説明

液体センサ

【課題】 電極対の静電容量を適切に算出し得る液体センサを提供する。
【解決手段】 液体センサ10の電極部100は、低周波発振回路4と高周波発振回路6とのそれぞれに接続可能である。低周波発振回路4は、振幅がVin1である比較的に周波数の低い低周波信号を出力する。高周波発振回路6は、振幅がVin2である比較的に周波数の高い高周波信号を出力する。算出部40は、電極部100からの2個の出力信号が取得される場合に、Z1=R1/(Vin1/Vout1−1)とZ2=R2/(Vin2/Vout2−1)とを用いて、電極部100の静電容量C1を算出する。Vout1は、第1の出力信号の振幅であり、Vout2は、第2の出力信号の振幅である。R1は、電極部と低周波発振部との間の抵抗値であり、R2は、電極部と高周波発振部との間の抵抗値である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、液体の性質を検知するための液体センサを開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、燃料内に配置される電極対を備える液体センサが開示されている。この液体センサでは、複数種類の周波数の信号が、電極対に順次入力される。そして、電極対から出力される複数種類の出力信号を用いて、燃料内のアルコール等の濃度が特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−527855号公報
【特許文献2】特表2004−526170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の液体センサでは、電極対の静電容量が液体内の特定の成分(上記の特許文献1,2ではアルコール)の濃度によって変化する。このことから、電極対への入力信号と電極対からの出力信号とを用いて、電極対の静電容量を算出することによって、上記の特定の成分の濃度を特定することができる。しかしながら、電極対への入力信号及び電極対からの出力信号を単に用いるだけでは、静電容量を適切に特定することができない場合がある。本明細書では、電極対の静電容量を適切に算出し得る液体センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示される技術は、液体の性質を検知するための液体センサである。液体センサは、電極部と算出部とを備える。電極部は、液体内に配置される第1の電極対を備える。算出部は、電極部から出力される出力信号を用いて、電極部の静電容量を算出する。電極部は、第1発振部と第2発振部とのそれぞれに接続可能である。第1発振部は、振幅がVin1であり、角速度がω1である第1の周波数の信号を出力する。第2発振部は、振幅がVin2であり、角速度がω2である第2の周波数の信号を出力する。算出部は、電極部に第1の低周波数の信号が入力される場合に電極部から出力される第1の出力信号と、電極部に第2の周波数の信号が入力される場合に電極部から出力される第2の出力信号と、が取得される場合に、以下の数式を演算することによって、電極部の静電容量C1を算出する。
【0006】
【数1】

【0007】
但し、Z1=R1/(Vin1/Vout1−1)であり、Z2=R2/(Vin2/Vout2−1)である。Vout1は、第1の出力信号の振幅であり、Vout2は、第2の出力信号の振幅である。R1は、電極部と第1発振部との間の抵抗値であり、R2は、電極部と第2発振部との間の抵抗値である。
【0008】
検知対象の液体の抵抗値がR3である場合、第1発振部からの信号が電極部に入力されている間のインピーダンスZ1は、(ω1×C1)+(1/R3)=(1/Z1)の関係が成立する。同様に、第2発振部からの信号が電極部に入力されている間のインピーダンスZ2は、(ω2×C1)+(1/R3)=(1/Z2)の関係が成立する。ここで、液体の抵抗値(即ちR3)は、液体の酸化等によって変化する変数である。従って、1つの周波数の信号を電極部に入力することで得られる関係式、例えば、Z1=R1/(Vin1/Vout1−1)と、(ω1×C1)+(1/R3)=(1/Z1)と、を用いたとしても、液体の抵抗値R3が決まらないため、電極部の静電容量C1を算出することはできない。上記の液体センサでは、第1発振部からの信号と第2発振部からの信号が入力されることで得られる関係式から導かれる上記の数式を算出部が演算することによって、電極部の静電容量C1を算出する。この構成によれば、液体の抵抗値R3に関わらず、適切に電極部の静電容量C1を算出することができる。
【0009】
上記の液体センサは、第1及び第2の抵抗器をさらに備えていてもよい。第1の抵抗器は、第1波発振部と電極部との間に配置されてもよい。第1の抵抗器の抵抗値は、R1であってもよい。第2の抵抗器は、第2発振部と電極部との間に配置されてもよい。第2の抵抗器の抵抗値は、R1と異なるR2であってもよい。第1の抵抗器の抵抗値を調整することによって、電極部に第1発振部からの信号が供給される場合の出力信号の振幅(即ちVout1)を調整することができる。同様に、第2の抵抗器の抵抗値を調整することによって、電極部に第2発振部からの信号が供給される場合の出力信号の振幅(即ちVout2)を調整することができる。この構成によれば、第1及び第2の抵抗器の抵抗値を別々に調整することによって、出力信号の振幅をそれぞれ調整することができる。
【0010】
R1は、R2よりも大きくてもよい。第1及び第2の抵抗器の抵抗値が等しい(即ちR1=R2)構成を採用すると、第1発振部からの信号が供給される場合の出力信号の振幅Vout1は、第2発振部からの信号が供給される場合の出力信号の振幅Vout2よりも大きくなる。出力信号の振幅の差が大きくなると、それぞれの出力信号の処理(増幅処理等)のための回路を、別々に設ける必要がある。R1をR2よりも大きくすることによって、Vout1とVout2とを近づけることができる。この結果、それぞれの出力信号の処理(増幅処理等)のための回路を、別々に設けずに済む。
【0011】
電極部は、第1の電極対に積層して配置される第2の電極対をさらに備えていてもよい。第2の電極対の一方の電極は、第1の電極対の一方の電極と接続されており、第2の電極対の他方の電極は、第1の電極対の他方の電極と接続されていてもよい。この構成によれば、電極部の静電容量C1を大きくすることができる。この結果、インピーダンスZ1,Z2に及ぼす液体の抵抗の影響を小さくすることができる。
【0012】
第1の電極対のうちの発振部に接続される側の電極の近傍に配置されるシールド電極をさらに備えていてもよい。シールド電極は、発振部に、抵抗器を介さずに接続されていてもよい。この構成によれば、シールド電極に適切な信号を入力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】センサシステムの概略を示す。
【図2】電極部の概略正面図を示す。
【図3】図2のIII-III断面の断面図を示す。
【図4】図2のIV-IV断面の断面図を示す。
【図5】入力信号の周波数による出力信号の振幅の変化を示すグラフを示す。
【図6】変形例の電極部の概略正面図を示す。
【図7】変形例の電極部の断面図を示す。
【図8】変形例の電極部の断面図を示す。
【図9】変形例の電極部の断面図を示す。
【図10】変形例の電極部の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、センサシステム2は、液体センサ10と、低周波発振回路4と、高周波発振回路6と、を備える。センサシステム2は、ガソリンとエタノールとの混合燃料内のエタノール濃度を測定するために用いられる。
【0015】
低周波発振回路4は、電源(図示省略)から供給される電源から、低周波(例えば、10Hz〜50kHz)の信号電圧を発生させる。高周波発振回路6は、低周波発信回路4と同一の電源(図示省略)から供給される電源から、高周波(例えば、500kHz〜10MHz)の信号電圧を発生させる。なお、低周波の信号電圧の振幅をVin1と表わし、高周波の信号電圧の振幅をVin2と表わす。Vin1は、Vin2と等しくてもよいし、Vin2と異なっていてもよい。
【0016】
液体センサ10は、2個の抵抗器12,14と、電極部100と、オペアンプ30と、算出部40と、出力部50と、を備える。
【0017】
第1の抵抗器12は、低周波発振回路4に接続される。第2の抵抗器14は、高周波発振回路6に接続される。第1の抵抗器12の抵抗値R1(例えば、10kΩ〜50kΩ)は、第2の抵抗器14の抵抗値R2(例えば1kΩ〜10kΩ)よりも大きい。
【0018】
2個の抵抗器12,14は、スイッチ16を介して、導線20に接続される。導線20は、後述する電極部100の信号電極104に接続される。即ち、スイッチ16を切り替えることによって、信号電極104には、2個の発振回路4,6のいずれか一方から信号電圧が入力される。
【0019】
2個の発振回路4,6は、さらに、スイッチ18を介して、導線22に接続される。導線22は、後述する電極部100のシールド電極102に接続される。即ち、スイッチ18を切り替えることによって、シールド電極102には、2個の発振回路4,6のいずれか一方から信号電圧が入力される。スイッチ18は、スイッチ16と同期されている。即ち、スイッチ16が低周波発振回路4に接続されている状態では、スイッチ18も低周波発振回路4に接続され、スイッチ16が高周波発振回路6に接続されている状態では、スイッチ18も高周波発振回路6に接続される。
【0020】
なお、2個の発振回路4,6とシールド電極102との間には、抵抗器は配置されていない。厳密に言うと、2個の発振回路4,6とシールド電極102との間の抵抗は、2個の発振回路4,6とシールド電極102とを接続する導線の抵抗のみである。言い換えると、低周波発振回路4とシールド電極102との間の抵抗値は、低周波発振回路4と信号電極104との間の抵抗値よりも小さく、高周波発振回路6とシールド電極102との間の抵抗値は、高周波発振回路6と信号電極104との間の抵抗値よりも小さい。
【0021】
導線20は、オペアンプ30を介して、算出部40に接続されている。算出部40は、静電容量とエタノール濃度とが対応付けられている濃度データベースを記憶している。算出部40内には、濃度データベースが予め記憶されている。濃度データベースは、エタノール濃度が異なる複数種類の混合燃料について、電極部100の静電容量とエタノール濃度との関係を記憶している。濃度データベースは、例えば、下記の手順で作成することができる。すなわち、センサシステム2の製造者は、エタノール濃度が異なる複数種類の混合燃料を準備する。次いで、製造者は、電極部100を、1種類の混合燃料に浸し、2個の発振回路4,6からの信号電圧を順次入力する。製造者は、電極部100から出力される出力信号の振幅を測定する。以下では、低周波発振回路4からの信号電圧が電極部100に入力されている場合における出力信号の振幅が「Vout1」で示され、高周波発振回路6からの信号電圧が電極部100に入力されている場合における出力信号の振幅が「Vout2」で示される。正確には、電極部100からの出力信号がオペアンプ30によって増幅された後の信号の振幅が「Vout1」及び「Vout2」によって示される。なお、低周波発振回路4の信号電圧の角速度はω1であり、高周波発振回路6の信号電圧の角速度はω2である。
【0022】
製造者は、Z1=R1/(Vin1/Vout1−1)と、Z2=R2/(Vin2/Vout2−1)とを演算して、電極部100におけるインピーダンスZ1,Z2を算出する。次いで、以下の数式を演算することによって、電極部100の静電容量(以下では「C1」と示す)を算出する。測定に係る混合燃料のエタノール濃度は既知であるため、算出された静電容量C1とその静電容量に対応するエタノール濃度の関係を特定することができる。
【0023】
【数2】

【0024】
製造者は、準備された複数種類の混合燃料のそれぞれについて、静電容量C1を算出することによって、電極部100の静電容量とエタノール濃度との関係を特定する。なお、変形例では、センサシステム2の製造者は、電極部100の静電容量とエタノール濃度と関係を示す数式を作成し、算出部40に格納してもよい。
【0025】
電極部100から出力される出力信号は、オペアンプ30を介して算出部40に供給される。算出部40は、供給された出力信号と、濃度データベースと、を用いて、燃料内のエタノール濃度を特定する。算出部40は、特定されたエタノール濃度を出力部50に供給する。出力部50は、算出部40から取得されたエタノール濃度を、出力(例えば表示、他の装置(燃料供給装置)等に供給)する。
【0026】
図2,3及び4には、電極部100が示されている。なお、図2では、図3及び図4に示めされる絶縁膜130,140が省略されている。電極部100は、燃料タンク内に配置される。電極部100は、導電部分101と、導電部分101の下側に設けられている検出部分110と、を備える。検出部分110の全体が燃料タンク内の混合燃料に常時浸かるように、検出部分110は電極部100の下側に配置されている。検出部分110の回りの混合燃料の量の変化によって、検出部分110の静電容量C3が変化することを防止するためである。
【0027】
図2に示すように、電極部100は、第1の電極対103を備える。第1の電極対103は、信号電極104と接地電極106とを備える。2個の電極104,106は、共に、導電部分101の上端部から検出部分110の下端部まで伸びている。2個の電極104,106は、同一平面上に配置されている。
【0028】
導電部分101に位置する2個の電極104,106は、電極部100の長手方向(図2の上下方向)に直線状に伸びている。信号電極104の上端は、導線20に接続されている。接地電極106は、導線24を介して接地されている。
【0029】
検出部分110に位置する信号電極104は、導電部分101に位置する信号電極104に連続して、電極部100の長手方向に直線状に伸びる電極基部114を備える。電極基部114には、接地電極106の電極基部116に向かって伸びる複数個(図2では3個)の電極部分114aが接続されている。
【0030】
検出部分110に位置する接地電極106は、導電部分101に位置する接地電極106に連続して、電極部100の長手方向に直線状に伸びる電極基部116を備える。電極基部116には、電極基部114に向かって伸びる複数個(図2では3個)の電極部分116aが接続されている。電極部分116aは、電極部分114aと同数である。複数個の電極部分114aと複数個の電極部分116aとは、電極部100の上方から、電極部分114a、電極部分116aの順で交互に配置されている。なお、隣り合う電極部分114aと電極部分116aとは、離間している。
【0031】
図4に示すように、検出部分110には、2個の電極104,106(即ち第1の電極対103)に、第2の電極対117が積層されて配置されている。第2の電極対117は、信号電極118と接地電極119とを備える。2個の電極118,119は、同一形状であり、矩形の平板状である。電極部100の長手方向において、2個の電極118,119(即ち第2の電極対117)の長さは、検出部分110の長さと略等しい。2個の電極118,119は、電極部100の長手方向において同一の位置に配置されており、電極部100の長手方向と直交する方向においてずらして配置されている。
【0032】
信号電極118と第1の電極対103との間には、絶縁膜160が配置されている。信号電極118は、絶縁膜160に設けられた貫通孔160bを通って、信号電極104の電極基部114に、電気的に接続されている。なお、信号電極118は、絶縁膜150上に配置されている。
【0033】
接地電極119と第1の電極対103との間には、2個の絶縁膜150,160が配置されている。接地電極119は、絶縁膜150に設けられた貫通孔150aと絶縁膜160に設けられた貫通孔160aとを通って、接地電極106の電極基部116に、電気的に接続されている。なお、接地電極119は、絶縁板120上に配置されている。
【0034】
絶縁板120は、電極部100の長手方向の一方の端から他方の端まで、一定の厚み(図3における上下方向の長さ)で伸びている。絶縁膜150は、絶縁板120の一方の面(図3における上面)上を、電極部100の長手方向の一方の端から他方の端まで伸びている。絶縁膜160は、絶縁膜150の一方の面(図3における上面)上を、電極部100の長手方向の一方の端から他方の端まで伸びている。図3に示すように、導電部分101に位置する絶縁膜160の一方の面(図3における上面)には、第1の電極対103が取り付けられている。
【0035】
導電部分101において、信号電極104の絶縁板120と反対側の面(図3における上面)には、信号電極104に平行してシールド電極102が配置される。電極部100の長手方向におけるシールド電極102の長さは、導電部分101の信号電極104の長さと略等しい。シールド電極102は、絶縁層130を挟んで、信号電極104に対向している。
【0036】
次いで、センサシステム2の動作について説明する。最初に、液体センサ10のスイッチ16及び18は、低周波発振回路4側に接続される。これにより、信号電極104とシールド電極102とに、低周波発振回路4からの信号電圧が入力される。
【0037】
図4に示すように、信号電極104に信号電圧が供給されると、検出部分110において、信号電極104と接地電極106との間に、静電容量C2の電荷が蓄えられる。静電容量C2の電荷が蓄えられる位置には、混合燃料が存在する。静電容量C2は、混合燃料のエタノール濃度によって変化する。従って、静電容量C2を特定することによって、混合燃料内のエタノール濃度を特定することができる。
【0038】
なお、スイッチ16とスイッチ18とが同期しているため、信号電極104に信号電圧が供給されると、シールド電極102にも、信号電極104と同一周波数の信号電圧が供給される。この結果、導電部分101において、第1の電極対103に電荷が蓄えられることを抑制することができる。導電部分101は、検出部分110と比べて上方、詳しくは、燃料タンクの上方に位置する。このため、導電部分101では、燃料タンク内の混合燃料の量によって、混合燃料に浸かっている部分の長さが変化する。この結果、導電部分101の第1の電極対103に電荷が蓄えられる構成では、燃料タンク内の混合燃料の量によって、電極部100の静電容量C2が変化する。電極部100の構成では、シールド電極102を設けることによって、燃料タンク内の混合燃料の量によって、静電容量C2が変化することを抑制することができる。
【0039】
また、信号電極104に信号電圧が入力されると、信号電極104に接続されている信号電極118にも、信号電圧が入力される。この結果、信号電極118と接地電極119との間に、静電容量C3の電荷が蓄えられる。静電容量C3は、信号電極118と接地電極119との間の絶縁膜150によって決定される。即ち、静電容量C3は、混合燃料のエタノール濃度によらず一定である。なお、信号電極104に信号電圧が入力されると、信号電極118と接地電極106との間にも電荷が蓄えられる。しかしながら、信号電極118と接地電極106との間には混合燃料が存在しないことから、信号電極118と接地電極106との間の静電容量は、混合燃料のエタノール濃度によらず一定となる。
【0040】
低周波発振回路4からの信号電圧が信号電極104に入力されている間に、信号電極104から出力される出力信号は、オペアンプ30で増幅され、算出部40に供給される。上述した説明から明らかなように、信号電極104に信号電圧が入力されると、信号電極104と接地電極106との間に静電容量C2の電荷が蓄えられ、信号電極118と接地電極119との間に静電容量C3の電荷が蓄えられる。このため、電極部100に蓄えられる静電容量C1は、静電容量C2と静電容量C3の和となる。したがって、信号電極104から出力される出力信号は、静電容量C2と静電容量C3に応じたものとなる。
【0041】
次いで、液体センサ10のスイッチ16,18は、高周波発振回路6側に切り替えられる。これにより、信号電極104とシールド電極102とに、高周波発振回路6から出力される信号電圧が入力される。
【0042】
高周波発振回路6からの信号電圧が信号電極104に入力されている間に、信号電極104から出力された出力信号は、オペアンプ30で増幅され、算出部40に供給される。
【0043】
算出部40は、2種類の出力信号が取得されると、電極部100のインピーダンスZ1,Z2を算出する。Z1は、Z1=R1/(Vin1/Vout1−1)を演算することによって算出される。Z2は、Z2=R2/(Vin2/Vout2−1)を演算することによって算出される。なお、Vout1は、低周波発振回路4からの信号電圧が信号電極104に入力されている間に、信号電極104から出力された出力信号がオペアンプ30によって増幅された後の信号の振幅である。Vout2は、高周波発振回路6からの信号電圧が信号電極104に入力されている間に、信号電極104から出力された出力信号がオペアンプ30によって増幅された後の信号の振幅である。
【0044】
インピーダンスZ1,Z2が算出されると、以下の数式を演算することによって、静電容量C1を算出する。上述したように、静電容量C1は、第1の電極対103の静電容量C2と第2の電極対117の静電容量C3との合計値である。
【0045】
【数3】

【0046】
次いで、算出部40は、算出された静電容量C1と濃度データベースとを用いて、エタノール濃度を特定する。算出部40は、特定されたエタノール濃度を、出力部50に出力する。
【0047】
インピーダンスZ1と静電容量C1とは、(ω1×C1)+(1/R3)=(1/Z1)に示される関係が成立する。なお、R3は、混合燃料の抵抗値である。混合燃料の抵抗値(即ち導電率)は、混合燃料の酸化の度合によって変化する。従って、混合燃料の抵抗値の変化を考慮せずに、出力信号のみを用いて、エタノール濃度を特定しようとしても、正確なエタノール濃度を特定することができない。
【0048】
液体センサ10は、周波数の異なる2種類の信号電圧を電極部100に入力して得られる出力信号を用いて、静電容量C1を算出している。このため、混合燃料の抵抗値を用いずに、電極部100の静電容量C1を適切に算出することができる。このため、適切なエタノール濃度を特定することができる。
【0049】
液体センサ10では、低周波発振回路4と電極部100との間に、抵抗器12が設けられており、高周波発振回路6と電極部100との間に、抵抗器14が設けられている。この構成によれば、低周波発振回路4と電極部100との間の抵抗値と、高周波発振回路6と電極部100との間の抵抗値と、を別々に設定することができる。この結果、低周波発振回路4から電極部100に信号電圧が供給されている間に、電極部100から出力される出力信号の振幅と、高周波発振回路6から電極部100に信号電圧が供給されている間に、電極部100から出力される出力信号の振幅と、を別々に調整することができる。
【0050】
図5には、入力信号の周波数(横軸)と出力信号の振幅(即ち出力電圧)(縦軸)との関係を示すグラフである。結果500は、発振回路と電極部100までの間の抵抗値が5kΩである場合の出力電圧の測定結果であり、結果502は、発振回路と電極部100までの間の抵抗値が50kΩである場合の出力電圧の測定結果である。抵抗値が5kΩ及び50kΩのどちらの場合でも、入力信号の周波数が高くなると、出力電圧が小さくなる。
【0051】
例えば、低周波発振回路4と電極部100との間の抵抗値と、高周波発振回路6と電極部100との間の抵抗値と、が同一である場合、低周波発振回路4から入力信号が電極部100に供給される場合の出力電圧と、高周波発振回路6から入力信号が電極部100に供給される場合の出力電圧と、の差が大きくなる。この場合、出力信号毎に出力信号の処理回路を設けなければ、適切に出力信号を処理することができない。液体センサ10では、低周波発振回路4に接続される第1の抵抗器12の抵抗値R1は、高周波発振回路6に接続される第2の抵抗器14の抵抗値R2よりも大きい。このため、低周波発振回路4から入力信号が電極部100に供給される場合の出力電圧の値を小さく抑えることができる。この結果、出力電圧の差を小さくすることができる。
【0052】
電極部100では、第1の電極対103と並列に、第2の電極対117が設けられている。この構成では、電極部100の静電容量を大きくすることができる。また、第2の電極対117の静電容量C3は、混合燃料の影響を受けず、信号電極118と接地電極119との間の絶縁膜150によって決定される。この結果、高周波発振回路6から入力信号が供給される場合の出力電圧に及ぼす合成燃料の抵抗値(導電率)の影響を小さくすることができる。なお、低周波発振回路4から入力信号が供給される場合の出力電圧の値は、合成燃料の抵抗値(導電率)の変化によって、ほとんど影響を受けない。また、第2の電極対117は、第1の電極対103に積層して設けられている。この結果、第2の電極対117を設けることによって、電極部100のサイズが大きくなることを抑制することができる。
【0053】
シールド電極102は、例えば、電気的に接地されている燃料タンクとの間で、電荷を蓄える場合がある。この場合に、オペアンプ30から出力される信号がシールド電極102に入力される構成が採用されていると、シールド電極102に発生する静電容量によって、オペアンプ30から出力される信号の振幅が変化する。このため、検出部分110における静電容量を適切に算出することができなくなる。一方、上記の電極部100では、シールド電極102は、信号電極104と同一の発振回路4,6からの信号が入力される。この構成によれば、シールド電極102にオペアンプ30から出力される信号が入力される場合と比較して、出力信号の変化に対するシールド電極102に発生する静電容量による変化の影響を低減することができる。さらに、シールド電極102と2個の発振回路4,6のそれぞれとの間には、抵抗器が設けられていない。この結果、シールド電極102が、例えば、電気的に接地されている燃料タンクとの間で、静電容量が発生したとしても、シールド電極102に印加される電圧が変化することを防止することができる。この結果、出力信号の変化に対するシールド電極102に発生する静電容量による変化の影響を、より低減することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0055】
(変形例)
(1)図6に示すように、電極部100は、導電部分101において、接地電極106と対向する信号電極200を備えていてもよい。信号電極200は、導線202を介して、高周波発振回路6に接続されていてもよい。この構成によれば、電極部100から出力される出力信号を用いて、燃料タンク内の燃料量を検出することができる。
【0056】
(2)信号電極104の回りに設けられるシールド電極の構成は、シールド電極102に限られない。図7に示すように、シールド電極300は、絶縁層130を介して、信号電極104に対向していてもよい。シールド電極300は、シールド電極102と同一の形状を有し、信号電極104に対してシールド電極102と同一の位置に配置されていてもよい。さらに、信号電極104を挟んで、シールド電極300の反対側(図7の下側)には、シールド電極304が設けられていてもよい。シールド電極304は、絶縁層302を介して、信号電極104に対向していてもよい。シールド電極304は、シールド電極300と同一の形状を有し、信号電極300と対向する位置に配置されていてもよい。
【0057】
(3)図8に示すように、シールド電極102に代えて、シールド電極400が設けられていてもよい。シールド電極400は、3個の平板部分402〜406を備える。3個の平板部分402〜406のそれぞれは、導電部分101における信号電極104と平行に配置されている。3個の平板部分402〜406のそれぞれは、信号電極104の導電部分101と略等しい長さを有する。第1の平面部分402は、信号電極104と接地電極106との間に配置される。第2の平面部分404は、信号電極104を挟んで第1の平面部分402と対向する。第1及び第2の平面部分402,404は、絶縁板120から絶縁層130を通過して絶縁層130外まで伸びている。第1及び第2の平面部分402,404の絶縁層130外における端部には、第3の平面部分406が配置されている。即ち、3個の平板部分402〜406は、信号電極104の絶縁板120側の面を除いて、信号電極104の三方向のそれぞれに平行に配置されている。
【0058】
(4)図9に示すように、シールド電極102に代えて、シールド電極500が設けられていてもよい。シールド電極500は、3個の平板部分502〜506を備える。3個の平板部分502〜506のそれぞれは、導電部分101における信号電極104と平行に配置されている。3個の平板部分502〜506のそれぞれは、信号電極104の導電部分101と略等しい長さを有する。第1の平面部分502は、絶縁層130を挟んで、信号電極104に対向している。第1の平面部分502は、絶縁層130(図9の上面)に接触している。第2の平面部分504は、絶縁層130と信号電極104と絶縁板120とを挟んで、第1の平面部分502に対向している。第1の平面部分502は、絶縁層120(図9の下面)に接触している。第1及び第2の平面部分502,504の接地電極106と反対側の端部には、第3の平面部分506が配置されている。第3の平面部分506は、絶縁板120と絶縁層130との側面(図9の右面)の接触している。
【0059】
(5)図10に示すように、シールド電極102に代えて、シールド電極600が設けられていてもよい。シールド電極600は、信号電極104と接地電極106との間に配置される平板である。シールド電極600は、信号電極104の導電部分101と略等しい長さを有する。シールド電極600は、絶縁板120から絶縁層130を通過して、絶縁層130外まで伸びている。
【0060】
上記のシールド電極300〜600は、シールド電極102と同様に、信号電極104と同一の発振回路4,6から信号が入力される。
【0061】
(6)算出部40は、静電容量C1に加えて、混合燃料の抵抗値R3を算出してもよい。抵抗値R3は、R3=1/((1/Z1)−(ω1×C1)1/2を演算することによって、算出されてもよい。また、算出部40は、混合燃料の抵抗値と、混合燃料の劣化(酸化)度合(例えば「良好」、「劣化小」及び「劣化大(使用不可)」のいずれか)と、が対応付けられている劣化度データベースを予め記憶していてもよい。即ち、センサシステム2の製造者は、劣化度データベースを作成して、算出部40に予め記憶させてもよい。
【0062】
(7)上記の実施例の液体センサ10では、電極部100は、第1の電極対103と第2の電極対117とを備えている。しかしながら、電極部100は、第1の電極対103のみを備えており、第2の電極対117を備えていなくもよい。この場合も、混合燃料の抵抗値に影響されずに、電極部100の静電容量C1(本変形例では第1の電極対103の静電容量C2に等しい)を算出することができる。
【0063】
なお、電極部100の静電容量C1を大きくするため、電極部100は、第1の電極対103と並列に配置される第2の電極対117を備える。これにより、電極部100から出力される出力電圧に及ぼす合成燃料の抵抗値(導電率)の影響が小さくされている。第2の電極対117の静電容量C3を大きくすることによって、液体センサ10を用いて混合燃料のエタノール濃度を特定する際に、電極部100に高周波(例えば、500k〜10MHz)の信号のみを供給することによって、エタノール濃度を簡易的に特定することができる。
【0064】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0065】
2:センサシステム
4:低周波発振回路
6:高周波発振回路
12,14:抵抗器
16,18:スイッチ
30:オペアンプ
40:算出部
50:出力部
100:電極部
102:シールド電極
103:第1の電極対
104:信号電極
106:接地電極
117:第2の電極対


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の性質を検知するための液体センサであって、
前記液体内に配置される第1の電極対を備える電極部と、
前記電極部から出力される出力信号を用いて、前記電極部の静電容量を算出する算出部と、を備え、
前記電極部は、振幅がVin1であり、角速度がω1である第1の周波数の信号を出力する第1発振部と、振幅がVin2であり、角速度がω2である第1の周波数より高い第2の周波数の信号を出力する第2発振部と、のそれぞれに接続可能であり、
前記算出部は、
前記電極部に前記第1の周波数の信号が入力される場合に前記電極部から出力される第1の出力信号と、前記電極部に前記第2の周波数の信号が入力される場合に前記電極部から出力される第2の出力信号と、が取得される場合に、以下の数式、即ち、




但し、
Z1=R1/(Vin1/Vout1−1)であり、
Z2=R2/(Vin2/Vout2−1)であり、
前記Vout1は、前記第1の出力信号の振幅であり、
前記Vout2は、前記第2の出力信号の振幅であり、
前記R1は、前記電極部と前記第1発振部との間の抵抗値であり、
前記R2は、前記電極部と前記第2発振部との間の抵抗値である、
を演算することによって、前記電極部の静電容量C1を算出する、液体センサ。
【請求項2】
前記第1発振部と前記電極部との間に配置され、抵抗値が前記R1である第1の抵抗器と、
前記第2発振部と前記電極部との間に配置され、抵抗値が前記R1と異なる前記R2である第2の抵抗器と、をさらに備える、請求項1に記載の液体センサ。
【請求項3】
前記R1は、前記R2よりも大きい、請求項1又は2に記載の液体センサ。
【請求項4】
前記電極部は、前記第1の電極対に積層して配置される第2の電極対をさらに備え、
前記第2の電極対の一方は、前記第1の電極対の一方と接続されており、前記第2の電極対の他方は、前記第1の電極対の他方と接続される、請求項1から3のいずれか一項に記載の液体センサ。
【請求項5】
前記第1の電極対のうちの前記発振部に接続される側の電極の近傍に配置されるシールド電極をさらに備え、
前記シールド電極は、前記発振部に、抵抗器を介さずに接続される、請求項1から4のいずれか一項に記載の液体センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−3088(P2013−3088A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137287(P2011−137287)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】