説明

液体レベル測定プローブ

【課題】液体レベル測定プローブの電子回路が熱の影響を受けにくいようにする。
【解決手段】静電容量型液体レベル測定プローブ10には、2つの同心円金属チューブ12及び14があり、オイル・タンクの中へと下に伸びている。同心円金属チューブ12及び14は、コンデンサの2つのプレートを形成する。プローブ10は、2つの同心円金属チューブ12及び14間の電気的容量の変化を検出することによって、ジェット・エンジンの試験中におけるタンク中のオイル・レベルを測定するが、この静電容量の変化はオイルのレベル変化によって生じる。測定回路30は、温度補償抵抗器と、温度安定化検出器とを含んでいる。測定電子回路パッケージは分離して収容され、ケーブル44を介してプローブ10に接続されるので、プローブ10が動作する暑い環境から離れた位置に回路30を配置できる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
静電容量型オイル・レベル測定装置は、2つの絶縁された金属プレート間に液体を注入し、これら金属プレート間の静電容量の変化を検出するという原理に基づいて動作する。典型的には、このコンデンサの第1プレートに直径の小さいパイプを採用し、これを第2プレートとして機能する大きなパイプの内側に設ける。電気的処理装置が2つのプレートに接続されて静電容量の変化を電圧レベルに変換し、この電圧レベルが読み出しシステムに送られて液体の存在量をガロン単位で示す。こうしたプローブは、メギット・アビオニクス社(Meggitt Avionics, Inc.)が製造する部品番号74−113−1が従来から知られている。
【0002】
使用の際には、こうしたプローブはアルミ製オイル・タンクの上部に装着され、プローブの先端がオイル中のタンクの底近くまで下に伸びている。こうしたプローブは、典型的には、約8ガロン(約30リットル)から1.5ガロン(約5.7リットル)まで測定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−525622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプローブの電子回路部分は、プローブの上部に直接装着されているので、オイルからのすべての熱が電子部品へと伝達される。電子部品(例えば、トランジスタや抵抗など)は、熱の影響を受けやすく、温度上昇によって特性が変化する。こうしたタンク内のオイルは、100度Cを超える温度に達することがある。従来のプローブでは、温度補償がなく、このため、熱による特性変化(サーマル・ドリフト)を免れない。従来のプローブの温度上昇時のサーマル・ドリフトの結果として、出力が上昇し、エンジンを動かした後でも、エンジンを動かす前よりも多くのオイルが使用可能であるかのように見えてしまう。
【0005】
更には、熱及び振動により、こうした従来のプローブは、その電子回路収納部に水が漏れることが知られており、これによって更に動作に悪影響がでる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による静電容量型液体レベル測定プローブは、オイル・タンク中へと下に伸びる2つの同心円金属チューブ含む。これら同心円金属チューブは、コンデンサのプレートを形成する。プローブは、2つの同心円金属チューブ間の電気的容量の変化を検出することによって、ジェット・エンジンの試験中におけるタンク中のオイル・レベルを測定するが、この静電容量の変化はオイルのレベル変化によって生じる。測定回路は、温度を補償する抵抗器又はダイオードと、温度安定化検出回路とを含んでいる。測定電子回路パッケージは分離して収容され、ケーブルを介してプローブに接続されるので、プローブが動作する暑い環境から離れて回路を配置できる。
【0007】
本発明による液体レベル測定プローブを第1の観点から述べれば、タンクの中に伸び、液体のレベルに応じて静電容量が変化する静電容量性センサーと、上記静電容量性センサーから離れた位置に配置され、上記静電容量性センサーの静電容量を検出することによって上記液体のレベルを表す信号を供給する電子回路と、上記静電容量性センサーを上記電子回路に電気的に結合するケーブルとを具えるものである。
【0008】
本発明の第2の観点によれば、第1観点の液体レベル測定プローブが、上記電子回路で生成された液体レベルを表す信号に応じて液体レベルを示すための読み出しシステム(表示装置)を更に具えるようにしても良い。
【0009】
本発明の第3の観点によれば、第1観点の液体レベル測定プローブにおいて、静電容量性センサーが、直接には接続されていない2つの同心円金属チューブを有するようにしても良い。
【0010】
本発明の第4の観点によれば、第3観点の液体レベル測定プローブにおいて、上記電子回路がウェーブ信号(三角波信号など)を一方のチューブに送り、他方のチューブから信号を受け取ることで、液体レベルを表す信号を供給するようにしても良い。
【0011】
本発明の第5の観点によれば、第1観点の液体レベル測定プローブにおいて、上記電子回路が、温度補償抵抗器と温度安定化検出回路を有していても良い。
【0012】
本発明の第6の観点によれば、第1観点の液体レベル測定プローブにおいて、上記電子回路をシリコンと共に筐体に収納することで、上記電子回路に対する振動を抑えると共に、水や湿気から上記電子回路を遮断するようにしても良い。
【0013】
本発明の第7の観点によれば、第1観点の液体レベル測定プローブにおいて、液体の温度を検出する熱電対(thermocouple)を有する温度センサーを更に具えるようにしても良い。
【0014】
本発明の第8の観点によれば、第1観点の液体レベル測定プローブにおいて、上記液体が、ジェット・エンジンなどのエンジン用のオイルであっても良い。
【0015】
本発明の第9の観点によれば、第1観点の液体レベル測定プローブにおいて、上記ケーブルをステンレス・スチールのブレード(braid:編組)で覆うようにしても良い。
【0016】
本発明の目的、効果及び他の新規な点は、以下の詳細な説明を添付の特許請求の範囲及び図面とともに読むことによって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明によるプローブの簡略化した側面図である。
【図2】図2は、本発明に沿って採用される電子回路のブロック図である。
【図3】図3は、図2の検出回路の詳細なブロック図である。
【図4】図4は、オイル・タンクに装着された本発明によるプローブを示す図である。
【図5】図5は、本発明によるプローブのフランジの端の部分の拡大図である。
【図6】図6は、従来のプローブと本発明によるプローブを並べて比較した図である。
【図7】図7は、本発明による電子回路筐体を示す図である。
【図8】図8は、図2の電子回路の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
こうしたプローブの用途としては、地上の試験台におけるジェット・エンジンの試験運転(動作試験)においてのオイル消費の測定がある。このエンジンは、その性能をチェックするために、種々の試験で運転され、そのオイル消費は厳格な制限内に収まらなければならない。
【0019】
図1を参照すると、本発明による静電容量型液体レベル測定プローブ10には2つの金属プレートが含まれ、実施形態で示されるように、これらは互いに対して空間を空けて配置された2つの同心円金属チューブ12及び14である。これら1対の金属チューブの第1端部は、テフロン(登録商標)絶縁体16に取り付けられ、これは続いてフランジ18に結合される。フランジ18は、アルミニウムで製造しても良く、図4に示すように、プローブをオイル・タンクにしっかりと装着するのに利用される。ガスケット(図示せず)が、オイル・プローブ上のフランジ18とタンクの間に配置され、そしてプローブ10がタンクにボルトでしっかりと固定される。1対の金属チューブの第2端部は、プローブがオイル・タンクに装着されたとき、オイルのプール(たまり)の中へと下に伸びている。
【0020】
金属チューブ12及び14は、銅、鉄又はステンレス・スチールで製造しても良い。しかし、腐食を考慮すると、チューブ12及び14は、陽極酸化アルミニウム又はステンレス・スチールで製造するのが好ましい。テフロン(登録商標)絶縁体16は、高温耐性と耐久性があるために用いられる。上述のように、タンク中のオイルは100度Cを超える温度に達することがある。
【0021】
フランジ18上には、コネクタ20が装着される。そのコンタクト(接触子)は、コンデンサのプレート(金属チューブ12及び14)と、離れて装着される電子回路パッケージとの間の導電経路を形成する。コネクタ20に接続された配線が、特別な半田と融剤を用いて、チューブ12及び14に半田付けされる。この特別な半田と融剤は、例えば、ハリス(Harris)社が製造するAL−Solder500である。配線を半田付けすることによって、緩む可能性のあるリベットを用いる必要がなくなる。従来のプローブはリベットによる接続を用いていたが、リベットの緩みは、上述したオイル・レベルの表示がふらつく原因となり得る。
【0022】
上述のように、プローブ10は、検出及び増幅回路を保持する遠隔に装着された筐体にケーブルで接続される。電子回路を遠隔に装着することで、プローブ自身に電子回路を装着するのとは異なり、回路が熱いオイルから伝わる熱による悪影響を受けるのを防止できる。
【0023】
図2は、本発明で用いられる電子回路部30のブロック図である。発振オペアンプ32は、約3ボルトの一定レベルの三角波信号を第1ケーブル44(図4参照)を介して外側チューブ12に印加する。この信号は、第1ケーブル44を介して内側チューブ14に結合された入力プリアンプ34で検出され増幅される。オイルとチューブ12及び14は、可変コンデンサを構成する。オイル・レベルが上昇すると、静電容量も増加する。静電容量が大きいほど、プリアンプ34に供給される信号が強くなる。タンク中のオイル・レベルが減少すると、それに従って電圧出力も低下する。パワー・レギュレータ部40は、第2ケーブル46(図4参照)を介して28ボルトの直流電圧を受けて、オペアンプ32、入力プリアンプ34及び出力アンプ38に電圧を供給する。出力アンプ38は、第2ケーブル46を介して、読み出しシステム42にオイル・レベルを示す出力信号を供給する。読み出しシステム42は、表示装置(図示せず)上でオイル・レベルを示す。
【0024】
ユーザは、直流電圧で示される値を用いてオイル・レベルを測定する。図3に示す検出回路36は、交流の三角波信号を直流レベルに変換する。プローブは、0ボルトから9ボルトまでを読み出し、9ボルトはタンクが満タンであることを示す。検出回路36は、ダイオード接続された4つのトランジスタQ1〜Q4から構成される。結合コンデンサC1は、プリアンプ34の出力信号を入力検出回路36の入力に結合する。トランジスタQ1及びQ2は、コンデンサC1と組み合わせて、電圧ダブラとして用いられ、信号を2倍の直流レベルに変換する。トランジスタQ3及びQ4は、サーミスタのように用いられ、検出回路の出力を温度に対して安定させる。更に、温度補償ダイオードやサーミスタを用いても良い。当業者であれば、図3に示したデザインは、温度変化を補償するために、ユニークな方法でプレーナ型トランジタを接続したものであることに気づくであろう。
【0025】
図5は、本発明によるプローブのフランジ端部を拡大した図である。従来のメギット・アビオニクス社製プローブにはない本発明によるプローブの他の特徴は、温度を直接測定したいという航空機エンジンのメーカーの要求を満たすために、温度プローブ24を接続することである。温度プローブ24は、オイルの温度を検出するために、熱電対(thermocouple)を有するものとしても良い。
【0026】
図7及び8は、電子回路筐体48を示す。電子回路部30は、そのユニットが振動に対して安定し、水や湿気を遮断するように、透明なシリコン中に納められる。筐体48には、ゴム製ガスケットを有する上部カバー(図示せず)があり、ユニットの動作を適切に調整した後、筐体48はシリコンを用いて上部カバーで密閉される。入力利得調整ポテンショメータの代わりに、複数の抵抗器を選択的に用いても良く、これによって動作がより安定する。加えて、ケーブル44は、保護のために、ステンレス・スチール製ブレード(braid:編組)で覆うようにしても良い、。
【0027】
本発明によるプローブの精度は、当初は従来のプローブとほぼ同じである。つまり、事前の校正で再現されるのは、電圧出力の全スケールの+/−0.5%の精度であり、これは約+/−0.3パイント(0.14リットル)である。このレベルの精度は、航空機エンジン・メーカーの要求を満たすものである。しかし、試験中にオイルを使用するすべてのエンジンについて、本発明によるプローブは、開始時レベルと終了時レベルの間の差分(デルタ)を、より正確に提供する。
【0028】
本発明の具体的な実施形態を実例で説明してきたが、本発明の原理はこれら実施形態に限定されるものではない。本発明の原理から逸脱することなく、多様な変形が可能なことは明らかであろう。
【符号の説明】
【0029】
10 静電容量型液体レベル測定プローブ
12 外側金属チューブ
14 内側金属チューブ
16 絶縁体
18 フランジ
20 コネクタ
24 温度プローブ
30 電子回路部
32 発振オペアンプ
34 入力プリアンプ
36 入力検出回路
38 出力アンプ
40 パワー・レギュレータ部
44 第1ケーブル
46 第2ケーブル
48 筐体
50 試験タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの中に伸び、液体のレベルに応じて静電容量が変化する静電容量性センサーと、
上記容量性センサーから離れた位置に配置され、上記静電容量性センサーの上記静電容量を検出することによって上記液体のレベルを表す信号を供給する電子回路と、
上記静電容量性センサーを上記電子回路に電気的に結合するケーブルと
を具える液体レベル測定プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−145294(P2011−145294A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5644(P2011−5644)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(391002340)テクトロニクス・インコーポレイテッド (234)
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
【Fターム(参考)】