025】
[0025]本明細書中で使用する用語「安定な(安定性)」は、長期間(例えば、少なくとも1ヶ月間)、相分離(例えば、クリーム分離、沈降分離、経時的ゲル化)が最小限である状況又は状態であり続けることを意味する。本開示の実施形態による安定な液体クリーマーは、少なくとも1ヶ月間安定であると認めることでき、一般には、2〜3ヶ月又はそれ以上にわたって安定であり、フェザリング、凝集、沈降分離の問題がない。
【0026】
[0026]本開示の実施形態の安定な液体クリーマーはまた、コーヒーに容易に分散でき、高温及び低温の酸性環境で安定であり、フェザリング、エマルジョンの破壊、脱油、凝集及び沈降分離を起こさない。コーヒー、茶、ココア又は他の液体製品に加える場合には、この液体クリーマーは、高い白色化能、良好な口当たり、十分なこく、滑らかな質感及びさらには、貯蔵期間中に異臭(off flavor note)を発することがない良好な風味を提供できる。この液体クリーマーは、シリアルなどの他の種々の食品と共に、ベリー用のクリームとして、スープ用のクリーマーとして、及び多くの調理用途において使用できる。
【0027】
[0027]一般の実施形態において、本開示は、κ−カラギーナンとι−カラギーナンの重量比約1:2〜約1:6のブレンドを含むガム成分、約0.5〜約2.5重量%の範囲のタンパク質、少なくとも2種の乳化剤のブレンドを含む、約0.2〜約0.7重量%の範囲の乳化剤系及び約8〜約20重量%の範囲の油を含む液体クリーマーを提供する。乳化剤系:タンパク質:ガム成分の重量比はそれぞれ、(2〜14):(5〜50):1であることができる。
【0028】
[0028]一実施形態において、ガム成分は、κ−カラギーナンとι−カラギーナンの重量比約1:2.5〜約1:4のブレンドを含む。別の実施形態において、乳化剤系は、少なくとも2種の乳化剤のブレンドを含み、液体クリーマーの約0.3〜約0.6重量%の範囲である。
【0029】
[0029]一実施形態において、ガム成分は、約0.05〜約0.10重量%の範囲である。タンパク質は、カゼイン、カゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸カリウム、カゼイン酸カルシウム、大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、ホエータンパク質又はそれらの組み合わせであることができる。
【0030】
[0030]乳化剤系は、特定の重量比の少なくとも2種の低分子量の乳化剤の組み合わせを含むことができる。エマルジョンの型は乳化剤によって制御でき、乳化剤は連続相中に可溶でなければならない。安定な水中油型エマルジョンの場合には、典型的には、高い親水性・親油性バランス(「HLB」)値を有する乳化剤が最良の安定性を提供するはずである。しかし、意外なことに、低HLB値を有する低分子量乳化剤と中HLB値を有する低分子量乳化剤との組み合わせが、それらの特定の重量比において、液体クリーマーの最良の乳化安定性を提供することが判明した。
【0031】
[0031]親水性及び親油性は乳化剤間で異なり、親水性と親油性のバランスをHLB値と称する。HLB値は、分子の種々の領域の親水性値又は親油性値を算出することによって求める。種々の参考文献が、HLB値について記載している。例は、Griffin WC:「Classification of Surface−Active Agents by ‘HLB’」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1(1949):311、又はGriffin WC:「Calculation of HLB Values of Non−Ionic Surfactants」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 5(1954):259であり、これらを参照することによって本明細書中に組み入れる。乳化剤のHLB値は典型的には0〜20の範囲である。
【0032】
[0032]低HLB値は、約1〜約5の範囲である。中HLB値は、約5〜約10の範囲である。低HLB値を有する低分子量乳化剤としては、モノグリセリド、ジグリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタントリオレエート、グリセロールジオレエート、ソルビタントリステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、グリセロールモノオレエート及びモノステアレートを、単独で又は組み合わせとして挙げることができるが、これらに限定するものではない。中HLB値を有する低分子量乳化剤としては、ソルビタンモノオレエート、プロピレングリコールモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、カルシウムステアロキシル−2−ラクチレート、グリセロールソルビタンモノパルミテート、大豆レシチン及びモノグリセリドのジアセチル化酒石酸エステルを、単独で又は組み合わせとして挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0033】
[0033]一実施形態において、乳化剤は、モノグリセリド(「MG」)、ジグリセリド(「DG」)、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(「TMG」)又は特定の低HLB値若しくは中HLB値を有するそれらの組み合わせである。乳化剤の特定の重量比が、優れた安定性を達成することが、さらに判明した。一実施形態において、MBとDGの重量比はそれぞれ、約7:1〜約9.5:1であることができる。別の実施形態において、MGとTMGの重量比はそれぞれ、約1:2.5〜約1:4.5であることができる。
【0034】
[0034]一実施形態において、油は、1種又は複数の植物油を含む。油は、クリーム性(creaminess)と口当たりをクリーマーに与えることができる。油は、クリーマーの白色化効果に関与することもできる。1種又は複数の植物油としては、部分水素化油又は完全水素化油を、単独で又は組み合わせとして挙げることができる。例えば、植物油としては、大豆油、ココナッツ油、パーム油、パーム分別油、綿実油、カノーラ油、オリーブ油、ヒマワリ油、ベニハナ油又はそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定するものではない。ヒマワリ油は、高オレイン酸ヒマワリ油であってもよい。油は、任意の適当な量及び方法で混合して、最大の酸化安定性を確実にできる。例えば、油は、65%以下の飽和脂肪酸を含む植物油のブレンドなどであることができる。一実施形態において、植物油のブレンドは、1%以下のトランス脂肪酸を含む。
【0035】
[0035]油は、エマルジョンの分散相の主成分である。一実施形態において、油滴の平均直径は0.6ミクロン未満である。好ましくは、油滴は、約0.25ミクロン〜0.45ミクロンの範囲の直径を有する。この範囲の粒径(particle size)のエマルジョンの油滴が、最適の白色化効果を生じる。
【0036】
[0036]一実施形態において、液体クリーマーは、セルロースを含まない。例えば、液体クリーマーは、微結晶セルロース及びカルボキシメチルセルロースなどのセルロース成分を用いずに製造できる。
【0037】
[0037]一実施形態において、液体クリーマーは緩衝剤を含む。緩衝剤は、コーヒーなどの高温の酸性環境中への添加時に、クリーマーの不所望なクリーム分離又は沈殿を防止できる。緩衝剤は、例えば、一リン酸塩、二リン酸塩、炭酸ナトリウム(sodium monocarbonate)及び炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム(potassium monocarbonate)及び炭酸水素カリウム又はそれらの組み合わせであることができる。より詳しくは、適当な緩衝剤の非限定的な例は、塩、例えば、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン二水素ナトリウムム及びトリポリリン酸ナトリウムである。緩衝剤は、液体クリーマーの総重量に基づき、約0.5〜約1%の量に存在できる。
【0038】
[0038]一実施形態において、液体クリーマーは、液体クリーマーを添加する水性媒体をさらに白色化するのに十分な量で白色化剤を含んでいてもよい。例えば、白色化剤はTiOであってもよく、TiOは液体クリーマーの重量に基づき、約0.1〜約1重量%の量で存在できる。TiOは、約0.1〜約0.7ミクロンの範囲の粒径を有することができ、好ましい実施形態は0.4ミクロンの粒径を有する。TiOを補足的なホワイトナーとして用いる場合には、TiOは、液体クリーマーの保存寿命全体にわたって完全に分散した状態に保持できる。炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及び酸化アルミニウムなどの他の適当な白色化剤を使用してもよい。
【0039】
[0039]別の実施形態において、白色化剤の粒子径(particulate size)は、0.3〜0.5ミクロンの範囲である。白色化剤の最適粒子径は、光散乱が最も濃い白色を発する場合に得られる。白色化剤の最適粒子径は、考慮する波長に関係し、全可視スペクトルについては、最適粒子径は平均波長の1/2又は約0.30ミクロンであろう。白色化剤の粒子径が小さいほど液体クリーマー自体は青味がかり、白色化剤の粒子径が大きいほど白色化力が低下していくと予想できる。平均約0.30ミクロンの粒径の使用は、少なくとも2つの理由で有益なはずである。白色化力の増加は、同じ最終的な色に必要な白色化成分の減少につながり、コスト削減を可能にする。粒子は小さいほど懸濁が容易であり、懸濁状態が保持される。一般的に言えば、懸濁粒子は、沈降傾向をもたらす重力に関して、ストークスの法則の終端速度によって支配される。しかし、粒径約2.0ミクロン未満では、他の力がかなり大きくなり、それが沈降又は懸濁も制御する。粒径2.0ミクロン未満では、ブラウン運動が支配的であり、粒径の減少につれて、重力が次第に重要性を失っていき、その結果、小粒子の懸濁に有利となり、沈降もそれほど起こらないことは、よく知られている。
【0040】
[0040]液体クリーマーは、香味料、甘味料、着色剤又はそれらの組み合わせなどの1種又は複数の成分を含むこともできる。甘味料としては、例えば、スクロース、フルクトース、デキストロース、マルトース、デキストリン、レブロース、タガトース、ガラクトース、コーンシロップ固体及び他の天然甘味料又は人工甘味料を挙げることができる。シュガーレス甘味料としては、糖アルコール、例えば、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、イソマルト、ラクチトール、水素化澱粉加水分解物などを、単独で又は組み合わせとして挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0041】
[0041]香味料、甘味料及び着色剤の使用レベルは大きく変化し、甘味料の強さ、目的とする、製品の甘味度、使用する香味料のレベル及び種類並びにコストの事情によって異なるであろう。糖及び/又はシュガーレス甘味料の組み合わせを、液体クリーマー中に使用してもよい。一実施形態において、甘味料は、液体クリーマー中に約20〜約50重量%の範囲の濃度で存在する。別の実施形態において、甘味料は、約25〜約35重量%の範囲である。
【0042】
[0042]別の実施形態において、本開示は、安定な液体クリーマーの製造方法を提供する。
有利には、他の実施形態において、安定な液体クリーマーは、20℃で少なくとも9ヶ月間、30℃で少なくとも3ヶ月間及び38℃で少なくとも1ヶ月間、望ましい性質を低下させることなく、物理化学的安定性を有することができる。
【0043】
[0043]この方法は、κ−カラギーナンとι−カラギーナンの重量比約1:2〜約1:6のブレンドを含むガム成分、約0.5〜約2.5重量%の範囲のタンパク質、少なくとも2種の低分子量乳化剤のブレンドを含む、約0.2〜約0.7重量%の範囲の乳化剤系及び約8〜約20重量%の範囲の油の組み合わせを水和させて、液体クリーマーを形成するステップと、液体クリーマーを均質化するステップと、容器に液体クリーマーを無菌充填するステップとを含む。水和は、水又は任意の他の適当な液体を用いて実施できる。乳化剤系:タンパク質:ガム成分の重量比はそれぞれ、(2〜14):(5〜50):1であることができる。
【0044】
[0044]ガム、乳化剤、タンパク質、1種又は複数の緩衝剤、1種又は複数の甘味料及び1種又は複数の香味料の水中での水和を、撹拌しながら融解油脂を添加して実施し、続いて熱処理、均質化、冷却及び無菌条件下での無菌容器への充填を行うことができる。無菌熱処理は、直接的又は間接的な超高温(「UHT」)法を使用できる。UHT法は、当業界で知られている。UHT法の例には、UHT殺菌及びUHT低温殺菌が含まれる。
【0045】
[0045]直接的な熱処理は、エマルジョン中への水蒸気(steam water)の注入によって実施する。この場合には、フラッシュ蒸発による過剰な水の除去が必要なことがある。間接的な熱処理は、熱伝達界面をエマルジョンと接触させて実施する。均質化は、熱処理の前及び/又は後に実施できるであろう。エマルジョン中における熱伝達を改善することによって熱処理を改善するために、熱処理の前に均質化を行うことが魅力的な場合がある。熱処理後の均質化の実施は通常、エマルジョン中の油滴が確実に望ましい寸法を有するようにする。無菌充填は種々の出版物、例えば、L,Grimmによる論文、「Beverage Aseptic Cold Filling」(Fruit Processing, July 1998、262〜265頁)、R.Nicolasによる論文、「Aseptic Filling of UHT Dairy Products in HDPE Bottles」(Food Tech. Europe、March/April 1995、52〜58頁)、又は米国特許第6,536,188号(Taggart)に記載されており、これらを参照することによって本明細書中に組み入れる。
【0046】
[0046]無菌液体クリーマーは、飲料に加えると、良好な口当たり、及びこく、滑らかな質感、並びに悪臭のない心地良い味を有する、物理的に安定な均質の白色化ドリンクを生じる。液体クリーマーの使用は、コーヒーへの適用にのみ限定しない。例えば、クリーマーは、他の飲料、例えば、茶若しくはココアにも使用でき、又はシリアル若しくはベリーと共に、スープ用クリーマーとして、及び多くの調理用途においても使用できる。
【実施例】
【0047】
[0047]以下の例は、限定ではなく実例として、本開示の種々の実施形態の説明に役立つ。
例1
【0048】
[0048]スクロース500gとκーカラギーナン20g及びι−カラギーナン50gとを混ぜ合わせることによって、カラギーナンとスクロースとのドライブレンドを調製した。タンク中で高撹拌下において、約75℃の熱水58kgにドライブレンドを加えた。次いで、リン酸水素二カリウム400gを、連続撹拌下でタンクに加えた。
【0049】
[0049]次に、カゼイン酸ナトリウム900g、二酸化チタン300g、香味料330g及びスクロース2.5kgを混ぜ合わせることによって、ドライブレンドを調製した。ドライブレンドを、高撹拌下でタンクに加えた。約10分間の混合後、乳化剤(Dimodan 100g及びPanodan 300g)を、連続高撹拌下でタンクに加えた。さらに、高撹拌下で約60℃の融解油8.4kgを加え、続いてスクロース27kgを加えた。少量の追加の水を加えて、総生成物重量を100kgに調整した。
【0050】
[0050]得られた液体を予熱し、143℃で5秒間UHT処理し、180/40バールで均質化し、冷却し、液体クリーマーをボトルに無菌充填した。液体クリーマーは、任意の無菌容器、例えば、ジャー、ジャグ又はパウチ中に無菌充填してもよい。
【0051】
[0051]液体クリーマーを含有する3セットのボトルを、下記条件下で貯蔵した:
−38℃で1ヶ月
−30℃で3ヶ月
−室温(約20℃)で9ヶ月。
【0052】
[0052]クリーマー及び液体クリーマーを添加したコーヒー飲料の物理化学的安定性及び官能プロフィールを、訓練を受けていないパネリストが判定した。貯蔵中に、相分離(クリーム分離、脱油、マーブリングなど)、ゲル化、沈降分離及び実質的な粘度変化は認められなかった。
【0053】
[0053]液体クリーマーは、良好な外観、口当たり、滑らかな質感及び「異」味のない良好な風味を有することが判明した。さらに、クリーマーは、コーヒーに加えた場合に、高い白色化能を示した。
例2
【0054】
[0054]スクロース500gとκーカラギーナン10g及びι−カラギーナン30gとを混ぜ合わせることによって、カラギーナンとスクロースとのドライブレンドを調製した。タンク中で高撹拌下において、約75℃の熱水58kgにドライブレンドを加えた。次いで、リン酸水素二カリウム400gを、連続撹拌下でタンクに加えた。
【0055】
[0055]次に、カゼイン酸ナトリウム1.0kg、二酸化チタン300g、香味料330g及びスクロース2.5kgを混ぜ合わせることによって、ドライブレンドを調製した。ドライブレンドを、高撹拌下でタンクに加えた。約10分間の混合後、乳化剤(Dimodan 100g及びPanodan 300g)を、連続高撹拌下でタンクに加えた。さらに、高撹拌下で約60℃の融解油8.4kgを加え、続いてスクロース27kgを加えた。少量の追加の水を加えて、総生成物重量を100kgに調整した。
【0056】
[0056]得られた液体を予熱し、143℃で5秒間UHT処理し、180/40バールで均質化し、冷却し、液体クリーマーをボトルに無菌充填した。
【0057】
[0057]液体クリーマーを含有する3セットのボトルを、下記条件下で貯蔵した:
38℃で1ヶ月
30℃で3ヶ月
室温(約20℃)で9ヶ月。
【0058】
[0058]クリーマー及び液体クリーマーを添加したコーヒー飲料の物理化学的安定性及び官能プロフィールを、訓練を受けていないパネリストが判定した。貯蔵中に、相分離(クリーム分離、脱油、マーブリングなど)、ゲル化、沈降分離及び実質的な粘度変化は認められなかった。
【0059】
[0059]液体クリーマーは、良好な外観、口当たり、滑らかな質感及び「異」味のない良好な風味を有することが判明した。さらに、クリーマーは、コーヒーに加えた場合に、高い白色化能を示した。
例3
【0060】
[0060]スクロース500gとκーカラギーナン10g及びι−カラギーナン30gとを混ぜ合わせることによって、カラギーナンとスクロースとのドライブレンドを調製した。タンク中で高撹拌下において、約75℃の熱水58kgにドライブレンドを加えた。次いで、リン酸水素二カリウム400gを、連続撹拌下でタンクに加えた。
【0061】
[0061]次に、カゼイン酸ナトリウム1.0kg、二酸化チタン300g、香味料330g及びスクロース2.5kgを混ぜ合わせることによって、ドライブレンドを調製した。ドライブレンドを、高撹拌下でタンクに加えた。約10分間の混合後、乳化剤(Dimodan 130g及びPanodan 380g)を、連続高撹拌下でタンクに加えた。さらに、高撹拌下で約60℃の融解油8.4kgを加え、続いてスクロース27kgを加えた。少量の追加の水を加えて、総生成物重量を100kgに調整した。
【0062】
[0062]得られた液体を予熱し、143℃で5秒間UHT処理し、180/40バールで均質化し、冷却した。次いで、液体クリーマーを、ボトルに無菌充填した。
【0063】
[0063]液体クリーマーを含有する3セットのボトルを、下記条件下で貯蔵した:
38℃で1ヶ月
30℃で3ヶ月
室温(約20℃)で9ヶ月。
【0064】
[0064]クリーマー及び液体クリーマーを添加したコーヒー飲料の物理化学的安定性及び官能プロフィールを、訓練を受けていないパネリストが判定した。貯蔵中に、相分離(クリーム分離、脱油、マーブリングなど)、ゲル化、沈降分離及び実質的な粘度変化は認められなかった。
【0065】
[0065]液体クリーマーは、良好な外観、口当たり、滑らかな質感及び「異」味のない良好な風味を有することが判明した。さらに、クリーマーは、コーヒーに加えた場合に、高い白色化能を示した。
例4
【0066】
[0066]例1と同様にして、コーヒーホワイトナーを調製した。但し、κーカラギーナンとι−カラギーナンのブレンドの代わりにκ−カラギーナンのみを用いた。液体クリーマー及び液体クリーマーを添加したコーヒー飲料の物理化学的安定性及び官能プロフィールを、訓練を受けていないパネリストが判定した。
【0067】
[0067]20℃において4ヶ月間の貯蔵後、官能評価はボトル中のクリーム分離を示した。
さらに、ボトル中の液体クリーマーの著しい沈降分離を観察した。コーヒーに加えた場合には、作りたての液体コーヒークリーマーに比較して、白色化能の著しい減少が観察された。
例5
【0068】
[0068]例1と同様にして、コーヒーホワイトナーを調製した。但し、2種の乳化剤の総使用量を、70gではなく900gとした。液体クリーマー及び液体クリーマーを添加したコーヒー飲料の物理化学的安定性及び官能プロフィールを、訓練を受けていないパネリストが判定した。
【0069】
[0069]20℃において3ヶ月間の貯蔵後、官能評価はボトル中の著しいクリーム分離を示した。コーヒーに加えた場合には、作りたての液体コーヒークリーマーに比較して、白色化能の著しい減少が観察された。
例6
【0070】
[0070]例1と同様にして、コーヒーホワイトナーを調製した。但し、カゼイン酸ナトリウムを3.0kg用いた。液体クリーマー及び液体クリーマーを添加したコーヒー飲料の物理化学的安定性及び官能プロフィールを、訓練を受けていないパネリストが判定した。
【0071】
[0071]38℃で3週間の貯蔵の後、官能検査はボトル中の凝集を示した。さらに、液体クリーマーの著しい粘度増加を観察した。
【0072】
[0072]本発明の好ましい実施形態の種々の変更及び修正は、当業者には明白であることを理解すべきである。このような変更及び修正は、本発明の主題の精神及び範囲から逸脱することなく、また、所期の利点を損なうことなく、実施できる。したがって、このような変更及び修正は添付の特許請求の範囲によって網羅されるよう意図する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
κ−カラギーナンとι−カラギーナンの重量比約1:2〜約1:6のブレンドを含むガム成分と、
約0.5〜約2.5重量%の範囲のタンパク質と、
少なくとも2種の乳化剤のブレンドを含む約0.2〜約0.7重量%の範囲の乳化剤系であって、乳化剤系:タンパク質:ガム成分の重量比は、(2〜14):(5〜50):1である乳化剤系と、
約8〜約20重量%の範囲の油と
を含む液体クリーマー。
【請求項2】
ガム成分が約0.05〜約0.10重量%の範囲である、請求項1に記載の液体クリーマー。
【請求項3】
タンパク質が、カゼイン、カゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸カリウム、カゼイン酸カルシウム、大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、ホエータンパク質及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の液体クリーマー。
【請求項4】
乳化剤が、モノグリセリド、モノグリセリドのコハク酸エステル、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体クリーマー。
【請求項5】
乳化剤が、親水性・親油性バランス値の低い乳化剤を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体クリーマー。
【請求項6】
乳化剤が、親水性・親油性バランス値が中程度の乳化剤を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体クリーマー。
【請求項7】
油が、大豆油、ココナッツ油、パーム油、パーム分別油、綿実油、キャノーラ油、オリーブ油、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、ベニバナ油及びそれらの組み合わせからなる群から選択される植物油を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体クリーマー。
【請求項8】
植物油が、65%以下の飽和脂肪酸及び1%以下のトランス脂肪酸を含む、請求項7に記載の液体クリーマー。
【請求項9】
緩衝剤を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の液体クリーマー。
【請求項10】
香味料、甘味料、着色剤及びそれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の液体クリーマー。
【請求項11】
κ−カラギーナンとι−カラギーナンの重量比約1:2〜約1:6のブレンドを含むガム成分、約0.5〜約2.5重量%の範囲のタンパク質、少なくとも2種の低分子量乳化剤のブレンドを含む約0.2〜約0.7重量%の範囲の乳化剤系、及び約8〜約20重量%の範囲の油の組み合わせを水和させて、液体クリーマーを形成するステップと、
液体クリーマーを均質化するステップと、
容器に液体クリーマーを無菌充填するステップと
を含む、安定な液体クリーマーの製造方法。
【請求項12】
乳化剤系:タンパク質:ガム成分の重量比が、(2〜14):(5〜50):1である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
容器に充填するステップの前に、液体クリーマーを熱処理するステップを含む、請求項11又は12に記載の方法。

【公表番号】特表2013−511963(P2013−511963A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540353(P2012−540353)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067161
【国際公開番号】WO2011/064093
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】