説明

液体ゴムに基づく結合剤およびシーラント

天然および/または合成のオレフィン性の二重結合したエラストマーおよび加硫剤に基づく高温硬化性反応性組成物であって、400〜80,000の分子量を有する少なくとも1つの液体ポリエン、ならびに、狭い分子量分布および分子中に10〜20%のビニル-1,2 二重結合、50〜60%のtrans-1,4 二重結合、および25〜35%のcis-1,4 二重結合の微細構造を有する少なくとも1つの液体ポリブタジエンを含有する組成物が記載されている。また、これらの組成物は、イオウおよび促進剤および/または必要であればキノンオキシムからなる加硫系を含有する。これらの引張剪断強度および剥離強度のゆえに、これらの組成物は、特に低温での自動車製造における単一成分の結合剤、シーラントまたは被覆物質として使用するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン性二重結合を含む天然および/または合成エラストマーならびに加硫剤に基づく単一成分の高温硬化性反応性組成物、ならびに、車両製造、特に自動車車体製造における単一成分の接着剤、シーラント、封止コンパウンドまたは被覆コンパウンドとしての該組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
機械工学において、および車両または機械製造において、特に航空機、鉄道車両または自動車の製造において、種々の金属成分から構成される成分および/または複合材料が、接着剤の助けを借りて結合されることが増えている。構造接着結合のために、接着結合の強度に厳格な要求が適用される。自動車車体製造において適用するために現在使用されている、高強度を有し、それと同時に強靱、耐剥離性および耐衝撃剥離性である接着剤は、現時点では主に、エポキシおよびエラストマー修飾したエポキシまたはアクリレートに基づいて知られている。
【0003】
車体製造のためのクリンプ加工継目の接着結合または重なり接着結合のために、これらの高温硬化性の反応性接着剤(ホットメルト接着剤として配合されることも多い)は、油で覆われた金属板に適用され、一緒に結合される。ここで使用された接着剤またはシーラントの硬化は、ペイント乾燥オーブン中で後に行われる。その前に、接着結合されたかまたは封止された部品は、洗浄、リン酸塩処理、および浸漬プライマー処理操作に通される。接着剤またはシーラントまたは封止剤は、これらの操作において使用される処理剤によって結合すき間から濯ぎ落とされうる。これを防止するために、接着剤、シーラントまたは封止剤は、予備硬化メカニズムによって、例えば、誘導加熱炉、車体オーブン、または赤外線照射によって予備硬化されるか、またはそのレオロジーが、洗い落とされることなく後の前処理に耐えるように適切に調節される。さらに、スポット溶接を適用して車体部品を強化することができる。接着剤の硬化は、下流のペイントオーブン(KTL陰極被覆、充填剤、トップコートペイントなどのためのもの)を通過するときに起こる。
【0004】
欧州特許出願公開EP-A-0308664は、ブタジエン-アクリロニトリルまたは同様のブタジエンコポリマーに基づくカルボキシル基含有コポリマーのエポキシ付加物ならびにエラストマー性プレポリマー(エポキシ樹脂に可溶性または分散性であり、末端イソシアネート基を有する)とポリフェノールまたはアミノフェノールとの反応生成物を含有するエポキシ樹脂組成物およびその後の該付加物とエポキシ樹脂との反応を開示している。さらに、これらの組成物は、1つまたはそれ以上のエポキシ樹脂を含有することができる。さらに、アミノ官能性硬化剤、ポリアミノアミド、ポリフェノール、ポリカルボン酸およびその無水物、または触媒性硬化剤、および適用可能であれば促進剤が、これら組成物の硬化のために提案されている。これらの組成物は、特定の組成物に依存して、高強度、高いガラス転移温度、高い剥離強度、高い強靱性、または高い耐亀裂生長性を示すことができる接着剤として適することが示されている。
【0005】
欧州特許出願公開EP-A-338985は、ブタジエン、極性エチレン性不飽和コモノマーおよび適用可能であればさらなるエチレン性不飽和コモノマーに基づく液体コポリマーを含有し、さらに、ジヒドロキシ末端またはジアミノ末端のポリアルキレングリコールおよびジイソシアネートならびにモノフェノール、メルカプトアルコールまたは脂肪族ラクタムから導かれる反応生成物を含有する修飾エポキシ樹脂を記載している。この文献の教示によれば、これらの組成物を用いてエポキシ樹脂を柔軟化することができる。上記した成分に加えて、これらの組成物は、エポキシ樹脂および硬化剤または促進剤を含有するとも記載されている。この種の混合物は、接着剤、接着フィルム、パッチ、マトリックス樹脂、ペイントまたは封止コンパウンドとして使用可能であると記載されている。
【0006】
国際公開WO01/94492は、エポキシ樹脂組成物のための合成成分として、ジカルボン酸の環式無水カルボン酸、無水トリカルボン酸または無水テトラカルボン酸および2官能ポリアミン(特にポリオキシアルキレンアミン)の縮合生成物を記載している。この無水トリカルボン酸または無水テトラカルボン酸に基づく縮合生成物には、分子あたりに平均して1つを超えるイミド基およびカルボキシル基が存在する。適用可能であれば、3官能または多官能ポリオールおよび/または3官能または多官能アミノ末端ポリマーおよび環式無水カルボン酸の縮合生成物を、組成物中に含有させることもできる。さらに、これらの組成物は、通常のゴム修飾したエポキシ樹脂ならびに液体および/または固体のポリエポキシ樹脂および通常の硬化剤および促進剤および所望により充填剤およびレオロジー補助剤を含有する。これらの修飾エポキシ樹脂組成物を、車両製造および電子機器における耐衝撃性、耐衝撃剥離性および耐剥離性の接着剤として使用することが提案されている。これは、特に、これらが非常に低い温度で非常に良好な衝撃および剥離特性を示し、接着結合の非常に良好な耐腐食性および耐老化性を確実にするためである。
【0007】
日本特許出願公開JP2000-313786Aは、成分Aとして(メタ)アクリレートポリマーおよび成分Bとしてエラストマー修飾したアクリレート樹脂を含有する耐衝撃性のアクリル樹脂組成物を記載している。成分Bは、分散相として平均粒度0.2〜10μmの粒状物質として存在し、成分Aの連続相によって囲まれている。成分Aの体積/成分Bの体積の比は0.5〜4であり、成分Aの少なくとも一部は、成分Bの一部に化学結合している。これらの樹脂組成物は、改善された耐衝撃性を示し、それと同時に良好な耐老化性を有することが示されている。
【0008】
同様に、日本特許出願公開JP2000-319475Aは、(メタ)アクリレートコポリマー成分Aおよび修飾ポリウレタンエラストマー成分Bからなる耐衝撃性の樹脂組成物を記載している。ここで、ポリウレタンエラストマー成分Bは、連続相A中の不連続分散相として存在し、分散相はミクロ相分離の構造を示す。ここでも、成分Aの少なくとも一部は、成分Bの一部に化学結合している。アクリレートシロップCを、その上に剪断下に重合させて、相分離が続くようにすることが提案されている。これらの樹脂組成物は、耐老化性および耐候性を損なうことなく、改善された耐衝撃性を示すと言及されている。
【0009】
欧州特許出願公開EP0270318A2は、構造接着剤として使用するための修飾された組成物を記載している。これらの接着剤組成物は、モノイソシアネート成分と反応させた、オレフィン性不飽和末端基を含む液体ゴムを含有する。これらの液体エラストマーの製造のために、カルボキシル末端のポリブタジエンまたはポリブタジエン-アクリロニトリルまたはポリブタジエン-メタクリロニトリル-スチレンコポリマーをメタクリル酸グリシジルと反応させ、次いで、得られた第二ヒドロキシル基を、モノイソシアネート化合物と反応させることが提案されている。次いで、このように修飾したオレフィン末端基を有する液体エラストマーを、アクリル酸エステル、アクリル酸、スチレン、置換スチレンから選択されるオレフィン性不飽和モノマー、およびフリーラジカル開始剤と混合して、室温硬化性の構造接着剤を得る。この種の接着剤組成物は、アクリレートモノマーに基づく他の構造接着剤と比較して、改善された耐老化性および改善された低温特性を示すと言及されている。
【0010】
国際公開WO02/070619は、高い破断点伸びを有する弾性(メタ)アクリレート接着剤組成物を記載している。この文献によれば、この接着剤組成物は、少なくとも1つの1官能(メタ)アクリレートモノマーA(そのホモポリマーまたはコポリマーは40〜140℃のガラス転移温度を示す)を含有すると言及されている。また、この組成物は、以下の構造を有する1官能(メタ)アクリレートモノマーBを含有すると言及されている:
【化1】

ここで、Rは水素またはメチル基であり、R'は水素またはC1〜C3アルキル、特に水素またはエチルであり、R''はC3〜C20アルキル基またはフェノキシ基またはアルコキシ基である。(メタ)アクリレート基を含む分子量範囲が1000〜9000のエラストマーが、さらなる成分として、組成物中に存在すると言及されている。この文献は、それに開示される組成物が、異なる熱膨張係数を有する材料、例えば車両工業において使用される材料の接着結合に特に適すると言及している。トレーラーのサイドパネルの接着結合またはガラスの直接取付けが、例として挙げられている。これらの組成物は、低温において非常に高い耐衝撃性を示すと言及されている。
【0011】
上記したエポキシまたは(メタ)アクリレートに基づく接着剤の欠点は、以下の通りである:
・高い原料コスト;
・産業衛生標示の必要性(通常はXi);
・制限された油吸収;
・不十分な腐食保護;
・不十分な耐老化性。
【0012】
また、ゴムに基づく高強度接着剤も開示されている。
国際公開WO96/23040は、液体ゴム(適用可能であれば、部分的に官能基を含むこともできる)、固体ゴム、熱可塑性ポリマー粉末およびイオウならびに加硫促進剤剤に基づく単一成分の高温硬化性構造接着剤を記載している。これらの接着剤は、金属部品の接着結合に適している。15MPaを超える引張剪断強度を、15%を超える高い破断点伸びと共に得ることができる。これらの接着剤は、実質的に低分子量エポキシ樹脂を含まず、特に、自動車工業における車体製造において使用するのに適している。
【0013】
国際公開WO99/03946は、ASTM D28に従う環球法で測定して50℃以上の軟化点を有する少なくとも1つの固体EVAコポリマー、オレフィン性不飽和二重結合を有する少なくとも1つの液体反応性可塑剤、および少なくとも1つの過酸化物架橋剤を含有する、エチレン-酢酸ビニル(EVA)コポリマーに基づく熱ポンプ輸送可能な高温硬化性コンパウンドを開示している。この文献に示されているように、これらのコンパウンドは、自動車製造における微細なおよび粗い継目のための封止剤として適している。発泡剤の添加により、これらを下塗り接着剤として使用することもできる。好ましい使用分野は、自動車製造における車体製造においてである。
【0014】
国際公開WO02/48252は、天然および/または合成エラストマー(これは液体ポリエンに基づき、オレフィン性二重結合を有する)、および固体ゴム(適用可能であれば)に基づく高温硬化性反応性組成物を開示している。加硫系は、イオウおよび/または金属酸化物および1つまたはそれ以上の有機促進剤(環中に少なくとも2個の窒素原子を含む1つまたはそれ以上の複素環式化合物を含有する)からなる。これらの組成物は、臭気放出を回避または大きく減少させながら、イオウおよびイオウ化合物によって加硫することができる。この文献は、これらの組成物が、特に自動車工学において、接着剤、シーラントまたは被覆コンパウンドとして適すると言及している。
【0015】
国際公開WO02/48255は、通常の液体ポリエンに加えて、少なくとも1つの液体cis-1,4-ポリイソプレン(20,000〜70,000の分子量を有する)ならびにイオウ、促進剤およびキノンオキシムからなる加硫系を含有する、オレフィン性二重結合を含む天然および/または合成の液体エラストマーならびに加硫剤に基づく高温硬化性反応性組成物を開示している。これらの接着剤は、プラスチゾル様の流れ挙動を示すので、通常の噴霧装置を用いて室温で適用することができる。これらの組成物は、継目シーリングおよび封止コンパウンドとして、下塗り接着剤として、構造接着剤として、例えばクリンプ加工継目接着剤として適すると言及されている。
【0016】
上記した当分野で既存のゴムに基づく高強度接着剤は、低温での特性の点で改善が必要である。特に、これらは、低温において弾性特性および衝撃-強靱特性を示さない。これは、恐らくは高度の架橋の結果として、これらが低温で脆くなりすぎるためであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の目的は、自動車車体製造における適用のために使用することができ、かつ実質的な構成成分としてエポキシ樹脂または(メタ)アクリレート樹脂を含有せず、高価な特別のポリマーまたはコポリマーを使用することのない、高強度かつ同時に衝撃-強靱性の接着剤を利用可能にすることであった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明がこの目的を達成する方法は、特許請求の範囲から明らかである。実質的に、それは、オレフィン性二重結合を含む天然および/または合成エラストマーならびに加硫剤に基づく単一成分の高温硬化性反応性組成物であって、
(a)400〜80,000、好ましくは800〜25,000の分子量を有する少なくとも1つの液体ポリエン;
(b)微細構造として10〜20%のビニル-1,2、50〜60%のtrans-1,4、および25〜35%のcis-1,4 二重結合を有する少なくとも1つの液体ポリブタジエン;および
(c)イオウおよび促進剤および/または適用可能であればキノンオキシムからなる加硫系;
を含有する組成物を利用可能にすることからなる。
ここで「液体」とは、「室温(22℃)で液体」と解される。
【0019】
本発明のさらなる対象は、自動車車体製造における単一成分の接着剤、シーラント、被覆コンパウンドまたは封止コンパウンドとしての、上記した高温硬化性反応性組成物の使用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
液体ポリエンまたはエラストマー(a)は、分子あたりに少なくとも1つのオレフィン性不飽和二重結合を含んでいる。これらは、以下のホモポリマーおよび/またはコポリマーの群から選択することができる:
ポリブタジエン、特に1,3-および1,2-ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1,4-および3,4-ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンコポリマー、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー。ここで、1つまたはそれ以上のこれらポリマーは、末端および/または(統計的に分布した)側鎖官能基を有することができる。このような官能基の例は、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシル、無水カルボン酸、またはエポキシ基である。これら液体ゴムの分子量は、通常は80,000以下および400以上、好ましくは800〜25,000である。全組成物中の液体ゴムの割合は、未硬化組成物の所望のレオロジーおよび複合体の所望の機械的剛性または強度、および適用可能であれば硬化した組成物の音響減衰特性に依存する。液体ゴムまたはエラストマーの割合は、通常は全配合物の2〜55重量%の間で変化する。ここで、好ましくは、異なる分子量および異なる配置(残存二重結合に関して)の液体ゴムの混合物を使用するのが有利であることがわかった。さらに、ブロックコポリマーおよびコモノマーの統計的分布を有するコポリマーの両方を、コポリマーとして使用することができる。種々の基材における最適接着を達成するために、特に好ましい配合物において、ある割合のヒドロキシル基、カルボキシル基または酸無水基を含む液体ゴム成分を使用する。カルボキシル基含有液体ゴムの割合は、0〜25重量%、好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは3〜10重量%であってよい。
【0021】
本発明の組成物の必須成分は、アニオン重合によって製造することができる液体ポリブタジエン、好ましくは、狭い分子量分布を有する液体ポリブタジエンである。これらの低分子量液体ポリブタジエンは、ポリマー鎖中に3種類の構造、即ち、ビニル-1,2 二重結合、cis-1,4 二重結合、およびtrans-1,4 二重結合を含み、これらの液体ポリマーは、その微細構造中に、10〜20%のビニル-1,2 二重結合、50〜60%のtrans-1,4 二重結合、および25〜35%のcis-1,4 二重結合を含んでなる。これら液体ブタジエンの分子量は、2,000〜12,000、好ましくは5,000〜9,000である(算術平均分子量)。その狭い分子量分布のゆえに、これらは、25℃で非常に低い粘度3〜15Pasを有する。これらは、適用可能であればアニオン重合に依存して、分子あたりに1つまたはそれ以上の末端のあるいは1つまたはそれ以上の統計的分布したヒドロキシル基を含むことができる。また、これらのポリマーは、1つまたは2つの末端のあるいは1つまたはそれ以上の統計的分布したカルボキシル基を含むこともできる。これらの狭い分子量分布を有する液体ポリブタジエンを使用する利点は、粘度が低いにもかかわらず、通常の液体ポリブタジエンと比較して分子量が高いことである。
【0022】
さらに、本発明の接着剤組成物は、ある割合の固体ゴムを含有することもできる。適する固体ゴムは、液体ゴムと比較して、有意に高い分子量を有する(Mw=100,000またはそれ以上)。適するゴムの例は、ポリブタジエン、好ましくはcis-1,4 二重結合の割合が非常に高いポリブタジエン(通常は95%以上)、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエン-アクリロニトリルゴム、合成または天然イソプレンゴム、ポリシクロオクテナマー(polycyclooctenamer)、ブチルゴム、またはポリウレタンゴムである。固体ゴムの割合は、15重量%まで、好ましくは0〜12重量%、特に好ましくは0〜9重量%であってよい。
【0023】
本発明の単一成分の高温硬化性反応性組成物は、イオウおよび促進剤および/または適用可能であればキノンオキシムからなる加硫系をさらに含有する。
【0024】
多数の元素イオウと組合せた加硫剤ならびに遊離イオウを含まない加硫系が、加硫系のために適している。この後者に含まれるのは、チウラムジスルフィド、有機過酸化物、多官能アミン、キノン、p-ベンゾキノンジオキシム、p-ニトロソベンゼン、およびジニトロソベンゼンに基づく加硫系、あるいは、(ブロック化)ジイソシアネートによる架橋である。しかし、元素イオウおよび有機加硫促進剤ならびに亜鉛化合物に基づく加硫系が特に好ましい。粉末イオウは、全組成物を基準に4〜25重量%の量で、特に好ましくは5〜15重量%の量で使用される。適する有機促進剤は、ジチオカルバメート(そのアンモニウム塩または金属塩の形態にある)、キサントゲン酸塩、チウラム化合物(モノスルフィドおよびジスルフィド)、チアゾール化合物、アルデヒド/アミン促進剤(例えば、ヘキサメチレンテトラミン)、およびグアニジン促進剤であり、ジベンゾチアジルスルフィド(MBTS)、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、その亜鉛塩(ZMBT)、ジベンジルジチオカルバミド酸亜鉛(ZBEC)、N-シクロヘキシルベンゾジチアジルスルフェンアミド(CBS)、またはジフェニルグアニジンが特に好ましい。促進剤は、0.25〜8.0重量%、特に好ましくは0.4〜6重量%の量で使用する。接着剤の特に良好な温度および戻り耐性を達成するために、加硫混合物は、2官能架橋剤を含有することもできる。その具体的な例は、2官能ジチオカルバメート、例えば1,6-ビス(N,N-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンなどに基づく架橋剤である。この種の架橋剤は、組成物中に0〜2重量%、好ましくは0〜1重量%の量で含有される。
【0025】
促進剤として作用する亜鉛化合物については、脂肪酸の亜鉛塩、ジチオカルバミド酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、特に微粒状の酸化亜鉛の中から選択することができる。亜鉛化合物の含量は、0.5〜10重量%、好ましくは2〜8重量%の範囲内である。さらに、脂肪酸(例えばステアリン酸)などのさらなる通常のゴム加硫補助剤が、配合物中に存在することもできる。
【0026】
本発明によれば、元素イオウ、上記した有機促進剤およびキノンジオキシムからなる混合加硫系を使用することができる。p-ベンゾキノンジオキシムを例として挙げることができる。しかし、他のキノンジオキシムを、上記したイオウ系と組合せて使用することもできる。また、加硫系はキノンジオキシムだけを含有することもできる。
【0027】
さらに、ゴム混合物のための本発明の組成物は、通常の充填剤、促進剤、架橋剤、例えばイオウおよび/または過酸化物、酸化防止剤、補助活性化剤およびさらなる触媒、カーボンブラック、発泡剤、油、老化保護剤、繊維を含有することができ、所望によりグラファイト、レオロジー補助剤、接着プロモーター、顔料および熱可塑性ポリマーを含有することもできる。
【0028】
本発明の組成物は、微粒状の熱可塑性ポリマー粉末をさらに含有することができる。これらは、−80℃〜50℃の範囲のガラス転移温度を有しているべきである。適する熱可塑性ポリマーの例は、ポリプロピレン、ポリエチレン、熱可塑性ポリウレタン、(メタ)アクリレートコポリマー、スチレンコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ならびに、ポリ酢酸ビニルおよびそのコポリマー、特にエチレン-酢酸ビニル(EVA)である。熱可塑性ポリマー粉末の粒度および粒度分布は、特に重要という訳ではないが、その平均粒度は、1mm未満、好ましくは350μm未満、特に好ましくは100〜20μmであるべきである。熱可塑性ポリマー粉末をさらに使用するときには、全配合物中のその割合は、1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%である。
【0029】
充填剤は、多数の物質から選択することができ、ここで特に挙げられるのは、白亜、天然または粉砕炭酸カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、ケイ酸塩、タルク、重晶石、およびカーボンブラックである。場合により、充填剤の少なくとも一部を表面前処理するのが有用であることもある。種々の炭酸カルシウムまたは白亜の場合には、特に、ステアリン酸による被覆が、硬化した組成物の水分感受性の低下および付着水分の減少のために有用であることがわかった。本発明の組成物は、0〜8重量%、好ましくは1〜6重量%の酸化カルシウムをさらに含有することができる。配合物中の充填剤の合計割合は、10〜80重量%の間で変化することができ、好ましい範囲は20〜65重量%である。
【0030】
通常の安定剤または老化保護剤を使用して、本発明の組成物の熱分解、熱酸化分解またはオゾン関連分解を防止することができる。これらは、例えば立体障害フェノール[例えば、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)]またはアミン誘導体であり、これら安定剤の通常の量範囲は0〜2重量%である。
【0031】
本発明の組成物のレオロジーを、充填剤の選択および低分子量液体ゴムの量比によって所望の範囲にすることができるが、通常のレオロジー補助剤、例えば、熱分解ケイ酸、ベントン、またはフィブリル化もしくはパルプ短繊維を0.1〜7%の範囲内で、さらに水素化ヒマシ油誘導体[例えば、商標名 Rilanit(Cognis company)によって知られる]を添加することができる。さらなる通常の補助剤および添加剤を、本発明の組成物においてさらに使用することもできる。
【0032】
原則的に全ての通常の発泡剤を使用して、硬化過程中の発泡を達成することができるが、アゾ化合物、N-ニトロソ化合物、スルホニルヒドラジド、またはスルホニルセミカルバジドの群からの有機発泡剤が好ましい。本発明に従って使用されるアゾ化合物として挙げられる例は、アゾビスイソブチロニトリル、特にアゾジカーボンアミドである。ニトロソ化合物の群からは、ジニトロソペンタメチレンテトラミンが挙げられ、スルホヒドラジドの群からは、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホン酸ヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホヒドラジドまたはベンゼン-1,3-ジスルホヒドラジドが挙げられ、そして、セミカルバジドの群からは、p-トルエンスルホニルセミカルバジドが挙げられる。
【0033】
上記した発泡剤を、低沸点有機液体で含浸または充填されたいわゆる発泡性微小球、即ち、未発泡の熱可塑性ポリマー粉末で置換することもできる。この種の微小球は、例えば、欧州特許出願公開EP-A-559254、EP-A-586541またはEP-A-594598に記載されている。好ましくはないが、既に発泡した微小球を使用または追加で使用することもできる。適用可能であれば、これらの発泡性/発泡した微小球を、上記した「化学的」発泡剤と任意の量比で組合せることもできる。この化学的発泡剤は、発泡性組成物において、0.1〜3重量%、好ましくは0.2〜2重量%の量で、微小球は0.1〜4重量%、好ましくは0.2〜2重量%の量で使用される。
【0034】
通常、本発明の組成物は、好ましい含量の官能基を含む液体ゴムのゆえに、既に非常に良好な基材への接着を有するが、必要なら、粘着付与剤および/または接着プロモーターを添加することができる。この目的に適するのは、例えば、炭化水素樹脂、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、またはこれらの誘導体、修飾もしくは未修飾の樹脂酸またはエステル(アビエチン酸誘導体)、ポリアミン、ポリアミノアミド、無水物、および無水物含有コポリマーである。少量でのポリエポキシ樹脂の添加も、多くの基材への接着を改善することができる。しかし、このためには、分子量が700を超える固体エポキシ樹脂を、微細粉砕した形態で使用するのが好ましい。粘着付与剤または接着プロモーターを使用するときには、その性質および量は、ポリマー組成物および該組成物が適用される基材に依存する。通常の粘着付与樹脂(粘着付与剤)、例えば、テルペンフェノール樹脂または樹脂酸誘導体は、5〜20重量%の濃度で使用され、通常の接着プロモーター、例えば、ポリアミン、ポリアミノアミド、フェノール樹脂またはレゾルシノール誘導体は、0.1〜10重量%の範囲で使用される。
【0035】
本発明の組成物は、好ましくは、可塑剤およびエキステンダー油を含まない。しかし、いわゆるエキステンダー油、即ち、脂肪族、芳香族、またはナフテン油を添加することによって、未硬化組成物のレオロジーおよび/または硬化した組成物の機械的特性に影響を与えることが必要になることもある。この影響を、好ましくは、低分子量液体ゴムの適切な選択によって、あるいは、低分子量のポリブテンまたはポリイソブチレンの同時使用によって行う。エキステンダー油を使用するときには、2〜15重量%の範囲の量を使用する。
【0036】
高強度、耐衝撃剥離性および耐剥離性のゴム混合物を達成するために、本発明の組成物は、好ましくは、以下の成分を含有する(表示は重量%):
【表1】

【0037】
さらに、上記したように、さらなる充填剤、例えば、グラファイト、繊維、タルク、ケイ酸塩、粘土、さらなる通常の促進剤、架橋剤、例えば過酸化物、他の酸化防止剤、補助活性化剤、およびさらなる触媒、発泡剤、油、および老化保護剤を、追加で使用することができる。適用可能であれば、レオロジー補助剤、接着プロモーター、顔料、および熱可塑性ポリマーを、組成物中に含有させることもできる。組成物の構成成分の合計は、それぞれ100%である。
【0038】
高温耐性の反応性の単一成分接着剤を、これまで既知のゴムに基づく接着剤と同様に、車体製造において、例えば、クリンプ加工継目接着結合または重なり接着結合のために使用することができる。これらを、油で覆われたパネルに、例えば、自動車車体製造において使用されるパネルに適用することができ、次いで、成分を結合する。原則として、本発明の組成物は、予備硬化メカニズム、例えば、予備硬化のための誘導ヒーター、車体オーブン、またはIR照射器を必要としない。これは、本組成物が、これまで既知のゴム組成物と同様に洗浄機耐性であるためである。本組成物は、これまで既知のゴム組成物と比較して、非常に高い弾性を示し、接着結合における衝撃剥離エネルギーまたは衝撃剥離仕事の形態の高エネルギーを吸収することができる。特に、本発明のゴム組成物は、硬化した状態で非常に良好な衝撃剥離特性を示す。これらの特性は望ましいものであり、構造的に接着結合した成分は、事故の場合であっても最新の自動車安全性要件を満たす(圧壊挙動)。本発明の組成物は、高価な特別のポリマーまたはコポリマーを使用せずに配合することができるので、特に経済的に製造することができる。
【0039】
本発明の組成物は、高い剪断作用を有する混合装置において、既知のように製造することができる。これらには、例えば、混練機、遊星形ミキサー、内部ミキサー、いわゆるバンバリーミキサー、および当業者に既知の同様の混合装置が含まれる。
【実施例】
【0040】
以下に挙げる例示の態様は、本発明のさらなる説明を意図するものであり、これら実施例の選択は、本発明の対象の範囲の限定を意図するものではない。
【0041】
以下に記載する接着剤組成物を、真空可能な実験室混練機において、各成分を混合することによって製造した。
【表2】



















【0042】
【表3】

【0043】
【表4】








【0044】
【表5】

【0045】
上記した実施例1〜4のゴム組成物を用いて、引張剪断強度(接着結合寸法 25×12.5×0.2mm)および衝撃剥離エネルギーを測定するために、鋼板から試験物品を調製した。接着剤混合物を硬化させるために、試験物品を、再循環乾燥オーブン中、180℃で30分間硬化させた。室温での引張剪断強度ならびに室温および−30℃での衝撃剥離エネルギー(ISO 11343)の測定結果を、以下の表に挙げる:

【表6】

【0046】
上記した表中の引張剪断強度および衝撃剥離エネルギーから、液体ゴムに基づく本発明の接着剤組成物が、特に、室温だけでなく−30℃の低温で、当分野で既存の同等ゴム組成物に対して、高い引張強度および相当に高い衝撃剥離エネルギーの両方を保証することが明らかである。これらの高い衝撃剥離エネルギーは、車両工学にとって必須の基準である。これは、この種の接着結合が、事故における衝撃荷重の場合に、大量のエネルギーを吸収することができるためである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン性二重結合を含む天然および/または合成エラストマーならびに加硫剤に基づく単一成分の高温硬化性反応性組成物であって、
(a)400〜80,000、好ましくは800〜25,000の分子量を有する少なくとも1つの液体ポリエン;
(b)微細構造として10〜20%のビニル-1,2、50〜60%のtrans-1,4、25〜35%のcis-1,4 二重結合を有する少なくとも1つの液体ポリブタジエン;および
(c)イオウおよび促進剤および/または適用可能であればキノンオキシムからなる加硫系;
を含有する組成物。
【請求項2】
cis-1,4-ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンゴム、合成イソプレンゴム、天然ゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ポリシクロオクテナマー、ニトリルゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、またはポリクロロプレンの群からの少なくとも1つの固体ゴムをさらに含有する請求項1に記載の単一成分の高温硬化性反応性組成物。
【請求項3】
液体ポリブタジエン(b)が、2,000〜12,000、好ましくは5,000〜9,000の分子量(Mn)を有する請求項1または2に記載の単一成分の高温硬化性反応性組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの熱可塑性ポリマー粉末をさらに含有する請求項1〜3のいずれかに記載の単一成分の高温硬化性反応性組成物。
【請求項5】
イオウ、有機加硫促進剤剤および亜鉛化合物からなる加硫系を、硬化のために使用する請求項1〜4のいずれかに記載の高温硬化性組成物。
【請求項6】
加硫系が、全組成物を基準に、4〜25重量%、好ましくは5〜15重量%の粉末イオウ、0.25〜8重量%、好ましくは0.4〜6重量%の有機促進剤、および0.5〜10重量%、好ましくは2〜8重量%の亜鉛化合物、好ましくは酸化亜鉛からなる請求項1〜5のいずれかに記載の高温硬化性組成物。
【請求項7】
加硫系が、0〜2重量%の2官能加硫架橋剤をさらに含有する請求項1〜6のいずれかに記載の高温硬化性組成物。
【請求項8】
2官能ジチオカルバメート、特に1,6-ビス(N,N-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンを、2官能加硫架橋剤として使用する請求項7に記載の高温硬化性組成物。
【請求項9】
充填剤、レオロジー補助剤、エキステンダー油、発泡剤、顔料、接着プロモーターおよび/または老化保護剤をさらに含有する請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
以下の成分:
・固体ゴム:0〜15重量%、好ましくは0〜12重量%;
・10〜20%のビニル-1,2、50〜60%のtrans-1,4、および25〜35%のcis-1,4 二重結合を有する液体ポリブタジエン:2〜50重量%、好ましくは5〜42重量%;
・カルボキシル基を含むポリブタジエン:0〜25重量%、好ましくは1〜15重量%;
・イオウ:4〜25重量%、好ましくは5〜15重量%;
・促進剤:0.25〜8.0重量%、好ましくは0.4〜6重量%;
・2官能加硫架橋剤:0〜2重量%、好ましくは0〜1重量%;
・酸化亜鉛:0.5〜10重量%、好ましくは2〜8重量%;
・フェノール樹脂:0〜8重量%、好ましくは0〜6重量%;
・ヘキサメチレン-1,6-ビス(チオスルフェート)の二ナトリウム塩:0〜2.5重量%、好ましくは0.1〜1.8重量%;
・酸化防止剤:0〜2重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%;
・酸化カルシウム:0〜8重量%、好ましくは1〜6重量%;
・カーボンブラック:0〜4重量%、好ましくは0.1〜2重量%;
・未被覆の炭酸カルシウム:10〜45重量%、好ましくは15〜40重量%;
・被覆した炭酸カルシウム:0〜30重量%、好ましくは5〜18重量%;
を含有する請求項1〜9のいずれかに記載の組成物(この組成物の構成成分の合計は100%である)。
【請求項11】
自動車車体製造における単一成分の接着剤、シーラントまたは被覆コンパウンドとしての、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2009−532537(P2009−532537A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503433(P2009−503433)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000728
【国際公開番号】WO2007/118529
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】