説明

液体クロマトグラフ

【課題】分析対象成分を分画する動作と分画された分析対象成分を濃縮カラムに導いて濃縮する動作とを同時に行なうことができる液体クロマトグラフを提供する。
【解決手段】流路切換バルブ14a,14b,18a,18b,22a,22b,44及び流路選択バルブ26,28の切換えによって、分画流路、非分画流路、濃縮流路及び2次元目分析流路を構成することができる。濃縮流路と分画流路、非分画流路のいずれか1つの流路は同時に構成することができ、2次元目分析流路と分画流路、非分画流路のいずれか1つの流路も同時に構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速液体クロマトグラフなどの液体クロマトグラフに関し、特に分離した成分を濃縮カラムに捕捉して濃縮する機能を備えた液体クロマトグラフに関するものである。
【背景技術】
【0002】
分離した成分を濃縮カラムに捕捉して濃縮する機能を備えた2次元液体クロマトグラフ(例えば、特許文献1を参照。)では、まず、分析流路中に注入された試料を移動相とともに1次元目の分析カラムに移送し、1次元目分析カラムで分離して、1つ以上の分析対象成分を含む溶離液をサンプルループなどの試料保持部で一時的に保持する。特許文献1のように、サンプルループが複数設けられている場合には、各サンプルループに分析対象成分を順に保持した後、サンプルループに保持した分析対象成分を濃縮カラムに搬送して濃縮し、その濃縮した分析対象成分を溶出させて2次元目の分析カラムに導いて再分析を行なう。
【特許文献1】特許第3868899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の2次元液体クロマトグラフは、1次元目分析で得られる分析対象成分をサンプルループで保持して分画する動作と、分画された分析対象成分を濃縮カラムに導いて濃縮する動作とを同時に行なうことができるようになっていない。そのため、サンプルループが1つだけ設けられている液体クロマトグラフでは、1つの分析対象成分をサンプルループで保持するとその分析対象成分の濃縮作業と2次元目分析が終了するまで一次元目分析を停止していた。また、サンプルループが複数設けられている液体クロマトグラフでは、それらのサンプルループに1次元目分析で分離した分析対象成分を分画し、その後、分画された分析対象成分を1つずつ順に濃縮カラムに導いて濃縮し、2次元目分析を行なうという作業を行なっていた。
【0004】
上記のことから、分析対象成分の分画動作と、分画された分析対象成分を濃縮カラムに導いて濃縮する動作とを同時に行なうことができれば、分析対象成分の濃縮中も分画作業が行なえるため、分析時間を短縮できることになる。
そこで本発明は、分析対象成分を分画する動作と分画された分析対象成分を濃縮カラムに導いて濃縮する動作とを同時に行なうことができる液体クロマトグラフを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液体クロマトグラフは、1次元目移動相を送液する1次元目送液機構、1次元目移動相とともに移送される試料を分離する1次元目分析カラム及び1次元目分析カラムで分離された各成分を検出するための1次元目検出器を備えた1次元目分析流路と、1次元目分析流路の下流側に配置され、1次元目分析カラムで分離された分析対象成分を含む溶出液を保持することができる少なくとも2つの試料保持部と、試料保持部に保持された分析対象成分を含む溶出液を搬送するための濃縮液を送液する濃縮液送液部及び濃縮液によって搬送される溶出液から分析対象成分を捕捉する濃縮カラムを備えた濃縮流路と、濃縮カラムに捕捉された分析対象成分を溶出させて移送するための2次元目移動相を送液する2次元目移動相送液部、2次元目移動相とともに移送される分析対象成分をさらに分離するための2次元目分析カラム及び2次元目分析カラムの下流側に設けられた2次元目検出器を備えた2次元目分析流路と、試料保持部の1つを1次元目分析流路に接続し、1次元目分析流路の接続されていない試料保持部を濃縮流路の濃縮液送液部と濃縮カラムの間に接続するとともに、それらの接続を切り換えることのできる第1の切換え機構と、濃縮カラムを2次元目分析流路の2次元目移動相送液部と2次元目分析カラムの間の位置と濃縮流路中の位置との間で切り換えて接続する第2の切換え機構と、を備えているものである。
【0006】
なお、本発明の液体クロマトグラフにおける試料保持部は3つ以上設けられており、第1の切換え機構は各試料保持部を別々のタイミングで前記1次元目分析流路に接続するようになっていることが好ましい。そうすれば、1つの試料保持部に保持された分析対象成分の濃縮を行なっている間に2以上の分析対象成分が確認された場合にそれらの分析対象成分の分画を行なうことができる。
【0007】
濃縮流路には試料保持部と濃縮カラムとの間に濃縮カラムでの分析対象成分の捕捉を促す希釈液を供給する希釈液送液流路がさらに接続されていれば、濃縮カラムに送られる分析対象成分を希釈して濃縮カラムでの分析対象成分の捕捉効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体クロマトグラフは、1次元目分析流路、少なくとも2つの試料保持部、濃縮流路、2次元目分析流路を備え、さらには試料保持部の1つを1次元目分析流路に接続し、1次元目分析流路の接続されていない試料保持部を濃縮流路の濃縮液送液部と濃縮カラムの間に接続するとともに、それらの接続を切り換えることのできる第1の切換え機構と、濃縮カラムを2次元目分析流路の2次元目移動相送液部と2次元目分析カラムの間の位置と濃縮流路中の位置との間で切り換えて接続する第2の切換え機構と、を備えているので、分析対象成分を保持した試料保持部を濃縮流路の濃縮液送液部と濃縮カラムの間に接続して分析対象成分の濃縮作業を行ないながら、1次元目分析流路を別の試料保持部に接続して分析対象成分の分画作業を行なうことができる。したがって、濃縮作業中に1次元目分析を中断したり、1次元目分析が全て終了するまで濃縮作業の開始を待ったりする必要がないので、分析全体にかかる時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明の液体クロマトグラフの構成を示す流路構成図である。
この実施例の液体クロマトグラフは、1次元目分析流路1a、3つのサンプルループ(試料保持部)16,20,24、濃縮液送液流路1b−1、希釈液送液流路1b−2、トラップカラム流路1d、2次元目移動相送液流路1c−1及び濃縮試料分析流路1c−2を備えている。
【0010】
1次元目分析流路1aは、2種類の1次元目移動相2a,2bを送液する送液ポンプ4a,4b及びそれらの1次元目移動相2a,2bを混合するミキサ6からなる1次元目送液機構、この流路内に試料を注入する試料注入部8、注入された試料を分離する1次元目分析カラム10、及び1次元目分析カラム10で分離された試料成分を検出する検出器12を備えている。
サンプルループ16,20,24は1次元目分析流路1aで分離された分析対象成分を含む溶出液を滞留させることができる。
【0011】
濃縮液送液流路1b−1は例えば水などの濃縮液30を送液するためのポンプ32を備えている。
希釈液送液流路1b−2は分析対象成分を含む溶出液を希釈するための希釈液34を送液するためのポンプ36を備えている。
【0012】
トラップカラム流路1dは流れる液体から分析対象成分を捕捉して残りの液体を通過させるトラップカラム46を備えている。
【0013】
2次元目移動相送液流路1c−1は2種類の2次元目移動相38a,38bを送液するためのポンプ40a,40b及びそれらの液体を混合するミキサ42からなる2次元目移動相送液装置を備えている。
濃縮試料分析流路1c−2は2次元目分析カラム48と2次元目検出器50を備えている。
【0014】
流路選択バルブ26は濃縮液送液流路1b−1の接続先を流路切換バルブ14a側、18a側、22a側の3段階に切り換えるものであり、流路選択バルブ28は流路切換バルブ44の接続先を流路切換バルブ14b、18b、22bの3段階に切り換えるものである。流路選択バルブ26と28は互いに同期して切り換えられるものであり、流路選択バルブ26において流路切換バルブ14aが選択されると流路選択バルブ28では流路切換バルブ14bが選択され、流路選択バルブ26において流路切換バルブ18aが選択されると流路選択バルブ28では流路切換バルブ18bが選択され、流路選択バルブ26において流路切換バルブ22aが選択されると流路選択バルブ28では流路切換バルブ22bが選択される。
【0015】
流路切換バルブ14aは、流路切換バルブ18aに繋がるポート、流路切換バルブ14bに繋がるポート、サンプルループ16の一端に繋がるポート及び流路選択バルブ26を介して濃縮液送液流路1b−1に繋がるポートを備えている。流路切換バルブ14aは流路切換バルブ18aに繋がるポートを流路切換バルブ14bに繋がるポートとサンプルループ16の一端に繋がるポートとの間で切り換えて接続することができ、流路切換バルブ18aに繋がるポートと流路切換バルブ14bに繋がるポートとを接続しているときは、サンプルループ16の一端に繋がるポートと流路選択バルブ26を介して濃縮液送液流路1b−1に繋がるポートとを接続する。
【0016】
流路切換バルブ14bは、流路切換バルブ14aに繋がるポート、サンプルループ16の他端に繋がるポート、流路選択バルブ28を介して流路切換バルブ44に繋がるポート及びドレインに繋がるポートを備えている。流路切換バルブ14bはサンプルループ16の他端に繋がるポートを流路選択バルブ28を介して流路切換バルブ44に繋がるポートとドレインに繋がるポートとの間で切り換えて接続することができる。さらに流路切換バルブ14bは、サンプルループ16の他端に繋がるポートと流路選択バルブ28に繋がるポートとを接続しながら流路切換バルブ14aに繋がるポートとドレインに繋がるポートとを接続することができる。
【0017】
流路切換バルブ18aは、流路切換バルブ14aに繋がるポート、流路切換バルブ22aに繋がるポート、サンプルループ20の一端に繋がるポート及び流路選択バルブ26を介して濃縮液送液流路1b−1に繋がるポートを備えている。流路切換バルブ18aは流路切換バルブ22aに繋がるポートを流路切換バルブ14aに繋がるポートとサンプルループ20の一端に繋がるポートとの間で切り換えて接続することができ、流路切換バルブ22aに繋がるポートと流路切換バルブ14aに繋がるポートとを接続しているときは、サンプルループ20の一端に繋がるポートと流路選択バルブ26を介して濃縮液送液流路1b−1に繋がるポートとを接続する。
【0018】
流路切換バルブ18bは、サンプルループ20の他端に繋がるポート、流路選択バルブ28を介して流路切換バルブ44に繋がるポート及びドレインに繋がるポートを備えている。流路切換バルブ18bは、サンプルループ20の他端に繋がるポートを、流路選択バルブ28を介して流路切換バルブ44に繋がるポートとドレインに繋がるポートとの間で切り換えて接続することができる。
【0019】
流路切換バルブ22aは、1次元目分析流路1aの下流端に繋がるポート、流路切換バルブ18aに繋がるポート、サンプルループ24の一端に繋がるポート及び流路選択バルブ26を介して濃縮液送液流路1b−1に繋がるポートを備えている。流路切換バルブ22aは1次元目分析流路1aの下流端に繋がるポートを流路切換バルブ18aに繋がるポートとサンプルループ24の一端に繋がるポートとの間で切り換えて接続することができ、1次元目分析流路1aの下流端に繋がるポートと流路切換バルブ18aに繋がるポートとを接続しているときはサンプルループ24の一端に繋がるポートと流路選択バルブ26を介して濃縮液送液流路1b−1に繋がるポートとを接続する。
【0020】
流路切換バルブ22bは、サンプルループ24の他端に繋がるポート、流路選択バルブ28を介して流路切換バルブ44に繋がるポート及びドレインに繋がるポートを備えている。流路切換バルブ22bは、サンプルループ24の他端に繋がるポートを、流路選択バルブ28を介して流路切換バルブ44に繋がるポートとドレインに繋がるポートとの間で切り換えて接続することができる。
【0021】
流路切換バルブ44は、流路選択バルブ28を介して流路切換バルブ14b,18b,22bに繋がるポート、トラップカラム流路1dの上流端と下流端にそれぞれ繋がるポート、2次元目移動相送液流路1c−1に繋がるポート、濃縮試料分析流路1c−2に繋がるポート及びドレインに繋がるポートを備えている。流路切換バルブ44は、トラップカラム流路1dの上流端に繋がるポートを、流路選択バルブ28を介して流路切換バルブ14b,18b,22bに繋がるポートと2次元目移動相送液流路1c−1に繋がるポートとの間で切り換えて接続することができる。流路切換バルブ44は、トラップカラム流路1dの上流端に繋がるポートと流路選択バルブ28を介して流路切換バルブ14b,18b,22bに繋がるポートとを接続しているときはトラップカラム流路1dの下流端に繋がるポートとドレインに繋がるポートとを接続し、トラップカラム流路1dの上流端に繋がるポートと2次元目移動相送液流路1c−1に繋がるポートとを接続しているときはトラップカラム流路1dの下流端に繋がるポートと濃縮試料分析流路1c−2に繋がるポートとを接続する。
【0022】
希釈液送液流路1b−2は流路選択バルブ28と流路切換バルブ44の間の流路に合流している。
【0023】
以上の構成により、この実施例の液体クロマトグラフは流路選択バルブ26,28と流路切換バルブ14a,14b,18a,18b,22a,22b,44による接続流路の切換えによって、分画流路、非分画流路、濃縮流路、2次元目分析流路を構成することができる。流路切換バルブ14a,14b,18a,18b,22a,22bは1次元目分析流路1aとサンプルループ16,20,24の接続を切り換えるとともに、各サンプルループ16,20,24の濃縮流路への接続を切り換える第1の切換え機構を構成し、流路切換バルブ44はトラップカラム流路1dの濃縮流路と2次元目分析流路への接続を切り換える第2の切換え機構を構成する。
【0024】
以下に、流路選択バルブ26,28と流路切換バルブ14a,14b,18a,18b,22a,22b,44による接続流路の切換えにより構成される流路について説明する。
【0025】
流路切換バルブ22aを1次元目分析流路1aの下流端に繋がるポートと流路切換バルブ18aに繋がるポートとが接続された状態にし、流路切換バルブ18aを流路切換バルブ22aに繋がるポートと流路切換バルブ14aに繋がるポートとが接続された状態にし、流路切換バルブ14aを流路切換バルブ18aに繋がるポートと流路切換バルブ14bに繋がるポートとが接続された状態にし、流路切換バルブ14bを流路切換バルブ14aに繋がるポートとドレインに繋がるポートとが接続された状態にすることにより、図2の太線で示された非分画流路が構成される。非分画流路では、1次元目分析流路1aからの液体をどのサンプルループ16,20,24を通過させることなくドレインから排出することができる。
【0026】
流路切換バルブ22aを1次元目分析流路1aの下流端に繋がるポートと流路切換バルブ18aに繋がるポートとが接続された状態にし、流路切換バルブ18aを流路切換バルブ22aに繋がるポートと流路切換バルブ14aに繋がるポートとが接続された状態にし、流路切換バルブ14aを流路切換バルブ18aに繋がるポートとサンプルループ16の一端に繋がるポートとが接続された状態にし、流路切換バルブ14bをサンプルループ16の他端に繋がるポートとドレインに繋がるポートとが接続された状態にすることにより、溶出液をサンプルループ16内に保持するための分画流路が構成される。
【0027】
なお、流路切換バルブ22aは上記の状態で、流路切換バルブ18aを流路切換バルブ22aに繋がるポートとサンプルループ20の一端に繋がるポートとが接続された状態にし、流路切換バルブ18bをサンプルループ20の他端に繋がるポートとドレインに繋がるポートとが接続された状態にすれば、溶出液をサンプルループ20内に保持するための分画流路が構成される。また、流路切換バルブ22aを1次元目分析流路1aの下流端に繋がるポートとサンプルループ24の一端に繋がるポートとが接続された状態にし、流路切換バルブ22bをサンプルループ24の他端に繋がるポートとドレインに繋がるポートとが接続された状態にすれば、溶出液をサンプルループ24内に保持するための分画流路が構成される。
【0028】
流路選択バルブ26,28を流路切換バルブ14a,14b側に切り換え、流路切換バルブ14aを濃縮液送液流路1b−1に繋がるポートとサンプルループ16の一端に繋がるポートとが接続された状態にし、流路切換バルブ14bをサンプルループ16の他端に繋がるポートと流路切換バルブ44に繋がるポートとが接続された状態にし、流路切換バルブ44を流路切換バルブ14に繋がるポートとトラップカラム流路1dの上流端に繋がるポートとが接続された状態にすれば、サンプルループ16内に滞留した分析対象成分を含む溶出液を濃縮液によってトラップカラム46に搬送して濃縮するための濃縮流路が構成される。このとき、流路切換バルブ14aにおいて流路切換バルブ18aに繋がるポートと流路切換バルブ14bに繋がるポートとが接続されているので、非分画流路を同時に構成することも可能である。また、流路切換バルブ18a,18b又は流路切換バルブ22a,22bを切り換えて、サンプルループ20又は24を用いて分析対象成分を分画するための分画流路を上記の濃縮流路と同時に構成することも可能である。
【0029】
同様に、流路選択バルブ26,28を流路切換バルブ18a,18b側、又は流路切換バルブ22a,22b側に切り換え、その選択された流路切換バルブ18a又は22aを濃縮液送液流路1b−1に繋がるポートとサンプルループ20又は24の一端に繋がるポートとが接続された状態にし、それに対応して流路切換バルブ18b又は22bをサンプルループ20又は24の他端に繋がるポートと流路切換バルブ44に繋がるポートとが接続された状態にし、流路切換バルブ44を流路切換バルブ14に繋がるポートとトラップカラム流路1dの上流端に繋がるポートとが接続された状態にすれば、サンプルループ20や24内に滞留した分析対象成分を濃縮するための濃縮流路が構成される。このときも、非分画流路や分画流路をその濃縮流路と同時に構成することができる。
【0030】
流路切換バルブ44を、2次元目移動相送液流路1c−1に繋がるポートとトラップカラム流路1dの上流端に繋がるポートとが接続され、トラップカラム流路1dの下流端に繋がるポートと濃縮試料分析流路1c−2に繋がるポートとが接続された状態にすることで、トラップカラム46に捕捉された分析対象成分を2次元目移動相によって2次元目分析カラム48に導いて分析するための2次元目分析流路が構成される。このとき、非分画流路又は各サンプルループ16,20,24への分析対象成分の分画を行なう分画流路を同時に構成することができる。
【0031】
次に、この液体クロマトグラフにおける分析の手順を図2〜図10を用いて説明する。
オートサンプラなどによって試料注入部8に注入された試料は1次元目移動相とともに1次元目分析カラム10に移送されて分離され、分離された分析対象成分が検出器12で検出される。検出器12で分析対象成分が検出されるまでは、図2において太線で示されているように、非分画流路を構成して1次元目分析流路1aからの移動相をドレインから排出しながら分析対象成分が確認されるまで待機する。
【0032】
検出器12で分析対象成分が検出されたときは、図3において太線で示されているように、検出器12で検出された分析対象成分を含む溶出液をサンプルループ16側に送る分画流路を構成し、サンプルループ16内にその溶出液を滞留させる。なお、ここでは最初に検出された分析対象成分をサンプルループ16内に滞留させているが、サンプルループ20内又はサンプルループ24内に滞留させてもよい。
【0033】
1つの分析対象成分を分画した後は、図4において最太線で示されているように、サンプルループ16内の分析対象成分を含む溶出液をトラップカラム46に送る濃縮流路を構成し、ポンプ32を駆動してサンプルループ16内の分析対象成分を含む溶出液をトラップカラム46に導く。このとき、ポンプ36を駆動して希釈液送液流路1b−2から希釈液を濃縮流路に供給することにより、トラップカラム46に導かれる分析対象成分を含む溶出液が希釈され、トラップカラム46による分析対象成分の捕捉が促される。
【0034】
図4や図5において最太線よりやや細い太線で示されているように、上記の濃縮作業中も非分画流路(図4)又は分画流路(図5)が構成されているので、1次元目分析流路1aで1次元目分析を続行して、新たな分析対象成分が確認されたときはその分析対象成分をサンプルループ20内に滞留させて分画することができる。濃縮作業中にさらに新たな分析対象成分が確認されたときは、図8において最太線よりやや細い太線で示されているように、その分析対象成分を含む溶出液をサンプルループ24側に送る分画流路を構成してサンプルループ24内に滞留させることができる。
【0035】
分析対象成分の濃縮作業が終了した後は、ポンプ32,36を停止して濃縮液、希釈液の送液を停止し、図6又は図7において最太線で示されているように、2次元目分析流路を構成して2次元目分析を開始する。ポンプ40a,40bを駆動して二次元目移動相を2次元目分析流路中で流し、トラップカラム46に捕捉されていた分析対象成分を2次元目移動相によって溶出させて2次元目分析カラム48に導く。2次元目分析カラム48に導かれた分析対象成分はさらに分離されて2次元目検出器50に導かれる。
【0036】
この2次元目分析中も1次元目分析流路1aで1次元目分析を続行することができ、図6,図7において最太線よりやや細い太線で示されているように、新たな分析対象成分の分画作業を行なうことができる。
【0037】
分析対象成分の2次元目分析が終了した後は、ポンプ40a,40bを停止して2次元目移動相の送液を停止し、図9又は図10において最太線で示されているように、次のサンプルループ(ここではサンプルループ20)に保持された分析対象成分の濃縮作業を行なう濃縮流路を構成する。この場合も、サンプルループ16内に保持した分析対象成分の濃縮作業時と同様に、サンプルループ20や24内に保持した分析対象成分の濃縮作業時も1次元目分析を続行して新たな分析対象成分の分画作業を行なうことができる。空になったサンプルループ16は、図10において最太線よりやや細い太線で示されているように、新たに検出された分析対象成分を滞留させることができる。
【0038】
以上、説明したように、この実施例の液体クロマトグラフは、複数のサンプルループ16,20,24を備え、1つのサンプルループで保持した分析対象成分の濃縮作業又は2次元目分析を行なっている間に他のサンプルループを用いて新たな分析対象成分の分画を行なうことができるので、分析全体にかかる時間を短縮することができる。
【0039】
従来のように、全ての分析対象成分の分画作業が終了するまで濃縮作業を開始しないとすると、サンプルループ内に保持された分解しやすい成分は濃縮作業が開始されるまでの間に分解されてしまうことがあった。しかし、この実施例では、1つの分析対象成分をサンプルループで保持した後、即座にその分析対象成分の濃縮作業を行なうことができるので、分析対象成分がサンプルループ内に保持された状態で待機する時間が短縮され、分析対象成分が分解される前に濃縮と2次元目分析を行なうことが可能になる。
【0040】
なお、以上説明した液体クロマトグラフにおいて、試料保持部として3つのサンプルループ16,20,24を設けているが、2つ又は4つ以上のサンプルループを試料保持部として設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】一実施例の液体クロマトグラフの構成を概略的に示す流路構成図である。
【図2】同実施例の液体クロマトグラフにおいて、非分画流路が構成されたときの状態を示す流路構成図である。
【図3】同実施例の液体クロマトグラフにおいて、分画流路が構成されたときの状態を示す流路構成図である。
【図4】同実施例の液体クロマトグラフにおいて、濃縮流路と非分画流路が構成されたときの状態を示す流路構成図である。
【図5】同実施例の液体クロマトグラフにおいて、濃縮流路と分画流路が構成されたときの状態を示す流路構成図である。
【図6】同実施例の液体クロマトグラフにおいて、2次元目分析流路と分画流路が構成されたときの状態を示す流路構成図である。
【図7】同実施例の液体クロマトグラフにおいて、2次元目分析流路と非分画流路が構成されたときの状態を示す流路構成図である。
【図8】同実施例の液体クロマトグラフにおいて、濃縮流路と分画流路が構成されたときの状態を示す流路構成図である。
【図9】同実施例の液体クロマトグラフにおいて、濃縮流路と非分画流路が構成されたときの状態を示す流路構成図である。
【図10】同実施例の液体クロマトグラフにおいて、濃縮流路と分画流路が構成されたときの状態を示す流路構成図である。
【符号の説明】
【0042】
1a 1次元目分析流路
1b−1 濃縮液送液流路
1b−2 希釈液送液流路
1c−1 2次元目移動相送液流路
1c−2 濃縮試料分析流路
1d トラップカラム流路
2a,2b 1次元目移動相
4a,4b,32,36,40a,40b 送液ポンプ
6,42 ミキサ
8 試料注入部
10 1次元目分析カラム
12 1次元目検出器
14a,14b,18a,18b,22a,22b,44 流路切換バルブ
16,20,24 サンプルループ
26,28 流路選択バルブ
30 濃縮液
34 希釈液
38a,38b 2次元目移動相
46 トラップカラム
48 2次元目分析カラム
50 2次元目検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次元目移動相を送液する1次元目送液機構、1次元目移動相とともに移送される試料を分離する1次元目分析カラム及び前記1次元目分析カラムで分離された各成分を検出するための1次元目検出器を備えた1次元目分析流路と、
前記1次元目分析流路の下流側に配置され、前記1次元目分析カラムで分離された分析対象成分を含む溶出液を保持することができる少なくとも2つの試料保持部と、
前記試料保持部に保持された分析対象成分を含む溶出液を搬送するための濃縮液を送液する濃縮液送液部及び前記濃縮液によって搬送される溶出液から分析対象成分を捕捉する濃縮カラムを備えた濃縮流路と、
前記濃縮カラムに捕捉された分析対象成分を溶出させて移送するための2次元目移動相を送液する2次元目移動相送液部、前記2次元目移動相とともに移送される分析対象成分をさらに分離するための2次元目分析カラム及び前記2次元目分析カラムの下流側に設けられた2次元目検出器を備えた2次元目分析流路と、
前記試料保持部の1つを前記1次元目分析流路に接続し、前記1次元目分析流路の接続されていない試料保持部を前記濃縮流路の濃縮液送液部と濃縮カラムの間に接続するとともに、それらの接続を切り換えることのできる第1の切換え機構と、
前記濃縮カラムを前記2次元目分析流路の2次元目移動相送液部と2次元目分析カラムの間の位置と前記濃縮流路中の位置との間で切り換えて接続する第2の切換え機構と、を備えている液体クロマトグラフ。
【請求項2】
前記試料保持部は3つ以上設けられており、第1の切換え機構は各試料保持部を別々のタイミングで前記1次元目分析流路に接続する請求項1に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項3】
前記濃縮流路には前記試料保持部と前記濃縮カラムとの間に濃縮カラムでの分析対象成分の捕捉を促す希釈液を供給する希釈液送液流路がさらに接続されている請求項1又は2に記載の液体クロマトグラフ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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