説明

液体サンプル抽出用の装置及び方法

本発明は、部分真空により、フィルタ膜(5)を介して、媒質(2)で充填された容器(1)及び/又はチューブ、特に発酵槽から、液体サンプルを抽出する装置及び方法に関する。サンプルプローブ(3)の内部に配置されている前記フィルタ膜(5)は、滅菌境界として作用する材料と、前記フィルタ膜(5)の前記滅菌境界側(5a)に配置され、ガスを導くことに使用することができる供給ライン(6)と、前記サンプルを導くことに使用することができる放出ライン(7)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1〜15の前提部記載に従って、媒質で充填されている容器及び/又はチューブから、特に発酵槽(fermenter)から、部分真空を用いて、フィルタ膜を介して、液体サンプルを抽出する装置及び方法に関する。
【0002】
発酵槽から液体サンプルを抽出する装置は、DE3249399T1により公知である。前記サンプルを抽出するために、前記装置は、サンプルコレクターと接触する側面上に円形突起を有する本体をもち、通常は閉鎖されたバルブの形態のサンプラーを有する。そして、前記突起は、前記サンプルコレクター中の通常は閉鎖されたバルブのハウジングにおける円形溝を調節するように設計されている。前記サンプルコレクターの通常は閉鎖されているバルブと前記サンプルコレクターの停止装置との間に、前記サンプルコレクターの通常は閉鎖されているバルブから隔てて、バクテリアのフィルタが配置されている。この距離のために、サンプルを抽出する場合、前記装置中の前記中間スペースも前記液体サンプルで充填される必要がある。しかしながら、この液体サンプルは、調査用の液体サンプルとして前記サンプルコレクター中に収集されるものではない。抽出されるサンプルの得られたデッドボリューム(dead volume)は、一方で、サンプリング当りに必要なサンプル量に関して、前記サンプリングを経済的に実施することができないという影響を及ぼし、他方では、先のサンプルの残留容量が前記装置中に残留するので、その非滅菌性のために、滅菌が望ましいその後のサンプリングにおいて、試験結果に誤差が生じるという影響を及ぼす。
【0003】
5Lの容量を有するバイオリアクター中において実施されるファーメンテーション(fermentation)からサンプルを抽出する市販のサンプリング装置(例えば、棒状の装置及び出口に3方向バルブを有するもの)、例えば、US5,948,998に記載の装置も公知である。前記の3方向バルブは、前記サンプルの抽出の間に、前記サンプルプローブと前記出口との間の経路から、オーバーフローと前記出口との間の経路へ、流れを転換するために使用される。所望の量のサンプルが、前記サンプルプローブの下流のパイプシステムに輸送された場合、前記の流路の転換が起こる。
【0004】
この転換プロセスは、前記装置中の液体流を分離するので、従って、前記サンプル流の混合が増強される。この場合、先に実施されたサンプリングからの液体サンプルを前記装置から排除することが理想的ではないので、個々の物質のバックミキシングが起こる。従って、前記のように、混合が更に増強されることによって、前記サンプル中で一定の物質濃度が確立されるまで、必要なサンプル容量又は抽出すべきサンプル数が増加する結果となる。この種のサンプリング装置はデッドボリュームを有するため、残ったサンプル液体を前記装置から完全に放出することは不可能であり、そして、従って、前記サンプル液体の流体力学によりバックミキシングが起こる。
【0005】
前記サンプル中の前記構成物質の拡散係数が異なっていても、バックミキシングが起こる。
【0006】
DE19530886C1は、抽出すべき前記サンプル及び較正溶液の滴定計量用の流体素子二極管を可能にするサンプル装置に関する。前記流体素子二極管は、前記媒質と向かい合っている前記フィルタ膜と、特定の試験データの検知用のセンサーとの間に配置されている。実際の前記流体素子二極管は寸法が小さいため、前記フィルタ膜と前記センサーとの間のデッドスペースを最小化することができる。
【0007】
この種のサンプリング装置も、前記サンプリング間での前記デッドスペース中のデッドボリュームを有しているため、一方では、サンプリングの量を必然的に増加させ、そして、他方では、前記デッドボリューム中に存在する先のサンプリングからの残留サンプルが、新しいサンプリング用のサンプル物質と混合されてしまうというリスクが高まる。
【0008】
前記の装置においては、前記フィルタ膜の完全性の検査、例えば、前記フィルタ膜の除去を含む検査は、膨大な労力と共に、又は、限られた範囲でしか実施することができない。前記フィルタ膜における任意の漏れは、前記容器又は前記チューブの滅菌境界を崩壊させ、そして、前記媒質の非滅菌状態を引き起こす。
【0009】
更に、前記フィルタ膜の緊密性は、取り付けの前か、又は、サンプリング装置の除去の後でしか検査することができないので、前記の完全性の検査を実行することができる前に、全てのプロセス及び測定サイクルの終了を常に待たなければならない。
【0010】
従って、本発明の目的は、フィルタ膜を介して、媒質で充填された容器及び/又はチューブから液体サンプルを抽出する装置及び方法であって、信頼性のある滅菌条件下で、いかなるデッドボリュームも生じることなく、サンプルを抽出することが可能であり、そして、完全性試験を用いて、任意の時間に検査することが可能である、液体サンプルの抽出用の装置及び方法を提供することである。
【0011】
前記の目的は、請求項1に記載の特徴による装置及び請求項15に記載の特徴による方法により達成される。
【0012】
本発明の中心的な思想は、媒質で充填されている容器及び/又はチューブから、特に発酵槽から、例えば、ポンプによって発生させることができる部分真空によって、フィルタ膜を介して、液体サンプルを抽出する装置において、滅菌境界として作用する材料から、サンプルプローブに配置されるフィルタ膜を製造することにあり、これにより、ガスを導くために使用することができる供給ライン及び前記サンプルを導くために使用することができる放出ラインを、前記フィルタ膜の前記滅菌境界側に、配置される。前記サンプルを導くために使用することができる前記放出ラインは、前記フィルタ膜を通過させ、媒質からサンプルを取り出す原因となる、部分真空を発生させるポンプと連結している。
【0013】
予め定めたサンプル容量(例えば、前記ポンプにより調節される)を有するサンプル抽出の後に、サンプリング装置のパイプシステムから前記放出ラインを通過して、前記供給ラインによって、前記装置と向かい合っている前記フィルタ膜の後方から供給され、追加的でわずかなガス過剰圧力によって、前記サンプルを取り出す。同時に、前記パイプシステムは、供給されるガスにより信頼性を伴って空にされる。このことにより、デッドボリュームを形成することのできる前記サンプリング装置中に、デッドスペースが無いことが保証される。これは、デッドボリュームが提供されることによる追加のサンプル容量を必要とせずに、少量でも、試験用の所望のサンプル容量での前記サンプル抽出が可能であることを意味する。
【0014】
前記フィルタ膜には、滅菌境界として作用する材料が備えられているため、前記パイプシステム及び前記サンプリング装置の残りの部分それ自体が滅菌されている限り、滅菌サンプルの抽出が保証される。
【0015】
前記膜が漏れを有している場合でも、前記漏れを原因とする前記パイプシステムにおける圧力の低下が、供給されるべきガスによって、前記サンプルプロセスの間に、継続的に補償される限り、前記サンプリング装置の前記滅菌機能は保証される。欠陥のある前記フィルタ膜は、場合により行うすすぎ工程用の若干のすすぎ液を前記パイプシステムから媒質内へ導入させることがあるが、前記すすぎ液(これは、例えば蒸留水であることができる)による前記媒質の希釈は、前記媒質に含まれている前記物質の濃度に対して、確認することのできるいかなる影響も及ぼすことはない。
【0016】
前記パイプシステムを空にするために使用されるガスは、例えば、疎水性媒質のように作用する圧縮空気である。もう一方で、前記フィルタ膜は、ガスの高い過剰圧力がある場合にのみ通過することのできる親水性の材料から形成されている。前記ガスの前記性質及びフィルタ膜材料により、前記媒質の方向へのフィルタ膜透過を伴わずに起きる前記パイプシステムを確実に空にすることの信頼性を伴った空虚化は、前記パイプシステムだけではなく、前記装置の残部もが、先のサンプリングからのサンプル液を完全に含んでいないことを意味する。従って、サンプル液の前記装置内部における完全な空虚化、及び、その結果として、デッドボリュームを有していないサンプリングが、単純な方法により達成される。
【0017】
有利なことに、前記フィルタ膜が滅菌境界として作用するため、非滅菌媒質からの滅菌ろ過されたサンプルを得ることも可能である。通常、この種の滅菌ろ過されたサンプルは、より長い保存寿命を特徴としている。
【0018】
前記サンプリングの後に、単純及び効果的な方法で自動的な空虚化が行われるので、本発明の前記サンプル装置を、自動化されたサンプリングモジュールとして使用することができ、そして、プロセス中でのモニタリング、及び、本発明の装置及び抽出されるサンプルの制御/管理に使用される検知システムへの連結が可能である。
【0019】
更に、抽出すべき前記サンプル容量の適当な組合せによって、前記ポンプによりセットされた注入割合、前記パイプシステムを空にするための必要時間、及びサンプリングプロセスのための必要時間を、オンライン測定用に、効果的に短くすることができる。
【0020】
前記フィルタ膜の緊密性を検査するための完全性試験を、任意の時間に行うことができる。この種の試験は、サンプリングプロセスの前後に実施することができ、従って、取り付けられている前記サンプリング装置と共に、前記容器(バイオリアクターであることができる)の作業信頼性を高めることが可能になり、そして、前記サンプリング装置の操作性を改良することが可能になる。
【0021】
前記サンプリング装置の機能をその場で試験する完全性試験のために、ガスを導くために使用することができる前記供給ラインを、前記供給ラインとガス供給連結部とを連結させるために、第1ガス輸送連結ラインに連結させる。この種の連結は、前記パイプシステムを空にするためのガスの供給に必要である。
【0022】
好ましい実施態様によると、第1バルブ及び第2バルブは、前記第1ガス輸送連結ラインの第1末端及び第2末端の領域に配置されているので、従って、前記バルブにより、前記連結ラインの両側を閉鎖することができる。更に、前記ガス輸送連結ラインと、前記ガス輸送連結ライン中の前記ガス供給連結部の領域における第1滅菌フィルタとに、圧力センサーを配置し、それによって、前記パイプシステム、及び、特に、前記ガス輸送連結ラインの滅菌操作が保証され、そして、前記ガスライン中の、通常のわずかな過剰圧力を検査することができる。
【0023】
好ましい或る実施態様によると、前記供給ライン及び前記放出ラインは、前記フィルタ膜へのすすぎ液の供給、及び、前記フィルタ膜からのすすぎ液の放出に適するように設計される。前記すすぎ液は、第2のすすぎ液輸送連結ラインによってガスを導くことに使用することができる前記供給ラインに送り込まれ、そして、特に、前記放出ラインの、前記サンプル物質の成分による詰まり及び目詰まりを防止するために、前記パイプシステム全体及びフィルタ膜のすすぎに使用される。前記すすぎ液は滅菌液である。この種のすすぎプロセスの後に、わずかな過剰圧力を伴った前記第1連結ラインからのガスで、パイプシステムを再度空にする。前記のすすぎプロセスを、2つのサンプリングプロセスの間で、場合により実施することができる。
【0024】
有利なことに、媒質で充填されている容器及び/又はチューブから、前記フィルタ膜を介して、液体サンプルを抽出する方法は、以下の工程:
少なくとも1つのバルブによりその他のラインに対して閉鎖することのできる供給ラインによって、前記サンプルプローブに配置されて、そして前記フィルタ膜の前記滅菌境界側の滅菌境界として作用する材料を含む、前記フィルタ膜へ、ガスを供給し、
前記放出ラインによって前記フィルタ膜から前記ガスを放出して、そして、バルブとして機能する前記放出ライン内に配置されている装置を、供給ラインと放出ラインがサンプルフリーの状態であるまで開放し、
少なくとも1つのバルブを閉鎖して、前記ガス供給連結部から前記供給ラインの連結を切り離し、
前記放出ラインと、前記放出ライン中に存在する部分真空によって、前記媒質から、前記所望量のサンプルの抽出し、そして、
過剰圧力により供給される新しいガスによって、前記放出ラインから前記サンプルを輸送する、
ことを含む。
【0025】
更に、前記放出ラインの目詰まり及び詰まりを回避するために、前記方法は、すすぎ液の供給に関わる工程、及び前記完全性試験の実施工程、バルブによって周辺システムに対して密閉されている装置内部にガスを供給する工程を含むことができる。
【0026】
その他の有利な実施態様を下位クレームに記載する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施態様によるサンプル抽出用装置の模式的説明図である。
【図2】本発明の第2の実施態様によるサンプル抽出用装置の断面の模式的説明図である。
【図3】本発明の装置及び市販の従来装置によるサンプリングを比較し、サンプリングプロセスについて、特定期間に亘って測定されたグルコース濃度を示すグラフである。
【図4】本発明の装置及び市販の従来装置によるサンプリングを比較し、サンプリングプロセスについて、特定期間に亘って測定されたラクテート濃度を示すグラフである。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施態様による、媒質で充填された容器からサンプルを抽出する装置を模式的に示す。前記容器1中に含まれている前記媒質2の中には、サンプルプローブ3と、媒質2を撹拌する撹拌子4とが導入されている。前記サンプルプローブ3の中には、滅菌境界として作用する材料を含むフィルタ膜が配置されている。前記フィルタ膜5は、滅菌後方境界5aと、前記媒質に面している前方境界5bとを含み、これによって前記媒質は滅菌状態であるか又は非滅菌状態であることができる。
【0029】
ガスを導くために使用することができる供給ライン6及び前記サンプルを導くために使用することができる放出ライン7が、前記フィルタ膜5の前記後方境界5a、すなわち、前記フィルタ膜の前記滅菌境界側に配置されている。前記放出ライン7を使用してサンプルを流出させることができる。サンプルは、ポンプ8からの部分真空により、前記媒質から前記フィルタ膜5を通過して、前記矢印9により示されているように、検出デバイス(図示せず)又は保存容器(図示せず)へ案内される。
【0030】
前記供給ライン6は、T字部片10によって、第1ガス輸送連結ラインに連結され、これは順にガス供給連結部15へ連結している。閉鎖可能バルブ11及び14がそれらの開放位置にある場合には、前記ガス供給連結部15を用いて、圧縮空気を前記供給ライン6へ供給する。
【0031】
滅菌された圧縮空気の供給を保証するために、滅菌フィルタ12が備えられている。
【0032】
更に、わずかな過剰圧力下で供給される、圧縮空気の圧力は、マノメータ13によって検査される。
【0033】
T字部片10のもう1つの末端に連結されているのが、第2すすぎ液輸送連結ライン17であり、これは、容器18に連結されており、この容器中には、すすぎ液19、例えば、蒸留水が十分な量で存在している。ガス及びすすぎ液連結ライン20は、第2の滅菌フィルタ26によって容器18と連結しており、前記の第2滅菌フィルタは、前記容器18の圧力補償を提供するために、連結ライン20中において、もう1つのガス供給連結部23に対して配置されている。
【0034】
前記ガス供給連結部23の連結は、場合により存在する。
【0035】
すすぎプロセスを実行するべき場合には、前記の第1ガス輸送連結ラインにおける前記バルブ11及び14を閉鎖した状態で、前記供給ライン6へのバルブ16を開放する。前記すすぎ液が、前記ポンプ8を介して、前記供給ライン及び前記放出ライン6,7を離れ、そして、前記ライン6,7及び前記フィルタ膜の前記後方境界5aが洗浄されてから、前記滅菌圧縮空気を供給することによって、前記供給ライン及び前記放出ライン6,7を有する前記パイプシステムのドレインを行うために、前記バルブ16を閉鎖し、そして、第1及び第2バルブ11及び14を開放する。
【0036】
サンプリングプロセスを以下の順序によって実施する:
前記第1及び前記第2バルブ11,14を閉鎖した状態で、前記ポンプ8によってパイプシステム内に部分真空を発生させると、前記パイプシステムは、分析するべき前記媒質2からのサンプルを、前記滅菌境界を介して、前記サンプルプローブの外部へ転送する。所望のサンプル量を、前記ポンプ8のポンプ強さによって調節する。予め定めた輸送時間で予め定めたサンプル量が達成されると、バルブ16を閉鎖し、そして、バルブ11及び14を開放することにより、わずかなに圧縮された空気の追加的過剰圧力により、前記サンプルを、前記ライン6,7を有する前記パイプシステムから、保存容器(図示せず)へ輸送する。同時に、供給される前記の圧縮空気は、前記パイプシステムの排水を確実に実行するので、前記パイプシステムに前記サンプルが残ることがない。
【0037】
前記サンプリング装置の機能を検査する完全性試験を実施可能にするためには、バルブ16を閉鎖し、そしてポンプ8を不作動な状態にして、前記ガス供給連結部15を介して、圧縮空気を供給し、前記パイプシステムにおいて過剰圧力を発生させる。前記滅菌境界を形成する前記フィルタ膜5が緊密である限り、前記バルブ14の閉鎖の後は、前記過剰圧力が保持される。一方で、圧力が低下した場合、これは前記フィルタ膜5が緊密でないことを示唆する。これは、完全性測定装置に連結することによって前記装置を有効化することができることを意味している。
【0038】
図2は、本発明の第2の実施態様による、サンプル抽出用の装置の模式的断面図である。更に、この実施態様では、前記ライン20のすすぎ液輸送部分と、中間に配置されている追加の滅菌フィルタ21及びもう1つのバルブ24とを介して、すすぎ液供給連結部22が前記容器18に連結されている。
【0039】
ガスの供給、放出及び計量のために、前記ライン20の前記ガス輸送部分も、前記フィルタ26と前記ガス供給連結部23との間の、もう1つのバルブ25を有している。
【0040】
図3は、本発明の装置及び市販されている従来の装置を使用する、サンプリングプロセスによって得られたサンプルについて、一定期間経過させた場合のグルコース濃度を比較したグラフである。
【0041】
両方のサンプリング装置は、バイオリアクター中に設置された。前記バイオリアクターは、滅菌され、そして滅菌媒質、担体及び細胞で充填されていた。前記細胞を生長させ、前記媒質中のグルコース濃度及びラクテート濃度を変化させた。
【0042】
全ての調製及び滅菌の終了の後に、本発明の装置での膜試験が実施された。次に、各々の前記装置から1つのサンプルを抽出し、そして前記グルコース濃度及び前記ラクテート濃度を測定した。従来のサンプリング装置の場合には、デッドボリュームが生じるため、最初のサンプルを廃棄しなければならなかった。グルコース及びラクテートの一定濃度を得るまで廃棄されるべき前記サンプル量を、測定した。前記の従来の装置では、前記パイプシステムからの前記サンプル液の理想的な排除は生じなかった。その代わりに、前記パイプシステム中に含まれている流れの中に、個々の物質のバックミキシングが生じていた。前記バックミキシングは、サンプル中の物質の異なる拡散係数と、更に、前記デッドボリューム及びサンプル液の液体力学的性質とにより、引き起こされる。
【0043】
前記の従来装置によるサンプルの抽出は、連続的に行われなかった。サンプル量2mLを前記パイプシステムに輸送した場合、前記サンプルプローブと出口との間の流路から、オーバーフロー連結部と前記出口との間の流路へと、従来装置のバルブを3方向バルブとして切り替えた。
【0044】
これは、前記装置の内部における液体流を分離し、そして流れ内における混合を更に強めた。この場合、混合が更に大きくなると、一定の濃度が得られるまでに、必要なサンプル量が増大した。この理由のために、結論として、従来装置で抽出される総量の絶対値は、約2.5mLに減少した。
【0045】
ファーメンテーションの間に、以下の結果が得られた:
滅菌の後に、装置のデッドボリュームで充填されている前記の従来装置の内部で水蒸気を凝縮した。前記ポンプを切り替えた場合に、無色の凝縮液と赤色の媒質との間には明確な差があった。収集し、測定したデッドボリュームは、約0.6mLであった。前記媒質サンプルを、エッペンドルフチップ(Eppendorf tips)中に収集した。前記の従来装置では、一定の測定物質濃度を得るまでのサンプルボリュームを有する各々のサンプルを少なくとも2回収集する必要があった。これは、図4に示されている前記グルコース濃度及び前記ラクテート濃度の両方に当てはまることであった。このプロセスは、以下に示す日数に亘って繰り返された。本発明のサンプリング装置によるサンプリングプロセスと比較すると、このことは、2〜4mL(100〜200%)の間の抽出すべき媒質の追加消費をもたらした。
【0046】
以下の表1並びに図3及び図4のグラフは、本発明の装置及び従来装置による抽出に関して、測定結果の形態において、グルコース及びラクテートの濃度の平衡が達成するまでの、バイオリアクターからのサンプル抽出の比較を示すものである。
【表1】

もう1つの試験では、本発明の装置を使用する滅菌試験用として、ブイヨンに相当するCaSo溶液に関して、スピナーフラスコ(spinner flask)から多くの回数で1.5〜2mLの量のサンプルを抽出し、そして分析した。前記装置は、2週間の試験期間の間、滅菌状態にされた。酸素センサーにおける測定装置の変動とは別に、前記スピナーフラスコの前記媒質中のグルコース濃度は、実質的に一定に維持されていた。これらは、前記酸素センサーが、例えば、エイジングセンサーメンブレン(aging sensor menbranes)又は不適切な自動較正(automatic calibration)に対して敏感に反応したことが原因であると考えることができる。
【表2】

【0047】
予備試験を使用して、CaSo溶液中のグルコース濃度が、時間の経過と共に、自然に、低下しているかを検査した。予備試験を行うために、CaSo溶液を37℃の滅菌状態中でインキュベートした。CaSo溶液の分析により、以下の表3に示すように、4週間の試験期間の間、安定であることが分かった。
【表3】

【0048】
本発明は、前記の実施例及び強調した観点にのみに制限されるものではなく、特許請求の範囲内で、当業者の能力の範囲内の複数の変更も同様に可能である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・容器;2・・・媒質;3・・・サンプルプローブ;4・・・撹拌子;
5・・・フィルタ膜;5a・・・後方フィルタ膜;
5b・・・前方フィルタ膜;6・・・供給ライン;
7・・・放出ライン;8・・・ポンプ;9・・・放出方向;
10・・・T字部片;11,14,16,24,25・・・バルブ;
12,21,26・・・滅菌フィルタ;13・・・マノメータ;
15,23・・・ガス供給連結部;17・・・すすぎ液輸送連結ライン;
18・・・容器;19・・・すすぎ液;
20・・・ガス及びすすぎ液連結ライン;22・・・すすぎ液供給連結部;
23・・・ガス供給連結部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒質(2)で充填されている容器及び/又はチューブ(1)から、特に発酵槽から、部分真空により、フィルタ膜(5)を介して、液体サンプルを抽出する装置であって、サンプルプローブ(3)内に配置されている前記フィルタ膜(5)が、滅菌境界として作用する材料を含み、これによって、ガスを導くことに使用することができる供給ライン(6)と前記サンプル(7)を導くために使用することができる放出ラインとが、前記フィルタ膜(5)の滅菌境界側(5a)に配置されていることを特徴とする、前記装置。
【請求項2】
滅菌境界として作用する前記材料が親水性であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ガスを導入するために使用することができる前記供給ライン(6)が、疎水性ガスを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
ガスを導くために使用することができる前記供給ライン(6)及び前記放出ライン(7)が、過剰圧力によって、前記フィルタ膜(5)へガスを供給し、そして、前記フィルタ膜(5)からガスを放出するのに適して設計されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
ガスを導くことができる前記供給ライン(6)が、第1ガス輸送連結ラインに連結され、前記供給ライン(6)をガス供給連結部(15)へ連結することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
第1及び第2バルブ(11,14)が、前記連結ラインの第1及び第2の末端領域に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
圧力センサー(13)が、前記ガス輸送連結ライン中に配置されていることを特徴とする、請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
第1滅菌フィルタ(12)が、前記ガス輸送連結ライン中に配置されていることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記供給及び前記放出ライン(6,7)が、前記フィルタ膜(5)へすすぎ液を供給し、そして、前記フィルタ膜(5)からすすぎ液を放出するのに適して設計されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記供給ライン(6)が、第2すすぎ液輸送連結ライン(17)へ連結されていることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記すすぎ液輸送連結ライン(17)が、すすぎ液(19)を含む容器(18)へ連結していることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記容器(18)が、ガス及びすすぎ液連結ライン(20)内に配置されている別の滅菌フィルタ(21)を有するガス及びすすぎ液連結ライン(20)を介して、すすぎ液供給連結部(22)へ連結されていること特徴とする、請求項9〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記容器(18)が、ガス及びすすぎ液連結ライン(20)内に配置されている別の滅菌フィルタ(26)を有するガス及びすすぎ液連結ライン(20)を介して、別のガス供給連結部(23)へ連結されていることを特徴とする、請求項9〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記放出ライン(7)が、バルブとして作用する装置(8)へ連結されていることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
媒質(2)で充填されている容器(1)及び/又はチューブから、特に発酵槽から、部分真空により、フィルタ膜(5)を介して、液体サンプルを抽出する方法であって、以下の工程:
少なくとも1つのバルブによりその他のラインに対して閉鎖することのできる供給ライン(6)によって、前記サンプルプローブに配置されて、そして前記フィルタ膜(5)の前記滅菌境界側の滅菌境界として作用する材料を含む、前記フィルタ膜(5)へ、ガスを供給し、
前記放出ライン(7)によって前記フィルタ膜(5)から前記ガスを放出して、そして、バルブとして機能する前記放出ライン内に配置されている装置(8)を、供給ラインと放出ライン(6,7)がサンプルフリーの状態であるまで開放し、
少なくとも1つのバルブ(11)を閉鎖して、前記ガス供給連結部(15)から前記供給ライン(6)の連結を切り離し、
前記放出ライン(7)と、前記放出ライン(7)中に存在する部分真空によって、前記媒質(2)から、前記所望量のサンプルを抽出し、そして、
過剰圧力により供給される新しいガスによって、前記放出ライン(7)から前記サンプルを輸送する、
ことにより特徴づけられる、前記方法。
【請求項16】
前記サンプルの前記成分による、前記放出ライン(7)内での目詰まり及び詰まりを回避するために、前記放出ライン(7)から前記サンプルを輸送する前記工程の後に、前記供給ライン(6)を介してすすぎ液を供給し、そして前記放出ライン(7)を介して放出することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記すすぎ液(19)を供給して、そして放出する前記工程の後に、前記ガスを供給して、そして放出する前記工程を繰り返すことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
サンプリング機能の検定/確認用の完全性試験が、以下の工程:
バルブとして作用する装置(8)によって前記放出ライン(7)を閉鎖し、
前記供給ライン(6)及び前記放出ライン(7)へガスを供給して、規定の過剰圧力を発生させ、
圧力センサー(13)の関与によって、別のバルブ(14)を閉鎖して、前記供給ライン(6)から前記ガス供給連結(15)を分離し、
前記パイプシステムに入る及び/又は出て行く可能性のある、任意のガス及び/又は液体を観察し、そして、
前記フィルタ膜(5)の完全性の指標として、前記圧力センサー(13)によって、圧力安定度を観察する、
ことを含むことを特徴とする、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−502394(P2006−502394A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542396(P2004−542396)
【出願日】平成15年10月1日(2003.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010883
【国際公開番号】WO2004/033077
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(505119966)マックス−プランク−ゲゼルシャフト ツール フェルデルング デア ヴィッセンシャフテン エー. ファオ. (3)
【氏名又は名称原語表記】MAX−PLANCK−GESELLSCHAFT ZUR FOERDERUNG DER WISSENSCHAFTEN E.V.
【Fターム(参考)】