説明

液体サンプル容器

【課題】細管ノズルから流出した液体の揮発を軽減する液体サンプル容器を提供すること。
【解決手段】液体サンプル容器10は、容器部510の入口に固定された筒状部501と、筒状部501の内側に固定され、液体が一方向に流れるように形成された当て板502とを備える。そして、細管ノズル201から流出した液体は、当て板502を一方向に流れ、当て板502の先から滴下し、筒状部501の下端5011と容器部510の底5101との間の所定の隙間から容器部510に溜まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発量を軽減する液体サンプル容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化学プラントや鉄鋼プラントで使用されている中型の流量計や大型の流量計を校正するために、それぞれ中流量や大流量の液体流量校正設備が存在する。
【0003】
従来の液体流量校正設備の概要を説明する。図7は、従来の液体流量校正設備の概要を示す図である。図8は、従来の液体流量校正設備で使用されている秤量容器907を説明する図である。図7において、液体流量校正設備は、液体を溜めた試験液タンク906から液体を試験管路908に導き、試験管路908において安定な流れを発生させる。発生させた安定な流れは、試験管路908に設けた流量計905を通過し、サンプルノズル902と秤量容器907との間に設けたダイバータ901を経由して秤量容器907に流入する。その後、液体流量校正設備は、所定時間(流入時間)経過後、ダイバータ901により流れを高速で切り替えて、秤量容器907への液体の流入を停止させる。そして、液体流量校正設備は、秤量容器907へ流入した液体の流入量と流入時間とから単位時間あたりの液体の流量を求め、求めた流量と、流量計905によって計測された流量とにより、流量計905を校正する。また、図8で示すように、従来使用していた容器(広口ビンや、フラスコ等の容器)では、サンプルノズル902先端からサンプル容器液面までの距離があり、サンプル容器の底に到達する前に流れが分散し、最初の流れ921は途中で細かな滴下状態922となりさらに飛散923していく。飛散923により液体表面積が増加し揮発量が増加する。
【0004】
このような流量計905の校正装置において、小流量域での流量計905の高精度な校正を行うには、サンプルノズル902から流出して秤量容器907に流入する液体が、秤量容器907に到達する前に揮発することを防止する必要がある。
【0005】
液体の揮発について、オイルタンク内における潤滑油の飛散を抑制する特許文献1が知られている。特許文献1に開示された技術は、ドライサンプ式の内燃機関の潤滑装置に用いられて内燃機関の機関本体とは別体に設けられ、かつ機関本体から戻される潤滑油に遠心力を利用した気液分離作用を与え、得られた気泡を気体排出口から排出し、残余の潤滑油を液体排出口から排出する気液分離器を備えたオイルタンクにおいて、液体排出口がオイルタンクに貯留されている潤滑油中に配置されると共に、液体排出口とオイルタンクの壁面との間に配置されて液体排出口から排出された残余の潤滑油の流れ方向をオイルタンク内を旋回する方向に変化させるガイドが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−291848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、オイルタンク内における潤滑油の飛散を抑制する技術であって、小流量域での流量計の校正を行うためにダイバータで流れを切り替えられた液体の、容器に流入する揮発を抑制する技術ではない。
また、流量計の校正において、単位時間当たりの揮発量を測定しておき補正をすることも考えられるが、小流量域での細管ノズルから落下中の液体の揮発量は、容器内に溜まった液体の揮発量と異なり、事前に同一容器、同一環境により測定することが難しい。
【0008】
そこで、細管ノズルから流出した液体の揮発を軽減する容器が求められている。
【0009】
本発明は、細管ノズルから流出した液体の揮発を軽減する液体サンプル容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0011】
(1) 液体が細管ノズルから連続流で流出してくる液体を溜める容器部を有する液体サンプル容器であって、前記容器部の入口に固定された筒状部と、前記筒状部の内側に固定され、液体が一方向に流れるように形成された当て板と、を備え、前記細管ノズルから流出した液体は、前記当て板を一方向に流れ、前記当て板の先から滴下し、前記筒状部の下端と前記容器部の底との間の所定の隙間から前記容器部に溜まる、液体サンプル容器。
【0012】
(1)の構成によれば、本発明に係る液体サンプル容器は、容器部の入口に固定された筒状部と、筒状部の内側に固定され、液体が一方向に流れるように形成された当て板とを備える。そして、細管ノズルから流出した液体は、当て板を一方向に流れ、当て板の先から滴下し、筒状部の下端と容器部の底との間の所定の隙間から容器部に溜まる。
したがって、本発明に係る液体サンプル容器は、細管ノズルから流出した液体の揮発を軽減することができる。
【0013】
(2) 前記当て板の形状は、液体が流れる方向に行くにしたがって中央部が窪んだ形状になっている、(1)に記載の液体サンプル容器。
【0014】
したがって、(2)に係る液体サンプル容器は、細管ノズルから流出した液体の揮発をさらに軽減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、細管ノズルから流出した液体の揮発を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態である液体サンプル容器の一例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態である液体サンプル容器における液体の流れを説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態である液体サンプル容器の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態である液体サンプル容器を使用して揮発量を測定した結果を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態である液体サンプル容器における当て板の形状を示す図である。
【図6】本発明の別の一実施形態である液体サンプル容器の一例を示す図である。
【図7】従来の液体流量校正設備の概要を示す図である。
【図8】従来の液体流量校正設備で使用されている秤量容器を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態である液体サンプル容器10の一例を示す図である。液体サンプル容器10は、容器部510の入口に固定された筒状部501と、筒状部501の内側に固定され、液体が一方向に流れるように形成された当て板502とを備える。
【0019】
筒状部501は、例えば、長さ150mm、内径φ15mmの筒状をしている。容器部510は、例えば、50mlの容量を有している。当て板502は、液体が一方向に流れるように、所定の角度5023で設置されている。当て板502の断面は、図1に示すように、一方向に流れると共に、空気と接触する液体表面積を少なくするように、円弧状に窪んだ形状5022をしている。さらに、当て板502の平面は、当て板502から液体が滴状態511で滴下するように、流れる方向に行くにしたがって、中央部が窪んだ形状5022で、また中央部が細くなる形状5021になっている。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態である液体サンプル容器における液体の流れを説明する図である。液体サンプル容器10の液面から所定の距離521にある細管ノズル201の先端から流出した液体は、連続流96のまま、当て板502に当たり、当て板502を一方向に流れ、当て板502の先から滴状態511で滴下し、筒状部501の下端5011と容器部510の底5101との間の所定の隙間から容器部510に溜まる。このように、液体サンプル容器10は、細管ノズル201から流出した液体の連続流96が飛散を開始する前に、当て板502に連続流96を当て、その後、連続流96を当て板502に沿って流すことで飛散させずに空気と接触する液体表面積を少なくし、筒状部501の内を滴下させて、揮発量を軽減させることができる。
【0021】
図3は、本発明の一実施形態である液体サンプル容器の斜視図である。図3に示すように、細管ノズル201から流出した液体は、連続流96のまま、筒状部501の内側に固定された当て板502に当たり、当て板502を一方向に流れ、当て板502の先から滴状態511で滴下する。
【0022】
図4は、本発明の一実施形態である液体サンプル容器を使用して流量0.3L/hにおける揮発量を測定した結果を示す図である。図4は、細管ノズル201先端から液体サンプル容器10の液面までの距離が30mmを基準とし、距離を変えて、揮発量を測定した結果である。図4に示すように、細管ノズル201先端から液体サンプル容器10の液面までの140mmを液体が落下するまでに、従来の秤量容器907の場合、液体の揮発量は、トータルで流れた量に対して0.2%であるが、液体サンプル容器10の場合、液体の揮発量は、無視できる量に軽減されている。
【0023】
図5は、本発明の一実施形態である液体サンプル容器における当て板の形状を示す図である。当て板502は、平板の場合液体が広がり、空気に接する液体表面積99が増えるので、図5(1)に示すように、当て板502の断面は、円弧状に窪んだ形状5022をしている。また、図5(2)に示すように、角状に曲がった形状5024であってもよい。当て板502は、図5(1)又は図5(2)のいずれの形状であっても、液体表面積99を少なくすることができる。
【0024】
図6は、本発明の別の一実施形態である液体サンプル容器10の一例を示す図である。液体サンプル容器10は、筒状部501の内側に斜めに固定された、断面が角状に曲がった断面形状5051の沿わせ板505を容器部510の底5101まで入れ、当て板502から滴下する液体を容器部510の底5101まで滴状態ではなく、沿わせ板505に沿わせて流し揮発量をさらに抑えたものである。
【0025】
本実施形態によれば、液体サンプル容器10は、容器部510の入口に固定された筒状部501と、筒状部501の内側に固定され、液体が一方向に流れるように形成された当て板502とを備える。そして、細管ノズル201から流出した液体は、当て板502を一方向に流れ、当て板502の先から滴下し、筒状部501の下端5011と容器部510の底5101との間の所定の隙間から容器部510に溜まる。さらに、当て板502の形状は、液体が流れる方向に行くにしたがって、中央部が窪んだ形状5022で、また中央部が細くなる形状5021になっている。さらに、液体サンプル容器10は、当て板502から滴下する液体を容器部510の底5101まで、断面が角状に曲がった沿わせ板505に沿わせて流す。したがって、液体サンプル容器10は、細管ノズル201から流出した液体を、飛散させることなく液体表面積を小さくして容器部510に導き、揮発を軽減することができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0027】
10 液体サンプル容器
201 細管ノズル
501 筒状部
502 当て板
510 容器部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が細管ノズルから連続流で流出してくる液体を溜める容器部を有する液体サンプル容器であって、
前記容器部の入口に固定された筒状部と、
前記筒状部の内側に固定され、液体が一方向に流れるように形成された当て板と、を備え、
前記細管ノズルから流出した液体は、前記当て板を一方向に流れ、前記当て板の先から滴下し、前記筒状部の下端と前記容器部の底との間の所定の隙間から前記容器部に溜まる、
液体サンプル容器。
【請求項2】
前記当て板の形状は、液体が流れる方向に行くにしたがって、中央部が窪んだ形状で細くなる形状になっている、請求項1に記載の液体サンプル容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−145339(P2012−145339A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1539(P2011−1539)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)