説明

液体クロマトグラフィー用カラム

カラム管と、カラム管内で複数の縦方向の位置に位置付けられ得るプランジャーを有する1以上の調節可能なアダプターアセンブリとを含むクロマトグラフィーカラムであって、ピストンがねじ山によって配置されたねじ山付きピストンロッドの端部に配置され、前記ねじ山は回転可能なエンドキャップと係合して、エンドキャップを回すことによってピストンの縦方向の移動を可能にし、アダプターアセンブリがエンドキャップの回転に応じたプランジャーロッドの回転を防ぐように構成された回転防止手段を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィー用カラム、具体的には収容された分離媒体の圧縮率を調節できるカラム、並びにクロマトグラフィーカラムに分離媒体を充填する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーは、化学的混合物から1種以上の化合物を分離・同定することのできるプロセスである。クロマトグラフィーカラムで生体物質を有効に分離できるようにするため、カラム管内に分離材料の微粒子をできるだけ隙間なく均一に充填するのが通常である。カラムの充填(カラムパッキングとも呼ばれる)は、通常、カラムの一端を、フィルター要素を含む出口手段で閉じ、粒子の液体懸濁液を加圧下でカラムの他端にポンプ送液することによって行われる。ポンプ送液された液体は本質的にフィルター要素を素通りできるが、粒子はフィルター要素に保持されて、管の長さ方向に粒子床が堆積する。カラム管が充填されるにつれて、粒子は管壁に向かって押しつけられ、粒子床は粒子が十分に分布した安定な圧縮状態を得て、この状態は充填プロセス全体を通じて維持される。
【0003】
しかし、カラム管が粒子で充填され、液体懸濁液のポンプ送給を終えて入口要素を管の充填端部に取り付けることができるようになると、粒子床における安定な拘束力が部分的に失われ、粒子床の膨張が起こる。その結果、カラム管を再度圧力下におくと、粒子床に、チャネル及びデッドボリュームの形成のような流れを乱す不均質又は不規則性を生じる可能性が高い。
【0004】
カラム内の充填媒体の均一性はカラム性能に多大な影響をもつ。充填媒体をなす粒子が完璧に整列し完全に均一であって、カラム内を輸送液及び試料混合物が均一な速度で移動するのが望ましい。媒体の充填密度の緩い領域は局所的に流速を増大させるチャネルを生じ、一方、粒子の凝集のため部分的に詰まった領域は流れを遅くする渦を生じる。媒体の不均一な充填に起因する流速の局部的な変動は、輸送液の混合を生じてカラム性能を落とし、ピーク幅の広がりと同時にクロマトグラフィー装置の分解能の低下をもたらす。
【0005】
汎用カラムを提供すべく、収容された分離媒体の圧縮率を調節できる一群のカラムが提供されている。かかるカラムは通例、カラム長さを調節するためのカラム管内で可動な1又は2つのプランジャーを含む。従来技術のカラムの例としては、GE Healthcare社のXKカラムシリーズ及びYMC Europe社のKronlab ECOplusカラムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6139732号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術の短所の1以上を克服する、液体クロマトグラフィー用の新規カラム及びクロマトグラフィーカラムの充填方法を提供することである。これは、独立請求項に規定する液体クロマトグラフィー用カラム及びクロマトグラフィーカラムの充填方法によって達成される。
【0008】
本発明の適用可能な範囲については、以下の詳細な説明から明らかとなろう。なお、以下の詳細な説明及び具体例は、本発明の好ましい実施形態を示すものではあるが、例示を目的としたものにすぎない。本発明の技術的思想及び技術的範囲に属する様々な変更及び修正は以下の詳細な説明から当業者には自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の上記その他の利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって明らかとなろう。
【図1】本発明の一実施形態に係る液体クロマトグラフィー用カラムの斜視図。
【図2】図1のカラムの断面図。
【図3】図1のカラムの一端の部分断面図。
【図4】エンドピースアセンブリの部分分解図。
【図5】図1のカラムの分解図。
【図6】図1のカラムのアダプターアセンブリの分解図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の現時点で好ましい実施形態について、図面を参照して説明するが、図面の類似の構成要素は同じ数字で示す。好ましい実施形態に関する説明は代表的なものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る液体クロマトグラフィー用カラム10を示す。カラム10は、カラム管20と、バルブ、ポンプ又はモニター(図示せず)に接続するための配管40を各端部に有する2つのアダプター30とを備える。
【0012】
図2は、図1のカラムの断面を示す。開示された実施形態では、2つのアダプター30は本質的に同一であり、共に、両端からの床の高さを調節できるプランジャー70を有する「プランジャー型」である。図3はアダプターアセンブリ30及びカラム管アセンブリ50の一端の拡大図であり、図4はエンドキャップ110及びエンドスリーブ100の分解図である。カラムはかかるアダプター30を2個備えるので、プランジャー70間の床の高さを広い範囲で得ることができる。カラムはさらに、カラムを流れる溶媒及び試料に対して不活性な材料(ガラス、ステンレス鋼など)からなるカラム管50を備える。カラム管50は、所望のカラム容量に応じて任意の適切な直径にすることができ、一実施形態では、カラム管50に加わる圧力が高くなりすぎて壊れたときの破損に備えた安全バリヤーとして機能する保護管60によって同軸に囲繞される。カラム管50と保護管60は管エンドピース90によって各々の端部で相互に接続されており、管エンドピース90はカラム管50と保護管60を互いに所定の位置に保持するように構成されている。管エンドピース90はさらに、アダプター30とカラム管50の封止接続インターフェースを与える。開示された実施形態では、管エンドピース90はねじ山92によって保護管60にしっかりと取り付けられ、カラム管50は圧縮シール93によって所定の位置に保持される。他の実施形態では、保護管60をなくしてもよく、管エンドピース90又はアダプター30をカラム管50に直接取り付けてもよい。開示された実施形態では、上側管エンドピース90は、カラムアセンブリ10の保持性を高めるように構成されたカラムホルダーセクション91を備える。
【0013】
アダプター30は、エンドスリーブ100と、エンドキャップ110と、回転防止板120を有するプランジャーアセンブリ70とを備える。エンドスリーブ100は、ねじ山94によって管エンドピース90にしっかりと取り付けられて、それらの間の定位置に回転防止板120を固定するように構成される。エンドキャップ110は、保持リング111によってエンドスリーブ100に回転可能に取り付けられ、プランジャーアセンブリ70を受けるための中央貫通孔を備える。プランジャーアセンブリ70は床に充填力を加えるための細長いねじ山付きプランジャーロッド80を備える。エンドキャップ110は、プランジャーロッド80のねじ山と螺合するように形成されたねじ山付きロック面133を有するバネ式解除ボタン130a及び130bを備えており、エンドスリーブ100に対するプランジャーアセンブリ70の位置はエンドキャップ110を回すことによって調節することができる。或いは、プランジャーアセンブリ70の位置は、解除ボタンを押してロック面133をプランジャーロッド80から解放して、プランジャーアセンブリを手動で上下に移動させることによって調節できる。プランジャーアセンブリ70を手動で移動すれば所望の床高さとなるようにプランジャーアセンブリ70を迅速に配置することができ、エンドキャップ110は床高さの微調整及び後段での床の圧縮に使用できる。解除ボタン130a及び130bはエンドキャップ110内の貫通孔134a及び134bに配置されたボタンピン132a及び132bによってエンドキャップ110にピボット連結し、ピン132a及び132bはそれぞれボタン穴135a及び135bを通って延びる。解除ボタン130a及び130bはボタンバネ131a及び131bによって係合方向に付勢される。プランジャーロッド80を解除ボタン130a及び130bに対して効率的に手作業で移動できるようにするために、これらの螺合ねじ山はプランジャーロッド80の移動軸に対して非対称であり、ねじ山は圧縮方向にテーパが付けられていて、プランジャーアセンブリがカラム管50内へと移動するときに、テーパ付ねじ山がプランジャーロッド80から自動的に解放されるので、解除ボタン130a及び130bを押さなくても圧縮できる。反圧縮方向の場合、解除ボタン130a及び130b並びにプランジャーロッド80の螺合ねじ山は本質的に横方向であり、堅くロックされる。さらに、各々の解除ボタン130a及び130bのピボット軸はロック面133よりも前にプランジャーアセンブリ70の圧縮方向に配置され、プランジャーロッド80に反圧縮方向に加わる力は解除ボタン130a及び130bのてこ作用によってねじ山の相互作用を効果的に締める。
【0014】
プランジャーアセンブリ70は、床を圧縮状態に保ち、かつ試料流体を床の直径全体に分配するように構成されたプランジャー86を備える。プランジャーは、流体通路に床粒子が入るのを回避するために細かいメッシュ網などを備える。プランジャー86は、プランジャーロッド80内に配置された配管85を通るクロマトグラフィーシステム(図示せず)と流体接触する。開示された実施形態では、プランジャーは、図6に関して以下で詳しく説明するカラム管50の壁に対して調節可能なシール71を備える。上述の通り、プランジャーアセンブリ70はさらに、エンドキャップ110をエンドスリーブ100に対して回すことによって圧縮及び反圧縮方向に移動させることができる。プランジャーに対する界面での床の歪みを回避するために、エンドスリーブ100は、プランジャーロッド80内の縦方向の溝81と相互作用するように構成された突起122を含む回転防止部材120を備えていて、エンドキャップ110を回してプランジャーロッド80を縦方向に動かす際にカラム管50に対して回転するのを防ぐ。開示された実施形態では、回転防止部材122は1つの突起122を備えるが、他の実施形態では2つ以上の突起を備えていてもよく、プランジャーロッド80は対応する数の縦方向の溝81を備える。開示された実施形態では、回転防止部材122は、エンドスリーブ100とエンドピース90との間に配置された別個の部材として設けられ、回転防止部材122は、エンドピース90に対して押しつけられたとき、その回転を防ぎつつエンドスリーブ100がねじ山94によってエンドピースにきつく取り付けることができるように構成された回転ロック構造121を備える。開示された実施形態では、回転ロック構造121は、エンドピース90に面した表面の環状歯構造からなり、エンドピース90の対応する表面には噛み合う歯構造が設けられる。一実施形態では、回転防止部材122はエンドスリーブ100の一体型部品として形成し得る。図5は、カラム管20からアダプター30を取り外したカラム10を示し、エンドピース90の歯構造が現れている。
【0015】
図6は、1つのアダプター30の分解図であり、回転防止部材120が別途示されている。プランジャー86は、底部から順に、メッシュ保持リング72、メッシュ73、プランジャーディストリビューターボディー74、O−リングの形態のシール71及びプランジャーシール圧縮ボディー75からなる。プランジャー圧縮ボディーはプランジャーロッド80に取り付けられて支持され、プランジャー分配ボディーはプランジャーシーリングロッド84及び流体管85に取り付けられる。エンドキャップ110の上方で、プランジャーシーリングロッド84はねじ山によってプランジャーシーリングノブ88に取り付けられる。組み立てた状態で、シーリングノブ88はプランジャーロッド80の上部端部に当接し、シーリング方向に回転すると、プランジャーシーリングロッド84、従ってプランジャー分配ボディー74をプランジャーロッド80及びプランジャーシール圧縮ボディー75に対して上方に移動させ、これによって、シール71はカラム管50の内壁に対して押しつけられてこれらの間にきついシールを達成する。流体管の上部端部は適切な流体取付具87に結合されてクロマトグラフィーシステムに連結される。
【0016】
使用法
A.底部エンドピースとして用いられるアダプターを挿入調節する。
1.底部アダプター30をカラム管50に挿入し、エンドスリーブ100をエンドピース90に対して締め付け、プランジャー86を所望のレベルに調節する。
2.シーリングノブ88を締めて、シーリングO−リング71をカラム管壁50に対して密封する。
【0017】
B.カラムを充填する。
1.頂部アダプター30を取り外し、底部アダプター30のプランジャー86が正規の位置にありO−リング71が締まっていることを確かめる。
2.少量の充填液体をカラム管50中に注ぎ入れ、管内の液体のレベルがプランジャー86の2〜3mm上になるまで排出させる。
3.例えばストッププラグを用いて底部アダプター30のカラム出を閉じる。
4.空気の泡が入らないようにして、クロマトグラフィー媒体を慎重にカラム管50内に充填する。
5.頂部アダプター30のシーリングO−リング71を緩め、プランジャー86の下に空気がトラップされないようにして、プランジャー86を一定の角度でカラム管に挿入する。
6.エンドスリーブ100を回して下げることによってアダプターをカラム管50に留める。
7.シーリングノブ88を締めるシーリングO−リング71をカラム壁50に対して密封する。
8.エンドキャップ110を回すことによってプランジャー86をゆっくり滑らせて下げ、プランジャー86及び毛細管85内の空気を溶出液で置き換える。
9.適当なメディア指示書に従ってカラム10を充填する。
【0018】
一実施形態では、充填方法は次の工程の1以上を含み得る。
1.充填流体を750cm/hのような所定の速度でカラムに流す。
2.5minのような所定の時間床を押し固める。
3.こうして圧縮された床の頂部を記録する。
4.充填液体の流れを止める。
5.床表面の上の所定の距離、例えば10mm上にプランジャー86を位置決めし、床表面が乱されないように確保する。
6.シーリングノブ88を締めてプランジャー86のO−リングシール71を密封し、プランジャーが記録された圧縮された床の頂部に達するまでエンドキャップ110を回す。
7.床高さを測定し、測定された床高さを所定の充填率で割ることによって所望の床高さを計算する。
8.所望の床高さに達するまでエンドキャップ110を回す。
【0019】
B.解除ボタン130a及び130bを用いてピストン86の位置を調節する。カラム内のピストンの位置を再調節する。
1.頂部アダプター30のシーリングノブ88を緩めてシールO−リング71を緩める。
2.解除ボタン130a及び130bを押し、ピストン86を床レベルのすぐ上の位置に調節する。
3.シーリングノブ88を締めて良好なシールを得る。
4.エンドキャップ100を回してピストンの位置を調節する。
5.エンドキャップ100を回すことは、メディア指示書に記載されているように、ゲル床の軸方向の圧縮にも使用することができる。必要であれば、スパナを用いてエンドキャップ100を回してもよい。
【0020】
本発明を詳細に記載し説明してきたが、明らかに、これは実例のみをもってなされたものであり、限定するものではないことが了解されよう。その範囲は特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラム管と、カラム管内の複数の縦方向位置に配置できるプランジャーを有する1以上の調節可能なアダプターアセンブリとを備えるクロマトグラフィーカラムであって、エンドキャップを回すことによってピストンが縦方向に移動できるように回転可能なエンドキャップと螺合するねじ山がねじ山付きピストンロッドの端部に配置されるようにピストンが構成されており、上記アダプターアセンブリが、エンドキャップの回転に応じてプランジャーロッドが回転するのを防ぐように構成された回転防止手段を含んでいる、クロマトグラフィーカラム。
【請求項2】
前記プランジャーロッドが縦方向の溝を含んでおり、前記回転防止手段が、縦方向の溝に係合してプランジャーの回転を防ぐ突起からなる、請求項1記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項3】
前記エンドキャップが、プランジャーロッドのねじ山と解除可能に螺合するように形成されたねじ山付きロック面を有するバネ式解除ボタンを含む、請求項1記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項4】
解除ボタン及びプランジャーロッドのねじ山が、プランジャーロッドの圧縮方向にテーパが付けられ、反圧縮方向では本質的に横方向である、請求項1記載のクロマトグラフィーカラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−518279(P2013−518279A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551127(P2012−551127)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【国際出願番号】PCT/SE2011/050079
【国際公開番号】WO2011/093776
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)