液体ストリーマ状放電発生装置
【課題】電源部の規模の大型化を抑制しつつ、ストリーマ状放電の先端数をより増加させることができる液体ストリーマ状放電発生装置を提供する。
【解決手段】液体34中の放電を生成する一対の電極31,32と、これら電極31,32間に所定の周期で繰り返し高電圧パルスを印加して放電を行わせる電源部20とを備え、電源部20は、一対の電極31,32間に印加する高電圧パルスとして、立ち上がりが急峻な高電圧パルスを印加する。
【解決手段】液体34中の放電を生成する一対の電極31,32と、これら電極31,32間に所定の周期で繰り返し高電圧パルスを印加して放電を行わせる電源部20とを備え、電源部20は、一対の電極31,32間に印加する高電圧パルスとして、立ち上がりが急峻な高電圧パルスを印加する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中にストリーマ状放電を発生させる液体ストリーマ状放電発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パルスパワーによる大気圧気体中のストリーマ状(繊維状)放電に関する研究が進展してきており、特に産業応用に関する多くの研究がなされている。パルスパワーとは、ごく短い時間に発生する大電力を表す。
【0003】
このストリーマ状放電により、高電界、紫外線、活性種、オゾン、衝撃波など特異な物理現象が発生する。そのため、これらの作用を用いた産業応用が多数検討されている。例えば、排ガス処理、オゾン生成、VOC(揮発性有機化合物)処理、ダイオキシン分解、殺菌等に応用が検討されている。
【0004】
ところで、液体中で大気圧気体中と同様な大容量ストリーマ状放電を生成することができれば、ストリーマ状放電の特異性により、大気圧気体中と同様の効果が期待できる。例えば、液体中における化学物質の分解、オゾン生成、水処理、殺菌、ダイオキシン処理等である。
【0005】
パルスパワーを用いた液体中のストリーマ状放電技術として、液体中に置かれた二つの電極間にパルスパワーとして高電圧パルスを印加することにより、大容量ストリーマ状放電を生成する技術がある。
【0006】
例えば、特許文献1には、円筒状電極を接地電位とし、当該円筒状電極の円筒軸上に置かれた高電圧電極に電源部からのパルスパワーを印加する技術が開示される。また、特許文献2には、線状電極と平板電極との間に電源部からのパルスパワーを印加する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−192287号公報
【特許文献2】特開2001−293067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、ストリーマ状放電により各種物理現象が発生することから、このストリーマ状放電の進展長やその数を増加させて処理容積を増加させることが望ましい。
【0008】
しかしながら、従来技術においては、ストリーマ状放電による処理容積を増加させようとすると、電源部の規模を大型化しなければならなった。
【0009】
そこで、本発明は、電源部の規模の大型化を抑制しつつ、ストリーマ状放電による処理容積を増加させることができる液体ストリーマ状放電発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液体ストリーマ状放電発生装置では、液体中の放電を生成する一対の電極と、前記一対の電極間に所定の周期で繰り返し高電圧パルスを印加して放電を行わせる電源部と、を備え、前記電源部は、前記一対の電極間に印加する高電圧パルスとして、立ち上がりが急峻なパルス電圧を印加する。例えば、立ち上がりが急峻な鋸歯状パルス電圧、或いは立ち上がりが急峻な方形波状パルス電圧を印加する。
【0011】
また、本発明の液体ストリーマ状放電発生装置では、以下の点にも特徴を有する。すなわち、
(1)一対の電極を、高電圧パルスを印加する線状電極又は針状電極と、接地した平板電極、メッシュ状電極、リング状電極又は筒状電極とから構成したこと。
(2)前記電極対を複数設けたこと。
(3)前記線状電極又は針状電極は、その一部からのみ放電を行うべく前記一部を除き絶縁部材で被覆したこと。
(4)前記電源部は、パルス電流を発生するパルス発生回路と、可飽和リアクトルとコンデンサとを有し、前記パルス電流から磁気パルス圧縮によりパルス幅を狭くしたパルス電流を生成する磁気パルス圧縮部と、前記磁気パルス圧縮部の出力に接続されたピーキングコンデンサと、を備え、前記磁気パルス圧縮部のコンデンサの容量値を前記ピーキングコンデンサの容量値の2倍以上としたこと。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液体ストリーマ状放電発生装置では、電源部は立ち上がりが急峻な高電圧パルスを一対の電極間に印加することにより、電源部の回路規模の増大を抑制しつつ、ストリーマ状放電の進展長の延長やその数を増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施形態の液体ストリーマ状放電発生装置は、液体中の放電を生成する一対の電極と、この一対の電極間に所定の周期で繰り返し高電圧パルスを印加して放電を行わせる電源部とを備えている。
【0014】
しかも、電源部は、一対の電極間に印加する高電圧パルスとして、立ち上がりが急峻な高電圧パルスを印加するようにしている。これにより、ストリーマ状放電の進展長の延長やその数を増加させることができる。その結果、電源部の回路規模の増大を抑制することができる。
【0015】
また、上記一対の電極を、高電圧パルスを印加する線状電極又は針状電極と、接地した平板電極、メッシュ状電極、リング状電極又は筒状電極とから構成することで、表面積の小さい線状電極又は針状電極からストリーマ状放電を行なうことができる。
【0016】
また、高電圧パルスを印加する線状電極又は針状電極を複数設けることで電極対を複数として、ストリーマ状放電による処理容積をより増加させることができる。
【0017】
また、線状電極及び針状電極は、その一部からのみ放電を行うべく前記一部を除き絶縁部材で被覆することにより、線状電極及び針状電極の放電面積を小さくすることができ、放電不良などをより抑制することができる。
【0018】
さらに、電源部は、パルス電流を発生するパルス発生回路と、可飽和リアクトルとコンデンサとを有し、パルス電流から磁気パルス圧縮によりパルス幅を狭くしたパルス電流を生成する磁気パルス圧縮部と、磁気パルス圧縮部の出力に接続されたピーキングコンデンサと、を備え、磁気パルス圧縮部のコンデンサの容量値をピーキングコンデンサの容量値の2倍以上とすることにより、電源部の回路規模を増大させることなく、容易に立ち上がりが急峻な鋸波状の高電圧パルスをさせることができる。しかも、高電圧パルスを高い周期で繰り返し発生させることができる。
【0019】
以下において、本発明の実施形態を詳説する。図1は本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置の構成を示す図、図2は本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置の電極の配置を説明するための図、図3は本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置による放電電圧電流波形を示す図,図4は従来の液体ストリーマ状放電発生装置によるストリーマ状放電の様子を示す図、図5は本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置によるストリーマ状放電の様子を示す図、図6は高電圧パルスを印加する電極の数を複数設けた一例を示す図である。
【0020】
図1に示すように、液体ストリーマ状放電発生装置Aでは、所定の周期で繰り返し高電圧パルスを発生する高繰返しパルス電源部20と、この高繰返しパルス電源部20に接続され、高電圧パルスが印加されて液体中の放電を生成する一対の電極31,32とを備えている。そして、この液体ストリーマ状放電発生装置Aは、容器33に収納された液体34内でストリーマ状放電を数百回/sの頻度で発生させる。なお、本実施形態においては、液体34として水を用いることとするが、他の液体においても同様のストリーマ状放電が得られる。
【0021】
高繰返しパルス電源部20は、パルス電流I1を発生するパルス発生回路21と、このパルス発生回路21が出力するパルス電流I1から磁気パルス圧縮した狭幅のパルス電流I3を生成する磁気パルス圧縮部22とから構成される。
【0022】
パルス発生回路21は、高圧充電器10により電力用の初段コンデンサC0を初期充電している状態で、半導体スイッチSWのオン制御でコンデンサC0から可飽和リアクトルSI0を通してパルストランスPTにパルス電流I0を流す。このとき可飽和リアクトルSI0は磁気スイッチ動作し、半導体スイッチSWが完全にオン動作した後に電流I0を流すことで半導体スイッチSWのスイッチング損失を軽減する。
【0023】
パルストランスPTの2次側には磁気パルス圧縮部22が接続される。この磁気パルス圧縮部22は、2つの磁気パルス圧縮回路23a,23bが縦続接続されて構成される。初段の磁気パルス圧縮回路23aにおいてはパルストランスPTで昇圧したパルス電流I1でコンデンサC1が高圧充電され、このコンデンサC1の充電電圧で可飽和リアクトルSI1が磁気スイッチ動作することにより磁気パルス圧縮した狭幅のパルス電流を次段の磁気パルス圧縮回路23bに供給する。同様の磁気スイッチ動作により、次段の磁気パルス圧縮回路23bで磁気パルス圧縮が行なわれる。なお、図示しないがパルストランスPTや可飽和リアクトルSI0〜SI2にはそれぞれ磁気リセット回路が設けられ、この磁気リセット回路によってパルストランスPTや可飽和リアクトルSI0〜SI2のリセット巻線に直流バイアス電流をそれぞれ供給してコアの磁化方向を初期状態に戻すようにしている。
【0024】
磁気パルス圧縮回路23bのパルス出力は、一対の電極31,32に狭幅の高電圧パルス電流I4を供給する。高繰返しパルス電源部20にはピーキングコンデンサCPが設けられており、パルス電流I3でピーキングコンデンサCPが一定電圧レベルまで充電されたときに一対の電極31,32間での放電が行なわれる。
【0025】
図2に示すように、電極31は線状又は針状であり、容器33内の液体34の液面又はその近傍に配置される。この電極31は、その先端部31aからのみ放電を行うべく先端部31aを除き絶縁部材40で被覆される。これにより、電極31の液体との接触面積を小さくすることができ、三重点からの液中ストリーマ放電を生成できる。ここでは、電極31の直径を0.8mmとし、電極31を絶縁部材40で被覆したときの直径を3.0mmとする。また、図2に示すように、絶縁部材40で被覆した線状の電極31を切断してその先端部31aを形成するようにしている。なお、絶縁部材としては、例えば、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステルなどを用いることができる。また、線状の電極31の材料として、ステンレス、チタン、タングステン、銅、鉄、アルミなどを用いることができる。
【0026】
また、電極32は、平板状の電極であり、容器33の液体34中の底面に配置される。ここでは、電極32の材料として、ステンレス、チタン、タングステン、銅、鉄、アルミなどを用いることができる。なお、この電極32は、平板状の電極に代えて、メッシュ状電極、リング状電極又は筒状電極を用いるようにしてもよい。
【0027】
ここで、高繰返しパルス電源部20では、最終段の磁気パルス圧縮回路23bのコンデンサC2の容量値をピーキングコンデンサCPの容量値の2倍以上としている。これにより一対の電極31,32間には、図3(a),(b)に示すように、立ち上がりが急峻な鋸歯状の電圧及び電流が発生する。図3(a)は電極31,32間の電圧波形を示し、図3(b)は電極31,32間の電流波形を示す。
【0028】
このように立ち上がりが急峻な鋸歯状の電圧及び電流を電極31,32間に印加することによって、図4に示すような従来のストリーマ状放電に比べて、図5に示すように、ストリーマ状放電の進展長及びその数をより増加させることができる。しかも、パルス圧縮回路の段数を増加させずに、ピーキングコンデンサCPの容量値を調整することで、立ち上がりが急峻な鋸歯状の電圧及び電流を発生させることができるので、高繰返しパルス電源部20の回路規模の増大を抑制することができる。
【0029】
本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、電極31,32間に印加する高電圧パルスは、立ち上がりが急峻な鋸歯状の高電圧パルスに限らず、立ち上がりが急峻な方形波状の高電圧パルスや立ち上がりが急峻な三角波状の高電圧パルスであってもよく、結果的に立ち上がりが急峻な高電圧でかつ数μsのパルスであれば、ストリーマ状放電の進展長の延長やその数を飛躍的に増加させ、かつ安定的に数百Hz以上の高繰り返しで発生できる知見を得ることができたものである。
【0030】
また、図6に示すように、線状の電極31を多数設けることにより電極対を複数として、高繰返しパルス電源部20の数を増加させることなく、同時に各電極31からストリーマ状放電を発生させることができる。これにより、液体34中における化学物質の分解、オゾン生成、水処理(アオコなどの有害生物処理)、殺菌、ダイオキシン処理等を効率的に行なうことができる。このように線状又は針状の電極31は、その一部(先端部31aや後述の開口部40aなど)からのみ放電を行うべく一部を除き絶縁部材40で被覆される。
【0031】
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0032】
例えば、パルス圧縮回路の段数を2段としたが1段あるいは3段以上としてもよい。また、鋸歯状の高電圧パルスとして2連の鋸歯状のものを例に挙げて説明したが、1連または3連以上の鋸歯状のものでもよい。
【0033】
また、立ち上がりが急峻な高電圧パルスを発生させる回路として、図1の回路を例に挙げて説明したがこれに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置の構成を示す図である。
【図2】本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置の電極の配置を説明するための図である。
【図3】本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置による放電電圧電流波形を示す図である。
【図4】従来の液体ストリーマ状放電発生装置によるストリーマ状放電の様子を示す図である。
【図5】は本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置によるストリーマ状放電の様子を示す図である。
【図6】高電圧パルスを印加する電極の数を複数設けた一例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
A 液体ストリーマ状放電発生装置
10 高圧充電器
20 高繰返しパルス電源部(電源部)
21 パルス発生回路
22 磁気パルス圧縮部
23a,23b 磁気パルス圧縮回路
31 線状又は針状の電極
32 平板状の電極
33 容器
34 液体
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中にストリーマ状放電を発生させる液体ストリーマ状放電発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パルスパワーによる大気圧気体中のストリーマ状(繊維状)放電に関する研究が進展してきており、特に産業応用に関する多くの研究がなされている。パルスパワーとは、ごく短い時間に発生する大電力を表す。
【0003】
このストリーマ状放電により、高電界、紫外線、活性種、オゾン、衝撃波など特異な物理現象が発生する。そのため、これらの作用を用いた産業応用が多数検討されている。例えば、排ガス処理、オゾン生成、VOC(揮発性有機化合物)処理、ダイオキシン分解、殺菌等に応用が検討されている。
【0004】
ところで、液体中で大気圧気体中と同様な大容量ストリーマ状放電を生成することができれば、ストリーマ状放電の特異性により、大気圧気体中と同様の効果が期待できる。例えば、液体中における化学物質の分解、オゾン生成、水処理、殺菌、ダイオキシン処理等である。
【0005】
パルスパワーを用いた液体中のストリーマ状放電技術として、液体中に置かれた二つの電極間にパルスパワーとして高電圧パルスを印加することにより、大容量ストリーマ状放電を生成する技術がある。
【0006】
例えば、特許文献1には、円筒状電極を接地電位とし、当該円筒状電極の円筒軸上に置かれた高電圧電極に電源部からのパルスパワーを印加する技術が開示される。また、特許文献2には、線状電極と平板電極との間に電源部からのパルスパワーを印加する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−192287号公報
【特許文献2】特開2001−293067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、ストリーマ状放電により各種物理現象が発生することから、このストリーマ状放電の進展長やその数を増加させて処理容積を増加させることが望ましい。
【0008】
しかしながら、従来技術においては、ストリーマ状放電による処理容積を増加させようとすると、電源部の規模を大型化しなければならなった。
【0009】
そこで、本発明は、電源部の規模の大型化を抑制しつつ、ストリーマ状放電による処理容積を増加させることができる液体ストリーマ状放電発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液体ストリーマ状放電発生装置では、液体中の放電を生成する一対の電極と、前記一対の電極間に所定の周期で繰り返し高電圧パルスを印加して放電を行わせる電源部と、を備え、前記電源部は、前記一対の電極間に印加する高電圧パルスとして、立ち上がりが急峻なパルス電圧を印加する。例えば、立ち上がりが急峻な鋸歯状パルス電圧、或いは立ち上がりが急峻な方形波状パルス電圧を印加する。
【0011】
また、本発明の液体ストリーマ状放電発生装置では、以下の点にも特徴を有する。すなわち、
(1)一対の電極を、高電圧パルスを印加する線状電極又は針状電極と、接地した平板電極、メッシュ状電極、リング状電極又は筒状電極とから構成したこと。
(2)前記電極対を複数設けたこと。
(3)前記線状電極又は針状電極は、その一部からのみ放電を行うべく前記一部を除き絶縁部材で被覆したこと。
(4)前記電源部は、パルス電流を発生するパルス発生回路と、可飽和リアクトルとコンデンサとを有し、前記パルス電流から磁気パルス圧縮によりパルス幅を狭くしたパルス電流を生成する磁気パルス圧縮部と、前記磁気パルス圧縮部の出力に接続されたピーキングコンデンサと、を備え、前記磁気パルス圧縮部のコンデンサの容量値を前記ピーキングコンデンサの容量値の2倍以上としたこと。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液体ストリーマ状放電発生装置では、電源部は立ち上がりが急峻な高電圧パルスを一対の電極間に印加することにより、電源部の回路規模の増大を抑制しつつ、ストリーマ状放電の進展長の延長やその数を増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施形態の液体ストリーマ状放電発生装置は、液体中の放電を生成する一対の電極と、この一対の電極間に所定の周期で繰り返し高電圧パルスを印加して放電を行わせる電源部とを備えている。
【0014】
しかも、電源部は、一対の電極間に印加する高電圧パルスとして、立ち上がりが急峻な高電圧パルスを印加するようにしている。これにより、ストリーマ状放電の進展長の延長やその数を増加させることができる。その結果、電源部の回路規模の増大を抑制することができる。
【0015】
また、上記一対の電極を、高電圧パルスを印加する線状電極又は針状電極と、接地した平板電極、メッシュ状電極、リング状電極又は筒状電極とから構成することで、表面積の小さい線状電極又は針状電極からストリーマ状放電を行なうことができる。
【0016】
また、高電圧パルスを印加する線状電極又は針状電極を複数設けることで電極対を複数として、ストリーマ状放電による処理容積をより増加させることができる。
【0017】
また、線状電極及び針状電極は、その一部からのみ放電を行うべく前記一部を除き絶縁部材で被覆することにより、線状電極及び針状電極の放電面積を小さくすることができ、放電不良などをより抑制することができる。
【0018】
さらに、電源部は、パルス電流を発生するパルス発生回路と、可飽和リアクトルとコンデンサとを有し、パルス電流から磁気パルス圧縮によりパルス幅を狭くしたパルス電流を生成する磁気パルス圧縮部と、磁気パルス圧縮部の出力に接続されたピーキングコンデンサと、を備え、磁気パルス圧縮部のコンデンサの容量値をピーキングコンデンサの容量値の2倍以上とすることにより、電源部の回路規模を増大させることなく、容易に立ち上がりが急峻な鋸波状の高電圧パルスをさせることができる。しかも、高電圧パルスを高い周期で繰り返し発生させることができる。
【0019】
以下において、本発明の実施形態を詳説する。図1は本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置の構成を示す図、図2は本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置の電極の配置を説明するための図、図3は本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置による放電電圧電流波形を示す図,図4は従来の液体ストリーマ状放電発生装置によるストリーマ状放電の様子を示す図、図5は本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置によるストリーマ状放電の様子を示す図、図6は高電圧パルスを印加する電極の数を複数設けた一例を示す図である。
【0020】
図1に示すように、液体ストリーマ状放電発生装置Aでは、所定の周期で繰り返し高電圧パルスを発生する高繰返しパルス電源部20と、この高繰返しパルス電源部20に接続され、高電圧パルスが印加されて液体中の放電を生成する一対の電極31,32とを備えている。そして、この液体ストリーマ状放電発生装置Aは、容器33に収納された液体34内でストリーマ状放電を数百回/sの頻度で発生させる。なお、本実施形態においては、液体34として水を用いることとするが、他の液体においても同様のストリーマ状放電が得られる。
【0021】
高繰返しパルス電源部20は、パルス電流I1を発生するパルス発生回路21と、このパルス発生回路21が出力するパルス電流I1から磁気パルス圧縮した狭幅のパルス電流I3を生成する磁気パルス圧縮部22とから構成される。
【0022】
パルス発生回路21は、高圧充電器10により電力用の初段コンデンサC0を初期充電している状態で、半導体スイッチSWのオン制御でコンデンサC0から可飽和リアクトルSI0を通してパルストランスPTにパルス電流I0を流す。このとき可飽和リアクトルSI0は磁気スイッチ動作し、半導体スイッチSWが完全にオン動作した後に電流I0を流すことで半導体スイッチSWのスイッチング損失を軽減する。
【0023】
パルストランスPTの2次側には磁気パルス圧縮部22が接続される。この磁気パルス圧縮部22は、2つの磁気パルス圧縮回路23a,23bが縦続接続されて構成される。初段の磁気パルス圧縮回路23aにおいてはパルストランスPTで昇圧したパルス電流I1でコンデンサC1が高圧充電され、このコンデンサC1の充電電圧で可飽和リアクトルSI1が磁気スイッチ動作することにより磁気パルス圧縮した狭幅のパルス電流を次段の磁気パルス圧縮回路23bに供給する。同様の磁気スイッチ動作により、次段の磁気パルス圧縮回路23bで磁気パルス圧縮が行なわれる。なお、図示しないがパルストランスPTや可飽和リアクトルSI0〜SI2にはそれぞれ磁気リセット回路が設けられ、この磁気リセット回路によってパルストランスPTや可飽和リアクトルSI0〜SI2のリセット巻線に直流バイアス電流をそれぞれ供給してコアの磁化方向を初期状態に戻すようにしている。
【0024】
磁気パルス圧縮回路23bのパルス出力は、一対の電極31,32に狭幅の高電圧パルス電流I4を供給する。高繰返しパルス電源部20にはピーキングコンデンサCPが設けられており、パルス電流I3でピーキングコンデンサCPが一定電圧レベルまで充電されたときに一対の電極31,32間での放電が行なわれる。
【0025】
図2に示すように、電極31は線状又は針状であり、容器33内の液体34の液面又はその近傍に配置される。この電極31は、その先端部31aからのみ放電を行うべく先端部31aを除き絶縁部材40で被覆される。これにより、電極31の液体との接触面積を小さくすることができ、三重点からの液中ストリーマ放電を生成できる。ここでは、電極31の直径を0.8mmとし、電極31を絶縁部材40で被覆したときの直径を3.0mmとする。また、図2に示すように、絶縁部材40で被覆した線状の電極31を切断してその先端部31aを形成するようにしている。なお、絶縁部材としては、例えば、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステルなどを用いることができる。また、線状の電極31の材料として、ステンレス、チタン、タングステン、銅、鉄、アルミなどを用いることができる。
【0026】
また、電極32は、平板状の電極であり、容器33の液体34中の底面に配置される。ここでは、電極32の材料として、ステンレス、チタン、タングステン、銅、鉄、アルミなどを用いることができる。なお、この電極32は、平板状の電極に代えて、メッシュ状電極、リング状電極又は筒状電極を用いるようにしてもよい。
【0027】
ここで、高繰返しパルス電源部20では、最終段の磁気パルス圧縮回路23bのコンデンサC2の容量値をピーキングコンデンサCPの容量値の2倍以上としている。これにより一対の電極31,32間には、図3(a),(b)に示すように、立ち上がりが急峻な鋸歯状の電圧及び電流が発生する。図3(a)は電極31,32間の電圧波形を示し、図3(b)は電極31,32間の電流波形を示す。
【0028】
このように立ち上がりが急峻な鋸歯状の電圧及び電流を電極31,32間に印加することによって、図4に示すような従来のストリーマ状放電に比べて、図5に示すように、ストリーマ状放電の進展長及びその数をより増加させることができる。しかも、パルス圧縮回路の段数を増加させずに、ピーキングコンデンサCPの容量値を調整することで、立ち上がりが急峻な鋸歯状の電圧及び電流を発生させることができるので、高繰返しパルス電源部20の回路規模の増大を抑制することができる。
【0029】
本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、電極31,32間に印加する高電圧パルスは、立ち上がりが急峻な鋸歯状の高電圧パルスに限らず、立ち上がりが急峻な方形波状の高電圧パルスや立ち上がりが急峻な三角波状の高電圧パルスであってもよく、結果的に立ち上がりが急峻な高電圧でかつ数μsのパルスであれば、ストリーマ状放電の進展長の延長やその数を飛躍的に増加させ、かつ安定的に数百Hz以上の高繰り返しで発生できる知見を得ることができたものである。
【0030】
また、図6に示すように、線状の電極31を多数設けることにより電極対を複数として、高繰返しパルス電源部20の数を増加させることなく、同時に各電極31からストリーマ状放電を発生させることができる。これにより、液体34中における化学物質の分解、オゾン生成、水処理(アオコなどの有害生物処理)、殺菌、ダイオキシン処理等を効率的に行なうことができる。このように線状又は針状の電極31は、その一部(先端部31aや後述の開口部40aなど)からのみ放電を行うべく一部を除き絶縁部材40で被覆される。
【0031】
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0032】
例えば、パルス圧縮回路の段数を2段としたが1段あるいは3段以上としてもよい。また、鋸歯状の高電圧パルスとして2連の鋸歯状のものを例に挙げて説明したが、1連または3連以上の鋸歯状のものでもよい。
【0033】
また、立ち上がりが急峻な高電圧パルスを発生させる回路として、図1の回路を例に挙げて説明したがこれに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置の構成を示す図である。
【図2】本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置の電極の配置を説明するための図である。
【図3】本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置による放電電圧電流波形を示す図である。
【図4】従来の液体ストリーマ状放電発生装置によるストリーマ状放電の様子を示す図である。
【図5】は本実施形態における液体ストリーマ状放電発生装置によるストリーマ状放電の様子を示す図である。
【図6】高電圧パルスを印加する電極の数を複数設けた一例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
A 液体ストリーマ状放電発生装置
10 高圧充電器
20 高繰返しパルス電源部(電源部)
21 パルス発生回路
22 磁気パルス圧縮部
23a,23b 磁気パルス圧縮回路
31 線状又は針状の電極
32 平板状の電極
33 容器
34 液体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中の放電を生成する一対の電極と、
前記一対の電極間に所定の周期で繰り返し高電圧パルスを印加して放電を行わせる電源部と、を備え、
前記電源部は、前記一対の電極間に印加する高電圧パルスとして、立ち上がりが急峻な高電圧パルスを印加することを特徴とする液体ストリーマ状放電発生装置。
【請求項2】
前記一対の電極は、前記高電圧パルスを印加する線状電極又は針状電極と、接地した平板電極、メッシュ状電極、リング状電極又は筒状電極とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の液体ストリーマ状放電発生装置。
【請求項3】
前記電極対を複数設けたことを特徴とする請求項2に記載の液体ストリーマ状放電発生装置。
【請求項4】
前記線状電極又は針状電極は、その一部からのみ放電を行うべく前記一部を除き絶縁部材で被覆されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の液体ストリーマ状放電発生装置。
【請求項5】
前記電源部は、
パルス電流を発生するパルス発生回路と、
可飽和リアクトルとコンデンサとを有し、前記パルス電流から磁気パルス圧縮によりパルス幅を狭くしたパルス電流を生成する磁気パルス圧縮部と、
前記磁気パルス圧縮部の出力に接続されたピーキングコンデンサと、を備え、
前記磁気パルス圧縮部のコンデンサの容量値を前記ピーキングコンデンサの容量値の2倍以上としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体ストリーマ状放電発生装置。
【請求項1】
液体中の放電を生成する一対の電極と、
前記一対の電極間に所定の周期で繰り返し高電圧パルスを印加して放電を行わせる電源部と、を備え、
前記電源部は、前記一対の電極間に印加する高電圧パルスとして、立ち上がりが急峻な高電圧パルスを印加することを特徴とする液体ストリーマ状放電発生装置。
【請求項2】
前記一対の電極は、前記高電圧パルスを印加する線状電極又は針状電極と、接地した平板電極、メッシュ状電極、リング状電極又は筒状電極とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の液体ストリーマ状放電発生装置。
【請求項3】
前記電極対を複数設けたことを特徴とする請求項2に記載の液体ストリーマ状放電発生装置。
【請求項4】
前記線状電極又は針状電極は、その一部からのみ放電を行うべく前記一部を除き絶縁部材で被覆されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の液体ストリーマ状放電発生装置。
【請求項5】
前記電源部は、
パルス電流を発生するパルス発生回路と、
可飽和リアクトルとコンデンサとを有し、前記パルス電流から磁気パルス圧縮によりパルス幅を狭くしたパルス電流を生成する磁気パルス圧縮部と、
前記磁気パルス圧縮部の出力に接続されたピーキングコンデンサと、を備え、
前記磁気パルス圧縮部のコンデンサの容量値を前記ピーキングコンデンサの容量値の2倍以上としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体ストリーマ状放電発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2009−283420(P2009−283420A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137162(P2008−137162)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行所 社団法人 電気学会 刊行物名 平成20年 電気学会全国大会 講演論文集 該当頁 第191頁 発行日 平成20年3月1日
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【出願人】(596009788)株式会社末松電子製作所 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行所 社団法人 電気学会 刊行物名 平成20年 電気学会全国大会 講演論文集 該当頁 第191頁 発行日 平成20年3月1日
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【出願人】(596009788)株式会社末松電子製作所 (16)
【Fターム(参考)】
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