説明

液体中の汚染物質を検出する装置及びそれを使用するためのシステム

【課題】
【解決手段】 水溶液中の汚染物質を検出し、数量化する装置及び方法が開示される。一実施形態においては、液体中の汚染物質を検出する装置は、センサ(4)及びコントローラ(6)を具備する。センサ(4)は膜(12)及び変換器(10)を具備し、変換器(10)は、使用中、変換器(10)の第1の面が液体と流体連通し且つ膜(12)が第1の面と液体との間に配置されるように構成される。膜(12)は、膜(12)を通過する望ましくない種の搬送を妨害できるポリマー材料であってもよい。コントローラ(6)は変換器(10)に対して動作自在な通信関係にあり、液体中の汚染物質の濃度を判定するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液体中の汚染物質を検出し、数量化する装置及び方法、並びにそれを使用するためのシステムが開示される。
【背景技術】
【0002】
水溶液中の微量レベル(例えば、1容積%未満)及び極微量レベル(例えば、1.0×10−6容積%未満)の化学汚染物質の検出は、数多くの用途の状態を監視する上で重要である。例えば、半導体、製薬、農業、化学、エネルギー及び食品処理などの分野を含むが、それらの分野に限定されない数多くの工業処理においては、超純水(すなわち、極微量濃度のイオン種を含む水)が望ましい。1つの特定の例として、原子炉は冷却の目的で超純水を採用できる。超純水は汚染物質を含有する場合があり、それらの汚染物質は原子炉流体処理系統において腐食及び他の問題を引き起こす。従って、それらの汚染物質を検出し、数量化するためのシステム及び方法は極めて望ましい。
【0003】
この20〜30年にわたり、化学汚染物質の検出は著しく進歩した。現在、水溶液中の微量レベルのイオン種を検出し、数量化するために利用できる技術はいくつかある。それらの技術にはイオンクロマトグラフィ(IC)、誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP)、質量分光測定(MS)、ICP‐MS及び毛管電気泳動(CE)などがある。更に、水中の微量イオン種分析に、電気化学センサ、光学センサ及びハイブリッド化学センサ(例えば、表面プラズモン共振と陽極ストリッピングボルタンメトリーとの組合せのような異なる技術の組合わせ)が適用されていた。しかしながら、それらの方法は大量の試料の準備を必要とするか、又は感度の低さ、不適切な検出限界、妨害効果、基線ドリフト及び試料採取中又は処理中の汚染により制限される。
【0004】
ICは、水溶液中のイオン種を検出する主要な手段である。例えば、原子力発電装置では、イオン種の日常監視のために主にインラインイオンクロマトグラフィを使用してきた。IC方法は、本来、カラムイオン交換クロマトグラフィから成るが、そのためには、大量の試料及び収集された試料片の湿式化学分析が必要であり、実行に何時間もかかっていた。最近になって、必要とされる試料の量が著しく少なく、コンピュータ制御の下で実質的に無人で動作し、分単位という短時間で実行可能なIC方法が開発された。しかし、最新のIC方法にも、コスト、複雑さ及び保守などの面で、数多くの状況において実用を不可能にする欠点が依然として存在する。更に、現在、ICは約10分の分析時間を実現しているが、これでも多くの適用用途においては長すぎる。
【0005】
ICP及びICP‐MSもイオン種検出に使用される。誘導結合プラズマアイソトープ希釈質量分光測定(ICP‐IDMS)は、微量元素及び元素種分化分析に使用されるルーティンの方法としては適しているが、種別アイソトープ希釈のための市販のアイソトープ標識化合物が存在しないこと及び非種別ICP‐IDMS分析に必要とされるシステム構成が複雑であることにより限定される。従って、より適切な検出方法を開発することが強く求められる。
【0006】
ICの1/10〜1/100の廃液体積を採用し、ICより測定時間が短い(通常は3分未満)CEは、イオン種を検出する別の一般的な手段である。CEにも、例えば、印加できる電圧の量及び毛管の短さに実際に限界があるなどの制限がある。更に、試料は規定の幅の帯で導入されなければならず、検出の信頼性を得るためには規定の体積が必要である。また、電圧勾配が極めて急激であるために、毛管内部の電解質が加熱されるので、電解質の望ましくないゾーン拡張、更には電解質の沸騰や、電気泳動プロセス全体の崩壊などの問題が起こる。このような制限があるため、多くの用途に対して毛管ゾーン電気泳動は実用的ではない。
【特許文献1】米国特許第4,941,958号公報
【特許文献2】米国特許第5,344,547号公報
【特許文献3】米国特許第5,840,168号公報
【特許文献4】米国特許第6,025,725号公報
【特許文献5】米国特許第6,359,444号公報
【特許文献6】米国特許第6,398,931号公報
【特許文献7】米国特許第6,586,946号公報
【特許文献8】米国特許第6,730,201号公報
【特許文献9】米国特許第6,780,307号公報
【特許文献10】米国特許第6,953,520号公報
【特許文献11】米国特許出願公開第2006/0065530号
【非特許文献1】CERESA, A., et al.; "Rational Design of Potentiometric Trace Level Ion Sensors. A Ag+-Selective Electrode with a 100 ppt Detection Limit"; Anal. Chem.; 2002; 74; 4027−4036, August 15, 2002
【非特許文献2】CHINOWSKI, T. M., et al.; "Experimental data from a trace Metal sensor combining surface plasmon resonance with anodic Stripping voltametry"; Sens. Actuators; B; 1997; 33−36 & 37−43
【非特許文献3】CHYAN, O., et al.; "Ultrapure water quality monitoring By a silicon-based potentiometric sensor"; Analyst; 2000; 125; 175−178, November 9, 1999
【非特許文献4】DE BORBA, B.M., et al.; "Determination of sodium at low Ng/1 concentrations in simulated power plant waters by ion Chromatography"; J. Chromatogr. A; 2003; 995; 143−152, March 11, 2003
【非特許文献5】DI NATALE, C., et al.; "Multicomponent analysis of heavy Metal cations and inorganic anions in liquids by a non-selective Chalcogenide glass sensor array"; Sens. Actuators; B; 1996; 34; 539−542, May 3, 1996
【非特許文献6】DI NATALE, C., et al.; "Multicomponent analysis on polluted Waters by means of an electronic tongue"; Sens. Actuators; B; 1997; 44; 423−428, May 14, 1997
【非特許文献7】ERVIN, A. M., et al.; "Development of a fiber-optic sensor For trace metal detection in aqueous environments"; Appl. Opt.; 1993; 32; 4287-4290, August 1, 1993
【非特許文献8】JOHNS, C., et al.; "Sensitive indirect photometric detection Of inorganic and small organic anions by capillary Electrophoresis using Orange G as a probe ion"; Electrophoresis; 2003; 24; 557−566
【非特許文献9】JURS, P.C., et al.; "Computational Methods for the Analysis Of Chemical Sensor Array Data from Volatile Analytes"; Chem. Rev.; 2000; 100; 2649−2678, August 5, 1999
【非特許文献10】LEGIN, A. V., et al.; "Development and analytical evaluation Of a multisensor system for water quality monitoring"; Sens. Actuators; B; 1995; 27; 377−379
【非特許文献11】LEGIN, A. V., et al.; "The features of the electronic tongue in Comparison with the characteristics of the discrete ion-selective Sensors", Sens. Actuators; B; 1999; 58; 464−468, January 19, 1999
【非特許文献12】MOURZINA, Y. G., et al.; "Development of multisensor Systems based on chalcogenide thin film chemical sensors For the simultaneous multicomponent analysis of metal ions In complex solutions"; Electrochimica Acta; 2001; 47; 251−258, March 29, 2001
【非特許文献13】MULLEN, K. I., et al., "Trace detection of ionic species with Surface enhanced Raman spectroscopy"; Spectroscopy; 1992; 7; 24−32, June 1992
【非特許文献14】VLASOV, Y. G., et al.; "Electronic tongue-new analytical Tool for liquid analysis on the basis of non-specific sensors And methods of pattern recognition"; Sens. Actuators; B; 2000; 65; 235−256, June 15, 1999
【非特許文献15】VLASOV, Y., et al.; "Cross-sensitivity evaluation of chemical Sensors for electronic tongue: determination of heavy metallons"; Sens. Actuators; B; 1997; 44; 532−537, June 11, 1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水溶液中の種を検出し、数量化するために採用されている現在の技術と関連する欠点を考慮して、現在、上述のような制限、並びに著しく大きな妨害効果、基線ドリフト及び処理による意図されない水の汚染などの制限が全くない検出方法及び検出システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
液体中の汚染物質の濃度を判定する装置及び方法、並びにそれを使用するためのシステムが開示される。
【0009】
液体中の汚染物質を検出し、数量化する装置及び方法が開示される。一実施形態においては、液体中の汚染物質を検出する装置は、センサ及びコントローラを具備する。センサは膜及び変換器を具備する。センサは、使用中、変換器の第1の面が液体と流体連通し且つ膜が第1の面と液体との間に配置されるように構成される。膜は、膜を通過する望ましくない種の搬送を妨害できるポリマー材料である。コントローラは変換器と動作自在な通信関係にあり、液体中の汚染物質の濃度を判定するように構成される。
【0010】
別の実施形態において、液体中の汚染物質を検出する装置は、センサアレイ及びコントローラを具備する。センサアレイは、第1の面及び第2の面を有する第1の膜と、第2の面と流体連通する状態で配置された第1のパージチャンバと、底面及び上面を有する第2の膜と、上面と流体連通する状態で配置された第2のパージチャンバと、第1のパージチャンバの内部に配置された第1の変換器と、第2のパージチャンバの内部に配置された第2の変換器とを具備する。使用中、第1の膜の第1の面は液体と流体連通する状態で配置される。第2の膜の底面は第1のパージチャンバと流体連通する状態になる。コントローラは第1の変換器及び第2の変換器と動作自在な通信関係にあり、液体中の汚染物質の濃度を判定するように構成される。
【0011】
更に別の実施形態において、原子力発電装置は、エネルギーを生成するように構成された原子炉と、水中の汚染物質を検出するように構成された汚染物質検出器とを具備する。検出器は、膜及び変換器を具備するセンサと、変換器に動作自在な通信関係で接続されたコントローラとを具備する。センサは、使用中、変換器の第1の面が水と流体連通し且つ膜が第1の面と水との間に配置されるように構成される。膜は、膜を通過する望ましくない種の搬送を妨害できるポリマー材料である。コントローラは汚染物質の濃度を判定するように構成される。
【0012】
上述の特徴及びその他の特徴は、添付の図面及び以下の詳細な説明により例示される。
【0013】
実施形態を示す図面を参照して説明する。図中、同様の要素は同じ図中符号により示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
液体(例えば、水溶液)中の汚染物質を検出し、数量化する装置及び方法が開示される。汚染物質検出システム(以下、CDSと呼ばれる)と呼ばれる検出装置は、水溶液中に配置されるセンサに動作自在な通信関係で接続されたコントローラを具備する。センサは、マニホルドと一体化された1つ以上の変換器及び1つ以上の化学的に応答する膜(以下、FILMと呼ばれる)を具備する。検出方法は、汚染物質を求めて水溶液を分析することと、測定信号を検出することと、溶液中の不純物の濃度を判定することとから成る。
【0015】
図1を参照すると、汚染物質検出システム(CDS)2の一例が示される。コントローラ6はセンサ4に動作自在に接続される。センサ4は、導管18を通って流れている液体8と流体連通する状態で配置される。センサ4は、液体8中の汚染物質(例えば、イオン種)の濃度を判定するために利用できる情報をコントローラ6に提供できる。
【0016】
次に図2を参照すると、センサ4の一例が示される。センサ4は、膜12と接触する状態で配置された変換器10を具備する。変換器10及び膜12は共にマニホルド16の中に配置される。変換器10と接触する面とは反対側の膜12の面は、微量レベル(例えば、少量)の汚染物質(図示せず)を含有する液体8と流体連通する状態で配置される。変換器10とコントローラ6(図示せず)との間で電気通信を実現するために、ワイヤ14は変換器10及びコントローラ6に電気通信関係で接続される。本実施形態はワイヤ14を採用するが、別の実施形態においては、無線通信(例えば、RFID変換器を使用する無線周波数通信)等を使用して、ワイヤ14を使用せずに変換器10とコントローラ6との間の通信を実現できることは明らかである。更に、変換器10とコントローラ6との通信を実現するために、本明細書中で説明される実施形態のいずれに関しても、通信は任意の新規又は周知の通信規格(例えば、ブルートゥース(IEEE802.15.1としても知られる無線パーソナルエリアネットワーク(PAN)の工業仕様)、DECT(デジタル欧州コードレス電話)、DSRC(専用短距離通信)、HIPERLAN(高性能無線ローカルエリアネットワーク(一連のローカルエリアネットワーク通信規格))、HIPERMAN(高性能無線メトロポリタンエリアネットワーク)、IEEE(米国電気電子技術者協会)、IRDA(赤外線データ協会規格)、RFID(無線周波数識別)、WiFi(無線忠実度)、WiMAX(IEEE規格802.16に一般に与えられている名称)、xMAX(無線周波数(RF)変調符号化技術)、ZigBee(IEEE規格802.15.4に準拠した無線ネットワーク)など、並びに以上の規格のうち少なくとも1つを含む組み合わせ)を利用できる。
【0017】
使用中、センサ4は、液体8中の汚染物質の濃度を判定するために利用可能な情報をコントローラ6に提供できる。一般に、これは、膜12を通過するイオンの量に基づいて変化する電気的情報をコントローラ6に提供するために変換器10を採用することにより実現される。コントローラが液体8中の特定の汚染物質の濃度を判定できるようにするために、膜12は所望の汚染物質(例えば、評価される汚染物質のイオン)を通過させ、望ましくない汚染物質(例えば、評価されない付加的汚染物質)が膜12を通過するのを部分的又は完全に抑制するように構成される。
【0018】
一般に、膜12は、特定の汚染物質を通過させる能力に基づいて選択されるポリマー材料から形成される。特に、膜12に採用されるポリマー材料の一例は、センサが動作する温度より低いガラス遷移温度を有し、それにより、特定の汚染物質が膜を通過して拡散することを可能にする半粘性状態を形成できる。膜12における種の拡散を適切に調整するために、膜12に採用されるポリマー材料の中に添加剤を導入できる。膜12が所望のガラス遷移温度及び/又は拡散速度を示したならば、正電荷又は負電荷を有するイオン交換物質をポリマーマトリクスに添加できる。特定のイオン交換物質は、分析される液体中の汚染物質の電荷に基づく。例えば、負電荷を有するイオン交換物質は、正に帯電された汚染物質に対して使用され、正に帯電されたイオン交換物質は負に帯電された汚染物質に対して使用される。また、中性電荷を有する汚染物質に対しては中性に帯電された膜を使用できることも理解される。水中のイオンを検出するために、イオン透過担体を使用して関心イオンの選択的結合プロセスを実行するように膜組成が選択される。イオン透過担体は、膜12の選択性を向上し且つ膜12を通過する汚染物質の搬送を更に助長するためにポリマー材料に添加される。同様に、膜12を通した望ましくない汚染物質(例えば、妨害物質)の拡散を制限するために、イオン透過担体及び/又はイオン交換物質をポリマー材料に添加することも可能である。硫酸塩検出に使用されるイオン透過担体の例は、亜鉛フタロシアニン及び1,3‐[ビス(3‐フェニルチオ尿素‐イドメチル)]ベンゼンである。塩化物検出のためのイオン透過担体の例は、4,5‐ビス[N’‐(ブチル)チオウレイド]‐2,7‐ジ‐ター‐ブチル‐9,9‐ジメチルキサンテン及びメソ‐テトラフェニルポルフィリンマンガン(III)である。亜鉛検出のためのイオン透過担体の例は、3‐[(2‐フリルメチレン)アミノ]‐2‐チオキソ‐1,3‐チアゾリジン‐4‐1及び1‐(2‐ピリジラゾ)‐2‐ナフトールである。センサ膜におけるイオン搬送を助けるために、親油相として可塑剤をポリマーセンサ膜組成に添加できる(例えば、セバシン酸ビス(2‐エチルヘキシル)(DOS)、2‐ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)、アセトフェノン(AP)、フタル酸ジブチル(DBP)、ニトロベンゼン(NB))。例えば、イオン交換体(塩化トリドデシルメチルアンモニウム)などの他の成分をセンサ膜組成に添加することも可能である。
【0019】
化学的組成の関係上、固有の透過選択性を示すことができ、多様な化学的性質で利用でき、長期間にわたり安定し、他の成分(可塑剤、イオン交換体、イオン透過担体など)の添加により物理的特性及び化学的特性並びに選択性を変更できるという理由により、イオンセンサのマトリクス材料としてポリマー膜を使用できる。所望の特質である透過選択性が得られるのは、イオンが水和エンタルピーに基づいて親水特性又は親油特性を種々の程度で示すためである。
【0020】
膜12に採用できるポリマーの例はポリスルホン、ポリアニリン、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、アクリル酸コポリマー及び以上のポリマーのうち少なくとも1つを含む組合わせである。更に、シリコンアルコキシド(例えば、テトラエトキシシラン(TMOS)又はテトラエトキシシラン(TEOS))のゾル‐ゲル反応から生成されるポリマーは、周囲温度における加水分解及び縮合反応を経てシリカを調製するための有効な手段を提供する。水とアルコキシシランとの比、pH、温度及び採用される特定の溶剤などの処理条件の選択により、膜12の物理的特性(例えば、孔の大きさ、表面積及び多孔率)を調整できる。形成される物質の特定の物理的特性(例えば、機械的可撓性、孔の大きさ、多孔率及び疎水度)に影響を及ぼす共有結合目標官能基Rを含有するシリカを生成するために、一般式(R(4−X)Si(OR’)(式中、R及びR’は所望の試薬及び/又は官能基を表し、X=1〜3である)を有する有機シラン前駆物質は、シリコンアルコキシド(すなわち、TMOS又はTEOS)を用いて又はシリコンアルコキシドを用いないで加水分解して縮合される。
【0021】
穏やかな状態のゾル‐ゲル反応により、イオン感知試薬はゾル‐ゲルマトリクスの中に封入される。それらの試薬は、アルコキシシラン前駆物質への結合によりマトリクスに共有結合できる。物理的封入又は化学的結合のいずれかによってそれらの試薬がマトリクスに一体化された場合、試薬は、目標汚染物質にさらされると汚染物質と共に錯体を形成し、変換器を介して信号を供給する。ゾル‐ゲル材料は多孔性を有するため、感知試薬は、錯体を形成するために孔の内側で非常に自在に移動又は方向転換できる。更に、有機シラン前駆物質のRをフェニル基、エチル基又はベンジル基などのバルキー基と置換するか又はアルコキシ基の数を、例えば、2に減少することにより、可撓性を与えることができる。有機官能基によって架橋密度が低下することは、マトリクス内における汚染物質の移動度を増加し、応答時間を短縮するのに有用である。
【0022】
前駆物質シランに対する有機官能基のうちいくつかはシリカ網状組織の疎水度を増加し、水性環境における膨潤を防止する。これは、非目標汚染物質を識別する上で有用である。
【0023】
特定の一実施形態においては、架橋密度を低下し且つ疎水度を増加するために、テトラエトキシシランと組合わせてベンジルトリエトキシシランを使用できる。別の実施形態においては、前駆物質として、テトラエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン及びそれらのうち少なくとも1つを含む組合せを採用できる。
【0024】
同様に膜12に採用できる材料の例はポリスルホン、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリアニリン、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアルキレンテレフタラート(ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラートなど))、ポリカーボネート、アクリル、スチレン(例えば、衝撃変性ポリスチレン、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン、スチレン‐アクリロニトリル)、ポリ(メタ)クリル酸塩(例えば、アクリル酸ポリブチル、メタクリル酸ポリメチル)、ポリアミン、ポリアミド、ポリエーテル(例えば、ポリエーテルエステル及びポリエーテルイミド)、ポリエステル、酸化ポリフェニレン、ポリフェニレンエーテル、ポリシロキサン、多糖類、ポリ硫酸塩、多硫化物ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルなど、並びに以上の物質のうち少なくとも1つを含む組合せを含む。
【0025】
膜12の厚さは、膜12を通過するイオンの搬送に影響を及ぼす。従って、時間及び拡散速度などの所望のイオン搬送特性に基づいて、膜の特定の寸法が判定される。一例においては、約0.1〜約200μmの厚さを有する膜12を採用できる。特定の一例においては、約10μmの厚さを有するポリスルホン膜12を採用できる。別の特定の例においては、約100μmの厚さを有するゾル‐ゲル膜12を採用できる。
【0026】
変換器10は、液体8中の汚染物質の濃度を判定するために利用できる情報をコントローラ6に提供できる任意の電気化学変換器であればよい。変換器10の一例が図3に示される。この例の変換器10は第1の電極30及び第2の電極32を具備し、それらの電極30及び32は櫛形構造フィンガ34に電気通信関係で個別に接続される(これらを組合わせたものを一般に電極と呼ぶことができる)。電極はベース36上に配置される。図3に示される変換器10は本明細書中で説明される実施形態のいずれにおいても採用でき、限定されない。いくつかの実施形態において、ワイヤ14を有する変換器10が示されるが、その代わりに無線変換器を使用できることが理解される。
【0027】
第1の電極30、第2の電極32及び櫛形構造フィンガ34は、導電性金属(例えば、金、プラチナ又は銅)、合金(例えば、ニッケルと銅の合金)、又は変換器10の機能を可能にする他の導電性材料から製造される。ベース36はポリイミドなどのポリマー膜、又は酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどの材料から製造できる。
【0028】
図3に示される例における変換器10は、膜12を通過して変換器10と接触するイオン(例えば、櫛形構造フィンガの間で動作自在な通信状態に置かれたイオン)の量が増すにつれて、櫛形構造フィンガの間でコントローラ6により測定される電気的特性が増加するという原理に基づいて動作する。測定される電気的特性は、複数の周波数における複素インピーダンス、電気化学的に変調されるインピーダンス、電流及び電位、並びにそれらのうち少なくとも1つを含む組合わせであってもよい。
【0029】
インピーダンスを測定するために、方法の一例として線形応答方法を採用できる。特に、線形応答方法においては、システムは小さな振幅を有する正弦波電流又は電位により摂動され、テイラー展開非線形電流‐電圧関係の一次項のみを含む応答を生成する。一般に、方法の2つの動作「モード」が識別される。第1のモードは、直流電位バイアスに重畳される小振幅正弦波電位摂動の周波数の関数としてのインピーダンスの測定である。直流電位の種々の値でインピーダンススペクトルが測定される。この方法は電気化学インピーダンススペクトロスコピー又はインピーダンスボルタンメトリーと呼ばれる。第2のモードは、走査直流電位又は階段形直流電位に単一周波数正弦波電位を重畳し、直流電位の関数として応答正弦波電流を測定する。この技術は交流ポーラログラフィ又は交流ボルタンメトリーと呼ばれる。この場合、本質的に、アドミタンスと呼ばれるインピーダンスの逆数が求められる。
【0030】
イオン選択電気伝導度測定マイクロセンサは別個の基準電極を必要とする。この場合、イオン検出は、イオン錯化剤を含有する薄いイオン選択膜12のバルクコンダクタンスの測定により実現される。信号(導電率)の大きさは分析された水の中の一次イオンの含有量と関連付けられる。膜12のコンダクタンスを監視するために、膜12は1対の薄膜櫛形構造電極の上面に配置される。センサの動作は、液体から特定のイオン透過担体を含有する感知膜の中への特定の可逆イオン同時抽出に基づく。イオン同時抽出はバルクコンダクタンスを変化させる。膜中のイオン透過担体は陽イオンの膜への比可溶性を支援し、電気的中性の状態に従うために陰イオンの同時抽出が同時にこれに付随する。この陰イオン妨害を最小限にするために、濃度の高い親油性陰イオンによって液体を緩衝できる。
【0031】
電位差測定センサにおいては、イオン選択感知膜12で被覆された作業電極の電位と液体中の汚染物質濃度との関係から分析情報が得られる。単一の電極の電位を測定できないため、作業電極と組合わせて基準電極が使用される。電位差測定センサの感知(又は作業)電極は、感知被膜としても周知である感知膜12で被覆される。そのような膜12は調製ゾル‐ゲル、ガラス又は無機結晶、あるいは調製ポリマー膜12であってもよい。膜12の組成は、膜と電解質との境界面における選択的結合プロセスを経て関心イオン(例えば、特定の汚染物質)と主に関連付けられる電位を加えるように選択される。膜12の表面電位の大きさは、液体(例えば、水溶液)中の関心一次イオンの活量又は数と直接に関連する。関心イオンに対する電位差測定センサの選択的応答を説明するメカニズム及びモデルは、化学吸着及び相界電位を含む。
【0032】
上述の変換器以外の変換器も同様に採用できることは明らかである。例えば、4電極変換器を採用できる。更に、無線周波数識別(RFID)を採用できる。その場合、変換器10として採用できるRFIDセンサを形成するか又は変換器10と組合わせて使用するために、RFIDタグは感知膜で被覆される。本実施形態においては、RFIDセンサは適切な装置へ情報を送信できる。更に、RFIDセンサを導管18の内部に配置し、導管を通して情報を送信することも可能である。その場合には、導管18は、ガラス又はプラスチックなどの非導電性材料から形成された壁を具備する。それらのRFIDセンサは、センサ及びその設置場所に関する情報(例えば、センサの正しい構体、製造年月日及び使用期限、センサ校正及び修正係数など)を自動的に提供する同時デジタルID機能を備えた1つのセンサによってマルチパラメータ監視を実行する。無線周波数変換器は、80kHz〜200kHz、5MHz〜10MHz又は9MHz〜16MHzの周波数で電気的情報を送信できる。
【0033】
液体8は導管18(例えば、パイプ及び管など)を通して又は容器(例えば、図示しないコンテナ、試験管、フラスコ、ビンなど)を使用して大量にセンサ4へ送り出されるか、あるいは少量ずつセンサ4へ送り出される(例えば、ピペットなどにより供給される)。供給方法又は供給量とは関係なく、液体8の特性が修正され且つ/又は標準化されるように、センサ4と接触する前に液体8を事前調整できる。例えば、液体8(例えば、水溶液)を温度調整(例えば、加熱又は冷却)、ろ過、加圧、攪拌、薬剤(例えば、調節剤)と混合などすること、並びにそれらの処理のうち少なくとも1つを含む組合せを実行することができる。液体8の事前調整は、センサ4(例えば、変換器10及び/又は膜12)が液体8の特性により影響を受けるようなシステムにおいて有用である。そのようなシステムにおいては、事前調整によるセンサ4の繰返し精度及び/又は感度の改善、あるいはセンサ応答の向上などの利点がある。例えば、イオン拡散、導電率、インピーダンスなどの特性、並びに他の特性は液体8の温度により影響を受ける場合がある。その結果、センサ4の応答にも影響が出る。更に、液体8を事前調整できることにより、種々の条件(例えば、温度及び/又は圧力)の下で液体8を分析する能力が得られる。例えば、複数の温度で液体8を試験する試験を実施できる。これにより、関心汚染物質のイオン搬送に関する追加情報を得ることができ、更には、センサ2、40により供給される電気的情報に影響を及ぼすおそれがある望ましくない汚染物質の存在に関する情報なども得られるであろう。
【0034】
マニホルド16は、変換器10及び膜12を固着するために採用される。しかし、膜12が変換器10に接合されるような用途においては、マニホルドは不要であることが明らかである。マニホルドは、変換器10及び膜12を固着でき且つ液体8に長期間(例えば、約6ヶ月以上、特に約1年以上)さらされることに耐えられる任意の材料から形成されてもよい。
【0035】
図4には、別の構成を有するセンサ40の一例の横断面図が示される。変換器10と膜12との間にパージチャンバ42が配置される。特に、センサ40は、導管18の内部を流れる液体8と流体連通する状態で配置された膜12を具備する。液体と接触している面とは反対側の膜12の面は、パージチャンバ42と流体結合される。パージ媒体44は、パージチャンバ42の内部を流通できる。パージチャンバ42は、パージチャンバ42の内部を流れるパージ媒体44と流体接触する状態で配置された変換器10によっても規定される。パージチャンバ42と接触している面とは反対側の変換器10の面において、ワイヤ14は変換器10及びコントローラ6(図示せず)に電気通信状態で接続される。パージチャンバ42は、変換器10、ワイヤ14及び膜12を固着するマニホルド24により更に規定される。マニホルド24には入口46及び出口48も装着され、パージ媒体44は入口46及び出口48を通って流通できる。オプションとして、追加のプローブがセンサに採用されてもよい。例えば、液体8と接触するように、パージチャンバ42の内部及び/又は外側など導電率プローブ(図示せず)を配置できる。同様に、温度判定を可能にするために、液体と熱連通状態で温度プローブ(すなわち、温度センサ)を配置できる。しかし、図示される変換器10の代わりに又はそれに加えて、無線変換器を採用できることが理解される。
【0036】
使用中、センサ40は、液体8中の汚染物質の濃度を判定するために利用可能な情報をコントローラ6に提供できる。一般に、センサ40は感知モード及びパージモードで動作される。感知モードにおいて、パージ媒体44の流れは停止され、液体8からのイオンは膜12を通って移動し、パージチャンバ42内部のパージ媒体44の中へ拡散する。変換器10は、パージ媒体44の中に拡散しているイオンの量に基づいて、電気的情報をコントローラ6(図示せず)に提供する。パージモードにおいては、パージ媒体44の流れが開始される。パージ媒体44がパージチャンバ42を通って流れると、膜12を通過できるイオンの大部分又は全てがパージチャンバ42から排除される(例えば、洗い流される)。
【0037】
センサ40からイオンをパージできることにより、いくつかの優れた利点が得られる。第1に、パージ可能であるため、センサは次の測定に移行する前に校正状態に戻ることができる。すなわち、センサは自己校正を実行できる。例えば、パージ媒体44が存在する中でセンサが校正されると、パージモードの後、センサ40は校正状態に戻る。更に、センサモードを実行する前に、その都度、センサ40を校正することにより利点(例えば、測定精度の向上)が得られると判定された場合、パージモードの間にセンサ40を校正できる。センサ40をパージできることにより実現される第2の優れた利点は、妨害効果が減少することである。特に、望ましくない汚染物質(例えば、評価されない汚染物質)がセンサ内部に蓄積すると、センサ40の精度が影響を受ける場合がある。これは、変換器10により測定される電気的情報がそれらの望ましくない汚染物質の蓄積により影響を受けるためである。従って、測定と次の測定との間に望ましくない汚染物質をパージできれば、汚染物質の蓄積がセンサ精度に影響を及ぼさないことが保証される。更に、パージチャンバからイオンをパージするために、パージ媒体44を加熱し、加圧し且つ/又は化学試薬によって希釈することができる。
【0038】
採用されるパージ媒体44は、パージチャンバ42から膜12を通過するイオンの全て又は大部分をパージできる。更に、パージ媒体44は液体8の浄化形態である。例えば、液体8が水であるようなシステムの場合、パージ媒体44として精製水が採用される。
【0039】
センサ40は、液体8の濃度とパージチャンバ42内部の汚染物質の濃度とが平衡状態になったときに、液体8中の汚染物質の濃度の正確な測定値を提供する。従って、パージチャンバの容積を最小限にすることが望ましい。これを実現するために、パージチャンバ42と入口管46及び出口管48との流体連通を選択的に妨害する弁又は他の手段が採用される。
【0040】
次に図5を参照すると、センサアレイ50の一例の横断面図が示される。センサアレイ50は、導管18の内部を流れる液体8とそれぞれ流体連通する状態で配置された第1のセンサ52、第2のセンサ54及び第3のセンサ56(まとめてセンサと呼ばれる)を具備する。センサアレイ50は、各センサ40からワイヤ14を介してコントローラ6に電気的信号を提供できる。各センサ40は、各センサ40内部のパージチャンバ42をパージするためにパージ媒体44を供給できる入口管46及び出口管48に流体結合される。
【0041】
液体8中の汚染物質の平均濃度を判定するために、センサアレイ50を採用できる。例えば、センサアレイ50は3組の電気的情報(例えば、センサ52、54及び56の各々に1組の電気的情報)をコントローラ6に提供できる。その後、情報を解析し、平均汚染物質濃度を判定できる。本実施形態においては、センサは互いに同様に構成される(例えば、同一の膜12を有する)。
【0042】
別の実施形態においては、センサアレイ50は、膜12を通過する所望の汚染物質の時間従属移動に基づいて、コントローラ6に電気的情報を供給できる。特に、所望のイオンが膜12を通過するために要する時間の長さは、液体8中の望ましくない汚染物質の有無及び/又は濃度により影響を受ける。従って、センサは、同一の材料(例えば、ポリスルホン)から形成されるが厚さの異なる膜12を具備できる。この構成においては、各センサにより供給される電気的情報がプラトーに到達するまで又は特定のレベルに到達するまでに要する時間の長さを評価し、望ましくない汚染物質が所望の汚染物質のイオン搬送に影響を及ぼしているか否かなどをコントローラ6が判定するために利用することができる。
【0043】
別の実施形態においては、センサアレイ50は異なる膜12を有するセンサ40を採用できる。従って、各センサ40によりコントローラ6に供給される電気的情報に相違が生じる。例えば、液体8中の所望の汚染物質の測定の精度を向上する目的で、液体8中の望ましくない汚染物質の存在によって起こる妨害を減少するために、異なるセンサ40を具備するセンサアレイ50を採用できる。特に、測定される所望の汚染物質である第1の汚染物質に基づいてコントローラ6に電気的情報を提供するために、第1のセンサを採用できる。しかし、2つの付加的汚染物質である第2の汚染物質及び第3の汚染物質が液体8中の第1の汚染物質の濃度の測定精度を損なうことは周知である。従って、第2の汚染物質を通過させるように構成された膜12を具備する第2のセンサと、第3の汚染物質を通過させるように構成された膜12を具備する第3のセンサとを含むようにセンサアレイ50を構成できる。この構成においては、3つのセンサにより供給される電気的情報をコントローラ6により解析できる。第2のセンサが第2の汚染物質を検出せず、第3のセンサは第3の汚染物質を検出しなかったとコントローラ6が判定した場合、第1のセンサから受信された情報(第1の汚染物質が存在すると仮定する)は正確であり、第2の汚染物質又は第3の汚染物質の存在により損なわれなかったと判定される。
【0044】
更に、別の実施形態においては、第2の汚染物質又は第3の汚染物質のいずれかの存在が判定された場合、コントローラ6は、液体8中の第1の汚染物質の正確な濃度を判定するために、それらの汚染物質の濃度を考慮することができる。
【0045】
図6には、センサアレイ60の一例の横断面図が示される。この場合、センサは積重ね構造を有する。特に、センサアレイ60は、上面64、左側面66、右側面68、後面70、前面72及び底面74を含むマニホルド62を具備する(以下の説明中、上、左、右、後、前又は底という用語は、上記の指定に従って使用される)。マニホルド62の底面74は、液体8が内部を流れる導管18と接触する状態で配置される。マニホルド62は、液体8が第1の膜80と流体連通するようにマニホルドの底面74を貫通して形成された試験窓76を具備する。液体8が第1の膜80の縁部82の周囲に沿って流れることができないように、第1の膜80は全ての縁部82(例えば、後縁部、左側縁部、右側縁部及び前縁部)でマニホルド62により固着される。
【0046】
第1の膜80の上面は、液体8と接触する底面の反対側にある。上面は第1のパージチャンバ82と流体連通する状態で配置される。第1のパージチャンバ82は第1の変換器84の底面と流体連通する。第1の変換器84の上面は第2のパージチャンバ86と流体連通し、第2のパージチャンバ86は第2の膜88の底面と流体連通する。第2の膜88の上面は第3のパージチャンバ90と流体連通し、第3のパージチャンバ90は第2の変換器92の底面と流体連通する。第2の変換器92の上面は第4のパージチャンバ94と流体連通する。以下の説明中、第1のパージチャンバ82、第2のパージチャンバ86、第3のパージチャンバ90及び第4のパージチャンバ94を、一般にパージチャンバと呼ぶ。同様に、第1の変換器84及び第2の変換器92を変換器と呼び、第1の膜80及び第2の膜88は膜と呼ばれる。変換器10は、ワイヤ14によりコントローラ6(図示せず)に電気通信関係で接続される。別の実施形態においては、変換器は無線変換器であってもよい。
【0047】
第1の変換器84及び第2の変換器92は左側縁部及び右側縁部でマニホルド62により固着されるが、前縁部及び後縁部はマニホルド62により固着されない。この構成においては、第1のパージチャンバ82及び第2のパージチャンバ86は互いに流体結合されると共に、入口管46及び出口管48に流体結合される。同様に、第3のパージチャンバ90及び第4のパージチャンバ94は互いに流体結合されると共に、第2の入口管98及び第2の出口管100に流体結合される。
【0048】
動作中、液体8中の汚染物質の平均濃度を判定するためにセンサアレイ60を採用できる。例えば、センサアレイ60は2組の電気的情報をコントローラ6(図示せず)に提供できる。その後、情報を解析し、汚染物質の平均濃度を判定できる。特に、液体8中の種々の汚染物質を第1の膜80を通して移動させて第1のパージチャンバ82及び第2のパージチャンバ86の中へ分散させるように、第1の膜80を構成できる。パージチャンバの中に入ると、汚染物質は、第1の変換器84によりコントローラ6に提供される電気的情報に影響を及ぼす。同様に、第1のパージチャンバ82及び第2のパージチャンバ86の内部の種々の汚染物質を第2の膜88を通して移動させて第3のパージチャンバ90の中へ分散させるように、第2の膜88を構成できる。パージチャンバの中に入ると、汚染物質は、第2の変換器92によりコントローラ6に提供される電気的情報に影響を及ぼす。
【0049】
第2の膜88は第1の膜80と同一の膜材料から製造されてもよいが、各膜(第1の膜80及び第2の膜88)を通過できる特定の汚染物質を変えるために、第1の膜80とは異なる膜材料から製造されてもよい。
【0050】
一実施形態においては、コントローラ6は、所望の汚染物質が膜12を通って移動する時間に基づいて、センサアレイ60により供給される電気的情報を評価できる。例えば、第1の膜80及び第2の膜88が同一の材料から製造されている場合、第1の変換器84により供給される電気的情報が第2の変換器92により供給される電気的情報と同様になるまでに経過した時間がコントローラにより比較される。
【0051】
別の実施形態においては、第1の膜80及び第2の膜88は同一の膜材料から製造されるが、異なる厚さを有することができる。この構成の場合にも、各センサにより供給される電気的情報がプラトーに到達するまで又は特定のレベルに到達するまでに要する時間の長さをコントローラ6により評価し、望ましくない汚染物質が所望の汚染物質のイオン搬送に影響を及ぼしているか否かなどをコントローラ6が判定するために利用できる。
【0052】
別の実施形態においては、望ましくない汚染物質の存在によって起こる妨害を減少するために、第1の膜80及び第2の膜88は異なる材料を採用できる。特に、第1の膜80を通した所望の汚染物質のイオン搬送を可能にするが、望ましくない汚染物質も第1の膜80を通って移動できるように第1の膜80を構成できる。第2の膜88は、望ましくない汚染物質のイオン搬送を可能にするように(ただし、所望の汚染物質の搬送は不可能である)構成できる。この構成においては、コントローラ6は、第1の変換器84及び第2の変換器92により供給される電気的情報を評価し、望ましくない汚染物質が存在するか否か及び/又は第1の膜80を通過した望ましくない汚染物質の濃度を判定できる。その後、コントローラ6は、第1の変換器84からの電気的情報が液体8中の所望の汚染物質の濃度を正確に表現するか否かを判定できる。更に、第2の汚染物質の存在が判定された場合、コントローラ6はその濃度を考慮に入れ、所望の汚染物質の正確な濃度を判定できる(以下に更に説明する)。
【0053】
更に別の実施形態においては、第1の膜80及び第2の膜88は異なる材料を採用でき、第1の膜80を通した所望の汚染物質のイオン搬送を可能にするが望ましくない汚染物質も第1の膜80を通って移動できるように第1の膜80を構成できる。しかし、第2の膜88は望ましくない汚染物質のイオン搬送を不可能にし、所望の汚染物質の搬送を可能にするように構成できる。この構成においては、コントローラ6は、第1の変換器84及び第2の変換器92により供給される電気的情報を評価し、望ましくない汚染物質が存在するか否か及び/又は第1の膜80を通過した望ましくない汚染物質の濃度を判定できる。その後、コントローラ6は、第1の変換器84からの電気的情報が液体8中の所望の汚染物質の濃度を正確に表現するか否かを判定できる。更に、望ましくない汚染物質の存在が判定された場合、コントローラ6はその濃度を考慮に入れ、所望の汚染物質の正確な濃度を判定できる(以下に更に説明する)。
【0054】
コントローラ6は、センサ4、40及び/又はセンサアレイ50、60から情報を受信し、情報を解釈し、液体8中の汚染物質の濃度を判定できる任意の装置であればよい。特に、センサ(4、40)及び/又はセンサアレイ(50、60)に動作自在に接続されたデータ収集システムを具備するコンピュータ(すなわち、電子情報を解釈可能である任意の電子装置)を採用できる。更に特定すれば、コンピュータは、データ及び命令を受信し、データを処理するために命令を実行し、その結果を提示できる適切な電子装置である。従って、コンピュータ64はマイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ミニコンピュータ、光学コンピュータ、ボードコンピュータ、CISC(complex instruction set computer)、ASIC(application specific integrated circuit)、RISC(reduced instruction set computer)、アナログコンピュータ、デジタルコンピュータ、分子コンピュータ、量子コンピュータ、セルラーコンピュータ、超伝導コンピュータ、スーパーコンピュータ、固体回路コンピュータ、シングルボードコンピュータ、緩衝記憶コンピュータ、コンピュータネットワーク、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、科学コンピュータ、科学計算器又はこれらのコンピュータのうちいずれかの混成であってもよい。特に、コントローラ6は、ROM(読取り専用メモリ)に結合されたマイクロプロセッサである。
【0055】
コントローラ6により受信される情報は信号などの電子情報であり、特に、共振複素インピーダンス、複素インピーダンス、電気化学変調複素インピーダンス、電流及び/又は液体8中の汚染物質の濃度を判定する能力をコントローラ6に与えるのに十分な他の任意の電気的情報である。一般に、情報はアナログ形態で受信される。その場合、サンプリング周波数は約0.0001ヘルツ(Hz)より大きくなければならず、特に、約1.0HZより大きく、更に特定すれば、約100.0Hzより大きくなければならない。一実施形態においては、コントローラは約400Hzで情報を受信できる。情報は、デジタル形態で受信され且つ/又はコントローラにより(例えば、アナログ/デジタル変換器を利用して)デジタル形態に変換される。
【0056】
液体8中の汚染物質の濃度を判定するために、コントローラ6は、センサ/センサアレイから受信した情報をメモリ(例えば、ルックアップテーブル、データアレイ、校正曲線など)と比較できる。コントローラ6によりアクセスされるメモリは、実験結果に基づいてメーカーによりプログラムされることが望ましいが、コントローラ6又はユーザ(例えば、CDSを操作する任意の人物)により経験に従って判定されてもよい。メモリはコントローラ6に動作自在な通信関係で接続されるか、又はコントローラ6と一体である。
【0057】
コントローラ6により採用される動作は、コンピュータ実現プロセス及び/又はそれらのプロセスを実施するための他の装置の形態で実現できる。それらの動作は、フロッピー(登録商標)ディスク、CD‐ROM、ハードドライブ又は他の任意のコンピュータ可読記憶媒体などの実在の媒体として実現された命令を含むコンピュータプログラムコードの形態でも実現できる。その場合、コンピュータプログラムコードがコンピュータ又はコントローラにロードされ且つコンピュータ又はコントローラにより実行されたとき、コンピュータは方法を実施する装置になる。また、方法はコンピュータプログラムコード又は信号の形態で実現されてもよく、その場合、コード又は信号は、例えば、記憶媒体に記憶され、コンピュータ又はコントローラにロードされ且つ/又はコンピュータ又はコントローラにより実行されるか、あるいは電気配線又は電気ケーブルを介して、光ファイバを介して又は電磁放射を介してなど、任意の送信媒体を介して送信されるかのいずれかである。コンピュータプログラムコードがコンピュータにロードされ且つコンピュータにより実行されたとき、コンピュータは方法を実施する装置になる。汎用マイクロプロセッサにおいて実現された場合、コンピュータプログラムコードセグメントは、特定の論理回路を形成するようにマイクロプロセッサを構成する。
【0058】
特に、コントローラ6のアクションの技術的効果は、センサ及び/又はセンサアレイから収集された電気的情報を評価し、液体8中の汚染物質の濃度を判定することである。それらの能力がソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア又はそれらの何らかの組合せで実現される場合、その実施形態は、個別の商品になるか又はコンピュータシステムの一部として含まれるか又は別個に販売される。
【0059】
汚染物質検出システム(CDS)2は、図7に示される方法により動作される。方法は、液体を分析することと、情報をメモリと比較することと、液体中の汚染物質濃度を判定することとから成る。液体8と流体連通する状態で配置されたセンサ4、40又はセンサアレイ50、60により液体8を分析できる。例えば、原子炉(例えば、原子力発電装置)の場合、冷却水(液体8)を含むパイプにセンサアレイ60を直接配置でき、追加動作なしに冷却水を直接分析できる。しかし、別の実施形態においては、ピペット又は他の試料採取手段を使用して液体8の試料を採取し、センサ4、40及び/又はセンサアレイ50、60と流体接触する状態で試料を配置することができる。尚、採用できるセンサの数は任意であり、それらのセンサを任意の数多くの構成で配置でき、様々に異なる種類の情報(例えば、温度、圧力、流量など)を提供できる。
【0060】
液体8の分析中、コントローラ6はセンサ4、40及び/又はセンサアレイ50、60から電気的情報(例えば、共振複素インピーダンス、複素インピーダンス、電気化学変調複素インピーダンス及び/又は電流)を受信する。例えば、図8を参照すると、複素インピーダンスグラフの一例が示される。x軸において、Z’はメガオーム単位で示され、Z’は複素インピーダンスの実数部分である。y軸において、Z”はメガオーム単位で示され、Z”は複素インピーダンスの虚数部分である。グラフからわかるように、5つのデータプロットが示される。試料1と表示された第1のプロットは、0重量十億分率(ppb)の塩化物イオンを含有する水を示す。試料2と表示された第2のプロットは、5ppbの塩化物イオンを含有する水を示す。試料3と表示された第3のプロットは、25ppbの塩化物イオンを含有する水を示す。試料4と表示された第4のプロットは、50ppbの塩化物イオンを含有する水を示し、試料5と表示された第5のプロットは、100ppbの塩化物イオンを含有する水を示す。データからわかるように、種々のプロットはインピーダンス応答において顕著な相違を示すため、試料中の汚染物質の濃度を数量化するためにそれらのプロットを利用できる。
【0061】
次に図9を参照すると、複素インピーダンスグラフの別の例が示される。x軸において、Z’はメガオーム単位で示され、Z’は複素インピーダンスの実数部分である。y軸において、Z”はメガオーム単位で示され、Z”は複素インピーダンスの虚数部分である。グラフからわかるように、5つのデータプロットが示される。試料1と表示された第1のプロットは、0ppbの硫酸塩イオンを含有する水を示す。試料2と表示された第2のプロットは、5ppbの硫酸塩イオンを含有する水を示す。試料3と表示された第3のプロットは、25ppbの硫酸塩イオンを含有する水を示す。試料4と表示された第4のプロットは、50ppbの硫酸塩イオンを含有する水を示し、試料5と表示された第5のプロットは、100ppbの硫酸塩イオンを含有する水を示す。この場合も同様に、種々のプロットはインピーダンス応答において顕著な相違を示すため、試料中の汚染物質の濃度を数量化するためにそれらのグラフを採用できる。
【0062】
次に図10を参照すると、複素インピーダンスグラフの更に別の例が示される。x軸において、Z’はメガオーム単位で示され、Z’は複素インピーダンスの虚数部分である。y軸において、Z”はメガオーム単位で示され、Z”は複素インピーダンスの実数部分である。グラフからわかるように、5つのデータプロットが示される。試料1と表示された第1のプロットは、0ppbの亜鉛イオンを含有する水を示す。試料2と表示された第2のプロットは、5ppbの亜鉛イオンを含有する水を示す。試料3と表示された第3のプロットは、25ppbの亜鉛イオンを含有する水を示す。試料4と表示された第4のプロットは、50ppbの亜鉛イオンを含有する水を示し、試料5と表示された第5のプロットは、100ppbの亜鉛イオンを含有する水を示す。同様に図からわかるように、種々のプロットはインピーダンス応答において顕著な相違を示す。従って、試料中の汚染物質の濃度を数量化するためにそれらの応答を利用できる。
【0063】
情報が受信されると、フィルタ(例えば、帯域幅フィルタ、電圧フィルタ及びサンプリングフィルタ)、変換器(例えば、アナログ/デジタル変換器)、シグナルプロセッサ(例えば、フーリエ波形プロセッサ、ウェーブレット変換プロセッサなど)、バッファなどを利用して情報を調整できる。調整とは関係なく、方法の次のステップにおいて既知の情報と比較するために、情報をメモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ)に格納できる。
【0064】
コントローラ6がセンサ4、40及び/又はセンサアレイ50、60から情報を受信したならば、コントローラ6は第2のステップへ進む。次のステップにおいて、情報はメモリに格納された既知の情報(例えば、ルックアップテーブル、データアレイ、校正曲線など)と比較される。比較中、受信された情報の複数の面が既知の情報と比較され、その結果、液体8中の特定の汚染物質の濃度を判定するために必要とされる追加情報がコントローラ6に提供される。比較される情報の面は、ピーク振幅、周波数、位相などの特定の特性であってもよい。一例においては、コントローラはセンサ40からインピーダンス情報を受信し、センサ40のパージチャンバ42と流体連通する状態で配置された熱電対から温度情報を受信する。この場合、インピーダンスは55キロオーム(KΩ)であり、温度は27℃である。コントローラ6は、この情報から、図11に示されるようなルックアップテーブルを参照し、アルゴリズム(本実施形態におけるインピーダンス応答は温度の対数関数である)に関して、温度プロットは20℃プロットと30℃プロットとの間で補間されると判定でき、27℃プロットを提供する。この27℃プロットから対応する濃度を判定できる。この時点で、コントローラ6は方法の第3のステップへ進むことができ、汚染物質の濃度を判定する。
【0065】
方法の第3のステップにおいては、コントローラ6はメモリからアクセスされた任意の情報を利用して、液体8中の汚染物質濃度を判定する。濃度は、アルゴリズム、補間、補外、計算及び他の任意の技術を利用して計算され、更に、コントローラ6により収集された情報又はコントローラ6が既知の情報に基づいて相関される。例えば、上述の例を続けて参照すると、20℃データプロット及び30℃データプロットから27℃プロットが補間されるとコントローラ6が判定した場合、27℃プロットが補間され、それを利用して、27℃及び55KΩにおける対応する濃度は、図11に示されるように240十億分率(ppb)であると判定される。
【0066】
更に、方法のいずれのステップにおいても、コントローラ6は、液体8中の関心汚染物質の濃度を判定するために、受信された情報にアクセスして利用できるか否かを判定できる。例えば、受信された情報がメモリと比較される方法の第2のステップにおいて、コントローラ6は、センサアレイ50の追加センサ40からか又はセンサアレイ60における第2の変換器92から追加情報を受信できる。高濃度の望ましくない汚染物質が情報に悪影響を及ぼしたか否かを判定するために、その追加情報を利用できる。あるいは、望ましくない汚染物質の特定の濃度を考慮するために、追加情報を採用できる。
【0067】
別の実施形態においては、コントローラ6は、電気的情報から濃度を数量化するために、正準相関分析、回帰分析、主成分分析、識別関数分析、多次元スケーリング、線形識別分析、ロジスティック回帰及び/又は神経ネットワーク分析などの多変量解析ツールを採用できる。
【0068】
多変量解析ツールは、センサアレイ50、60が採用される場合に特に適用できる。これは、コントローラ6により受信される電気的情報の量が大量になる可能性があるためである。その目的のために、多変量解析ツールは、単一変量校正方法と比較していくつかの利点を提供する。第1に、解析において2つ以上の測定チャネルが採用されるので、信号の平均化が実現される。また、校正液体中に複数の種が存在する場合、それらの種の濃度を測定できる。校正モデルは、校正標準溶液からの応答を使用することにより構成される。校正モデルにおいて考慮されない液体の中に種が存在する場合、未知の液体の分析は実行しにくい。液体が校正セットに属するか否かを検出できれば、この点は幾分か緩和される。異なる種からの重複する応答のために単一変量解析を使用できない場合、多変量校正方法は、感知膜12を有するセンサ4などの低分解能計器を使用して、複数の種(例えば、汚染物質)及び妨害を含む液体(例えば、水)の中におけるいくつかの関心種の選択的数量化を可能にする。
【0069】
一実施形態においては、ダイナミックデータから所望の記述子を抽出するために、主成分分析(PCA)が使用された。PCAは、共直線性を除去した低次元数の部分空間にデータ集合を投影する多変量データ解析ツールである。PCAは、情報を大きく失わずに、元の変数の重み付き和によってデータ行列Xの分散を説明することにより、この目標を達成する。元の変数のそれらの重み付き和は主成分(PC)と呼ばれる。PCAを適用すると、データ行列Xは主成分の方向に沿った直交ベクトルの線形組合せとして表現される。
【0070】
X = t1 pT1 + t2 pT2+ .... + tA pTK + E (式1)
式中、tはスコア、pはローディングベクトル、Kは主成分の数、Eは確率的誤差を表現する残差行列、Tは行列の転置である。
PCAに先立って、データは自動スケーリングなどにより適切に前処理された。
【0071】
多変量解析の適用可能性を実証するために、13.56メガヘルツ(MHz)の公称周波数を有する受動RFIDセンサを純水の中に浸した。可変濃度のNaClを製造し、RFIDセンサを約600ppb及び約1,000ppbのNaClと接触させた。数回にわたり、NaClにさらすことを繰返した。図13、図14及び図15にそれぞれ示されるように、周波数偏移、ピーク幅及びピーク強さを含む3つのパラメータを無線センサから測定するネットワークアナライザを使用して、測定を実行した。多変量解析の結果を図12に示す。ダイナミックデータの3つの主成分のスコアプロットは、1つのRFIDセンサから測定された信号の複雑な関係を示す。PCAモデルの関連主成分(例えば、PC1、PC2及びPC3)のスコアを互いに対してプロットし、式1を使用して図13〜図15に示されるデータを処理することにより、収集されたデータの関係を記述した。
【0072】
更に特定すると、実数部分及び虚数部分を含む複素インピーダンスを測定する無線RFID変化器を使用して、データをコントローラ6へ通信した。測定されるパラメータの例には複素インピーダンスの実数部分の最大値の偏移、複素インピーダンスのピーク幅及び複素インピーダンスの実数部分の大きさ(ピーク強さ)などがあるが、それらに限定されない。多変量解析により、センサの応答に影響を及ぼし且つ応答及び妨害に関連する主要因を識別できる。例えば、図16を参照すると、例示されるグラフは、実験時間の関数として第2の主成分(PC)のプロットを示すPCA結果を表す。結果は、約600ppbのNaClに2回繰返してさらし、約1,000ppbのNaClに3回繰返してさらすことによって得られた。しかし、単一のPCの応答に基づいてセンサに対する影響を判定することは困難である。従って、無線センサのいくつかの応答の組合わせが解析される。例えば、図17を参照すると、例示されるグラフは、実験結果の関数として第1のPC及び第2のPCのPCA結果を示し、約600ppbのNaClに2回繰返してさらし、約1,000ppbのNaClに3回繰り返してさらした場合に得られた結果を表す。単一のセンサからの2つ以上の応答を解析した結果、雑音寄与と有用な信号との所望の識別が得られたことは明らかである。
【0073】
PCAなどの多変量ツールを使用して解析された無線センサデータの品質を保証するために、いくつかの統計ツールが適用されてもよい。それらのツールは多変量制御チャート及び多変量寄与プロットである。多変量制御チャートは、組合わせサンプル又は時間の関数としてプロットされるホテリングのT2値及びQ値などのPCAモデルの2つの統計的標識を使用する。PCAモデルの重要な主成分は、T2チャート及び残るPCのQチャートに対する寄与を展開するために使用される。正規化二乗スコアの和であるT2統計値は、PCAモデル内部における変化の尺度であり、統計的に特異なサンプルを判定する。
【0074】
T2i = ti l-1 tiT= xi P l -1 PT xiT (式2)
式中、tiはPCAモデルからk個のスコアベクトルの行列であるTkのi番目の行であり、l-1はモデルの中に保持されるK個の固有ベクトル(主成分)と関連する固有値の逆数を含む対角行列であり、xiはXにおけるi番目のサンプルであり、PはPCAモデルの中に保持されるK個のローディングベクトルから成る行列である(各ベクトルはPの列にある)。Q残差は二乗予測誤差であり、PCAモデルが各サンプルに適合する程度を記述する。これは、モデルの中に保持されるK個の主要成分により捕捉されない各サンプルの変化の量の尺度である。
【0075】
Qi= ei eiT = xi (I - Pk PkT) xiT (式3)
式中、eiはEのi番目の行であり、Iは適切な大きさ(n×n)の恒等行列である。
【0076】
図18及び図19を参照すると、無線センサからのダイナミックデータに対する多変量Q統計制御チャート及び多変量T2統計制御チャートの例がそれぞれ提示される。それらの制御チャートは、PCAモデルにより記述されるT2統計値及びQ統計値に対して、いくつかのデータポイントが95%信頼限界を超えることを示す。それらの統計パラメータの寄与プロットを使用して、それらの警報に対する最大寄与因子の発生源を追跡できる。
【0077】
時間の経過に伴って、化学センサ応答はドリフトを発生し、誤った結果をもたらす場合がある。従って、ドリフト補正により、センサの長期間性能を向上し、正確な結果を得ることができる。従って、化学センサを使用する一実施形態は、センサに液体を導入することと、液体中の特定の種(例えば、イオン)の濃度、並びにその時点におけるその液体の導電率(例えば、マイクロジーメンス/センチメートル)を判定するために、化学プローブ(すなわち、化学センサ)及び導電率プローブ(すなわち、導電率センサ)を接触させることとを含む。溶液に何らかの種が追加されることにより、溶液の導電率は非選択的に変化されるので、測定後、ドリフトを補正するために、導電率測定値により化学濃度測定値を修正(例えば、調整)できる。導電率プローブ(導電率センサ)が(例えば、センサの感度及び雑音に応じて)時間の経過に伴う液体の導電率の変化を測定するのに十分な感度を有する限り、どのような種類の液体においても、この修正は可能である。従って、センサは化学プローブ(すなわち、化学センサ、例えば、センサアレイ)及び導電率プローブ(すなわち、導電率センサ)を含み、オプションとして温度プローブ(すなわち、温度センサ)を含む。化学プローブと同様に、導電率プローブは、導電率判定を可能にするために液体と流体連通する。例えば、(液体8中の導電率を測定するために)第1の導電率プローブを液体8の中に配置し且つ/又はパージチャンバ42の中の液体の導電率を測定するために、第2の導電率プローブをパージチャンバ42の内部に配置することができる。
【0078】
導電率プローブはDCモードにおいて得られた導電率の測定値を提供できる。導電率センサは、複数の周波数における導電率の測定値を提供し、その場合、複素インピーダンスの実数部分及び虚数部分を得るために複素インピーダンス測定が実行される。
【0079】
導電率プローブ及び/又は温度プローブの応答からの修正を多変量修正により実行できる。導電率変化に対する多変量修正は、導電率が異なる周波数で測定され且つそれらの異なる周波数においてZ’値及びZ”値(上述の通り)が得られた場合に実行される。測定される周波数の範囲は0.00001Hz〜100,000,000Hz(すなわち、100MHz)であってもよく、特に0.0001Hz〜10MHz、更に特定すれば0.001Hz〜5MHzであってもよい。それらの多周波数導電率応答は、多変量分析ツールを使用して、導電率プローブからのデータ行列と化学センサからのデータ行列とを組合わせ、その結果得られた組合わせ行列に対して、前述の多変量分析ツールを使用して多変量分析を実行することにより、化学センサ又はセンサアレイの応答と更に組合される。オプションとして、導電率センサからの修正を単一変量修正により実行することもできる。単一変量修正の一例は、化学センサからの応答が導電率センサの応答により正規化される場合であるが、これに限定されない。
【0080】
一実施形態においては、化学センサドリフト修正は比較修正により実行される。化学的に誘導された導電率応答の変化が事前に設定された導電率閾値を超えたと測定された場合、化学センサ測定が実行される。化学センサの測定値は、導電率センサ応答の閾値変化の前の化学センサ応答と、導電率センサ応答の閾値変化の後の化学センサ応答との差である。閾値導電率応答は、基線導伝率が既知である場合に種々の温度で指定の検出限界に対して計算又は指定できる任意の値である。例えば、25℃の超純水は0.055μS/cmの導電率を有する。化学センサ測定を実行する閾値を、例えば、0.1μS/cmに設定できる(水中に存在する不純物によって導電率が0.1μS/cmを超えた場合、化学センサ測定が実行される)。差に基づく化学センサ測定は短期間で実行されるため、ドリフトの影響は最小限に抑えられる。対応する導電率変化を伴わないで起こるドリフトは無視される。
【0081】
温度判定を得ることができるように、温度プローブを液体と熱連通状態で配置できる。導電率プローブ及び化学センサの応答は温度に依存するので、読みに対して温度修正も実行でき、温度修正は線形又は非線形である。導電率データ行列に加えて、温度の影響に関するデータ解析及び補正のために温度データも追加できる。
【0082】
更に、膜の表面効果及びバルク効果に対しても修正を実行できる。センサ膜における表面効果及びバルク効果を修正するために、作業化学センサ及び制御センサに同一のセンサ膜組成が付着される。作業化学センサは前述のように信号を測定する。制御化学センサは、図8〜図10に示される信号に類似するが変換器が制御感知膜で被覆されている場合に得られる複素インピーダンス信号を測定する。膜成分の浸出、膜における他の不可逆変化(化学物質にさらされたときの膜からの種の不完全な拡散など)及びセンサ膜の厚さと関連する膜のバルク誘電特性は、相対的に高周波数の応答から判定されるが、表面効果(膜の表面汚染及び膜の侵食など)は相対的に低周波数の応答から判定される。
【0083】
以下の実施例は単なる例であり、センサ及びその使用法を更に例示するために提示され、限定的な意味を持つことを意図されていない。
【実施例】
【0084】
実験1:
第1の実験においては、センサ2は、変換器10としての無線周波数識別タグ(13.56MHzの公称周波数で動作する)及びポリスルホン膜12を使用して構成された。RFID変換器はDigi-Keyから部品番号481‐1067‐1‐NDにより購入された。
【0085】
約10〜15体積%の固体を含む溶液を生成するために、37℃で24時間にわたり、ポリスルホンをジメチルスルホキシド(DMSO、Aldrich Chemical Company Inc.から購入)に溶解することにより、センサを組立てた。次に、RFID変換器に被覆膜を塗布し、37℃で24時間乾燥させた。被覆膜が乾燥した後、形成された膜12は約50μmの平均厚さを有していた。
【0086】
ポリスルホンで被覆されたセンサ2を試験装置の導管の内部に配置した。比較のために、被覆なしの変換器10も導管の内部に配置した。種々の濃度の種々の化学汚染物質を含有する種々の溶液にセンサ2及び被覆なしの変換器10がさらされる間にZmaxを記録できるように、データ収集システム(LabView、National Instruments, Inc)をセンサ2及び被覆なしの変換器10に動作自在に接続した。
【0087】
約100ppbのNaSO4を含有する第1の水溶液が導管を通過する間に、ポリスルホン被覆センサ2及び被覆なしの変換器10のZmax及び複素インピーダンスの実数部分の大きさ(ピーク強さ)を測定した。Zmax値がプラトーに到達したように見えたとき、膜12からイオンをパージするために導管に水を通した。約100ppbのHClを含有する第2の水溶液、約100ppbのNaClを含有する第3の水溶液及び約100ppbのKH2PO4を含有する第4の水溶液を使用して、この手順を繰返した。
【0088】
図20には、実験1の間に生成されたグラフの例が示される。図からわかるように、被覆なしのRIFD変換器及びポリスルホン被覆RFID変換器10のZmax応答は、NaClに対するそれぞれの応答により正規化された。この信号正規化は、変換器が感知膜12(ポリスルホン)で被覆されない場合及び被覆されている場合における4種類のイオン溶液に対するセンサの応答の多様性を評価するために実行された。図示されるように、被覆なしの変換器及び被覆された変換器によって得られた4種類の溶液の応答パターンは、異なるイオン溶液を識別するために本方法を適用する際に望まれる通りにの相違を示す。
実験2:
第2の実験においては、センサ2は、変換器10としての無線周波数識別タグ(13.56MHzの公称周波数で動作する)及びポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)膜12を使用して構成された。約10〜15体積%の固体を含有する溶液を生成するために、20℃で24時間にわたり、1‐メトキシ‐2‐プロパノール(Aldrich Chemical Co.)にポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)(Aldrich)を溶解することにより、センサを組立てた。次に、RFID変換器に被覆膜を塗布し、20℃で24時間乾燥させた。形成された膜12は約10〜50μmの平均厚さを有していた。
【0089】
ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)で被覆されたセンサを実験1及び実験2で利用された試験装置と同様の試験装置の中に配置したが、被覆なしの変換器は使用されなかった。装置は、時間に関してポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)被覆センサ2のZmaxを測定できた。
【0090】
ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)被覆センサを40ppbのNaClを含有する第1の水溶液にさらした。Zmax値がプラトーに到達したように見えたとき、膜12からイオンをパージするために水を導入した。その後、8ppbのNaClを含有する第2の水溶液を導管に通した。Zmax値がプラトーに到達したように見えたとき、膜12からイオンをパージするために水を導入した。その後、14ppbのHClを含有する第3の水溶液を導管に通した。Zmax値がプラトーに到達したように見えたとき、膜12からイオンをパージするために水を導入した。その後、72ppbのHClを含有する第4の水溶液を導管に通した。Zmax値がプラトーに到達したように見えたとき、膜12からイオンをパージするために水を導入した。
【0091】
図21には、実験2の結果を示すグラフの例が示される。グラフは、Zmax値が水のZmax値で始まることを示す。グラフに示されるように、第1の溶液が導入されると、約200秒後に、イオンが膜12の中へ侵入した結果としてZmax値は減少し始める。約300秒後、Zmaxはプラトーに到達し、そこで、膜12からNaClイオンを洗い流すために導管内部に水が導入された。グラフからわかるように、Zmaxは再び水のZmax値にほぼ戻る。約425秒後に、第2の溶液が追加され、Zmaxは減少し始め、約600秒でプラトーに到達した。尚、第2の溶液のプラトーは第1の溶液のZmax値を示しておらず、従って、センサ2は濃度に依存するZmaxを提供できる。このことは、第3の溶液のZmaxを第4の溶液のZmaxと比較することによってもわかる。更に、NaClは、一般に、HClのZmaxより大きいZmax値を示す(8ppbのNaClと14ppbのHClとの比較及び40ppbのNaClと72ppbのHClとの比較)ので、膜12の中へ移動したNaClイオンの量は通過できたHClイオンの量より多い。更に、サンプリングが終了するたびに水パージを実行することにより、測定されるZmaxはほぼ基線に戻る。
実験3:
第3の実験においては、センサ2は、2電極金製櫛形構造変換器10(図3を参照)及びポリアニリン(PANI)膜12を使用して構成された。アニリンモノマーはAldrich Chemical Company Inc.から部品番号242284により購入された。
【0092】
ポリマー膜12は、毎秒50mVの割合で銀/塩化銀基準に対して−0.3V〜1.1Vの電位を周期的に印加しつつ、1MのHSO中に0.1Mのアニリンの濃度でアニリンモノマーを変換器の表面に電気重合することにより付着された。その結果形成されたポリアニリン膜12は、約1〜約100μmの平均厚さを有していた。
【0093】
LabVIEW(National Instruments)を使用して動作されるデータ収集システムにポリアニリン被覆センサ2を接続し、40ppbのZnClを含有する水溶液にセンサをさらした。インピーダンスがプラトーに到達したように見えたとき、膜12からイオンをパージするために水を導入した。その後、190ppbのZnClを含有する第2の水溶液を導管に通した。インピーダンスがプラトーに到達したように見えたとき、膜12からイオンをパージするために水を導入した。その後、151ppbのZnClを含有する第3の水溶液を導管に通した。インピーダンスがプラトーに到達したように見えたとき、膜12からイオンをパージするために水を導入した。
【0094】
図22には、実験3の結果を示すグラフの例が示される。グラフは、時間に関する実インピーダンス(Ω単位)を示す。プロットは、水中のセンサのインピーダンス信号(例えば、約1.127×10Ω)で始まる。約500秒の後、第1の溶液が導入され、約600秒でインピーダンスは約1.175×10Ωまで減少し、その時点で導管は水によってパージされ、インピーダンスは水のインピーダンスに戻った。約1,500秒後、試験装置に第2の溶液が導入され、その結果、インピーダンスは約1,800秒で約8.75×10Ωまで降下し、その後、洗浄が実行された。約2,600秒で第3の溶液が導入され、その結果、インピーダンスは約2,900秒で約1.00×10Ωまで降下した。
実験4:
第4の実験においては、10μm幅の電極を有し且つ電極間の間隔が10μmである2電極金製櫛形構造変換器などの櫛形構造電極(IDE)が採用された(図3を参照)。Aldrich Chemical Co.より入手したアニリンモノマーを使用して、このIDEをアニリンポリマー膜12で被覆した。まず、1MのHSO中に0.1Mのアニリンを含有する溶液にIDEをさらし、銀/塩化銀(Ag/AgCl)基準に対して−0.3V〜1.1Vの印加電位を反復する(毎秒50mV(50mV/sec)の走査速度)ことにより、IDEの表面にアニリンモノマーを電気重合した。
【0095】
超純水中に塩化物汚染物質及び硫酸塩汚染物質を含有する試料にポリアニリン(PANI)被覆IDEをさらした。特に、試料は40ppb、190ppb及び151ppbのZnCl並びに40ppb、190ppb及び290ppbのZnSOを水中に含有していた。20Hz〜1MHzの範囲の複素インピーダンスの実数データ成分及び虚数データ成分を測定して記録するように構成されたデータ収集システムを介して、IDEから情報を受信した。
【0096】
PANI被覆IDE変換器により提供された応答の選択性及び感度は、図23に主成分分析プロットとして示される。プロットには、2つの主成分(PC1及びPC2)が示される。プロットからわかるように、PANI被覆IDEはZnCl及びZnSO溶液の分析において高い選択性及び感度を示す。
実験5:
本実験においては、自動センサドリフト修正の方法が実証される。31.8wt%のポリ(塩化ビニル)(PVC)、64.5wt%の可塑剤(セバシン酸ビス(2‐エチルヘキシル)(DOS))、1.3wt%の中性塩(ホウ酸テトラドデシルアンモニウムテトラキス(4‐クロロフェニル)(TDDATCPB))、1.1wt%のイオン交換体(塩化テトラドデシルアンモニウム(TDDMACl)など)及び1.3wt%の硫酸塩イオン透過担体(1,3‐[ビス(3‐フェニルチオ尿素‐イドメチル)]ベンゼンなど)から調製されたポリマー組成を利用した硫酸塩センサ膜が開発された。
【0097】
電極の先端部にセンサ膜溶液を滴下被覆した後、室温でX時間にわたり溶液を蒸発させた。その結果形成されたセンサを使用し、脱イオン超純水中の5ppb、25ppb、50ppb及び100ppbの硫酸塩イオンにセンサをさらすことにより、硫酸塩検出を実行した。更に、硫酸塩検出と並行して水の導電率を監視した。図24は、異なる硫酸塩濃度に硫酸塩センサを繰り返しさらした結果及び同時に実行された導電率測定の結果を示す。導電率は1センチメートル当たりのマイクロジーメンス(μS/cm又はマイクロS/cm)、電位(V対Ag/AgCl)及び時間(h)単位の経過時間により提供された。
【0098】
図24は、60時間にわたる試験中に硫酸塩センサ応答に現れたわずかではあるが注目に値するドリフトを示す。そこで、このセンサドリフトを補正する方法が開発された。方法は、化学イオンセンサ応答におけるドリフトを修正するために導電率プローブの応答を利用する。修正は、導電率プローブの応答により化学イオンセンサの応答を正規化することによって実行される。試験水が原子炉の水と同様の超純水の性質を有するため、この修正が可能になった(例えば、導電率センサは、この特定の試料における導電率の変化を検出するのに十分な高い感度を有する。原子炉の水の導電率は、通常、0.05〜0.15マイクロS/cmであり、種々のイオンが存在すると増加する)。イオンの背景濃度が非常に高い水(飲料水、水道水、環境水など)の場合、水の導電率を使用するそのような修正は、うまくいったとしても不確実であり、本質的には不可能である。液体(例えば、水)は1μS/cm未満の背景導電率(すなわち、関心イオンを含まない)を有することが望ましい。
【0099】
本方法の実験による実証が図25a及び図25bに示される。図25aのグラフは、0ppb、5ppb、25ppb、50ppb及び100ppbの硫酸塩イオンに4回繰返してさらした場合の硫酸塩センサの当初の応答を示す(例えば、図24に示される結果を改めて図25のグラフに示した)。センサ応答のドリフトのために、それら4つの応答曲線は互いにずれていることが明らかである。線1は図24に示される第1組の応答(例えば、15時間まで)を表し、線2は第2組の応答(例えば、15時間〜30時間)を表し、線3は第3組の応答(例えば、30時間〜45時間)を表し、線4は第4組の応答(例えば、45時間〜60時間)を表す。しかし、液体(例えば、水)の導電率値の変化により化学イオンセンサの応答を修正(例えば、正規化)すると、図25bのグラフに示されるように、反復応答曲線の再現性が向上する。言い換えれば、導電率の変化を使用することにより、センサのドリフトの補正が正常に実現されたのである。
【0100】
開示された検出方法及び汚染物質検出システムは、いくつかの顕著な利点を提供する。第1に、汚染物質検出システムは、センサの膜及び変換器から、それらに堆積するおそれのあるイオンを除去するためにパージすることができるセンサ及びセンサアレイを含む。パージ可能であるため、次の感知モードに移行する前にセンサを校正でき、その結果、イオンの堆積によって引き起こされる妨害を減少及び/又は排除できるので、基線ドリフトを減少できる。更に、本明細書中で開示されるセンサ及びセンサアレイは、イオンの通過、搬送を選択的に可能にする膜を採用できる。これにより、液体中の望ましくない汚染物質イオンによって起こる妨害は最小限に抑えられる。また、センサ及びセンサアレイは異なる膜から成る複数の被膜を具備できるので、汚染物質検出システムを動作させる方法は、望ましくない汚染物質からの妨害イオンの存在を判定し、それらの妨害イオンの濃度を評価できる。その結果、それらのイオンの濃度を考慮できるようになるので、液体中の関心汚染物質の濃度の判定の精度を改善できる。更に、センサ及びセンサアレイは少量の液体(例えば、水)を採用するため、サンプリング時間が短縮され、必要に応じてセンサの構成要素を交換できるように、センサをモジュラー構造で構成できる。
【0101】
本明細書中で開示される範囲は列挙された数値を含み、組合わせ自在である(例えば、「約25wt%まで、特に約5wt%〜約20wt%」と示される範囲は「約5wt%〜約25wt%」の範囲の終端の数値及びその間の全ての値を含む)。「組合わせ」は融合、混合、合金、反応生成物などを含む。更に、「第1」、「第2」などの用語は、本明細書中においては順序、量又は重要度を示すのではなく、1つの要素を別の要素と識別するために使用される。本明細書中、「1つの」という用語は量の限界を示すのではなく、参照される項目が少なくとも1つ存在することを表す。量と関連して使用される修飾語「約」は状態値を含み、文脈上指示される意味を有する(例えば、特定の量の測定と関連する程度の誤差を含む)。本明細書中で使用される添え字「(s)」は、その字が修飾する用語が単独で存在すること及び複数存在することの双方を含み、それにより、その用語を1つ以上含むことが意図されている(例えば、colorant(s)(着色剤)は1つ以上の着色剤を含む)。明細書を通して、「一実施形態」、「別の実施形態」、「実施形態」などというとき、それは、その実施形態と関連して説明される特定の要素(例えば、特徴、構造及び/又は特性)が本明細書中で説明される少なくとも1つの実施形態に含まれ、他の実施形態には存在しない場合もあることを意味する。更に、説明された要素は種々の実施形態において任意の適切な方法で組合わされてもよいことを理解すべきである。本明細書中、センサ及びプローブという用語は互換性をもって使用される。
【0102】
引用された特許、特許出願及び他の参考文献は、全て、参考としてその全体の内容が本明細書に取入れられている。しかし、本出願における用語が取入れられた参考文献における用語と矛盾又は相反する場合には、本出願の用語が参考文献の用語における相反する用語に優先する。
【0103】
実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱せずに種々の変更を実施でき、本発明の要素を等価の要素と置き換えてもよいことは当業者により理解されるであろう。更に、本発明の本質的範囲から逸脱せずに、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために数多くの変形が実施されてもよい。従って、本発明は、本発明を実施するために最良であると考えられる態様として開示された特定の実施形態に限定されてはならず、本発明は添付の特許請求の範囲に入る全ての実施形態を含むことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】汚染物質検出システム(CDS)の一例を示した図である。
【図2】センサの一例を示した横断面図である。
【図3】変換器の一例を示した図である。
【図4】センサの一例を示した横断面図である。
【図5】センサアレイの一例を示した横断面図である。
【図6】センサアレイの一例を示した横断面図である。
【図7】汚染物質検出システム(CDS)を動作させる方法の一例を示した図である。
【図8】複素インピーダンスグラフの一例を示した図である。
【図9】複素インピーダンスグラフの一例を示した図である。
【図10】複素インピーダンスグラフの一例を示した図である。
【図11】ルックアップテーブルの一例をグラフで示した図である。
【図12】主成分解析(PCA)グラフの一例を示した図である。
【図13】周波数偏移グラフの一例を示した図である。
【図14】虚数信号成分グラフのピーク幅の一例を示した図である。
【図15】実数信号成分グラフのピーク強さの一例を示した図である。
【図16】実験時間の関数として第2の主成分を示したグラフである。
【図17】実験時間の関数として第1の主成分及び第2の主成分を示したグラフである。
【図18】多変量Q残差統計制御チャートグラフの一例を示した図である。
【図19】多変量ホテリングT統計制御チャートグラフの一例を示した図である。
【図20】変換器に関して実験1の間に生成された選択性応答及び感度応答を示したグラフである。
【図21】変換器に関して実験2の間に生成された選択性応答及び感度応答を示したグラフである。
【図22】変換器に関して実験3の間に生成された選択性応答及び感度応答を示したグラフである。
【図23】変換器に関して実験4の間に生成された選択性応答及び感度応答を示したグラフである。
【図24】実験5における硫酸塩センサの導電率及び電位を示したグラフである。
【図25】実験5の間に生成された硫酸塩センサの当初の応答及び修正後の応答を示したグラフである。
【符号の説明】
【0105】
2…汚染物質検出システム
4…センサ
6…コントローラ
8…液体
10…変換器
12…膜
14…ワイア
16…マニホルド
18…導管
20…変換器
22…フィルム
24…マニホルド
30…第1電極
32…第2電極
34…フィンが
40…センサ
42…パージチャンバ
44…パージ媒体
46…入口チューブ
48…出口チューブ
50…センサアレイ
52…第1センサ
54…第2センサ
56…第3センサ
60…センサアレイ
62…マニホルド
64…上面
66…左側面
68…右側面
70…後面
72…前面
74…底面
76…試験窓
80…第1の膜
82…第1のパージチャンバ
84…第1の変換器
86…第2のパージチャンバ
88…第2の膜
90…第3のパージチャンバ
92…第2の変換器
94…第4のパージチャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中の汚染物質を検出する装置において、
第1の膜(80)及び第1の変換器(84)を具備し、使用中、前記第1の変換器(84)の第1の面が液体と流体連通し且つ前記第1の膜(80)が前記第1の面と前記液体との間に配置されるように構成されたセンサ(4)と;
前記変換器(10)に動作自在な通信関係で接続され、前記液体中の汚染物質の濃度を判定するように構成されたコントローラ(6)とを具備することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記第1の面と前記第1の膜との間に配置されたパージチャンバ(42)を更に具備し、前記パージチャンバ(42)は入口及び出口を有する請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記センサ(4)はセンサアレイ(50)の一部であり、前記センサアレイ(50)は、
前記センサ(4)と;
底面(74)及び上面(64)を有し、前記底面(74)は前記第1のパージチャンバ(82)と流体連通する第2の膜(88)と;
前記上面(64)と流体連通する状態で配置された第2のパージチャンバ(86)と;
前記第2のパージチャンバ(86)の内部に配置された第2の変換器(92)とを具備し、
前記コントローラ(6)は前記第2の変換器(92)とも動作自在な通信関係にある請求項1及び2のいずれか1項に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の膜(80)は、第1の関心イオンに選択的に結合するように構成されたイオン透過担体を含み、前記第2の膜(88)は、第2の関心イオンに選択的に結合するように構成された第2のイオン透過担体を含む請求項3記載の装置。)
【請求項5】
前記第1のパージチャンバ(82)は前記第2のパージチャンバ(86)と流体連通する請求項3及び4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の膜(80)及び/又は前記第2の膜(88)は、膜を通過する望ましくない種の搬送を妨害できる無機材料である請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記ポリマー材料は、関心イオンに選択的に結合できるイオン透過担体を含む請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記膜(12)は、原子炉の水中にある関心イオンに応答できる添加剤を含む請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の変換器(84)及び/又は前記第2の変換器(92)は、無線周波数を介して前記コントローラ(6)に動作自在な通信関係で接続される請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
水を含み、エネルギーを生成するように構成された原子炉と;
水中の汚染物質を検出できる汚染物質検出器とを具備し、前記検出器は、
膜(12)及び変換器(10)を具備し、使用中、前記変換器(10)の第1の面が水と流体連通し且つ前記膜(12)が前記第1の面と水との間に配置されるように構成され、前記膜(12)が、前記膜(12)を通過する望ましくない種の搬送を妨害できるポリマー材料であるセンサ(4)と;
前記変換器(10)と動作自在な通信関係で接続され、水中の汚染物質の濃度を判定するように構成されたコントローラ(6)とを具備する原子炉システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−129011(P2008−129011A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291481(P2007−291481)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】