説明

液体センサ

【課題】気泡や液滴に対して適切な検出感度を与える。
【解決手段】
透光性チューブ内の液体を光学的に検出するための液体センサが提供される。本発明の実施形態に係る液体センサは、透光性チューブの長さ方向に離れた2箇所において、それぞれ透光性チューブ内の液体の有無を検出する2つの光学系を備えている。上記2箇所の間隔は、液体の供給源が液切れしていない時に透光性チューブ内に現れる気泡の典型的な長さよりも長く、液切れ時に現れる気泡の典型的な長さの範囲内となるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性チューブ内の液体の有無を光学的に検出する液体センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
透光性を有する輸液チューブの側面から光を入射し、チューブを透過する光又はチューブ内壁面で屈折(若しくは反射)する光を検出することにより、チューブ内の液体を検出する液体センサが広く使用されている。このような液体センサとして、例えば特許文献1に記載されているような、透光性チューブを透過する光の強度に応じて、透光性チューブ内に液体が存在するか否かを検出するものがある。
【0003】
特許文献1に記載の液体検出装置においては、透光性チューブの中心軸に対して略垂直にセンサ光が入射され、透光性チューブを直進的に透過した光が受光部により検出される。円筒形の透光性チューブ内に充填された透明な液体は、透光性チューブに垂直に入射するセンサ光に対して、一種のレンズとして作用し、光を収束させる。また、透光性チューブを形成する樹脂は液体と屈折率が近いため、透光性チューブ内が液体で充填されているときは、透光性チューブの内壁面で光が反射することがない。そのため、透光性チューブ内に液体が有るときは、センサ光は透光性チューブを直進的に透過し、受光部により強いセンサ光が検出される。一方、透光性チューブ内に液体が無いときは、レンズ作用が生じないため、センサ光は透光性チューブ内で発散し、かつ内壁面で反射するため、受光部により検出されるセンサ光は極めて弱いものとなる。このように受光部が検出するセンサ光の強度に基づいて、透光性チューブ内の液体の有無を判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−336966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、輸液チューブの液体中にはしばしば気泡が出現する。これは、主に液温変動等により液体中に溶解していた気体が析出したものである。また、粘性の高い液体や、洗剤のように気泡が安定に存在する液体では、輸送時等に気体と共に攪拌された際に発生した気泡が液体中に残留することもある。このような気泡は比較的に小さく、一般に目視限界以下から数mm程度の大きさをもつ。
【0006】
また、内部の液体が抜けて空になった輸液チューブの内壁面には、内壁に付着して残留した液体が液滴を形成する。
【0007】
このような気泡や液滴は、誤検出の原因となり得る。特許文献1に記載されるような従来の液体センサは、輸液チューブの一箇所のみで液体の検出を行うため、気泡や液滴による誤検出を回避することが難しかった。
【0008】
一方、医療用や精密化学用等の一部の用途においては、上記のような気泡の含有が厳しく制限されており、より高い精度で気泡を検出することが要求されている。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の実施形態によれば、気泡や液滴に対して適切な感度を有する液体センサが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態によれば、透光性チューブ内の液体を光学的に検出するための液体センサが提供される。本発明の実施形態に係る液体センサは、透光性チューブの長さ方向に離れた2箇所において、それぞれ透光性チューブ内の液体の有無を検出する2つの光学系を備えている。この2箇所の間隔は、液体の供給源が液切れしていない時に透光性チューブ内に現れる気泡の典型的な長さよりも長く、液切れ時に現れる気泡の典型的な長さの範囲内となるように設定されている。
【0011】
本発明の実施形態に係る液体センサは、液体を検出する2つの光学系を備えることにより、気泡による誤検知を抑制することができる。特に、2つの光学系による検出箇所の間隔を、液切れしていないときにチューブ内にしばしば現れる気泡の長さよりも長くすることにより、2つの光学系が同時に誤検知する可能性を低減させることができる。また、検出箇所の間隔を、液切れ時にチューブ内にしばしば現れる大きな気泡の長さの範囲内に設定することにより、液切れの前兆となる大型気泡を検出することが可能になる。
【0012】
上記の間隔は15mm以上であり、一つの典型的な間隔は15mmである。また、上記の間隔は20mm以上であることが望ましく、幾つかの実施形態における間隔の最適値は20mmである。
【0013】
また、上記構成においては、2つの光学系の少なくとも一方が液体を検出する場合に液体が有ると判定し、2つの光学系の両方とも液体を検出しない場合に液体が無いと判定することが望ましい。
【0014】
このような判定により、液切れと関係しない小さな気泡による誤検出を抑制しつつ、液切れ又は液切れの前兆となる大きな気泡を正確かつ早期に検出することが可能になる。
【0015】
透光性チューブの長さ方向に離れた3箇所以上の複数個所において、それぞれ透光性チューブ内の液体の有無を検出する3つ以上の光学系を備えていてもよい。
多数の光学系を備えることにより、より正確に液切れを判定することが可能になる。
【0016】
望ましくは、2つの光学系は、それぞれ光源と受光素子を備えており、光源が放射する光束は、透光性チューブの中心軸と垂直に該透光性チューブに側面から入射する。この場合、光束が入射した箇所において、透光性チューブ内に液体が有るときは、光束は透光性チューブを直進的に通過して、受光素子により検出される。透光性チューブ内に液体が無いときは、光束は透光性チューブの内壁で屈折又は反射して、受光素子により検出さない。
【0017】
このような構成においては、受光素子が検出信号を出力しないときが異常(液切れ)状態に対応する。従って、光学素子の故障等により検出信号が出力されなくなった場合も異常状態と判断されるため、装置の故障や動作不良による誤判定が防止される。
【0018】
典型的には、光学系の光源と受光素子は、透光性チューブを介して、発光面と受光面が対向するように配置される。
このような配置により、ミラー等の偏向手段を要しない、シンプルな構成の光学系が実現される。
【0019】
また、2つの光学系の受光素子は、受光面を互いに逆向きにして配置されていることが望ましい。
【0020】
この構成により、別の光学系の光を誤検出する可能性を大幅に減らすことができる。また、3つ以上の光学系を設ける場合には、隣接する光学系の間で受光面の向きを逆向きにすることが望ましい。
【0021】
本発明の実施形態に係る液体センサは、光源と受光素子を収容した本体と、2箇所を含む透光性チューブの一部を覆って外光から遮蔽すると共に、本体に対して該透光性チューブを位置決めして取り付けるアタッチメントとを備えていることが望ましい。またこの場合において、本体は光源及び受光素子を覆って外光から遮蔽する遮光部材を備え、アタッチメントと遮光部材には光束を通過させるための2対の開口が上記の間隔で形成されていることが望ましい。上記構成においては、各光学系の発光面と受光面の間に、アタッチメントの開口の1対と遮光部材の開口の1対がそれぞれ配置されていることが望ましい。
【0022】
上記構成のアタッチメントを採用すると、液体センサの着脱や透光性チューブの交換が容易になる。このようなアタッチメントに、透光性チューブの検出箇所を誤検出の原因となる外光から遮蔽する機能や、本体に収容される光学素子に対して透光性チューブを正確に位置決めする機能を与えることで、着脱容易性と優れた検出精度の両立が可能になる。また、遮光性を維持しつつ、本体の光学素子と透光性チューブを結ぶ光路を確保するために、光路上の遮蔽物に開口を設ける構成が有効である。
【0023】
開口は透光性チューブに直径方向の投影を与えるスリットであってもよい。
丸穴よりもスリットの方が容易に加工することができる。また、レンズにより光束をチューブ上に集光する場合は開口を広げる必要があるが、二軸方向に(平面的に)開口を拡げると遮光効果が著しく低下するため、開口を一軸方向に拡げてスリット状にすることが望ましい。また、この場合には円筒レンズにより光束を集光することが望ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の実施形態によれば、気泡や液滴に対して適切な感度を有する液体センサが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の例示的な実施形態に係る液体センサの外観を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の例示的な実施形態に係る液体センサの内部構造を概略的に示す分解斜視図である。
【図3】本発明の例示的な実施形態に係る液体センサの外観を概略的に示す三面図である。
【図4】本発明の例示的な実施形態に係る液体センサの内部構造を概略的に示す断面図である。
【図5】本発明の例示的な実施形態に係る液体センサの回路ユニットの概略構成を示すブロック図である。
【図6】結束バンドを使用してチューブを固定した状態を示す外観図である。
【図7】本発明の実施形態に係るチューブアジャスタの装着方法を説明する分解図である。
【図8】本発明の実施形態に係るチューブアジャスタの外観を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の例示的な実施形態に係る液体センサ1について詳細に説明する。液体センサ1は、透光性チューブT内の液体の有無を光学的に検出するセンサである。液体センサ1は、例えば、洗浄装置への洗浄液の供給等に使用される液体供給装置において、輸液管の中途に取り付けられ、供給する液体が貯蔵される貯液タンクの液切れ検出等に使用される。また、貯液タンクの底部と上部とを連絡する配管の所定の高さにこの液体センサを取り付けると、タンク内の液面レベル(液体センサの取り付け高さよりも液面レベルが高いか/低いか)を検出することもできる。
【0027】
図1は本発明の実施形態に係る液体センサ1の外観を概略的に示した斜視図であり、図2は液体センサ1の内部構造を概略的に示した分解斜視図である。また、液体センサ1の外観を概略的に示した三面図を図3に示す。また、液体センサ1の内部構造を概略的に示した断面図を図4に示す。なお、図3(a)はZ軸方向(図1参照)から見た平面図であり、図3(b)はY軸方向(図1参照)から見た正面図であり、図3(c)は透光性チューブTの長さ方向であるX軸方向(図1参照)から見た側面図である。また、図4(a)、(b)及び(c)は、それぞれ図3(a)におけるA−A、B−B及びC−C断面図である。
【0028】
液体センサ1は、本体100とアタッチメント200を備えている。本体100には、液体を検出するための光学素子(光源34、受光素子35)が実装された回路ユニット30が収容されている。アタッチメント200は、透光性チューブTの液体検出箇所を外光から遮蔽するとともに、本体100の光学系に対して透光性チューブTを正確に位置決めして保持するための部材である。透光性チューブTの取替えを容易にするために、アタッチメント200は本体100に対して容易に着脱できるように構成されており、またアタッチメントも透光性チューブTを着脱自在に構成されている。
【0029】
なお、以下の説明においては、図1に示す座標軸に従い、透光性チューブTの長さ方向をX軸方向、本体100の底面(取付面)と垂直な方向をZ軸方向、X軸方向及びZ軸方向の双方と垂直な方向をY軸方向と呼ぶ。また、Z軸正方向(図中の矢印方向)を「上」、Z軸負方向(矢印の逆方向)を「下」と呼ぶ。この「上」や「下」という表現は、各要素の配置関係を分かり易く特定するために説明の便宜上使用するものであり、液体センサ1が実際に使用される状況においては、これらの方向が必ずしも鉛直方向に一致するとは限らない。すなわち、液体センサ1は、図に示されるZ軸方向を任意の方向(例えば水平方向)に向けて配置することができる。
【0030】
図2の分解斜視図に示されるように、液体センサ1の本体100は、筐体10、パッキン20、回路ユニット30、遮光ガイド40、及びカバー50を備えている。
【0031】
なお、本実施形態の回路ユニット30は、互いに所定の間隔を離して平行に配置された2枚の回路基板30a及び30bを備えており、回路基板30a及び30bは図示されない連結部により一体に連結されている。
【0032】
筐体10は、上方に開口を有する、外形が略直方体の箱である。筐体10の内部に収容される光学素子を外光から遮蔽するために、筐体10は後述する受光素子35が感度を有する波長域の光に対して実質的に不透明な材料から形成される。本実施形態の筐体10は着色樹脂から形成されているが、筐体を形成する材料はこれに限定されない。例えば、筐体10を透明な樹脂から形成して、内側を遮光塗料で塗布する構成や、あるいは遮光フィルムで筐体10の内部を覆う構成としてもよい。
【0033】
パッキン20を介して筐体10の上部開口をカバー50で覆い、長ねじ24により筐体10とカバー50を固定すると、筐体10とカバー50により囲まれた本体100の内部空間は水密となり、本体100の内部に配置される回路ユニット30の防水が確保される。
【0034】
なお、図4(c)に示されるように、筐体10の内側底面には上方に突出する円柱状の固定柱12が形成されており、この固定柱12の上面中央には下方に延びる雌ねじ12hが形成されている。また、カバー50の中央には、上下に貫通する貫通穴50hが形成されている。また、回路ユニット30を構成する一方の回路基板30aの中央にも貫通穴30ahが形成されている。長ねじ24は、カバー50の貫通穴50h及び回路基板30aの貫通穴30ahに通され、筐体10に形成された雌ねじ12hにねじ込まれることで、カバー50、回路ユニット30及び筐体10を一体に固定して、カバー50を筐体10に密着させる。
【0035】
ところで、本実施形態においては、筐体10が遮光性を有するのとは対照的に、カバー50は、光源の波長に対して高い透過率を有する透明樹脂から形成されている。本実施形態では、光学素子を含む回路ユニット30を確実に防水するために、回路ユニット30を水密な本体100の内部に配置すると共に、漏水する可能性のある透光性チューブTを本体100の外部に配置する構成が採用されている。そのため、カバー50を介して透光性チューブT内の液体が検出できるように、カバー50はモニタ光50に対して透光性を有する材料から形成されている。カバー50を形成する透明樹脂材料としては、従来一般に使用されているポリカーボネート(PC)樹脂やPMMA(polymethylmethacrylate)等のアクリル樹脂等を使用することもできるが、十分な光学的特性及び機械的特性に加えて耐薬品性や耐熱性に優れたポリスルホン(PSU)樹脂が最も適している。
【0036】
また、本実施形態においては、筐体10もPSU樹脂から形成されている。但し、筐体10に使用されるPSU樹脂には、受光素子35が感度を有する波長域に高い吸収を有する着色剤が添加されており、光学素子が外光から遮蔽されるようになっている。このように、本体100の密閉容器を構成するカバー50及び筐体10を耐熱性に優れたPSU樹脂から形成することにより、本体100のオートクレーブが可能になり、衛生管理が必要な医療や食品製造の現場において安全に使用できるようになっている。また、内部構造が見えないように、可視域に吸収を有する着色剤を添加した樹脂を使用して筐体10及び/又はカバー50を形成してもよい。
【0037】
筐体10の側面には、後述する設定部32にアクセスするための操作部17が形成されている。図3(d)に操作部17の拡大図を示す。操作部17は、筐体10内に配置された設定部32のスイッチ等が操作できるように筐体10の肉厚が薄く形成された凹部であり、後述する感度レンジ切り替えスイッチ32aや感度微調整つまみ32bが通る貫通穴17a、17bが形成されている。また、操作部17には防水キャップ21が差し込まれ、使用時に防水が確保されるようになっている。
【0038】
また、筐体10の側面には、後述するケーブル60を通すためのケーブル引き出し口18が設けられている。ケーブル引き出し口18にケーブル60を通して、防水キャップ22を取り付けることにより、ケーブル引き出し口18を介した外部から本体100内への液体の浸入が防止される。
【0039】
本体100の内部空間には、回路ユニット30、4つの遮光ガイド40、及びケーブル60の一端が収容される。なお、ケーブル60は、回路ユニット30に接続され、回路ユニットに給電するとともに、回路ユニットが出力する警報信号を外部機器へ伝送する。
【0040】
回路ユニット30は、連結した2枚のプリント配線基板30a及び30b上に実装された電気回路である。図5は、回路ユニット30の概略構成を示すブロック図である。図5に示されるように、回路ユニット30は、制御部31、設定部32、光源駆動回路33、光源34、受光素子35、信号処理回路36、警報出力部37、LEDインジケータ38、及び外部出力端子39を備えている。
【0041】
制御部31は、設定部32、光源駆動回路33、信号処理回路36、及び警報出力部37と接続され、回路ユニット30全体の動作を制御する。また、制御部31は、信号処理回路36の出力(すなわち受光素子35が検出した光量を示す信号)に基づいて透光性チューブT内の液体の有無を判定する液切れ判定回路31aを備えている。制御部31は、液切れ判定回路31aが液切れ(透光性チューブT内に液体が無い状態)であると判定すると、警報出力部37を制御して、LEDインジケータ38を点滅させ、及び/又は外部出力端子に警報信号を出力させる。
【0042】
設定部32は、受光感度及び後述する動作モード(「判定モード」とも言う)を設定するためのユニットであり、図2に示されるように、感度レンジ切り替えスイッチ32a、感度微調整つまみ32b、及び図示されない動作モード切替スイッチを有している。感度レンジ切り替えスイッチ32aは、検出する液体の特性に応じて受光感度を大きく2つの設定レンジ(高感度レンジと低感度レンジ)に切り替えるための切り替えスイッチである。低感度レンジは透明度の高い液体を検出する際に使用され、高感度レンジは懸濁液や光源の波長域に強い吸収を有する液体等の透明度の低い(すなわち、チューブ内に液体が存在しているときの透過光量が少ない)液体を検出する際に使用される。感度微調整つまみ32bは、各感度設定レンジにおいて感度の微調整を行うための可変抵抗器である。動作モード切替スイッチは、液体センサ1が動作可能な複数の動作モードの設定を切り替えるためのディップスイッチである。各動作モードの詳細は後述する。
【0043】
光源駆動回路33には光源34が接続されており、光源34に駆動電流を供給する。光源34は、光源駆動回路33から供給された駆動電流によりモニタ光を発生する。受光素子35は、透光性チューブTを略直進的に透過したモニタ光を受光して、受光量に応じた電流信号を信号処理回路36に出力する。信号処理回路36は、受光素子35が出力する電流信号を電圧信号に変換して増幅し、制御部31に出力する。
【0044】
なお、本実施形態では光源34としてピーク発光波長が940nmの近赤外LED光源が使用されるが、他の種類や発光波長の光源を使用してもよい。例えば可視光源や、高出力のLD光源等を使用することができる。光源34の発光波長や出力は、使用する透光性チューブTや検出する液体の光学特性等に応じて適宜選択することができる。また、本実施形態では受光素子35としてシリコンフォトダイオードが使用されるが、他の種類の受光素子を使用してもよい。受光素子35には、光源34が発生するモニタ光の波長に対して十分な感度を有するものが選択される。
【0045】
図4(a)に示されるように、各光学系の光源34の発光面と受光素子35の受光面の中間に透光性チューブTが配置される。そして、光源34から放射されたモニタ光の光束は、透光性チューブTの中心軸を通り、かつ中心軸と直交するように、透光性チューブTに側面から入射する。
【0046】
図2〜5に示されるように、回路ユニット30は、一対の光源34と受光素子35を含む光学系を2系統備えている。また、図4(a)に示されるように、各系統の光源34と受光素子35の対は、発光面と受光面が一定の間隔d(例えば15mm)だけ離れて対向するように配置されている。一対の光学素子の間隔dは、素子間に配置される透光性チューブTの外径に応じて適宜設定される。また、各系統の光源34と受光素子35の対は、互いの光軸が正確に一致するように位置決めされる。この正確な位置決めは、後述するようにスペーサ30c、遮光ガイド40及びカバー50により実現される。
【0047】
また、図3(a)に示されるように、2つの光学系(互いに対向して配置された光源34と受光素子35の対)の光軸は、透光性チューブTの長さ方向に所定の間隔d(例えば20mm)だけ離れて配置されている。すなわち、本実施形態の液体センサ1は、透光性チューブTの長さ方向に所定距離d離れた2点において、透光性チューブTを略直進的に透過するモニタ光の強度を検出する。
【0048】
また、図2に示されるように、2系統の光学系は、モニタ光の照射方向(言い換えれば、光源34の発光面及び受光素子35の受光面の向き)が互いに逆向きになるように配置されている。このように、隣接する2系統の光学系の照射方向を互いに逆向きにすることにより、受光素子が他の系統のモニタ光を受光することが無く、液体の検出をより正確に行うことが可能になる。
【0049】
また、図2に示されるように、各受光素子(光源34及び受光素子35)のパッケージ部の下には、ピンを囲むようにスペーサ30cが配置されている。このスペーサ30cは、全て同一の高さを有しており、各受光素子を基板に実装する際に基板からの光軸の高さを正確に位置決めするために使用される。
【0050】
遮光ガイド40は、光学系を外光から遮蔽すると共に、各光学素子をカバー50に対して正確に位置決めするための部材であり、各光学素子に1つ設けられている。遮光ガイド40は、筐体10と同様に、受光素子35が感度を有する波長域の光に対して不透明な材料から形成される。本実施形態の遮光ガイド40は着色樹脂から形成されている。
【0051】
遮光ガイド40は、略直方体の外形を有し、また下面に開口する内部空間44(図4)を有するキャップ状の部材である。遮光ガイド40の内部空間44は、各光学素子のパッケージ部及びスペーサ30cの上部を、少なくとも光学素子のパッケージ部については遊び無く収容するように形成されており、各遮光ガイド40は、回路基板30aの上面に実装された各光源34及び受光素子35に被せられる。また、遮光ガイド40の下端には基板に固定するための2本の固定ピンが形成されている。これらの固定ピンを回路基板30aに設けられた対応するスルーホールに差し込むことにより、遮光ガイド40内に収容された光学素子について回路基板30a(XY平面)上の正確な位置決めが行われる。
【0052】
遮光ガイド40の、発光面又は受光面に面する側壁には、光軸が通る位置にモニタ光のビーム径と略同径の丸孔40hが開けられている。光源34に被せられた遮光ガイド40の丸孔40hは、光源34から放射されたモニタ光のビームプロファイルのうち液体検出に有効な中央部分のみを通過させ、液体検出に寄与しない周辺部分(裾の部分)をカットする。このようなモニタ光の周辺領域の成分は、液体の検出に寄与しないだけでなく、ノイズ光となって誤検出の原因となる。そのため、モニタ光の周辺領域の成分を丸孔40hに通過させずに遮光ガイド40内に閉じ込めることにより、光学的ノイズが減少して、誤検出の発生が抑制される。また、受光素子35に被せられた遮光ガイド40は、受光素子35によって検出される光を、遮光ガイド40の丸孔40hを通過し、かつ受光素子35の光軸と略平行に進む光線のみに制限する。これにより、受光素子35により受光される光は、実質的に同一光学系の光源34から受光素子35に直接入射する光のみとなり、外光や散乱光等の光学的ノイズが除去される。
【0053】
また、遮光ガイド40の正面(丸孔40hが形成された面)を除く3面の側壁は、内側に倒れるように緩やかに傾斜している。これらの傾斜面は、カバー50を筐体10に取り付ける際に、カバー50の内側に形成された空間(凹部54)に遮光ガイド40が正しく収容されるためのガイドとして機能する。
【0054】
カバー50は、モニタ光を透過可能にしつつ本体100を密封する透明な蓋としての役割に加えて、透光性チューブT(直接的には透光性チューブTに装着されたアタッチメント200)を光学素子(直接的には遮光ガイド40)に対して位置決めする役割を有している。カバー50には、上方に突出してX軸方向に延びる2つの突出部51と、この2つの突出部51に挟まれた凹部52が形成されている。凹部52には透光性チューブTが収容される。また、カバー50には、透光性チューブTを所定位置に支持するための、YZ面と平行な4つの支持壁53が、2つの突出部51を連絡するように形成されている。支持壁53には、透光性チューブTが収容されるU字溝53aが形成されている。U字溝53aの下部曲面の径は、液体センサ1に適合する透光性チューブTの最大径と同径に形成されている。また、U字溝53aの上部壁面は、透光性チューブTをU字溝53aに落とし入れ易くするために、上側ほど溝幅が広がるようなテーパ面となっている。
【0055】
突出部51の内側には、遮光ガイド40を遊び無く収容する凹部54が形成されている。上述のように、遮光ガイド40は、丸孔40hが形成されたXY平面と垂直な1つの側壁と、内側に倒れるように緩やかに傾斜した3つの側壁を有している。各凹部54には、遮光ガイド40のこれらの側壁に対応して、1つの垂直な内壁面と3つの傾斜した内壁面が形成されており、本体100を組み立てる際に傾斜した内壁面が遮光ガイド40をカバー50(延いては透光性チューブT)に対して正確な位置に案内するようになっている。
【0056】
また、カバー50の側面下部には、外側に突出する鍔部55が形成されている。また、カバー50のX軸方向両端には、鍔部55から垂直上方に延びる支持壁56が形成されている。支持壁56にも、支持壁53のU字溝53aと同様のU字溝56aが形成されている。また、支持壁56上部のY軸方向両端からX軸方向に伸び、支持壁56と各突出部51とを連結する連結壁57が設けられている。更に、U字溝56aの底部と、支持壁56に最も近い支持壁53のU字溝53aの底部とを連絡する下側把持部58が形成されている。下側把持部58の上面は、U字溝53a及びU字溝56aの各底面と連続した一つの曲面を形成する。
【0057】
また、図3に示されるように、LEDインジケータ38の真上に位置する、一方の突出部51の上面には、レンズ状の曲面に形成されたレンズ部59が設けられている。EDインジケータ38から放射された表示光は、レンズ部59により拡散されて、視野角が広げられる。レンズ部59によりLEDインジケータの視認性が向上する。
【0058】
次にアタッチメント200の構造及び機能について説明する。上述のように、アタッチメント200は、透光性チューブTの液体検出箇所を外光から遮蔽するとともに、本体100の光学系に対して透光性チューブTを正確に位置決めして保持するものである。そのためアタッチメントは、遮光性を有し、比較的に成形精度及び形状安定性に優れた樹脂から成形された一体部品となっている。図2〜4に示されるように、アタッチメント200は、透光性チューブTを上方から覆う半円柱状のカバー部210と、カバー部210のX軸方向両端においてカバー部210と透光性チューブTとの隙間を覆うように形成されたYZ平面と平行な側壁部220を有している。図5(b)に示されるように、側壁部220の下端中央はU字状に切り取られて上側把持部222が形成されている。上側把持部222の底部は透光性チューブTと同径の円柱面状に形成されており、カバー50の下側把持部58との間で透光性チューブTを挟み込んで把持できるようになっている。また、上側把持部222のY軸方向両側には、側壁部220の下端から上方に深く延びるスリット224が形成されている。スリット224によって隔てられた側壁部220のY軸方向外側の細長い部分は、Z軸方向に延びる弾性変形可能な脚部226として形成されている。また、脚部226の下端には、Y軸方向外側に突出する係合爪228が形成されている。
【0059】
図2及び図4(c)に示されるように、アタッチメント200のX軸方向中央には、カバー部210の下面から下方に突出した突出部230が形成されている。図4(c)に示されるように、突出部230の下端には、透光性チューブTを収容するU字状の溝232が形成されている。溝232の底部は透光性チューブTと同径の円柱面状に形成されており、透光性チューブTを伸展した状態で所定位置に保持する。
【0060】
また、アタッチメント200のX軸方向中央には、カバー部210の上面に結束バンドBのロック機構BLが収容される凹部250が形成されている。凹部250のY軸方向両端からは、カバー部210及び突出部230を上下に貫通する通し穴252が下方に向かって延びている。
【0061】
カバー部210の下面には、カバー50に設けられた4つの支持壁53のそれぞれと対向する位置に、支持壁53との間で透光性チューブTを挟持する4つの突出部240が形成されている。図4(a)に示されるように、突出部240の下端には、透光性チューブTと同径の円柱面状に形成された溝242が形成されており、透光性チューブTに大きな歪を与えずに、透光性チューブTを広い接触面積で挟持できるようになっている。
【0062】
また、図4(a)に示されるように、透光性チューブTを装着したアタッチメント200を液体センサ本体100に取り付けると、対向して配置された一組の光源34及び受光素子35の共通する光軸が透光性チューブTの中心軸を通るように、透光性チューブTが液体センサ本体100(具体的には各光学系の光軸)に対して正確に位置決めされる。
【0063】
次に、アタッチメント200を使用して透光性チューブTを液体センサ1に装着する手順と機構を説明する。最初に透光性チューブTにアタッチメント200を取り付ける。具体的には、アタッチメント200のX軸方向両端に設けられた側壁部220の下面に形成されたU字溝状の上側把持部222と、アタッチメント200のX軸方向中央に設けられた突出部230の下面に形成されたU字状の溝232に透光性チューブTを収容する。
【0064】
なお、アタッチメント200は透光性チューブTの標準的なサイズ(例えば3mm径、6mm径等)毎に用意され、使用する透光性チューブTの外径に適合したものが選択される。アタッチメント200(具体的には上側把持部222及び溝232)の設計寸法に完全に適合した透光性チューブTを通常の条件で使用する場合には、アタッチメント200の各U字溝に透光性チューブTを差し込むだけで、アタッチメント200は十分な把持力で透光性チューブTに取り付けられる。しかしながら、メーカーや種類(材質等)によって透光性チューブTの外径の仕様値(標準値及び公差)は様々であり、例えば呼び径3mmのチューブでも標準値が2.8mm程度と呼び径よりも10%程度細いものもある。このような細いチューブを使用する場合には、十分な把持力が得られないことがある。また、標準温度においてはアタッチメント200の設計寸法に完全に適合する透光性チューブTであっても、例えば使用温度が低い場合には透光性チューブTが収縮するため、アタッチメント200の寸法に適合しなくなることもある。また、例えば液体センサ1をチューブにぶら下げて使用する場合など、大きな引抜力が加えられる場合にも把持力が不足する。このように細いチューブを使用する場合や、大きな引抜力が掛かる等して透光性チューブTを把持する力が不足する場合には、結束バンドBを使用して透光性チューブTをアタッチメント200に縛り付けて強く固定する。
【0065】
結束バンドBにより透光性チューブTをアタッチメント200に固定する場合には、アタッチメント200の上側把持部222と溝232に透光性チューブTを差し込んだ状態で、結束バンドBの帯Baを通し穴252の一方に上から下へ通し、次いで他方の通し穴252に下から上へ帯Baを通した後、ロック機構BLに帯Baを差し込んで結束し、余った帯Baを切断する。図6は、結束バンドBを使用して透光性チューブTが装着された状態を示す液体センサ1の外観図である。図6(a)は上面図であり、そのD−D断面図が図6(b)である。図6に示されるように、結束バンドBのロック機構BLの大部分がアタッチメント200の凹部250内に収容され、アタッチメント200の外部にロック機構BLが大きく突出しないようになっている。液体センサは、しばしば厨房等のスタッフが動き回る狭い空間内に剥き出しの状態で設置される。そのため、液体センサの筐体から突出した結束バンドのロック機構BLに露出したスタッフの腕等が接触して、擦り傷が生じることがある。本実施形態の液体センサ1は、通常は結束バンドBを使用せずに透光性チューブTに装着することができ、また結束バンドBを使用する場合もロック機構BLがアタッチメント200の凹部250内に収容されるため、ユーザが結束バンドBのロック機構BLに接触して傷を負うことが防止される。
【0066】
次に、アタッチメント200を液体センサ本体100(具体的にはカバー50)に取り付ける手順と機構を説明する。透光性チューブTに装着されたアタッチメント200は、透光性チューブTをカバー50の凹部52に収容させ、凹部52をアタッチメント200により覆うようにカバー50に取り付けられる。具体的には、透光性チューブTをカバー50側に向けて、アタッチメント200のX軸方向両端に形成された側壁部220を、ケース50のX軸方向両端に形成された支持壁56、支持壁53及び一対の連結壁57により囲まれた空間に差し込むことで、ケース50にアタッチメント200が固定される。このとき、図4(b)に示されるように、アタッチメント200の四隅に配置された脚部226の係合爪228が、連結壁57の下端と係合し、ケース50からアタッチメントが外れないようになる。なお、スリット224が形成されているため、脚部226はY軸方向に弾性変形可能になっている。また、一対の係合爪228の間隔は、連結壁57の内側面の間隔よりも広いため、アタッチメント200を装着する際に、各係合爪228は対応する連結壁57によりY軸方向内側へ押される。このとき、脚部226が弾性変形してY軸方向内側へ曲がることで、一対の係合爪228の間隔が一対の連結壁57の内側面の間隔まで狭められる。一対の連結壁57の間を通過すると、弾性力により一対の係合爪228の間隔は元に戻り、係合爪228が連結壁57と係合してアタッチメント200が外れなくなる。なお、係合爪228をY軸方向内側に押し込むことで、係合爪228と連結壁57との係合が解除され、アタッチメント200の取り外しが可能になる。
【0067】
上述のように、本実施形態においては、アタッチメント200は一般的な透光性チューブTのサイズに対応した複数のサイズが用意されており、使用する透光性チューブTに適合したサイズのアタッチメント200が選択される。また、透光性チューブTの位置決めは、アタッチメント200と透光性チューブTとのマッチングだけでなく、液体センサ本体100(具体的にはカバー50)側の寸法とのマッチングにも関係する。しかしながら、液体センサ本体100の内部には光学素子を含む電気回路が配置されており、また防水構造も有しているため、ユーザが液体センサ本体100のカバー50を外すことは安全上及び品質保証上好ましくない。そのため、細い透光性チューブTを使用する場合には、透光性チューブTの中心軸が光軸上に正確に配置されるように、チューブアジャスタ300が使用される。
【0068】
図7はチューブアジャスタ300を使用して液体センサ1に透光性チューブTを装着する状態を説明する分解図であり、図8はチューブアジャスタ300の外観を示す斜視図である。なお、本実施形態におけるチューブアジャスタ300は、樹脂により一体成形された部材である。
【0069】
図8に示されるように、チューブアジャスタ300は、円筒を縦割りにしたような形状を有する、軸方向に並べて配置された2つのチューブ保持部310と、この2つのチューブ保持部310の底部を連結する連結部320と、各チューブ保持部310の下部に互いに平行に配置された2つの脚部330を有している。
【0070】
チューブ保持部310の円柱面状の外周面は、カバー50の支持壁53に形成されたU字溝53aに対応する形状に形成されている。また、2つのチューブ保持部310の配置間隔は、各光学系の光軸を挟んで隣接する2つの支持壁53と同じ配置間隔になっている。そして、2つのチューブ保持部310は、一方の光学系の光軸を挟んで隣接する2つの支持壁53のU字溝53a上に配置される。また、平行に配列した2つの脚部330の外側間隔(X軸方向外側の面同士の間隔)は、各光学系の光軸を挟んで隣接する2つの支持壁53の内側間隔(X軸方向内側の面同士の間隔)と一致するようになっている。そのため、チューブアジャスタ300の2つの脚部330は上記の隣接する2つの支持壁53の間に差し込まれ、チューブアジャスタ300はX軸方向に移動できなくなる。また、脚部330はY軸方向に長く形成されているため、チューブ保持部310が支持壁53のU字溝53aに沿って回転する移動も制限される。すなわち、脚部330によりチューブアジャスタ300の位置が固定される。このようにしてカバー50にチューブアジャスタ300を装着した後に、上述した方法で透光性チューブTに取り付けたアタッチメント200をカバー50に装着することで、液体センサを透光性チューブTに取り付けることができる。
【0071】
以上のように、本発明の実施形態に係る液体センサ1では、遮光ガイド40、カバー50、及びアタッチメント200により、光学素子の光軸に対して透光性チューブTが正確に位置決めされる。すなわち、遮光ガイド40がカバー50に対して光源34及び受光素子35を正確に位置決めし、アタッチメント200がカバー50に対して透光性チューブTを正確に位置決めすることにより、透光性チューブTが光源34及び受光素子35の光軸に対して正確に位置決めされる。そのため、透光性チューブT内の液体の検出を精度良く行うことが可能になっている。
【0072】
また、遮光ガイド40、カバー50、及びアタッチメント200に組み込まれたガイド構造により、特に位置決め調整作業を行うことなく、各部材を組み立てるだけで自動的に位置決めが行われるようになっている。そのため、高精度の組み立てを極めて効率的に行うことを可能にしている。
【0073】
次に、回路ユニット30による液体検出処理について説明する。光源34から放射されるモニタ光の光束は、透光性チューブTの長さ方向と直交し、かつ透光性チューブTの中心軸を通るように、透光性チューブTの側面から照射される。透光性チューブT内に液体が存在するときは、液体と透光性チューブTとの屈折率差が小さいさめ、透光性チューブTの内壁(透光性チューブTと液体との界面)においてモニタ光の光束はほとんど屈折せずに直進する。従って、モニタ光の光束は、透光性チューブTを直進的に透過し、透光性チューブTを挟んで光源34と対向して配置された受光素子35に入射し、検出される。
【0074】
一方、透光性チューブT内が空の場合(気体で充填されている場合)は、気体と透光性チューブTとの屈折率差が大きい為、透光性チューブTの内壁においてモニタ光の光束は大きく屈折し、又は反射される。そのため、モニタ光の光束は透光性チューブTを直進的に透過することができず、従って受光素子35によって検出されない。
【0075】
従って、液切れ判定回路31aは、原則的には、受光素子35がモニタ光を検出したときに透光性チューブT内に液体が有ると判定し、モニタ光を検出しないときに透光性チューブT内に液体が無いと判定する。
【0076】
しかしながら、透光性チューブT内には、しばしば気泡が存在するが、気泡はモニタ光の屈折や反射を起こすため、誤検出の原因となる。また、透光性チューブTが空の場合でも、しばしば透光性チューブT内に液滴が存在する。液滴はモニタ光を直進的に透過させるため、やはり誤検出の原因となる。気泡や液滴による誤検出を防止するために、本発明の実施形態に係る液体センサには、複数(本実施形態では2つ)の光学系が設けられている。
【0077】
また、複数の光学系による検出結果に基づいて、液切れか否かを判定するアルゴリズムにも複数のものが考えられる。使用する液体の種類や用途に応じて好適なアルゴリズムは変わり得る。そのため、本実施形態の液体センサ1は複数の動作モード(判定アルゴリズム)をユーザが選択できるように構成されている。動作モードの切り替えは、設定部32の動作モード切り替えスイッチを操作して行われる。
【0078】
以下に、液体センサ1に実装された3つの動作モードについて、説明する。表1は、液体センサ1が2つの光学系による液体検出結果に基づいて液切れを判定する3種類の動作モード(モード1〜モード3)を説明する表である。表1には、10例の典型的な事例(ケース1〜10)について、各光学系の検出結果と、各モードの判定結果が対比されている。表中の○印は、対応する光学系が液体を検出したこと、又は液切れ判定回路31aがチューブ内に液体有り(液切れしていない)と判定したことを示す。また、表中の×印は、対応する光学系が液体を検出しないこと、又は液切れ判定回路31aがチューブ内に液体無し(液切れ)と判定したことを示す。また、以下の説明においては、液体センサ1が備える2つの光学系を光学系A及び光学系Bと呼ぶ。また、表1における光源34A及び受光素子35Aは光学系Aを構成する光学素子であり、光源34B及び受光素子35Bは光学系Bを構成する光学素子である。
【0079】
【表1】

【0080】
<モード1>
モード1は、は、少なくとも一つの光学系がモニタ光を検出(すなわち液体を検出)した場合に、透光性チューブT内に液体が有ると判定し、全ての光学系がモニタ光を検出しない場合に、透光性チューブT内に液体が無い(液切れ)と判定する、言わばOR型の動作モードである。以下に説明するように、モード1は小さな気泡による誤検出を抑制するために有効な動作モードである。
【0081】
透光性チューブT内に生じる気泡の大きさは、通常は0.1mm程度から数mm程度である。従って、2つの光学系の光束の間隔をこれより狭く設定すると、一つの気泡により2つの光学系が同時に誤検出する可能性がある。従って、大きな気泡による誤検出を防止するためには、2つの光学系の光束の間隔を10mm以上にする必要がある。また、貯液タンクが空に近づくと、貯液タンクの液面が輸液管の採取口まで下がり、貯液タンク内の空気と一緒に液体が輸液管に取り込まれる。このため、貯液タンクに十分な残量がある場合にはほとんど発生しない15mm以上(より典型的には20mm以上)の長さの気泡が頻繁に発生する。従って、一般的な用途においては、15mm以上(望ましくは20mm以上)の気泡が検出された場合には、液切れと判定した方が望ましい。そこで、本発明の実施形態においては、複数の光学系(モニタ光の光束)の配置間隔が15mm以上(望ましくは20mm以上)に設定される。本実施形態では、2つの光学系の光束の間隔は20mmに設定されている。この配置間隔の最適な寸法は、使用する液体の粘土や透光性チューブTの内径等によって異なる場合がある。
【0082】
次に、表1を参照してモード1における具体的な判定例を説明する。表1におけるケース1〜5は透光性チューブTに液体が充填されている場合の事例であり、ケース6〜10は透光性チューブTに液体が空の場合の事例である。各事例は、気泡又は液滴の、有無、位置、個数又は大きさが異なる。
【0083】
ケース1は気泡が無い事例であり、当然ながら全ての光学系が液体を検出するため、液切れ判定回路31aは透光性チューブT内に液体があると判定する。ケース2〜5はチューブ内に気泡が存在する場合の事例である。ケース2は、2つの光学系の中途に気泡が存在する事例であり、いずれの光学系の光路上にも気泡が位置していないため、全ての光学系が液体を検出し、液切れ判定回路31aは液体有りと判定する。ケース3は、一方の光学系(この場合は光学系B)の光路上に気泡が位置する事例である。この場合、光学系Bは液体を検出しないが、光学系Aは液体を検出するため、液切れ判定回路31aは液体有りと判定する。ケース4も、ケース3と同様に一方の光学系(この場合は光学系A)の光路上に気泡が位置する事例である。この場合も、光学系Aは液体を検出しないが、光学系Bは液体を検出するため、液切れ判定回路31aは液体有りと判定する。ケース3やケース4のように、比較的に小さな気泡がいずれか一方の光学系の光路上に位置する状況は、一般的な液体センサの用途において頻繁に生じるものであり、従来の単一の光学系を有する液体センサにおいて課題となっていた誤動作に基づく液切れ警報頻発の主要因である。モード1では、このような状況に起因する誤動作が防止されるため、不要な警報の発生を大幅に低減させることができる。また、ケース5は大きな気泡が発生した事例である。この場合、全ての光学系が液体を検出せず、液切れ判定回路31aは液切れ(液体無し)と判定する。上述のように、液体の供給源の残量が少なくなると、このような大きな気泡が生じる場合が多いため、ケース5において液切れを判定することは望ましい構成といえる。従って、気泡に関するケース1〜5のいずれの事例においても、モード1では適切な液切れ判定がなされる。
【0084】
ケース6は、透光性チューブT内に液体が無く、液滴も無い事例である。当然ながら全ての光学系が液体を検出しないため、液切れ判定回路31aは液切れと判定する。ケース7は、2つの光学系の中途に液滴が存在する事例であり、いずれの光学系の光路上にも液滴が位置していないため、全ての光学系が液体を検出せず、液切れ判定回路31aは液切れと判定する。ケース8は、一方の光学系(この場合は光学系B)の光路上に液滴が位置する事例である。この場合、光学系Aは液体を検出しないが、光学系Bが液体を検出するため、液切れ判定回路31aは液体有りと誤判定する。ケース4も、ケース3と同様に一方の光学系(この場合は光学系A)の光路上に液滴が位置する事例である。この場合も、光学系Aは液体を検出しないが、光学系Bが液体を検出するため、液切れ判定回路31aは液体有りと誤判定する。また、ケース10は各光学系の光路上に液滴が位置する事例である。この場合、全ての光学系が液体を検出するため、液切れ判定回路31aは液体有りと誤判定する。このように、モード1は、液滴に関する誤判定が多い傾向にある。しかしながら、ケース8〜9の状態に至る過程で必ず液切れ判定がなされ、警報が出されるため、一般的な用途においては、液滴に関する誤判定が実用上大きな支障となることは稀である。
【0085】
<モード2>
モード2は、全ての光学系が液体を検出した場合に透光性チューブT内に液体が有ると判定し、一つでも液体を検出しない光学系がある場合に透光性チューブT内に液体が無いと判定する、言わばAND型の動作モードである。表1に示されるように、モード2では気泡に関する誤動作の頻度が高い傾向がある(例えばケース3、ケース4)。言い換えれば、モード2は、気泡に対する感度が高く、精密化学分野や医療分野等の気泡の排除が必要な用途においては、気泡センサとして使用することができる。また、モード2は液滴に関する判定精度が高いという特徴もある(例えばケース8、ケース9)。そのため、モード2は、チューブが空であることを正確に判定する必要がある用途にも適している。
<モード3>
モード3は、1系統の光学系の検出結果に基づいて液体の有無を判定する動作モードであり、光学系を1系統のみ備えた従来の液体センサをエミュレートするものである。なお、本実施形態のモード3では、光学系Aの検出結果に基づいて液体の有無が判定される。表1に示されるように、モード3の判定結果は、モード1とモード2の中間的なものとなっている。気泡に対しても液滴に対しても同程度の判定精度が望まれる用途に対して有効なモードである。また、光学系を1系統のみ備えた従来の液体センサを、動作条件を変更せずに新しいセンサに置き換える必要がある場合にも適している。
【0086】
以上のように、本実施形態の液体センサ1は、用途に適した動作モードを選択して使用することができる。
【0087】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 …液体センサ
100 …本体
10 …筐体
18 …ケーブル引き出し口
20 …パッキン
22 …防水キャップ
24 …長ねじ
30 …回路ユニット
30a,30b …回路基板
30c …スペーサ
34 …光源(LED光源)
36 …受光素子(フォトダイオード)
38 …LEDインジケータ
40 …遮光ガイド
40h …丸孔
50 …カバー
51 …突出部
52 …凹部
53 …支持壁
53a …U字溝
54 …凹部5
55 …鍔部
56 …支持壁
57 …連結壁
58 …下側把持部
59 …レンズ部
60 …ケーブル
200 …アタッチメント
210 …カバー部
220 …側壁部
230 …突出部
240 …突出部
250 …凹部
252 …通し穴
300 …チューブアジャスタ
310 …チューブ保持部
320 …連結部
330 …脚部
B …結束バンド
T …透光性チューブT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性チューブ内の液体を光学的に検出するための液体センサであって、
前記透光性チューブの長さ方向に離れた2箇所において、それぞれ該透光性チューブ内の液体の有無を検出する2つの光学系を備え、
前記2箇所の間隔は、前記液体の供給源が液切れしていない時に前記透光性チューブ内に現れる気泡の典型的な長さよりも長く、液切れ時に現れる気泡の典型的な長さの範囲内となるように設定されている、ことを特徴とする液体センサ。
【請求項2】
前記間隔は15mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の液体センサ。
【請求項3】
前記間隔は20mm以上であることを特徴とする請求項2に記載の液体センサ。
【請求項4】
前記間隔は20mmであることを特徴とする請求項2又は3に記載の液体センタ。
【請求項5】
前記間隔は15mmであることを特徴とする請求項2又は3に記載の液体センサ。
【請求項6】
前記2つの光学系の少なくとも一方が液体を検出する場合に液体が有ると判定し、
前記2つの光学系の両方とも液体を検出しない場合に液体が無いと判定する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の液体センサ。
【請求項7】
前記透光性チューブの長さ方向に離れた3箇所以上の複数個所において、それぞれ該透光性チューブ内の液体の有無を検出する3つ以上の光学系を備えたことを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の液体センサ。
【請求項8】
前記2つの光学系は、それぞれ光源と受光素子を備え、
前記光源が放射する光束は、前記透光性チューブの中心軸と垂直に該透光性チューブに側面から入射し、
前記光束が入射した箇所において、
前記透光性チューブ内に液体が有るときは、該光束は該透光性チューブを直進的に通過して、前記受光素子により検出され、
該透光性チューブ内に液体が無いときは、該光束は該透光性チューブの内壁で屈折又は反射して、前記受光素子により検出さない
ことを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の液体センサ。
【請求項9】
前記光学系の光源と受光素子は、前記透光性チューブを介して、発光面と受光面が対向するように配置されていることを特徴とする請求項8に記載の液体センサ。
【請求項10】
前記2つの光学系の受光素子は、受光面を互いに逆向きにして配置されていることを特徴とする請求項8又は請求項9のいずれか一項に記載の液体センサ。
【請求項11】
前記液体センサは、
前記光源と前記受光素子を収容した本体と、
前記2箇所を含む前記透光性チューブの一部を覆って外光から遮蔽すると共に、前記本体に対して該透光性チューブを位置決めして取り付けるアタッチメントと
を備え、
前記本体は、前記光源及び前記受光素子のそれぞれを覆って外光から遮蔽する遮光部材を備え、
前記遮光部材には、前記光束を通過させるための開口が形成されている、ことを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載の液体センサ。
【請求項12】
前記2つの光学系の両方が液体を検出する場合に液体が有ると判定し、
前記2つの光学系の一方が液体を検出しない場合に液体が無いと判定する
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の液体センサ。
【請求項13】
請求項6に記載のアルゴリズムに従って液体の有無を判定する第1判定モードと、
請求項12に記載のアルゴリズムに従って液体の有無を判定する第2判定モード
を含む複数の判定モードを切り替え可能であることを特徴とする、
請求項6を直接又は間接的に引用する請求項12に記載の液体センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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