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液体フィルター用濾過材及びカートリッジフィルター
説明

液体フィルター用濾過材及びカートリッジフィルター

【課題】耐熱性を有する不織布を使用し、高捕集性でありながら長寿命になりうる濾過材を提供する。
【解決手段】濾過層を含む液体フィルター用濾過材であって、該濾過層が、ポリフェニレンスルフィド長繊維からなるスパンボンド不織布であり、該ポリフェニレンスルフィド長繊維の平均繊維径が、1〜10μmであり、該濾過層が、目付50〜300g/m、及び空孔率40〜70%を有する、液体フィルター用濾過材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を媒体とする液体フィルター用濾過材であって、優れた耐熱性を示し、捕集性が良好であり、低い圧力損失を維持することができる液体フィルター用濾過材及び該濾過材を含むカートリッジフィルターに関する。本発明は、特に火力発電所等での復水及びヒータドレイン水等の100℃以上の高温水から懸濁物質及び不純物質を除去するために使用される液体フィルター用濾過材及びカートリッジフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
高温水を媒体として使用されるフィルター濾過材の適用分野としては、火力発電所復水濾過、原子力発電所復水濾過、一般産業用復水濾過及びヒーターのドレイン水濾過等が挙げられる。これらの分野には、プレコートフィルターと呼ばれる、濾過作用を持つコアフィルターの表面に酸化鉄微粒子をコートすることで除去性能と寿命とを満足させるフィルター、又は使い捨てのフィルターが使用されている(特許文献1及び2)。
【0003】
プレコートフィルターは寿命が短く、2〜3週間毎に逆洗並びにプレコート処理及び濾過材の交換が必要となり、メンテナンスに手間及びコストがかかる問題がある。
【0004】
使い捨てタイプについては、耐熱性のある綿糸を巻きつけた糸巻きフィルターを初め、合成樹脂(ポリプロピレン)からなるプリーツ形カートリッジ(特許文献3)等が提言されている。しかしながら、糸巻きフィルターの場合、安価である特長を有するが、捕集性が悪いだけでなく、捕集性を上げる為に空隙を小さくする必要があり、寿命が短いという問題点を有する。特許文献3に記載されているフィルターでは、耐熱性が低いため、復水の温度を十分に下げる必要性があり、長期使用が難しい点、及び濾過材の厚みが大きく、プリーツ化しても十分に濾過面積を広げられず、結果として流体を流した際の圧力損失が大きく、寿命を十分に伸ばせない点が問題点として挙げられる。
【0005】
耐熱性を有するポリフェニレンスルフィドを用いた長繊維不織布を使用したプリーツ型フィルター材についての提案もある(特許文献4及び5)。特許文献5には、バグフィルター用途で、特定の剛性を有するとともにフラジール通気性が3〜40cc/cmの範囲であるポリフェニレンスルフィド不織布、及びこれを複数枚積層した不織布、及びこれをプリーツ加工したカートリッジフィルターが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−71316号公報
【特許文献2】特開平9−187605号公報
【特許文献3】特開2000−197803号公報
【特許文献4】特開2008−223209号公報
【特許文献5】特開2005−154920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献4に記載のポニフェニレンスルフィド不織布では、単糸デニール(繊維径)が大きく、小さな粒径の物質は捕集できず、微粒子除去フィルター等の用途には使用できないものであった。特に、復水フィルターにおいては1〜3μmのサイズの鉄微粒子を90%程度除去する必要性があり、この用途への使用は難しい。また、特許文献5に記載の不織布濾材においても、フラジール通気性が高く、液体フィルターとしては十分な捕集性が得られない。
【0008】
以上のように、耐熱性及び高い捕集性を持ちながら、長寿命を有する濾過材、及びそれを使用したプリーツ型カートリッジは提案されていないのが現状であった。
【0009】
従って本発明は、耐熱性を有する不織布を使用し、高捕集性でありながら長寿命になりうる濾過材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、耐熱性を有するポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略す)長繊維不織布を使用し、捕集性及び単独でのプリーツ特性を満足する繊維径、空隙率及び目付を設定した上で、濾過材の厚みを従来のものに比較して小さくすることで、プリーツ数を増やし、これによりカートリッジでの有効濾過面積を増やすことで、長寿命の濾過材及びカートリッジフィルターが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下の態様を有する。
【0011】
[1] 濾過層を含む液体フィルター用濾過材であって、
該濾過層が、ポリフェニレンスルフィド長繊維からなるスパンボンド不織布であり、
該ポリフェニレンスルフィド長繊維の平均繊維径が、1〜10μmであり、
該濾過層が、目付50〜300g/m、及び空孔率40〜70%を有する、液体フィルター用濾過材。
[2] 該ポリフェニレンスルフィド長繊維の結晶化度が、18%以上である、上記[1]に記載の液体フィルター用濾過材。
[3] 上記[1]又は[2]に記載の液体フィルター用濾過材を含み、かつ該液体フィルター用濾過材がプリーツ形状である、カートリッジフィルター。
[4] 上記[3]に記載のカートリッジフィルターによって、温度100℃以上の加熱水である媒体を濾過する、カートリッジフィルターの使用方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液体フィルター用濾過材は、従来提案されている濾過材と比較して、厚みが薄く、捕集性能に優れ、プリーツ形態を維持するための剛性を有し、耐熱性にも優れる。そのため、本発明の液体フィルター用濾過材を用いて形成されるプリーツカートリッジによれば、有効濾過面積が大きくとれ、液体を流した際の圧力損失を小さくでき、寿命も長くできる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
<液体フィルター用濾過材>
本発明の一態様は、濾過層を含む液体フィルター用濾過材であって、該濾過層が、ポリフェニレンスルフィド長繊維からなるスパンボンド不織布であり、該ポリフェニレンスルフィド長繊維の平均繊維径が、1〜10μmであり、該濾過層が、目付50〜300g/m、及び空孔率40〜70%を有する、液体フィルター用濾過材を提供する。
【0015】
本発明では、濾過層としてのスパンボンド不織布を形成するために、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSともいう)長繊維を使用する。PPSは、耐熱性に優れる点で有利である。PPSは、製糸性の観点から、パラ−フェニレンスルフィド繰返し単位を有することが好ましく、また直鎖型PPSであることが好ましい。
【0016】
特に、PPSの全繰返し単位中、パラ−フェニレンスルフィド繰返し単位が占める割合が85%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。
【0017】
PPSは、実質的にフェニレンスルフィド繰返し単位のみで構成されているが、本発明の効果を損なわない範囲で例えば芳香族スルフィドのコポリマー・混合物等の他の繰返し単位を少量(例えば15質量%以下)含んでいてもよい。また、PPS長繊維が着色剤、酸化チタン、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化紡糸剤等任意の添加剤成分を含んでいてもよい。
【0018】
PPSのメルトフローレートは、例えば、10〜700g/10minであることが好ましく、50〜500g/10minであることがより好ましい。該メルトフローレートが700g/10min以下である場合、液体フィルター用濾過材の耐熱性がより良好である点で有利であり、10g/10min以上である場合、製糸性等の加工性がより良好である点で有利である。本明細書で記載するメルトフローレートは、ASTM−D1238−82法に準じて、荷重5kg、温度315.6℃の条件において測定される値である。
【0019】
本発明では、スパンボンド法により製造されるPPS長繊維からなる不織布をフィルター用濾過材に用いる。スパンボンド法によるPPS長繊維不織布は、繊維径の均一性が高く、強度及び硬さの点で優れている。具体的な製造方法としては、例えば国際公開第WO2008/035775号パンフレットに記載(特に、段落[0043]〜[0053])される方法等の公知の方法で製造することが可能である。
【0020】
本発明で用いられるスパンボンド不織布中のPPS長繊維の平均繊維径は、1〜10μmであり、好ましくは、2〜6μmである。該平均繊維径が1μmより小さいと、糸切れ等の製造時の問題及び不織布強度の点から好ましくなく、10μmより大きいと、空孔率及び目付の調整だけでは、粒径1〜3μm程度の粒子の捕集性が不十分であるだけでなく、空孔が小さいため根詰まりしやすく、寿命の短いフィルター材しか得られない。本明細書で記載する平均繊維径は、マイクロスコープを用いて測定される繊維の直径(断面が円以外の場合は最大径)の平均値(例えば50点の数平均値)である。
【0021】
PPS長繊維の結晶化度としては、18%以上が好ましく、更に好ましい範囲は25〜50%である。該結晶化度が18%を下回ると、PPS繊維が熱収縮しやすく、プリーツ加工時に収縮するだけでなくフィルターとした際に高温水を流すとリークしやすくなる傾向がある。該結晶化度が50%を超えると、繊維間の熱接着力が低下し、強度の低下、剥離が発生しやすくなる傾向がある。本明細書で記載する結晶化度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される熱量から、下記式に従って算出される値である。なお式中、完全結晶の融解熱量としては、ポリフェニレンスルフィドの完全結晶の理論的な融解熱量146.2J/gを用いる。
結晶化度[%]=100×[(融解部熱量)−(冷結晶部熱量)]/(完全結晶の融解熱量)
(式中、上記熱量の単位は、全て[J/g]である。)
【0022】
本発明において用いるスパンボンド不織布は、実質的にPPS長繊維からなるが、本発明の効果を損なわない範囲で例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、芳香族スルフィド等の他の繊維を少量(例えば15質量%以下)含んでいてもよい。また、スパンボンド不織布は着色剤、酸化チタン、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化紡糸剤、硬化剤等任意の添加剤成分を含んでいてもよい。
【0023】
濾過層を形成する上記のスパンボンド不織布は、1枚の不織布であってもよいし、複数枚の不織布が積層されたものであってもよい。このような1層又は複数層のスパンボンド不織布には、必要に応じて熱エンボス加工又は熱カレンダー加工を施すことができ、これにより、目付量及び空孔率をフィルター用濾過材として求められる範囲に調整することができる。熱エンボス加工又は熱カレンダー加工における加工条件として、温度は160℃〜260℃、圧力は少なくとも50N/cm以上であることが好ましい。
【0024】
濾過層の目付は、50〜300g/mであり、好ましくは100〜200g/mである。該目付が50g/mを下回ると、捕集性が不足するだけでなく、プリーツ加工した際の保持性にも問題が出る可能性があり、好ましくない。一方、該目付が300g/mを超えると、液体を流した際の圧力損失が大きくなり、液体を送るポンプ能力に影響し、使用エネルギーの点で問題になるだけでなく、濾過層の厚みが増えるためカートリッジ内に入るプリーツの山数が少なくなり、濾過面積が低下するため、寿命も短くなる。本明細書で記載する目付は、JIS L 1906 5.2「単位面積あたりの質量」項に準じて測定される値である。
【0025】
濾過層の空孔率は、40〜70%であり、好ましくは50〜60%である。該空孔率が40%を下回ると、圧力損失が大きくなり、濾過層内部に捕集される物質の量も減ってしまうため寿命が短くなる。一方、該空孔率が70%を超えると、濾過層内部に捕集された粒子が再び流出しやすく、捕集性が低下するため好ましくない。特に、本発明の液体フィルター用濾過材が復水用途に使用される場合は、媒体の流量が大きく、上記の捕集粒子の再流出が生じやすく問題になるため、空孔率を60%以下にすることが好ましい。本明細書で記載する空孔率は、前述の目付の値と、濾過層の厚みの値とから、下記式に従って算出される値である。なお厚みは、例えば荷重2kPa(20kf/cm)の加圧子を用いて測定される。なお式中、比重としては、ポリフェニレンスルフィドの理論比重1.35g/cmを用いる。
空孔率(%)={1−目付(g/m)/比重(g/cm)/厚み(mm)/1000)}×100
【0026】
更に、上記の目付及び空孔率のバランスによって、フラジール通気性を0.3〜1cc/cm/秒にすることが好ましく、0.5〜0.9cc/cm/秒にすることがより好ましい。フラジール通気性が0.3cc/cm/秒を下回る場合、流量圧損が高くなり、寿命も短くなる傾向があり、1cc/cm/秒を超える場合、捕集性が不足する傾向がある。本明細書で記載するフラジール通気性は、JIS L 1096 8.27.1「通気性」A法 フラジール形法に準じて測定される値である。
【0027】
本発明の液体フィルター用濾過材は、前述した濾過層のみで構成されてもよいし、例えば、プリーツ加工性を向上させたりプリーツ形状を保持させるためのサポート材や、液の寿命を向上させたり特定物質を吸着させるためのプレフィルター層等を更に有してもよい。
【0028】
<カートリッジフィルター>
本発明の別の態様は、上述した本発明の液体フィルター用濾過材を含み、かつ該液体フィルター用濾過材がプリーツ形状である、カートリッジフィルターを提供する。本発明の液体フィルター用濾過材は、特に、プリーツ加工により濾過表面を増大させて、カートリッジフィルターとして好適に用いることができる。上記プリーツ加工の方法は、特に限定されないが、例えば、ナイフ型加工機、ロータリー型加工機等を用いた加工方法が挙げられる。
【0029】
カートリッジフィルターは、液体フィルター用濾過材のみで構成されてもよいが、典型的には、副濾過層、内筒、外筒、エンドプレート等の構成部材を液体フィルター用濾過材と組合せてカートリッジフィルターを形成する。
【0030】
副濾過層としては、液体フィルター用濾過材の捕集性及び寿命を高めるためのプレフィルター層、プリーツ成形性及びプリーツ保持性を高めるためのメッシュ層又は不織布層、等を設けることができる。これらの副濾過層は、プリーツ加工時に液体フィルター用濾過材と重ね合わせる方法、事前に本発明の液体フィルター用濾過材とエンボス複合等の公知手段で張り合わせる方法等によって設けることができる。
【0031】
ただし、副濾過層の材質としては、高温適性の高いものを選定する必要性があるため、例えばPPS樹脂からなる不織布及びメッシュフィルムが好ましい。
【0032】
また、内筒、外筒、エンドプレート等の部材についても高温適性のある材質が好ましく、これらの部材で好ましい材質としては、PPS樹脂及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)樹脂等が挙げられる。
【0033】
例えば上記のような構成部材を使用して、本発明のカートリッジフィルターを作製することができる。カートリッジフィルターの典型的な構成としては、内筒、該内筒の周囲に巻きつけられたプリーツ加工されたシート(例えば、濾過層からなる液体フィルター用濾過材と副濾過層との積層体)、該プリーツ加工されたシートを覆う外筒(又は、伸縮性のシート材、ネット状基材等)、及びエンドプレート、からなる構成が挙げられる。
【0034】
カートリッジフィルターは例えば以下の方法で製造できる。まず、内筒に、スパンボンド不織布からなる濾過層、及び必要に応じ副濾過層を重ねプリーツ加工を行うことによって、プリーツ加工されたシートを内筒に巻きつけ、プリーツの端面同士を接着剤又は熱接着により固定シールする。次に、プリーツ加工されたシートを覆うように、プラスチック製の筒(外筒)、又は伸縮性のシート材、ネット状基材等を設けることにより、該シートを固定する。このようにして得た筒状物の端面を、樹脂製のエンドプレートを用いた熱処理によるシール、又は、エポキシ樹脂等による金属若しくは樹脂製のプレートの接着によるシール、等によって処理する。エンドプレートの形状については、カートリッジフィルターの容器(ハウジング)に合わせ、公知の形状のものを適宜選定することができる。以上のようにして、カートリッジフィルターを製造できる。
【0035】
<カートリッジフィルターの使用方法>
本発明の別の態様は、上述した本発明のカートリッジフィルターによって、温度100℃以上の加熱水である媒体を濾過する、カートリッジフィルターの使用方法を提供する。本発明のカートリッジフィルターは、高捕集性及び長寿命でありながら耐熱性に優れるため、温度100℃以上の加熱水から懸濁物質、不純物質等を除去するために好ましく適用できる。100℃以上の加熱水としては、例えば、火力発電所等の復水及びヒータドレイン水、各産業で使用されるボイラーで発生する復水等が挙げられる。
【実施例】
【0036】
本発明を、次の実施例及び比較例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、液体フィルター用濾過材の物性値並びに実施例及び比較例において評価した特性値は以下の方法により測定したものである。
【0037】
(1)平均繊維径
試料の任意の10ヶ所を、2500倍のマイクロスコープ倍率にて撮影(1ヶ所あたり5点測定)して、50点の繊維の直径を測定し、それらの平均値(数平均)を平均繊維径とした。次いで、平均繊維径から、平均繊度[dtex]を計算により求めた。
【0038】
(2)目付
JIS L 1906 5.2「単位面積あたりの質量」項に準じて測定した。
【0039】
(3)空孔率
上記(2)で測定した目付及び荷重2kPa(20gf/cm)の加圧子を用いて測定した厚み[mm]から求めた。各濾過材で使用した材質の比重より次式に従って算出した。
空孔率(%)={1−目付(g/m)/比重(g/cm)/厚み(mm)/1000)}×100
なお式中、比重としては、ポリフェニレンスルフィドの理論比重1.35g/cmを用いた。
【0040】
(4)フラジール通気性
JIS L 1096 8.27.1「通気性」A法 フラジール形法に準じて測定した。
【0041】
(5)結晶化度
示差走査熱量計(TAインスツルメント社製:DSC2920)を用いて、5.0mgの試料を下記条件で測定し、下記式(2)により、結晶化度[%]を算出した。なお式中、完全結晶の融解熱量として、ポリフェニレンスルフィドの完全結晶の理論的な融解熱量146.2J/gを用いた。
測定雰囲気:窒素ガス150mL/min、昇温速度:20℃/min
測定範囲:30〜350℃
結晶化度[%]=100×[(融解部熱量)−(冷結晶部熱量)]/(完全結晶の融解熱量)
なお、上記熱量の単位は、全て[J/g]である。
【0042】
(6)捕集性(%)
JIS11種粉塵を水に分散した濃度10ppmの試験液を、均一に攪拌しながら、実施例及び比較例でのカートリッジフィルターに流量10L/minでフィルター外側から内側に流れるようにして通水した。通水開始から30分後の濾過前液及び濾過後液を採取し、超純水で100倍希釈し、粒度分布測定器(PARTICLE MEASURING SYSTEMS INC.社製 LS−200(シリングサンプラ)及びLiqulaz−S02−HF(パーティクルセンサー))を使用し、1.0μm(測定範囲0.97〜1.03μm)径粒子の捕集性を下記式に従って求めた。
捕集性(%)={(A−B)/A}×100
A:濾過前の粒子数 B:濾過後の粒子数
【0043】
(7)フィルター寿命(分)
JIS11種粉塵を水に分散した濃度300ppmの試験液を、均一に攪拌しながら、実施例及び比較例でのカートリッジフィルターに流量10L/minでフィルター外側から内側に流れるようにして通水し、初期圧力損失より圧力損失が0.2MPa上昇するまでに要した時間をフィルター寿命とした。
【0044】
(8)流量圧損(KPa)
上記(7)と同様の試験液を、実施例及び比較例でのカートリッジフィルターに流量10L/minでフィルター外側から内側に流れるようにして通水した時の初期圧力損失を測定して流量圧損とした。
【0045】
(9)メルトフローレート
ASTM−D1238−82法に準じて、荷重5kg、温度315.6℃の条件において測定した。単位は[g/10min]である。
【0046】
(10)耐熱性
実施例及び比較例の濾過材を、該濾過材が水中に完全につかるように、水とともにステンレス製の密閉ポットに入れ、175℃の乾燥機内で約半年静置することによって熱水処理し、経時的に取り出して、自然乾燥後、濾過材の経及び緯方向の収縮率、並びに経方向の強伸度の変化を調べた。
【0047】
熱水処理後収縮率
収縮率(%)=(L0−L1)/L0×100%
(L0:初期マーク長、L1:熱水処理後のマーク長)
【0048】
熱水処理後経強度保持率、及び熱水処理後経伸度保持率
A&D製テンシロン型引張り試験機を用い、掴み幅20mm、チャック長さ100mm、引張り速度200mm/分の条件で破断強伸度を測定した。
【0049】
所定時間の熱水処理後の強度及び伸度から、以下の式で保持率を算出した。
【0050】
強度保持率(%)=(P1/P0)×100
(P0:熱水処理前の経破断強度、P1:熱水処理後の経破断強度)
伸度保持率(%)=(X1/X0)×100
(X0:熱水処理前の経破断伸度、X1:熱水処理後の経破断伸度)
【0051】
[製造例1]
メルトフローレートが70g/10minである直鎖型(すなわちパラ型)のポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマーを溶融し、ノズル径0.25mmの紡糸口金から単孔あたりの吐出量0.5g/minで押し出し、エジェクターで吸引しながら紡糸速度8×10m/minで延伸し、移動する多孔質帯状体の上に捕集・堆積させて、結晶化度31%、平均繊維径7μmのスパンボンド不織布(a)を得た。
【0052】
[製造例2]
メルトフローレートが70g/10minである直鎖型PPSポリマーを溶融し、ノズル径0.25mmの紡糸口金から単孔あたりの吐出量0.3g/minで押し出し、エジェクターで吸引しながら紡糸速度7×10m/minで延伸し、移動する多孔質帯状体の上に捕集・堆積させて、結晶化度30%、平均繊維径5μmのスパンボンド不織布(b)を得た。
【0053】
[製造例3]
メルトフローレートが70g/10minである直鎖型PPSポリマーを溶融し、ノズル径0.25mmの紡糸口金から単孔あたりの吐出量1.4g/minで押し出し、エジェクターで吸引しながら紡糸速度8×10m/minで延伸し、移動する多孔質帯状体の上に捕集・堆積させて、結晶化度21%、平均繊維径12μmのスパンボンド不織布(c)を得た。
【0054】
[製造例4]
メルトフローレートが70g/10minである直鎖型PPSポリマーを溶融し、ノズル径0.25mmの紡糸口金から単孔あたりの吐出量0.5g/minで押し出し、エジェクターで吸引しながら紡糸速度5×10m/minで延伸し、移動する多孔質帯状体の上に捕集・堆積させて、結晶化度15%、平均繊維径12μmのスパンボンド不織布(d)を得た。
【0055】
[実施例1]
濾過層形成用に、スパンボンド不織布(a)を、目付が200g/mとなるように4枚積層し、次いで、260℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積率11.4%)ロールとフラットロールとの間で、線圧50N/mmで部分的に熱圧着し、濾過層(1)を得た。この濾過層(1)の物性を表1、耐熱性を表2にそれぞれ示す。次に、濾過層(1)をプリーツ加工機((有)東洋工機社製)で山高さ1cmに加工してプリーツ基材を得た。
【0056】
このプリーツ基材を山部が100山になるようにカットし、山部と平行の端面同士を超音波プラスチックウェルダー(W3080−20型 日本ヒューチュア株式会社製)を用いて融着させプリーツ状の筒を得た。このプリーツ状の筒を、内筒(PPS製 内径33mm 厚み3mm)に被せ、外筒(PPS製 内径66mm 厚み3mm)及びPPS製樹脂プレートを用いて熱融着機により端面をシールし、カートリッジフィルター(高さ250mm、フィルター面積0.36m)を作製した。このカートリッジフィルターの捕集性及び流量圧損の結果を表1に示す。
【0057】
[実施例2]
スパンボンド不織布(b)を用い、目付を100g/mに変更した以外は実施例1と同様にして、濾過層(2)を得た。この濾過層(2)の物性を表1、耐熱性を表2にそれぞれ示す。
【0058】
次に、濾過層(2)を用いて、実施例1と同様にカートリッジフィルター(高さ250mm、フィルター面積0.36m)を作製した。このカートリッジフィルターの捕集性及び流量圧損の結果を表1に示す。
【0059】
[比較例1]
製造例3において得られたスパンボンド不織布(c)を、目付が200g/mとなるように調整し、260℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積率11.4%)ロールとフラットロールとの間で、線圧50N/mmにより、スパンボンド不織布(c)の内部を部分的に熱圧着し、濾過層(3)を得た。この濾過層(3)の物性を表1、耐熱性を表2にそれぞれ示す。
【0060】
次に、濾過層(3)を用いて、実施例1と同様にカートリッジフィルター(高さ250mm、フィルター面積0.30m)を作製した。ただし、濾過層の厚みが大きいため、山数は80山になった。このカートリッジフィルターの捕集性及び流量圧損の結果を表1に示す。
【0061】
[比較例2]
製造例3において得られたスパンボンド不織布(c)を、目付が350g/mとなるように調整し、260℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積率11.4%)ロールとフラットロールとの間で、線圧200N/mmにより、スパンボンド不織布(c)の内部を部分的に熱圧着し、濾過層(4)を得た。この濾過層(4)の物性を表1、耐熱性を表2にそれぞれ示す。
【0062】
次に、濾過層(4)を用いて、実施例1と同様にカートリッジフィルター(高さ250mm、フィルター面積0.36m)を作製した。このカートリッジフィルターの捕集性及び流量圧損の結果を表1に示す。
【0063】
[比較例3]
製造例4において得られたスパンボンド不織布(d)を、目付が100g/mとなるように調整し、260℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積率11.4%)ロールとフラットロールとの間で、線圧50N/mmにより、スパンボンド不織布(d)の内部を部分的に熱圧着し、濾過層(5)を得た。この濾過層(5)の物性を表1、耐熱性を表2にそれぞれ示す。
【0064】
次に、濾過層(5)を用いてプリーツ処理及びカートリッジフィルターの作製を試みたが、プリーツ処理時及びエンドプレートの熱接着時に不織布が収縮してしまい、シール不良が発生し、カートリッジフィルターを作製できない結果となった。
【0065】
実施例1及び2については、粒径1μm粒子の捕集性が90%程度であり、流量圧損及び寿命のバランスに優れたフィルターであることが判る。
【0066】
それに対し比較例1は平均繊維径が大きく空孔率も高いため、捕集性が不十分な結果になっている。比較例2では、目付を高め、空孔率を低くしたことにより捕集性はやや高くなったが、空孔が少ないために流量圧損が高く、寿命の短いフィルターになってしまうことが判る。比較例3の濾過材は、熱収縮が発生し、耐熱性も劣る。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、例えば火力発電所等での復水及びヒータドレイン水等の高温水から懸濁物質及び不純物質を除去するために使用される濾過材及びカートリッジフィルターに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過層を含む液体フィルター用濾過材であって、
該濾過層が、ポリフェニレンスルフィド長繊維からなるスパンボンド不織布であり、
該ポリフェニレンスルフィド長繊維の平均繊維径が、1〜10μmであり、
該濾過層が、目付50〜300g/m、及び空孔率40〜70%を有する、液体フィルター用濾過材。
【請求項2】
該ポリフェニレンスルフィド長繊維の結晶化度が、18%以上である、請求項1に記載の液体フィルター用濾過材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体フィルター用濾過材を含み、かつ該液体フィルター用濾過材がプリーツ形状である、カートリッジフィルター。
【請求項4】
請求項3に記載のカートリッジフィルターによって、温度100℃以上の加熱水である媒体を濾過する、カートリッジフィルターの使用方法。

【公開番号】特開2011−240290(P2011−240290A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116203(P2010−116203)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】