説明

液体クロマトグラフィのための装置、システムおよび方法

【課題】グラジエント高速液体クロマトグラフィでの遅延時間を低減させる、改善されたマイクロ流体装置を提供する。
【解決手段】移動相輸送導管を流れる移動相の一部を、試料構成要素を分離するための固定相を含む流体輸送導管へ選択的に方向転換させるためのメカニズムを含む装置を使用する。この装置は、固定相を含む流体輸送導管を備えている装置であって、該流体輸送導管が、少なくとも1つの移動相輸送導管と連通しており、該装置が、前記移動相輸送導管を流れる移動相の一部を選択的に方向転換させるためのメカニズムを含み、前記移動相の残部は、前記固定相を含む前記流体輸送導管へと流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液体クロマトグラフィ用の、特にマイクロ流体のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィは、試料を個々の成分または分析物へ分離する方法である。高速(高圧)液体クロマトグラフィ(HPLC)では、分析物を含む液体試料が、圧力下でカラムに導入される。カラムは、例えば不溶性樹脂、ゲルまたはモノリシック材料のような様々な形態で提供され得る固定相を含む。タンパク質が移動相でHPLCカラムに適用される場合、タンパク質は、カラムを通過する際に、固定相と移動相との間で平衡となる。移動相中の試料分析物がカラムを移動する速度は、分析物と固定相との非共有結合的な相互作用に依存する。例えば、移動相よりも固定相との相互作用がより強い試料分析物は、その固定相との相互作用がさらに小さくなっている分析物より遅れて溶出する。したがって、固定相が疎水性表面を有し、移動相が通常、水および有機溶媒の混合物である逆相液体クロマトグラフィでは、最も疎水性の低い成分が最初にクロマトグラフィ床を通って移動し、続いて疎水性の増加に伴って成分が通過する。つまり、疎水性が大きい成分ほど移動が遅くなる。
【0003】
アイソクラティック液体クロマトグラフィ(LC)では、移動相の組成は溶出中、一定である。これに対して、グラジエントクロマトグラフィでは、移動相の組成を溶出プロセス中に変化させる。グラジエントLCは、広範囲にわたる化合物の高分解能および高速分離を提供するだけでなく、分離効率を悪化させることなく、大きな試料容量の注入を可能とする。それというのは、試料が導入される初期時間中に、移動相の強さが低く(つまり、水含有量が高く)保たれる場合が多く、その結果、試料がLCカラム床の先頭で捕捉され、塩のような妨害物が洗い流されるためである。移動相の強さは、より強力に保持される分析物の溶出を高めるために徐々に増大させる(つまり、水含有量を減少させる)。
【0004】
グラジエントHPLCシステムには一般に、分離手順の間に移動相の組成を変化させるためのいくつかのメカニズムが組み込まれている。HPLC移動相グラジエントは、2つ以上の別個の高圧ポンプを用いて生成される場合が多い。各ポンプからの相対流量は、システムコントローラにより決定され、ポンプ出力は、HPLCカラムへの試料導入前に混合される。この従来のHPLCポンプは、一般に1分当たり10μL〜1mLの所定の流速範囲で良好に機能する。グラジエントが必要とされる場合、通常2つのポンプヘッドが使用されて、2つの移動相を独立にポンピングして、溶出期間にわたって互いに移動相の比を変化させる。一般に、開始時は、1つの移動相は、合わせられる流れのわずかな割合に寄与するのみであり、よって、その移動相を提供するポンプヘッドは、合せられる流れの流速よりもはるかに小さな流速でポンピングを行う。この流速は、ポンプの最適な流速の範囲外に存在する場合がある。この制限は、マイクロボア液体クロマトグラフィカラムが使用される場合に特に顕著であり、それというのは、カラムを通過する移動相の必要とされる流速が極めて小さいからである。例えば、ポンプが1分当たり1μLの流速でポンピングしていて、グラジエントが所定の移動相の5%で開始される場合、ポンプは、ポンプの作動範囲外となり得る1分当たり50ナノリットルという量をポンピングする必要もある。
【0005】
滑らかなグラジエントを得るために、従来のLCポンプは、内蔵型圧力ダンパおよびミキサを有している。ミキサおよびダンパを合わせた容量は、システム中の、グラジエントが形成される(例えば、混合用チャンバインレットでの)点とグラジエントがカラムに進入する点との間の液体の容量、つまり「遅延容量」であり、一般に0.3〜0.5mLである。流速で除算された遅延容量は、遅延時間、すなわち移動相グラジエントが形成された後にカラムに到達するのにかかる時間を決定する。遅延時間は、ポンプシステムが運ぶことのできる最小のグラジエント流量を制限し得る。例えば、1分当たり1mLの流速では遅延時間は0.3分である。しかし、流速が1分当たり10μLへ下がると、遅延時間は約30分となり、これでは、上記流速でのグラジエントクロマトグラフィは実用不能である。
【0006】
特定の市販の低流速ポンプは、スプリット流量設計を使用している。流速は一様には高い(約200〜800μL/分)が、ポンピングされる移動相のわずかな部分のみが、キャピラリーHPLCカラムへ装填され、流れの大部分は廃液びんへと向かう。カラムへ運ばれた流れは、低流速(例えば、約100μ/分以下)で運ばれる。移動相の粘度は作動過程中に変化するため、グラジエントが、有機溶媒の割合が低い方から高い方へと変化するものである場合には、圧力は通常、作動中に下がってしまう。
【0007】
電子流量制御ユニットを含むシステムは、アクティブスプリットを提供し、流量メータおよび可変流量抵抗器の組合せによりフィードバック制御を提供する。アクティブスプリット設計を使用する場合でも、ナノリットル/分の流速に関しては、遅延時間が依然としてかなり大きい(例えば、約5分)。アクティブスプリッタとカラムのヘッドとの間の遅延容量が、この影響に寄与している。この領域中の流体の接続により引き起こされる分散が、グラジエントの終わりからグラジエントの始めまでの長い回復時間を発生させる。回復時間は、ポンプが200nL/分で作動する場合、20分程度となり得る。
【0008】
マイクロ流体装置は、クロマトグラフィ分離に使用することができる。液体クロマトグラフィの機能を組み込んだマイクロ流体装置は公知である(例えば、特許文献1参照)。これらのマイクロ流体装置は、試料導入のために、またマイクロ流体装置における「死容積」の容量を小さくするために、集積された機械バルブ技術を使用することができ、そのような技術も公知である(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】米国特許出願第09/908,231号明細書
【特許文献2】米国特許出願第09/908,292号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
低い流速で運転を行うグラジエント高速液体クロマトグラフィにおいて遅延時間を低減させるような、改善されたマイクロ流体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの移動相輸送導管と連通している固定相を含む流体輸送導管(「LC導管」)を含むマイクロ流体装置に関する。装置は、移動相をLC導管の導入部分へ導入する前に移動相の一部を廃液リザーバへ方向転換もしくは分岐させるための、LC導管のインレットの上流にあるスプリット領域を含む。装置は、スプリッティングを選択的に制御するためのメカニズムをさらに含む。一態様では、LCグラジエントは、スプリットレスで実行される。試料成分がLC導管からLC導管の下流にある受容導管へと溶出すると、移動相輸送導管を通る流速が増大し、移動相輸送導管を流れる流体の一部が、スプリット領域でスプリットされ、移動相の一部が廃液リザーバへ分岐される一方で、移動相の残りの部分は、LC導管のインレットへ進むことができる。
【0011】
一実施形態では、選択的オンチップスプリットが、試料注入と併せて実施される。オンチップスプリットはまた、試料注入とは無関係に実施されてもよい。例えば、装置は、LCグラジエントの形成前、形成中および/または形成後の任意の時間で移動相をスプリットするように作動させてもよい。
【0012】
別の実施形態では、上記移動相を選択的に方向転換させるためのメカニズムは、移動相輸送導管を、2つの流体輸送機構を含む装置のスプリット領域へ選択的に接続させる切換構造を含み、一方の流体輸送機構は、固定相を含む導管であるか、または導管に接続可能であり、他方の流体輸送機構は、廃液リザーバであるか、または廃液リザーバに接続可能である。
【0013】
一態様では、装置は、カバーを含む基材を含み、切換構造は、基材に対して垂直な軸に関して回転可能である。別の態様では、上記切換構造は、移動相輸送導管がその流れの一部を方向転換させることなく固定相を含む導管へ接続される第1の位置から、その流れの一部が、廃液リザーバであるか、または廃液リザーバに接続可能である流体輸送機構へ方向転換される第2の位置へ移動可能である。
【0014】
一態様では、スプリッティングを選択的に制御するためのメカニズムは、プレートを含む切換構造を含み、これは少なくとも部分的に装置上に設けられており、第1の位置から少なくとも第2の位置へ移動することができる。切換構造は、移動相導入チャネルを、LC導管へ(スプリットレスの場合)またはスプリット領域へ(移動相がLC導管への導入に先立ってスプリットされる場合)接続する(直接的または間接的に)ための少なくとも1つの流体輸送機構(例えば、導管、ポート、リザーバ等)を含む。一態様では、流体流量をスプリットするのに使用される流体輸送機構は、切換プレートで形成される。
【0015】
本発明による装置は、固定相を含むLC導管の上流または下流にさらなる分離導管を含むことができる。これらのさらなる分離導管は、固定相または例えば免疫親和性マトリックスのような他の分離媒体を含むことができる。
【0016】
本発明の種々の態様では、移動相輸送導管は移動相源と連通している。一態様では、上記移動相源は、移動相構成要素のグラジエントを含むかまたは形成する。別の態様では、上記移動相輸送導管は、種々の濃度の移動相構成要素を送達するためのインレットと液通している。さらなる態様では、上記移動相輸送導管は、種々の濃度の移動相構成要素を送達するための複数のインレットと流体連通している。
【0017】
別の実施の形態では、上記移動相の前記一部を選択的に方向転換させるためのメカニズムは、第1の切換構造および第2の切換構造を含む。第1の切換構造は、移動相輸送機構を、固定相を含む導管へ選択的に接続させ、第2の輸送機構は、移動相輸送機構を、分岐用導管および前記固定相を含む導管へ選択的に接続させる。接続は、例えば装置の基材およびカバーに対して第1の切換構造および/または第2の切換構造を移動させることにより(例えば、基材/カバーに対して垂直な軸に関して、第1の切換構造および/または第2に切換構造を回転させることにより)形成することができる。一態様では、第1の切換構造は、移動相輸送機構を、装置の試料インレットへ選択的に接続させる。別の態様では、第1の切換構造は、移動相輸送機構を、固定相を含む導管へのその導入に先立って流体を分岐させることなく、固定相を含む導管へ接続させる。
【0018】
一実施形態では、上記基材は、前記移動相輸送導管の一部を規定するチャネルを含む。
【0019】
別の実施形態では、上記切換構造は、前記移動相輸送導管の少なくとも一部を含む。
【0020】
さらに別の実施形態では、本発明は、記載されたの装置のいずれかおよび前記固定相を含む導管による試料構成要素の分離を監視するための検出器を含むシステムに関する。一つの態様では、上記システムは、分離した試料構成要素に関連するデータを獲得および分析するための分析モジュールをさらに含む。
【0021】
別の態様では、上記システムは、検出器から信号を受信するためのプロセッサをさらに含む。さらに別の態様では、プロセッサは、信号を1つまたはそれ以上の特性(例えば、分析物の化学的および/または物理的特性)と相関させる。
【0022】
さらなる実施形態では、本発明は、移動相を、本明細書中に開示する装置のいずれかを供給すること、および移動相の一部を選択的に分岐させる一方で、残部を、固定相を含む導管へ流れさせることを含む方法に関する。一態様では、上記方法は、移動相を、上記移動相の一部を分岐させることなく、第1の流速で、上記固定相を含む前記導管へ供給することと、移動相を、上記固定相を含む上記導管へ提供し、その場合、上記移動相の一部は、上記固定相を含む上記導管から分岐される一方で、残部は、第2の流速で、上記固定相を含む上記導管へ運ばれる。一態様では、移動相は、第1の流速で、スプリット(すなわち、一部を廃液導管へ方向転換させること)なしでLC導管へ供給された後、移動相は、スプリットされてLC導管へ供給される。一態様では、第2の流速は、第1の流速よりも遅い。
【0023】
一実施形態では、スプリット移動相は、移動相構成要素のグラジエントを含む。一態様では、スプリットレスでLC導管へ導入される移動相もまた、移動相構成要素のグラジエントを含む。別の態様では、移動相構成要素のグラジエントは、固定相を含む導管中で形成される。さらなる態様では、グラジエントは、スプリット前に、スプリット中に、またはスプリット後に形成される。
【0024】
別の実施形態では、本発明はまた、液体クロマトグラフィの実行中に、流体流量を選択的に変更させる方法を提供する。一つの態様では、移動相グラジエントが生成され、スプリットレスでLC導管へ導入される。試料構成要素が、LC導管から溶出された後(例えば、最終試料分析物のピークが検出された後)、移動相の流速は、LC導管への導入に先立って増大される。移動相の一部は、廃液導管へ分岐される一方で、残存部分は、LC導管へ導入される。一つの態様では、残存部分は、分岐される移動相および/またはLCに最初に流れる移動相(例えば、スプリットに先立って)の流速と比較してより遅い流速で、LC導管へ導入される。LC導管から溶出する試料構成要素は、検出され得るか、単離され得るか、またはオンチップもしくはオフチップでさらに分離される。さらなる他の態様では、装置の1つまたはそれ以上の流体輸送機構を通る流体流量(例えば、流速のような)がモニタリングされる。一つの態様では、廃液導管、LC導管への流体流および/または圧力ポンプと連通している導管からの流体流の1つまたはそれ以上がモニタリングされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の目的および特徴は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照して、よりよく理解することができる。本明細書中に示される図面は、必ずしも縮尺して描かれたものではなく、構成要素および特徴によっては、明瞭性のために誇張している。
【0026】
本発明を詳述する前に、本発明は、特定の組成物、方法工程または装置に限定されない、したがって多様であり得ることが理解されよう。同様に、本明細書中で使用する専門用語は、特定の実施形態についてのみ記載する目的であり、限定していると意図されるものではないことが理解されよう。本明細書中に列挙する方法は、論理的に可能である列挙した事象の任意の順序、ならびに事象の列挙した順序で実行され得る。さらに、値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間のあらゆる介在値、およびその規定(stated)範囲における任意の他の規定または介在値が本発明内で包含されることが理解される。また、記載する発明の変化の任意のオプション特徴は、独立して、或いは本明細書中に記載する特徴の任意の1つまたはそれ以上と組み合わせて、記載および特許請求され得ることが意図される。さらに、特許請求の範囲は、任意のオプション要素を排除するように描かれ得ることに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連した「もっぱら(solely)」、「のみ(only)」等のような排他的技術用との使用、または「否定的」限定の使用に関する優先する根拠となることが意図される。
【0027】
以下で別記しない限り、本明細書中で使用する技術用語および科学用語は全て、本発明が属する技術分野における当業者により一般的に理解されるものと同義を有する。依然として、ある特定の要素は、明瞭性の目的で、本明細書中で規定される。
【0028】
本明細書中で言及する刊行物は全て、参照により本明細書中で援用されて、刊行物が関連させて引用される方法および/または材料を開示ならびに記載する。
【0029】
本明細書中で論述する刊行物は、もっぱら本出願の出願日に先立つそれらの開示に関して提供される。本明細書中のいずれも、本発明が先願発明によりかかる刊行物に先行することに対する権利が与えられないという許可として解釈されない。さらに、提供される刊行物の日付は、実際の出願日とは異なる場合があり、これは、別個に確認する必要があり得る。
【0030】
明細書および添付の特許請求の範囲中で使用する場合、単数形(「a」、「an」および「the」)は、文脈が明らかにそうでないと決定しない限り、複数の指示対象を包含することに留意されたい。したがって、例えば、「マイクロチャネル」に対する言及は、複数のマイクロチャネルを包含し、「流体」は流体の混交体を包含し、「成分特性」は、複数の成分特性を包含する。
【0031】
以下の定義は、以下に記載する説明で使用される特定の用語に関して提供される。
【0032】
「バイオポリマー」は、1つ以上の型の繰り返し単位のポリマーである。バイオポリマーは通常、生物学的系で見出され、特に多糖(例えば、炭水化物)、ペプチド(この用語は、ポリペプチドおよびタンパク質(例えば、抗体または抗原結合タンパク質)を包含するように使用される)、グリカン、プロテオグリカン、脂質、スフィンゴ脂質およびポリヌクレオチド、ならびにそれらの類縁体(例えば、アミノ酸類縁体もしくは非アミノ酸基、またはヌクレオチド類縁体もしくは非ヌクレオチド基から構成されるか、或いはアミノ酸類縁体もしくは非アミノ酸基、またはヌクレオチド類縁体もしくは非ヌクレオチド基を含有する化合物)を包含する。これは、従来の骨格が、天然に存在しない、すなわち合成骨格で置き換えられたポリヌクレオチド、および従来の塩基の1つ以上が、水素結合相互作用(例えば、ワトソン−クリック型、ゆらぎ型等)に関与することが可能な基(天然または合成)で置き換えられた核酸(または合成もしくは天然に存在する類縁体)を包含する。場合によっては、バイオポリマーの骨格は、分岐されていてもよい。バイオポリマーは、骨格組成において不均一である場合があり、それによりペプチド核酸(これらは、核酸に連結されたアミノ酸を有し、高められた安定性を有する)のような一緒に連結されるポリマーユニットの任意の考え得る組合せを含有し得る。バイオポリマーの連結されるユニットに関して本明細書中で使用する場合、「連結される」または「連結」は、2つの物体が任意の物理化学的手段により相互に結合されることを意味する。かかる連結は、当業者に既知であり、アミド、エステルおよびチオエステル連結が挙げられるが、これらに限定されない。連結としては、合成的または修飾連結が挙げられる。
【0033】
任意の事項の「組」または「部分集合」(例えば、タンパク質またはペプチド組)は、その事項を1つのみ、もしくは2つのみ、もしくは3つのみ、または任意の多数のその事項を含有し得る。
【0034】
本明細書中で使用する場合、「ペプチド混合物」は通常、タンパク質を含む試料の切断の結果として得られるペプチドの複雑な混合物である。
【0035】
本明細書中で使用する場合、「タンパク質の試料」は通常、タンパク質および/またはそれらの修飾されたかつ/もしくはプロセシングされた形態の任意の複雑な混合物であり、これらは、細胞試料(例えば、溶解産物、懸濁液、培養プレート上の接着細胞の収集物、掻爬物、組織のフラグメントもしくはスライス、腫瘍、生検材料試料、アーカイブ細胞または組織試料、レーザ捕捉切開細胞等)、生物(例えば、細菌または酵母のような微生物)、細胞成分分画(例えば、核またはミトコンドリアのような細胞小器官、リボソームまたはゴルジのような巨大タンパク質複合体等)、卵、精子、胚、生物学的流体、ウイルス等を含むがこれらに限定されない供給源から得ることができる。
【0036】
本明細書中で使用する場合「ペプチド」という用語は、少なくとも1つのペプチド結合を含む物体を指し、Dおよび/またはLアミノ酸を含むことができる。理想的には、リガンドは、約2〜約20個のアミノ酸(例えば、約2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸)から本質的に構成されるペプチドである。
【0037】
「タンパク質」という用語は、本明細書中で使用する場合、ペプチド、酵素、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、成長因子等を含むがこれらに限定されない任意のタンパク質を意味する。タンパク質は、約20個を上回るアミノ酸、約35個を上回るアミノ酸残基または約50個を上回るアミノ酸残基から構成されるものを包含する。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は一般的に、本明細書中では交換可能に使用される。さらに、文脈が他の場合を示さない限り、タンパク質試料の操作(例えば、分離、転送、分析、検出)に関して記載する方法および/または装置および/またはシステムはまた、ペプチド操作に使用できる。
【0038】
本明細書中で使用する場合、「生物学的流体」としては、血液、血漿、血清、痰、尿、涙、唾液、痰、脳脊髄液、洗浄液、白血球搬出試料、乳汁、管液、汗、リンパ液、精液、へその緒液(Umbilical cord fluid)、羊水、ならびに発酵ブロスおよび細胞培地のような細胞を培養することにより得られる流体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書中で使用する場合、「複雑なタンパク質の試料」は、約100個、約500個、約1,000個、約5,000個、約10,000個、約20,000個、約30,000個、約100,000個を上回るか、またはそれ以上の異なるタンパク質を含有し得る。かかる試料は、天然の生物学的供給源(例えば、細胞、組織、体液、土壌または水試料等)に由来してもよく、或いは人工的に生成されてもよい(例えば、タンパク質の天然および/または合成もしくは組換え供給源の1つまたはそれ以上の試料を組み合わせることにより)。
【0040】
「プロテオーム」という用語は、通常任意の時点で示されるゲノムにより発現されるタンパク質構成成分を指す。「サブプロテオーム」は、プロテオームの一部または部分集合、例えば、選択した代謝経路に関与するタンパク質、または一般的な酵素活性を有するタンパク質組である。
【0041】
「マイクロ流体装置」または「装置」または「微細加工装置」は、ミクロンまたはサブミクロン寸法の機構を有し、また非常に少量の流体を含む任意数の化学プロセスで使用することができる装置を指す。かかるプロセスとしては、電気泳動(例えば、キャピラリー電気泳動、すなわちCE)、クロマトグラフィ(例えば、μLC)、スクリーニングおよび診断(例えばハイブリダイゼーションまたは他の結合手段を用いて)、ならびに化学的および生化学的合成(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、すなわち「PCR」を用いて実施され得るようなDNA増幅)および分析(例えば、酵素消化による)が挙げられるが、これらに限定されない。マイクロ流体装置の機構は、特定の用途に適応させられる。例えば、分離プロセス(例えば、CE)で使用されるマイクロ流体装置は、直径1μm〜200μm、通常直径10μm〜75μmの規模および長さがおよそ0.1〜50cmのチャネル(取り囲まれている場合、すなわちカバープレートがチャネル含有基材表面上で適所に存在する場合には、本明細書中では「導管」と称する)を含有する。化学的および生化学的合成(例えば、DNA増幅)で使用されるマイクロ流体装置は概して、約1nL〜約100μL、通常約10nL〜20μLの容量を有する反応ゾーン(取り囲まれている場合、すなわち改めてカバープレートがチャネル含有基材表面上で適所に存在する場合には、本明細書中では「反応チャンバ」と称する)を含有する。
【0042】
本明細書中で使用する場合「チャネル」または「マイクロチャネル」または「ナノチャネル」は、基材を通る通路を指し、「グルーブ」、「トラフ」または「トレンチ」という用語と交換可能に使用される。チャネルの幾何学は、広範に多様であってもよく、円状、長方形状、正方形、D形状、台形状または他の多角形の断面)を有する管状通路を包含する。チャネルはまた、様々なチャネル幾何学(例えば、ある区域では長方形状、別の区域では台形状)を含んでもよい。しかしながら、ある態様では、分離に使用されるチャネルの断面積は、デッド容量をさらに低減させるためには実質的に一定である。
【0043】
チャネルは、基材を通る曲線状または角ばった経路を形成してもよく、チャネルは、他のチャネルとクロスすなわち交差してもよく、様々な実施形態では、チャネルは、互いに実質的に平行であり得る。少なくとも部分的に取り囲まれたチャネル(例えば、カバー付きの基材においてチャネルにより形成されるもの)は、本明細書中で「導管」と称される。概して、導管の幾何学は多様であってもよく、この用語は、本明細書中で「流体輸送機構」と交換可能に使用される。
【0044】
「エンボス加工」という用語は、エンボス加工ダイスを、ポリマー、金属またはセラミックの既存のブランクと接触するようにさせることにより、ポリマー、金属またはセラミック形状を形成するプロセスを指すのに使用される。制御された力が、エンボス加工ダイスに印加されて、その結果、エンボス加工ダイスにより決定されるパターンおよび形状が、ポリマー、金属またはセラミックの既存のブランクへプレスされる。「エンボス加工」という用語は、「熱エンボス加工」を包含し、これは、エンボス加工ダイスを、ポリマー、金属またはセラミックの加熱された既存のブランクと接触するようにさせることにより、ポリマー、金属またはセラミック形状を形成するプロセスを指すのに使用される。材料の既存のブランクは加熱されて、その結果、材料の既存のブランクは、制御された力がエンボス加工ダイスに印加されると、エンボス加工ダイスに順応する。得られたポリマー、金属またはセラミック形状は、冷却された後、エンボス加工ダイスから取り出される。
【0045】
「射出成形」という用語は、測定した量の溶融プラスチックまたはセラミック基材をダイス(または型)へ注入することにより、プラスチックまたは非プラスチックセラミック形状を成形するプロセスを指すのに使用される。本発明の一実施形態では、小型装置が、射出成形を使用して生産され得る。
【0046】
「LIGAプロセス」という用語は、シンクロトロン放射リソグラフィ、ガルバノフォーミングおよびプラスチック成形を用いて、高アスペクト比および増大された構造的精密度を有する微細構造を加工するプロセスを指すのに使用される。LIGAプロセスでは、放射線感受性プラスチックは、シンクロトロン源を用いて、高エネルギー放射線でリソグラフィック的に照射されて、所望の微細構造(例えば、チャネル、ポート、開口および微細配列手段)を創出し、それにより一次鋳型を形成する。
【0047】
「微細配列手段」または「配列手段」という用語は、装置における微細加工された機構の厳密な微細配列を確実にするための任意の手段を指すのに本明細書中で定義される。微細配列手段は、レーザアブレーションにより、または当該技術分野で既知の造形された片を加工する他の手段により形成することができる。本発明で使用することができる代表的な微細配列手段としては、構成要素のパーツにおける複数の適切に整列させた突出(例えば、突起、陥没、グルーブ、リッジ、ガイド等)が挙げられる。
【0048】
「順に」という用語は、事象の配列を指すのに本明細書中で使用される。流体が、インレットポートおよび導管を「順に」通って移動する場合、流体は、インレットポートを通って移動した後、導管を通って移動する。「順に」は、必ずしも連続的であることを意味しない。例えば、インレットポートおよびアウトレットポートを「順に」通って移動する流体は、インレットポートを通って移動した後、アウトレットポートを通って移動する前に、導管を通って移動する流体を排除しない。
【0049】
本明細書中で使用する場合の「構築される」という用語は、本発明の装置の少なくとも一部を築くために、構成要素を形成すること、組み立てること、修正することまたは組み合わせることを指す。したがって、本明細書中で使用する場合の「分離用に構築される導管」は、パーツを組み立てるか、または組み合わせて、導管を形成するか、または導管の表面を修正することを指し、ここで導管は、試料流体成分を識別または弁別する働きをする。例えば、流体試料の構成要素を分離するために構築された導管は、種々の構成要素と相違して相互作用する化学的に、機械的にまたはエネルギー的に修飾された内部表面を有し得るか、またはクロマトグラフィ充填材料のような分離用媒体を含有し得る。
【0050】
本明細書中で使用する場合「制御可能に導入する」という用語は、精密かつ正確な様式での流体試料の規定容量の送達を指す。流体試料は、装置の2つの構成要素、すなわち流体輸送機構の制御可能な配列により「制御可能に導入され」得る。
【0051】
本明細書中で使用する場合「制御可能な配列」という用語は、装置の少なくとも2つの構成要素間での、例えば流体輸送機構間の空間的関係を指し、ここで空間的関係は、装置の所望の機能にしたがって調節され得る。
【0052】
本明細書中で使用する場合「スライド可能な接触」という用語は、2つの固体成員間の接触の状態または状況を指し、ここで成員の相対的位置は、2つの成員を物理的に分離させることなく変更され得る。
【0053】
本明細書中で使用する場合「流路」という用語は、流体が移動または移転する経路または進路を指す。流路は、装置の1つまたはそれ以上の流体輸送機構から形成される。
【0054】
本明細書中で使用する場合の「流体輸送機構」という用語は、流体流を指示する固体物体またはそれらの一部の整列を指す。流体輸送機構としては、チャンバ、リザーバ、導管およびチャネルが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用する場合「導管」という用語は、1つまたはそれ以上の壁により形成され、かつ流体が輸送され得るインレット開口部およびアウトレット開口部を有する三次元囲いを指す。「チャネル」という用語は、表面における開口グルーブまたはトレンチを指すのに本明細書中で使用される。チャネルを覆って固体片と組み合わせたチャネルは、導管を形成する。しかしながら、文脈が他の場合を示さない限り、「流体輸送機構」、「チャネル」、「リザーバ」および「導管」という用語は、交換可能に使用される。
【0055】
本明細書中で使用する場合、「上流にある」という用語は、別の位置に対する流体流の方向により規定されるマイクロ流体装置上の位置または領域を指す。例えば、別の流体輸送機構の上流にある流体輸送機構は、直接的に、或いは流体輸送機構(複数可)を接続させることにより、流体を下流にある流体輸送機構へ供給する。別の流体輸送機構の上流にある流体輸送機構は、同じ基材上または異なる基材(例えば、装置の切換構造のような)上に存在し得る。
【0056】
「流体密」という用語は、流体が表面間の界面へ流れるのを防止するような物理的接触における2つの固体表面間の空間的関係を記載するのに本明細書中で使用する。
【0057】
本明細書中で使用する場合、クロマトグラフィ分離に関する「ピーク」または「バンド」または「ゾーン」は、分離された化合物が集中している領域を意味する。「クロマトグラム」は、時間に対する信号強度のチャートまたはグラフまたはプロットとして表示されることが可能な検出システムにより検出される一連のバンドまたはゾーンまたはピークである。クロマトグラムは、一般的な意味合いで使用され、その結果クロマトグラムは、電気クロマトグラフィのような特定のクロマトグラフィ技術による化合物の分離について記載するために使用されることがある「電気クロマトグラム」のようなより特殊な用語を包含する。
【0058】
本明細書中で使用する場合、「順相クロマトグラフィ分離」という用語は、極性固定相およびより極性の低い移動相を用いた親水性ならびに親油性に基づいて作動する分離を指す。したがって、疎水性化合物は、親水性化合物よりも迅速に溶出する。順相クロマトグラフィ用の固体相上の例示的な基は、アミノ基(−NH)およびヒドロキシル基(−OH)である。
【0059】
本明細書中で使用する場合、「逆相」は、親水性および親油性に基づいて作動する分離を指す。固定相は、n−アルキル鎖(例えば、C−8またはC−18)またはフェニル基が共有結合されたシリカベースの充填剤から構成することができる。固定相がより疎水性であるほど、カラムが疎水性部分を保持する傾向はより大きい。したがって、親水性化合物は、疎水性化合物よりも迅速に溶出する。
【0060】
「情報を通信すること」は、適切な通信チャネル(例えば、私的または公的ネットワーク)にわたって、信号(例えば、電気的、光学的、電波的、磁気的等)としてその情報を表すデータを伝送することを指す。
【0061】
本明細書中で使用する場合、システムの別の構成要素「と連通している」か、または「と連通する」システムの構成要素は、その構成要素からの入力を受け取り、かつ/またはその構成要素を出力に供給して、その構成要素にシステム機能を実施する。別の構成要素「と連通している」か、または「と連通する」構成要素は、他の構成要素に物理的に接続させてもよいが、必ずしも接続させるわけではない。例えば、構成要素は、他の構成要素へ情報を通信してもよく、かつ/または他の構成要素から情報を受け取ってもよい。「入力」または「出力」は、電気的信号、光、データ(例えば、スペクトルデータ)、材料の形態であってもよく、或いはシステムまたはシステムの構成要素により採取される作用の形態であってもよく、或いはある成分から別の成分へ(直接的にまたは間接的に)輸送される材料(例えば、流体のような)の形態であってもよい。「と連通している」という用語はまた、あるシステムと別のシステムのとの間、或いはシステムのある成分と別の成分との間で直接的または間接的であり得る物理的接続を包含する。
【0062】
「コンピュータベースのシステム」は、本発明の情報を解析するのに使用されるハードウェア手段、ソフトウェア手段、およびデータ保管手段を指す。本発明のコンピュータベースのシステムの最小ハードウェアは、中央演算処理装置(CPU)、入力手段、出力手段およびデータ保管手段を含む。現在利用可能なコンピュータベースのシステムのいずれか1つが、本発明における使用に適していることは、当業者は容易に理解することができる。データ保管手段は、上述に記載するような本情報の記録を含む任意の製造物、またはかかる製造物にアクセルすることができるメモリアクセス手段を含み得る。ある意味では、コンピュータベースのシステムは、1つまたはそれ以上のワイアレス装置を包含してもよい。
【0063】
コンピュータ可読媒体上に、プログラミングまたは他の情報を「記録する」ことは、当該技術分野で既知の任意の方法を用いて、情報を保管するプロセスを指す。保管されら情報へアクセスするのに使用される手段に基づいて、任意の利便性の高いデータ保管構造が選択され得る。各種のデータプロセッサプログラムおよびフォーマット(例えばワードプロセシングテキストファイル、データベースフォーマット等)を保管するために使用することができる。
【0064】
「プロセッサ」は、その必要とされる機能を実施する任意のハードウェアおよび/またはソフトウェアの組合せを参照する。例えば、本明細書中の任意のプロセッサは、例えば電子制御器、メインフレーム、サーバまたはパーソナルコンピュータ(デスクトップまたはポータブル)の形態で利用可能なプログラム可能デジタルマイクロプロセッサであってもよい。プロセッサがプログラム可能である場合、適切なプログラミングは、遠隔地からプロセッサへ通信され得るか、或いはコンピュータプログラム製品(例えば、ポータブルまたは固定コンピュータ可読保管媒体(磁気的、光学的または固体装置ベースのいずれか))において予め保存され得る。例えば、磁気媒体または光学ディスクは、プログラミングを保有することができ、その相当するステーションで各プロセッサと通信している適切なリーダにより読取ることができる。
【0065】
本明細書中で使用する場合、「データベース」は、データが、相関表にしたがってリンクされたファイルを用いて階層的に順序付けられるかどうかを決定するデータモデルにしたがって、或いはシステムオペレータにより決定される幾つか他のモデルにしたがって系統化された情報または事実の収集物である。
【0066】
本明細書中で使用する場合、「情報管理システム」は、データベースを検索して、かかる検索の結果として特定されるデータ間の関係を決定することができるプログラムまたは一連のプログラムを指す。
【0067】
本明細書中で使用する場合、「ユーザ装置のディスプレイ上のインターフェース」または「ユーザインターフェース」または「グラフィカルユーザインターフェース」は、ユーザがシステムプロセッサおよび/システムメモリ(例えば、データベースおよび情報管理システムを含む)と相互作用することが可能なネットワークへ接続可能なユーザ装置のスクリーンまたはモニターにより表示されるディスプレイ(テキストおよび/または図形情報を含む)である。
【0068】
本明細書中で使用する場合、「データベースの少なくとも一部へのアクセスを提供すること」は、データベース中の情報を、通信の可視的または聴覚的手段によりユーザ(複数可)に利用可能とさせることを指す。
【0069】
本明細書中で使用する場合、「分離媒体」という用語は、試料成分の分離が行われる媒体を指す。
【0070】
本明細書中で使用する場合、「流体輸送機構において固定化される切断剤」は、流体輸送機構に配置される試料の少なくとも部分的消化を達成するのに必要な期間(例えば、試料の少なくとも1%を消化させる期間)、流体輸送機構による切断剤の安定な結合を指す。固定化は、永続的である必要はない。例えば、ある態様では、切断剤は、流体輸送機構の磁界への暴露を制御することにより流体輸送機構へ選択的に送達することができ、また流体輸送機構から除去することができる磁気ビーズ上に固定化することができる。切断剤はまた、それが流体輸送機構内に依然と存在する限りは、チャネル内で移動することができる。
【0071】
「判定すること」および「評価すること」という用語は、交換可能に使用されて、任意の形態の測定を指し、要素が存在するか、それとも存在しないかどうかを決定することを包含する。「決定すること」、「測定すること」および「判定すること」ならびに「アッセイすること」という用語は、交換可能に使用されて、定量的および定性的決定の両方を包含する。判定することは、相的または絶対的であり得る。「存在を判定すること」は、存在するものの量を決定すること、ならびに存在するか、それとも存在しないかをどうかを決定することを包含する。
【0072】
「使用すること」という用語は、その従来の意味を有し、したがって、目的を達成するために方法または組成物を用いること(例えば、使い始めること)を意味する。
【0073】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの移動相輸送導管と連通している固定相を含む流体輸送導管(「LC導管」)を含むマイクロ流体装置に関する。装置は、移動相をLC導管の導入部分へ導入する前に移動相の一部を廃液リザーバへ分岐させるための、LC導管のインレットの上流にあるスプリット領域を含む。装置は、スプリッティングを選択的に制御するためのメカニズムをさらに含む。一態様では、LCグラジエントは、スプリットレスで実行される。試料成分がLC導管からLC導管の下流にある受容導管へと溶出すると、移動相輸送導管を通る流速が増大し、移動相輸送導管を流れる流体の一部が、スプリット領域でスプリットされ、移動相の一部が廃液リザーバへ分岐される一方で、移動相の残りの部分は、LC導管のインレットへ進むことができる。
【0074】
一実施形態では、マイクロ流体装置は、第1および第2の互いに対向する表面を有する第1の基材を含む。この基材は、分離チャネルを有しており、この分離チャネルは、移動相および/または試料分析物を分離チャネルへ導入するためのチャネルと連通する液体クロマトグラフィを実施するために第1の表面に形成されている。一態様では、分離チャネルは、分析物の特徴(例えば、疎水性)に従って分析物を分離するための固定相をさらに含む。
【0075】
カバープレートは、第1の表面を覆って、基材上のチャネルと組み合わせて整列させ、流体が流れ得る導管を規定する。移動相輸送導管は、移動相輸送チャネルおよびカバーによって規定される一方で、LC導管は、LCチャネルおよびカバーによって規定される。別の態様でまたは追加的に、カバープレートは、所定の導管が2つの対向チャネルから形成されるように、第1の表面上の第1のチャネルに整列されるチャネルを含む。このような実施形態では、機能的な成分、例えば固定相を、カバープレートに設けられているチャネルの表面中または上に設けることができる。別の態様では、固定相は、カバーの表面に塗布されており、必ずしも下層のLCチャネルに存在するとは限らない。
【0076】
カバーは、当分野で公知の方法、例えば陽極接合、ナトリウムシリケート接合、融接またはガラス接合によって基材へ結合させることができる。
【0077】
導管が流体密であることを確実にするために、圧力シーリング法が使用することができ、これは、例えば外的手段(例えばクリップ、引張りばねもしくは協動クランプ)、内的手段(例えば雌雄連結器)、または化学的的手段(例えば接着剤もしくは溶接)を用いることにより、部材を合わせる。しかし、本明細書中に記載の全ての実施形態のように、圧力シーリング法によって、最大約100メガパスカル、通常約0.5〜約40メガパスカルの内部装置流体圧力下で、接触表面が流体密の接触を維持することができる。
【0078】
別の態様では、基材およびカバープレートは、単一の固体可撓性の片材で形成されてもよい。単一片の基材およびカバープレート形状を有する装置は、例えば米国特許第5,658,413号明細書および第5,822,571号明細書に記載されている。
【0079】
基材およびカバープレートを形成するのに適した材料は、マイクロ流体装置の適正な機能に望ましい物理的および化学的特徴に関連して選択される。一実施形態では、基材は、高解像度(つまり、高「分解能」)の構成、つまり、ミクロンまたはサブミクロン寸法のチャネル、チャンバ等の形成を可能にする材料から加工される。すなわち、材料は、例えばドライエッチング、ウェットエッチング、レーザエッチング、レーザアブレーション、成型、エンボス加工等を用いた微細加工が可能でなくてはならず、これにより、所望の小型表面構造を有するようなものである。好ましくは基材を、基材の表面内、表面上および/または表面を通して機構を形成するような様式で微細加工することができる。マイクロ構造はまた、材料を基材へ付加することによって基材の表面上に形成することができる。例えば、ポリマーのチャネルを、光画像化可能なポリイミドを用いて、ガラス基材の表面上に形成することができる。また、使用される装置は全て、流体試料を導入するのに使用される場合に、装置と接触する任意の物質に対して化学的に不活性かつ物理的に安定であることが望ましい(例えばpH、電界等に関して)。本装置を形成するのに適した材料としては、高分子材料、セラミックス(酸化アルミニウムおよびこれに類するものを含む)、ガラス、金属、複合材およびそれらの積層物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
高分子材料は、本発明で特に好ましく、通常、天然に存在するかもしくは合成の架橋または非架橋のホモポリマーもしくはコポリマーである有機ポリマーである。具体的な重要なポリマーとしては、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオフルオロカーボン、ポリスチレン、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)(ABS)、アクリレートおよびアクリル酸ポリマー、例えばポリメチルメタクリレート、ならびに他の置換および無置換ポリオレフィン、ならびにそれらのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。一般に、基材またはカバープレートの少なくとも一方は、装置が生物学的流体を輸送するのに使用される場合、生物付着物耐性ポリマーを含む。ポリイミドは、特に重要であり、きわめて望ましい基材材料であることが多く証明されている。ポリイミドは、例えば、商品名Kapton(登録商標)(DuPont、Wilmington、DE)およびUpilex(登録商標)(Ube Industries, Ltd.、日本)の名前で市販されている。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)もまた、望ましい生物付着物耐性の特性を示す。
【0081】
本発明の装置はまた、「複合材」、すなわち異なる材料から構成される組成物から加工されてもよい。複合材は、ブロック複合材、例えばA−B−Aブロック複合材、A−B−Cブロック複合材およびこれらに類するものであってもよい。別の態様では、複合材は、材料の不均質な組合せ、つまり材料が別個の相で区別されるもの、または異なる材料の均質な組合せであってもよい。本明細書中で使用する場合、「複合材」という用語は、「積層物」複合材を包含するように使用される。「積層物」は、結合された、同一のまたは異なる材料のいくつかの異なる層から形成される複合材材料を指す。他の好ましい複合材基材としては、ポリマー積層物、ポリマー−金属積層物、例えば銅でコーティングされたポリマー、セラミックインメタル(ceramic-in-metal)またはポリマーインメタル(polymer-in-metal)複合材が挙げられる。1つの好ましい複合材材料は、Kapron(登録商標)のようなポリイミドの第1の層を、同様にDuPont(WIlmington、Delaware)から入手可能なKJ(登録商標)として知られるポリイミドの熱接着形態の第2の薄層と共に共押出しすることによって形成されたポリイミド積層物である。
【0082】
特定の態様では、装置の基材および/またはカバーは、少なくとも部分的に透明な材料を含む。
【0083】
本装置は、マイクロ成型および注型技術、エンボス加工法、表面マイクロマシニングおよびバルクマイクロマシニングを含む任意の従来の方法を用いて加工することができるが、これらに限定されない。バルクマイクロマシンニング技術は通常、ウェット化学エッチングまたは反応性イオンエッチング(「RIE」)を用いてバルク材料へ直接エッチングすることによるマイクロ構造の形成を含む。表面マイクロマシニングは、基材の表面上に堆積されたフィルムからの加工を含む。例示的な表面マイクロマシニングプロセスは、「LIGA」として知られている。例えば、Beckerら(1986)の「Fabrication of Microstructures with High Aspect Ratios and Great Structural Heights by Synchrotron Radiation Lithography Galvanoforming, and Plastic Moulding (LIGA Process)」、Microelectronic Engineering 4(1):35-36、Ehrfeld(1988)らの「1988 LIGA Process: Sensor Construction Techniques via X-Ray Lithography」、Tech. Digest from IEEE Solid-State Sensor and Actuator Workshop、Hilton Head、SC、ならびにGuckel(1991)らのJ. Micromech. Microeng. 1: 135-138を参照されたい。LIGAは、基材上のX線レジストの比較的厚い層を堆積し、続いてX線マスクを通して高エネルギーX線に晒し、照射されたレジスト部分を化学現像液を用いて除去することを含む。このようにして得られたLIGA型を用いて、ミクロンのオーダーで水平寸法、つまり直径を有する構造を形成することができる。
【0084】
本装置を設けるための別の技術は、レーザアブレーションである。レーザアブレーションでは、強い紫外光の短パルスを、材料の薄い表面層に吸収させる。好ましいパルスエネルギーは、1平方センチメートル当たり約100ミリジュールより大きく、パルス継続時間は、約1マイクロ秒より短い。これらの条件下で、強い紫外光は、基材表面で化学結合を光解離させる。吸収された紫外線エネルギーは、解離されたフラグメントを迅速に加熱して、それらを基材表面から排出させるような小容量の材料において集結される。これらのプロセスはきわめて迅速に起こるため、熱が周辺の材料へ伝わる時間はない。その結果、周辺領域は溶融せず、そうであっても損傷を受けず、融除された機構の周囲は、約1ミクロンまたはそれ未満の規模で正確に入射光ビームの形状を複製することができる。レーザアブレーションは通常、F、ArF、KrCl、KrFまたはXeCl型のエキシマーレーザのような高エネルギー光子レーザの使用を含む。しかし、実質的に同じ光波長およびエネルギー密度を有する他の紫外光源も同様に使用することができる。レーザアブレーション法は、例えばZnotins(1987)らのLaser Focus Electro Optics、54〜70頁に、ならびにSchantzらの米国特許第5,291,226号明細書および第5,305,015号明細書に記載されている。
【0085】
一実施形態では、使用される製造技術は十分に高い解像度、つまりマイクロスケール(微小規模)の成分、チャネル、チャンバ等の構成を提供し、これによって、これらの構成の正確な「マイクロ配列」が可能となる、つまり、例えば互いに相補的なチャネルの整列、突出部とこれに合う凹部との整列、溝とこれに合う畝部との整列、およびこれらに類するものを含む正確かつ精密な配列が可能である。一態様では、第1の基材上の整列のための構成を、1つ以上のカバーおよび/または付加的な基材上の受容機構に噛み合わせることができる。このようにして、カバーおよび/または基材を整列させることができる。本明細書中で定義するように、受容機構は、整列用機構と連結することのできる任意の機構である。例えば、突出部または畝部と結合することのできる受容機構は、凹部または溝を有し、凹部または溝と結合することのできる受容機構は、突出部または畝部を有している。受容機構は、分離措置のような装置の基材上での措置中にカバーまたは基材の整列を維持することのできる適切な寸法形状の任意の機構であってよい。
【0086】
導管の幾何学形状および寸法は、特定の用途に適合するように様々であってよい。例えばLC導管に関しては、チャネルがより短ければ、試料帯が輸送されるべき距離が減少するが、一般にチャネルは、特定の分離方法論が使用されることを前提として、試料帯の正確な分離を提供するのに十分長いことが望ましい。
【0087】
移動相輸送導管およびLC導管のような流体輸送機構における流体流は、当技術分野で既知の多数のメカニズムによって制御することができる。このようなメカニズムは、流体輸送機構の異なる領域で圧力差を発生させること、または電気浸透的力または動電的力を印加することを含むが、これらに限定されない。これらのメカニズムの1つ以上を使用することができる。一態様では、少なくとも2つの構成における流体流が独立して制御される。
【0088】
上述のように、一実施形態では、LC導管は分離媒体を含む。分離媒体は、樹脂、ビーズもしくは他の形態の微粒子状固相を含むことができ、またはクロマトグラフィで活性な材料またはそれらの組合せを含むチャネルにおいて形成されるモノリシック構造を含んでもよい。特定の態様では、分離媒体は、チャネルおよび/またはカバーの1つまたは複数の壁上に被覆することを含んでもよく、これは、固定相のようなクロマトグラフィで活性な材料を含む。したがって、導管の内部表面は、カラムクロマトグラフィ技術で使用される充填材料と同様の吸着特性および表面積のような表面特性を示し得る。特定の態様では、分離導管は高い表面積−体積比(単位体積当たりの表面積)を示す。一つの態様では、分離媒体は、約100〜約500m/gの表面積を含むクロマトグラフィ充填材料を含む。
【0089】
分離媒体は、基材へ取り付けられたカバーの前または後に、装置の流体輸送機構へ注入するかまたは導入することができる。しかし、特定の態様では、分離媒体は、流体輸送機構内でその場で形成される。さらに別の態様では、分離媒体は、選択された機構またはその機構の領域で電圧差または圧力差を適用することにより、流体輸送機構へ充填される。別の態様では、分離媒体は、磁気性、常磁性または超常磁性である粒子を含み、装置の選択領域へ印加される磁界を用いて、機構へ加えるかまたは機構から取り除くことができる。
【0090】
一実施形態では、分離媒体は固定相を含み、この固定相を通して移動相を流すことができる。一態様では、固定相は疎水性表面を含み、移動相は水および有機溶媒の混合物を含む。この態様では、最も疎水性の低い成分が最初にクロマトグラフィ床を通って移動し、疎水性が増大する順に他の成分が移動するので、分離媒体が疎水性により分離を行う。特定の態様では、固定相は、n−アルキル鎖(例えば、C−8もしくはC−18)またはフェニル基を含む。他の態様では、固定相は、比較的極性であり、アミノ基(−NH)およびヒドロキシル基(−OH)基を含む。
【0091】
特定の実施形態では、クロマトグラフィ充填材料が、LC導管内に充填されたスラリーである場合、マイクロマシニングされているかまたは別の形態のフリット構造を、LC導管のアウトレット付近またはアウトレットに設けることができる。フリット構造は、流体試料および/または移動相が導管を通って運ばれる際、充填材料が導管内から移動しないことを保証するよう機能する。一態様では、LC導管の下流にある1つまたは複数の流れ輸送機構の断面積が低減されている。例えば一態様では、LC導管は、LC導管の断面積より小さな断面積を有するエレクトロスプレー先端と、アウトレットで境界をなしている。
【0092】
特定の実施形態では、装置は、装置の移動相輸送導管、LC導管および1つ以上の他の流体輸送機構のうちの1つ以上において温度を調節するための温度制御メカニズムを有している。
【0093】
LC導管により分離され得る試料成分は、バイオポリマー(例えば、核酸またはそれらの改質体もしくは誘導体、またはそれらと同様の形態、例えばDNA、RNA、PNA、UNAおよびLNA、タンパク質、ポリペプチドもしくはペプチド、またはそれらの改質体もしくは誘導体、またはそれらに似せた形態、および炭水化物)、ならびに小分子、有機および無機化合物、マスタグ修飾化合物、誘導化合物およびこれらに類するものを含むが、これらに限定されない。特定の態様では、試料は、試料成分に関する信号を検出してバックグラウンド信号と識別するためのLC導管へまたはLC導管の下流にある流体輸送機構へ適切に接近して設けられている検出器により検出することのできる標識された成分を含む。
【0094】
上述のように、LC導管は、上流の移動相輸送導管と連通する。一態様では、装置は、1つ以上の移動相成分(例えば溶媒)のグラジエントを生成するためのメカニズムをさらに含む。別の態様では、グラジエント形成のメカニズムは装置全体である。一態様では、種々の濃度の移動相成分を移動相輸送導管へ導入するために、インレットポートの1つ以上が移動相輸送導管の長手方向に沿って配置される。別の態様では、移動相供給源からの移動相のプラグ(plug)が、1つ以上のインレットポートを通って移動相輸送導管へ導入され、これにより、移動相保持導管の長手方向に沿って予め決められた順序でプラグが整列されるようになっている。
【0095】
一実施形態では、アセトニトリル(ACN)2%〜42%の範囲のグラジエントが形成される。
【0096】
一態様では、移動相は、印加電界を用いてキャピラリーカラムを通してポンピングされ、これにより、CZE(キャピラリーゾーン電位泳動)における場合と類似した電気浸透流が生成される。別の態様では、移動相は、高圧メカニカルポンプを用いてキャピラリーカラムを通してポンピングされる。
【0097】
一態様では、マイクロ流体装置の寸法は、流体のマイクロリットル容量が使用され、選択された移動相成分のグラジエントを含有する移動相を生成するようになっている。一態様では、グラジエント含有移動相を生成するために、約20μL以下の流体を使用する。
【0098】
一実施形態では、移動相が適切な速度および圧力でLC導管に送達することを保証するために、流速を調節するための流体流速レギュレータを使用する。このような流速レギュレータは、移動相供給源と試料供給源とLC導管との間の流路に置くことができる。流速レギュレータはまた、流れスプリッタを含んでいてもよく、一態様では、流れスプリッタを通る流れは、LC導管のような下流の導管へ流体を選択的に供給するための切換構造によって制御可能となっている(例えば、図2Aおよび図2B参照)。さらに、導管および他の流体輸送機構への流体流の速度を決定して任意に制御するための1つ以上の流れセンサを設けることができる。同様に、装置は、移動相導管(または移動相導管へ流体を供給するインレットポート)への溶媒の導入に先立って溶媒を混合するためのミキサを含む移動相供給源を含むことができる。
【0099】
一実施形態では、LC導管を流れる流体流を調節するために、選択的なオンチップ流れスプリットを用いる。一態様では、スプリッティングを選択的に制御するためのメカニズムは、プレートを備えている切換構造を含む。プレートは、少なくとも部分的に装置を覆い、また第1の位置から少なくとも第2の位置まで移動可能となっている。
【0100】
切換構造は、その下に設けられている基材/カバーの接触表面上に、その表面から突出するガイドまたは別の整列機構によって整列させることができる。一態様では、切換構造における流体輸送機構の少なくとも一部は、下に設けられている基材の流体輸送機構の少なくとも一部と整列可能となっており、これにより、切換構造の移動(例えばスライドおよび/または回転)が第1の整列位置において流体輸送機構間の液通が可能となっている。第2の整列位置へ移動することによって、流体の連通を変更させることができる。一態様では、第2の整列位置へ移動することによって、基材の流体輸送機構と切換構造の流体輸送機構との間の流体の連通が妨げられる。下に設けられている基材とともに切換構造を製造および整列させる方法は、例えば米国特許出願第20030224531号および第20030159993号に開示されており、これらの内容全体は、参照により本出願に組み込まれる。
【0101】
切換構造と基材/カバーとの間の接触が流体密であることを保証するために、例えば一緒に片材を合わせるための外部手段(例えば、クリップ、引張りばねまたはクランプ装置)を使用することによって、圧力シーリング技術を用いることができる。しかし、基材/カバーおよび切換構造のスライド可能な接触を妨害する過剰圧力は回避されるべきである。最適な圧力は、慣例の実験により決定することができる。しかし、本明細書中の全ての実施形態に記載のように、このような圧力シーリング技術によって、最大約100メガパスカル、通常約0.5〜約40メガパスカルの内部装置流体圧力下で、接触表面が流体密な接触を維持することができる。切換構造は、装置の基材および/またはカバーの製造に使用されるものと同じかまたは類似する材料から製造することができる。特定の態様では、切換構造は、操作を簡単にするためのハンドルを含む。
【0102】
切換構造は、移動相輸送導管を、スプリットレスでLC導管へまたはスプリット領域に(直接的にまたは間接的に)接続するための少なくとも1つの流体輸送機構(例えば導管、ポート、リザーバ等)を含み、この場合、移動相は、LC導管への導入前にスプリットされる。一態様では、流体流をスプリットするのに使用される流体輸送機構は、切換構造に形成されている。
【0103】
一実施形態では、切換構造は、流路切換を行って、スプリットレス配置からスプリット配置へ装置を変化させる動き(例えば、回転もしくは直線状の動きまたはそれらの組合せ)を利用する。一態様では、切換構造は、第1の表面と、装置の接触表面(例えば、基材および/またはカバー)と密接に連結可能な第2の表面とを有する構造を含み、表面間の流体密な接触を達成する。一実施形態では、図2Aに示すように、切換構造またはロータは、基材/カバーの平面に対して垂直な軸に関して回転可能であり、また、切換構造が働かなければ未接続の装置の流体輸送導管を、切換構造内または切換構造上に設けられている接続導管を介して接続するために使用される。図2Aおよび図2Bは、装置の流体輸送機構間の関係を上から見た図である。機構1、3、5および6は、弁ロータ上に設けられており、この実施形態では、チップ装置(第1の基材および第2の基材を含む)の下に存在する。機構2aおよび4はチップ内に設けられており、2bは、チップの上側基材の最上表面上に設けられている。機構31、34、36および37は、チップを通って延びる孔を通って存在する。機構32、33および35は、ロータとのみ連通する孔または開口部である。例えば、図2Aに示すように、切換構造が「スプリット配置」である(例えば試料充填中)場合、流体は移動相から流れていく。
【0104】
LCポンプ11からの流れは、2つの流体輸送機構5および2bへと機構37でスプリットされる。流体輸送機構2bは、流体の一部を流体輸送機構10を介して廃液導管へと誘導し、流体の別の部分を流体輸送機構3を介してLC導管4へ誘導する。切換構造が、図2Bに示すような「スプリットレス配置形状」である場合、つまり、例えばLC導管4を通して有機溶媒のグラジエントを実施する場合、移動相を受容するための流体輸送機構は、流体輸送機構7、2aおよび8を介してLC導管4と接続するが、流体輸送機構5および2bとは接続しないので、流れはスプリットされない。
【0105】
特定の実施形態では、装置の様々な流体輸送機構を通る流体流の速度は、ポンプ、例えばLCポンプ11と、LC導管4へ接続する様々な流体輸送機構との間の接続を変更させることにより調節することが可能である。一態様では、図2Aに示すように、スプリット配置では、流体輸送機構2bは、それが下流の導管4へ流体を供給する速度よりも大きな速度で、上流の導管11から流体を受容する。例えば、流体輸送機構2bは、1〜50μL/分の速度で、場合によっては約4μL/分の速度で流体を受容するが、100〜300nL/分の速度で、場合によっては300nL/分の速度で下流の導管へ流体を供給する。
【0106】
特定の場合には、流体輸送機構2bの内径は、上流の導管の直径と下流の導管の直径との間の中間にあり、流体輸送機構2bを通る流体流は、その直径および長さに応じて様々に変化する。したがって、装置を通る流体流速度およびスプリット比を最適化することができる。例えば、図2Aに示すように、スプリット配置では、流体は、所望の時間間隔でLC導管4へ固定圧力で(例えば約1〜10μL/分で、または必要に応じて)送達される。スプリット後のLC導管4を通る実際の流れは、約200nL/分〜300nL/分である。
【0107】
特定の実施形態では、試料注入は、グラジエント形成と協調的に行われる。しかし、図2Cおよび図2Dに示す実施形態では、流れスプリットは、グラジエント形成とは無関係に実行することができる、すなわち、スプリットは、グラジエント形成前、形成中または形成後に行うことができる。例えば、図2C〜図2Fに示すように、一実施形態では、装置は、同心円として整列される2つの切換構造、すなわち内部および外部ロータを含み、これらは、互いに独立に可動である。切換構造の運動は、スプリットであってかつロードもしくは作動の配置(図2Cおよび図2E)、またはスプリットレスであってかつロードもしくは作動の配置(図2Dおよび図2F)、つまり流体輸送機構の4つの異なる配向をもたらすことができる。外部ロータは、オンチップの流れ切換を作動させることができる。内部ロータは、充填/注入を制御するために、外部ロータは、スプリット/スプリットレス配置を制御するために使用できる。
【0108】
一態様では、第1の切換構造は、円形プレートまたは円柱状構造を含む一方で、第2の切換構造は、第1の切換構造が嵌合する孔を備えている、より大きな円形プレートを含む。別の態様では、第1の切換構造は、第2の切換構造を覆っている。第1の切換構造の運動(例えば、回転)は、第1の切換構造および/または基材/カバーにおいて、未接続の1つまたは複数の流体輸送機構を接続するのに使用することができ、これにより、ある位置(スプリットレス配置)では、スプリットレスで移動相輸送導管がLC導管と連通するのに対して、第2の位置では、移動相輸送機構からの流れがスプリットされて、その一部は第2の切換構造に設けられている分岐用導管へ運ばれる。
【0109】
別の幾何学的形状も可能であり、これは本発明の範囲内に包含される。例えば、第1の切換構造および第2の切換構造は隣り合うことができ、これにより、第1の位置から第2の位置への第1の構造上での接続用導管の移動は、切換ポイントで第2の切換構造上(または中)の第2の流体輸送機構上で、移動相輸送機構を分岐用導管と流体連通させて、移動相輸送機構からの流体流の一部を分岐用構造へ方向転換させることができる一方で、残存部分はLC導管へ導入される。
【0110】
下に設けられている装置と同様に、1つまたは複数の切換構造の流体輸送機構は、様々な幾何学的形状を有している。例えば、流体輸送機構は、切換構造を通って直角に延びているか、比較的平行な構造であるか、または円形もしくは曲線状の幾何学的形状を有していることができる。一態様では、流体輸送機構は、第1の末端および第2の末端を含む。第1の末端および第2の末端は、下に設けられている基材/カバーの流体輸送機構のインレットまたはアウトレットを接続することができる。切換構造の回転は、種々の流体輸送機構間の流体連通を選択的に供給または停止するのに使用することができる。
【0111】
特定の態様では、切換構造は、基材上の1つ以上の流体輸送機構へ予め定められた容量の流体を、制御可能に提供するのに使用できる。
【0112】
移動相輸送導管およびLC導管に加えて、装置は、様々な幾何学構造で接続され得る複数の流体輸送機構を含むことができる。例えば、基材は、移動相輸送導管およびLC導管の加えて、少なくとも約2個、少なくとも約4個、少なくとも約8個、少なくとも約16個、少なくとも約32個、少なくとも約48個、または少なくとも約96個の流体輸送機構を含み得る。一態様では、機構の数は、業界標準のマイクロタイタープレートにおけるウェルの数に相当する。別の態様では、機構間の中心同士の距離は、業界標準のマイクロタイタープレートにおけるウェルの中心間の距離に相当し得る。特定の態様では、各機構は、LC導管に直接的または間接的に連通する試料導入手段を含む。
【0113】
一態様では、96個の流体輸送機構を含む装置が、96個の試料導入手段を介して96ウェルマイクロタイタープレートに連結される。
【0114】
別の導管をさらに、さらに別の分離手段を実施するのに提供することができる。例えば、クロマトグラフィ分離手段の他に、電気泳動的、拡散ベースのおよび/または親和性ベースの分離のために導管を提供することができる。一態様では、装置は、多次元クロマトグラフィ分離に使用できる。この装置は、クロマトグラフィによる分離、電気泳動による分離、拡散ベースの分離および親和性ベースの分離からなる群から選択される少なくとも異なる2つのタイプの分離を実施するのに使用できる。しかし、これらは、単なる例に過ぎず、他の組合せを想定してもよく、それは本発明の範囲内に包含される。
【0115】
ある特定の実施形態では、チャネルは、分離媒体、試薬(例えば酵素、ポリメラーゼ、抗体、核酸、ポリペプチド、ペプチドおよびこれらに類するもの)および/または緩衝液で満たされる。
【0116】
一態様では、極性以外の分離特徴としては、等電点、質量、結合分子(例えば抗体、金属、リガンド、受容体およびこれらに類するもの)に対する親和性、疎水性、キラリティ、配列の特徴およびこれらに類するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
分離媒体は、電荷担持成分、ふるい成分、固定相、親和性マトリックス等を含むことができる。特定の態様では、分離媒体はゲルを含み得る。別の態様では、分離媒体はフィルタまたは膜を含み得る。
【0118】
流体輸送機構中に含まれる分離媒体としては、イオン交換クロマトグラフィ(例えば、陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィ、および特定の態様ではSCX(強陽イオン交換))用の媒体、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)用の媒体、クロマトフォーカシング(CF)分離(例えば、等電点に基づく)を実施するための媒体、ゲル電気泳動を実施するための媒体、親和性分離を実施するための媒体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
別の態様では、装置は、1つ以上の受容体が結合する固体相を含む免疫親和性マトリックスを含む1つ以上の流体輸送機構を含む。「受容体」は、本明細書中で使用する場合、試料からの枯渇されるべき任意の分子に対する結合パートナーとして働くことのできる任意の分子を含む。例えば、受容体は、抗体またはその抗原性フラグメントを含み得る。しかし、本明細書中で使用する場合の「受容体」は、必ずしもタンパク質であるとは限らず、ポリペプチド、ペプチド、金属、金属配位化合物、炭水化物(例えば、コンカナバリンAまたは小麦胚芽凝集素のようなレクチン)、アプタマー、核酸、補因子、ヘパリン、ポリミキシン、色素(例えば、シバクロンブルーF3GA)、炭化水素(例えば、疎水性タンパク質を結合するメチルおよびフェニル基)、タンパク質部分に対する親和性を有する官能基を有する作用物質(例えば、ヒドラジド、アミン、N−ヒドロキシ−スクシンイミド、カルボキシル、ボロネートおよび有機水銀分子)、または所望の結合特異性を有する任意の他の分子も含み得る。
【0120】
さらなる態様では、免疫親和性マトリックスを含む流体輸送機構は、試料導入ポートと連通している。マトリックスは、試料を免疫枯渇させて、その試料の複雑さを低減させるのに使用することができる。特定の態様では、免疫親和性マトリックスを含む流体輸送機構は、所望の試料成分(例えば、システイン含有タンパク質)を免疫選択するのに使用してもよく、その場合、機構は、溶出緩衝液を供給するポートと連通し得る。一態様では、試料導入ポートは免疫親和性導管と連通し、この導管は、第1の導管および第2の導管へ分かれるが、一方の導管は、望ましくない材料を含む免疫親和性カラムからの流出液を受容するためのものであり、一方の導管は、第1の分離流体輸送機構へと誘導され得る溶出された望ましい成分を受容するためのものである。
【0121】
流体は、電気浸透的手段および/または動電的手段および/または流体輸送機構の種々の領域で圧力差を発生させることによるものを含む多数の種々の方法により、チャネルからチャンバへ運ばれる。
【0122】
さらなる分離導管は、装置の基材/カバー部分の一部として設けることができ、かつ/または1つ以上の上に重なる切換構造の一部として設けることができる。
【0123】
特定の実施形態では、流体輸送機構の幾何学的構成は、順次分離または平行試料分離が可能であるように選択される。例えば、第1および第2のチャネルは、第1の基材表面で形成させることができ、装置の第1の導管および第2の導管を形成する。一態様では、試料インレットポートは、弁(または流体流を制御するための他のメカニズム)と流体連通しており、この弁は、インレットポートと導管のいずれか一方との間で選択的な流体連通を提供するように構築されている。知られている弁タイプとしては、ボール弁、ソレノイド弁およびゲート弁が挙げられるが、これらに限定されない。一態様では、装置に組み込まれた部分となっている弁が構築されている。装置の様々な部分において電圧差および/または圧力差を制御することもまた、同じ作用を達成するのに使用できる。
【0124】
したがって、一態様では、試料供給源から導入される流体試料は、順に試料インレットポート、選択された導管、および下流の接続用流体輸送機構の選択された導管に連結している試料アウトレットポートへと続く規定の試料流路で運ばれる。
【0125】
特定の態様では、装置は、LC導管または装置の他の分離導管による分離の前または後に、試料を処理するための流体輸送機構を含む。特定の態様では、試料処理流体輸送機構は、酵素、ポリメラーゼ、切断剤、結合パートナー、例えば核酸結合タンパク質、転写因子、補因子、受容体、リガンド、ヘリカーゼ、トポイソメラーゼ、抗体、標識用試薬、誘導体化剤、色素、細胞、イオン(例えば、流体のpHを変更させるため)等を含むがこれらに限定されない試薬を含み得る。試料処理機構は、薬剤を導入するためのインレットポートと連通し得る。試料処理流体輸送機構はまた、機構中の流体の条件を変更させる装置、例えば加熱もしくは冷却要素または光源と連通してもよい。試料処理機構は、LC導管の上流または下流であってもよく、移動相輸送導管の上流または下流であってもよい。
【0126】
試料処理は、試料中のタンパク質の切断を含む。例えば、流体輸送機構は、流体輸送機構の壁上に配置される固体相に固定化されているかもしくは溶液中の、化学切断剤もしくは酵素切断剤のような切断剤を含んでいてもよい。適切な切断剤としては、酵素、例えばセリンプロテアーゼ(例えば、トリプシン、ヘプシン、SCCE、TADG12、TADG14)、メタロプロテアーゼ(例えば、PUMP−1)、キモトリプシン、カテプシン、ペプシン、エラスターゼ、プロナーゼ、Arg−C、Asp−N、Glu−C、Lys−C、カルボキシペプチダーゼA、Bおよび/またはC、ディスパーゼ、サーモリシン、システインプロテアーゼ(例えば、ジンジパイン)、TEVプロテアーゼ、第Xa因子等の1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。プロテアーゼは、細胞から単離され得るか、または組換え技術によって得ることができる。切断剤は、酵素に限定されず、化学試薬、例えば臭化シアン(CNBr)、2−ニトロ−5−チオシアノ安息香酸、N−ブロモスクシンアミドおよび他の反応性ハロゲン化合物、ヒドロキシルアミン、1〜2Mギ酸または酢酸、過ヨウ素酸酸化、2−(2−ニトロフェニルスルフェニル)−3−メチル−3−ブロモインドレニンまたはo−ヨードソ安息香酸であってよい(例えば、Hermodsonら、「Methods in Protein Sequence Analysis」、ed. Elzinga、Humans Press、Clifton、N.J.、313〜323頁、1982を参照)。流体試料がヌクレオチド部分を有する場合、ヌクレオチド分解が可能なヌクレアーゼ酵素、例えばエンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼを使用することができる。
【0127】
切断剤は、表面(基材壁、またはチャネルもしくはリザーバ中の固相)へ直接結合されていてもよし、間接的に結合されていてもよい(例えば、抗体もしくは別の結合パートナーを介して)。一実施形態では、装置は、複数の試料処理流体輸送機構を含む。例えば、一態様では、装置は複数の流体輸送要素を含み、これらの流体輸送要素はそれぞれ、異なるタイプの試薬(例えば、異なるタイプの切断剤)を含む。
【0128】
特定の態様では、試料導入手段は、試料が分離導管へ導入される前に、流体試料の分解を実施するために使用できる。すなわち、導入手段の導管は切断剤を有していてよい。
【0129】
特定の態様では、装置は、1つ以上の試料保持リザーバまたは導管を含み、これにより、少なくとも一時的に試料を保持することができる。一態様では、試料保持リザーバは、装置内にコンパートメントを提供し、ここで試料処理の措置事象が行われてもよく、すなわち試料保持リザーバはまた、試料プロセシングリザーバであってもよい。さらに、さらなる態様では、試料の分取量は、試料保持リザーバ中で種々の期間、作用物質(例えば、切断剤のような)へ暴露されて、続いて他の点では、例えば装置の平行流体輸送機構において同じ試料流体プロセシング/分離条件へ付され得る。
【0130】
一つの態様では、試料保持リザーバは、例えば分離導管を通過した望ましくない成分を含む流体を受容するための廃液リザーバを含む。さらに別の態様では、試料保持リザーバは、保持流体、例えば望ましくない試料成分を含む流体を除去するためのアウトレットポートを含む。
【0131】
別の実施形態では、装置は、試料を濃縮するための1つ以上の収束要素を含む。例えば、装置は、流体輸送機構内にpHグラジエントを確立するための手段を含んでいてもよい。一態様では、少なくとも1つの分離路における少なくとも1つの分離媒体を使用して、その分離路においてpHグラジエントを確立する。例えば、集束機構は、両性電解質を含む流体輸送機構(例えば、リザーバ)と末端で連通している導管であってよい。また、両性電解質含有流体輸送機構において電界を発生させるために電極を使用することができる。したがって、両性電解質の酸性基および塩基性基は、電界中で自己整列して、移動し、これにより一時的なまたは安定なpHグラジエントを生成する。下流の流体輸送機構を使用して、グラジエントを通過した濃縮または集束されたバイオポリマー分子を捕集することができる。
【0132】
しかし、特定の態様では、両性電解質の使用が避けられる。例えば、温度グラジエントが生成されて、等電集束を可能にするpHグラジエントを形成するのに使用することができる。
【0133】
種々の試料導入手段、分離機構、試料処理および/または捕集機構は、種々の形状で作動する弁を使用した装置における機構から単離させて、流体を機構(例えば、導管またはリザーバ)へ放出させることができ、流体を機構から取り出すことができ、かつ/または流体が機構へ進入するのを防止することができる(例えば、米国特許第5,240,577号(この全体が、参照により本明細書に援用される)に記載されるものを参照)。
【0134】
特定の態様では、少なくとも部分的に分離された試料成分を含む流体を第2の分離導管へ導入することは、第1の分離導管における分離プロセスのモニタリングと調和させる。例えば、第1の導管を通って移動する標識試料成分を含む試料プラグの検出は、第2の分離導管のインレットポートへの選択した時間での試料プラグの注入と調和させることができる。
【0135】
他の態様では、分離導管の組合せは、少なくとも第1の特徴および第2の特徴に従って試料を分離するのに提供される。一実施形態では、第1の特徴および第2の特徴は異なり、すなわち、装置は、多次元分離用に設計される。
【0136】
一態様では、導管の少なくとも2つは、同じかまたは異なる成分特徴に従って流体試料の成分を分離するために構築される。ある特定の実施形態では、個々の流体輸送機構とそれぞれ連通する多数の試料インレットポートが提供される。インレットを通る流体/試料の動きは、互いに独立していてもよく、或いは協調させてもよい(例えば、平行試料プロセシングにおけるような)。順次および平行流体流の組合せもまた提供され得る。ある特定の態様では、上述のように、試料インレットの数は、産業標準マイクロタイタープレートにおけるウェルの数またはかかるプレートの列、もしくは段におけるウェルの数に相当する。
【0137】
平行および/または順次試料プロセシングは、平行および/または順次多次元分離と組み合わせてもよい。例えば、少なくとも1つの第1の導管は、第1の特徴に従う試料成分に対する第1の次元の分離(例えば、サイズ排除クロマトグラフィ、イオンクロマトグラフィ、キャピラリー電気泳動、界グラジエントによる等電集束または電気泳動集束、または他の分離技法によるような)。続いて、第1の次元分離からの分画は、1つまたはそれ以上の上述の方法或いは他の分離技法を使用して、第2の異なる特徴による分離のための第2の分離導管へ誘導され得る。
【0138】
任意の試料プロセシングチャンバは、例えばバイオポリマーを切断するため、バイオポリマー酵素反応(例えば、切断、増幅、連結)に付すため、バイオポリマーを化学反応に付すため、かつ/または試料成分を条件(例えば、温度、pH、露光等)へ暴露するために、分離導管の上流および/または下流に提供され得る。任意の混合チャンバは、例えば試料インレットポートからの、或いは同じかまたは異なる基材上の別の導管からの、流体および/または試料成分を試料と混合するために提供され得る。選択した期間(例えば、同じかまたは異なるチャンバにおける先立った反応が行われる期間、または分離が下流の流体輸送機構で行われる期間のような)、試料を保持することができる任意の試料保持チャンバが提供され得る。ある特定の態様では、かかる任意のチャンバは、複数の機能を提供し得る。例えば、プロセシングチャンバは、混合チャンバとして、かつ/または保持チャンバとして、同時に或いは順次使用され得る。
【0139】
一実施形態では、本発明は、上記に開示する任意の装置および検出器を含むシステムを含む。
【0140】
一態様では、検出器は、分離導管に近接して設置され、使用者が分離効率および/または試料特徴をモニタリングすることを可能にする。ある特定の態様では、複数の検出器が、システムに連結される。例えば、検出器は、システムの様々な流動点に設置されてもよく、使用者が分離効率をモニタリングすることを可能にし、また第1の分離流体輸送機構および第2の分離流体輸送機構の両方に近接させてもよい。検出器は、適切な波長の光を有する試料(例えば、タンパク質を含む溶液)の励起後の屈折率、紫外および/または可視光吸収、光散乱または蛍光の変化をモニタリングし得る。
【0141】
検出器はさらに、カメラ、適切なフィルタシステムおよび光電子増倍管に結合させることができる。検出器は、光学検出器に限定する必要はなく、液体クロマトグラフィおよびキャプラリー電気泳動(電気化学的、導電率等を含む)における検出に使用される任意の検出器を包含することができる。
【0142】
別の実施形態では、システムは、装置の少なくとも1つの分離導管を通って流れた試料中の分離された1つまたは複数の成分を分析するための分析システムを含む。一態様では、分析システムは、検出器からの信号を獲得し、これらを分離される分子の特性に関するデータに変化するためのプロセッサを含むか、或いはプロセッサに接続可能である。検出器および/または分析システムは、装置に直接的または間接的に結合することができる。一実施形態では、エレクトロスプレー装置は、本発明の態様により装置と連結され、分離されたかまたは少なくとも部分的に分離された分子(例えば、ペプチドのような)を質量分析装置のような検出器/分析システムへ送達する。エレクトロスプレー装置は、当該技術分野で既知である。例えば、Wilm and Mann, Anal. Chem. 1996; 68: 1-8、Ramseyら、Anal. Chem. 1997; 69: 1174-78、Xueら、Anal Chem. 1997; 69; 426-430および米国特許第6,245,227号明細書を参照されたい。一態様では、本発明による装置は、米国特許出願第2004156753号に記載されているような集積エレクトロスプレーエミッタを含む。タンパク質分析システムがMALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)装置を含む場合では、自動スポッターを使用して、MALDI装置との連結を提供してもよい。
【0143】
他の態様では、LC導管は、試料びん、プレートもしくはキャピラリーのような捕集器と、または装置の同じかまたは異なる基材上の別の分離導管との連通のための別の流体輸送機構と流体導通している。捕集器は、貯蔵装置として、または捕集された試料フラクションを使用および/または分析する別の装置への中間段階として機能し得る。
【0144】
質量分析技術は、当技術分野で既知であり、例えばレーザ脱着およびイオン化技術を含んでおり、この技術と、装置と併せての使用は、米国特許第5,705,813号および同第5,716,825号に記載されている。別の方法でまたは付加的に、分析器は、既定波長の電磁放射を発生するように設計された電磁放射の供給源を含んでもよい。流体試料および/または使用される任意の分子標識の固有の特性に応じて、放射線は、紫外、可視または赤外放射であってよい。
【0145】
一態様では、分析システムは、タンパク質消化生成物またはペプチドのアミノ酸配列を決定するための、かつ/またはペプチドまたはそれらの誘導体(またはそれらのイオン化フラグメント)の質量/電荷特性を、ペプチド(またはそれらの誘導体)が由来する相当するタンパク質と相関させるためのプロセッサを含むか、或いはプロセッサと連通している。別の態様では、システムは、本発明による装置による分離される分子に関するデータが保存され得るメモリをさらに含む。プロセッサは、他のシステム機能(例えば、弁の開口または閉鎖、または1つ以上の流体輸送機構における電位の変化のような)を監視および/または制御するのに使用され得る。
【0146】
本発明はさらに、本明細書中に開示する装置およびシステムを使用する方法を提供する。
【0147】
一実施形態では、本発明による方法は、移動相を第1の流速でLC導管を通して導入すること、続いて移動相をより遅い第2の流速でLC導管を通して導入することを含む。一態様では、第1の流速は、約1〜100μL/分、約1〜20μL/分、または約1〜10μL/分であるのに対して、第2の流速は、約100〜500nL/分、約100〜300nL/分または約200〜300nL/分の範囲である。例えば、一態様では、一次元分離に関する流速は、約0.01〜1μL/分の範囲である。別の態様では、移動相の流速の変化は、移動相の一部を廃液リザーバへ選択的に方向転換される一方で、移動相の残部をLC導管へ導入させることにより生じる。さらに別の態様では、移動相の選択的な方向転換もしくはスプリットは、選択した時間で、装置上で流体輸送機構を選択的に接続する切換構造により、かつ/または切換構造上で実施される。さらなる態様では、移動相は、移動相成分のグラジエントを含む。例えば、移動相グラジエントは、アセトニトリル約2%〜42%またはそれを上回る範囲であり得る。
【0148】
一実施形態では、移動相グラジエントおよび試料は、移動相を予めスプリットすることなく、LC導管へ導入される。試料成分が溶出された(例えば、試料からの最終ピークが、装置に適切に近接している検出システムにより検出された)後、移動相流が増大される。続いて、移動相の一部は、廃液リザーバへ方向転換される一方で、残部は、より低速でLC導管へ流れ続ける。移動相の残部中の試料成分は、LC導管から溶出される。
【0149】
図3の左側と図3の右側との比較からわかるように、一態様では、オンチップスプリッティングは、実施時間ならびにグラジエント回復時間を減少させるように設計される。図4は、これが実際に観察されることを示す。
【0150】
一実施形態では、切換構造は、装置の基材および/またはカバー上の種々の流体輸送機構間での連通を選択的に制御するのに使用される。一つの態様では、切換構造は、切換形状の場合、移動相輸送導管を、装置のスプリット領域とともに配列させ、移動相輸送導管から移動相輸送導管への流体流を受取るための2つの流体輸送機構を接続する。一方の流体輸送機構は、LC導管を含むか、或いはLC導管と連通しているのに対して、他方の流体輸送機構または分岐用導管は、流体の一部を移動相輸送導管から廃液リザーバへ方向転換させる。幾つかの態様では、再循環される流体中の望ましくない成分は、固定相または望ましくない成分へ選択的に結合し、移動相からこれらを除去するための他の成分を含む分離導管へ流体を輸送することにより除去される。
【0151】
LC導管を通って流れる試料は、上述のように分析システムにより評価することができる。一態様では、LC導管は、2つの路にスプリットする下流の導管と連通し、一方は、第2の導管と接続し、一方は、同じかまたは異なる分析システムと接続し、その結果、分離された試料の分取量は、分析システムにより評価され得る一方で、別の分取量は、同じかまたは異なる分析システムによるさらなる分離および/または分析に付される。ある特定の実施形態では、第2の導管は、同様に2つの路へスプリットする導管を含むか、または導管に接続され、一方の路は、試料プラグの一部が分析システムにより分析されるのを可能とし、第2の路は、さらなるまたは異なるタイプの分析を可能にし得るか、或いは試料プラグの構成要素の単離を可能にし得る。分離用チャネルおよび他の流体輸送機構へのならびに分離用チャネルおよび他の流体輸送機構からの移動は、当該技術分野で既知のメカニズムを用いて、例えば圧力を変更させるメカニズムにより、かつ/または電気浸透もしくは動電流れ制御用メカニズムにより制御することができる。
【0152】
一態様では、上流の分離導管中の緩衝液および試薬の選択は、それが連通する下流の流体輸送機構と適合性であるように最適化される。例えば、下流の1つまたは複数の導管中で行われるプロセスに実質的に影響を及ぼさずに試料中の分子の溶解度を維持する緩衝液または溶媒を選択することができる。希釈緩衝液および/または交換マトリックスを供給するための導管は、必要に応じて、流体および流体中の成分を希釈/交換するために、装置における適切な位置/流路で。
【実施例】
【0153】
本発明を、以下の実施例によって詳説する。実施例は、発明の理解を助けるものとして示されているのであり、発明を限定するものではない。
【0154】
実施例1
4μL/分で作動するAgilent1100CapPumpを、マイクロチップ(μ-chip)上での試料ロードのためのAgilent1100μ−ウェルプレートオートサンプラへ接続した。試料ロード中、LCポンプを60barの一定圧力に設定し、測定された流速は3μL/分であった。スプリット点における制限は、LCチャネルを通る流れが300nL/分であり、スプリットキャピラリーを通って廃液への流れが2.7μL/分であるように調節された。LC作動を開始した2分後、チップ弁をインジェクション/スプリットレスの位置へ切換えた。Agilent1100nanoPumpにより送られるLC移動相グラジエントは、300nL/分の一定流速に設定した。オンチップLCチャネルに関する実験条件は、2%Bから42%Bへの40分グラジエントであった。42分で、チップ弁をロード/スプリット位置へ切換え、LCポンプを、再び60barの一定圧力に設定した。このような配置で、LCポンプとLCカラムのヘッドとの間の遅延時間が10倍低減された。ここでオートサンプラは、次の試料をロードする準備ができている。LCグラジエント回復時間は、スプリット/スプリットレスの手段を用いて、約5分へ低減される。その結果を図4に示す。
【0155】
本明細書中で引用した特許、特許出願および参考文献を含む全ての刊行物の内容全体は、あらゆる目的で参照により本出願に組み込まれており、それは、個々の刊行物が具体的にかつそれぞれで全体の参照によりあらゆる目的で組み込まれていることを示す。
【0156】
以上、本発明を、より明確な理解のために説明および実施例によって詳細に説明したが、本発明の教示を踏まえて、特許請求の範囲および本発明の思想から逸脱することなく、本発明に対して特定の変化および変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1A】従来技術による従来のアクティブスプリットグラジエント液体クロマトグラフィポンプの概略図である。
【図1B】遅延時間と流速との関係を示す。より速い流速を用いた場合に回復時間が短縮されることを示す。
【図2A】本発明の一態様によるマイクロ流体装置の切換構造の概略的な上面図であって、試料が装置の流体輸送機構へロードされ、LC導管へと導かれるスプリット配置を示す。
【図2B】本発明の一態様によるマイクロ流体装置の切換構造の概略的な上面図であって、LC導管中で有機溶媒のグラジエントを確立するのに使用されるスプリットレス配置を示す。
【図2C】試料注入とは無関係にスプリットを作動させるための2つの切換構造を含む本発明の一態様によるマイクロ流体装置の上面図である。
【図2D】本発明の一態様によるマイクロ流体装置の別の配置の上面図である。
【図2E】本発明の一態様によるマイクロ流体装置の別の配置の上面図である。
【図2F】本発明の一態様によるマイクロ流体装置の別の配置の上面図である。
【図2G】図2C〜図2Fにおける様々な流体輸送機構の機能を示すための参考図である。
【図3】本発明の一態様による方法を示す図であって、左図は、分離の実行前の移動相をスプリットなしで実施されたクロマトグラフィプロセスの第1の相を、右図は、移動相が実験前にスプリットされた第2の相を示す。図面の上部に、作動時間およびスプリット後に観察される回復時間が短縮されていることを示す。
【図4】図2C〜図2Fに示すマイクロ流体装置を用いて3回繰り返したLC実施を示すグラフであり、総計83%の負荷サイクルが実証されている。
【符号の説明】
【0158】
2a、2b、3、5、6 移動相輸送導管(流体輸送機構)
4 LC導管(流体輸送機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定相を含む流体輸送導管を備えている装置であって、該流体輸送導管が、少なくとも1つの移動相輸送導管と連通しており、該装置が、前記移動相輸送導管を流れる移動相の一部を選択的に方向転換させるためのメカニズムを含み、前記移動相の残部が、前記固定相を含む前記流体輸送導管へと流れる、装置。
【請求項2】
方向転換された前記移動相の一部が、廃液リザーバへ運ばれる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記移動相を選択的に方向転換させるための前記メカニズムが、切換構造を含み、該切換構造が、前記移動相輸送導管を、2つの流体輸送機構を含む前記装置のスプリット領域へ選択的に接続させる一方の流体輸送機構が、前記固定相を含む前記導管であるか、または前記導管に接続可能となっており、他方の流体輸送機構が、廃液リザーバであるかまたは廃液リザーバに接続可能となっている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記装置が、カバーを含む基材を含み、前記切換構造が、前記基材に対して垂直の軸に関して回転可能である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記切換構造が、前記移動相輸送導管がその流れの一部を方向転換させることなく前記固定相を含む前記導管へ接続する第1の位置から、その流れの一部が、廃液リザーバへまたは廃液リザーバに接続可能である流体輸送機構へ方向転換される第2の位置へ移動可能である、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記装置が、前記固定相を含む前記導管の上流または下流へ試料成分を分離させるための導管を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記上流または下流の導管が、分離媒体を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記上流または下流の導管が、免疫親和性マトリックスを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記移動相輸送導管が、移動相源と連通している、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記移動相源が、移動相成分のグラジエントを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記移動相輸送導管が、種々の濃度の前記移動相成分を運ぶためのインレットと流体連通している、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記移動相輸送導管が、種々の濃度の前記移動相成分を運ぶための複数のインレットと流体連通している、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記移動相の前記一部を選択的に方向転換させるための前記メカニズムが、第1の切換構造および第2の切換構造を含み、前記第1の切換構造が、移動相輸送機構を、固定相を含む導管へ選択的に接続させ、前記第2の切換構造が、前記移動相輸送機構を、分岐用導管および前記固定相を含む導管へ選択的に接続させる、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の切換構造が、前記移動相輸送機構を、前記装置の試料インレットへ選択的に接続させる、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の切換構造が、前記移動相輸送機構を、前記固定相を含む前記導管へ導入する前に流体を方向転換させることなく、前記固定相を含む前記導管へ接続させる、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記装置が、基材およびカバーを含み、前記第1の切換構造および前記第2の切換構造は、前記基材およびカバーに対して垂直な軸に関して回転可能である、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記第1の切換構造および前記第2の切換構造が、同じ軸を中心に回転可能である、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記基材が、前記移動相輸送導管の一部を規定するチャネルを含む、請求項4に記載の装置。
【請求項19】
前記切換構造が、前記移動相輸送導管の少なくとも一部を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項20】
請求項1に記載の装置および前記固定相を含む導管による試料構成要素の分離をモニタリングするための検出器を含む、システム。
【請求項21】
分離した試料成分に関連するデータを獲得および分析するための分析モジュールをさらに含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記分析モジュールが、質量分析計を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
移動相を請求項1に記載する装置へ供給することを含む方法であって、前記移動相の一部を選択的に方向転換させる一方で、前記移動相の残部を、前記固定相を含む前記導管へ流させることを含む方法
【請求項24】
(a)前記移動相を、該移動相の一部を方向転換することなく、第1の流速で、前記固定相を含む前記導管へ供給し、
(b)前記移動相を、前記固定相を含む前記導管へ供給し、この場合、前記移動相の一部が、前記固定相を含む前記導管から方向転換される一方で、残部が、第2の流速で、前記固定相を含む前記導管へ運ばれる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(b)を、ステップ(a)の後に実施する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の流速は、前記第1の流速よりも遅い、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(b)で供給される前記移動相が、移動相成分のグラジエントを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(a)で供給される前記移動相が、移動相成分のグラジエントを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
移動相成分のグラジエントが、前記固定相を含む前記導管中で形成される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記グラジエントが、ステップ(b)の前に、間にまたは後に形成される、請求項29に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−276021(P2006−276021A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91679(P2006−91679)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.