液体クロマトグラフ用フィルター

【課題】 試料中の不純物を除去する効果が従来のフィルターよりも高いフィルター、およびそれを備えた液体クロマトグラフを提供すること。また、前記フィルターを用いた、試料をさらに精度高く分析するための方法を提供すること。
【解決手段】 (1)濾紙、(2)1枚以上のメンブレンフィルター、(3)焼結フィルター、を設けたフィルター、および溶離液を送液する溶離液送液手段と、試料を導入する試料導入手段と、前記フィルターと、導入された試料を分離する分析カラムと、分析カラムから溶出した成分を検出する検出手段と、を備えた液体クロマトグラフにより前記課題を解決する。また、前記フィルターにタンパク質を含むエージング溶液を導入することで、測定開始直後から精度高い測定を実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフ用フィルター、その使用方法およびそれを備えた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学、医学研究、臨床化学の分野、特に臨床検査の分野における分析手段として、液体クロマトグラフがよく用いられる。液体クロマトグラフでは、試料中の各成分の性質が異なることを利用して、試料を分析カラムに供することにより各成分を分離、分析する。このため、試料中に含まれる微粒子などの不純物、ポンプシールのゴミ、溶離液中のゴミなどが分析カラムに入ると分析精度が低下したり、時には分析不能となる。
【0003】
通常液体クロマトグラフでは、前記不純物などが含まれる可能性を有した試料については、遠心分離やメンブレンフィルターを用いた濾過を行なうことで徹底的に不純物を除去した後、分析を行なう。しかしながら、ヘモグロビンA1cやリポ蛋白(高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、超低密度リポタンパク質(VLDL))などの分析においては、前処理による試料中の不純物の除去操作は煩雑であり、自動化も困難であるので、不純物の除去を行なわず、採取した試料をそのまま測定に供する。例えば、糖尿病の検査項目であるヘモグロビンA1cは、採血後EDTA2Kを加えた血液に界面活性剤を含んだ溶血液で希釈混合して得られた試料をそのまま分析カラムへ導入する。また、リポ蛋白(HDL、LDL、VLDL)の分析では、血清数μLをそのまま分析カラムに注入する。そして前述した分析精度が低下する問題を防ぐために、試料注入バルブから分析カラムまでの流路の間に焼結フィルター(特許文献1)、または濾紙とメンブレンフィルターと組み合わせたフィルター(特許文献2)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−131302号公報
【特許文献2】特許第3324162号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】蛋白質・酵素の基礎実験法、南江堂、堀江武一 山下仁平 編、1981年、p.23
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した分析カラムと試料注入バルブの流路の間に備えるフィルター(焼結フィルター)(特許文献1)または濾紙とメンブレンフィルターを組み合わせたフィルター(特許文献2))は試料中の不純物を除去する能力としては十分使用可能なものであるが、液体クロマトグラフに用いられる分析カラムは一般に高価であるので、不純物を除去する効果がより高いフィルターが求められている。
【0007】
そこで本発明の課題は、試料中の不純物を除去する効果が従来のフィルターよりも高いフィルター、およびそれを備えた液体クロマトグラフを提供することである。また、本発明は前記フィルターを用いた、試料をさらに精度高く分析するための方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来、液体クロマトグラフ用フィルターとして、捕獲粒子径(濾過精度)が0.1から20μmのステンレスなどの金属の破砕粉体や繊維を材料とした焼結フィルター、または捕獲粒子径(孔径)が0.1から5.0μmのメンブレンフィルターが多く用いられてきた。しかしながら、ヘモグロビンA1cやリポ蛋白(HDL、LDL、VLDL)などを分析する際、分析試料として希釈した全血試料や血清試料を用いる場合、試料中に不純物として血餅状のものを含む場合があり、このような粘度の高いゲル状の不純物は焼結フィルターの細孔を急速に詰まらせるという問題点があった。またメンブレンフィルターは、粘度の大小にかかわらず細孔が詰まりやすい性質を有しているため、メンブレンフィルターを使用する際は、測定試料の前処理が必須であった。
【0009】
前記課題を解決すべく、以前発明者は濾紙とメンブレンフィルターとを組み合わせた液体クロマトグラフ用フィルターを発明している(特許文献2)。前記フィルターを液体クロマトグラフに備えている分析カラムの上流側に設けることで、試料の前処理を行なわなくてもフィルターの目詰まりがしにくくなり、交換頻度を抑えることができた。しかしながら、定期的に(例えば100測定ごとに)前記フィルターを交換したとしても、徐々に分析カラムが詰まり、交換も余儀なくなる問題は依然として発生した。
【0010】
通常分析カラムは、充填したゲルが漏れ出さないように捕獲粒子径が充填したゲルの粒子径より細かいステンレス製の焼結フィルターを両端(入口側/出口側)に設けている。また前記フィルターのうち、濾紙はセルロース製であり、メンブレンフィルターは通常セルロースアセテート製、ニトロセルロース製、四フッ化エチレン樹脂製、親水性ポリスルホン樹脂製、親水性ポリプロピレン樹脂製、親水性ナイロン樹脂製であり、いずれも前記分析カラムに設けた焼結フィルターより細かい孔径のものを用いる。濾紙およびメンブレンフィルターの台座としては通常濾過精度が50から100μm程度のステンレス製金網を用いる。したがって、試料由来の不純物のうち、濾紙およびメンブレンフィルターで捕獲されない程度の小さな不純物(通常、濾紙およびメンブレンフィルターは孔径0.5μm程度のものを用いるため、0.5μm以下の粒子の不純物を示す)であって、濾紙やメンブレンフィルターの素材に吸着されないが焼結フィルターの素材(ステンレス)に吸着される不純物が、分析カラムの詰まりの原因となっていることが判明した。なお、前記不純物により詰まりが生じた分析カラムは溶離液を流したときの圧力が上昇するが、入口側の焼結フィルターを交換することで、溶離液を流したときの圧力が低下することから、充填剤(ゲル)内部が詰まっているのではないことを確認している。
【0011】
そこで、前記事実より本発明者が鋭意検討した結果、分析カラムの両端(入口側/出口側)に通常設ける焼結フィルターを、濾紙とメンブレンフィルターとを組み合わせた液体クロマトグラフ用フィルターの台座とすることで、試料中の不純物を除去する効果が高く、かつ分析カラムの詰まりを防止することを見いだし、本発明に至った。
【0012】
すなわち第一の発明は、
溶離液を送液する溶離液送液手段と、試料を導入する試料導入手段と、導入された試料を分離する分析カラムと、分析カラムから溶出した成分を検出する検出手段と、を備えた液体クロマトグラフで用いる、試料導入手段と分析カラムとの間に備えたフィルターであって、
試料導入手段側から順に、濾紙、1枚以上のメンブレンフィルター、焼結フィルター、を設けた、前記フィルターである。
【0013】
第二の発明は、フィルターに設けるメンブレンフィルターがそれぞれ異なる孔径を有した2枚以上のメンブレンフィルターであり、かつ試料導入手段側に設けたメンブレンフィルターの有する孔径が分析カラム側に設けたメンブレンフィルターの有する孔径よりも大きい、第一の発明に記載のフィルターである。
【0014】
第三の発明は、第一または第二の発明に記載のフィルターにタンパク質を含むエージング溶液を導入して処理した、エージング処理フィルターである。
【0015】
第四の発明は、エージング溶液がさらにカオトロピックイオンを含んでいる、第三の発明に記載のエージング処理フィルターである。
【0016】
第五の発明は、第一または第二の発明に記載のフィルターにタンパク質を含むエージング溶液を導入して処理する、フィルターのエージング処理方法である。
【0017】
第六の発明は、エージング溶液がさらにカオトロピックイオンを含んでいる、第五の発明に記載のフィルターのエージング処理方法である。
【0018】
第七の発明は、
溶離液を送液する溶離液送液手段と、試料を導入する試料導入手段と、導入された試料を分離する分析カラムと、分析カラムから溶出した成分を検出する検出手段と、を備えた液体クロマトグラフであって、
試料導入手段と分析カラムとの間に、試料導入手段側から順に、濾紙、1枚以上のメンブレンフィルター、焼結フィルター、を設けたフィルターを備えた、前記液体クロマトグラフである。
【0019】
第八の発明は、
タンパク質を含むエージング溶液をフィルターに導入してフィルターをエージング処理するエージング溶液導入手段と、
フィルターを通過した溶液が流れる流路とカラムへ導入する流路または廃液への流路とを切り替え可能な流路切り替え手段と、
をさらに備えた第七の発明に記載の液体クロマトグラフである。
【0020】
第九の発明は、試料導入手段とエージング溶液導入手段とが一体となった、第八の発明に記載の液体クロマトグラフである。
【0021】
第十の発明は、
分析カラムから溶出した成分を誘導体化させるための反応液を送液する反応液送液手段と、
前記溶出した成分を反応液により誘導体化させる反応手段と、
をさらに備えており、
検出手段が反応手段により誘導体化された前記溶出した成分を検出する手段である、
第七から第九のいずれかの発明に記載の液体クロマトグラフである。
【0022】
第十一の発明は、試料がリポ蛋白を含む血液試料である、第七から第十のいずれかの発明に記載の液体クロマトグラフである。
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明のフィルターで用いる濾紙の材料としては、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維などが例示できる。濾紙の捕獲粒子径(孔径)は0.1μm以上とすると好ましく、0.5μm以上とするとより好ましい。また、後述するメンブレンフィルターの捕獲粒子径(孔径)と同じまたはそれより大きくする(例えばメンブレンフィルターの孔径が0.5μmのときは0.5から1.5μmとする)と好ましい。
【0025】
本発明のフィルターで用いるメンブレンフィルターの材料としては、セルロースアセテート、ニトロセルロース、四フッ化エチレン樹脂、セルロール混合エステル、親水性ポリスルホン樹脂、親水性ポリプロピレン樹脂、親水性ナイロン樹脂などが例示できる。なお、メンブレンフィルターは2枚以上設けていると好ましく、さらに、2枚以上設けたメンブレンフィルターがそれぞれ異なる孔径を有しており、かつ液体クロマトグラフに備えた際、試料導入手段側(濾紙に近い側)に設けたメンブレンフィルターの有する孔径を分析カラム側(2枚目以降)に設けたメンブレンフィルターの有する孔径よりも大きくすると、より好ましい。一例として、試料導入手段側(濾紙に近い側)のメンブレンフィルターとして捕獲粒子径(孔径)が5.0μm以上のメンブレンフィルターを用いた場合、分析カラム側(2枚目以降)のメンブレンフィルターとして捕獲粒子径(孔径)が5.0μm未満のメンブレンフィルターを用いればよい。また、好ましい一態様として、メンブレンフィルターを2枚設け、試料導入手段側(濾紙に近い側)のメンブレンフィルターとして捕獲粒子径(孔径)が7.0から20μmのメンブレンフィルターとし、分析カラム側(後述の焼結フィルターに近い側)のメンブレンフィルターとして捕獲粒子径(孔径)が0.1から1.0μmのメンブレンフィルターとした態様があげられる。なお、メンブレンフィルターを2枚以上設けた場合、試料導入手段側(濾紙に近い側)のメンブレンフィルターを、セルロース繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維といった繊維材料を用いた不織布タイプのメンブレンフィルターとすると、通常のメンブレンフィルターに比べ目詰まりが生じにくくなる点で好ましい。
【0026】
本発明のフィルターで用いる焼結フィルターの材料としては、ステンレス、チタンなどが例示できる。なお、本発明のフィルターで用いる焼結フィルターの材料を分析カラム入口側に設けた焼結フィルターと同一の材料とすると、材料の違いによる不純物の吸着の差が生じなくなる点で好ましい。分析カラム入口側に設けた焼結フィルターは通常ステンレス製の粒子を焼結して作成した焼結フィルターを用いるため、この場合は本発明のフィルターで用いる焼結フィルターもステンレス製であると好ましい。本発明のフィルターで用いる焼結フィルターは、試料中の不純物のうち、濾紙およびメンブレンフィルターで除去できなかった細かい粒子の不純物であり、かつ分析カラムの入口側に設けた焼結フィルターの表面に吸着する不純物を除去することを目的とする。そのため、捕獲粒子径(濾過精度)が100μm以下の焼結フィルターを用いると不純物を効率よく吸着できる点で好ましい。
【0027】
本発明のフィルターの好ましい一態様として、試料導入手段側から順に、
(1)捕獲粒子径(孔径)が0.1μm以上の濾紙、
(2)捕獲粒子径(孔径)が5.0μm以上のメンブレンフィルター、
(3)捕獲粒子径(孔径)が5.0μm未満のメンブレンフィルター、
(4)捕獲粒子径(濾過精度)が100μm以下の焼結フィルター、
を設けたフィルターがあげられる。
【0028】
本発明のフィルターを液体クロマトグラフで用いる場合、特にフィルターの使い始めにおいて試料中の成分が吸着し回収率が低下する現象が発生する。そのため、特許文献1でも開示されている、タンパク質を含むエージング溶液を予めフィルターに導入することで回収率の低下を防止する、エージング処理(またはブロッキング処理)を行なうと好ましい。前記エージング処理により、フィルター表面の非特異的吸着部分をタンパク質で覆うことで、回収率の低下を防止できる。実際、本発明のフィルターにおいても、濾紙、メンブレンフィルター、焼結フィルターをエージング処理することで、測定開始2回目より良好な分析結果を得られる。なお、前記エージング処理は、濾紙、メンブレンフィルター、焼結フィルターのすべてを処理するのが最も好ましいが、少なくともメンブレンフィルターさえエージング処理すれば、測定開始2回目より良好な分析結果を得られることが判明している(実施例4)。
【0029】
エージング処理に用いるエージング溶液はタンパク質を含む溶液であればよく、具体的には牛血清アルブミン(BSA)、セリシン、グロブリン、ヘモグロビンなどを含む溶液をエージング溶液として用いてもよいし、測定試料として使用されることの多い血清や血漿をエージング溶液として用いてもよい。なお、前記エージング溶液にさらにカオトロピックイオンが含まれていると、本発明のフィルターのエージング処理の効率を高めることができるため、好ましい。また、タンパク質を含むエージング溶液を少量ずつ複数回に分けてフィルターに導入してエージング処理を行なう場合には、さらに別途カオトロピックイオンを含んだ溶液を導入することで同様な効果が得られる。カオトロピックイオンはタンパク質の高次構造を緩ませる効果がある。そのため、タンパク質の内部の疎水部分が表面に現れやすくなり、フィルター表面の非特異的吸着部分をタンパク質で覆う効率を高めることができる。カオトロピックイオンの強さは、CBrCOO>CClCOO>SCN=guanidinium>I=ClO>CHClCOO>NO=Br>Cl>CHCOO>F>SO2−の順に弱くなることが知られている(非特許文献1)。本発明のフィルターをエージング処理するために用いるエージング溶液に含まれると好ましいカオトロピックイオンは、塩化物イオン(Cl)よりカオトロピック効果の高いイオンであり、具体的には、硝酸イオン(NO)、過塩素酸イオン(ClO)、チオシアン酸イオン(SCN)、グアニジン(guanidinium)などが例示できる。
【0030】
本発明のフィルターは、試料中の不純物の種類の多い血清、血漿、全血などの血液検体において特に効果を発揮する。血清や血漿は不純物の種類が多く、特に薬物を投与している患者の検体では不純物の種類がさらに増加する。不純物の種類が増加すると濾紙、メンブレンフィルターで捕獲されない不純物も増加するが、後続の焼結フィルターで吸着除去することができるため、分析カラムの入口側に設けた焼結フィルター表面に不純物が吸着するのを防止することができる。
【0031】
一般に液体クロマトグラフ用フィルターは、一定の回数(例えば100検体)測定ごとに交換する必要がある。そこで、濾紙、1枚以上のメンブレンフィルター、焼結フィルター、を設けた本発明のフィルターをフィルターケース51の中に収容し、前記フィルターケース51をフィルターハウジング52に収容する構成(図2)を採用すると、本発明のフィルターを交換する際、フィルターハウジング52に収容されたフィルターケース51ごと交換すればよく、交換作業が容易となるため好ましい。
【0032】
前述したように、本発明のフィルターはタンパク質を含むエージング溶液でエージング処理するとフィルターの性能をより発揮させることができる。しかしながら、エージング処理したフィルターを保存するにはタンパク質を吸着した状態で保存する必要がある。そのため、使用するまでに1日以上期間がある場合は冷蔵保存が好ましいが、冷蔵保存は煩雑である。よって、装置によりエージング処理を自動的に行なえると好ましい。エージング処理を自動的に行なう装置の一例として、図4に示す、タンパク質を含むエージング溶液102を自動でフィルター50に導入可能な導入手段(シリンジ)101を設けたエージング溶液導入手段100があげられる。なお、図4に示すエージング溶液導入手段100を液体クロマトグラフに備える際、フィルター50と分析カラム60との間に流路切り替えバルブ112をさらに備えると、フィルター50を通過したエージング溶液が分析カラム60に導入されるのを防止できるため好ましい。
【0033】
図4に示すエージング溶液導入手段100を備えた液体クロマトグラフにおける、フィルター50のエージング処理の一例を以下に示す。
(1)切り替えバルブ111をエージング溶液導入手段100とフィルター50とが接続される位置(ONの位置)に切り替え、切り替えバルブ112をフィルター50から溶出したエージング溶液が分析カラム60へ導入されない位置(ONの位置)に切り替える。
(2)0.2から1.0%のBSAまたはセリシンを含む溶液(エージング溶液)1から3mLをシリンジ101を用いてフィルター50へ導入し、エージング処理を行なう。
(3)エージング処理後、切り替えバルブ111をオートサンプラー40とフィルター50とが接続される位置(OFFの位置)に切り替え、切り替えバルブ112をフィルター50と分析カラム60とが接続される位置(OFFの位置)に切り替える。
なお、前記動作は各手段と接続されたパーソナルコンピューターなどの制御手段であらかじめ設定した制御シーケンスに従い自動的に行なうことができる。
【0034】
また、試料注入量と同じ量のエージング溶液を複数回導入することでエージング操作を行なう場合、またはオートサンプラーでフィルターに導入するエージング溶液の量と試料導入量とを自動的に切り換えられる機能を有している場合は、オートサンプラーとエージング溶液導入手段とを一体化することも可能である(図5)。この場合、オートサンプラー40とフィルター50との間に備える切り換えバルブ(図4の111)は省略することができる。なお、図4および5における切り替えバルブ111・112は十分な耐圧性を有するバルブであればよく、三方または六方の回転型モーターバルブを例示することができる。
【0035】
本発明のフィルターを備えた液体クロマトグラフ装置は、例えば全血、血清、血漿といった血液試料を測定試料としたリポ蛋白分析に用いると特に好ましい。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、
溶離液を送液する溶離液送液手段と、試料を導入する試料導入手段と、導入された試料を分離する分析カラムと、分析カラムから溶出した成分を検出する検出手段と、を備えた液体クロマトグラフで用いる、試料導入手段と分析カラムとの間に備えたフィルターであって、
試料導入手段側から順に、濾紙、1枚以上のメンブレンフィルター、焼結フィルター、を設けていることを特徴としている。本発明のフィルターにより、試料中の不純物を効果的に除去することができる。また、下流側に備えた分析カラムの入口側に通常設ける焼結フィルターの詰まりを防止することができるため、分析カラムの寿命を向上させることができる。特に試料が全血、血清、血漿といった血液試料の場合は、粘度の高いゲル状の不純物など従来のフィルターでは吸着除去できない、またはフィルターを詰まらせる不純物が多く含まれているが、本発明のフィルターにより前記不純物も吸着除去できるため、本発明のフィルターを用いることによる効果が大きい。
【0037】
なお、本発明のフィルターは、試料を測定する前に、あらかじめタンパク質を含むエージング溶液を導入するエージング操作を行なうと、フィルターの各構成要素の表面にある非特異的吸着部分をタンパク質で覆うことができるため、測定開始直後から精度高い測定を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1から5で用いた液体クロマトグラフの概要図。
【図2】本発明のフィルターの概要図。
【図3】実施例4において、実験1のエージング処理を行なったときの測定5回目の測定結果(クロマトグラム)。
【図4】本発明のフィルターおよびエージング溶液導入手段を備えた液体クロマトグラフの一態様を示す図。
【図5】本発明のフィルターおよびエージング溶液導入手段を備えた液体クロマトグラフの別の態様を示す図。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
実施例1
図1に示すリポ蛋白分析装置を用いて評価を行なった。溶離液11は1mMのEDTA2Naを含んだ20mMトリス緩衝液(pH7.65)を、溶離液12は1mMのEDTA2Naと500mMの過塩素酸ナトリウムを含んだ20mMトリス緩衝液(pH7.65)を、分析カラム60は東ソー株式会社製陰イオン交換カラム(TSKgel DEAE−NPR)を、反応液70はセロテック社製コレステロール酵素反応液(TCHO−L)を、それぞれ用いた。分析カラム60から溶出したリポ蛋白は反応液70と混合後、45℃に維持されたリアクター80内のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)配管を通過することで反応し、反応した成分を検出器(可視吸光度計)90(測定波長:600nm)で検出する。
【0041】
以降の実施例で用いたフィルター50の構造について、下記条件4を例にして詳細に説明する(図2)。フィルター50はフィルターケース51とフィルターハウジング52とから構成される。フィルターケース51には、フィルターケース入口51aとフィルターケース出口51bの間に、入口51a側から、濾紙51c、メンブレンフィルター51d・51e、焼結フィルター51gを設けている。またフィルターケース51には、メンブレンフィルター51d・51eと焼結フィルター51gとの間にパッキン51fを設置することにより、メンブレンフィルター51d・51eに目詰まりが生じてきた場合であっても試料中の粒子状の不純物が横漏れするのを防止することができる。なお、フィルターケース入口51a、フィルターケース出口51bおよびパッキン51fは、PTFEなどのポリマー製の成形品が好ましい。なお実施例で使用したパッキン51fの形状は外径が11mmで内径が9mmとしたので、フィルター有効径は9mm径となる。
【0042】
フィルターケース51はフィルターハウジング52内に収容される。フィルターハウジング52はステンレスなどの金属製の成形品が好ましい。フィルターハウジング入口52aとフィルターハウジング出口52bの間に濾紙、メンブレンフィルター、焼結フィルターを収容したフィルターケース51を収容する。フィルターハウジング入口52aをあらかじめ装置に固定しておけば、フィルターハウジング締付用ノブ52dを回すことで、フィルターケース押さえ52cにより、フィルターケース52は固定される。図1に示すリポ蛋白分析装置用フィルター50として用いる場合は、オートサンプラー40からの配管とフィルターハウジング入口52aとを接続し、分析カラム60への配管とフィルターケース押さえ52cとを接続して用いる。図2に示すフィルター50は、あらかじめ濾紙、メンブレンフィルター、焼結フィルターを収容したフィルターケース51ごと交換することで、容易にフィルター交換が可能である。
【0043】
以降の実施例で使用したフィルターの条件を以下に示す。
(条件1)
濾紙51c:
保留粒子径0.8μm、No.1650濾紙、アドバンテック東洋製
メンブレンフィルター51d:
孔径0.45μm、セルロース混合エステルフィルター、アドバンテック東洋製
金属網51g:
濾過精度60μm、ステンレス金網、日本精線製
(条件2)
濾紙51c:
保留粒子径0.8μm、No.1650濾紙、アドバンテック東洋製
メンブレンフィルター51d:
孔径0.45μm、セルロース混合エステルフィルター、アドバンテック東洋製
焼結フィルター51g:
濾過精度10μm、ステンレス繊維焼結タイプフィルター、日本精線製
(条件3)
濾紙51c:
保留粒子径0.8μm、No.1650濾紙、アドバンテック東洋製
メンブレンフィルター51d:
保留粒子径10μm、ポリエステル繊維フィルター、アドバンテック東洋製
メンブレンフィルター51e:
孔径0.45μm、セルロース混合エステルフィルター、アドバンテック東洋製
金属網51g:
濾過精度60μm、ステンレス金網、日本精線製
(条件4)
濾紙51c:
保留粒子径0.8μm、No.1650濾紙、アドバンテック東洋製
メンブレンフィルター51d:
保留粒子径10μm、ポリエステル繊維フィルター、アドバンテック東洋製
メンブレンフィルター51e:
孔径0.45μm、セルロース混合エステルフィルター、アドバンテック東洋製
焼結フィルター51g:
濾過精度10μm、ステンレス繊維焼結タイプフィルター、日本精線製
オートサンプラー40から血清を15μL/回で5分ごとに注入し、フィルター50の圧力を観察した。なお、溶離液の送液条件は溶離液11が100%で流速は0.5mL/minである。また、フィルター50の条件は前記条件2および条件4とした。
【0044】
表1に結果を示す。初期圧力からの差圧(かっこ内の数値)を見ると、条件2に比べて、条件4では圧力上昇が小さいことがわかる。このことから、メンブレンフィルターとして、捕獲粒子径(孔径)が5μm以上のメンブレンフィルターと捕獲粒子径(孔径)が5μm未満のメンブレンフィルターとを組み合わせて使用すると、フィルターの詰まりが生じにくくなり、圧力上昇が抑えられるため、フィルターの交換回数を減少させることができる点で好ましいといえる。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例2
フィルター50の条件を前述の条件1から4のいずれかとし、溶離液の送液条件を溶離液11が75%で溶離液12が25%とし、溶離液11と溶離液12との合計流量を0.5mL/minとした他は、実施例1と同様な方法で評価を行なった。結果を表2に示す。初期圧力からの圧力の差圧(かっこ内の数値)を見ると、条件1に比べて条件3が、条件2に比べて条件4が、それぞれ圧力上昇が小さいことがわかる。このことから、メンブレンフィルターとして、捕獲粒子径(孔径)が5μm以上のメンブレンフィルターと捕獲粒子径(孔径)が5μm未満のメンブレンフィルターとを組み合わせて使用すると、フォルターの詰まりが生じにくくなり、圧力上昇が抑えられるため、フィルターの交換回数を減少させることができる点で好ましいといえる。
【0047】
【表2】

【0048】
なお、溶離液11を100%で送液した場合(実施例1、表1)と比べて、溶離液11を75%で溶離液12を25%で送液した場合(本実施例、表2)は圧力の上昇が軽度である。これは血清中に含まれる種々の凝集塊が溶離液12に含まれる過塩素酸イオンにより、ある程度分散され粒子系が小型化したことによると推測される。また、初期圧力からの差圧について最も分析カラム60に近い側に金属網を設けた場合(条件1および3)と焼結フィルターを設けた場合(条件2および4)とで比較すると、焼結フィルターの方が詰まりが生じにくいことがわかる。
【0049】
実施例3
図1に示すリポ蛋白分析装置を用いて評価を行なった。オートサンプラー40から血清を15μL/回で5分ごとに8回注入し、その後フィルター50を新しいものに交換してからカラムの圧力を観察した。溶離液の送液条件は、溶離液11が75%で溶離液12が25%であり、溶離液11と溶離液12との合計流量は0.5mL/minである。フィルター50の条件は前述の条件1から4のいずれかであり、フィルター50内のパッキン(図2の51f)はフィルター有効径が9mm径となるものを使用した。また、ステンレス鋼の破砕粉末の粒子を焼結して作成した焼結フィルター(濾過精度1μm)を分析カラム60の両端(入口側/出口側)に設けている。
【0050】
表3に結果を示す。初期圧力からの差圧(かっこ内の数値)を比べると、条件1に比べて条件3が、条件2に比べて条件4が、それぞれ圧力上昇が小さいことがわかる。このことから、フィルターケース出口(図2の51b)側で用いるフィルター(図2の51g)として、分析カラムの入口に設ける焼結フィルターと同じ素材であるステンレス製の焼結フィルターを採用することで、分析カラムの詰まりを生じにくくし、カラムの圧力上昇を防止することができる。
【0051】
【表3】

【0052】
実施例4
図1に示すリポ蛋白分析装置を用いて評価を行なった。分析を実施する前に、フィルター50中の濾紙51c、メンブレンフィルター51d・51e、焼結フィルター51gの全部または一部をエージング処理を行なった後、血清試料を5回連続測定した。エージング処理は、0.5%のBSA溶液(純水による溶解液)をシリンジで2.0mL導入することで実施した。本実施例の測定条件を以下に示す。
(測定条件)
フィルター50(前述の条件4):
濾紙51c:
保留粒子径0.8μm、No.1650濾紙、アドバンテック東洋製
メンブレンフィルター51d:
保留粒子径10μm、ポリエステル繊維フィルター、アドバンテック東洋製
メンブレンフィルター51e:
孔径0.45μm、セルロース混合エステルフィルター、アドバンテック東洋製
焼結フィルター51g:
濾過精度10μm、ステンレス繊維焼結タイプフィルター、日本精線製
溶離液11:
1mMのEDTA2Naを含んだ20mMトリス緩衝液(pH7.65)
溶離液12:
1mMのEDTA2Naと500mMの過塩素酸ナトリウムを含んだ20mMトリ
ス緩衝液(pH7.65)
ポンプ21・22・23:DP−8020(東ソー株式会社製)
ポンプ21・22の流速:0.5mL/min
ポンプ21・22のグラジエント条件
0から2.0min 溶離液11:溶離液12=82.8:17.2
2.0から4.0min 溶離液11:溶離液12=78.2:21.8
4.0から5.5min 溶離液11:溶離液12=76.4:23.6
5.5から7.0min 溶離液11:溶離液12=67.4:32.6
7.0から8.0min 溶離液11:溶離液12=0.0:100.0
8.0から10.0min 溶離液11:溶離液12=90.0:10.0
ポンプ23の流速:0.2mL/min
測定時間:10分/テスト
ミキサー30:ミキサーC(東ソー株式会社製)
オートサンプラー40:AS−8020(東ソー株式会社製)
試料注入量:2.0μL(血清)/テスト
分析カラム(陰イオン交換カラム)60:
TSKgel DEAE−NPR(カラムサイズ 内径3.0mmID 長さ15
mm、東ソー株式会社製)
反応液(コレステロール酵素反応液)70:TCHO−L(セロテック社製)
リアクター80:内径0.25mm×長さ30mのPTFE配管
リアクター80温度:45℃
検出器(可視吸光度計)90:UV−8020(東ソー株式会社製)
検出器90の検出波長:600nm
試料の回収率として、測定5回目の各リポ蛋白の測定結果(各リポ蛋白のピーク面積の総和)を100%としたときの、測定1回目から4回目までの面積(%)を算出した。結果を表4に示す。また、図3に実験1のエージング処理を行なったときの測定5回目の測定結果のクロマトグラムを示す。なお、本実施例で用いた血清の総コレステロールは、177mg/dLである。
【0053】
【表4】

【0054】
フィルター50中の全ての構成要素をエージング処理した場合(実験1)は、測定1回目から97%の回収率を得ており、測定当初から良好な測定を実現している。濾紙51cのみをエージング処理した場合(実験2)は、測定2回目から94%と良好な回収率を得ているが、当該結果は濾紙51cに含まれたエージング液が測定開始時にメンブレンフィルターにエージング効果をもたらしたと考えられるため、当該結果の再現性は高くないことが予想される。メンブレンフィルター51dのみをエージング処理した場合(実験3)には、測定1回目から90%と良好な回収率を得ている。メンブレンフィルター51eのみをエージング処理した場合(実験4)には、測定1回目は65%とやや低い回収率であったが、測定2回目では80%、測定3回目では87%と回収率が向上した。焼結フィルター51gのみをエージング処理した場合(実験5)には、測定2回目では92%と高い回収率を示したものの、測定1回目では48%と極めて低い回収率であった。実験2から5の結果をまとめると、フィルター50の各構成要素のみをエージング処理する場合は、濾紙51cまたはメンブレンフィルター51dをエージング処理すれば、安定な測定が実施できることがわかる。
【0055】
メンブレンフィルター51d・51eをエージング処理した場合(実験6)は、測定1回目では61%とやや低い回収率であったが、測定2回目では87%と概ね良好な回収率を示した。濾紙51cおよびメンブレンフィルター51d・51eをエージング処理した場合(実験7)は、測定1回目では70%とやや低い回収率であったが、測定2回目では94%と良好な回収率を示した。何もエージング処理しなかった場合(実験8)は、測定1回目および2回目ではピークが検出されず、測定3回目で78%、測定4回目では92%と回収率は向上した。
【0056】
実験1から8の結果をまとめると、安定な測定を実施するためには、フィルター50の各構成要素のうち少なくともメンブレンフィルター51d・51eをエージング処理すると好ましく、フィルター50中の全ての構成要素をエージング処理すると最も好ましいことがわかる。
【0057】
実施例4
図1に示すリポ蛋白分析装置を用いて評価を行なった。測定条件は実施例3と同じである。分析を実施する前に、フィルター50中の全ての構成要素(濾紙51c、メンブレンフィルター51d・51e、焼結フィルター51f)について、下記に示すエージング溶液をシリンジで1.0mL導入することでフィルター50をエージング処理した。
(エージング溶液)
溶液1:0.5%のBSAを含む20mMトリス緩衝液(pH7.5)
溶液2:0.5%のBSAと250mMの過塩素酸ナトリウムを含む20mMトリス
緩衝液(pH7.5)
溶液3:0.5%のBSAと500mMの過塩素酸ナトリウムを含む20mMトリス
緩衝液(pH7.5)
溶液4:0.5%のBSAと250mMの塩化ナトリウムを含む20mMトリス緩衝
液(pH7.5)
溶液5:0.5%のBSAと250mMの硝酸アンモニウムを含む20mMトリス緩
衝液(pH7.5)
溶液6:0.5%のBSAと150mMのチオシアン酸カリウムを含む20mMトリ
ス緩衝液(pH7.5)
溶液7:0.5%のBSAと100mMのグアニジン塩酸を含む20mMトリス緩衝
液(pH7.5)
溶液8:0.5%セリシン水溶液
溶液9:0.5%のセリシンを含む250mM過塩素酸ナトリウム水溶液
血清試料を5回連続測定後、測定試料の回収率として、測定5回目の各リポ蛋白の測定結果(各リポ蛋白のピーク面積の総和)を100%としたときの測定1回目から4回目までの面積(%)を算出した。結果を表5に示す。
【0058】
【表5】

【0059】
エージング溶液に過塩素酸ナトリウムを含まない場合(溶液1および8)と過塩素酸ナトリウムを含む場合(溶液2、3および9)とで、測定1回目および2回目の回収率を比較したところ過塩素酸ナトリウムを含む場合のほうが回収率が向上していた。当該結果より、エージング溶液に過塩素酸ナトリウムを含んでいると、エージング処理の効果が高まることがわかる。
【0060】
溶液4から7はエージング溶液に含まれる塩類を検討したものである。エージング溶液に塩化ナトリウムを含む場合(溶液4)での測定1回目および2回目の回収率は、エージング溶液に硝酸アンモニウム(溶液5)、チオシアン酸カリウム(溶液6)またはグアニジン塩酸(溶液7)を含む場合と比較し、若干低い回収率となった。塩化ナトリウムを溶解したときに含まれる塩化物イオンは、本実施例で使用した塩類に含まれる陰イオンの中で一番カオトロピック効果が低い。以上より、エージング溶液に塩化物イオンよりカオトロピック効果の高いカオトロピックイオンが含まれていると、エージング処理の効果をより高めることができることがわかる。
【0061】
実施例5
図1に示すリポ蛋白分析装置を用いて評価を行なった。測定条件は実施例3と同じである。分析を実施する前に、フィルター50中の全ての構成要素(濾紙51c、メンブレンフィルター51d・51e、焼結フィルター51f)について、下記に示すエージング溶液をシリンジで2.0mL導入することでフィルター50をエージング処理した。
(エージング溶液)
溶液10:0.5%のBSAを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)
溶液11:0.5%のBSAを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)
溶液12:0.5%のBSAを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)
溶液13:0.5%のBSAを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)
溶液14:0.5%のBSAを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH7.6)
溶液15:0.5%のBSAを含む20mMトリス緩衝液(pH8.5)
溶液16:0.5%のBSAを含む20mMトリス緩衝液(pH9.5)
溶液17:0.5%のセリシンを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)
溶液18:0.5%のセリシンを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH7.6)
溶液19:0.5%のセリシンを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)
血清試料を5回連続測定後、測定試料の回収率として、測定5回目の各リポ蛋白の測定結果(各リポ蛋白のピーク面積の総和)を100%としたときの測定1回目から4回目までの面積(%)を算出した。結果を表6に示す。
【0062】
【表6】

【0063】
エージング溶液中のタンパク質として0.5%のBSAを用いた場合において、溶液中のpHを変動させた(溶液10から16)ところ、pH5.5(溶液10)では、測定1回目および2回目ともにピークが確認されなかったが、その他のpH(溶液11から16)では、測定2回目で80%以上の回収率が、測定3回目で90%以上の回収率が、それぞれ確認された。
【0064】
エージング溶液中のタンパク質として0.5%のセリシンを用いた場合における、溶液中のpHを変動させた結果(溶液17から19)を比較したところ、pH5.5(溶液17)では、測定1回目でピークの確認ができなかったが、その他のpH(溶液18から19)では、測定1回目で80%以上の回収率が確認された。
【0065】
以上をまとめると、エージング溶液のpHを6.0から9.5とすると、安定な測定が実施できる点で好ましいといえる。
【0066】
実施例6
図5に示すリポ蛋白分析装置を用いて評価を行なった。測定条件は実施例3と同じである。図5の装置はオートサンプラーとエージング溶液導入手段とが一体となった態様となっている。下記に示すエージング処理を自動的に実施した後に血清試料中のリポ蛋白分析を連続5回実施した。
(エージング処理方法)
実験A:
フィルター50と分析カラム60との間の流路切り換えバルブ112をONとする
ことで、エージング処理に伴いフィルター50から溶出したエージング溶液がカラ
ムに導入されないようにした状態で、溶離液11を流しながらエージング溶液
102(血清:500mM過塩素酸ナトリウム溶液=1:1)2μLをオートサン
プラー40より1.5分間隔で8回フィルター50に導入することにより、エージ
ング処理を実施した。エージング処理後流路切り換えバルブ112をOFFにし、
連続5回分析した。
【0067】
実験B:
フィルター50と分析カラム60との間の流路切り換えバルブ112をONとする
ことで、エージング処理に伴いフィルター50から溶出したエージング溶液がカラ
ムに導入されないようにした状態で、溶離液11を流しながらエージング溶液
102(血清)2μLをオートサンプラー40より1.5分間隔で6回フィルター
50に導入することにより、エージング処理を実施した。エージング処理後、流路
切り換えバルブ112をOFFにし、連続5回分析した。
【0068】
実験C:
フィルター50と分析カラム60との間の流路切り換えバルブ112をONとする
ことで、エージング処理に伴いフィルター50から溶出したエージング溶液がカラ
ムに導入されないようにした状態で、溶離液12を流しながらエージング溶液
102(血清)2μLをオートサンプラー40より1.5分間隔で6回フィルター
50に導入することにより、エージング処理を実施した。エージング処理後、流路
切り換えバルブ112をOFFにし、連続5回分析した。
【0069】
測定試料の回収率として、測定5回目の各リポ蛋白の測定結果(各リポ蛋白のピーク面積の総和)を100%としたときの測定1回目から4回目までの面積(%)を算出した。結果を表7に示す。
【0070】
【表7】

【0071】
実験AからCに示す、いずれのエージング処理方法であっても、その後の測定において、測定2回目から90%以上と良好な回収率を示した。特に、過塩素酸ナトリウム500mM含んだ溶離液12を流しながらエージング処理を行なった実験Cでは、測定2回目での回収率が99%と良好な結果を示した。
【0072】
以上より、図5に示す装置を用いることで、エージング処理時にフィルター50から溶出されるエージング溶液による分析カラム60へのダメージを防止しつつ、フィルター50が自動的にエージング処理することができる。
【符号の説明】
【0073】
11、12:溶離液
21、22、23:ポンプ
30:ミキサー
40:オートサンプラー
41:洗浄液
42、101:シリンジ
43:サンプルループ
44、111、112:六方バルブ
45:ニードル
46:試料
47、103:3方バルブ
50:フィルター
51:フィルターケース
51a:フィルターケース入口
51b:フィルターケース出口
51c:濾紙
51d、51e:メンブレンフィルター
51f:パッキン
51g:金属網または焼結フィルター
52:フィルターハウジング
52a:フィルターハウジング入口
52b:フィルターハウジング出口
52c:フィルターケース押さえ
52d:フィルターハウジング締付用ノブ
60:分析カラム
70:反応液
80:リアクター
90:検出器
100:エージング溶液導入手段
102:エージング溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶離液を送液する溶離液送液手段と、試料を導入する試料導入手段と、導入された試料を分離する分析カラムと、分析カラムから溶出した成分を検出する検出手段と、を備えた液体クロマトグラフで用いる、試料導入手段と分析カラムとの間に備えたフィルターであって、
試料導入手段側から順に、濾紙、1枚以上のメンブレンフィルター、焼結フィルター、を設けた、前記フィルター。
【請求項2】
フィルターに設けるメンブレンフィルターがそれぞれ異なる孔径を有した2枚以上のメンブレンフィルターであり、かつ試料導入手段側に設けたメンブレンフィルターの有する孔径が分析カラム側に設けたメンブレンフィルターの有する孔径よりも大きい、請求項1に記載のフィルター。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルターにタンパク質を含むエージング溶液を導入して処理した、エージング処理フィルター。
【請求項4】
エージング溶液がさらにカオトロピックイオンを含んでいる、請求項3に記載のエージング処理フィルター。
【請求項5】
請求項1または2に記載のフィルターにタンパク質を含むエージング溶液を導入して処理する、フィルターのエージング処理方法。
【請求項6】
エージング溶液がさらにカオトロピックイオンを含んでいる、請求項5に記載のフィルターのエージング処理方法。
【請求項7】
溶離液を送液する溶離液送液手段と、試料を導入する試料導入手段と、導入された試料を分離する分析カラムと、分析カラムから溶出した成分を検出する検出手段と、を備えた液体クロマトグラフであって、
試料導入手段と分析カラムとの間に、試料導入手段側から順に、濾紙、1枚以上のメンブレンフィルター、焼結フィルター、を設けたフィルターを備えた、前記液体クロマトグラフ。
【請求項8】
タンパク質を含むエージング溶液をフィルターに導入してフィルターをエージング処理するエージング溶液導入手段と、
フィルターを通過した溶液が流れる流路とカラムへ導入する流路または廃液への流路とを切り替え可能な流路切り替え手段と、
をさらに備えた請求項7に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項9】
試料導入手段とエージング溶液導入手段とが一体となった、請求項8に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項10】
分析カラムから溶出した成分を誘導体化させるための反応液を送液する反応液送液手段と、
前記溶出した成分を反応液により誘導体化させる反応手段と、
をさらに備えており、
検出手段が反応手段により誘導体化された前記溶出した成分を検出する手段である、
請求項7から9のいずれかに記載の液体クロマトグラフ。
【請求項11】
試料がリポ蛋白を含む血液試料である、請求項7から10のいずれかに記載の液体クロマトグラフ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−242238(P2011−242238A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114134(P2010−114134)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,870)