説明

液体クロマトグラフ用オートサンプラ

【課題】
オートサンプラにおいて、ニードル表面に付着した洗浄液を拭いとる。
【解決手段】
ニードル39を洗浄ポート41上に挿入し、ニードル39の外表面を洗浄液57で洗浄する。その後、パット55をパット56方向に移動させ、ニードル39をパット55と56ではさみ、ニードル39を引き上げて、パット55と56でニードル39表面の洗浄液57をぬぐう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高速液体クロマトグラフなど液体試料を取り扱う各種分析装置における自動試料注入装置(オートサンプラ)に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフにおけるオートサンプラにおいて、ニードルはサンプルラックや試料注入部上を水平方向及び垂直方向に移動できるように構成されており、そのニードルの基端部は、流路切換えバルブを介してポンプに連結され、ポンプによって液体を吸引又は吐出できるようになっている。
【0003】
ニードルの先端を洗浄するには、(1)洗浄液が満たされた洗浄ポートにニードルをつける、(2)洗浄ポートにニードルをつけて洗浄液を送液して洗浄する(特許文献1参照。)などの方法が一般的である。
図8は一般的な洗浄ポート41の断面図である。図に示すように、流入口43から流入する洗浄液57が洗浄ポート41の内部を満たし、ここに挿入されたニードル39の外表面を洗って流れ、排出口45から流出する。
【0004】
ニードル39の外表面に残った洗浄液57は、(3)そのまま放置して自然乾燥させる、(4)洗浄ポート41にシリコンゴムのような柔らかな材料でできたふた46をつけ、これをニードル39で貫通させる、(5)送風できる設備を用意し、ニードル39が洗浄ポート41から出たときに送風して乾燥させる、などの方法がとられている。
【0005】
通常、洗浄ポート41でニードル39を洗浄した場合、その洗浄液57はニードル39の表面の汚れで汚染されており、この液を完全に取りきるか、洗浄液57に汚れが残らないほどに洗浄液を大量に送液して洗浄ポート41の内部を洗浄する必要がある。
洗浄液57には、溶解度を利用した希釈や化学的な作用で、ニードル表面に残っている試料を洗浄液の方に溶解させる効果が高いものを使用する。そのため、洗浄液57がニードル39表面に残ったまま洗浄ポート41から出た場合、その洗浄液57に含まれている汚れの成分が洗浄液の揮発により再度ニードル39の表面に残ることが考えられる。
【0006】
上記のように洗浄ポート41にふた46をすれば、洗浄液57をぬぐうことはできるが、洗浄ポート41にニードル39が入る際にも汚れたニードル39がこのふたの部分に接触するため、洗浄ポート41での洗浄効果は低下する。
【特許文献1】特許公開2001−305148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高濃度な試料や金属への配位性が低い試料の計量を行なう場合、または化学的作用で洗浄する場合、ニードルのような表面積の小さいものを洗浄するときは、大量の洗浄液を送液してすすぐ動作をすればニードル表面はよく洗浄されるが、大量の洗浄液と時間が必要になる。
【0008】
本発明は、洗浄後にニードル表面に付着した洗浄液を拭いとる機構を持つオートサンプラの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、試料をその先端部から吸入するサンプリングニードルと、上記ニードルの平面内と垂直方向の移動及び試料の注入動作を制御する注入制御部と、ニードルを洗浄する洗浄機構とを備えている液体クロマトグラフ用オートサンプラにおいて、上記洗浄機構は、ニードルが浸され洗浄を行なう洗浄ポートと、上記洗浄ポートの上部に配置された一対の水分拭い取り用パットとを備え、上記パットは、ニードルが洗浄ポートに挿入されるときはニードルに接触しない位置に配置され、ニードルが洗浄ポートから引き上がられるときに、その少なくとも一方のパットを他方のパットに接触するまで移動させることにより、両パット間にニードルを挟む移動機構を備えている液体クロマトグラフ用オートサンプラである。
【0010】
上記パットはその一方だけが移動するものでもよく、その両方が移動するものでもよい。
【発明の効果】
【0011】
ニードル表面に残っている洗浄液を拭うことで、洗浄ポートの洗浄液を完全に置換しなくても、ニードル表面をきれいな状態にすることができる。
ニードルを水平方向及び垂直方向に動かす機構部のみを使用するので、洗浄液をぬぐうための特別な機構を追加する必要はない。
【0012】
ニードル洗浄後のみニードル表面の洗浄液を拭うことにより、拭い用パットは汚染されることがなくなり、洗浄を繰り返し行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は高速液体クトマトグラフの機構を概略的に示す流路図である。
この高速液体クロマトグラフは、試料を分離するカラム5と、移動相をカラム5へ送液するポンプ部1と、試料を採取し、その採取した試料を流路切換バルブ29を切り換えてカラム5の上流の移動相流路に導入するオートサンプラ3と、カラム5で分離された試料を検出する検出部7と、ポンプ部1及びオートサンプラ3の動作を制御する制御部2から構成されている。
【0014】
ポンプ部1には、ダブルプランジャ往復動型送液ポンプ9が備えられている。ポンプ9の1次側ポンプヘッド11の吸入側はチェックバルブ13aを介して移動相が蓄えられた移動相容器15に接続され、吐出側はチェックバルブ13bを介して2次側ポンプヘッド17の吸入側に接続されている。2次側ポンプヘッド17の吐出側は、ドレインバルブ19及びラインフィルタ21を介してオートサンプラ3に接続されている。2次側ポンプヘッド17とドレインバルブ19の間の流路には、圧力センサ23が設けられている。ドレインバルブ19はレバー25を手動で切り換えることにより、2次側ポンプヘッド17の吐出側をオートサンプラ3又はドレインに切り換えて接続できる。
【0015】
オートサンプラ3には、ポンプ部1からの流路をサンプリングループ27又、カラム5又は計量シリンジ33に切り換えて接続する2ポジション6ポートバルブ29が備えられている。サンプリングループ27の基端部はバルブ29のポート29aに接続されている。サンプリングループ27の先端部にはサンプリングニードル39が取り付けられ、サンプリングニードル39は、注入部35、試料容器37及び洗浄ポート41の間を移動し、試料を試料容器37から吸入して注入部35へ吐出し、洗浄ポート41で先端が洗浄されるように構成されている。注入部35は、バルブ29のポート29bに接続され、バルブ29の切換えにより、カラム5に接続される。ポート29cには三方弁31を介して計量シリンジ33が接続されており、計量シリンジ33はバルブ29の切換えにより、サンプリングループ27に接続される。
【0016】
図2は同実施例におけるオートサンプラ3中の要部4の構成概略図である。図3は要部4におけるニードル39及び試料注入部35の周辺を示す斜視図であり、図4はその注入部35をさらに拡大した斜視図である。また図5は、洗浄ポート41とニードル39を概略的に示した垂直断面図及び平面断面図である。
【0017】
ニードル39は、図3に示すように、平面内をXY方向に移動する移動機構38に取り付けられた昇降機構40に取り付けられていることにより、サンプルラック47上の複数の試料容器37、注入部35及び洗浄ポート41の上を水平方向及び垂直方向に移動できる。
ニードル39により吸引及び吐出される液体は、図1に示す流路切換バルブ29を介してポンプ部1に連結されており、これにより、ニードル39の先端から液体を吸引及び吐出することができる。
【0018】
注入部35は、図3及び図4に示すように、バルブ29の上端に配置され、注入部35の上面にはニードル39が挿入される開口が設けられている。
洗浄ポート41は、図3及び図5に示すように、サンプルラック47とバルブ29に隣接した位置に備えられ、上面にはニードル39が挿入される開口が設けられている。また洗浄ポート41には、洗浄液57が流通するように洗浄液流路が接続されている。
【0019】
図5(A)は洗浄ポート41におけるニードル39の洗浄前の垂直断面図、(D)は洗浄ポート41の平面断面図であり、ニードル39を中心として、一対の拭い取り用パット55,56が備えられている。
パット56は洗浄ポート41の上端開口部に固定されており、パット55は水平方向及び垂直方向に移動することができるように、昇降機構40に取り付けられている。昇降機構40はニードル39とパット55を同時に又は独立して、上下方向と共に水平方向にも移動させることができる。
【0020】
図5(B)はパット55及び56がニードル39を挟み、ニードル39とパット55を洗浄液57から引き上げるときの断面図であり、図5(C)はニードル39がパット55及び56から離れ、洗浄ポート41から完全に引き上げられたときの断面図である。
【0021】
このように構成されたオートサンプラ3は、以下のような手順で動作するようにプログラムされている。
(試料吸入)
ニードル39は通常時、最上の位置又は設定された基準の高さの位置において待機している。試料を吸入する際は、図3に示すように、所定の位置に設置された試料容器37の位置まで平面方向及び垂直方向に移動して、その先端部より液体試料を吸入する。
【0022】
(試料注入及び検出)
試料吸入後、ニードル39は注入部35に試料49を注入できるように注入部35の位置に移動し、注入部35の開口に挿入される。図1に示すように、注入時は試料49を移動相などの溶媒と共に注入部35に注入し、注入された試料49及び溶媒は、液体クロマトグラフのカラム5に送られて試料は検出部7で検出される。
【0023】
(ニードル洗浄)
ニードル39は注入部35に試料を注入した後、洗浄のために洗浄ポート41上に移動させられる。
以下に図5(A)〜(C)を参照して洗浄動作を説明する。
(1)ニードル39を洗浄ポート41上に移動させる。
(2)図5(A)のようにニードル39を洗浄ポート41に挿入し、ニードル39の外表面を洗浄液57で洗浄する。この段階では、パット55及び56はニードル39から離れて位置決めされている。
(3)その後、パット55を少し(5mmほど)パット56方向に移動させ、ニードル39をパット55と56で挟む(図5(B))。
(4)ニードル39を引き上げて、パット55と56でニードル39の外表面の洗浄液57をぬぐう。
(5)ニードル39を洗浄ポート41から完全に引き上げた後に、パット55も上方に移動させる。
【0024】
(ニードル内部洗浄)
ニードル39の内部を洗浄するために、ニードル39が図5(A)又は(B)の状態にあるときに、図1には示されていないが、洗浄液ポンプにより洗浄液がサンプリングニードル27を介してニードル39内に供給され、ニードル39の先端から洗浄ポート41へ排出される。
洗浄が終わると分析の1サイクルが終わる。さらに分析を行なうときは、ニードル39を次にサンプリングする試料容器37の上まで移動させる。
【0025】
図6は昇降機構40で、ニードル39とパット55を移動させる機構部を示した分解斜視図である。この機構部は、ニードル上下昇降用モータとプーリ42によって、上下昇降用送りねじ44を介してニードル39とパット55を上下及び水平方向に移動するように制御する。
【0026】
本発明の他の実施例を、図7を参照して説明する。
図7はニードル39が洗浄ポート41から出るときにパット55と56が共に移動してシャッターのように出口が閉じる構造を示した断面図である。
洗浄ポート41の上面にはニードル39が挿入される開口が設けられており、洗浄ポート41には洗浄液57が流通させられる。パット55と56は共に水平方向に移動してニードル39を挟むことができ、ニードル39は垂直方向にのみ移動することができる。
【0027】
次に同実施例における洗浄の動作を説明する。
(1)ニードル39を洗浄ポート41上に移動させる。
(2)ニードル39を洗浄ポート41に挿入し、ニードル39の外表面を洗浄液57で洗浄する。このときはパット55及び56は、ニードル39から離れて位置決めされている。
(3)その後、パット55と56を少し(5mmほど)ニードル39方向に移動させ、ニードル39をパット55と56でシャッターのように挟む。
(4)ニードル39を引き上げて、パット55と56でニードル39表面の洗浄液57をぬぐう。
(5)ニードル39を洗浄ポート41から完全に引き上げる。
【0028】
本発明は上記記載の操作方法に限定されず、ニードル39から洗浄液等を拭うためのオートサンプラに幅広く使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
高速液体クロマトグラフなど液体試料を取り扱う各種分析装置におけるオートサンプラに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施例のオートサンプラ及び洗浄ポートを備えた高速液体クロマトグラフの構成を概略的に示す流路図である。
【図2】同実施例のオートサンプラの要部を示す構成概略図である。
【図3】同実施例の試料注入部を示す斜視図である。
【図4】同実施例の試料注入部を拡大して示す斜視図である。
【図5】一実施例における洗浄ポートを示す図であり、(A)はニードル洗浄前の垂直断面図、(B)はニードル洗浄後からニードル引上げ時の垂直断面図、(C)はニードル引上げ完了時の垂直断面図、(D)は(A)の水平断面図である。
【図6】ニードルとパットの昇降のための機構部を示す分解斜視図である。
【図7】他の実施例における洗浄ポートを示す垂直断面図である。
【図8】従来の洗浄ポートを示す垂直断面図である。
【符号の説明】
【0031】
29 流路切換えバルブ
35 試料注入部
37 試料容器
39 ニードル
40 昇降機構
41 洗浄ポート
43 流入口
45 排出口
49 液体試料
55,56 拭い取り用パット
57 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料をその先端部から吸入するサンプリングニードルと、
前記ニードルの平面内と垂直方向の移動及び試料の注入動作を制御する注入制御部と、
前記ニードルを洗浄する洗浄機構と、
を備えている液体クロマトグラフ用オートサンプラにおいて、
前記洗浄機構は、ニードルが浸され洗浄を行なう洗浄ポートと、前記洗浄ポートの上部に配置された一対の水分拭い取り用パットと、を備え、
前記パットは、前記ニードルが前記洗浄ポートに挿入されるときは前記ニードルに接触しない位置に配置され、
前記ニードルが洗浄ポートから引き上がられるときに、その少なくとも一方のパットを他方のパットに接触するまで移動させることにより、両パット間に前記ニードルを挟む移動機構を備えている液体クロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項2】
前記水分拭い取り用パットはその一方だけが移動するものである請求項1に記載の液体クロマトグラフ用オートサンプラ。
【請求項3】
前記水分拭い取り用パットはその両方が移動するものである請求項1に記載の液体クロマトグラフ用オートサンプラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−162260(P2006−162260A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349483(P2004−349483)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】