説明

液体クロマトグラフィー用フィルターおよびその使用方法

【課題】試料に含まれる不純物を濾過する能力により一層優れ、例えばカラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフィーに対しても好適に使用することができる、液体クロマトグラフィー用フィルターおよびその使用方法を提供する。
【解決手段】液体クロマトグラフィー用フィルター1は、例えば、多孔質のガラスフィルター2と、当該ガラスフィルター2が有する濾過限界とは異なる濾過限界を有する(或いは、表面孔径が互いに異なる)、多孔質の金属焼結フィルター3とを備え、上記両フィルター2,3が互いに積層されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種液体クロマトグラフィーに好適に用いられる液体クロマトグラフィー用フィルターおよびその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液体クロマトグラフィーは、試料の前処理が比較的容易であることや、非揮発性物質或いは熱に対して不安定な物質に対しても適用することができることから、その応用分野が拡大している。そして、特に、有機化学や生化学、医学、薬学等の各種分野において、試料の分析、成分の分離(分取)や精製に、高速液体クロマトグラフィー等の各種液体クロマトグラフィーが多用されている。この液体クロマトグラフィーを実施する装置である液体クロマトグラフは、充填剤が充填されたカラム本体(管)を備え、試料と共に溶離液等の移動相を、カラム本体内に送液ポンプを用いて流動させることにより、当該試料を成分毎に分離し、検出器によってこれら成分を検出し、必要に応じて成分を分離や分取するようになっている。上記液体クロマトグラフは、カラム本体の上流側に、ゴミや埃等の夾雑物;試料に含まれ、試料希釈液に溶解しない固形物や不溶物;等の、試料中の不純物がカラム本体内に流入しないように、当該不純物を除去する液体クロマトグラフィー用フィルターを備えている。
【0003】
上記液体クロマトグラフィー用フィルターとして、図4に示すように、スリーブ15で固定されたシール部材14に、多孔質のガラスフィルター12が嵌め込まれて構成された、例えば分析用や分取用等の各種用途別の液体クロマトグラフィー用フィルター11が市販されている。
【0004】
また、上記液体クロマトグラフィー用フィルターとして、例えば特許文献1には、少なくとも表面素材が、ポリエチレンやポリプロピレン、チタン、シリル化処理された二酸化ケイ素等からなる群より選ばれる少なくとも一種の物質からなる液体クロマトグラフィー用フィルターが記載されている。また、例えば特許文献2には、不織布と濾紙状フィルターとを積層してなる液体クロマトグラフィー用フィルターが記載されている。また、例えば特許文献3には、既存の材質のフィルターにシリコーンコーティングしてなる液体クロマトグラフィー用フィルターが記載されている。さらに、例えば特許文献4には、カラム本体に取り付けられるエンドフィッティングフィルターとして、ステンレス鋼繊維を積層した後、焼結してなる繊維焼結フィルターが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−131301号公報(2000年5月12日公開)
【特許文献2】特開2006−138724号公報(2006年6月1日公開)
【特許文献3】特開2006−227022号公報(2006年8月31日公開)
【特許文献4】特開平7−260763号公報(1995年10月13日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、多孔質のガラスフィルターを用いた上記液体クロマトグラフィー用フィルター(市販品)では、例えばカラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフィーに用いた場合には、当該液体クロマトグラフィー用フィルター等に超高圧がかかるため、液体クロマトグラフィー用フィルターでは濾過(捕捉、排除)することのできない小さな不純物がカラム本体内に流入するおそれがある。従って、流入した不純物により、カラム本体に設けられているエンドフィッティングフィルターとしての例えば金属焼結フィルターで目詰まりを起こし易い傾向にある。つまり、多孔質のガラスフィルターを用いた上記液体クロマトグラフィー用フィルターでは、超高速液体クロマトグラフィーに用いた場合等、測定条件や試料によっては、当該試料に含まれる不純物を濾過する能力が充分ではない場合がある。
【0007】
また、特許文献1,3に記載されている液体クロマトグラフィー用フィルターは、試料によっては当該試料に含まれる不純物を濾過する能力が充分ではない場合があり、それゆえ、特に高速液体クロマトグラフィーに用いたときには、カラム本体に設けられている金属焼結フィルターの目詰まりが生じ易くなるおそれがある。また、特許文献2に記載されている液体クロマトグラフィー用フィルターは、不織布や濾紙状フィルターが積層された構成であるので、圧力がかかると空隙率が小さくなり、目詰まりし易い。さらに、特許文献4に記載のエンドフィッティングフィルターは、カラム本体に取り付けられているため、目詰まりを起こすと、当該フィルターだけでなく、カラム本体全体を取り換えなければならない。
【0008】
つまり、従来の液体クロマトグラフィー用フィルターでは、例えばカラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフィーに用いた場合には、試料に含まれる比較的大きい不純物から小さい不純物まで、種々の大きさの不純物を効率的に濾過(捕捉、排除)することができないおそれがある。
【0009】
それゆえ、試料に含まれる不純物を濾過する能力により一層優れ、例えばカラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフィーに対しても好適に使用することができる液体クロマトグラフィー用フィルターが求められている。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、従来の液体クロマトグラフィー用フィルターと比較して、試料に含まれる不純物を濾過する能力により一層優れ、例えばカラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフィーに対しても好適に使用することができる液体クロマトグラフィー用フィルター、即ち、従来の液体クロマトグラフィー用フィルターを使用した場合と比較して、カラム本体の目詰まりが生じ難く、カラム本体を長時間(長期間)の使用に耐えることができるようにすることができる液体クロマトグラフィー用フィルター、およびその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターは、上記課題を解決するために、無機物からなる多孔質の第一フィルターと、当該第一フィルターとは材質が異なると共に第一フィルターが有する濾過限界とは異なる濾過限界を有する(或いは、表面孔径が互いに異なる)、無機物からなる多孔質の第二フィルターとを備え、上記両フィルターが互いに積層されていることを特徴としている。
【0012】
上記液体クロマトグラフィー用フィルターは、上記両フィルターが互いに密着していることがより好ましい。また、上記液体クロマトグラフィー用フィルターは、20MPa以上のカラム圧に耐えることがより好ましい。また、上記液体クロマトグラフィー用フィルターは、上記第一フィルターがガラスフィルターであり、上記第二フィルターが金属焼結フィルターであることがより好ましい。また、上記液体クロマトグラフィー用フィルターは、上記ガラスフィルターを構成するガラスの表面が、オクタデシルシリル化されていることがより好ましい。また、上記液体クロマトグラフィー用フィルターは、上記ガラスフィルターの表面孔径が、2.0μmであることがより好ましい。
【0013】
また、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターの使用方法は、上記液体クロマトグラフィー用フィルターを、カラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフのフィルターとして使用することを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、材質が互いに異なると共に濾過限界(或いは、表面孔径)が互いに異なる二種類の材質(無機物)からなる第一フィルターおよび第二フィルターが積層されているので、より好ましくは、上記第一フィルターがガラスフィルターであり、上記第二フィルターが(当該ガラスフィルターが有する濾過限界よりも小さい濾過限界を有する)金属焼結フィルターであるので、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターは、従来の液体クロマトグラフィー用フィルターと比較して、試料に含まれる不純物を濾過(捕捉、排除)する能力により一層優れている。つまり、両フィルターを積層することによって、いわゆる二重構造になっているので、試料に含まれる比較的大きい不純物から小さい不純物まで、種々の大きさの不純物を効率的に濾過することができる。特に、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターは、その原理は全く不明であるものの、第一フィルターおよび第二フィルター、例えば、ガラスフィルターおよび金属焼結フィルターを各々単独で用いた場合に予測される濾過限界よりもはるかに小さい直径の不純物まで濾過することができる。
【0015】
また、無機物からなる第一フィルターおよび第二フィルター、例えば、ガラスフィルターおよび金属焼結フィルターは、耐圧性に優れているので、例えばカラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフィーに対しても好適に使用することができる。従って、カラム本体に流入する不純物の量が低減されるので、当該カラム本体に設けられているエンドフィッティングフィルターの目詰まりを抑制することができる。それゆえ、従来の液体クロマトグラフィー用フィルターを使用した場合と比較して、カラム本体の目詰まりが生じ難く、カラム本体を長時間(長期間)の使用に耐えることができるようにすることができるので、カラム本体の交換頻度を少なくすることができる。
【0016】
それゆえ、上記構成によれば、試料に含まれる不純物を濾過する能力により一層優れ、例えばカラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフィーに対しても好適に使用することができる液体クロマトグラフィー用フィルターおよびその使用方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターおよびその使用方法によれば、試料に含まれる不純物を濾過する能力により一層優れ、例えばカラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフィーに対しても好適に使用することができる液体クロマトグラフィー用フィルターおよびその使用方法を提供することができるという効果を奏する。
【0018】
但し、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターが試料に含まれる不純物を濾過する能力により一層優れている理由、即ち、不純物を充分に濾過することができる原理は、全く不明である。本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターが不純物を濾過する能力により一層優れているのは、材質が互いに異なると共に表面孔径および濾過限界が互いに異なる二種類の材質(無機物)からなる第一および第二フィルターを積層したいわゆる二重構造になっていることによる、全く予期することができない相乗効果(現象)であるとしか説明することができない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターの一例を説明するものであり、当該液体クロマトグラフィー用フィルターの構成を示す断面図である。
【図2】上記液体クロマトグラフィー用フィルターの平面図である。
【図3】上記液体クロマトグラフィー用フィルターを使用する液体クロマトグラフの概略の構成を示すブロック図である。
【図4】従来の液体クロマトグラフィー用フィルターの一例を説明するものであり、当該液体クロマトグラフィー用フィルターの構成を示す断面図である。
【図5】ガラスフィルターだけを用いて濾過試験を行った結果を示す折れ線グラフである。
【図6】金属焼結フィルターだけを用いて濾過試験を行った結果を示す折れ線グラフである。
【図7】本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターを用いて濾過試験を行った結果を示す折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターは、無機物からなる多孔質の第一フィルターと、当該第一フィルターとは材質が異なると共に第一フィルターが有する濾過限界とは異なる濾過限界を有する(或いは、表面孔径が互いに異なる)、無機物からなる多孔質の第二フィルターとを備え、上記両フィルターが互いに積層されている構成であり、より好ましくは、上記第一フィルターがガラスフィルターであり、上記第二フィルターが(当該ガラスフィルターが有する濾過限界よりも小さい濾過限界を有する)金属焼結フィルターである構成である。
【0021】
また、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターの使用方法は、上記液体クロマトグラフィー用フィルターを、第二フィルター、例えば金属焼結フィルターの方をカラム本体側に位置するようにして、或いは、第一フィルター、例えばガラスフィルターの方をカラム本体側に位置するようにして使用する方法であり、上記液体クロマトグラフィー用フィルターを、カラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフのフィルターとして使用する方法である。
【0022】
本発明において「多孔質」とは、フィルター(第一フィルターおよび第二フィルター)の表面側(上流側)から裏面側(下流側)まで貫通する(試料や移動相が容易に流動することができる)孔が、多数存在する状態を指している。
【0023】
本発明において「表面孔径」とは、フィルターの表面に形成されている孔の直径を指し、孔が円形でない場合には、当該孔の外接円の直径を指すこととする。そして、「第一フィルター(またはガラスフィルター)の表面孔径」,「第二フィルター(または金属焼結フィルター)の表面孔径」とは、上記直径の平均値(平均孔径)を指すこととする。一般に多孔質の物質に形成されている個々の孔は、その直径が途中で大きくなったり小さくなったりしている。従って、本発明においては、フィルターの表面に形成されている孔の大きさを当該フィルターの孔径として説明することとする。当該平均値は、例えばこれらフィルターの電子顕微鏡写真を撮影することにより、当該写真から容易に求めることができる。尚、本発明において単に「孔径」と記載した場合には、フィルターの内部に形成されている孔の直径も含まれている場合がある。
【0024】
本発明において「不純物」とは、試料に含まれるゴミや埃等の夾雑物、並びに、試料に含まれ、試料希釈液に溶解しない固形物や不溶物を指している。
【0025】
本発明において「濾過限界」とは、どの程度の大きさまでの不純物を濾過することができるのかを示す尺度を指すこととする。例えば、「濾過限界が0.5μmである」とは、最大径が0.5μm以上の不純物を濾過することができることを指している。上記「濾過限界」は、例えば、JIS P3801にて規定される硫酸バリウム等の検査液を自然濾過したときの漏洩粒子径の最大値(保留粒子径)から、容易に求めることができる。
【0026】
本発明において「カラム圧」とは、カラム本体を流動する移動相に送液ポンプを用いて印加する圧力を指す。超高速液体クロマトグラフィーにおけるカラム圧の上限は、カラム本体の材質等によって異なるため、特に制限は無いものの、概して50MPaであり、最高で100MPaである。
【0027】
〔実施の形態1〕
本発明における実施の一形態について、図1ないし図3に基づいて説明すれば、以下の通りである。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態に係る液体クロマトグラフィー用フィルター1は、いわゆる分析用や分取用、セミミクロ用として使用され、カラム本体を汚染から保護するガードフィルターであり、多孔質のガラスフィルター(第一フィルター)2と、多孔質の金属焼結フィルター(第二フィルター)3とを備え、上記両フィルター2,3がシール部材4およびスリーブ5によってシール部材4に固定されることにより互いに積層されて、より好ましくは互いに密着されて構成されている。
【0029】
即ち、本実施の形態に係る液体クロマトグラフィー用フィルター1は、多孔質のガラスフィルター2と多孔質の金属焼結フィルター3とを積層した二重構造(一体型)になっている。ガラスフィルター2と金属焼結フィルター3とは隙間が空いた状態でシール部材4に固定されていてもよく、互いに密着していてもよい。より好ましくは、ガラスフィルター2と金属焼結フィルター3とは互いに密着している。
【0030】
以下、各構成について説明する。
【0031】
<第一フィルター>
無機物からなる多孔質の第一フィルターとしては、耐薬品性(耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性)や耐圧性、機械的強度に優れた多孔質セラミックスや多孔質ガラスが好適であり、多孔質ガラスが最適である。多孔質ガラスを構成する原料としては、具体的には、例えば、ホウケイ酸ガラス(NaO−B−SiO系ガラス)が最適である。ホウケイ酸ガラスは、その組成に、Al,ZrO,ZnO,TiO,SnO,CaO,MgO等の酸化物をさらに含んでいてもよい。一方、多孔質セラミックスを構成する原料としては、具体的には、例えば、アルミナシリケート、アルミナ、珪砂、珪藻土等が挙げられる。多孔質セラミックスは、上記原料を、一定範囲の粒子径を有する陶磁器粒子(硬磁器粉砕物、シリカ、アルミナ、シャモット等)を媒溶剤として用いて焼結することにより作成される。
【0032】
第一フィルターとしてのガラスフィルター2は、例えば、ホウケイ酸ガラスの熱処理によって生じる分相現象を利用して作成することができ、より具体的には、例えば、ホウケイ酸ガラスを数百℃に加熱することにより、酸に溶解するホウ酸塩相と、酸に溶解しないケイ素骨格との二相に分相させ、分相させたホウケイ酸ガラスを冷却後、酸処理することにより作成することができる。分相したホウケイ酸ガラスは、ホウ酸塩相が酸に溶解することによりケイ酸ガラスとなり、いわゆるソリッドタイプの多孔質ガラスとなる。
【0033】
ガラスフィルター2の孔径(表面孔径も含む)は、ホウケイ酸ガラスの組成や、熱処理条件、即ち、熱処理時の温度および時間を制御することにより、任意に調節することができる。当該孔径は、不均一な焼結体とは異なり、均一な大きさである。ガラスフィルター2の表面孔径は、特に限定されないものの、2.0μmであることが好適である。そして、ガラスフィルター2の孔は、均一網状貫通流路を構成し、試料や移動相が容易に流動することができるようになっている。そして、ガラスフィルター2は、孔径(表面孔径も含む)を調節することにより、濾過限界も任意に調節することができる。また、ガラスフィルター2の空隙率は、例えば、ホウケイ酸ガラスの組成を変更することにより、容易に調節することができる。尚、ガラスフィルター2の孔径が2.0μmよりも大きければ、試料に含まれる不純物を充分に除去することができないおそれがある。
【0034】
また、ガラスフィルター2を構成するガラス(ガラス繊維)の表面は、カラム本体と同様に、トリメチルクロロシラン、ジメチル−n−オクチルシラン、ジメチル−n−オクタデシルクロロシラン等のアルキルクロロシラン;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノアルコキシシラン;エポキシシラン;等のシラン処理剤で修飾されていることがより好ましく、例えばジメチル−n−オクタデシルシリル基が導入される等してオクタデシルシリル化されていることが特に好ましい。これにより、ガラスフィルター2は、単にふるいとして機能するだけでなく、試料に含まれる不純物を物理的吸着或いは化学的吸着によっても除去することができる。さらに、ガラスフィルター2を構成するガラス(ガラス繊維)の表面は、ポリエチレングリコールやシリコンオイル等のコーティング剤で改質されていてもよく、或いは、試料に応じた各種表面修飾がなされていてもよい。
【0035】
ガラスフィルター2の形状は、図1および図2に示すように、円板(円柱)状であることが好ましいものの、溶離液等の移動相の流動を妨げない形状であればよく、特に限定されるものではない。また、ガラスフィルター2の大きさは、特に限定されないものの、公知の液体クロマトグラフで使用することができるように、特に、カラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフのフィルターとして使用することができるように、例えば円板(円柱)状である場合には、シール部材4から露出している部分の直径が2mm、厚さが2mmであることが好適である。ガラスフィルター2の成形加工方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。ガラスフィルター2の直径が2mmよりも小さい、或いは、厚さが2mmよりも薄いと、ガラスフィルター2が目詰まりを起こし易くなるおそれがある。また、ガラスフィルター2の直径が2mmよりも大きい、或いは、厚さが2mmよりも厚いと、ガラスフィルター2内で試料が拡散してしまい、正確な測定等ができなくなるおそれがある。
【0036】
本発明に係るガラスフィルター2は、金属焼結フィルター3と積層されて液体クロマトグラフィー用フィルター1として使用されることにより、その原理は全く不明であるものの、実施例にて詳述するように、2.0μmよりもはるかに小さい不純物も除去することができる。
【0037】
尚、ガラスフィルター2の内部には、機械的強度をさらに増すために、ステンレス鋼製の金網等からなる補強部材が組み込まれていてもよい。
【0038】
<第二フィルター>
無機物からなる多孔質の第二フィルターを構成する材質としては、具体的には、例えば、耐薬品性(耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性)や耐腐蝕性、耐圧性、機械的強度に優れたSUS316等のステンレス鋼(ステンレス繊維)が好適である。
【0039】
第二フィルターとしての金属焼結フィルター3は、例えば、ステンレス鋼からなる繊維を高温で焼結圧縮成形することにより作成される。金属焼結フィルター3の具体的な成形加工方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。
【0040】
第二フィルターの濾過限界は、特に限定されないものの、0.5μmであることが好適である。また、金属焼結フィルター3の孔径(表面孔径も含む)は、ステンレス繊維の太さや焼結圧縮成形条件、即ち、圧力、温度および時間を制御することにより、任意に調節することができる。金属焼結フィルター3の孔径は、金属焼結フィルター3単独での濾過限界が0.5μmとなる孔径であればよい。濾過限界が0.5μmよりも大きければ、試料に含まれる不純物を充分に除去することができないおそれがある。
【0041】
金属焼結フィルター3の形状は、図1に示すように、円板(円柱)状であることが好ましいものの、溶離液等の移動相の流動を妨げない形状であればよく、特に限定されるものではない。また、金属焼結フィルター3の大きさは、特に限定されないものの、公知の液体クロマトグラフで使用することができるように、特に、カラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフのフィルターとして使用することができるように、例えば円板(円柱)状である場合には、シール部材4から露出している部分の直径が2mm、厚さが1mmであることが好適である。金属焼結フィルター3の直径が2mmよりも小さい、或いは、厚さが1mmよりも薄いと、金属焼結フィルター3が目詰まりを起こし易くなるおそれがある。また、金属焼結フィルター3の直径が2mmよりも大きい、或いは、厚さが1mmよりも厚いと、金属焼結フィルター3内で試料が拡散してしまい、正確な測定等ができなくなるおそれがある。
【0042】
本発明に係る金属焼結フィルター3は、ガラスフィルター2と積層されて液体クロマトグラフィー用フィルター1として使用されることにより、その原理は全く不明であるものの、実施例にて詳述するように、0.5μmよりもはるかに小さい不純物も除去することができる。
【0043】
<シール部材>
シール部材4は、ガラスフィルター2と金属焼結フィルター3とを互いに積層した状態で、より好ましくは互いに密着した状態で、固定する部材である。そして、シール部材4は、上記両部材が互いに重なり合った状態で、ガラスフィルター2と金属焼結フィルター3とを挟み込むことができる内部空間を有している。つまり、シール部材4は、二つの部材にガラスフィルター2と金属焼結フィルター3とを挟んで嵌め込むことによって、両フィルター2,3を固定するようになっている。これにより、ガラスフィルター2および金属焼結フィルター3はシール部材4によって一体化され、液体クロマトグラフィー用フィルター1を構成する。
【0044】
シール部材4を構成する材質としては、具体的には、例えば、フッ素樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のプラスチックが挙げられる。但し、シール部材4は、液体クロマトグラフィーに好適に供することができる材質、つまり、耐薬品性(耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性)や耐圧性、機械的強度に優れた材質から形成されていればよく、特に限定されるものではない。
【0045】
シール部材4の形状は、図1および図2に示すように、中央部に開口を有する円板状(ドーナツ状)であることが好ましいものの、上記両フィルター2,3の形状に合わせた形状であればよく、特に限定されるものではない。また、シール部材4の具体的な成形方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。さらに、シール部材4の大きさは、公知の液体クロマトグラフで使用することができる大きさであればよく、特に限定されるものではない。
【0046】
<スリーブ>
スリーブ5は、図1および図2に示すように、円環状に形成されており、シール部材4をその内側に嵌め込むことにより固定して、シール部材4による上記両フィルター2,3の固定状態を維持する補強部材である。スリーブ5を構成する材質としては、具体的には、例えば、耐薬品性(耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性)や耐腐蝕性、耐圧性、機械的強度に優れたステンレス鋼が好適である。スリーブ5の具体的な成形方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。また、スリーブ5の大きさは、液体クロマトグラフィー用ホルダーに収容して公知の液体クロマトグラフで使用することができる大きさであればよく、特に限定されるものではない。
【0047】
そして、上記ガラスフィルター2および金属焼結フィルター3が上記シール部材4に挟み込まれることによって固定され、当該シール部材4が上記スリーブ5に嵌め込まれることよって固定されることにより、本実施の形態に係る液体クロマトグラフィー用フィルター1が構成されている。尚、液体クロマトグラフィー用フィルター1を液体クロマトグラフで使用しても、カラム圧の圧力損失は殆ど生じない。
【0048】
<液体クロマトグラフィー用ホルダー>
本発明に係る液体クロマトグラフィー用ホルダーは、いわゆる配管接続およびカラム接続用のホルダー(ハウジング)であり、配管接続側(上流側)の第一ホルダーと、カラム接続側(下流側)の第二ホルダーとで主に構成されている。第一ホルダーには、配管接続用のジョイント部分が形成されており、第二ホルダーには、カラム接続用のジョイント部分が形成されている。そして、これら第一ホルダーおよび第二ホルダーは、一方に雄ネジが形成され、他方に雌ネジが形成されており、内部に液体クロマトグラフィー用フィルター1を収容した状態で螺合によって一体化される。これにより、液体クロマトグラフィー用ホルダーは、液体クロマトグラフィー用フィルター1をその内部で固定すると共に、流動する移動相が漏れないようになっている。上記液体クロマトグラフィー用フィルター1は、金属焼結フィルター3の方がカラム本体側に位置するようにして液体クロマトグラフィー用ホルダーに固定されてもよく、ガラスフィルター2の方がカラム本体側に位置するようにして液体クロマトグラフィー用ホルダーに固定されてもよい。つまり、液体クロマトグラフィー用フィルター1は、分析等を行う試料に応じて、液体クロマトグラフィー用ホルダー内における上記両フィルター2,3の配置を決定すればよい。
【0049】
液体クロマトグラフィー用ホルダーを構成する材質としては、具体的には、例えば、耐薬品性(耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性)や耐腐蝕性、耐圧性、機械的強度に優れたステンレス鋼が好適である。
【0050】
液体クロマトグラフィー用ホルダーの形状は、公知の液体クロマトグラフで使用することができるように、特に、カラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフに使用することができるように、耐圧性や機械的強度を考慮して、円柱状であることが好ましいものの、特に限定されるものではない。液体クロマトグラフィー用ホルダーの具体的な成形方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。つまり、本実施の形態に係る液体クロマトグラフィー用ホルダーは、本実施の形態に係る液体クロマトグラフィー用フィルター1を収容して使用することができる形状であればよい。
【0051】
従って、液体クロマトグラフィー用フィルター1を、カラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフのフィルターとして使用するときの液体クロマトグラフィー用ホルダーへの固定方法は、特に限定されるものではなく、従来のフィルターと同様の固定方法を採用することができる。即ち、液体クロマトグラフィー用フィルター1は、本実施の形態に係る液体クロマトグラフィー用ホルダー内に固定されて液体クロマトグラフ内に配設される。
【0052】
<液体クロマトグラフ>
本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルター1を使用するのに好適な液体クロマトグラフは、公知の液体クロマトグラフであり、特に限定されるものではない。液体クロマトグラフの一例について、図3を参照しながら以下に簡単に説明する。
【0053】
図3に示すように、液体クロマトグラフ20は、溶離液等の移動相が貯蔵されているタンク21、タンク21から移動相を一定の流量およびカラム圧でカラム本体25に向けて供給する送液ポンプ22、試料を注入するサンプルインジェクター23、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルター1が収容されている上記液体クロマトグラフィー用フィルターのホルダー24、充填剤が充填されているカラム本体(管)25、および、分離された成分を検出する検出器26を主に備えている。カラム本体25は、具体的には、例えば、ステンレス鋼、チタン、ガラス、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のプラスチック等から形成されている。
【0054】
そして、移動相は、送液ポンプ22によってタンク21からサンプルインジェクター23に向かって一定の流量およびカラム圧で供給され、サンプルインジェクター23内で試料が注入された後、液体クロマトグラフィー用フィルターのホルダー24内の液体クロマトグラフィー用フィルター1で濾過され、カラム本体25に導入される。カラム本体25に導入された試料は、移動相の流動に伴ってカラム本体25内を移動することにより、成分毎に分離され、カラム本体25から順に排出される。排出された各成分は、UV検出器等の検出器26で順に検出される。即ち、液体クロマトグラフ20は、移動相と共に試料をカラム本体25内で流動させることにより、当該試料を成分毎に分離し、検出器26によってこれら成分を検出し、必要に応じて成分を分離(分取)や精製するようになっている。尚、液体クロマトグラフ20は、グラジエント溶出が可能なように、タンクおよび送液ポンプを複数備える構成であってもよい。また、検出器26よりも下流側に、各成分を分離(分取)や精製する分離装置をさらに備える構成であってもよい。
【0055】
本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルター1は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種クロマトグラフィー、特に、カラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフィーに好適に用いることができる。従って、上記液体クロマトグラフ20の各構成部材は、高速液体クロマトグラフィーを実施するのに好適な構成であることがより好ましい。尚、液体クロマトグラフの構成は、上述した構成に限定されるものではなく、分析等を行う試料に応じた最適の構成とすればよい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例の構成に限定されるものではない。
【0057】
〔実施例1〕
本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターが、例えばカラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフィーに対して好適に使用することができることを確認するために、定常状態で作動している液体クロマトグラフを用いて、不純物を含む試料を一定時間毎にサンプルインジェクターを介して注入する濾過試験を行い、不純物を濾過(捕捉、排除)する能力を測定した。濾過試験の条件等は以下の通り。結果は、カラム圧を縦軸、注入回数を横軸とする折れ線グラフ(図5〜7)で示した。
【0058】
第一フィルターであるガラスフィルターとして、ホウケイ酸ガラスの熱処理によって生じる分相現象を利用して作成した、いわゆるソリッドタイプの多孔質ガラスを用いた。そして、ガラスフィルターの大きさ等を、シール部材から露出している部分の直径を2mm、厚さを2mm、表面孔径を2.0μmに設定した。
【0059】
第二フィルターである金属焼結フィルターとして、ステンレス鋼(SUS316)を用いた。そして、金属焼結フィルターの大きさ等を、シール部材から露出している部分の直径を2mm、厚さを1mm、濾過限界を0.5μmに設定した。
【0060】
上記ガラスフィルターおよび金属焼結フィルターをシール部材およびスリーブで固定して、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターを構成した。また、不純物を濾過する能力を比較するために、上記ガラスフィルターを単独でシール部材およびスリーブで固定して比較用の液体クロマトグラフィー用フィルターを構成した。さらに、上記金属焼結フィルターをシール部材およびスリーブで固定して比較用の液体クロマトグラフィー用フィルターを構成した。そして、測定時には、これら液体クロマトグラフィー用フィルターを液体クロマトグラフィー用ホルダーに収容して固定し、液体クロマトグラフに接続した。但し、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターについては、金属焼結フィルターの方がカラム本体側に位置するようにして液体クロマトグラフィー用ホルダーに固定したサンプルと、ガラスフィルターの方がカラム本体側に位置するようにして液体クロマトグラフィー用ホルダーに固定したサンプルとの二種類のサンプルを用意した。
【0061】
カラム本体として、株式会社住化分析センター製のSUMIPAX ODS Z-CLUE(登録商標)を用いた。カラムサイズは3μm、内径4.6mm×長さ150mmとした。また、20mmol/l酢酸アンモニウム水溶液/メタノール(80:20)からなる組成の移動相を用い、流量を0.8ml/分、カラム圧を144kg/cm(14.1MPa)に設定した。そして、不純物として粒子径が0.1μmのシリカ粒子の水分散液(コアフロント株式会社製のsicastar(登録商標)plain 100nm;粒子濃度50mg/ml;単分散)を用い、このシリカ粒子分散液400μlにメタノール9.6mlを添加して粒子濃度を2mg/mlに調節することにより、試料を調製した。この試料を、サンプルインジェクターを介してカラム本体に一回当たり10μl(シリカ粒子20μg)注入した。試料の注入間隔は、5分間とした。
【0062】
先ず、ガラスフィルター単独の場合において、濾過試験を行った。
【0063】
その結果、図5に示すように、注入回数が300回を越えてもカラム圧が殆ど上昇しないことから、移動相に添加されたシリカ粒子は、ガラスフィルターで濾過されていないだけでなく、カラム本体も通過していると考えられる。即ち、ガラスフィルター単独ではシリカ粒子を濾過(捕捉、排除)する能力が無いことが判った。
【0064】
また、金属焼結フィルター単独の場合において、濾過試験を行った。
【0065】
その結果、図6に示すように、注入回数が300回を越えてもカラム圧が殆ど上昇しないことから、移動相に添加されたシリカ粒子は、金属焼結フィルターで濾過されていないだけでなく、カラム本体も通過していると考えられる。即ち、金属焼結フィルター単独ではシリカ粒子を濾過(捕捉、排除)する能力が無いことが判った。
【0066】
次に、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターの不純物を濾過する能力を測定した。
【0067】
その結果、図7に示すように、金属焼結フィルターの方がカラム本体側に位置するようにして本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターを用いた場合(図7の折れ線グラフA)では、注入回数が130回を越えたあたりからカラム圧が急激に上昇し始め、230回程度で200kg/cmに達した。カラム圧が上昇したことから、移動相に添加された試料に含まれるシリカ粒子が濾過(捕捉、排除)されていることは明らかである。但し、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターを除去して(液体クロマトグラフィー用フィルターが無い状態で)移動相を供給すると、カラム圧は試料の注入を開始する初期の状態に戻った(図7の点a)。従って、移動相に添加された試料に含まれるシリカ粒子は、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターで濾過され、カラム本体に達していないと考えられる。
【0068】
また、ガラスフィルターの方がカラム本体側に位置するようにして本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターを用いた場合(図7の折れ線グラフB)では、注入回数が200回を越えたあたりからカラム圧が急激に上昇し始め、360回程度で190kg/cmに達した。カラム圧が上昇したことから、移動相に添加された試料に含まれるシリカ粒子が濾過(捕捉、排除)されていることは明らかである。但し、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターを除去して(液体クロマトグラフィー用フィルターが無い状態で)移動相を供給すると、カラム圧は試料の注入を開始する初期の状態に戻った(図7の点b)。従って、移動相に添加された試料に含まれるシリカ粒子は、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターで濾過され、カラム本体に達していないと考えられる。
【0069】
即ち、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターは、シリカ粒子を濾過(捕捉、排除)する能力に優れていることが判った。
【0070】
但し、ガラスフィルターの表面孔径が2.0μmであり、金属焼結フィルターの濾過限界が0.5μmであるにも関わらず、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターが粒子径0.1μmのシリカ粒子を充分に濾過(捕捉、排除)する能力を備えている理由、即ち、シリカ粒子を充分に濾過することができる原理は、全く不明である。本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターが粒子径0.1μmのシリカ粒子を充分に濾過する能力を備えているのは、ガラスフィルターと金属焼結フィルターとを積層したいわゆる二重構造になっていること、つまり、材質が互いに異なると共に表面孔径および濾過限界が互いに異なる二種類の材質(無機物)からなる第一および第二フィルターを積層したいわゆる二重構造になっていることによる、全く予期することができない相乗効果(現象)であるとしか説明することができない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターおよびその使用方法によれば、試料に含まれる不純物を濾過する能力により一層優れ、例えばカラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフィーに対しても好適に使用することができる液体クロマトグラフィー用フィルターおよびその使用方法を提供することができるという効果を奏する。
【0072】
それゆえ、本発明に係る液体クロマトグラフィー用フィルターおよびその使用方法は、有機化学や生化学、医学、薬学等の各種分野において、試料の分析、成分の分離(分取)や精製に多用される高速液体クロマトグラフィー等の各種液体クロマトグラフィーに好適に供することができるので、これら液体クロマトグラフィーを用いる各種産業において広範に利用され得る。
【符号の説明】
【0073】
1 液体クロマトグラフィー用フィルター
2 ガラスフィルター(第一フィルター)
3 金属焼結フィルター(第二フィルター)
4 シール部材
5 スリーブ
24 液体クロマトグラフィー用フィルターのホルダー
25 カラム本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機物からなる多孔質の第一フィルターと、当該第一フィルターとは材質が異なると共に第一フィルターが有する濾過限界とは異なる濾過限界を有する、無機物からなる多孔質の第二フィルターとを備え、上記両フィルターが互いに積層されていることを特徴とする液体クロマトグラフィー用フィルター。
【請求項2】
上記両フィルターが互いに密着していることを特徴とする請求項1に記載の液体クロマトグラフィー用フィルター。
【請求項3】
20MPa以上のカラム圧に耐えることを特徴とする請求項1または2に記載の液体クロマトグラフィー用フィルター。
【請求項4】
上記第一フィルターがガラスフィルターであり、上記第二フィルターが金属焼結フィルターであることを特徴とする請求項1,2または3に記載の液体クロマトグラフィー用フィルター。
【請求項5】
上記ガラスフィルターを構成するガラスの表面が、オクタデシルシリル化されていることを特徴とする請求項4に記載の液体クロマトグラフィー用フィルター。
【請求項6】
上記ガラスフィルターの表面孔径が、2.0μmであることを特徴とする請求項4または5に記載の液体クロマトグラフィー用フィルター。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の液体クロマトグラフィー用フィルターを、カラム圧が20MPa以上の超高速液体クロマトグラフのフィルターとして使用することを特徴とする液体クロマトグラフィー用フィルターの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−3015(P2013−3015A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135661(P2011−135661)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(390000686)株式会社住化分析センター (72)